(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166737
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】燃料ガス充填システム
(51)【国際特許分類】
B67D 9/00 20100101AFI20231115BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20231115BHJP
B63B 27/24 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B67D9/00 A
F17C5/06
B63B27/24 B
B67D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077468
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 恒治
【テーマコード(参考)】
3E083
3E172
【Fターム(参考)】
3E083BB15
3E083BB20
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD01
3E172EA02
3E172EA14
3E172EA24
3E172JA08
(57)【要約】
【課題】船舶の燃料タンクに対する燃料ガスの充填を安全に行う。
【解決手段】係船柱55に係留用ロープ56を用いて係留された船舶51の燃料タンク52に対し、ガス蓄圧器2に貯留された燃料ガス(水素ガス)を充填する燃料ガス充填システム1において、係船柱55に対して係留用ロープ56を外れ止めするラッチ機構16を備えている。この構成によれば、船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填が行われる間、係留用ロープ56が係船柱55から離脱してしまうのをラッチ機構16によって阻止することができる。この結果、燃料タンク52に対する水素ガスの充填中に、不用意に船舶51が埠頭50から離岸して充填ホース9が破損する事態を防止することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係船柱に係留用ロープを用いて係留された船舶の燃料タンクに対し、ガス蓄圧器に貯留された燃料ガスを充填する燃料ガス充填システムにおいて、
前記係船柱に対して前記係留用ロープを外れ止めするラッチ機構を備えたことを特徴とする燃料ガス充填システム。
【請求項2】
前記燃料ガスは、先端に前記燃料タンクの充填口に接続される充填カップリングが設けられた充填ホースを用いて前記燃料タンクに充填される構成とし、
前記ラッチ機構は、前記充填カップリングが前記燃料タンクの前記充填口に接続されている間は前記係船柱に対して前記係留用ロープを外れ止めすることを特徴とする請求項1に記載の燃料ガス充填システム。
【請求項3】
前記燃料タンクの前記充填口から取り外された前記充填カップリングを保持するカップリング保持具を備え、
前記ラッチ機構は、前記充填カップリングが前記カップリング保持具に保持された状態で、前記係船柱に対する前記係留用ロープの外れ止めを解除することを特徴とする請求項2に記載の燃料ガス充填システム。
【請求項4】
前記充填カップリングが前記カップリング保持具に保持されているか否かを検出するカップリング検出器を備えたことを特徴とする請求項3に記載の燃料ガス充填システム。
【請求項5】
係船柱に係留用ロープを用いて係留された船舶の燃料タンクに対し、ガス蓄圧器に貯留された燃料ガスを充填する燃料ガス充填システムにおいて、
前記船舶が係留用ロープを用いて係留されているか否かの係留状態を検出する係留検出器を備えたことを特徴とする燃料ガス充填システム。
【請求項6】
前記係留検出器が前記船舶が前記係留用ロープを用いて係留されていることを検出している場合に、前記船舶の燃料タンクへの燃料ガスの充填を可能とする制御手段を設けたことを特徴とする請求項5に記載の燃料ガス充填システム。
【請求項7】
前記燃料ガスは、先端に前記燃料タンクの充填口に接続される充填カップリングが設けられた充填ホースを用いて前記燃料タンクに充填される構成とし、
前記係留検出器は前記係船柱に前記係留用ロープが掛けてあるか否かを検出するロープ検出器であり、
前記充填カップリングが前記燃料タンクの前記充填口に接続されている状態で、前記ロープ検出器により前記係留用ロープが前記係船柱から外れたことが検出された場合に、前記制御手段は前記燃料タンクへの充填を禁止することを特徴とする請求項6に記載の燃料ガス充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば水素ガス等の燃料ガスを船舶に搭載された燃料タンクに充填するのに好適に用いられる燃料ガス充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルを実現するため、水素ガス等を燃料とする燃料電池や水素エンジンを搭載した船舶の実用化が望まれている。現在、実用化されている燃料電池自動車や圧縮天然ガス自動車においては、燃料ガス充填装置を用いて、燃料となる高圧な水素ガスや圧縮天然ガスを燃料タンクに充填するようになっている。
【0003】
例えば特許文献1には、ガス蓄圧器に貯留された燃料ガスが供給されるガス供給管路と、一端が前記ガス供給管路に接続され、他端が充填カップリングを介して燃料タンクに接続される充填ホースとを含んで構成された燃料ガス充填装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術による燃料ガス充填装置は、自動車に搭載された燃料タンクに対して燃料ガスを充填することを想定している。このため、従来技術による燃料ガス充填装置を用いて船舶に対する燃料ガスの充填作業を行う場合には、船舶に特有の課題がある。
【0006】
即ち、充填ホースに設けられた充填カップリングを船舶の燃料タンクの充填口に接続した状態で、燃料ガスの充填を行っているときに、停泊中の船舶が、何らかの原因で係留場所から移動する事態が発生する可能性がある。
【0007】
その場合、燃料ガス充填装置から船舶の燃料タンクの充填口までの距離が充填ホースの長さより長くなると、船舶の燃料タンクの充填口と充填カップリングとの接続部や充填ホース自体に負荷(過大な引っ張り力)がかかり、当該充填口、充填カップリングや充填ホースが損傷する恐れがある。
【0008】
本発明の一実施形態の目的は、船舶の燃料タンクに燃料ガスを充填する際、より安全に充填を行う事ができるようにした燃料ガス充填システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による燃料ガス充填システムは、係船柱に係留用ロープを用いて係留された船舶の燃料タンクに対し、ガス蓄圧器に貯留された燃料ガスを充填する燃料ガス充填システムにおいて、前記係船柱に対して前記係留用ロープを外れ止めするラッチ機構を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の他の実施形態による燃料ガス充填システムは、係船柱に係留用ロープを用いて係留された船舶の燃料タンクに対し、ガス蓄圧器に貯留された燃料ガスを充填する燃料ガス充填システムにおいて、前記船舶が前記係留用ロープを用いて係留されているか否かの係留状態を検出する係留検出器を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、係船柱に係留用ロープを用いて確実に船舶を係留することにより、燃料ガスの充填時における船舶の移動を阻止するよう構成したため、船舶の燃料タンクの充填口と充填カップリングとの接続部や充填ホース自体の損傷を防止することができる。
【0012】
また、本発明の他の実施形態によれば、船舶が係留用ロープを用いて係留されているか否かの係留状態が検出器によって検出されるので、船舶が係留されていない状態で船舶の燃料タンクに燃料ガスの充填がされてしまう恐れを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態による燃料ガス充填システムを、燃料ガスの充填作業が行われる前の状態で示す全体構成図である。
【
図2】燃料ガス充填システムを、燃料ガスの充填が行われている状態で示す全体構成図である。
【
図3】
図1中の係船柱、係留用ロープ、ラッチ機構等を示す要部拡大図である。
【
図4】ラッチ機構が係留用ロープを外れ止めした状態を示す要部拡大図である。
【
図5】
図1中のカップリング保持具、充填カップリング、カップリング検出器等を示す要部拡大図である。
【
図6】カップリング保持具から充填カップリングを取り外した状態を示す要部拡大図である。
【
図7】第1の実施形態による制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】比較例による燃料ガス充填システムを示す全体構成図である。
【
図9】第2の実施形態による燃料ガス充填システムを、燃料ガスの充填が行われている状態で示す全体構成図である。
【
図10】
図9中の係船柱、係留用ロープ、ロープ検出器等を示す要部拡大図である。
【
図11】第2の実施形態による制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図12】係留検出器の変形例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態による燃料ガス充填システムについて、添付図面に従って説明する。
【0015】
図1および
図2は第1の実施形態による燃料ガス充填システム1を示している。
図1は、燃料ガスの充填が行われる前の状態を示し、
図2は、燃料ガスの充填が行われている状態を示している。図中、燃料ガス充填システム1は、港湾の埠頭50付近に停泊した船舶51(水上オートバイなどの小型船舶を含む。)の燃料タンク52に、水素ガス等の高圧な燃料ガスを充填するために用いられる。燃料ガス充填システム1は、後述する燃料ガス充填装置3を含んで構成されている。
【0016】
浮桟橋53は、船舶51が停泊する港湾の海面A上に設けられている。浮桟橋53は、海面A上に浮かんだ状態でアンカー等(図示せず)を用いて埠頭50付近に設置されている。浮桟橋53は、船舶51が係留されることにより船舶51と埠頭50とを連結し、船舶51の乗員等は、浮桟橋53を渡って船舶51と埠頭50との間を往来する。また、埠頭50とは反対側に位置する浮桟橋53の側面53Aには、船舶51が接岸するときの衝撃を緩和する防舷材54が設けられている。
【0017】
係船柱55は、浮桟橋53が設置された埠頭50の岸壁に設けられている。係船柱55は逆J字型の鉄柱からなり、係船柱55の基端側は埠頭50の岸壁に埋設され、係船柱55の先端55Aは、埠頭50の上面50Aから上方に離間している。船舶51に搭載された係留用ロープ56(縄や綱等)を、係船柱55に掛け止めすることにより、船舶51を埠頭50に係留することができる。このように、係留用ロープ56を係船柱55に掛け止めして船舶を係留した状態で、燃料ガス充填装置3を用いて停泊中の船舶51の燃料タンク52に燃料ガスを充填する。また、係船柱55の先端55Aと埠頭50の上面50Aとの間には、後述するラッチ機構16が配置されている。
【0018】
ガス蓄圧器2は、埠頭50に設けられている。ガス蓄圧器2は、高圧に圧縮された水素ガスを貯留する容器であり、水素ガスの供給源となっている。ガス蓄圧器2は、例えば並列に接続された複数の容器によって構成され、ガス蓄圧器2の吐出管2Aには、燃料ガス充填装置3のガス供給管路8の一端8Aが接続されている。ガス蓄圧器2に貯留された水素ガスは、埠頭50上に設けられた燃料ガス充填装置3を介して船舶51の燃料タンク52に充填される。
【0019】
燃料ガス充填装置3は、ガス蓄圧器2と共に埠頭50に設けられ、埠頭50に係留されて停泊した船舶51の燃料タンク52に対し、加圧された圧縮状態の燃料ガス(例えば、水素ガス)を充填する。
【0020】
燃料ガス充填装置3は、筐体4と、ガス蓄圧器2に貯留された水素ガスが供給されるガス供給管路8と、ガス供給管路8と船舶51の燃料タンク52との間を接続する充填ホース9と、ガス供給管路8を流れる水素ガスを冷却する冷却器13とを含んで構成されている。また、筐体4内には、後述する流量調整弁11、開閉弁12、流量計14、制御装置15等が設けられている。
【0021】
筐体4は、埠頭50に設けられ、燃料ガス充填装置3の外殻を構成している。筐体4は、例えば4つの側面(壁面)と上面とを有する直方体の箱状に形成されている。筐体4のうち船舶51側となる一側面5には、ガス供給管路8と充填ホース9との間を接続する継手6と、後述する充填カップリング10を保持するためのカップリング保持具7とが設けられている。
【0022】
ガス供給管路8は、ガス蓄圧器2に接続され、ガス蓄圧器2に貯留された加圧状態の水素ガスを充填ホース9に供給する。ガス蓄圧器2側に位置するガス供給管路8の一端8Aは、ガス蓄圧器2の吐出管2Aに接続されている。ガス供給管路8の他端8Bは、筐体4の一側面5に設けられた継手6に接続されている。
【0023】
充填ホース9は、筐体4の外部に設けられ、ガス供給管路8と船舶51の燃料タンク52との間を接続する。充填ホース9は、可撓性を有する耐圧ホースを用いて形成され、ガス蓄圧器2に貯留された水素ガスを燃料タンク52に充填する。充填ホース9の一端9Aは、筐体4の一側面5に設けられた継手6に接続され、この継手6を介してガス供給管路8に接続されている。
【0024】
充填カップリング10は、充填ホース9の他端に設けられている。充填カップリング10は、燃料タンク52の充填口52Aに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。このロック機構は、水素ガスの充填時に、充填カップリング10が燃料タンク52の充填口52Aから不用意に外れるのを防止している。これにより、充填カップリング10が燃料タンク52の充填口52Aに接続された状態において、ガス蓄圧器2に貯留された高圧な水素ガスを、ガス供給管路8、充填ホース9および充填カップリング10を通じて船舶51の燃料タンク52に充填することができる。
【0025】
ガス供給管路8の途中には、流量調整弁11、開閉弁12が設けられている。開閉弁12は、ガス供給管路8内を流れる水素ガスの流れ方向に対し、流量調整弁11よりも下流側に配置されている。流量調整弁11は、後述する制御装置15から出力される制御信号に応じた弁開度に制御される。これにより、ガス供給管路8内を流れる水素ガスの流量を、流量調整弁11によって調整することができる。開閉弁12は、制御装置15から出力される制御信号に応じて開弁状態と閉弁状態とに切換えられる。開閉弁12を開弁状態とすることにより、ガス供給管路8内に水素ガスを流通させることができ、開閉弁12を閉弁状態とすることにより、水素ガスの流通を遮断することができる。
【0026】
冷却器13は、筐体4内に設けられ、例えば流量調整弁11と開閉弁12との間に位置してガス供給管路8の最下流側に配置されている。冷却器13は、ガス供給管路8内を流れる水素ガスを冷却し、船舶51の燃料タンク52に充填される水素ガスの温度上昇を抑えている。流量計14は、ガス供給管路8の途中に設けられている。流量計14は、ガス供給管路8内を流れる水素ガスの流量を計測し、計測結果を制御装置15に出力する。
【0027】
制御装置15は、筐体4内に設けられている。制御装置15の入力側には、流量計14、後述するリミットスイッチ18等が接続され、制御装置15の出力側には、流量調整弁11、開閉弁12、後述するラッチ機構16等が接続されている。制御装置15は、流量調整弁11、開閉弁12等の制御を行うことにより、船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填を制御する。具体的には、筐体4に設けられた充填開始スイッチ、充填停止スイッチ(いずれも図示せず)の操作に応じて、開閉弁12の開弁、閉弁動作を行うことにより、船舶51の燃料タンク52への水素ガスの充填開始及び充填停止等の充填制御を行う。
【0028】
埠頭50に係留された船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填制御は、充填ホース9に設けられた充填カップリング10を、燃料タンク52の充填口52Aに接続した状態で開始される。即ち、ガス蓄圧器2に貯留された水素ガスは、ガス供給管路8、充填ホース9、充填カップリング10を介して燃料タンク52に充填される。この水素ガスの充填制御において、制御装置15は、流量計14からの信号に基づいてガス供給管路8内を流れる水素ガスの流量を検知し、燃料タンク52に対する水素ガスの充填量を演算する。そして、制御装置15は、演算した水素ガスの充填量に応じて流量調整弁11、開閉弁12等に制御信号を出力する。これにより、流量調整弁11の弁開度、開閉弁12の開閉動作等が適宜に制御され、燃料タンク52に対して迅速かつ安全に水素ガスを充填することができる。
【0029】
次に、本実施形態に用いられるラッチ機構16について説明する。
【0030】
図3および
図4に示すように、ラッチ機構16は、埠頭50の上面50Aと係船柱55の先端55Aとの間に設けられている。ラッチ機構16は、例えばエアシリンダにより構成され、係船柱55の先端55Aの真下に配置されている。ラッチ機構16は、係船柱55に対して固定されたチューブ16Aと、チューブ16A内を2つのエア室に仕切るピストン(図示せず)と、一端(下端)がピストンに固定され他端(上端)がチューブ16Aの外部に突出したロッド16Bとを有している。
【0031】
チューブ16Aには、電磁式切換弁(図示せず)が一体的に取り付けられている。この電磁式切換弁は、チューブ16A内の2つのエア室と空圧ポンプとの間に設けられ、制御装置15から出力される制御信号に応じて空圧ポンプからの空気をチューブ16A内の2つのエア室に選択的に供給する。これにより、ラッチ機構16のロッド16Bは、
図3に示す縮小位置と
図4に示す伸長位置とに切換えられる。
【0032】
ロッド16Bが伸長位置(ラッチ機構ON)となったときには、ロッド16Bの上端が係船柱55の先端55Aに当接する。従って、係留用ロープ56を係船柱55に掛け止めした状態でロッド16Bを伸長位置とすることにより、係留用ロープ56を係船柱55に対して外れ止めすることができる。一方、ロッド16Bが縮小位置(ラッチ機構OFF)となったときには、ロッド16Bの上端と係船柱55の先端55Aとの間に、係留用ロープ56が通過できるだけの隙間17が形成される。従って、ロッド16Bを縮小位置とすることにより、係船柱55に対する係留用ロープ56の外れ止めが解除され、係留用ロープ56を係船柱55に対して取り付け(掛け止め)、取り外しすることができる。
【0033】
このように、ラッチ機構16は、埠頭50に係留された船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填が行われるとき、即ち、充填ホース9の充填カップリング10が、燃料タンク52の充填口52Aに接続されている間は、ロッド16Bを伸長位置に保持することにより、係船柱55に対して係留用ロープ56を外れ止めする。これにより、ラッチ機構16は、船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填中に係留用ロープ56が係船柱55から離脱し、船舶51が埠頭50から離岸(移動)してしまう事態を防止している。
【0034】
一方、ラッチ機構16は、燃料タンク52の充填口52Aから取り外された充填カップリング10が筐体4のカップリング保持具7に保持された状態で、ロッド16Bを縮小位置に切換えることにより、係船柱55に対する係留用ロープ56の外れ止めを解除する。これにより、水素ガスの充填が終了した後には、係留用ロープ56を係船柱55から取り外すことにより、船舶51を埠頭50から離岸させることができる。
【0035】
カップリング検出器としてのリミットスイッチ18は、カップリング保持具7に設けられている。
図5および
図6に示すように、リミットスイッチ18は回動アーム18Aを有し、回動アーム18Aは、充填ホース9の充填カップリング10がカップリング保持具7に保持されたときに、充填カップリング10によって押圧操作される。これにより、リミットスイッチ18は、充填カップリング10がカップリング保持具7に保持されたことを示す検出信号を、制御装置15に出力する。一方、水素ガスの充填を行うため、充填カップリング10がカップリング保持具7から取り外されているとき(即ち、充填カップリング10が燃料タンク52の充填口52Aに接続されたとき)には、リミットスイッチ18の回動アーム18Aに対する押圧操作が解除される。これにより、リミットスイッチ18は、充填カップリング10がカップリング保持具7から取り外されていることを示す検出信号を、制御装置15に出力する。
【0036】
制御装置15は、リミットスイッチ18からの検出信号に基づいて、充填カップリング10がカップリング保持具7に保持されているか否かを判定し、判定結果に応じた制御信号をラッチ機構16に出力することにより、ラッチ機構16の動作を制御する。例えば、リミットスイッチ18からの検出信号が、充填カップリング10がカップリング保持具7に保持されていることを示している場合には、制御装置15は、ラッチ機構16のロッド16Bを縮小位置(
図3の位置)へと移動させる。これにより、係船柱55の先端55Aとロッド16Bとの間に隙間17が形成され、係船柱55に対して係留用ロープ56を着脱することができる。
【0037】
一方、リミットスイッチ18からの検出信号が、充填カップリング10がカップリング保持具7から取り外されていることを示している場合には、充填カップリング10が燃料タンク52の充填口52Aに接続され、燃料タンク52に対する水素ガスの充填が行われている(或いは、行われようとしている)と判断できる。従って、制御装置15は、ラッチ機構16のロッド16Bを伸長位置(
図4の位置)へと移動させる。これにより、係船柱55の先端55Aにロッド16Bが当接して隙間17が閉塞され、係船柱55に対して係留用ロープ56を外れ止めすることができる。
【0038】
このように、本実施形態による燃料ガス充填システム1は、上述した燃料ガス充填装置3と、係船柱55に対して係留用ロープ56を外れ止めするラッチ機構16とを含んで構成されている。以下、燃料ガス充填システム1を用いて船舶51の燃料タンク52に水素ガス(燃料ガス)を充填する作業について、
図7のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、
図7に示すフローチャートの各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示す。
【0039】
まず、水素ガスの充填対象となる燃料タンク52を搭載した船舶51は、浮桟橋53を介して埠頭50の岸壁に接岸する。そして、作業員は、船舶51に搭載された係留用ロープ56を埠頭50側に投入し、係船柱55の先端55Aとロッド16Bとの間に形成された隙間17を通じ、係留用ロープ56を係船柱55に掛け止めする。これにより、
図1に示すように、船舶51は、埠頭50に横付けされた状態で係留される。
【0040】
そして、係留用ロープ56を係船柱55に掛け止めした後には、作業員は充填ホース9の充填カップリング10を、筐体4のカップリング保持具7から取り外す。このとき、制御装置15は、S1にてリミットスイッチ18がOFFになったか否かを判定する。S1において「NO」と判定される間は、この判定処理を繰り返す。そして、充填カップリング10がカップリング保持具7から取り外されてリミットスイッチ18がOFFとなることにより、S1において「YES」と判定されると、S2に進む。制御装置15は、S2にてラッチ機構16に伸長用の駆動信号を出力(ラッチ機構ON)し、ロッド16Bを縮小位置から伸長位置に移動させた後、S3に進む。これにより、係船柱55の先端55Aにロッド16Bが当接して隙間17が閉塞され、係船柱55に対して係留用ロープ56を外れ止めすることができる。
【0041】
次に、作業員は、充填ホース9の充填カップリング10を、船舶51の燃料タンク52に設けられた充填口52Aに接続し、充填開始スイッチ(図示せず)をON操作して充填を開始する。このとき、制御装置15は、S3において充填開始スイッチがON操作されたか否かを判定する。S3において「NO」と判定される間は、この判定処理を繰り返す。そして、S3において「YES」、即ち充填開始スイッチがON操作されたと判定した場合には、S4に進み、開閉弁12を開弁させて充填を開始する。これにより、ガス蓄圧器2に貯留された水素ガスが、ガス供給管路8、充填ホース9、充填カップリング10を介して燃料タンク52に充填される。
【0042】
このとき、冷却器13は、ガス供給管路8内を流れる水素ガスを冷却し、充填ホース9に向けて供給される水素ガスの温度を低下させる。この結果、ガス蓄圧器2から吐出した水素ガスを、ガス供給管路8内で冷却した状態で、充填ホース9、充填カップリング10を通じて燃料タンク52に充填することができる。
【0043】
次に、制御装置15は、S5において燃料タンク52への充填が終了したか否かを判定する。この充填が終了したか否かの判定は、例えば、燃料タンク52への水素ガスの充填量が予め定められた所定充填量に達したか否かや、燃料タンク52内の圧力を測定するための圧力測定手段(図示せず)により測定された圧力が予め定められた所定圧力に到達したか否かや、作業員により充填停止スイッチ(図示せず)がON操作されたか否かを判定することにより行われる。S5において「NO」と判定される間(充填が終了していないと判定されている間)は、この判定処理を繰り返す。そして、S5において「YES」、即ち、充填が終了したと判定した場合には、S6に進み、開閉弁12を閉弁させて充填を終了する。
【0044】
燃料タンク52に対する水素ガスの充填が終了すると、作業員は、充填ホース9の充填カップリング10を燃料タンク52の充填口52Aから取り外し、この充填カップリング10を、燃料ガス充填装置3のカップリング保持具7に保持する。このとき、制御装置15は、S7においてリミットスイッチ18がONとなったか否かを判定する。S7において「NO」と判定される間は、この判定処理を繰り返す。そして、S7において「YES」、即ち充填カップリング10がカップリング保持具7に保持されてリミットスイッチ18がONとなったと判定した場合には、S8に進む。制御装置15は、S8にてラッチ機構16に縮小用の駆動信号を出力(ラッチ機構OFF)し、ロッド16Bを伸長位置から縮小位置に移動させた後、制御処理を終了する。これにより、ラッチ機構16による係留用ロープ56の外れ止めが解除され、係船柱55の先端55Aとロッド16Bとの間に隙間17が形成される。この結果、作業員は充填終了後、係留用ロープ56を係船柱55から取り外すことができ、船舶51を埠頭50から離岸させることができる。
【0045】
このようにして、船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填が行われている間、ラッチ機構16のロッド16Bは伸長位置を保持する。これにより、例えば潮位の干満によって海面Aが上下に移動したとしても、係留用ロープ56が係船柱55から離脱してしまうのをラッチ機構16によって阻止することができる。従って、燃料タンク52に対する水素ガスの充填中に、不用意に船舶51が埠頭50から離岸(移動)してしまう事態を防止することができ、充填作業の安全性を高めることができる。
【0046】
なお、上述した制御装置15による制御処理では、充填カップリング10がカップリング保持具7から取り外された場合に、ラッチ機構16によって係留用ロープ56を外れ止め(ラッチ機構ON)する構成としたが、これに限らず、充填開始スイッチが操作された後、リミットスイッチ18がOFFとなった(充填カップリング10がカップリング保持具7から取り外された)場合に、ラッチ機構ONさせる構成であっても良い。
【0047】
次に、本実施形態による燃料ガス充填システム1と、
図8に示す比較例による燃料ガス充填システム101との比較について説明する。
【0048】
比較例による燃料ガス充填システム101は、埠頭50上に設けられた燃料ガス充填装置102によって構成され、本実施形態によるラッチ機構16は備えていない。燃料ガス充填装置102は、本実施形態による燃料ガス充填装置3と同様に、筐体4、ガス供給管路8、充填カップリング10、流量調整弁11、開閉弁12、冷却器13、流量計14、制御装置15等を含んで構成されている。
【0049】
一方、船舶51は、埠頭50に設けられた係船柱55に係留用ロープ56を掛け止めすることにより、浮桟橋53を挟んで埠頭50に係留されている。しかし、係船柱55に対して係留用ロープ56を外れ止めするラッチ機構は設けられていない。このため、比較例による燃料ガス充填システム101では、例えば潮位の干満による海面Aの上下動により、船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填中に係船柱55から係留用ロープ56が離脱する可能性がある。このように、係船柱55から係留用ロープ56が離脱した場合には、停泊中の船舶51が埠頭50から離岸してしまい、燃料タンク52の充填口52Aから充填カップリング10が外れたり、充填ホース9が破損する可能性がある。
【0050】
かくして、本実施形態では、係船柱55に係留用ロープ56を用いて係留された船舶51の燃料タンク52に対し、ガス蓄圧器2に貯留された燃料ガス(水素ガス)を充填する燃料ガス充填システム1において、係船柱55に対して係留用ロープ56を外れ止めするラッチ機構16を備えている。この構成によれば、船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填が行われる間、係留用ロープ56が係船柱55から離脱してしまうのをラッチ機構16によって阻止することができる。この結果、燃料タンク52に対する水素ガスの充填中に、不用意に船舶51が埠頭50から離岸して充填ホース9が破損する事態を防止することができ、充填作業の安全性を高めることができる。
【0051】
本実施形態では、水素ガスは、先端に燃料タンク52の充填口52Aに接続される充填カップリング10が設けられた充填ホース9を用いて燃料タンク52に充填される構成とし、ラッチ機構16は、充填カップリング10が燃料タンク52の充填口52Aに接続されている間は係船柱55に対して係留用ロープ56を外れ止めする。この構成によれば、埠頭50に係留された船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填中に、係留用ロープ56が係船柱55から離脱してしまう事態を確実に阻止することができる。
【0052】
本実施形態では、燃料タンク52の充填口52Aから取り外された充填カップリング10を保持するカップリング保持具7を備え、ラッチ機構16は、充填カップリング10がカップリング保持具7に保持された状態で、係船柱55に対する係留用ロープ56の外れ止めを解除する。この構成によれば、埠頭50に係留された船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填が終了した後、充填カップリング10を、燃料タンク52の充填口52Aから取り外し、筐体4のカップリング保持具7に保持することにより、ラッチ機構16による係留用ロープ56の外れ止めが解除される。従って、水素ガスの充填が終了した後には、係留用ロープ56を係船柱55から取り外すことにより、船舶51を埠頭50から離岸させることができる。
【0053】
本実施形態では、充填カップリング10がカップリング保持具7に保持されているか否かを検出するリミットスイッチ18を備えている。この構成によれば、リミットスイッチ18によって、充填カップリング10がカップリング保持具7に保持されているか否か、即ち、船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填が行われているか否か(或いは、充填が行われようとしているか否か)を検出することができる。従って、リミットスイッチ18よる検出結果に応じて、ラッチ機構16の動作を制御することができる。
【0054】
次に、
図9ないし
図11は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、船舶が係留用ロープを用いて係留されているか否かの係留状態を検出する係留検出器を備えたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0055】
図中、燃料ガス充填システム21は、第1の実施形態による燃料ガス充填システム1と同様に、燃料ガス充填装置22を含んで構成されている。燃料ガス充填装置22は、第1の実施形態による燃料ガス充填装置3と同様に、筐体4、ガス供給管路8、充填ホース9、充填カップリング10、流量調整弁11、開閉弁12、冷却器13、流量計14、後述する制御装置25等を含んで構成されている。しかし、燃料ガス充填システム21は、船舶の係留状態を検出する係留検出器としてのセンサ23を備えている点で、第1の実施形態による燃料ガス充填システム1とは異なっている。
【0056】
ロープ検出器(係留検出器)としてのセンサ23は、係船柱55に設けられている。センサ23は、船舶51が係留用ロープ56を用いて係船柱55に係留されているか否かの係留状態を検出するもので、圧電素子等を用いた接触式センサにより構成されている。センサ23は、
図10に示すように、係船柱55に係留用ロープ56を掛け止めしたときに、この係留用ロープ56を検出する。これにより、センサ23は、係船柱55に係留用ロープ56が掛けてあるか否か、即ち船舶51が係留用ロープ56を用いて係留されているか否か(係留状態)に応じた検出信号を、制御装置25に出力する。
【0057】
警報装置としての拡声器24は、筐体4上に設けられている。拡声器24は、制御装置25からの制御信号によって駆動され、例えば係留用ロープ56が係船柱55から外れ、船舶51が係留されていない状態となったときに、船舶51あるいは船舶51の周囲に対して警報音等の警報を発する。
【0058】
制御装置25は、筐体4内に設けられている。制御装置25の入力側には、流量計14、リミットスイッチ18、センサ23等が接続され、制御装置25の出力側には、流量調整弁11、開閉弁12、拡声器24等が接続されている。制御装置25は、センサ23からの検出信号に基づいて、係船柱55に係留用ロープ56が掛け止めされているか否かを判定する。そして、制御装置25は、係船柱55に係留用ロープ56が掛け止めされている、即ち船舶51が係留されていると判定している間は、船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填を可能とする。一方、制御装置25は、係船柱55に係留用ロープ56が掛け止めされていない、即ち船舶51が係留されていないと判定したときには、船舶51の燃料タンク52に対する水素ガスの充填を禁止すると共に、拡声器24を駆動して警報を発生させる。
【0059】
第2の実施形態による燃料ガス充填システム21は、船舶51が係留用ロープ56を用いて係留されているか否かを検出するセンサ23を備えるもので、以下、燃料ガス充填システム21を用いて水素ガスを充填する作業について、制御装置25の制御処理を示す
図11のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0060】
まず、燃料タンク52を搭載した船舶51が、浮桟橋53を介して埠頭50の岸壁に接岸すると、作業員は、係留用ロープ56を係船柱55に掛け止めする。次に、作業員は、充填ホース9の充填カップリング10を、筐体4のカップリング保持具7から取り外す。このとき、制御装置25は、S11にてリミットスイッチ18がOFFになったか否かを判定し、S11において「YES」、即ち充填カップリングがカップリング保持具7に保持されていない(充填カップリングが取り外された)と判定するとS12に進む。
【0061】
S12において、制御装置25は、センサ23からの検出信号に基づいて、係留用ロープ56が検出されているか否か(係船柱55に係留用ロープ56が掛けてあるか否か)を判定する。S12において「NO」、即ち係留用ロープ56が検出されない(係船柱55に係留用ロープ56が掛けられていない)と判定した場合には、S13に進む。S13において、制御装置25は、拡声器24に制御信号を出力し、拡声器24から、船舶51あるいは船舶51の周囲(少なくとも船舶51)に対し、警報音等を発生させ、船舶51の係留が解かれていることを報知する。次に、制御装置25は、S14に進み、充填開始スイッチ(図示せず)を無効化した後、制御処理を終了する。このように、S14にて充填開始スイッチ(図示せず)を無効化することにより、仮に充填開始スイッチがON操作されても、開閉弁12の開弁がなされないので、係留用ロープが掛けられていない状態で充填がなされてしまうことを防止できる。
【0062】
一方、S12にて「YES」、即ち係留用ロープ56が検出された(係船柱55に係留用ロープ56が掛けられている)と判定した場合には、制御装置25は、S15に進み、充填開始スイッチが操作されたか否かを判定する。S15において「NO」と判定される間は、この判定処理を繰り返す。そして、S15において「YES」、即ち充填開始スイッチがON操作されたと判定した場合には、制御装置25は、S16に進み、開閉弁12を開弁させ、充填を開始する。
【0063】
水素ガスの充填が開始された後、制御装置25は、S17にて係留用ロープ56が検出されているか否かを判定すると共に、続くS18にて水素ガスの充填が終了したか否かを判定する。なお、この充填が終了したか否かの判定の仕方は、前述のS5の判定の仕方と同様であるため、その説明を省略する。そして、制御装置25は、S18にて充填が終了していないと判定されている場合は、S17に戻り、S18にて「YES」、即ち充填が終了したと判定した場合にはS19に進み、開閉弁12を閉弁させて水素ガスの充填を終了する。このように、水素ガスの充填が終了するまでの間、制御装置25は、S17にて係船柱55に係留用ロープ56が掛けられているか否かを常に判定する。そして、S17にて「NO」、即ち係船柱55に係留用ロープ56が掛けられていないと判定した場合には、制御装置25はS13に進み、上述したように拡声器24から警報音等を発生させると共に、S14にて充填開始スイッチ(図示せず)を無効化した後、制御処理を終了する。これにより、充填が開始された状態で係船柱55に係留用ロープ56が掛けられていない場合には、充填が禁止・停止されるので、充填中に船舶51が移動し、船舶51の燃料タンク52から充填カップリング10が外れたり、充填ホース9が損傷してしまうことを防止できる。
【0064】
また、制御装置25は、S19において開閉弁12を閉弁させて充填を終了した後、S20にて係留用ロープ56が検出されているか否かを判定すると共に、続くS21にてリミットスイッチ18がONとなったか否かを判定する。そして、制御装置25は、S21にて「NO」、即ち充填カップリング10がカップリング保持具7に保持されていないと判定した場合には、S20に戻り、S21にて「YES」、即ち充填カップリング10がカップリング保持具7に保持されたと判定した場合には、本制御処理を終了する。
【0065】
一方、制御装置25は、S21にて充填カップリング10がカップリング保持具7から取り外されていると判定し、かつ、S20にて係船柱55に係留用ロープ56が掛け止めされていないと判定した場合には、充填カップリング10が燃料タンク52の充填口52Aに接続されているにも関わらず、係留用ロープ56が係船柱55から外れていると判定する。
【0066】
この場合には、燃料ガス充填装置22と船舶51の燃料タンク52とが、充填ホース9を介して接続されている状態で、船舶51が埠頭50から離岸している可能性がある。このため、制御装置25は、S20にて係船柱55に係留用ロープ56が掛け止めされていないと判定した場合には、S13に進み、上述したように拡声器24から警報音等を発生させた後、制御処理を終了する。これにより、水素ガスの充填が終了した後においても、充填カップリング10が燃料タンク52の充填口52Aに接続されている状態(作業者が充填カップリング10を取り外す前の状態)において、係留用ロープ56が係船柱55から外れて船舶51が離岸した場合には、例えば船舶51を埠頭50に接岸させる対策等を迅速に講じることができる。
【0067】
なお、上述した制御装置25による制御処理では、S12において、センサ23にて係船柱55に係留用ロープ56が掛けてあると判定した後、充填開始スイッチがON操作された場合に、充填が開始(開閉弁が開弁)される態様を例示している。しかし、これに限らず、例えば充填開始スイッチが操作された後、センサ23にて係船柱55に係留用ロープ56が掛けてあると判定した場合に、充填が開始されても良い。
【0068】
本実施形態による燃料ガス充填システム21は、上述の如きセンサ23を備えるもので、その基本的な作用効果については、第1の実施形態と格別差異はない。
【0069】
然るに、本実施形態では、船舶51の係留用ロープ56が、係船柱55に掛けてあるか否かを検出するセンサ23を備えている。この構成によれば、リミットスイッチ18からの検出信号により、充填カップリング10が燃料タンク52の充填口52Aに接続されていると判定し、かつ、センサ23からの検出信号により、係船柱55に係留用ロープ56が掛け止めされていないと判定した場合には、充填カップリング10が燃料タンク52の充填口52Aに接続されているにも関わらず、係留用ロープ56が係船柱55から外れている可能性があると判定することができる。従って、充填開始スイッチを無効化して充填を禁止・停止することができる。この結果、充填中に船舶51が移動し、船舶51の燃料タンク52から充填カップリング10が外れたり、充填ホース9が損傷してしまうことを防止できる。
【0070】
なお、第2の実施形態では、係留用ロープ56が係船柱55に掛けてあるか否かを検出する係留検出器(ロープ検出器)として、圧電素子等を用いた接触式のセンサ23を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば
図12に示す変形例のように、係船柱55に掛け止めされた係留用ロープ56を撮影する監視カメラ26を係留検出器として用いてもよい。さらに、監視カメラ26は、係船柱55に掛け止めされた係留用ロープ56を撮影するのではなく、燃料ガス充填のために停泊した船舶51を撮影し、船舶51が波や風により停泊した位置から離れたこと(係留されていない状態)を検出してもよい。
【0071】
また、実施形態では、カップリング検出器として、回動アーム18Aを有する接触式のリミットスイッチ18を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば光電スイッチ等の非接触式センサを用いてもよい。
【0072】
さらに、実施形態では、船舶51の燃料タンク52に対し、圧縮された水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ブタン、プロパン等の高圧燃料ガス、または圧縮天然ガス(CNG)等の燃料ガスを充填する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1,21 燃料ガス充填システム
2 ガス蓄圧器
3,22 燃料ガス充填装置
7 カップリング保持具
9 充填ホース
10 充填カップリング
15,25 制御装置
16 ラッチ機構
18 リミットスイッチ(カップリング検出器)
23 センサ(ロープ検出器、係留検出器)
24 拡声器(警報装置)
26 監視カメラ(ロープ検出器、係留検出器)
51 船舶
52 燃料タンク
52A 充填口
55 係船柱
56 係留用ロープ