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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166747
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】半導体装置および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/10 20060101AFI20231115BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20231115BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H03K17/10
H02M1/08 A
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077488
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷 和樹
(72)【発明者】
【氏名】原 賢志
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB01
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5J055AX01
5J055AX52
5J055AX53
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX44
5J055DX46
5J055DX72
5J055DX83
5J055EX07
5J055EY12
5J055EY21
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】
複数のパワートランジスタを直列接続して構成する半導体装置であって、逆導通動作時の導通損失を低減することができる半導体装置と、それを用いた電力変換装置を提供する。
【解決手段】
第1のゲート駆動回路3のゲート駆動信号からは独立した信号が第2のゲート駆動回路4から駆動回路5に入力され、1段目のスイッチング素子QN1がオフ状態かつ逆導通動作中のとき、2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3をオン状態とするように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段に直列接続された複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子を駆動するための駆動回路とを備えた半導体装置において、
mを3以上の整数としたとき、前記多段に直列接続された複数のスイッチング素子は、互いに直列接続された1段目からm段目までのスイッチング素子を有し、
前記駆動回路は、次段の前記スイッチング素子を駆動するための1段目からm-1段目までの複数の素子を有し、
1段目の前記スイッチング素子のゲートには第1のゲート駆動回路から1段目の前記スイッチング素子のオンオフを制御するゲート駆動信号が入力され、
前記駆動回路の1段目の前記素子には前記ゲート駆動信号からは独立した信号であって第2のゲート駆動回路から2段目以降の前記スイッチング素子を駆動するための信号が入力され、
前記駆動回路は、
1段目の前記スイッチング素子がオン状態のとき、2段目以降の前記スイッチング素子も連動してオン状態とし、
1段目の前記スイッチング素子がオフ状態かつ電圧ブロッキング状態のとき、2段目以降の前記スイッチング素子も連動してオフ状態かつ電圧ブロッキング状態とし、
1段目の前記スイッチング素子がオフ状態かつ逆導通動作中のとき、2段目以降の前記スイッチング素子をオン状態とするように、
前記複数のスイッチング素子を制御することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
少なくとも1段目の前記スイッチング素子がオン状態または逆導通動作中のときは、前記第2のゲート駆動回路からオン信号が入力されることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記複数のスイッチング素子の正常動作中は前記第2のゲート駆動回路から常にオン信号が入力されることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記複数のスイッチング素子は第1の導電型を有するトランジスタであり、
前記駆動回路は、少なくとも第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4において、
少なくとも2段目以降の前記スイッチング素子は、ノーマリオフ型のトランジスタであることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4において、
少なくとも2段目以降の前記スイッチング素子は、ノーマリオン型のトランジスタであることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項4において
前記第1の導電型はn型であり、前記第2の導電型はp型であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項4において
前記第1の導電型はp型であり、前記第2の導電型はn型であることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項4において、
1段目の前記スイッチング素子のソースに接続されたソース端子と、
m段目の前記スイッチング素子のドレインに接続されたドレイン端子とを有し、
2段目以降の前記スイッチング素子のソースは前段の前記スイッチング素子のドレインに接続され、
前記駆動回路は、
前記第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタまたはダイオードで構成された1段目の第1の素子と、
前記第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタで構成された2段目からm-1段目までの第1の素子と、
前記第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタで構成された1段目からm-1段目までの第2の素子とを有し、
2段目からm-1段目までの前記第1の素子は、
ドレインが同じ段の前記スイッチング素子のゲートに接続され、
ゲートが次段の前記スイッチング素子のソースに接続され、
ソースが次段の前記スイッチング素子のゲートに接続され、
2段目からm-1段目までの前記第2の素子は、
ドレインが次段または同じ段の前記スイッチング素子のソースに接続され、
ゲートが同じ段の前記スイッチング素子のゲートに接続され、
ソースが次段の前記スイッチング素子のゲートに接続され、
1段目の前記第2の素子は、
ドレインが次段または同じ段の前記スイッチング素子のソースに接続され、
ゲートに前記第2のゲート駆動回路からの前記信号が入力され、
ソースが次段の前記スイッチング素子のゲートに接続され
ていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9において、
1段目の前記第1の素子は、前記第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタであって、
ドレインに前記第2のゲート駆動回路からの前記信号が入力され、
ゲートが次段の前記スイッチング素子のソースに接続され、
ソースが次段の前記スイッチング素子のゲートに接続され
ていることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項9において、
1段目の前記第1の素子は、前記ダイオードであって、
前記第1の導電型がn型の場合はアノードに、前記第1の導電型がp型の場合はカソードに、前記第2のゲート駆動回路からの前記信号が入力され、
前記第1の導電型がn型の場合はカソードが、前記第1の導電型がp型の場合はアノードが、2段目の前記スイッチング素子のゲートに接続され
ていることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項9において、
1段目からm-1段目までの前記第2の素子は、ドレインが次段の前記スイッチング素子のソースに接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項9において、
1段目からm-1段目までの前記第2の素子は、ドレインが同じ段の前記スイッチング素子のソースに接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項9において、
前記駆動回路は、前記第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタで構成された1段目からm-1段目までの第3の素子を有し、
1段目からm-1段目までの前記第3の素子は、ゲートが次段の前記スイッチング素子のソースに接続され、
2段目からm-1段目までの前記第3の素子は、ドレインが同じ段の前記スイッチング素子のゲートに接続され、
2段目からm-1段目までの前記第1の素子は、ドレインが同じ段の前記第3の素子を介して同じ段の前記スイッチング素子のゲートに接続され、
1段目の前記第3の素子は、ドレインに前記第2のゲート駆動回路からの前記信号が入力され、
1段目の前記第1の素子は、1段目の前記第3の素子を介して前記第2のゲート駆動回路からの前記信号が入力され、
1段目の前記第2の素子は、1段目の前記第3の素子を介してゲートに前記第2のゲート駆動回路からの前記信号が入力され
ていることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記駆動回路は、それぞれ互いに逆並列に接続されたダイオードで構成された1段目からm-1段目までの第4の素子を有し、
1段目からm-1段目までの前記第3の素子は、ゲートが同じ段の前記第4の素子を介して次段の前記スイッチング素子のソースに接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
請求項14において、
1段目からm-1段目までの前記第3の素子のゲート閾値の絶対値が、同じ段の前記第1の素子のゲート閾値の絶対値よりも小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
請求項1から16の何れかに記載の半導体装置をスイッチング素子として用いることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および電力変換装置に関し、特に、複数の低圧素子を直列接続して構成する高圧素子に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体デバイスの開発では、高い耐圧を備えつつ、オン抵抗が低く、スイッチング損失が小さいデバイスを実現することが重要な課題である。
【0003】
通常、パワートランジスタはボディ領域とドレイン領域との間に配置されたドリフト領域を持つ。ドリフト領域のドーピング濃度はドレイン領域よりも低い。
【0004】
従来のパワートランジスタのオン抵抗は、電流が流れる方向のドリフト領域の長さとドリフト領域のドーピング濃度に依存し、ドリフト領域の長さを短くするか、もしくはドリフト領域のドーピング濃度を高くするとオン抵抗が低下する。
【0005】
しかしながら、ドリフト領域の長さを短くするか、もしくはドリフト領域のドーピング濃度を高くすると、デバイスの耐圧が低下するという問題がある。
【0006】
所定の耐圧を持つパワートランジスタのオン抵抗を低減する方法として、ドリフト領域に相補的にドーピングされた補償領域を設ける技術や、ドリフト領域から誘電体で絶縁され、例えばトランジスタのゲートまたはソース端子に接続されるフィールドプレートをドリフト領域に設ける技術等が良く知られている。
【0007】
これらのタイプのパワートランジスタでは、補償ゾーンまたはフィールドプレートは、デバイスがオフ状態の時は空乏化によりドリフト領域のドーピング電荷を部分的に保障するため、ドリフト領域への高濃度なドーピングが可能になり、耐圧を低下させることなくオン抵抗の低減が可能である。
【0008】
但し、これらのデバイスの出力容量は大きくなる傾向にある。
【0009】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。
【0010】
特許文献1には、複数のパワートランジスタをカスコード接続で自律的に制御することによって耐圧を向上するとともに出力容量を小さくできる半導体素子が開示されている。
【0011】
特許文献1の技術は、耐圧向上、オン抵抗の低減、スイッチング損失の低減といったパワートランジスタの性能面でのメリットのみならず、カスコードの接続段数により耐圧を変化することができるという設計容易化のメリットもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0175635号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1で開示されている技術は、ゲート電極を1つ前の段のソース電極と接続するカスコード接続を用いているために、次のような課題を有する。
【0014】
(課題1)2段目以降のパワートランジスタはゲート電圧が0Vで導通するノーマリオン型のパワートランジスタを用いる必要があるため、パワートランジスタの設計や製造プロセスの自由度が低くなる。また、パワートランジスタをオン(導通)するとき、ゲート-ソース間電圧を0V以上にできないため、チャネル抵抗を十分に小さくできないという問題がある。また、還流動作時にパワートランジスタを逆導通するとき、ゲート-ソース間電圧は0Vに近いため、チャネル抵抗を十分に小さくできないという問題がある。
【0015】
(課題2)特許文献1では、2段目以降のパワートランジスタの耐圧はゲート酸化膜の耐圧で制限され、個別のパワートランジスタの耐圧は通常20V程度に制限される。また、高い耐圧を得るためにはカスコード接続の段数を増やす必要があるが、段数が増加するにつれてパワートランジスタのチャネルやパワートランジスタ同士を接続するコンタクトの直列数が増加し、寄生抵抗が大きくなるという問題がある。
【0016】
(課題3)複数のパワートランジスタを直列接続して構成するため、信頼性が低下する。例えば、特許文献1では、直列接続されたパワートランジスタのうち、1つでもパワートランジスタのソース-ドレイン間が破壊された場合、当該破壊されたパワートランジスタの次段以降のパワートランジスタは全てオフすることができなくなるため、耐圧が著しく低下するという問題がある。
【0017】
そのため、上記の課題1に対して、直列接続された複数のパワートランジスタのうち2段目以降のパワートランジスタがノーマリオフ型でも初段のパワートランジスタに連動して自律的に制御可能な回路構成、すなわち初段のパワートランジスタがオンの時に2段目以降のパワートランジスタに正のゲート-ソース間電圧を印加できる回路構成を有する半導体装置の実現が望まれる。また、逆導通動作時の導通損失を低減するために、逆導通動作時は2段目以降のパワートランジスタに常に正のゲート-ソース間電圧を印加できる回路構成を有する半導体装置の実現が望まれる。
【0018】
また、上記の課題2に対して、2段目以降のパワートランジスタの耐圧がゲート酸化膜の耐圧で制限されない半導体装置の実現が望まれる。また、パワートランジスタの持つ抵抗成分の内、チャネル抵抗やコンタクト抵抗等の寄生抵抗の比率を適正に設計し、ある目標耐圧に対して、直列接続の2段目以降のパワートランジスタの直列接続の段数を自由に設計できることが重要である。
【0019】
さらに、上記の課題3に対して、直列接続された複数のパワートランジスタのうち一部のパワートランジスタがソース-ドレイン間耐圧不良(ショート)になってもその他のパワートランジスタをオフすることができ、直列接続された一連のパワートランジスタ全体としての耐圧が著しく低下しない半導体装置の実現が望まれる。
【0020】
そこで、本発明の目的は、複数のパワートランジスタを直列接続して構成する半導体装置であって、個々のパワートランジスタにノーマリオフ型のパワートランジスタを用いることができ、なおかつ、逆導通動作時には常に2段目以降のパワートランジスタのゲートに正のゲート-ソース間電圧を印加して逆導通動作時の導通損失を低減することができ、一部のパワートランジスタのソース-ドレイン間が耐圧不良になった場合であっても半導体装置全体として著しく耐圧が低下しない、信頼性の高い半導体装置と、それを用いた電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置は、例えば、多段に直列接続された複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子を駆動するための駆動回路とを備えた半導体装置において、mを3以上の整数としたとき、前記多段に直列接続された複数のスイッチング素子は、互いに直列接続された1段目からm段目までのスイッチング素子を有し、前記駆動回路は、次段の前記スイッチング素子を駆動するための1段目からm-1段目までの複数の素子を有し、1段目の前記スイッチング素子のゲートには第1のゲート駆動回路から1段目の前記スイッチング素子のオンオフを制御するゲート駆動信号が入力され、前記駆動回路の1段目の前記素子には前記ゲート駆動信号からは独立した信号であって第2のゲート駆動回路から2段目以降の前記スイッチング素子を駆動するための信号が入力され、前記駆動回路は、1段目の前記スイッチング素子がオン状態のとき、2段目以降の前記スイッチング素子も連動してオン状態とし、1段目の前記スイッチング素子がオフ状態かつ電圧ブロッキング状態のとき、2段目以降の前記スイッチング素子も連動してオフ状態かつ電圧ブロッキング状態とし、1段目の前記スイッチング素子がオフ状態かつ逆導通動作中のとき、2段目以降の前記スイッチング素子をオン状態とするように、前記複数のスイッチング素子を制御することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の電力変換装置は、上記した半導体装置をスイッチング素子として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数のパワートランジスタを直列して構成する半導体装置であって、個々のパワートランジスタにノーマリオフ型のパワートランジスタを用いることができ、なおかつ、逆導通動作時には常に2段目以降のパワートランジスタのゲートに正のゲート-ソース間電圧を印加して逆導通動作時の導通損失を低減することができ、一部のパワートランジスタのソース-ドレイン間が耐圧不良になった場合であっても半導体装置全体として著しい耐圧が低下しない、信頼性の高い半導体装置と、それを用いた電力変換装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1の半導体装置の構成を示す回路図である。
図2】実施例2の半導体装置の構成を示す回路図である。
図3】実施例3の半導体装置の構成を示す回路図である。
図4】実施例4の半導体装置の構成を示す回路図である。
図5】実施例5の半導体装置の構成を示す回路図である。
図6】実施例6の半導体装置の構成を示す回路図である。
図7】実施例7の半導体装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【実施例0026】
図1は、実施例1の半導体装置の構成を示す回路図である。
【0027】
図1に示すように、実施例1の半導体装置10は、多段に直列接続された複数のスイッチング素子QN1、QN2、QN3と、複数のスイッチング素子QN1、QN2、QN3を駆動するための駆動回路5とを備えている。また、半導体装置10は、ソース端子1と、ドレイン端子2とを有している。
【0028】
図1では、半導体装置10を構成するパワートランジスタ(複数のスイッチング素子QN1、QN2、QN3や駆動回路5に用いられる素子)としてMOSFETを用いた例を示しているが、多段に直列接続された複数のスイッチング素子QN1、QN2、QN3に用いられるパワートランジスタとしてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いてもよいし、窒化ガリウム(GaN)等の材料を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)を用いても良い。なお、スイッチング素子QN1、QN2、QN3としてIGBTを用いる場合は、IGBTに対して逆並列に接続されたダイオードをさらに備える構成とすればよい。また、IGBTを用いる場合は、ソース端子1はエミッタ端子と読み替え、ドレイン端子2はコレクタ端子と読み替えればよい。
【0029】
半導体装置10は、第1のゲート駆動回路3と第2のゲート駆動回路4とに接続されている。ここでは、第1のゲート駆動回路3と第2のゲート駆動回路4とが半導体装置10の外部に設けられている場合を例にして説明しているが、これに限られず、半導体装置10が第1のゲート駆動回路3と第2のゲート駆動回路4とのうち一方または両方を内蔵して備えている構成としてもよい。
【0030】
多段に直列接続された複数のスイッチング素子QN1、QN2、QN3として、図1では3段の例を示しているが、これに限られず、mを3以上の整数としたとき、互いに直列接続された1段目からm段目までのスイッチング素子を有する構成としてもよい。この場合、1段目のスイッチング素子QN1のソース(s、以下符号省略)にソース端子1が接続され、m段目のスイッチング素子QNm(m=3の場合はQN3)のドレイン(d、以下符号省略)にドレイン端子2が接続され、2段目以降のスイッチング素子のソースが前段のスイッチング素子のドレインに接続された構成とすればよい。直列数として、2段(m=2)とすることを妨げるものではないが、3段以上(m≧3)であった方が高耐圧化に適するため望ましい。
【0031】
複数のスイッチング素子QN1、QN2、QN3は、第1の導電型を有するトランジスタであり、実施例1では第1の導電型としてn型の例で説明する。
【0032】
実施例1では、複数のスイッチング素子QN1、QN2、QN3のうち、少なくとも2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3は、ノーマリオフ型のトランジスタを用いている。1段目のスイッチング素子QN1は、ノーマリオフ型、ノーマリオン型の何れでもよい。
【0033】
駆動回路5は、次段のスイッチング素子QN2~QNmを駆動するための1段目からm-1段目までの複数の素子を有する。
【0034】
図1に示すように、実施例1の駆動回路5は、第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタAP1、AP2、BP1、BP2を有している。トランジスタAP1、BP1が1段目の素子を構成し、トランジスタAP2、BP2が2段目の素子を構成している。
【0035】
1段目のスイッチング素子QN1のゲート(g、以下符号省略)には、第1のゲート駆動回路3から1段目のスイッチング素子QN1のオンオフを制御するゲート駆動信号が入力される。
【0036】
駆動回路5の1段目の素子AP1、BP1には、第1のゲート駆動回路3のゲート駆動信号からは独立した信号であって第2のゲート駆動回路4から2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3を駆動するための信号が入力される。
【0037】
そして、駆動回路5は、1段目のスイッチング素子QN1がオン状態のとき、2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3も連動してオン状態とし、1段目のスイッチング素子QN1がオフ状態かつ電圧ブロッキング状態のとき、2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3も連動してオフ状態かつ電圧ブロッキング状態とし、1段目のスイッチング素子QN1がオフ状態かつ逆導通動作中のとき、2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3をオン状態とするように、複数のスイッチング素子QN2、QN3を制御する。
【0038】
実施例1の半導体装置10によれば、第1のゲート駆動回路3のゲート駆動信号からは独立した信号が第2のゲート駆動回路4から駆動回路5に入力され、1段目のスイッチング素子QN1がオフ状態かつ逆導通動作中のとき、2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3をオン状態とするように制御することで、逆導通動作中でも2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3ではオン状態でチャネルを介して電流が流れるため、2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3の還流ダイオード(MOSFETに内蔵されたダイオードや、IGBTに逆並列に接続されたダイオード)による電圧降下を避けることができ、逆導通動作中の導通損失を低減できる効果がある。
【0039】
第2のゲート駆動回路4からの信号としては、少なくとも1段目のスイッチング素子QN1がオン状態または逆導通動作中のときは、第2のゲート駆動回路4からオン信号が入力されることが望ましい。また、複数のスイッチング素子QN1、QN2、QN3の正常動作中は第2のゲート駆動回路4から常にオン信号が入力されるようにしてもよい。例えば、第2のゲート駆動回路4として、定電圧源を用いることができる。定電圧源を用いることで、第2のゲート駆動回路4を簡易な構成とすることができる。
【0040】
次に、実施例1の半導体装置10における駆動回路5の具体的な構成の一例を説明する。
【0041】
駆動回路5は、第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタAP1、AP2で構成された1段目からm-1段目までの第1の素子と、第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタBP1、BP2で構成された1段目からm-1段目までの第2の素子とを有する。ここではm=3なので1段目から2段目であるが、以下の説明ではmが4以上の場合も想定して説明する。
【0042】
1段目の第1の素子であるトランジスタAP1は、ドレインに第2のゲート駆動回路4からの信号が入力され、ゲートが次段のスイッチング素子QN2のソースに接続され、ソースが次段のスイッチング素子QN2のゲートに接続されている。
【0043】
1段目の第2の素子であるトランジスタBP1は、ドレインが次段のスイッチング素子QN1のソースに接続され、ゲートに第2のゲート駆動回路4からの信号が入力され、ソースが次段のスイッチング素子QN2のゲートに接続されている。
【0044】
2段目からm-1段目までの第1の素子であるトランジスタAP2は、ドレインが同じ段のスイッチング素子QN2のゲートに接続され、ゲートが次段のスイッチング素子QN3のソースに接続され、ソースが次段の前記スイッチング素子QN3のゲートに接続されている。
【0045】
2段目からm-1段目までの第2の素子であるトランジスタBP2は、ドレインが次段のスイッチング素子QN3のソースに接続され、ゲートが同じ段のスイッチング素子QN2のゲートに接続され、ソースが次段のスイッチング素子QN3のゲートに接続されている。
【0046】
次に、実施例1の半導体装置10の動作の一例を説明する。
【0047】
ここでは、スイッチング素子QN1、QN2、QN3と、トランジスタAP1、AP2、BP1、BP2のドレイン-ソース間耐圧が20Vであるとし、これらを接続して1つの半導体装置10として動作させる。したがって、半導体装置10のゲートは1段目のスイッチング素子QN1のゲート、ソースは1段目のトランジスタQN1のソース、ドレインは最終段である3段目のスイッチング素子QN3のドレインとなる。
【0048】
また、第2のゲート駆動回路4は少なくとも半導体装置10が導通動作(オン状態)または逆導通動作中はオン信号(例えばソース端子1の電位に対して+15Vの信号)を出力するものであり、実施例1では一例として、ソース端子1の電位に対して常に+15Vのオン信号を出力する定電圧源を用いている。
【0049】
まずは、ブロッキング時の動作について説明する。
【0050】
ブロッキング時の動作の一例として、ドレイン端子2に電圧が印加され、第1のゲート駆動回路3がオフ信号(例えば0V以下)を出力している状態を例に説明する。
【0051】
第1のゲート駆動回路3のオフ信号によってスイッチング素子QN1はオフ状態であり、スイッチング素子QN1のドレイン電位は上昇する。スイッチング素子QN1のドレイン電位が15V以上まで上昇するとトランジスタAP1がオフ状態となり、さらにトランジスタBP1がオン状態となる。したがって、スイッチング素子QN2のゲートとソースが同電位になり、スイッチング素子QN2がオフ状態となり、スイッチング素子QN2のドレイン電圧が上昇する。
【0052】
同様に、トランジスタAP2がオフ状態となり、さらにトランジスタBP2がオン状態となる。したがって、スイッチング素子QN3のゲートとソースが同電位になり、スイッチング素子QN3がオフ状態となり、スイッチング素子QN3のドレイン電圧が上昇する。
【0053】
上記の一連の動作によって、直列接続されたスイッチング素子QN1、QN2、QN3と直列接続されたトランジスタAP1、AP2が連動してオフ状態になり、高い耐電圧性能が発揮される。
【0054】
次に、導通時の動作について説明する。
【0055】
導通時の動作の一例として、負荷(図示せず)を介してドレイン端子2に電圧が印加され、第1のゲート駆動回路3がオン信号(例えば15V)を出力している状態を例に説明する。
【0056】
第1のゲート駆動回路3のオン信号によってスイッチング素子QN1はオン状態になり、スイッチング素子QN1のドレイン電位は低下する。したがって、トランジスタAP1がオン状態となり、トランジスタBP1はオフ状態となる。すると、第2のゲート駆動回路4から供給される電荷がスイッチング素子QN2のゲートに蓄積され、スイッチング素子QN2がオン状態になり、スイッチング素子QN2のドレイン電位は低下する。
【0057】
同様に、トランジスタAP2がオン状態となり、トランジスタBP2がオフ状態となる。すると、第2のゲート駆動回路4から供給される電荷がスイッチング素子QN3のゲートに蓄積され、スイッチング素子QN3がオン状態になり、ドレイン端子2の電位は低下する。
【0058】
上記の一連の動作によって、直列接続されたスイッチング素子QN1、QN2、QN3が連動してオン状態となり、電流を導通させることができる。
【0059】
次に、逆導通時の動作について説明する。
【0060】
逆導通時の動作の一例として、インバータの還流時に生じる、ソースからドレインに電流が流れる逆導通動作を想定し、第1のゲート駆動回路3がオフ信号(例えば0V以下)を出力している状態を例に説明する。
【0061】
第1のゲート駆動回路3のオフ信号によってスイッチング素子QN1はオフ状態であり、電流は還流ダイオード(この場合はスイッチング素子QN1に内蔵されたPNダイオード)を介してソースからドレインに流れる。
【0062】
このとき、スイッチング素子QN1のドレイン電位はソース電位より低いため、トランジスタAP1はオン状態であり、トランジスタBP1はオフ状態である。したがって、第2のゲート駆動回路4から供給される電荷がスイッチング素子QN2のゲートに蓄積され、スイッチング素子QN2はオン状態であり、電流はスイッチング素子QN2のチャネルを介してソースからドレインに流れる。
【0063】
同様に、スイッチング素子QN2のドレイン電位はソース電位より低いため、トランジスタAP2はオン状態であり、トランジスタBP2はオフ状態である。したがって、第2のゲート駆動回路4から供給される電荷がスイッチング素子QN3のゲートに蓄積され、スイッチング素子QN3はオン状態であり、電流はスイッチング素子QN3のチャネルを介してソースからドレインに流れる。
【0064】
上記の一連の動作によって、ソース端子1からドレイン端子2に向かって電流を逆導通することができる。この際、直列接続された2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3がオン状態であり、チャネルを介して電流が流れるため、2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3の還流ダイオード(この場合はスイッチング素子QN2、QN3に内蔵されたPNダイオード)による電圧降下を避けることができ、逆導通動作中の導通損失を低減できる。
【0065】
逆導通時の動作のもう一つの例として、第1のゲート駆動回路3がオン信号(例えば15V)を出力している状態を例に説明する。
【0066】
第1のゲート駆動回路3のオン信号によってスイッチング素子QN1はオン状態であり、電流はスイッチング素子QN1のチャネルを介してソースからドレインに流れる。また、スイッチング素子QN2、QN3では、上記説明と同様にチャネルを介してソースからドレインに流れる。
【0067】
上記の一連の動作によって、ソース端子1からドレイン端子2に向かって電流を逆導通することができる。この際、直列接続されたスイッチング素子QN1、QN2、QN3がオン状態であり、チャネルを介して電流が流れるため、スイッチング素子QN1、QN2、QN3の還流ダイオード(この場合はスイッチング素子QN1、QN2、QN3に内蔵されたPNダイオード)による電圧降下を避けることができ、逆導通動作中の導通損失を低減できる。
【0068】
次に、一部のスイッチング素子のドレイン-ソース間がショートする不良が発生した場合の動作について説明する。
【0069】
スイッチング素子のショート不良発生時の動作の一例として、スイッチング素子QN2のドレイン-ソース間がショートする不良が発生した場合を想定し、ドレイン端子2に電圧が印加され、第1のゲート駆動回路3がオフ信号(例えば0V以下)を出力している状態を例に説明する。
【0070】
上述した通り、第1のゲート駆動回路3のオフ信号によってスイッチング素子QN1とトランジスタAP1はオフ状態、トランジスタBP1はオン状態になるが、スイッチング素子QN2のドレイン-ソース間はショートしているためスイッチング素子QN2のドレイン-ソース間の電位差は小さい。しかしながら、この電位差が数ボルト以上(トランジスタBP2のゲート閾値電圧の絶対値+トランジスタBP2に内蔵されるPNダイオードの内蔵電位以上)であれば、トランジスタBP2はオン状態となり、スイッチング素子QN3のゲート-ソースが同電位となり、スイッチング素子QN3はオフされる。
【0071】
スイッチング素子QN2のドレイン-ソース間電位差が前記電位より小さい場合でも、トランジスタBP2のゲート閾値電圧の絶対値よりスイッチング素子QN3のゲート閾値電圧の絶対値が大きい場合はスイッチング素子QN3がオフ状態となる。したがって、第2の素子のゲート閾値の絶対値よりも次段のスイッチング素子のゲート閾値の絶対値よりも大きい構成とすることが望ましい。
【0072】
また、スイッチング素子のショート不良発生時の動作のもう一つの例として、負荷(図示せず)を介してドレイン端子2に電圧が印加され、ゲート駆動回路3がオン信号(例えば15V)を出力している状態を例に説明する。
【0073】
スイッチング素子QN2のドレイン-ソース間がショートしていても、導通時にはスイッチング素子QN1、QN2、QN3のドレイン-ソース間に印加される電圧は正常動作時と同様であり、正常時と同様に動作可能である。
【0074】
また、逆導通動作においても正常時と同様に動作可能である。
【0075】
以上によって、スイッチング素子QN2のドレイン-ソース間がショートしている場合においても次段のスイッチング素子QN3(直列数が多い場合は次段以降の全てのスイッチング素子)をオフすることができるため、正常時と比較して耐電圧性能の劣化は本来スイッチング素子QN2が担う部分のみに限定される。また、導通動作及び逆導通動作に関しては正常時と同様に動作可能である。
【0076】
従って半導体装置10全体のうち一部のスイッチング素子がショートしても半導体装置10全体の動作を継続することができる。
【0077】
以上説明したとおり、実施例1の半導体装置によれば、複数のパワートランジスタを直列して構成する半導体装置であって、個々のパワートランジスタにノーマリオフ型のパワートランジスタを用いることができ、なおかつ、逆導通動作時には常に2段目以降のパワートランジスタのゲートに正のゲート-ソース間電圧を印加して逆導通動作時の導通損失を低減することができ、一部のパワートランジスタのソース-ドレイン間が耐圧不良になった場合であっても半導体装置全体として著しい耐圧が低下しない、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【実施例0078】
図2は、実施例2の半導体装置の構成を示す回路図である。
【0079】
実施例2は、実施例1の変形例であり、実施例1との違いは、駆動回路5の1段目の第1の素子を、ダイオードD1に置き換えた点である。第1の導電型がn型の場合は、ダイオードD1は、アノード(a、以下符号省略)に第2のゲート駆動回路4からの信号が入力され、カソード(k、以下符号省略)が2段目のスイッチング素子QN2のゲートに接続されている。実施例2の特徴は、オン状態からオフ状態へ遷移するターンオフ動作が高速な点である。これ以外は実施例1の構成、効果と同様であるため、実施例1と異なる点を中心に説明し、重複する説明を省略する。
【0080】
まず、導通時の動作の一例として、負荷(図示せず)を介してドレイン端子2に電圧が印加され、第1のゲート駆動回路3がオン信号(例えば15V)を出力している状態を例に説明する。
【0081】
第1のゲート駆動回路3のオン信号によりスイッチング素子QN1はオン状態であり、スイッチング素子QN1のドレイン電位は低い。したがって、第2のゲート駆動回路の出力(15V)はダイオードD1を介してスイッチング素子QN2のゲートに入力され、スイッチング素子QN2がオン状態となり、スイッチング素子QN2のドレイン電圧が低下する。これ以降は、実施例1と同様に、スイッチング素子QN3もオン状態となり、結果として半導体装置10がオン状態となる。
【0082】
次に、ブロッキング時の動作の一例として、第1のゲート駆動回路3の出力がオン信号からオフ信号(例えば0V以下)に変化する動作を例に説明する。
【0083】
まず、第1のゲート駆動回路3からのオフ信号によってスイッチング素子QN1がオフ状態となり、スイッチング素子QN1のドレイン電位が上昇する。すると容量結合によってスイッチング素子QN2のゲート電位がソース端子1に対して上昇する。実施例1の構成ではオン状態のトランジスタAP1を介して第2のゲート駆動回路4に電荷を放電することによってスイッチング素子QN2のゲート電位はソース端子1に対して15Vに保持されたが、実施例2ではダイオードD1が接続されているため第2のゲート駆動回路4への放電が防止されると共に、ダイオードD1のカソード-アノード間に正の電位差が生じてトランジスタBP1がオン状態となる。従ってスイッチング素子QN2のゲート電荷がスイッチング素子QN1のドレインに流入し、スイッチング素子QN1のドレイン電位上昇を加速させる。以降の動作は実施例1と同様である。
【0084】
実施例2によれば、スイッチング素子QN1のドレイン電位上昇の加速によって、半導体装置10全体としてのターンオフ動作が高速化する。
【実施例0085】
図3は、実施例3の半導体装置の構成を示す回路図である。
【0086】
実施例3は、実施例1の変形例であり、実施例1との違いは、1段目からm-1段目までの第2の素子であるトランジスタBP1、BP2のドレインが、同じ段のスイッチング素子QN1、QN2のソースに接続されている点である。実施例3の特徴は、2段目以降のスイッチング素子QN2、QN3が、ノーマリオフ型でもノーマリオン型でも良く、また、混在していても良い点である。これ以外は実施例1の構成、効果と同様であるため、実施例1と異なる点を中心に説明し、重複する説明を省略する。
【0087】
まず、ブロッキング時の動作の一例として、ドレイン端子2に電圧が印加され、第1のゲート駆動回路3がオフ信号(例えば0V以下)を出力している状態を例に説明する。
【0088】
第1のゲート駆動回路3のオフ信号によってスイッチング素子QN1はオフ状態であり、スイッチング素子QN1のドレイン電位は上昇する。スイッチング素子QN1のドレイン電位が15V以上まで上昇するとトランジスタAP1がオフ状態となり、さらにトランジスタBP1がオン状態となる。したがって、スイッチング素子QN2のゲートとソース端子1が同電位になり、スイッチング素子QN2のゲート-ソース間にはスイッチング素子QN1のドレイン-ソース間に印加されている電圧と同じ大きさの負電圧が印加されるため、スイッチング素子QN2がオフ状態となり、スイッチング素子QN2のドレイン電圧が上昇する。
【0089】
同様に、トランジスタAP2がオフ状態となり、さらにトランジスタBP2がオン状態となる。したがって、スイッチング素子QN3のゲートとスイッチング素子QN2のソースが同電位になり、スイッチング素子QN3のゲート-ソース間にはスイッチング素子QN2のドレイン-ソース間に印加されている電圧と同じ大きさの負電圧が印加されるため、スイッチング素子QN3がオフ状態となり、スイッチング素子QN3のドレイン電圧が上昇する。
【0090】
実施例3によれば、スイッチング素子QN2、QN3のゲート-ソース間に負電圧を印加できるため、スイッチング素子QN2、QN3がノーマリオフ型であってもオフすることが可能である。
【0091】
なお、実施例3の構成を、実施例2に適用してもよい。
【実施例0092】
図4は、実施例4の半導体装置の構成を示す回路図である。
【0093】
実施例4は、実施例1の変形例であり、実施例1との違いは、第1の導電型としてp型、第2の導電型としてn型を用いた点である。したがって、スイッチング素子QP1、QP2、QP3は、p型のトランジスタで構成され、トランジスタAN1、AN2、BN1、AN2は、n型のトランジスタで構成されている。したがって、ドレイン端子2はソース端子1より電位が低い構成となっている。実施例4の基本的な回路構成は、導電型が実施例1と入れ替わっただけで実施例1と同じである。これ以外は実施例1の構成、効果と同様であるため、実施例1と異なる点を中心に説明し、重複する説明を省略する。
【0094】
第1のゲート駆動回路3からは、オン信号として例えば-15Vが、オフ信号として例えば0V以上が入力され、第2のゲート駆動回路4として、例えばソース端子1の電位に対して常に-15Vのオン信号が入力される定電圧源を用いることができるが、実施例1と同 様に、これに限られるものではない。
【0095】
実施例4の動作は、導電型が実施例1と入れ替わったことによる違いを除けば実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0096】
実施例4によれば、第1の導電型としてp型、第2の導電型としてn型を用いても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0097】
なお、実施例3の構成を、実施例4に適用してもよい。
【実施例0098】
図5は、実施例5の半導体装置の構成を示す回路図である。
【0099】
実施例5は、実施例4の変形例であり、実施例4と実施例2の組み合わせである。実施例4との違いは、実施例2と同様に、駆動回路5の1段目の第1の素子を、ダイオードD1に置き換えた点である。実施例2との違いは、第1の導電型がp型なので、ダイオードD1は、カソードに第2のゲート駆動回路4からの信号が入力され、アノードが2段目のスイッチング素子QP2のゲートに接続されている点である。実施例5の特徴は、実施例2と同様に、オン状態からオフ状態へ遷移するターンオフ動作が高速な点である。これ以外は実施例4の構成、効果と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0100】
なお、実施例3の構成を、実施例5に適用してもよい。
【実施例0101】
図6は、実施例6の半導体装置の構成を示す回路図である。
【0102】
実施例6は、実施例1の変形例であり、実施例1との違いは、半導体装置20のスイッチング素子QHN1、QHN2、QHN3として、実施例1の例えば耐圧20Vのスイッチング素子QN1、QN2、QN3よりも耐圧が高い、例えば耐圧が100Vのスイッチング素子を用いた点と、駆動回路5が、第3の素子として、例えば耐圧80VのトランジスタCP1、CP2を有する点である。実施例1では、ブロッキング状態においてスイッチング素子QN2のゲートからスイッチング素子QN3までの電圧、トランジスタAP2のソースからドレインまでの電圧、さらにトランジスタBP2のゲートからソースまでの電圧が等しいという関係があるため、スイッチング素子のドレイン-ソース間耐圧はトランジスタBP2のゲート-ソース間耐圧(一般的には20V程度)で制限される。これに対して、本実施例6では、スイッチング素子QHN1、QHN2、QHN3のドレイン-ソース間に印加できる電圧が駆動回路5の第2の素子であるトランジスタBP1、BP2のゲート-ソース間耐圧に制限されないことが特徴である。これ以外は実施例1の構成、効果と同様であるため、実施例1と異なる点を中心に説明し、重複する説明を省略する。
【0103】
実施例6の半導体装置20は、基本的には実施例1の半導体装置10と同様であるが、駆動回路5は、1段目からm-1段目までの第3の素子として、第2の導電型を有するノーマリオフ型のトランジスタCP1、CP2を有する。1段目からm-1段目までの第3の素子であるトランジスタCP1、CP2は、ゲートが次段のスイッチング素子QN2、QN3のソースに接続され、2段目からm-1段目までの第3の素子であるトランジスタCP2は、ドレインが同じ段のスイッチング素子QHN2のゲートに接続され、2段目からm-1段目までの第1の素子であるトランジスタAP2は、ドレインが同じ段の第3の素子であるトランジスタCP2を介して同じ段のスイッチング素子QHN2のゲートに接続され、1段目の第3の素子であるトランジスタCP1は、ドレインに第2のゲート駆動回路4からの信号が入力され、1段目の第1の素子であるトランジスタAP1は、1段目の第3の素子であるトランジスタCP1を介して第2のゲート駆動回路4からの信号が入力され、1段目の第2の素子であるトランジスタBP1は、1段目の第3の素子であるトランジスタCP1を介してゲートに第2のゲート駆動回路4からの信号が入力されている。
【0104】
実施例1のように1段目の第1の素子がトランジスタAP1の場合は、トランジスタAP1のドレインが同じ段の第3の素子であるトランジスタCP1を介して第2のゲート駆動回路4に接続され、第2のゲート駆動回路4からの信号が入力される。
【0105】
なお、実施例6は実施例2と組み合わせてもよく、実施例2のように1段目の第1の素子がダイオードD1の場合は、ダイオードD1のアノードが同じ段の第3の素子であるトランジスタCP1を介して第2のゲート駆動回路4に接続され、第2のゲート駆動回路4からの信号が入力されるようにすればよい。
【0106】
実施例6では、スイッチング素子QHN1、QHN2、QHN3の耐圧を例えば100Vとしたが、任意の耐圧のスイッチング素子を用いてもよい。また、第3の素子であるトランジスタCP1、CP2の耐圧を例えば80Vとしたが、任意の耐圧のトランジスタを用いてもよい。
【0107】
次に、実施例6の半導体装置20の動作の一例を説明する。
【0108】
ブロッキング時の動作は、トランジスタCP1、CP2が、それぞれトランジスタAP1、AP2と同じタイミングでオフ状態となること以外は、実施例1と同じである。これによって、直列接続されたスイッチング素子QHN1、QHN2、QHN3と直列接続されたトランジスタCP1、AP1、CP2、AP2が連動してオフ状態になり、高い耐電圧性能が発揮される。
【0109】
実施例6ではスイッチング素子QHN1、QHN2、QHN3の耐圧がそれぞれ100 V、またトランジスタCP1、CP2の耐圧がそれぞれ80Vと高いため、半導体装置20としての耐圧は300Vと高い。
【0110】
導通時の動作は、トランジスタCP1、CP2が、それぞれトランジスタAP1、AP2と同じタイミングでオン状態となること以外は、実施例1と同じである。
【0111】
逆導通時の動作は、トランジスタCP1、CP2が、それぞれトランジスタAP1、AP2と同じタイミングでオン状態となること以外は、実施例1と同じである。
【0112】
スイッチング素子のショート不良発生時の動作は、トランジスタCP1、CP2が、それぞれトランジスタAP1、AP2と同じタイミングでオフ状態となること以外は、実施例1と同じである。
【0113】
実施例6では、2段目のスイッチング素子QHN2の耐圧を、1段目の第3の素子であるトランジスタCP1の耐圧と1段目の第1の素子であるトランジスタAP1の耐圧との合計にすることができる。それ以降の段についても同様である。したがって、実施例6によれば、スイッチング素子QHN1、QHN2、QHN3のドレイン-ソース間に印加できる電圧が駆動回路5の第2の素子であるトランジスタBP1、BP2のゲート-ソース間耐圧に制限されないため、個々のパワートランジスタのソース-ドレイン間耐圧とゲート-ソース間耐圧を独立に設計可能であり、設計・製造上の自由度の高い半導体装置を実現することができる。
【0114】
なお、実施例2との組み合わせに限られず、実施例3から5の構成を、実施例6に適用してもよい。
【実施例0115】
図7は、実施例7の半導体装置の構成を示す回路図である。
【0116】
実施例7は、実施例6の変形例であり、実施例6との違いは、駆動回路5は、1段目からm-1段目までの第4の素子として、それぞれ互いに逆並列に接続されたダイオードE1、E2を有し、1段目からm-1段目までの第3の素子であるトランジスタCP1、CP2は、ゲートが同じ段の第4の素子である互いに逆並列に接続されたダイオードE1、E2を介して次段のスイッチング素子QHN2、QHN3のソースに接続されている点である。実施例7によれば、実施例6よりもターンオフ動作が高速になる。これ以外は実施例6の構成、効果と同様であるため、実施例6と異なる点を中心に説明し、重複する説明を省略する。
【0117】
実施例7の動作について、第1のゲート駆動回路3の出力がオン信号(例えば15V)からオフ信号(例えば0V以下)に変化する時の動作を例に説明する。
【0118】
第1のゲート駆動回路3のオフ信号によってスイッチング素子QHN1はオン状態からオフ状態に遷移し、スイッチング素子QHN1のドレインの電位は上昇する。スイッチング素子QHN1のドレイン電位が15V以上まで上昇するとまずトランジスタAP1がオン状態からオフ状態に遷移し、トランジスタBP1がオフ状態からオン状態に遷移する。
【0119】
このとき、トランジスタCP1のゲート電圧は互いに逆並列に接続されたダイオードE1の内蔵電位の分だけトランジスタAP1のゲート電位より低いため、まだオフ状態に遷移していない。したがって、スイッチング素子QHN2のゲートとソースが同電位になり、スイッチング素子QHN2がオフ状態となる。さらにスイッチング素子QHN1のドレイン電位が上昇するとトランジスタCP1がオン状態からオフ状態に遷移する。
【0120】
スイッチング素子QHN2はオフ状態に遷移したため、スイッチング素子QHN2のドレイン電位が上昇し、まずトランジスタAP2がオン状態からオフ状態に遷移し、トランジスタBP2がオフ状態からオン状態に遷移する。
【0121】
このとき、トランジスタCP2のゲート電圧は互いに逆並列に接続されたダイオードE2の内蔵電位の分だけトランジスタAP2のゲート電位より低いため、まだオフ状態に遷移していない。したがってスイッチング素子QHN3のゲートとソースが同電位になり、スイッチング素子QHN3がオフ状態となる。さらにスイッチング素子QHN2のドレイン電位が上昇するとトランジスタCP2がオン状態からオフ状態に遷移する。
【0122】
スイッチング素子QHN3はオフ状態に遷移したため、スイッチング素子QHN3のドレイン電位が上昇する。
【0123】
上記の一連の動作によって、直列接続されたスイッチング素子QHN1、QHN2、QHN3と直列接続されたトランジスタCP1、AP1、CP2、AP2が連動してオフ状態になり、高い耐電圧性能が発揮される。
【0124】
実施例7では、上記のとおりトランジスタAP1がトランジスタCP1より早くオフし、トランジスタAP2がトランジスタCP2より早くオフするため、オフ状態になったトランジスタAP1、AP2のソース-ドレイン間電圧の上昇が早くなり、結果としてトランジスタBP1、BP2のターンオンが早くなる。トランジスタBP1、BP2が早くターンオンすることによってスイッチング素子QHN2、QHN3のゲートに蓄積された電荷が早く放電されるため、スイッチング素子QHN2、QHN3のターンオフが高速になる。
【0125】
なお、実施例6と同様に、実施例2から5の構成を、実施例7に適用してもよい。
【実施例0126】
実施例8は、実施例6および実施例7の変形例であり、実施例6との違いは、駆動回路5は、1段目からm-1段目までの第3の素子であるトランジスタCP1、CP2のゲート閾値の絶対値が、同じ段の第1の素子であるトランジスタAP1、AP2のゲート閾値の絶対値よりも小さい点である。実施例7との違いは、実施例7では互いに逆並列に接続されたダイオードE1、E2によって第3の素子であるトランジスタCP1、CP2がオフするタイミングを第1の素子であるトランジスタAP1、AP2よりも遅らせていたのに対して、実施例8ではゲート閾値の絶対値を調整することでこれを実現している点である。実施例8によれば、実施例7と同様に、実施例6よりもターンオフ動作が高速になる。
【0127】
実施例8の回路構成としては図6と同じである。なお、実施例8の構成を実施例7に適用し、図7の回路構成でさらにゲート閾値の絶対値を実施例8のようにしてもよい。
【0128】
これ以外は実施例6の構成、効果と同様であるため、重複する説明を省略する。
【実施例0129】
実施例9は、電力変換装置の実施例である。
【0130】
実施例1から8の何れかに記載の半導体装置10、20、あるいは、実施例1から8を適宜組み合わせて適用した半導体装置を、電力変換装置のスイッチング素子として用いることができる。電力変換装置の構成は一般的なものであるため、詳細な説明は省略する。
【0131】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0132】
1…ソース端子
2…ドレイン端子
3…第1のゲート駆動回路
4…第2のゲート駆動回路
5…駆動回路
10、20…半導体装置
AP1、AP2、AN1、AN2…トランジスタ(第1の素子)
BP1、BP2、BN1、BN2…トランジスタ(第2の素子)
CP1、CP2…トランジスタ(第3の素子)
D1…ダイオード(第1の素子)
E1、E2…互いに逆並列に接続されたダイオード(第4の素子)
QN1、QN2、QN3、QP1、QP2、QP3、QHN1、QHN2、QHN3…スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7