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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166697
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】耐力壁パネル接続構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20231115BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20231115BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20231115BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231115BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
E04H9/02 321C
E04B2/56 643A
E04B1/61 502Z
F16F15/02 L
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077389
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】堤 哲文
(72)【発明者】
【氏名】土方 和己
(72)【発明者】
【氏名】中川 岳士
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 輝
【テーマコード(参考)】
2E002
2E125
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E002FB08
2E002MA12
2E125AA54
2E125AE13
2E125BB01
2E125CA79
2E139AA01
2E139AC19
2E139BA06
3J048AA06
3J048AC06
3J048BC09
3J048BE10
3J048EA38
3J066AA26
3J066BA03
3J066BD07
3J066BF01
(57)【要約】
【課題】 梁などの構造躯体を損傷することなく、接合部で水平力を吸収することができるとともに、水平力を吸収することで変形した部材を、耐力壁パネルを取り外すことなく交換することができる耐力壁パネル接続構造を提供する。
【解決手段】耐力壁パネル接続構造1a,1bは、耐力壁パネル3と、耐力壁パネル3の上下端から突出して形成される固定プレート5,8,32と、構造部材の水平面から突出し、固定プレート5,8,32に突き合わされる突出プレート6,9,34と、耐力壁パネル3の面外方向から前記固定プレート5,8,32及び前記突出プレート6,9,34に固定されてる接続部材7,10,35と、を備え、接続部材7,10,35は、耐力壁パネル3から伝わる水平力によって塑性変形可能であるとともに、固定プレート5,8,32及び前記突出プレート6,9,34に着脱可能に固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形平板状に形成されて、建築物の水平耐力を負担する耐力壁パネルと、
前記耐力壁パネルの上端又は下端から突出して形成される固定プレートと、
前記建築物の構造部材の水平面から鉛直方向に突出し、前記固定プレートの突出端部に突き合わせられて、当該固定プレートと面一となる突出プレートと、
前記耐力壁パネルの面外方向から前記固定プレート及び前記突出プレートに固定されて、当該固定プレート及び前記突出プレートを接続する接続部材と、
を備え、
前記接続部材は、前記耐力壁パネルから伝わる水平力によって塑性変形可能であるとともに、前記固定プレート及び前記突出プレートに着脱可能に固定されることを特徴とする耐力壁パネル接続構造。
【請求項2】
前記接続部材は、前記固定プレート及び前記突出プレートに当接して、それぞれのプレートにボルト及びナットで接合される矩形の接合板と、前記接合板の周縁に、当該接合板に対して垂直な平板状に形成される枠板と、を有することを特徴とする請求項1に記載の耐力壁パネル接続構造。
【請求項3】
前記耐力壁パネルは、上下に並べて配置されるものであり、
前記構造部材は、上下2つの前記耐力壁パネルの間に形成される木製梁であり、
前記固定プレートは、上側の前記耐力壁パネルの下端から下方に突出して形成される第一の固定プレートと、下側の前記耐力壁パネルの上端から上方に突出して形成される第二の固定プレートと、を有し、
前記突出プレートは、前記木製梁の上面から上方に突出する第一の突出プレートと、前記木製梁の下面から下方に突出する第二の突出プレートと、を有し、
前記接続部材は、前記第一の固定プレートと前記第一の突出プレートとを接続する第一接続部材と、前記第二の固定プレートと前記第二の突出プレートとを接続する第二接続部材と、を有し、
前記第一の突出プレートと前記第二の突出プレートとは、前記木製梁を上下方向に貫通する貫通連結材によって連結されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐力壁パネル接続構造。
【請求項4】
前記貫通連結材は、前記第一の突出プレート及び前記第二の突出プレートのいずれか一方に固定される筒状の受入部と、前記第一の突出プレート及び前記第二の突出プレートのいずれか他方に固定され、前記受入部に挿入される挿入部と、有し、
前記木製梁に形成された水平な水平孔に挿入されるピンが前記受入部及び前記挿入部を貫通することで前記受入部及び挿入部が連結されることを特徴とする請求項3に記載の耐力壁パネル接続構造。
【請求項5】
前記水平孔は、前記ピンの径よりも大きい径に形成されており、前記ピンとの間に隙間が形成されることを特徴とする請求項4に記載の耐力壁パネル接続構造。
【請求項6】
前記固定プレート、前記突出プレート、及び前記接続部材は、所定の耐火性能を有する鋼製であり、
前記耐力壁パネルは木製耐力壁パネルであり、
前記耐力壁パネルと、前記木製梁と、の間に耐火板材が配置されることを特徴とする請求項3に記載の耐力壁パネル接続構造。
【請求項7】
前記構造部材は、鉄筋コンクリート製又は鋼製であり、
前記突出プレートは、前記構造部材に固定されて上方に突出し、
前記固定プレートは、前記耐力壁パネルの下端から突出して前記突出プレートに突き合わされて、
前記接続部材が、前記固定プレート及び前記突出プレートを接続することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐力壁パネル接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の水平耐力を負担する耐力壁パネルを設置する耐力壁パネル接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
耐力壁として直交集成板(CLT)等の中実で高剛性の木製板を用いることで、耐力壁量を減らしつつ、建築物の耐震性を確保し、建築物の外周に大きな開口部を設けるなどの設計の自由度を高めることができる。このような直交集成板などの耐力壁パネルは、耐力壁パネル自体がほとんど変形することができず、基礎、梁、床などの構造躯体との接合部に力が集中する問題があった。
【0003】
そこで、耐力壁パネルを基礎、梁、床などの構造躯体に接合する接合金物に変形性能を持たせて、地震などで建築物に加わる水平力を吸収することが知られている。例えば特許文献1には、木質の耐力壁パネルと木質の梁との間に降伏可能な接合金物を設けて、耐力壁パネルに加わる水平力を接合金物の変形に寄って吸収する構成が記載されている。また、特許文献2及び特許文献3には、上端隅又は下端隅に切欠部が形成された耐力壁パネルであり、梁などの構造躯体に打ち込まれるアンカーによって固定された接合金物が切欠部に配置されて耐力壁パネルに変形可能に接合される構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-196669号公報
【特許文献2】特開2018-162602号公報
【特許文献3】特開2022-15240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、耐力壁パネルと梁などの構造躯体とが当接している場合には、接合金物の変形によって水平力を吸収した場合であっても、耐力壁パネルの角や接合金物自体が構造躯体にめり込み、構造躯体が損傷するおそれがある。また、建築物に加わる水平力を吸収して接合金物が変形した場合に、接合金物を交換するためには、耐力壁パネルを構造躯体から取り外して、接合金物を交換し、再度耐力壁パネルを取り付ける作業が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、梁などの構造躯体を損傷することなく、接合部で水平力を吸収することができるとともに、水平力を吸収することで変形した部材を、耐力壁パネルを取り外すことなく交換することができる耐力壁パネル接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の耐力壁パネル接続構造は、矩形平板状に形成されて、建築物の水平耐力を負担する耐力壁パネルと、前記耐力壁パネルの上端又は下端から突出して形成される固定プレートと、前記建築物の構造部材の水平面から鉛直方向に突出し、前記固定プレートの突出端部に突き合わせられて、当該固定プレートと面一となる突出プレートと、前記耐力壁パネルの面外方向から前記固定プレート及び前記突出プレートに固定されて、当該固定プレート及び前記突出プレートを接続する接続部材と、を備え、前記接続部材は、前記耐力壁パネルから伝わる水平力によって塑性変形可能であるとともに、前記固定プレート及び前記突出プレートに着脱可能に固定されることを特徴としている。
【0008】
本発明の耐力壁パネル接続構造は、前記接続部材は、前記固定プレート及び前記突出プレートに当接して、それぞれのプレートにボルト及びナットで接合される矩形の接合板と、前記接合板の周縁に、当該接合板に対して垂直な平板状に形成される枠板と、を有することを特徴としている。
【0009】
本発明の耐力壁パネル接続構造は、前記耐力壁パネルは、上下に並べて配置されるものであり、前記構造部材は、上下2つの前記耐力壁パネルの間に形成される木製梁であり、前記固定プレートは、上側の前記耐力壁パネルの下端から下方に突出して形成される第一の固定プレートと、下側の前記耐力壁パネルの上端から上方に突出して形成される第二の固定プレートと、を有し、前記突出プレートは、前記木製梁の上面から上方に突出する第一の突出プレートと、前記木製梁の下面から下方に突出する第二の突出プレートと、を有し、前記接続部材は、前記第一の固定プレートと前記第一の突出プレートとを接続する第一接続部材と、前記第二の固定プレートと前記第二の突出プレートとを接続する第二接続部材と、を有し、前記第一の突出プレートと前記第二の突出プレートとは、前記木製梁を上下方向に貫通する貫通連結材によって連結されることを特徴としている。
【0010】
本発明の耐力壁パネル接続構造は、前記貫通連結材は、前記第一の突出プレート及び前記第二の突出プレートのいずれか一方に固定される筒状の受入部と、前記第一の突出プレート及び前記第二の突出プレートのいずれか他方に固定され、前記受入部に挿入される挿入部と、有し、前記木製梁に形成された水平な水平孔に挿入されるピンが前記受入部及び挿入部を貫通することで前記受入部及び挿入部が連結されることを特徴としている。
【0011】
本発明の耐力壁パネル接続構造は、前記水平孔は、前記ピンの径よりも大きい形成されており、前記ピンとの間に隙間が形成されることを特徴としている。
【0012】
本発明の耐力壁パネル接続構造は、前記固定プレート、前記突出プレート、及び前記接続部材は、所定の耐火性能を有する鋼製であり、前記耐力壁パネルは木製耐力壁パネルであり、前記耐力壁パネルと、前記木製梁と、の間に耐火板材が配置されることを特徴としている。
【0013】
本発明の耐力壁パネル接続構造は、前記構造部材は、鉄筋コンクリート製又は鋼製であり、前記突出プレートは、前記構造部材に固定されて上方に突出し、前記固定プレートは、前記耐力壁パネルの下端から突出して前記突出プレートに突き合わされて、前記接続部材が、前記固定プレート及び前記突出プレートを接続することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の耐力壁パネル接続構造によると、耐力壁パネルの上端又は下端から突出する固定プレートと、構造部材の水平面から突出する突出プレートと、を接続する接続部材の塑性変形によって、耐力壁パネルと構造部材との接合部に集中する水平力を吸収することができ、構造部材の損傷を抑制することができ、地震荷重に対する靱性の高い建築物とすることができる。また、接続部材は、耐力壁パネルの面外方向から固定プレート及び突出プレートに着脱可能に固定されるので、接続部材が塑性変形し交換等のメンテナンスが必要となった場合に、耐力壁パネルや構造部材を建築物から取り外すことなく、接続部材のみを取り外して交換することができ、比較的簡易なメンテナンス作業で耐震性を維持することができる。
【0015】
本発明の耐力壁パネル接続構造によると、接続部材は、固定プレート及び突出プレートに当接してボルト及びナットで接合される矩形の接合板と、接合板の周縁に当該接合板に対して垂直な平板状に形成される枠板と、を有するので、接合板のスリップ変形を枠板によって抑制することができ、地震の際の正負の繰返し荷重と層間変位角との関係を示す履歴曲線をバイリニア型とすることで、接続部材のエネルギー吸収能力の低下を防ぐことができる。
【0016】
本発明の耐力壁パネル接続構造によると、上下の耐力壁パネルの間に構造部材としての木製梁が形成され、第一の突出プレートと第二の突出プレートとは、木製梁を上下方向に貫通する貫通連結材によって連結されているので、建築物に加わった水平力が上側の耐力壁パネルの下端隅における鉛直方向の引張力及び圧縮力に変換され、当該引張力及び圧縮力が貫通連結材によって木製梁を介さずに下側の耐力壁パネルに伝達され、木製梁に大きな荷重をかけることがなく、木製梁の損傷を防止できる。
【0017】
本発明の耐力壁パネル接続構造によると、貫通連結材が、筒状の受入部と、受入部に挿入される挿入部と、有し、木製梁に形成された水平な水平孔に挿入されるピンが受入部及び挿入部を貫通することで受入部及び挿入部が連結されるものであるので、木製梁の上下一方から貫通連結材の受入部を挿入し、他方から挿入部を挿入して、木製梁の内部でピンによって連結するので、木製梁の上面及び下面に簡単に第一の突出プレート及び第二の突出プレートを固定することができ、上側の耐力壁パネルから下側の耐力壁パネルへ木製梁を介さずに力を伝達することができる。
【0018】
本発明の耐力壁パネル接続構造によると、水平孔は、ピンの径よりも大きい径に形成されており、ピンとの間に隙間が形成されるので、耐力壁パネルから貫通連結材に伝達される引張力又は圧縮力が木製梁に全く伝達されることがなく、木製梁の損傷を確実に防止できる。
【0019】
本発明の耐力壁パネル接続構造によると、固定プレート、突出プレート、及び接続部材は、所定の耐火性能を有する鋼製であり、耐力壁パネルは木製耐力壁パネルであり、耐力壁パネルと、木製梁と、の間に耐火板材が配置されているので、木製の梁と木製の耐力壁パネルでありつつ、耐火上の縁を切ることができる。
【0020】
本発明の耐力壁パネル接続構造によると、構造部材は、鉄筋コンクリート製又は鋼製であり、突出プレートは、構造部材に固定されて上方に突出し、固定プレートは、耐力壁パネルの下端から突出して突出プレートに突き合わされて、接続部材が、固定プレート及び突出プレートを接続するので、例えば基礎の上に耐力壁パネルを設置する場合や、下階が鉄筋コンクリート造又は鉄骨造でその上階に耐力壁パネルを設置する場合であっても、靱性が高くメンテナンスが容易な耐力壁パネルの接続構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第一の耐力壁パネル接続構造及び第二の耐力壁パネル接続構造を用いて耐力壁パネルを固定した状態を説明する正面図。
図2】第一の耐力壁パネル接続構造及び第二の耐力壁パネル接続構造を用いて耐力壁パネルを固定した状態を説明する鉛直断面図。
図3】第一、第二、第三の固定プレートの形状を説明する斜視図。
図4】第一の耐力パネル接続構造の全体構成を説明する一部省略斜視図。
図5】第一の耐力パネル接続構造の全体構成を説明する図2のα部分拡大断面図。
図6】第一の突出プレート、上面当接板、挿入部、受入部、下面当接板、及び第二の突出プレートの構成を説明する斜視図。
図7】第一、第二、第三接続部材の形状を説明する斜視図。
図8】第一の耐力壁パネル接続構造における第一及び第二接続部材の取り付け及び取り外しを説明するために木製梁及び耐力壁パネルの記載を省略した分解斜視図。
図9図8の状態から第一及び第二接続部材の取り付けた状態を説明する斜視図。
図10】耐火板材の配置を説明する一部省略拡大断面図。
図11】第二の耐力壁パネル接続構造の全体構成を説明する一部省略斜視図。
図12】第二の耐力パネル接続構造の全体構成を説明する図2のβ部分拡大断面図。
図13】第二の耐力壁パネル接続構造における第三接続部材の取り付け及び取り外しを説明するために耐力壁パネルの記載を省略した分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の耐力壁パネル接続構造の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態において、耐力壁パネル接続構造1a,1bを用いて耐力壁を形成する建築物は、木製梁2及び木製柱で躯体が形成される木造の戸建住宅である。なお、本発明における建築物は、本実施形態に限定されるものではなく、集合住宅や非居住性の各種施設などの建築物であってもよい。また、本発明は木製梁2が設けられる建築物において好適に用いられるものであるが、木造の建築物に限定されるものではなく、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、その他の様々な構造の建築物に用いることができる。
【0023】
本実施形態の耐力壁パネル接続構造1a,1bは、図1及び図2に示すように、木製梁2を挟んで上下の耐力壁パネル3を接続する第一の耐力壁パネル接続構造1aと、基礎4の上に耐力壁パネル3を接続する第二の耐力壁パネル接続構造1bと、を含んでいる。以下において、まず、第一の耐力壁パネル接続構造1aについて説明する。第一の耐力壁パネル接続構造1aは、上下の耐力壁パネル3と、当該上下の耐力壁パネル3に挟まれる構造部材としての木製梁2と、上側の耐力壁パネル3の下端から下方に突出して形成される第一の固定プレート5と、木製梁2の上面から上方に突出する第一の突出プレート6と、第一の固定プレート5と第一の突出プレート6とを接続する第一接続部材7と、下側の耐力壁パネル3の上端から上方に突出して形成される第二の固定プレート8と、木製梁2の下面から下方に突出する第二の突出プレート9と、第二の固定プレート8と第二の突出プレート9とを接続する第二接続部材10と、第一の突出プレート6と第二の突出プレート9とを連結する貫通連結材11と、を備える。なお、本実施形態における第一の固定プレート5及び第二の固定プレート8は、本発明における「固定プレート」に相当する。また、本実施形態における第一の突出プレート6及び第二の突出プレート9は、本発明における「突出プレート」に相当する。本実施形態における第一接続部材7及び第二接続部材10は、本発明における「接続部材」に相当する。
【0024】
耐力壁パネル3は直交集成板(CLT)であり、上端及び下端にそれぞれ固定プレートを挿入可能なスリット12が形成されている。耐力壁パネル3は建築物の屋内外を隔てる外壁の内部に配置されるものであってもよく、界壁や間仕切壁のように、建築物の屋内に立設される壁の内部に配置されるものであってもよい。なお、耐力壁パネル3は直交集成板に限定されるものではなく、例えばNLT(Nail Laminated Timber)などの耐力壁パネルとして使用可能なせん断剛性の高い木質材料をもちいてもよい。また、木製梁2は集成材の角材であり、本実施形態においては1階の天井懐において図示しない柱材の間に架設されている。木製梁2は、上面から下面に鉛直な円形孔13が貫通している。円形孔13は耐力壁パネル3が設置される位置に4つ形成されている。また、木製梁2には一方の側面から他方の側面に向かって水平孔14が形成されている。水平孔14は鉛直に形成された円形孔13に直交するように設けられており、1つの円形孔13につき3つの水平孔14が上下方向に並べて形成されている。
【0025】
第一の固定プレート5及び第二の固定プレート8は、図3に示すように、L字状に形成された鋼製の薄板材であり、耐力壁パネル3に固定するための多数のピン孔15と、耐力壁パネル3から突出する端部に形成され、3つのボルト挿入孔16とを有する。第一の固定プレート5の下端縁及び第二の固定プレート8の上端縁はそれぞれ水平な直線状に形成されている。
【0026】
図4及び図5に示すように、第一の固定プレート5は、上階の耐力壁パネル3の下端に固定されるプレートである。第一の固定プレート5は耐力壁パネル3の下端の両隅にそれぞれ固定される。図5に示すように、第一の固定プレート5は耐力壁パネル3の下端に形成されたスリット12に挿入されている。第一の固定プレート5は、耐力壁パネル3を面外方向に貫通するドリフトピンと、ボルト及びナットと、からなる固定具17によって、耐力壁パネル3の下端から下向きに一部が突出した状態に固定される。
【0027】
第一の突出プレート6は、図6に示すように、木製梁2の上面に当接する上面当接板19の上に鉛直方向に延びて形成されている。第一の突出プレート6は、3つのボルト受け孔18が形成されている。上面当接板19は、第一の固定プレート5の下方にそれぞれ形成されており、第一の突出プレート6は第一の固定プレート5と突き合わされる位置において上面当接板19からそれぞれ突出している。第一の突出プレート6の上端縁は水平な直線状に形成されており、第一の固定プレート5の下端縁に突き合わせられる。上面当接板19は、水平な平板状であり、木製梁2の上面に当接して配置される。上面当接板19の下面には、貫通連結材11の挿入部20が下方に突出するように形成されている。貫通連結材11は、挿入部20と受入部21とを有して円柱形状に形成されており、筒状の受入部21に挿入部20が挿入されて連結されるものである。挿入部20は上面当接板19の下面から2つ並んで突出している。第一の突出プレート6、上面当接板19、及び挿入部20は、互いに一体に形成されている。
【0028】
挿入部20は、上部が大径の円柱状で下部が上部よりも縮径された円柱状に形成されている。挿入部20の下部には、上下方向に並べて3つの連結孔22が形成されている。受入部21は、挿入部20の下部が挿入可能な円筒形状に形成されており、挿入部20に形成された3つの連結孔22に整合する位置にそれぞれ固定孔23が貫通して形成されている。受入部21は、下面当接板24の上面から2つ並んで突出して形成されている。図4に示すように、木製梁2の円形孔13に上側から挿入部20を挿入し、下側から受入部21を挿入して、木製梁2の内部で挿入部20を受入部21に挿入し、木製梁2の側面に形成された水平孔14からピン25を挿入して、受入部21の固定孔23及び挿入部20の連結孔22をピン25で連結する。ピン25は直径約16mmの鋼製円柱形であり、挿入部20の連結孔22及び受入部21の固定孔23の直径も約16mmに形成されている。そして木製梁2に形成される水平孔14の直径約30mmに形成されており、ピン25の外周と水平孔14の内周との間には隙間が形成されている。木製梁2の水平孔14が、ピン25の径よりも大きい径であることで、ピン25との間に隙間が形成されるので、耐力壁パネル3から貫通連結材11に伝達される引張力又は圧縮力が木製梁2に全く伝達されることがなく、木製梁2の損傷を確実に防止できる。
【0029】
下面当接板24は、水平な平板状であり、木製梁2の下面に当接して配置される。下面当接板24の下面には、第二の突出プレート9が、図4及び図6に示すように可能に延びて形成されている。第二の突出プレート9は、3つのボルト受け孔18が形成されている。第二の突出プレート9の下端縁は水平な直線状に形成されており、第二の固定プレート8の上端縁に突き合わせられる。
【0030】
また、第二の固定プレート8は、下階の耐力壁パネル3の上端に固定されるプレートである。図5に示すように、第二の固定プレート8は耐力壁パネル3の上端に形成されたスリット12に挿入されいる。第二の固定プレート8は、耐力壁パネル3を面外方向に貫通するドリフトピンと、ボルト及びナットと、からなる固定具17によって、耐力壁パネル3の上端から上向きに一部が突出した状態に固定される。
【0031】
第一接続部材7及び第二接続部材10は、図7に示すように、固定プレート5,8及び突出プレート6,9に当接して、それぞれのプレートに高力ボルト26及びナットで接合される矩形の接合板27と、接合板27の周縁に、接合板27に対して垂直な平板状に形成される枠板28と、を有しており、耐力壁パネル3の面外方向に向かって開いたボックス形状に形成されている。第一接続部材7は、図8に示すように、接合板27に6つの接合孔29が形成されている。接合孔29は、上下2列で水平方向に3つずつ並んで形成されており、上側の3つの接合孔29が第一の固定プレート5のボルト挿入孔16と整合し、下側の3つの接合孔29が第一の突出プレート6のボルト受け孔18に整合している。第一接続部材7は、図9に示すように、第一の固定プレート5及び第一の突出プレート6の表面及び裏面にそれぞれ接合板27が当接し、上側の接合孔29及びボルト挿入孔16にそれぞれ高力ボルト26を挿入してナットで締め付けるとともに、下側の接合孔29及びボルト受け孔18にそれぞれ高力ボルト26を挿入してナットで締め付けることで第一の固定プレート5及び第一の突出プレート6を接合している。
【0032】
また第二接続部材10は、第一接続部材7と同様の6つの接合孔29が接合板27に形成されておいる。第二接続部材10は、図9に示すように、第二の固定プレート8及び第二の突出プレート9の表面及び裏面にそれぞれ接合板27が当接し、上側の接合孔29及びボルト受け孔18にそれぞれ高力ボルト26を挿入してナットで締め付けるとともに、下側の接合孔29及びボルト挿入孔16にそれぞれ高力ボルト26を挿入してナットで締め付けることで第二の固定プレート8及び第二の突出プレート9を接合している。
【0033】
建築物に加わった水平力が上側の耐力壁パネル3の下端隅における鉛直方向の引張力及び圧縮力に変換されるが、上述のように、第一の突出プレート6及び第二の突出プレート9が、木製梁2を上下方向に貫通する貫通連結材11によって連結されていることで、当該引張力及び圧縮力が貫通連結材11によって木製梁2を介することなく、下側の耐力壁パネル3に伝達されるので、木製梁2に大きな荷重をかけることがなく、木製梁2の損傷を防止できる。
【0034】
第一接続部材7及び第二接続部材10は、鋼製で耐力壁パネル3よりも剛性が低く形成されており、耐力壁パネル3から伝達される水平力を塑性変形することで吸収可能に形成されている。そして、第一接続部材7及び第二接続部材10は、矩形の接合板27と、接合板27の周縁に形成される枠板28と、を有することで、接合板27のスリップ変形が枠板28によって抑制され、地震の際の正負の繰返し荷重と層間変位角との関係を示す履歴曲線をバイリニア型とすることができ、第一接続部材7及び第二接続部材10のエネルギー吸収能力の低下を防ぐことができる。
【0035】
また、第一接続部材7及び第二接続部材10は、高力ボルト26及びナットを取り外して、耐力壁パネル3の面外方向に引き出すことで、木製梁2や耐力壁パネル3に干渉することなく構造躯体から取り外すことができる。したがって、第一接続部材7及び第二接続部材10が地震等によって塑性変形し交換等のメンテナンスが必要となった場合であっても、耐力壁パネル3や構造部材を建築物から取り外すことなく、接続部材のみを取り外して交換することができ、比較的簡易なメンテナンス作業で耐震性を維持することができる。
【0036】
第一の固定プレート5、第二の固定プレート8、第一の突出プレート6、第二の突出プレート9、第一接続部材7、及び第二接続部材10は、木製梁2及び耐力壁パネル3よりも耐火性能の高い鋼製に形成されている。ここで本発明における「所定の耐火性能」は、本実施形態においては法令の要件を満たす耐火性能をいい、例えば1時間の延焼抑制性能をいう。上階の耐力壁パネル3と木製梁2との間には第一接続部材7が配置され、下階の耐力壁パネル3と木製梁2との間には第二接続部材10が配置されて、それぞれ耐力壁パネル3と木製梁2との間に隙間が形成されている。そして、図10に示すように、上階の耐力壁パネル3と木製梁2との間には第一接続部材7が配置されている位置を切り欠いて耐火板材30の床材が形成されており、下階の耐力壁パネル3と木製梁2との間には第二接続部材10が配置されている位置を切り欠いて耐火板材30の天井材が形成されている。そしてこれらの耐火板材30と第一接続部材7及び第二接続部材10との間にはそれぞれ耐火被覆材31が配置されている。このように木製梁2と木製の耐力壁パネル3とが直接的に接続されずに、耐火板材30が配置されることで、木製梁2と木製耐力壁パネル3を用いた構造でありつつ、耐火上の縁切りを行うことができ、上下階の間に耐火ラインを設けることができる。
【0037】
次に、基礎4の上に耐力壁パネル3を接続する第二の耐力壁パネル接続構造1bについて説明する。第二の耐力壁パネル接続構造1bは、下階の耐力壁パネル3と、耐力壁パネル3の下端から下方に突出して形成される第三の固定プレート32と、構造部材としての基礎4の上に配置されるパネル固定金物33と、パネル固定金物33から上方に突出する第三の突出プレート34と、第三の固定プレート32と第三の突出プレート34とを接続する第三接続部材35と、を備える。
【0038】
なお、第三の固定プレート32は、上述した第一の耐力壁パネル接続構造1aにおける第一の固定プレート5及び第二の固定プレート8と同様の構成であり、第三接続部材35は、上述した第一の耐力壁パネル接続構造1aにおける第一接続部材7及び第二接続部材10と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。また、耐力壁パネル3は、上述した第一の耐力壁パネル接続構造1aと同じ構成であるので詳細な説明は省略する。なお、本実施形態における第三の固定プレート32は、本発明における「固定プレート」に相当する。また、本実施形態における第三の突出プレート34は、本発明における「突出プレート」に相当する。本実施形態における第三接続部材35は、本発明における「接続部材」に相当する。
【0039】
耐力壁パネル3の下端に形成されるスリット12に第三の固定プレート32が挿入されて固定される。第三の固定プレート32は、図3に示すように、L字状に形成された鋼製の薄板材であり、耐力壁パネル3に固定するための多数のピン孔15と、耐力壁パネル3から突出する端部に形成され、3つのボルト挿入孔16とを有する。第三の固定プレート32の下端縁は水平な直線状に形成されている。
【0040】
図11及び図12に示すように、第三の固定プレート32は、下階の耐力壁パネル3の下端に固定されるプレートである。第三の固定プレート32は耐力壁パネル3の下端の両隅にそれぞれ固定される。図12に示すように、第三の固定プレート32は耐力壁パネル3の下端に形成されたスリット12に挿入されている。第三の固定プレート32は、耐力壁パネル3を面外方向に貫通するドリフトピンと、ボルト及びナットと、からなる固定具17によって、耐力壁パネル3の下端から下向きに一部が突出した状態に固定される。
【0041】
第三の突出プレート34は、図13に示すように、基礎4の上に固定されるパネル固定金物33の上面から上方向に延びて形成されている。第三の突出プレート34には3つのボルト受け孔18が形成されている。パネル固定金物33は、基礎4に埋設されて固定されている図示しないアンカーボルトによって基礎4の上面に固定されている。第三の突出プレート34の上端縁は水平な直線状に形成されており、第三の固定プレート32の下端縁に突き合わせられる。
【0042】
第三接続部材35は、図13に示すように、第三の固定プレート32及び第三の突出プレート34に当接して、それぞれのプレートに高力ボルト26及びナットで接合される矩形の接合板27と、接合板27の周縁に、接合板27に対して垂直な平板状に形成される枠板28と、を有しており、耐力壁パネル3の面外方向に向かって開いたボックス形状に形成されている。第三接続部材35は、図13に示すように、第三の固定プレート32及び第三の突出プレート34の表面及び裏面にそれぞれ接合板27が当接し、上側の接合孔29及びボルト挿入孔16にそれぞれ高力ボルト26を挿入してナットで締め付けるとともに、下側の接合孔29及びボルト受け孔18にそれぞれ高力ボルト26を挿入してナットで締め付けることで第三の固定プレート32及び第三の突出プレート34を接合している。
【0043】
第三接続部材35は、鋼製で耐力壁パネル3よりも剛性が低く形成されており、耐力壁パネル3から伝達される水平力を塑性変形することで吸収可能に形成されている。このように本実施形態の第二の耐力壁パネル接続構造1bは、第三接続部材35の塑性変形によって、耐力壁パネル3と基礎4との接合部に集中する水平力を吸収することができ、耐力壁パネル3や基礎4の損傷を抑制することで、地震荷重に対する靱性の高い建築物を形成することができる。そして、第三接続部材35の形状が、矩形の接合板27の周縁に枠板28を設けた鋼製のボックス形状のであることで、接合板27のスリップ変形を枠板28によって抑制して、地震の際の正負の繰返し荷重と層間変位角との関係を示す履歴曲線をバイリニア型とすることができ、第三接続部材35のエネルギー吸収能力の低下を防ぐことができる。
【0044】
また、第三接続部材35は、高力ボルト26及びナットを取り外して、耐力壁パネル3の面外方向に引き出すことで、耐力壁パネル3や基礎4等に干渉することなく構造躯体から取り外すことができる。したがって、第三接続部材35が塑性変形し、交換等のメンテナンスが必要となった場合に、耐力壁パネル3を建築物から取り外すことなく、第三接続部材35のみを取り外して交換することができ、比較的簡易なメンテナンス作業で耐震性を維持することができる。
【0045】
なお、第二の耐力壁パネル接続構造1bは、基礎4の上に耐力壁パネル3を接続するものであるが、耐力壁パネル3の下端を接続する構造部材としては、例えば、鉄筋コンクリート製又は鋼製で、地震の際に耐力壁パネル3の下端との接合箇所に集中するせん断力を負担可能な剛性を有する構造部材であれば基礎4に限定されるものではなく、例えば下階が鉄筋コンクリート造又は鉄骨造でその上階に耐力壁パネル3を設置する場合であっても、靱性が高くメンテナンスが容易な耐力壁パネル接続構造1a,1bとすることができる。
【0046】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る耐力壁パネル接続構造1a,1bは、例えば木造住宅に耐力壁パネル3を設置する構造として好適である。
【符号の説明】
【0048】
1a,1b 耐力壁パネル接続構造
2 木製梁
3 耐力壁パネル
4 基礎
5 第一の固定プレート
6 第一の突出プレート
7 第一接続部材
8 第二の固定プレート
9 第二の突出プレート
10 第二接続部材
11 貫通連結部
14 水平孔
20 挿入部
21 受入部
27 接合板
28 枠板
30 耐火板材
32 固定プレート
34 突出プレート
35 接続部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13