(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166703
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/24 20060101AFI20231115BHJP
F16L 37/12 20060101ALI20231115BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20231115BHJP
【FI】
F16L55/24 A
F16L37/12
F16H57/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077400
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】政木 朋崇
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘晴
【テーマコード(参考)】
3J063
3J106
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AC01
3J063AC03
3J063BA01
3J063BA03
3J063BA11
3J063BB12
3J063BB48
3J063XA01
3J063XA11
3J063XE04
3J063XF22
3J106BA10
3J106BB01
3J106BC04
3J106BC20
3J106BD01
(57)【要約】
【課題】フィルタの変形を抑制しつつ被接続管部に対するフィルタ装置の接続作業性を向上できると共に振動の影響も受けにくい、フィルタ装置を提供する。
【解決手段】このフィルタ装置10は筒状本体20を有しており、筒状本体20は、被接続管部5に挿入される挿入管部30と、開口47を有する枠状をなすと共に、開口47にフィルタ49が装着されたフィルタ装着部40と、挿入管部30及びフィルタ装着部40を連結する連結部50と、連結部50から延出し、被係合部に係脱する係合部67を設けた、延出部60とを有しており、連結部50に、挿入管部30を被接続管部5に挿入するときに、筒状本体20を把持するための把持部が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなすと共に外周に被係合部が形成された被接続管部に接続されるフィルタ装置であって、
筒状に延びる筒状本体を有しており、
該筒状本体は、
軸方向の基端部に設けられた、前記被接続管部に挿入される挿入管部と、
軸方向の先端部に設けられ、開口を有する枠状をなすと共に、前記開口にフィルタが装着されたフィルタ装着部と、
前記挿入管部及び前記フィルタ装着部を連結する連結部と、
該前記連結部から延出し、前記被係合部に係脱する係合部を形成した、延出部とを有しており、
前記連結部又は前記延出部に、前記挿入管部を前記被接続管部に挿入するときに、前記筒状本体を把持するための把持部が設けられていることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記把持部は、前記連結部に設けられていると共に、前記挿入管部に向けて拡開するような外面を有している請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記フィルタ装着部は、軸方向に延びる軸方向フレームを有しており、
前記把持部は、前記軸方向フレームに対して、周方向に整合する位置に設けられている請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記把持部は、前記軸方向フレームよりも幅広に形成されている請求項3記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記延出部には、前記フィルタ装着部の外径よりも大径の環状部が設けられている請求項1~4のいずれか1つに記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記フィルタ装着部は、所定箇所に前記開口を1つ有しており、
前記被接続管部と前記挿入管部との間には、前記被係合部に前記係合部が係合して前記被接続管部に前記フィルタ装置が装着されたときに、前記被接続管部に対する前記挿入管部の周方向位置を規制する、位置決め部が設けられている、請求項1~4のいずれか1つに記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状をなすと共に外周に被係合部が形成された被接続管部に接続されるフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のトランスミッション等の油圧回路の途中や端部には、油中の異物を捕捉するための、フィルタが装着されている。
【0003】
下記特許文献1には、第1油路ポートを有する第1本体部と、第2油路ポートを有する第2本体部と、両本体部を連通させるセパレートプレートと、該セパレートプレートに形成された孔に取付けられる、軸方向一端側が開口し軸方向他端側が有底のフィルタ部材とを備えた、油圧装置が記載されている。この油圧装置におけるフィルタ部材は、円板状の底部と、環状部と、軸方向に延び、底部及び環状部の周縁部どうしを連結する複数の柱状部とを有している。また、底部と、環状部と、複数の柱状部との間に、網目状部が張設されるようになっている。
【0004】
更に、環状部の上端からは、複数の凸部が突出しており、その上部外面から爪部が突設されている。また、各柱状部の上端部外面からは、傾斜面状をなした突出部が突出している。
【0005】
そして、セパレートプレートの孔にフィルタ部材を取付ける際には、フィルタ部材の、複数の柱状部を指で把持して、孔の裏側からフィルタ部材を差し込む。それによって、孔の表側周縁に凸部の爪部が係合し、且つ、孔の裏側周縁に傾斜面状の突出部が係合して、孔にフィルタ部材が取付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の油圧装置の場合、セパレートプレートの孔に取付ける際には、フィルタ部材の複数の柱状部を把持するが、その際に、網目状部に触れてしまうことが多い。その結果、網目状部が変形するおそれがあり、フィルタの性能を維持できない可能性があった。また、フィルタ部材は、凸部の爪部と、突出部とによって、孔の周縁部に取付けるため、車両の振動に伴ってセパレートプレートが振動した場合に、振動の影響を受けやすいという不都合があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、フィルタの変形を抑制しつつ被接続管部に対するフィルタ装置の接続作業性を向上できると共に、振動の影響も受けにくい、フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、筒状をなすと共に外周に被係合部が形成された被接続管部に接続されるフィルタ装置であって、筒状に延びる筒状本体を有しており、該筒状本体は、軸方向の基端部に設けられた、前記被接続管部に挿入される挿入管部と、軸方向の先端部に設けられ、開口を有する枠状をなすと共に、前記開口にフィルタが装着されたフィルタ装着部と、前記挿入管部及び前記フィルタ装着部を連結する連結部と、該前記連結部から延出し、前記被係合部に係脱する係合部を形成した、延出部とを有しており、前記連結部又は前記延出部に、前記挿入管部を前記被接続管部に挿入するときに、前記筒状本体を把持するための把持部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、連結部又は延出部に、挿入管部を被接続管部に挿入するときに、筒状本体を把持するための把持部が設けられているので、作業者は、この把持部を把持して挿入管部を押し込むことができる。そのため、作業者は、フィルタ装着部に装着されたフィルタに触れることを極力抑えて、フィルタの変形を抑制しながら挿入管部を挿入することができる。その結果、フィルタの性能を維持しながらも、被接続管部に対するフィルタ装置の接続作業性を向上させることができる。また、フィルタ装着部とは異なる別部位である挿入管部を被接続管部に挿入するので、被接続管部側から振動が作用しても、その影響を受けにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るフィルタ装置の、一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】同フィルタ装置であって、
図1とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
【
図7】同フィルタ装置を被接続管部に接続した状態であって、フィルタ装置を
図6のA-A矢視線で見た場合の断面図である。
【
図8】本発明に係るフィルタ装置の、他の実施形態を示す斜視図である。
【
図9】本発明に係るフィルタ装置の、更に他の実施形態を示す斜視図である。
【
図12】同フィルタ装置を被接続管部に接続した状態であって、フィルタ装置を
図9のE-E矢視線で見た場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(フィルタ装置の、一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係るフィルタ装置の、一実施形態について説明する。
【0013】
図1や
図7に示すように、この実施形態におけるフィルタ装置10は、筒状をなすと共に外周に被係合部7が形成された被接続管部5に接続されるものである。
【0014】
図7には、被接続部材1として、油圧回路を有するトランスミッションケースが図示されている。この被接続部材1の所定位置には、油圧回路内を流通するオイルが出入りする流通孔3が形成されており、この流通孔3の表側周縁部から、略円筒状をなした被接続管部5が延出している。この被接続管部5の外周の延出方向途中には、環状をなした被係合部7が形成されている。この被係合部7の、延出方向先端部側の外面には、延出方向基端側に向けて次第に拡径したテーパ面7aが形成されている。
【0015】
そして、このフィルタ装置10は、筒状に延びる筒状本体20を有しており、該筒状本体20は、軸方向の基端部に設けられた、被接続管部5に挿入される挿入管部30と、軸方向の先端部に設けられ、開口47を有する枠状をなすと共に、開口47にフィルタ49が装着されたフィルタ装着部40と、軸方向の中間部に設けられ、挿入管部30及びフィルタ装着部40を連結する連結部50と、該連結部50から延出し、被係合部7に係脱する係合部67を設けた、延出部60とを有している。なお、この実施形態におけるフィルタ装着部40は、複数の開口47を有する枠状をなし、これらの複数の開口47にフィルタ49が装着されている。
【0016】
前記筒状本体20は、所定長さで延びた略円筒状をなしている。この筒状本体20の延びた方向を「延出方向」とし、この延出方向に沿った方向を「軸方向」とする。これは他の部分(連結部50や延出部60等)においても同様の意味である。
【0017】
また、筒状本体20の軸方向の基端部に設けられた挿入管部30は、その軸方向途中の外周に、環状溝形状をなしたシールリング装着溝31が形成されている。このシールリング装着溝31に、環状のシールリング35が装着されている。このシールリング35は、
図7に示すように、被接続管部5内に挿入管部30が挿入された状態で、被接続管部5の内周に密接し、被接続管部5と挿入管部30との隙間をシールする。また、挿入管部30の軸方向基端には、テーパ面33が形成されており、被接続管部5内に挿入管部30を挿入しやすくしている。
【0018】
次に、フィルタ装着部40について説明する。
【0019】
図1~3に示すように、この実施形態のフィルタ装着部40は、略円板状をなした底部41と、該底部41の外周縁部から、筒状本体20の軸方向基端側に向けて軸方向に沿って直線状に延びる、複数の軸方向フレーム43と、該軸方向フレーム43に対して直交して配置されると共に、フィルタ装着部40の周方向に延びる周方向フレーム45と、軸方向フレーム43及び周方向フレーム45の間に形成された複数の開口47とを有する、有底の略円筒枠状をなしている。軸方向フレーム43は、フィルタ装着部40の周方向に均等な間隔を空けて配置された複数のものからなる(ここでは4個)。また、軸方向フレーム43及び周方向フレーム45は、共に一定幅で延びている。
【0020】
複数の開口47に装着されるフィルタ49は、メッシュ状をなしており、これが複数の開口47を塞ぐようにして張設されている。なお、フィルタ49は、例えば、次のようにして複数の開口47に装着される。すなわち、筒状本体20を射出成形する際に、その型枠内に、予めフィルタ49をなすメッシュ部材をセットした後、筒状本体20を射出成形する(いわゆるインサート成形)。それによって、フィルタ装着部40の複数の開口47を塞ぐようにして、複数の開口47にフィルタ49が装着される。なお、フィルタ49は、軸方向フレーム43や周方向フレーム45の外周面よりも、筒状本体20の径方向内方に配置されている(
図7参照)。
【0021】
次に、連結部50について説明する。
【0022】
図1~3に示すように、この実施形態の連結部50は、筒状本体20の軸方向の中間部、すなわち、筒状本体20の軸方向基端部に配置された挿入管部30と筒状本体20の軸方向先端部に配置されたフィルタ装着部40との間に配置されるものであって、筒状をなした略円筒状をなしている。また、この連結部50の軸方向の基端部からは、円環状をなしたフランジ部51が張り出している。このフランジ部51に、前記挿入管部30の軸方向の先端部が連結されている。更に、連結部50の軸方向の先端部53に、フィルタ装着部40の軸方向の基端部(ここでは、複数の軸方向フレーム43の延出方向の基端部分)が連結されている。このように、連結部50を介して、挿入管部30とフィルタ装着部40とが互いに連結されるようになっている。
【0023】
次に、延出部60について説明する。
【0024】
図1~3に示すように、この実施形態における延出部60は、以下のような構成となっている。すなわち、この実施形態における延出部60は、連結部50の径方向に対向する箇所から、筒状本体20の軸方向の基端部側に向けて延びる、一対の延出片61,61を有している。各延出片61は、所定幅で延びる長板状をなしており、連結部50のフランジ部51に連結された先端部61aと、先端部61aに対して段部61bを介して拡開した基部61cとを有している。なお、一対の延出片61,61の先端部61a,61aどうし、及び、基部61c,61cどうしは、互いに平行に延びている。また、一対の延出片61,61は、フィルタ装着部40を構成する複数の軸方向フレーム43のうち、径方向に対向配置された所定の一対の軸方向フレーム43,43に整合するように配置されている。
【0025】
更に、一対の延出片61,61の基部61c,61cの軸方向基端部には、環状をなした環状部65が連結されている。なお、この環状部65も、延出部60の一部をなしている。
図4や
図5に示すように、この実施形態における環状部65は、長軸B1及び短軸B2を有する略楕円形をなした環状となっている。また、環状部65は、フィルタ装着部40の外径よりも大径となっている。そして、環状部65の径方向に対向する2箇所、すなわち、環状部65の長軸B1側の周方向中間に位置する連結部分66,66に、一対の延出片61,61の基部61c,61cがそれぞれ連結されている(
図3参照)。
【0026】
更に
図4に示すように、環状部65の連結部分66,66の内周側からは、被係合部7に係脱する係合部67,67がそれぞれ突設されている。
図1に示すように、各係合部67の内周面67aは、被接続管部5の外周形状に適合するように、曲面状に凹んだ形状となっている。また、各係合部67の基端側内周には、テーパ面67bが形成されており、被接続管部5に環状部65を外装しやすくなっている。
【0027】
なお、この実施形態においては、挿入管部30を被接続管部5に挿入することで、
図7に示すように、一対の係合部67,67が被接続管部5の被係合部7に係合して、被接続管部5にフィルタ装置10が接続されるようになっている。一方、
図4の矢印F2に示すように、環状部65の短軸B2側の周方向中間部分を互いに近接する方向に押すことで、長軸B1側の連結部分66,66が互いに離間するように、環状部65が撓み変形するので、被係合部7と係合部67との係合状態が解除されるようになっている。
【0028】
そして、この実施形態におけるフィルタ装置10は、上記の連結部50に、挿入管部30を被接続管部5に挿入するときに、筒状本体20を把持するための把持部70が設けられている。
【0029】
この実施形態の把持部70は、連結部50の外周であって、径方向に対向する2箇所、ここでは延出部60を構成する一対の延出片61,61に対して、周方向に整合する位置に設けられた一対のものからなる。
【0030】
また、各把持部70は、フィルタ装着部40を構成する複数の軸方向フレーム43のうち、径方向に対向配置された所定の一対の軸方向フレーム43,43に対して、筒状本体20の周方向において整合するように配置されている(
図6参照)。ここでは各把持部70の周方向中央部に、軸方向フレーム43が位置しており、各把持部70は、軸方向フレーム43よりも幅広に形成されている。
【0031】
図2及び
図3に示すように、各把持部70は、連結部50の外周に配置された把持部形成片71を有している。この把持部形成片71は、軸方向の先端71aが、連結部50の軸方向の先端部53側の外周に連結されており、軸方向の基端71bが、延出片61の軸方向の先端部61аの最先端に連結されている。各把持部形成片71の外面73は、フィルタ装着部40側が窄まり且つ挿入管部30に向けて拡開する形状となっている。更に、この外面73は、筒状本体20の径方向内方に向けてやや凹んだ、凹み曲面状をなしている。また、
図6に示すように、把持部形成片71の外面73には、把持部70の周方向に沿って延びる突条部75が、把持部70の軸方向に所定間隔を空けて複数配置されている。
【0032】
そして、作業者は、挿入管部30を被接続管部5に挿入すべく、筒状本体20を把持する際には、主として、上記一対の把持部70,70を指等で摘まんで把持することになり、これらの一対の把持部70,70を介して、作業者の指等からの押し込み力が付与されるようになっている。特に、各把持部70の複数の突条部75を、指等で押すことになる。なお、把持部70の外面73に形成した複数の突条部75は、把持部70を把持したり指等で押したりする際の、滑り止めをなす。
【0033】
また、
図2や
図3に示すように、各把持部形成片71の内面の周方向中央部と、連結部50の外面とは、各把持部70よりも幅狭の、薄肉板状をなしたリブ77によって、それぞれ連結されている。各リブ77は、
図3に示すようにフィルタ装置10を側方から見たときに、略三角形の板状をなしている。また、各リブ77は、所定の一対の軸方向フレーム43,43に対して、筒状本体20の周方向に整合配置されている。
【0034】
以上説明した、挿入管部30、フィルタ装着部40、連結部50は、軸方向に連設されて一体的に形成されて、全体として略円筒状をなした筒状本体20を構成するようになっており、また、各部30,40,50は、筒状本体20の軸方向において異なる位置に配置されている。
【0035】
(変形例)
本発明におけるフィルタ装置を構成する筒状本体や、挿入管部、フィルタ装着部、連結部、延出部、把持部の、形状や構造、レイアウトなどは、上記態様に限定されるものではない。
【0036】
なお、この実施形態におけるフィルタ装置10は、減速機のギアボックスである被接続部材1に形成した被接続管部5に接続されるようになっているが、例えば、トランスミッションケースや、燃料噴射弁の燃料供給口等に接続してもよく、その接続箇所は特に限定されない。
【0037】
また、筒状本体20は全体として略円筒状をなしているが、例えば、角筒状をなしていてもよく、挿入管部、フィルタ装着部、連結部等を有していればよい。
【0038】
更に、フィルタ装着部40は、複数の軸方向フレーム43及び周方向フレーム45を有し、複数の開口47を有する枠状をなしているが、例えば、フィルタ装着部としては、軸方向フレーム又は周方向フレームの一方のみを用いたり、また、斜めに延びるフレームを、軸方向フレームや周方向フレームと組み合わせて用いたりしてもよく、1つの又は複数の開口を有しフィルタが装着可能であればよい。
【0039】
また、この実施形態における把持部70は、連結部50に設けられているが、延出部に設けられていてもよい(これは他の実施形態で説明する)。更に、この実施形態では、一対の把持部70,70を有しているが、把持部としては、1個でも3個以上でもよい。
【0040】
また、把持部70を形成する把持部形成片71の外面73は、この実施形態の場合、筒状本体の径方向内方に向けて凹んだ凹曲面状をなしているが、例えば、把持部の外面としては、挿入管部側へ向けて次第に拡開する傾斜面状としたり、挿入管部側へ向けて階段状をなすように拡開した形状としたり、挿入管部へ向けて拡開し且つ筒状本体の径方向外方に向けて凸となった凸曲面状としたりしてもよい。
【0041】
更に、把持部70の外面73には、周方向に延びる複数の突条部75を有するが、例えば、把持部の外面に、複数の突起を設けたり、ローレット加工やエンボス加工を施したりしてもよい。
【0042】
(作用効果)
次に、上記構成からなるフィルタ装置10の作用効果について説明する。
【0043】
まず、シールリング装着溝31にシールリング35を装着しておくと共に、筒状本体20の一対の把持部70,70を指等で摘まんで、
図1の矢印F1に示すように、挿入管部30を、軸方向基端部側から被接続管部5内に挿入し、同被接続管部5に対して筒状本体20を押し込んでいく。すると、各係合部67のテーパ面67bや内周面67aが、被接続管部5の先端部外周に押圧されて、環状部65が押し広げられるように撓み変形する。そして、係合部67が被接続管部5の被係合部7に至ると、環状部65が弾性復帰して、一対の係合部67,67が被係合部7に係合するので、被接続管部5にフィルタ装置10を接続することができる(
図7参照)。
【0044】
そして、このフィルタ装置10では、上述したように、連結部50に、挿入管部30を被接続管部5に挿入するときに、筒状本体20を把持するための把持部70が設けられているので、作業者は、この把持部70を把持して挿入管部30を、被接続管部5に対して押し込むことができる。
【0045】
そのため、作業者は、フィルタ装着部40に装着されたフィルタ49に触れることを極力抑えて、フィルタ49の変形を抑制しながら、被接続管部5に挿入管部30を挿入することができる。その結果、フィルタ49の性能(コンタミや粉塵等の異物の捕捉性や、流体の流通性等)を維持しながらも、被接続管部5に対するフィルタ装置10の接続作業性を向上させることができる。
【0046】
また、フィルタ装着部40とは異なる、別部位である挿入管部30を被接続管部5に挿入するので、被接続管部5側から振動が作用しても、その影響を受けにくくなる。その結果、振動によるフィルタ49の変形を抑制して、その性能を維持することができる。
【0047】
なお、メンテナンスや部品交換等で、被接続管部5からフィルタ装置10を取外したい場合には、
図4の矢印F2に示すように、環状部65の短軸B2側の周方向中間部分を互いに近接する方向に押す。それによって、長軸B1側の連結部分66,66が互いに離間するように、環状部65が撓み変形するので、被係合部7と係合部67との係合状態が解除されて、被接続管部5からフィルタ装置10を取外すことができる。
【0048】
また、この実施形態においては、把持部70は、連結部50に設けられていると共に、挿入管部30に向けて拡開するような外面73を有している。
【0049】
上記態様によれば、挿入管部30を被接続管部5に挿入すべく筒状本体20を把持するときに、筒状本体20の挿入方向F1(被接続管部5に対する筒状本体20の挿入方向F1)の手前側、すなわち、筒状本体20の挿入方向F1とは反対側を把持することができるので、被接続管部5に対して挿入管部30を押し込みやすくなり、被接続管部5に対するフィルタ装置10の接続作業性をより向上させることができる。
【0050】
更に、この実施形態においては、フィルタ装着部40は、軸方向に延びる軸方向フレーム43を有しており、把持部70は、軸方向フレーム43に対して、周方向に整合する位置に設けられている(
図6参照)。
【0051】
上記態様によれば、把持部70は、フィルタ装着部40の軸方向フレーム43に対して、周方向に整合する位置に設けられているので、被接続管部5に挿入管部30挿入するときに、フィルタ49に作業者の指等を、より当たりにくくすることができる(指等が軸方向フレーム43に接触するため、その分だけ指等がフィルタ49に当たりにくくなる)。そのため、フィルタ49の変形をより抑制することができると共に、軸方向フレーム43を設けた分だけ、筒状本体20を把持しやすくなり、被接続管部5に対するフィルタ装置10の接続作業性をより一層向上させることができる。
【0052】
また、この実施形態においては、
図6に示すように、把持部70は、軸方向フレーム43よりも幅広に形成されている。
【0053】
上記態様によれば、把持部70は、軸方向フレーム43よりも幅広に形成されているので、フィルタ49に作業者の指等をより当たりにくくすることができる。その結果、フィルタ49の変形をより一層抑制することができると共に、筒状本体20がより把持しやすくなって、被接続管部5に対するフィルタ装置10の接続作業性を更に向上させることができる。
【0054】
更に、この実施形態においては、延出部60には、フィルタ装着部40の外径よりも大径の環状部65が設けられている。
【0055】
上記態様によれば、延出部60には、フィルタ装着部40の外径よりも大径の環状部65が設けられているので、被接続管部5からフィルタ装置10が脱落した場合や、被接続管部5に対するフィルタ装置10の接続作業の際に、誤ってフィルタ装置10が落下した場合等に、環状部65が床等に接触しやすくなる。その結果、環状部65によって、落下時の衝撃を吸収することができるので、フィルタ49を保護することができる。
【0056】
(フィルタ装置の他の実施形態)
図8には、本発明に係るフィルタ装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0057】
この実施形態のフィルタ装置10Aは、把持部70Aが、延出部60Aに設けられている点が、前記実施形態と異なっている。
【0058】
より具体的には、延出部60Aを構成する環状部65の外周であって、一対の係合部67,67に対して直交する位置に、一対の把持部70A,70Aが設けられている。すなわち、長軸B1及び短軸B2を有する略楕円形をなした環状部65の、短軸B2側の周方向中間部の外周に、一対の把持部70A,70Aが設けられている。また、各把持部70Aは、複数の突条部75を有しており、各突条部75は、把持部70Aの幅方向(筒状本体20の軸方向に沿った方向)に沿って延びている。
【0059】
このフィルタ装置10Aにおいても、前記実施形態と同様の作用効果、すなわち、フィルタ49の変形を抑制し、フィルタ49の性能を維持しつつ、被接続管部5に対するフィルタ装置10Aの接続作業性を向上させることができる。
【0060】
また、一対の把持部70A,70Aが、環状部65の、短軸B2側の周方向中央部の外周に設けられているので、被接続管部5からフィルタ装置10を取外すべく、環状部65の短軸B2側の周方向中間部分を互いに近接する方向に押す際に、押しやすくなる。その結果、被接続管部5からのフィルタ装置10の取外し作業性を向上させることができる。
【0061】
(フィルタ装置の更に他の実施形態)
図9~12には、本発明に係るフィルタ装置の、更に他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0062】
この実施形態のフィルタ装置10Aは、フィルタ装着部40Bの構造が前記実施形態と異なっている。すなわち、この実施形態におけるフィルタ装着部40Bは、その所定箇所に開口47を1つ有している。具体的には、この実施形態のフィルタ装置40Bは、径方向の所定箇所に設けられた1つの開口47と、この開口47に対して径方向の反対側に設けられた壁部42とを有している。より具体的には、このフィルタ装着部40Bは、略円板状をなした側部41Bと、該側部41Bの外周縁部から軸方向に延設した略半円筒状をなした壁部42とを有しており、壁部42に対して径方向の反対側に、筒状本体20の軸方向に延びる長孔状をなした1つの開口47が設けられている。そして、この1つの開口47を塞ぐように、メッシュ状のフィルタ49が装着されている。
【0063】
また、被接続管部5と挿入管部30との間には、被係合部7に係合部67が係合して被接続管部5にフィルタ装置10Bが装着されたときに、被接続管部5に対する挿入管部30の周方向位置を規制する、位置決め部が設けられている。より具体的には、被接続管部5と挿入管部30との間には、被係合部7に係合部67が係合して被接続管部5にフィルタ装置10Bが装着されたときに、前記壁部42が、被接続管部5及び筒状本体20の内部を流動する流体の液面R(
図12参照)に向くように、被接続管部5に対して挿入管部30を位置決めする、位置決め部が設けられている。更に、この実施形態では、上記のような位置決め部によって、被接続管部5に挿入管部30が位置決めされた状態で、前記1つの開口47が、被接続管部5及び筒状本体20の内部を流動する流体に液没するように構成されている。
【0064】
上記の位置決め部について、より具体的に説明する。この実施形態においては、
図9に示すように、被接続管部5の内周の所定位置に、被接続管部5の軸方向に沿って一定長さで延び且つ周方向に一定幅で突出した、突条をなした位置決め凸部8が設けられている。また、この実施形態における被接続管部5は、
図12に示すように、その軸方向が横向きとなるように配置される。すなわち、被接続管部5は、その軸方向が水平に沿った向き、或いは、それに近い向きで配置されるようになっている。更に、前記位置決め凸部8は、横向きに配置される被接続管部5の内周において、周方向の上方位置に設けられている(
図12参照)。
【0065】
一方、挿入管部30の軸方向基端部の周方向所定位置には、
図9に示すように、挿入管部30の軸方向基端34aから軸方向先端に向けて、一定長さで延び且つ周方向に一定幅で切欠いて形成され、前記位置決め凸部8が嵌合する、位置決め凹部34が設けられている。なお、位置決め凹部34は、挿入管部30の軸方向基端部であって、フィルタ装着部40Bに設けた壁部42の、周方向中央に位置する天井部42а(
図10参照)に整合する位置に設けられている。
【0066】
そして、
図11に示すように、被接続管部5の位置決め凸部8に、挿入管部30の位置決め凹部34を位置合わせした状態で、被接続管部5に挿入管部30を挿入することで、位置決め凸部8が位置決め凹部34に嵌合して、被接続管部5に対して挿入管部30の周方向位置が規制される。ここでは、被接続管部5に対して挿入管部30が回転しないように、回転規制される。このとき、
図12に示すように、フィルタ装着部40Bの壁部42(ここでは壁部42の天井部42а)が流体の液面Rに向くように、対向して配置されると共に、フィルタ装着部40Bに設けた1つの開口47が、被接続管部5及び筒状本体20の内部を流動する流体に液没するように配置される。
【0067】
上記のように、この実施形態では、位置決め凸部8及び位置決め凹部34が、本発明における「位置決め部」をなしている。なお、「位置決め部」としては、例えば、被接続管部側に位置決め凹部を設け、挿入管部側に、位置決め凹部に嵌合する位置決め凸部を設けてもよい。また、位置決め部の形状や構造も、上記のような凹凸嵌合構造に限定されず、例えば、(1)被接続管部又は挿入管部の一方の管部に、径方向及び/又は径方向に所定深さで穴を形成する一方、他方の管部に前記穴に嵌入する突部を設けたり、(2)被接続管部又は挿入管部の一方の管部に一対のリブを設ける一方、他方の管部に前記一対のリブ部間に嵌入する突部を形成したりしてもよい。
【0068】
そして、この実施形態においては、フィルタ装着部40Bは、所定箇所に開口47を1つ有しているので、フィルタ49の必要面積を極力抑えて、フィルタ装置10Bのコスト低減を図ることができると共に、開口47へのフィルタ49の装着作業性を高めることができる。また、被接続管部5と挿入管部30との間には、被係合部7に係合部67が係合して被接続管部5にフィルタ装置10Bが装着されたときに、被接続管部5に対する挿入管部30の周方向位置を規制する、位置決め部が設けられているので、被接続管部5及び筒状本体20の内部を流動する流体の液面Rの位置や流動方向等に柔軟に対応して、フィルタ49を、その性能を発揮し得る最適なレイアウトで、適切に配置することができる。
【0069】
また、この実施形態においては、フィルタ装着部40Bは、開口47を1つのみ有しているので、フィルタ49が装着される開口47とは径方向反対側に位置する壁部42の、面積を広く確保することができる。そのため、挿入管部30を被接続管部5に挿入すべく、連結部50に設けられた把持部70を把持する際に、壁部42にも指等を乗せて、筒状本体20を把持しやすくすることができる(例えば、一対の把持部70,70を親指及び中指で把持し、人指し指を壁部42に乗せることで、筒状本体20を把持しやすくなる)。また、壁部42によって、作業者の指等がフィルタ49に触れることを、より一層抑制することができる。
【0070】
更に、この実施形態の場合、位置決め凸部8及び位置決め凹部34からなる位置決め部によって、壁部42が流体の液面Rに向くように、被接続管部5に対して挿入管部30が位置決めされるので、特に被接続管部5が横向きにレイアウトされた態様において、壁部42が液面Rの上方に配置され、フィルタ49が下方に位置して流体に液没するように配置させることができる。その結果、被接続管部5が横向きにレイアウトされた場合に、フィルタ49の性能を無駄なく発揮させることができる。仮に、被接続管部5が横向きレイアウトである場合に、壁部42が下方に配置され、フィルタ49が上方に配置される態様だと、壁部42が邪魔となるため、フィルタ49の性能を十分に発揮できない。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
5 被接続管部
7 被係合部
8 位置決め凸部(位置決め部)
10,10A,10B フィルタ装置
20 筒状本体
30 挿入管部
34 位置決め凹部
40,40B フィルタ装着部
43 軸方向フレーム
47 開口
49 フィルタ
50 連結部
60,60A 延出部
67 係合部
70,70A 把持部
73 外面