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特開2023-166725消火薬剤貯蔵容器及びそれを含む消火設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166725
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】消火薬剤貯蔵容器及びそれを含む消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/76 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
A62C13/76 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077443
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000114905
【氏名又は名称】ヤマトプロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】松井 奨
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 辰基
(57)【要約】
【課題】 消火薬剤貯蔵容器において容器内面の防錆処理を簡略化するとともに容器の封止のためのパッキンを省略する。
【解決手段】 有底筒状を呈し、開口端から内側に突出する突出片を有する本体と、前記本体内に収納される袋本体、及び、前記袋本体の上端から延びて前記突出片の上面を覆う鍔部、を有する高分子材料製の袋と、前記袋内に充填される消火薬剤と、前記本体の前記開口端を覆い、前記突出片との間に前記鍔部を挟み込む蓋と、前記蓋に装着されて、ユーザ操作に応じて前記袋内の前記消火薬剤を外部に噴出させるバルブと、を具備することを特徴とする消火薬剤貯蔵容器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状を呈し、開口端から内側に突出する突出片を有する本体と、
前記本体内に収納される袋本体、及び、前記袋本体の上端から延びて前記突出片の上面を覆う鍔部、を有する高分子材料製の袋と、
前記袋内に充填される消火薬剤と、
前記本体の前記開口端を覆い、前記突出片との間に前記鍔部を挟み込む蓋と、
前記蓋に装着されて、ユーザ操作に応じて前記袋内の前記消火薬剤を外部に噴出させるバルブと、
を具備することを特徴とする消火薬剤貯蔵容器。
【請求項2】
前記本体が、前記突出片の上面から突出する複数の軸部を有し、
前記鍔部が、前記複数の軸部に対応する複数の孔を有し、
前記複数の孔に前記複数の軸部が挿通された状態で、前記袋が前記蓋により前記本体上に固定されること、
を特徴とする請求項1に記載の消火薬剤貯蔵容器。
【請求項3】
前記鍔部が、その上面及び下面のうち少なくとも一方に、周方向に沿って形成された隆起部を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の消火薬剤貯蔵容器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の消火薬剤貯蔵容器を含む消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火薬剤貯蔵容器及びそれを含む消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
消火器などの消火薬剤貯蔵容器では、容器の口部を、主にゴム材料のパッキンでシールしている。
ところで、容器には腐食性の消火薬剤が充填されている。一般的に容器は鉄、鋼、アルミニウム等の金属材料で作製されていることから、腐食防止のために、容器の内面に例えば塗装等の防錆処理を行っている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-164539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器内面に防錆処理を行う際には、下地処理として、鉄や鋼やアルミニウムの化成処理(例えばリン酸皮膜処理等)を行って、塗料の密着性等の表面性状を改善する必要がある。このように下地処理から防錆処理までには多くの工程がある。また、下地処理により容器内面に付着した塗膜にピンホールがあると、腐食が進むおそれがある。そのため、防錆処理には多大な時間及びコストを要する。
【0005】
そこで、本発明は、消火薬剤貯蔵容器において容器内面の防錆処理を簡略化するとともに容器の封止のためのパッキンを省略することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明は、
有底筒状を呈し、開口端から内側に突出する突出片を有する本体と、
前記本体内に収納される袋本体、及び、前記袋本体の上端から延びて前記突出片の上面を覆う鍔部、を有する高分子材料製の袋と、
前記袋内に充填される消火薬剤と、
前記本体の前記開口端を覆い、前記突出片との間に前記鍔部を挟み込む蓋と、
前記蓋に装着されて、ユーザ操作に応じて前記袋内の前記消火薬剤を外部に噴出させるバルブと、
を具備することを特徴とする消火薬剤貯蔵容器、を提供する。
【0007】
本発明の消火薬剤貯蔵容器では、前記本体が、前記突出片の上面から突出する複数の軸部を有し、前記鍔部が、前記複数の軸部に対応する複数の孔を有し、前記複数の孔に前記複数の軸部が挿通された状態で、前記袋が前記蓋により前記本体上に固定されること、が好ましい。
【0008】
また、本発明の消火薬剤貯蔵容器では、前記鍔部が、その上面及び下面のうち少なくとも一方に、周方向に沿って形成された隆起部を有すること、が好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記のいずれかに記載の消火薬剤貯蔵容器を含む消火設備をも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器内面の防錆処理を簡略化するとともに容器の封止のためのパッキンを省略することができる。これにより、消火薬剤貯蔵容器の製造コストを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の代表的な実施形態に係る消火設備1の概略を示す正面図、格納箱6の扉を省略した正面図、及び、格納箱6の側壁を省略した側面図である。
図2】消火薬剤貯蔵容器2の正面図、上面図、及び断面図である。
図3】本体11の正面図、上面図、及び断面図である。
図4】袋12の正面図、上面図、及び断面図である。
図5】本体11に袋12を装着した状態の正面図、上面図、及び断面図である。
図6】消火薬剤貯蔵容器2の組立手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る消火薬剤貯蔵容器及び消火設備を、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明はこれら図面に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0013】
本実施形態では、消火設備1としてパッケージ型消火設備を想定しているが、本発明は他のタイプの消火設備にも適用できる。なお、パッケージ型消火設備は屋内消火栓設備の代替として設置できるものである。
【0014】
図1(A)~(C)に示すように、パッケージ型消火設備としての消火設備1は、消火薬剤貯蔵容器2、加圧用ガス容器3、ホース4、ノズル5及び格納箱6から構成されている。図上では消火薬剤貯蔵容器2は複数本設けられているが、1本でもよい。
【0015】
この消火設備1では、加圧用ガス容器3に充填されたガスを圧力調整器(図示せず)を通して消火薬剤貯蔵容器2内に導入し、そのガス圧力により消火薬剤をホース4の先端のノズル5より放射する。加圧用ガス容器3、ホース4、ノズル5及び格納箱6については既製品を利用可能であるので、詳細な説明を省略する。
【0016】
以下、消火薬剤貯蔵容器2について詳細に説明する。
消火薬剤貯蔵容器2は、消火薬剤13を貯蔵し、ユーザ操作に応じて消火薬剤13を外部に噴射する。図2(A)~(C)に示すように、消火薬剤貯蔵容器2は、本体11、袋12、消火薬剤13、蓋14及びバルブ15を含む。
【0017】
図3(A)~(C)に示すように、本体11は、有底筒状をなし、脚部112を介して格納箱6に固定されている。
【0018】
本体11は、開口端113から内側に突出する突出片114を有する。突出片114は、本体11の封止の観点から、開口端113の全周に亘って形成されることが好ましいが、開口端113の一部に形成されていてもよい。
【0019】
突出片114の上面からは、複数の軸部115が突出している。複数の軸部115は、等間隔に配置されていることが好ましい。複数の軸部115にはネジ溝(図示せず)が形成されており、ナット116と係合する(例えば図2(C)の拡大図を参照)。
【0020】
本体11は、金属製であり、例えば鉄、鋼、アルミニウム又はこれらの合金で作製されていてもよい。本体11は、所定の内圧(例えば1MPa程度)に耐えるように設計されている。
【0021】
本体11の内面には、防錆処理が施されていてもよいし、省略されてもよい。また、本体11の内面が防錆処理される場合でも、追って述べるように消火薬剤13が本体11の内面に直接的には接触しないことから、防錆処理は簡略化されてよい。
【0022】
本体11には、高分子材料製の袋12が収納されている(図2(C)及び図5(C)参照)。この高分子材料は樹脂(エラストマー樹脂を含む。)であってもゴムであってもよい。袋12は、本体11の開口端113から本体11内に挿入可能な程度の柔軟性乃至は可撓性を有するとともに、消火薬剤13に対して腐食耐性を有する。袋12は、全体として風船のような外形を有しており、例えば本体11の内面に対応した形状でもよい(図4参照)。
【0023】
袋12は、本体11内に収納される略有底円筒状の袋本体121、及び、袋本体121の上端から内側に延びて外側に折り返されるように延びることにより、袋本体121の径よりも小さな開口を有する鍔部122、を具備しており、この鍔部122は、所定の幅を有する円環状であり、突出片114の上面を覆う(図4(A)~(C)参照)。鍔部122は、封止性能及び強度確保の観点から、袋本体121よりも肉厚にするか熱溶融させる等して高強度に形成されることが好ましい(図4(C)の拡大図を参照)。例えば、袋本体121の厚みT1は0.5~1.5mm、鍔部122の厚みT2は2~4mmである。
【0024】
鍔部122は、複数の軸部115に対応する位置に複数の孔123を有する(図4(B)参照)。複数の孔123に複数の軸部115が挿通されることで、袋12が本体11に適切に位置決め及び固定(回転防止)されるとともに、本体11の開口端113の封止を周方向に満遍なく実施できる。
【0025】
鍔部122は、その上面及び下面のうち少なくとも一方に、周方向に沿って形成された環状の隆起部124を有する(図4(B)参照)。隆起部124は、消火薬剤貯蔵容器2の封止性能を高めるために設けられている。ここでは隆起部124は鍔部122の上下両面に形成されている(図4(C)の拡大図を参照)。例えば、隆起部124は鍔部122の表面から1mm~2mmほど突出していてもよい。
したがって、複数の孔123に複数の軸部115が挿通された状態で、袋12は、蓋14により本体11上に固定されることとなる。
【0026】
袋12は、上記のように、樹脂又はゴム等の高分子材料で構成することができるが、袋本体121においては十分な柔軟性を有し、かつ、鍔部122において本体11の開口端113を封止できる程度の厚みを有した一体成形品である。つまり、袋12は、本体11の封止と本体11の内面の防錆との両方の機能を有する。
これにより、容器11の内面の防錆処理をする必要性を無くし、そうでないとしても簡略化された防錆処理で足り、したがって消火薬剤貯蔵容器2の製造工程の削減を図ることが可能となる。このことは、消火薬剤貯蔵容器2及び消火設備1の製造のための時間及びコストの削減に寄与する。
【0027】
袋12は、例えばアクリロニトリル・ブタジエンゴム等のゴムで構成されているのが好ましいが、これに限られない。他の樹脂又はゴムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレンプロピレンゴム、スチレンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、などが考えられる。
【0028】
袋12内に充填される消火薬剤13は、粉末でも液体でもよいが、ここでは第三種浸潤剤等入り水が好適に使用される。つまり、本実施形態では、本体11と消火薬剤13との間には袋12が介在し、本体11と消火薬剤13とが直接的に接触しないように設計されている。
【0029】
蓋14は、本体11の開口端113を覆う(図2(A)~(C)参照)。すなわち、蓋14は、突出片114との間に鍔部122を挟み込み、これにより本体11を封止する。かかる蓋14は、鍔部122に密着する環状部141と、環状部141の内縁から上方に隆起する凸状部142と、を含む。
【0030】
環状部141には、本体11の複数の軸部115に対応する複数の孔143が形成されている。したがって、本体11に袋12を装着し、更に蓋14をした状態で、複数の軸部115にナット116を取り付けることで、蓋14を本体11に固定することができる。
なお、凸状部142の中央にはバルブ15を装着するための孔(図示せず)が形成されている。
【0031】
蓋14の凸状部142にはバルブ15が装着されている。バルブ15は、本体11内を封止するとともに、ユーザ操作に応じて袋12内の消火薬剤13を外部に噴出させる。
バルブ15には、本体11(袋12)内の消火薬剤13をバルブ15に導くためのサイホン管151が接続されている。また、バルブ15には、先端にノズル5を有するホース4、及び、加圧用ガス容器3を繋ぐチューブが連結されている。
【0032】
ここで、図6(A)~(C)を参照して消火薬剤貯蔵容器2の組立手順を説明する。
まず、本体11を準備する。本体11の内面には防錆処理を施しても施さなくてもよいが、袋12が消火薬剤13と本体11との間に介在するため、防錆処理は従来に比べて簡潔でよい。したがって、防錆処理に要する時間及びコストを削減することが可能となる。
【0033】
次いで、本体11の開口端113から袋12を挿入する(図6(A)参照)。袋本体121は十分な柔軟性を有するため、また、本体11の開口端113は比較的広く開口しているため、袋本体121の本体11内への挿入はスムーズに行われる。このとき、袋12の鍔部122の孔123を本体11の複数の軸部115に挿通させ、本体11の突出片114を鍔部122で覆うようにしておく。
【0034】
次に、本体11(袋12)の開口端113から袋12の中に消火薬剤13を注入する。
そして、一体化された蓋14、バルブ15及びサイホン管151を本体11(袋12)内に挿入する(図6(B)参照)。あるいは、蓋14を本体11に取り付け、バルブ15及びサイホン管151を蓋14に取り付けてもよい。いずれの場合でも、本体11(袋12)の開口端113は比較的広く開口しているため、サイホン管151の先端で袋12を傷付けることを抑制することができる。なお、このとき、蓋14の環状部141の孔143を本体11の突出片114の複数の軸部115に挿通させておく。
【0035】
そして、蓋14から突出した複数の軸部115にナット116をねじ込み、蓋14と本体11とを一体化する(図6(C)参照)。このとき、蓋14の環状部141と本体11の突出片114との間に袋12の鍔部122が挟みこまれ、本体11内が封止される。したがって、パッキン等のシール材を省略することができる。
このようにして消火薬剤貯蔵容器2が完成する。
【0036】
消火設備1の操作方法を説明する。
まず、加圧用ガス容器3のハンドルを回し全開する。これにより、ガスが加圧用ガス容器3から消火薬剤貯蔵容器2に流入し、消火薬剤貯蔵容器2内の圧力が上昇する。
次いで、ノズル5を持ちホース4を取り出し、ノズル5のコックを全開する。これにより、消火薬剤貯蔵容器2の消火薬剤13がホース4を通ってノズル5から火元に放射される。
【0037】
使用後には次の処理を行う。
まず、加圧用ガス容器3のハンドルを回して閉にする。次いで、ノズル5のコックを開き、消火薬剤13及び残圧を完全に排出する。
そして、消火薬剤13の再充填を行う場合には、消火薬剤貯蔵容器2を格納箱6から取り出し、水洗いし、新しい消火薬剤13を充填する。
また、ホース4、ノズル5等を水洗いするとともに、加圧用ガス容器3を新しいものと取りかえる。
【0038】
本実施形態によれば、消火薬剤貯蔵容器2の本体11内面の防錆処理を簡略化するとともに消火薬剤貯蔵容器2の封止のためのパッキンを省略することができる。これにより、消火薬剤貯蔵容器2の製造コストを削減することが可能となる。
【0039】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それらも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 消火設備
2 消火薬剤貯蔵容器
3 加圧用ガス容器
4 ホース
5 ノズル
6 格納箱
11 本体
12 袋
13 消火薬剤
14 蓋
15 バルブ
114 突出片
122 鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6