(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166698
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ポリエチレンテレフタレート(PET)に基づく樹脂を含むトナー粒子
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20231115BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20231115BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 365
G03G9/08 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077390
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】寺田 明紀
(72)【発明者】
【氏名】團野 敬博
(72)【発明者】
【氏名】家田 修
(72)【発明者】
【氏名】石川 恵一
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500BA03
2H500BA22
2H500CA06
2H500EA11B
2H500EA39B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA44B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リサイクルされたポリエチレンテレフタレートを含む、環境に配慮されたトナー粒子を提供する。
【解決手段】着色剤と、離型剤と、非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、を含有するトナー粒子であって、結着樹脂が、テレフタル酸及びエチレングリコールをモノマー単位として含み、テレフタル酸及びエチレングリコールが、少なくとも非結晶性ポリエステル樹脂中にモノマー単位として含まれ、結晶性ポリエステル樹脂の含有量に対する、結着樹脂中のテレフタル酸及びエチレングリコールの合計の含有量の質量比が、3.5~12.0である、トナー粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、
離型剤と、
非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、
を含有するトナー粒子であって、
前記結着樹脂が、テレフタル酸及びエチレングリコールをモノマー単位として含み、
前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールが、少なくとも前記非結晶性ポリエステル樹脂中にモノマー単位として含まれ、
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量に対する、前記結着樹脂中の前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールの合計の含有量の質量比が、3.5~12.0である、トナー粒子。
【請求項2】
前記結着樹脂の含有量を基準とした前記結晶性ポリエステルの含有量C(質量%)が、3質量%以上であり、かつ、下記式(1):
C≦33.3×H+7.0 …(1)
(式中、H(W/g)は、前記トナー粒子を示差走査熱量測定したときの吸熱ピークの高さを表す)
を満たす、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項3】
前記結晶性ポリエステル樹脂が、アルコール及びカルボン酸をモノマー単位として含み、
前記アルコールが、炭素数4以上の脂肪族ジオールを90モル%以上含む、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項4】
前記非結晶性ポリエステル樹脂中の前記エチレングリコールの含有量が、前記非結晶性ポリエステル樹脂中の前記テレフタル酸の含有量100質量部に対して17~37質量部である、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項5】
前記非結晶性ポリエステル樹脂が、前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールとして、ポリエチレンテレフタレートに由来するテレフタル酸及びエチレングリコールを含む、請求項1に記載のトナー粒子。
【請求項6】
前記非結晶性ポリエステル樹脂中の前記ポリエチレンテレフタレートに由来する前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールの合計の含有量が、前記結着樹脂の含有量を基準として30質量%以上である、請求項5に記載のトナー粒子。
【請求項7】
トナー粒子を含むトナーカートリッジであって、
前記トナー粒子が、
着色剤と、
離型剤と、
非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、
を含有し、
前記結着樹脂が、テレフタル酸及びエチレングリコールをモノマー単位として含み、
前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールが、少なくとも前記非結晶性ポリエステル樹脂中にモノマー単位として含まれ、
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量に対する、前記結着樹脂中の前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールの合計の含有量の質量比が、3.5~12.0である、トナーカートリッジ。
【請求項8】
前記結着樹脂の含有量を基準とした前記結晶性ポリエステルの含有量C(質量%)が、3質量%以上であり、かつ、下記式(1):
C≦33.3×H+7.0 …(1)
(式中、H(W/g)は、前記トナーカートリッジ。を示差走査熱量測定したときの吸熱ピークの高さを表す)
を満たす、請求項7に記載のトナーカートリッジ。
【請求項9】
前記結晶性ポリエステル樹脂が、アルコール及びカルボン酸をモノマー単位として含み、
前記アルコールが、炭素数4以上の脂肪族ジオールを90モル%以上含む、請求項7に記載のトナーカートリッジ。
【請求項10】
前記非結晶性ポリエステル樹脂中の前記エチレングリコールの含有量が、前記非結晶性ポリエステル樹脂中の前記テレフタル酸の含有量100質量部に対して17~37質量部である、請求項7に記載のトナーカートリッジ。
【請求項11】
前記非結晶性ポリエステル樹脂が、前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールとして、ポリエチレンテレフタレートに由来するテレフタル酸及びエチレングリコールを含む、請求項7に記載のトナーカートリッジ。
【請求項12】
前記非結晶性ポリエステル樹脂中の前記ポリエチレンテレフタレートに由来する前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールの合計の含有量が、前記結着樹脂の含有量を基準として30質量%以上である、請求項11に記載のトナーカートリッジ。
【請求項13】
ポリエチレンテレフタレートを含む重縮合成分を反応させて非結晶性ポリエステル樹脂を得る工程と、
前記非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを含む原料からトナー粒子を形成する工程と、を備え、
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量に対する、前記結着樹脂中にモノマー単位として含まれるテレフタル酸及びエチレングリコールの合計の含有量の質量比が、3.5~12.0である、トナー粒子の製造方法。
【請求項14】
前記非結晶性ポリエステル樹脂にモノマー単位として含まれるエチレングリコールの含有量が、前記ポリエチレンテレフタレートにモノマー単位として含まれるエチレングリコールの含有量を基準として、40~95質量%である、請求項13に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項15】
前記非結晶性ポリエステル樹脂中の前記ポリエチレンテレフタレートに由来する前記テレフタル酸及び前記エチレングリコールの合計の含有量が、前記結着樹脂の含有量を基準として30質量%以上である、請求項13に記載のトナー粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子写真法などの静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、様々な分野で利用されている。電子写真法においては、感光体表面を均一に帯電させた後、この感光体表面に静電荷像を形成し、トナー粒子を含む現像剤で静電潜像を現像することで、トナー像として可視化する。そして、このトナー像が記録媒体表面に転写され、定着することにより、画像が形成される。ここで用いられる現像剤としては、トナー粒子及びキャリアからなる2成分現像剤と、磁性トナー又は非磁性トナーを単独で用いる1成分現像剤とが知られている。
【発明を実施するための形態】
【0002】
以下、トナー粒子の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子は、非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを含有する。
【0003】
結着樹脂は、テレフタル酸及びエチレングリコールをモノマー単位として含む。このテレフタル酸及びエチレングリコールは、少なくとも非結晶性ポリエステル樹脂中にモノマー単位として含まれる。テレフタル酸及びエチレングリコールの一方又は両方は、結晶性ポリエステル樹脂中にモノマー単位として含まれていてもよい。
【0004】
非結晶性ポリエステル樹脂は、示差走査熱量測定法(DSC)において、明確な吸熱ピークを有さないポリエステル樹脂であってよい。非結晶性ポリエステルは、例えば、示差走査熱量測定法において、温度上昇速度を10℃/分で測定したときに、階段状の吸熱変化を示すポリエステル樹脂や、吸熱ピークの半値幅が15℃を超えるポリエステル樹脂であると定義されてもよい。
【0005】
非結晶性ポリエステル樹脂は、モノマー単位として、テレフタル酸及びエチレングリコールを含む。非結晶性ポリエステル樹脂中にモノマー単位として含まれるテレフタル酸及びエチレングリコールは、テレフタル酸単体及びエチレングリコール単体に由来してよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)に由来してもよい。非結晶性ポリエステル樹脂は、好ましくは、テレフタル酸及びエチレングリコールとして、ポリエチレンテレフタレートに由来するテレフタル酸及びエチレングリコールを含む。この場合、リサイクルされたポリエチレンテレフタレートからトナー粒子を製造することができるため、環境に配慮されたトナー粒子が提供され得る。
【0006】
非結晶性ポリエステル樹脂は、モノマー単位として、テレフタル酸以外のカルボン酸を更に含んでもよい。テレフタル酸以外のカルボン酸は、多価カルボン酸又はその無水物であってよい。多価カルボン酸は、ジカルボン酸又はその無水物を含んでよく、3価以上の多価カルボン酸又はその無水物を含んでよく、ジカルボン酸又はその無水物と3価以上の多価カルボン酸又はその無水物とを含んでよい。
【0007】
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニルアセト酸、p-フェニレン-2-アセト酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニルアセト酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0008】
3価以上の多価カルボン酸であってもよい。当該多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、及びピレンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0009】
非結晶性ポリエステル樹脂は、モノマー単位として、エチレングリコール以外のアルコールを更に含んでもよい。エチレングリコール以外のアルコールは、多価アルコールであってよい。多価アルコールは、ジオールであってよい。ジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環式ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などの芳香族ジオールが挙げられる。
【0010】
アルコールは、好ましくは芳香族ジオールを含む。アルコールは、より好ましくは、アルコール全量基準で、60モル%以上、70モル%以上、80モル以上、又は90モル%以上の芳香族ジオールを含む。アルコールは、芳香族ジオールのみからなっていてもよい。
【0011】
テレフタル酸の含有量は、非結晶性ポリエステル樹脂におけるモノマー単位の全量を基準として、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、又は35モル%以上であってよく、65モル%以下、60モル%以下、又は55モル%以下であってよい。
【0012】
エチレングリコールの含有量は、非結晶性ポリエステル樹脂におけるモノマー単位の全量を基準として、10モル%以上、15モル%以上、又は20モル%以上であってよく、55モル%以下、50モル%以下、又は45モル%以下であってよい。
【0013】
非結晶性ポリエステル樹脂中のエチレングリコールの含有量は、非結晶性ポリエステル樹脂中のテレフタル酸の含有量100質量部に対して、17~37質量部であってよく、その下限値は、20質量部、23質量部、又は26質量部であってよく、その上限値は、35質量部、33質量部、又は30質量部であってもよい。
【0014】
テレフタル酸以外のカルボン酸の含有量は、非結晶性ポリエステル樹脂におけるモノマー単位の全量を基準として、0モル%以上、0.5モル%以上、又は1モル%以上であってよく、45モル%以下、40モル%以下、又は35モル%以下であってよい。
【0015】
エチレングリコール以外のアルコールの含有量は、非結晶性ポリエステル樹脂におけるモノマー単位の全量を基準として、2モル%以上、5モル%以上、又は10モル%以上であってよく、80モル%以下、75モル%以下、又は70モル%以下であってよい。
【0016】
非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、4000以上、6000以上、又は7000以上であってよく、20000以下、15000以下、又は12000以下であってよい。非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法により測定される。
【0017】
非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、50℃以上であってよく、80℃以下であってよい。非結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上であってよく、20mgKOH/g以下であってよい。非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度及び酸価は、それぞれ実施例に記載の方法により測定される。
【0018】
非結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、80質量部以上、85質量部以上、又は90質量部以上であってよく、98質量部以下、96質量部以下、又は95質量部以下であってよい。非結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、70質量%以上、75質量%以上、又は80質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってよい。
【0019】
結晶性ポリエステル樹脂は、変調示差走査熱量測定法(MDSC)において、明確な吸熱ピークを有するポリエステル樹脂であってよい。結晶性ポリエステル樹脂は、モノマー単位として、アルコール及びカルボン酸を含んでよい。
【0020】
アルコールは、多価アルコールであってよい。多価アルコールは、ジオールであってよい。ジオールは、脂肪族ジオールであってよい。アルコールの炭素数は、2以上、4以上、6以上、又は9以上であってよく、12以下、10以下、又は9以下であってよい。アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、及び1,10-デカンジオールが挙げられる。
【0021】
アルコールは、好ましくは、アルコール全量を基準として、炭素数4以上の脂肪族ジオールを90モル%以上又は95%以上含む。アルコールは、炭素数4以上の脂肪族アルコールのみからなっていてもよい。
【0022】
カルボン酸は、多価カルボン酸であってよい。多価カルボン酸は、ジカルボン酸であってよい。ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸であってよい。多価カルボン酸の炭素数(ただし、カルボキシル基を構成する炭素以外の炭素の数)は、8以上、9以上、又は10以上であってよく、12以下であってよい。多価カルボン酸としては、例えば、1,10-デカン二酸(セバシン酸)及び1,12-ドデカン二酸が挙げられる。
【0023】
カルボン酸は、好ましくは、カルボン酸全量を基準として、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を90モル%以上又は95%以上含む。カルボン酸は、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸のみからなっていてよい。
【0024】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、4000以上、5000以上、又は5500以上であってよく、13000以下、10000以下、又は7000以下であってよい。結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法により測定される。
【0025】
非結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上であってよく、20mgKOH/g以下であってよい。
【0026】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、2質量部以上、4質量部以上、又は5質量部以上であってよく、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下であってよい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上であってよく、20質量%以下、15質量%以下、又は13質量%以下であってよい。
【0027】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量に対する、結着樹脂中のテレフタル酸及びエチレングリコールの合計の含有量の質量比は、3.5~12.0であり、その下限値は、4.0、4.5、又は5.0であってもよく、その上限値は、11.0、10.0、又は9.5であってもよい。これにより、トナー粒子は、低温定着性及び耐熱保管性に優れたトナー粒子であり得る。
【0028】
非結晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステル樹脂の合計の含有量を基準とした結晶性ポリエステルの含有量C(質量%)は、3.0質量%以上であり、かつ、下記式(1):
C≦33.3×H+7.0 …(1)
(式中、H(W/g)は、トナー粒子を示差走査熱量測定したときの吸熱ピークの高さを表す)
を満たす。
なお、トナー粒子を示差走査熱量測定したときの吸熱ピークの高さHは、実施例に記載の方法により測定される。
【0029】
当該結晶性ポリエステルの含有量Cは、3.5質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、6.0質量%以上、7.0質量%以上、8.0質量%以上、又は9.0質量%以上であってもよく、20.0質量%以下、18.0質量%以下、又は15.0質量%以下であってもよい。
【0030】
非結晶性ポリエステル樹脂中のポリエチレンテレフタレートに由来するテレフタル酸及びエチレングリコールの合計の含有量は、結着樹脂の含有量を基準として、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってよく、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
【0031】
着色剤は、例えば、ブラック着色剤、シアン着色剤、マゼンタ着色剤及びイエロー着色剤から選ばれる少なくとも1種の着色剤を含むことができる。着色剤は、色相、彩度、明度、耐候性、トナー内の分散性などを考慮して、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0032】
ブラック着色剤は、カーボンブラック又はアニリンブラックであってよい。イエロー着色剤は、縮合窒素化合物、イソインドリノン化合物、アントラキン化合物、アゾ金属錯体又はアリルイミド化合物であってよい。イエロー着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180などが挙げられる。
【0033】
マゼンタ着色剤は、縮合窒素化合物、アントラキン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物であってよい。マゼンタ着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254などが挙げられる。
【0034】
シアン着色剤は、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、又はアントラキン化合物などであってよい。シアン着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
【0035】
着色剤の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってよい。
【0036】
離型剤としては、例えばワックスが挙げられる。ワックスは、天然ワックスであっても合成ワックスであってもよい。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、シリコンワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、カルナバワックス、蜜蝋、及びメタロセンワックスが挙げられる。ワックスは、好ましくはエステルワックスであってよい。
【0037】
エステルワックスは、例えば、炭素数15~30の脂肪酸と炭素数10~30の一価アルコールとのエステルであってよく、炭素数15~30の脂肪酸と炭素数3~30の多価アルコールとのエステルであってもよい。エステルワックスとしては、例えば、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル、及びモンタン酸グリセリドが挙げられる。
【0038】
ワックスの融点は、60℃以上又は70℃以上であってよく、100℃以下又は90℃以下であってよい。
【0039】
ワックスの含有量は、トナー粒子の全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、15質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。
【0040】
トナー粒子は、必要に応じて、荷電制御剤を更に含有してもよい。荷電制御剤は、ネガ系荷電制御剤であってもポジ系荷電制御剤であってもよい。
【0041】
トナー粒子は、必要に応じて、無機微粒子を更に含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、及び酸化アルミニウム微粒子が挙げられる。
【0042】
トナー粒子の平均粒子径は、例えば、3μm以上又は5μm以上であってよく、10μm以下又は8μm以下であってよい。トナー粒子の平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定される体積中位粒子径D50を意味する。
【0043】
トナー粒子は、例えばトナーカットリッジに収容されてよい。他の一実施形態は、上述したトナー粒子を含むトナーカートリッジである。トナー粒子は、トナーカートリッジ中の容器内に収容されていてよい。すなわち、トナーカートリッジは、トナー粒子を収容する容器を備えていてよい。
【0044】
続いて、上述したトナー粒子の製造方法の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子の製造方法は、ポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸以外のカルボン酸、及びエチレングリコール以外のアルコールを反応させて非結晶性ポリエステル樹脂を得る工程(工程Aともいう)と、非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、着色剤、及び離型剤を含む原料からトナー粒子を形成する工程(工程Bともいう)と、を備えている。
【0045】
工程Aにおいて非結晶性ポリエステル樹脂を得る方法は、ポリエチレンテレフタレートを含む重縮合成分と、エステル化触媒などとを一括で反応容器に仕込み、公知のエステル化反応によって、非結晶性ポリエステル樹脂を得る方法であってもよい。重縮合成分は、カルボン酸を更に含んでもよく、アルコールを更に含んでもよい。
【0046】
重縮合成分が、カルボン酸とエチレングリコール以外のアルコールとを含む場合、エステル化反応において、ポリエチレンテレフタレートにモノマー単位として含まれるエチレングリコールとアルコールとの間でエステル交換反応が起こると共に、カルボン酸の重縮合も起こることにより、非結晶性ポリエステル樹脂が生成する。この場合、工程Aにおける方法は、先に、ポリエチレンテレフタレート及びアルコールとエステル化触媒などとを反応容器に仕込み、十分にエステル交換反応を進行させた後、カルボン酸を反応容器に仕込み、エステル化反応を進行させて、非結晶性ポリエステルを得る方法であってもよい。
【0047】
上記のようなエステル交換反応を利用した方法では、ポリエチレンテレフタレートにモノマー単位として含まれるエチレングリコールの一部のみが得られる非結晶性ポリエステル樹脂中にモノマー単位として残存することになる。非結晶性ポリエステル樹脂にモノマー単位として含まれるエチレングリコールの含有量(EG残存率)は、ポリエチレンテレフタレートにモノマー単位として含まれるエチレングリコールの含有量を基準として、40~95質量%であってよく、その下限値は、45質量%、50質量%、60質量%、65質量%、又は70質量%であってもよく、その上限値は、90質量%、85質量%、80質量%、75質量%、又は70質量%であってもよい。
【0048】
ポリエチレンテレフタレートの物性は特に制限されないが、一例として、ポリエチレンテレフタレートの数平均分子量(Mn)は、5000以上、10000以上、又は15000以上であってよく、60000以下、55000以下、50000以下、又は45000以下であってよい。ポリエチレンテレフタレートの数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法により測定される。ポリエチレンテレフタレートは、リサイクルされたポリエチレンテレフタレートであってもよい。この場合、環境に配慮されたトナー粒子が提供され得る。
【0049】
ポリエチレンテレフタレートの仕込み量は、重縮合成分の全量を基準として、好ましくは、20モル%以上、30モル%以上、又は35モル%以上であってよく、85モル%以下、70モル%以下、又は60モル%以下であってよい。ここで、ポリエチレンテレフタレートの仕込み量は、ポリエチレンテレフタレートの構成単位1つ(エチレングリコール1分子とテレフタル酸1分子とがエステル化して構成する単位)に相当する構造の分子量(=192=62+166-(18×2))をポリエチレンテレフタレートのモル質量として換算した値である。すなわち、ポリエチレンテレフタレートの仕込み量は、ポリエチレンテレフタレートの物質量が192g/molであるとして換算した値である。
【0050】
カルボン酸は、テレフタル酸以外のテレフタル酸を含んでいてよい。テレフタル酸以外のカルボン酸の詳細は、上述したとおりである。テレフタル酸以外のカルボン酸の仕込み量は、重縮合成分の全量を基準として、0モル%以上、0.5モル%以上、又は1モル%以上であってよく、45モル%以下、40モル%以下、又は35モル%以下であってよい。
【0051】
カルボン酸は、テレフタル酸を含んでいてもよい。テレフタル酸の仕込み量は、重縮合成分の全量を基準として、0.3モル%以上、0.6モル%以上、又は1.0モル%以上であってよく、10モル%以下、7モル%以下、又は5モル%以下であってよい。
【0052】
エチレングリコール以外のアルコールの詳細は、上述したとおりである。エチレングリコール以外のアルコールの仕込み量は、重縮合成分の全量を基準として、2モル%以上、5モル%以上、又は10モル%以上であってよく、80モル%以下、75モル%以下、又は70モル%以下であってよい。
【0053】
エステル化触媒としては、例えば、アンチモン系、スズ系、チタン系、アルミニウム系の触媒を挙げることができる。エステル化触媒は、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシドなどの有機金属や、テトラブチルチタネートなどの金属アルコキシドなどであってもよい。エステル化触媒の仕込み量は、例えば、重縮合成分の全量100質量部に対して、0.05質量部以上又は0.2質量部以上であってよく、1質量部以下又は0.7質量部以下であってよい。
【0054】
工程Bでは、工程Aで得られた非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを含む結着樹脂、着色剤、離型剤、及び必要に応じて用いられるその他の成分を、例えばミキサーを用いて予備混合した後、例えば二軸混練機を用いて混練する。混練された混合物を微粉砕した後、分級して所望の粒子径を有するトナー粒子が得られる。必要に応じて、トナー粒子を例えば無機微粒子と更に混合することにより、表面に無機微粒子が付着したトナー粒子を得ることもできる。
【実施例0055】
以下、実施例によってトナー粒子を更に詳細に説明するが、トナー粒子は実施例に限定されない。まず、実施例で測定した各特性の測定方法について説明する。
【0056】
(結晶性ポリエステル樹脂の吸熱ピーク温度)
結晶性ポリエステル樹脂0.01~0.02gをアルミパンに計量し、変調示差走査熱量計Q2000(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、室温から昇温速度20℃/分で140℃まで昇温し、そのまま1分間静止させた。その後、降温速度20℃/分で0℃まで冷却し、1分間静止させ、再び昇温速度10℃/分で140℃まで昇温し、熱流量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も熱流量の大きいピークの頂点に対応する温度を吸熱ピーク温度とした。
【0057】
(非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度)
非結晶性ポリエステル樹脂0.01~0.02gをアルミパンに計量し、変調示差走査熱量計Q2000(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、室温から昇温速度20℃/分で140℃まで昇温し、そのまま1分間静止させた。その後、降温速度20℃/分で0℃まで冷却し、1分間静止させ、再び昇温速度10℃/分で140℃まで昇温し、熱流量を測定した。吸熱ピーク温度以下の温度におけるベースラインの延長線と、吸熱ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0058】
(トナー粒子の吸熱ピーク高さ(H))
トナー粒子0.01~0.02gをアルミパンに計量し、変調示差走査熱量計Q2000(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、室温から昇温速度20℃/分で140℃まで昇温し、そのまま1分間静止させた。その後、降温速度20℃/分で0℃まで冷却し、1分間静止させ、再び昇温速度10℃/分で140℃まで2回目の昇温を行った。2回目の昇温時に観測される結晶性ポリエステル樹脂の吸熱ピークの単位質量(トナー粒子1g)当たりの熱流量(W/g)をH1とし、吸熱ピーク温度以上の温度におけるベースラインの単位質量(トナー粒子1g)当たりの熱流量(W/g)をH2とし、下記式にてトナー粒子の吸熱ピーク高さHを算出した。
吸熱ピーク高さH(W/g)=H1-H2
【0059】
(非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の酸価)
酸価は、JIS K0070の方法に基づき測定した。但し、測定溶媒についてのみ、JIS K0070に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、テトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0060】
(ポリエチレンテレフタレートの数平均分子量(Mn))
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、以下の方法でポリエチレンテレフタレートの分子量分布を測定し、数平均分子量を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、ポリエチレンテレフタレートをクロロホルムに40℃で溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
Waterse2695(日本ウォーターズ株式会社製)を測定装置として使用し、InertsilCN-325cm2連(ジーエルサイエンス株式会社製)を分析カラムとして使用して、溶離液としてクロロホルムを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。ポリエチレンテレフタレートの分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。検量線としては、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成した検量線を用いた。
【0061】
(非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定した。具体的には、Waterse2695(日本ウォーターズ株式会社製)を測定装置として使用し、Inertsil CN-325cm 2連(ジーエルサイエンス株式会社製)をカラムとして使用した。非結晶性ポリエステル樹脂10mgをテトラヒドロフラン(THF)(安定剤含有、和光純薬工業株式会社製)10mLに投入し1時間攪拌後、0.2μmフィルターで濾過したろ液を、試料として使用した。テトラヒドロフラン(THF)試料溶液を測定装置に20μL注入し、40℃、流速1.0mL/分の条件で測定を実施した。
【0062】
(トナー粒子の体積中位粒子径(D50))
トナー粒子の体積中位粒子径(D50)は、細孔電気抵抗法により測定した。具体的には、コールターカウンター(ベックマンコールター社製)を測定装置として使用し、ISOTON II(ベックマンコールター社製)を電解液として使用し、アパチャー径100μmのアパチャーチューブを使用して、測定粒子数:30000の条件で測定した。測定されたトナー粒子の粒度分布を基にして、分割された粒度範囲に含まれる粒子が占める体積を小粒子径側から累積していき、累積50%となる粒子径を体積中位粒子径D50とした。
【0063】
続いて、実施例で用いた非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及びトナー粒子の製造方法について説明する。
【0064】
(非結晶性ポリエステル樹脂(樹脂1~7)の製造)
表1に示すアルコール及びポリエチレンテレフタレート(PET)と、エステル化触媒としてジブチルスズオキサイドをアルコール及びPETの合計量に対して1重量%とを、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、3時間常圧で反応を行った。その後、8~100kPaの減圧下にて、エチレングリコールを所望の量留去させることでエステル交換反応を行った。続いて、210℃まで冷却を行い、表1に示すカルボン酸を添加し、235℃まで昇温し、3時間常圧で反応を行った。その後、8kPaにて所望の酸価まで反応を行い、非結晶性ポリエステル樹脂である樹脂1~7を得た。
【0065】
【0066】
表1中、「BPA-PO」は、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(プロピレンオキサイド平均付加モル数=2)を表し、「BPA-EO」は、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(エチレンオキサイド平均付加モル数=2)を表す。
【0067】
表1中、「非結晶性ポリエステル樹脂中のPET由来のTPA+EGの比率(質量比)」は、非結晶性ポリエステル樹脂全量に対する、非結晶性ポリエステル樹脂中のポリエチレンテレフタレートに由来するテレフタル酸及びエチレングリコールの合計量の比率を表し、(PETの仕込量-留去したエチレングリコールの量)/(重縮合成分の総仕込み量-留去したエチレングリコールの量-縮合により生成した水の量)により算出した。
【0068】
表1中、「非結晶性ポリエステル樹脂中のTPA+EGの比率(質量比)」は、非結晶性ポリエステル樹脂全量に対する、非結晶性ポリエステル樹脂中のテレフタル酸及びエチレングリコールの合計量の比率を表し、(PETの仕込量+テレフタル酸の仕込量-留去したエチレングリコールの量)/(重縮合成分の総仕込み量-留去したのエチレングリコール量-縮合により生成した水の量)により算出した。
【0069】
表1中、「EG残存率(質量%)」は、ポリエチレンテレフタレート中のエチレングリコールの含有量を基準とした、非結晶性ポリエステル樹脂中のエチレングリコールの含有量を表し、[1-(留去したエチレングリコールの量/PETの仕込量×60/192)]×100により算出した。
【0070】
表1中、「非結晶性ポリエステル樹脂中のEG/非結晶性ポリエステル樹脂中のTPA(質量比)」は、非結晶性ポリエステル樹脂中のテレフタル酸の含有量に対する、非結晶性ポリエステル樹脂中のエチレングリコールの含有量の質量比を表し、非結晶性ポリエステル樹脂について、プロトン核磁気共鳴分光法(1H-NMR法)により、以下の条件にて測定することにより算出した。
測定装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置JNM-400A
試料温度:室温
測定溶媒:重クロロホルム
試料回転数:約15Hz
化学シフト基準:1H[TMS,0ppm]
具体的には、まず、得られた1H-NMRチャートより、エチレングリコール及びテレフタル酸の構成要素に帰属されるピークの中から、他のアルコール及び他のカルボン酸の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、それぞれのピークの積分値を算出した。算出された積分値よりエチレングリコール及びテレフタル酸のモル比を算出し、さらに質量比に換算した。なお、質量比はモル比に60/132を乗ずることにより算出した。
【0071】
(結晶性ポリエステル樹脂(樹脂8~12)の製造)
表2に示すアルコール及びカルボン酸と、エステル化触媒としてジブチルスズオキサイドを原料に対して1重量%とを、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃まで昇温し、5時間反応を行った。その後、210℃まで0.2℃/分の昇温速度で段階的に昇温を行った。続いて、8kPaにて所望の酸価まで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂である樹脂8~12を得た。
【0072】
【0073】
(トナー粒子の製造)
表3及び表4に示す非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を混合した結着樹脂100質量部、着色剤としてカーボンブラック「MA-100」(三菱化学(株)製)6質量部、離型剤「WEP-5」(日油株式会社製、融点:83℃)6質量部、及び荷電制御剤「T-77」(保土谷化学製)1質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS-I]で分級し、体積中位粒子径(D50)が6.8μmのトナー母粒子の粉体を得た。
【0074】
得られた粉体100質量部に、外添剤「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、平均粒子径16nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、体積中位粒子径(D50)6.8μmのトナー粒子を得た。得られた各トナー粒子について、以下の評価を実施した。結果を表3及び表4に示す。
【0075】
<最低定着温度(MFT)>
ベルトタイプ定着器(三星電子社製、カラーレーザ660モデル(商品名)の定着器)を使用して、100%ソリッドパターンのテスト用未定着画像を、60g紙(Boise社製、X-9(商品名))のテスト用紙に、定着速度160mm/秒、定着時間0.08秒の条件で定着させた。テスト用未定着画像の定着は、110℃から180℃の範囲における1℃間隔の各温度で行った。定着された画像の初期の光学密度を測定した。その後、画像部位に3M 810テープを付け、500gの錘を5回往復動させた後、テープを除去した。その後、テープ除去後の光学密度を測定した。以下の式で求められる定着性(%)が90%以上となる最も低い温度を最低定着温度(MFT)とした。
定着性(%)=(初期の光学密度/テープ除去後の光学密度)×100
MFTが135℃以下であれば低温定着性が優れているといえる。
【0076】
<耐熱保管性>
トナーを温度50℃/湿度80RH%の環境下で100時間放置したときの凝集度の変化を測定した。凝集度は、POWDER TESTER(ホソカワミクロン社製、篩53,45,38μm)を使用した。上から53μm、45μm、38μmの順に篩を重ねてセットし、一番上の篩の上にトナー2gを乗せ、篩を振動したときのそれぞれの篩に残ったトナーの質量を測定し(振幅1mm、振動時間40秒間)、下記式に従って凝集度を算出した。
凝集度=(T/2+C/2×(3/5)+B/2×(1/5))/100
式中、T:上段の篩に残ったトナー粒子の質量、C:中断の篩に残ったトナー粒子の質量、B:下段の篩に残ったトナー粒子の質量を表す。
100時間放置した後の凝集度が30以下であれば、耐熱保管性が優れているといえる。
【0077】
【0078】
【0079】
表3及び表4中、「結着樹脂中のPET由来のTPA+EGの含有量(質量%)」は、結着樹脂全量を基準とした、ポリエチレンテレフタレートに由来するテレフタル酸及びエチレングリコールの合計量の含有量を表し、[(PETの仕込量-留去したエチレングリコールの量)/(重縮合成分の総仕込み量-留去したエチレングリコールの量-縮合により生成した水の量)]×(非結晶性ポリエステル樹脂の質量)により算出した。
【0080】
表3及び表4中、「結着樹脂中のTPA+EG量/結晶性ポリエステル樹脂量(質量比)」は、結晶性ポリエステル樹脂の含有量に対する、結着樹脂中のテレフタル酸及びエチレングリコールの合計量の質量比を表し、[(非結晶性ポリエステル樹脂のTPA+EGの比率(質量比))×非結晶性ポリエステル樹脂の質量]/結晶性ポリエステル樹脂の質量により算出した。
【0081】
上記で示されているように、一実施形態に係るトナー粒子は、低温定着性及び耐熱保管性に優れたトナー粒子であり得る。
【0082】
以上、トナー粒子、トナーカートリッジ等の様々な例について具体的に説明したが、特許請求の範囲の精神の範囲を逸脱しない範囲において種々の変形及び変更が可能であることは当業者にとって明らかである。すなわち、特許請求の範囲に記載した精神を逸脱しない範囲内において全ての変更が含まれることが意図される。