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特開2023-166753ガラス板の製造方法、ガラス板及びガラス板梱包体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166753
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法、ガラス板及びガラス板梱包体
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/02 20060101AFI20231115BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20231115BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C03B33/02
B28D5/00 Z
B26F3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077506
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茂嘉
(72)【発明者】
【氏名】澤里 拡志
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
4G015
【Fターム(参考)】
3C060AA08
3C060CB03
3C060CB14
3C069AA03
3C069BA04
3C069BB04
3C069BC04
3C069CA11
3C069EA05
4G015FA03
4G015FA04
4G015FB02
4G015FC04
4G015FC10
(57)【要約】
【課題】パレットに縦姿勢で積載されるガラス板の破損を防止する。
【解決手段】ガラス板の製造方法は、ガラス板G1を縦姿勢で支持した状態で、ガラス板G1の幅方向の端部Gaを除去する切断工程S3を備える。切断工程S3は、スクライブ工程と、折割り工程と、を含む。スクライブ工程では、スクライブ線SL2の下部BP1におけるメディアンクラックMCの最大深さが、スクライブ線SL2の中間部MP1又は上部UP1におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも浅くなるように、スクライブ線SL2を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板を縦姿勢で支持した状態で、前記ガラス板の幅方向の端部を除去する切断工程を備えるガラス板の製造方法であって、
前記切断工程は、スクライブツールによって前記ガラス板にメディアンクラックを含むスクライブ線を上下方向に沿って形成するスクライブ工程と、前記スクライブ線が形成された前記ガラス板に曲げ応力を付与して折割る折割り工程と、を含み、
前記スクライブ工程では、前記スクライブ線の下部における前記メディアンクラックの最大深さが、前記スクライブ線の上部又は中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅くなるように、前記スクライブ線を形成することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記スクライブ線の前記中間部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記スクライブ線の前記上部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅い請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記スクライブ線の前記上部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記スクライブ線の前記中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅い請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
矩形状のガラス板と、前記ガラス板が縦姿勢で積層されるパレットとを備えるガラス板梱包体であって、
前記ガラス板は、幅方向の端部に、上下方向に延びる端面を有しており、
前記端面は、メディアンクラックを含むスクライブ痕を有する折割面であり、
前記端面の下部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記端面の上部又は中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅いことを特徴とするガラス板梱包体。
【請求項5】
前記端面の前記中間部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記端面の前記上部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅い請求項4に記載のガラス板梱包体。
【請求項6】
前記端面の前記上部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記端面の前記中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅い請求項4に記載のガラス板梱包体。
【請求項7】
矩形状のガラス板であって、
板引き方向に延びる端面を有し、
前記端面は、メディアンクラックを有する折割面であり、
前記端面の板引き方向における一方の端部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記端面の前記板引き方向における他端部又は中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅いことを特徴とするガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法、ガラス板及びガラス板梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイには、ガラス基板やカバーガラスとしてガラス板が用いられる。ガラス板を製造する方法としては、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法及びリドロー法に代表されるダウンドロー法を利用した手法が広く採用されている。オーバーフローダウンドロー法を利用したガラス板の製造方法の一例としては、以下に示すようなものが挙げられる。
【0003】
ガラス板の製造方法では、特許文献1に開示されているように、ガラスリボンを成形する成形工程と、成形されたガラスリボンからスクライブ切断によりガラス板を切り出す第一切断工程(X切断工程)とを実施する。
【0004】
成形工程では、楔状をなす成形体の頂部に設けたオーバーフロー溝に溶融ガラスを供給して溢れ出させる。溢れ出た溶融ガラスを、それぞれ成形体の側面部に沿って流下させた後、成形体の下端部で融合一体化させる。これにより、板状のガラスリボンを成形する。その後、成形されたガラスリボンは、上下複数段に配置されたローラ対によって表裏両側から挟持された状態で下方に板引きされていく。このようにして得られるガラスリボンの幅方向両端部には、幅方向中央部よりも厚みの大きい耳部がそれぞれ形成される。
【0005】
第一切断工程で行われるスクライブ切断は、下方に搬送されてくるガラスリボンの主面に幅方向に沿うスクライブ線を形成し、スクライブ線の周辺領域を湾曲させて曲げ応力を付与してスクライブ線に沿ってガラスリボンを切断するものである。これにより、ガラスリボンから矩形状のガラス板が切り出される。
【0006】
次に、ガラス板の製造方法では、特許文献2に開示されているように、上述のガラス板の幅方向両端部に形成されている耳部をスクライブ切断により除去する第二切断工程(Y切断工程)を実施する。
【0007】
第二切断工程で行われるスクライブ切断は、縦姿勢に保持されているガラス板の幅方向端部側の主面に上下方向に沿うスクライブ線を形成する。その後、スクライブ線の周辺領域を湾曲させて曲げ応力を付与してスクライブ線に沿ってガラスリボンを切断する。このスクライブ切断は、ガラス板の幅方向一端部側及び他端部側についてそれぞれ別々に行われる。この結果、幅方向の両端部に耳部を有しないガラス板が得られる。
【0008】
次に、ガラス板の製造方法では、特許文献3に開示されているように、耳部が除去されたガラス板をパレットに積載し、梱包する工程(梱包工程)を実施する。この梱包工程により、複数のガラス板を縦姿勢でパレットに梱包してなるガラス板梱包体が形成される。ガラス板梱包体は、次の工程に移送され、或いは次の工程が実施されるまで保管されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-202958号公報
【特許文献2】特開2017-226549号公報
【特許文献3】特開2020-75752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来のガラス板の製造方法では、ガラス板梱包体に梱包されているガラス板は、その幅方向の両端面に、スクライブ線の形成によるスクライブ痕が残存している。このため、例えばガラス板梱包体を搬送する際に、ガラス板に衝撃が加わったり、過度な応力が作用したりすることで、スクライブ痕から割れが発生するおそれがある。このような割れは、縦姿勢でパレットに積載されるガラス板の下部で特に発生し易い。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、パレットに縦姿勢で積載されるガラス板の破損を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス板を縦姿勢で支持した状態で、前記ガラス板の幅方向の端部を除去する切断工程を備えるガラス板の製造方法であって、前記切断工程は、スクライブツールによって前記ガラス板にメディアンクラックを含むスクライブ線を上下方向に沿って形成するスクライブ工程と、前記スクライブ線が形成された前記ガラス板に曲げ応力を付与して折割る折割り工程と、を含み、前記スクライブ工程では、前記スクライブ線の下部における前記メディアンクラックの最大深さが、前記スクライブ線の上部又は中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅くなるように前記スクライブ線を形成することを特徴とする。
【0013】
折割り工程後のガラス板の端面には、スクライブ線に起因するスクライブ痕が残存しており、スクライブ痕はメディアンクラックを含む。ガラス板の端面は、その下部においてメディアンクラックの最大深さが深くなる程、割れが生じ易くなる。本発明では上記のように、スクライブ線の下部におけるメディアンクラックの最大深さを浅くすることで、得られるガラス板の端面の下部におけるメディアンクラックの最大深さを浅くすることができる。これにより、縦姿勢でパレットに積載されたガラス板の下部の破損を防止することが可能となる。
【0014】
加えて、スクライブ線の上部又は中間部におけるメディアンクラックの最大深さをスクライブ線の下部におけるメディアンクラックの最大深さよりも深くすることで、折割り工程において、スクライブ線の上部又は中間部におけるメディアンクラックが起点となってクラックが進展するので、ガラス板に付与する曲げ応力を可及的に小さくすることができる。これにより、折割り工程において、スクライブ線の上部又は中間部から発生するガラス粉の量を可及的に低減することができる。
【0015】
本発明に係るガラス板の製造方法において、前記スクライブ線の前記中間部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記スクライブ線の前記上部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅くてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、折割り工程において、スクライブ線の上部からクラックを下方の中間部及び下部に向かって安定的に進展させることができる。これにより、切断工程における切断不良の発生を防止することが可能となる。また、ガラス板が反りを有している場合であっても、切断不良を発生させることなくガラス板を折割ることが可能となる。
【0017】
本発明に係るガラス板の製造方法において、前記スクライブ線の前記上部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記スクライブ線の前記中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅くてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、折割り工程において、スクライブ線の中間部からクラックを上方及び下方に安定的に進展させることができる。これにより、ガラス板の折割りを精度良く行うことができる。また、スクライブ線の上部におけるメディアンクラックの最大深さが浅くなることで、切断工程後のガラス板を搬送する際に、ガラス板の上部をチャック等の保持手段によって保持した場合であっても、この上部の破損を防止することができる。
【0019】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、矩形状のガラス板と、前記ガラス板が縦姿勢で積層されるパレットとを備えるガラス板梱包体であって、前記ガラス板は、幅方向の端部に、上下方向に延びる端面を有しており、前記端面は、メディアンクラックを含むスクライブ痕を有する折割面であり、前記端面の下部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記端面の上部又は中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅いことを特徴とする。
【0020】
ガラス板の端面は、その下部においてメディアンクラックの最大深さが深くなる程、割れが生じ易くなる。本発明では上記のように、上下方向に延びる端面の下部におけるメディアンクラックの最大深さを浅くすることで、縦姿勢でパレットに積載されたガラス板の下部の破損を防止することが可能となる。
【0021】
本発明に係るガラス板梱包体において、前記端面の前記中間部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記端面の前記上部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅くてもよい。
【0022】
本発明に係るガラス板梱包体において、前記端面の前記上部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記端面の前記中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅くてもよい。
【0023】
かかる構成によれば、ガラス板梱包体を製造するにあたり、ガラス板の上部をチャック等の保持手段によって保持した場合であっても、衝撃等によるガラス板の上部の破損を防止することができる。
【0024】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、矩形状のガラス板であって、板引き方向に延びる端面を有し、前記端面は、メディアンクラックを含むスクライブ痕を有する折割面であり、前記端面の板引き方向における一方の端部における前記メディアンクラックの最大深さは、前記端面の前記板引き方向における他端部又は中間部における前記メディアンクラックの最大深さよりも浅いことを特徴とする。
【0025】
かかる構成によれば、メディアンクラックの最大深さが浅くなった端面の一方の端部がガラス板の下部に位置するように、ガラス板をパレットに積載することで、ガラス板の下部の破損を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、パレットに縦姿勢で積載されるガラス板の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ガラス板の製造方法を示すフローチャートである。
図2】ガラス板の製造方法の一部を示す斜視図である。
図3】ガラス板の製造方法における第二切断工程を示す側面図である。
図4】ガラス板の一例を示す斜視図である。
図5図4のガラス板に関するスクライブ線の位置と、メディアンクラックの深さとの関係を示すグラフである。
図6】ガラス板の他の例を示す斜視図である。
図7図6のガラス板に関するスクライブ線の位置と、メディアンクラックの深さとの関係を示すグラフである。
図8】ガラス板の他の例を示す斜視図である。
図9図8のガラス板に関するスクライブ線の位置と、メディアンクラックの深さとの関係を示すグラフである。
図10】ガラス板の製造方法における梱包工程を示す斜視図である。
図11】ガラス板梱包体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図11は、本発明に係るガラス板及びその製造方法並びにガラス板梱包体の一実施形態を示す。
【0029】
図1に示すように、本発明に係るガラス板の製造方法は、成形工程S1と、第一切断工程S2と、第二切断工程S3と、梱包工程S4と、を主に備える。
【0030】
成形工程S1は、溶融ガラスGMからガラスリボンGRを成形する工程である。図2に示すように、成形工程S1では、楔状をなす成形体1の頂部のオーバーフロー溝1aに溶融ガラスGMを供給して溢れ出させる。溢れ出た溶融ガラスGMを、それぞれ成形体1の側面部に沿って流下させた後、成形体1の下端部で融合一体化させる。
【0031】
これにより、板状のガラスリボンGRを成形する。その後、成形されたガラスリボンGRは、上下複数段に配置されたローラ対(図示略)によって表裏両側から挟持された状態で下方に板引きされていく。上下複数段に配置されたローラ対の最上段には、冷却ローラ対が配置される。本実施形態では、成形工程S1における板引き方向Yは、上下方向に沿うように設定されている。
【0032】
成形されたガラスリボンGRは、第一主面2と、第二主面3とを有する。本実施形態では、第一主面2が非保証面、第二主面3が保証面とされたガラスリボンGRを例示する。ここで、保証面は、ガラスリボンGRから最終的に得られるガラス板における素子等が形成される面であって、その面性状が保証される面であるのに対し、非保証面は、保証面の程度まで面性状が保証されなくともよい面である。
【0033】
ガラスリボンGRの幅方向両端部Gaには、幅方向中央部よりも厚みの大きい耳部がそれぞれ形成されている。ガラスリボンGRの幅方向中央部の厚みは、1000μm以下、好ましくは700μm以下であり、より好ましくは500μm以下であり、その下限値は例えば50μm以上である。
【0034】
第一切断工程S2は、成形工程S1で成形されたガラスリボンGRから幅方向Xに沿うスクライブ切断により第一ガラス板G1を切り出す工程である。第一切断工程S2は、スクライブツールによってガラスリボンGRにスクライブ線SL1を形成するスクライブ工程と、スクライブ線SL1が形成されたガラスリボンGRに曲げ応力を付与して折割る折割り工程と、を含む。
【0035】
スクライブ工程では、スクライブツールとしてのスクライブホイール4がガラスリボンGRの表面に押圧されつつ、鎖線で示す位置から実線で示す位置に移動することで、ガラスリボンGRの第一主面2に幅方向Xに沿うスクライブ線SL1を形成する。
【0036】
このとき、スクライブ線SL1の形成領域は第二主面3側から支持部材(図示略)により支持されている。スクライブホイール4及び支持部材の下方には、把持機構5が配置されているが、スクライブ工程において把持機構5は作動していない。
【0037】
スクライブ線SL1が形成された後、スクライブホイール4及び支持部材は退避位置に退避する。なお、図例では、スクライブ線SL1は、ガラスリボンGRの幅方向両端縁に到達していないが、当該両端縁に到達していてもよい。
【0038】
次いで、折割り工程では、折割部材6がスクライブ線SL1の形成領域を第二主面3側から支持した状態で、ガラスリボンGRの下端部を把持した把持機構5が矢印aの方向に回動していくことで、スクライブ線SL1に曲げ応力を付与する。これにより、ガラスリボンGRをスクライブ線SL1に沿って折割ることができる。この折割りによるスクライブ切断によって、幅方向両端部Gaに耳部を有する矩形状の第一ガラス板G1が切り出される。
【0039】
第一ガラス板G1は、搬送装置7によって第二切断工程S3を実行可能な位置まで搬送される(搬送工程)。搬送装置7は、第一ガラス板G1を縦姿勢で保持した状態で搬送するように構成される。搬送装置7は、第一ガラス板G1の上部を保持する保持部7aを有する。
【0040】
保持部7aは、例えば第一ガラス板G1を把持するチャックにより構成されるが、これに限らず、吸着パッド等の保持手段により構成されてもよい。保持部7aは、ガイドレール等によって所定の方向に移動可能に構成される。保持部7aは、第一ガラス板G1の上部のみを保持し、縦姿勢の第一ガラス板G1を宙吊り状態で搬送する。
【0041】
第二切断工程S3は、第一ガラス板G1の幅方向端部Gaを切断する工程である。すなわち、第二切断工程S3では、第一ガラス板G1を搬送装置7によって縦姿勢で支持した状態で、その幅方向両端部Gaをそれぞれ縦方向に沿うスクライブ切断により除去して第二ガラス板G2を切り出す。
【0042】
第二切断工程S3は、スクライブツールによって第一ガラス板G1にメディアンクラックMCを含むスクライブ線SL2を形成するスクライブ工程と、スクライブ線SL2が形成された第一ガラス板G1に曲げ応力を付与して折割る折割り工程と、を含む。
【0043】
スクライブ工程では、第一ガラス板G1の第二主面3の一部を二個の支持部材(図示略)によって支持する。この状態で、スクライブツールとしての二個のスクライブホイール8が第一ガラス板G1の幅方向両端部Gaの所定位置(耳部よりも僅かに幅方向内側の位置)にそれぞれスクライブ線SL2を形成する。
【0044】
二個のスクライブホイール8は、第一ガラス板G1の第一主面2における幅方向両端部Gaの所定位置をそれぞれ押圧しつつ、鎖線で示す位置から実線で示す位置に移動する。これにより、第一ガラス板G1の第一主面2に縦方向に沿う二本のスクライブ線SL2が形成される。
【0045】
スクライブ線SL2は、板引き方向Yに対応するように、上下方向に沿う直線状に構成される。スクライブ線SL2は、始端部SL2aと、終端部SL2bとを有する。本実施形態において、スクライブ線SL2の始端部SL2aは、第一ガラス板G1の上端部よりも下方に位置するが、これに限らず、第一ガラス板G1の上端部にスクライブ線SL2の始端部SL2aを設定してもよい。第一ガラス板G1の上端面からスクライブ線SL2の始端部SL2aまでの距離は例えば10mm~300mmである。
【0046】
スクライブ線SL2の終端部SL2bは、第一ガラス板G1の下端部よりも上方に位置するが、これに限らず、第一ガラス板G1の下端部にスクライブ線SL2の終端部SL2bを設定してもよい。第一ガラス板G1の下端面からスクライブ線SL2の終端部SL2aまでの距離は例えば10mm~300mmである。この場合、二本のスクライブ線SL2は、同時に形成してもよく、時間経過を経て別々に形成してもよい。また、スクライブ線SL2の始端部SL2aと終端部SL2bは、上下の位置が逆になっていてもよい。
【0047】
以下、スクライブ線SL2の上部は、スクライブ線SL2の上端部(始端部SL2a)を始点とし、第一ガラス板G1の上端面から25%下方にある位置を終点とし、符号UP1で示す。また、スクライブ線SL2の下部は、スクライブ線SL2の下端部(終端部SL2b)を始点とし、第一ガラス板G1の下端面から25%上方にある位置を終点とし、符号BP1で示す。また、スクライブ線SL2の上部UP1と下部BP1との間の部分を、スクライブ線SL2の中間部といい、符号MP1で示す。なお、上端面から25%下方にある位置とは、第一ガラス板G1の上端面から下端面までの長さに0.25を乗じた値を距離Aとした場合に、上端面から距離Aだけ下方にある位置を意味する。また、下端面から25%上方にある位置とは、下端面から上記距離Aだけ上方にある位置を意味する。
【0048】
図3に示すように、スクライブ線SL2は、第一ガラス板G1に、塑性変形層PDLと、メディアンクラックMCとを形成する。塑性変形層PDLは、第一ガラス板G1の第一主面2がスクライブホイール8で押圧されることにより形成される。メディアンクラックMCは、リブマークと呼ばれる第一のクラックMCaと、この第一のクラックMCaよりも深い位置に形成される第二のクラックMCbとが一体に形成されたものである。本実施形態において、第一のクラックMCaの深さD1と第二のクラックMCbの深さD1とを合わせた深さ(D1+D2)を、「メディアンクラックの深さ」という。
【0049】
本実施形態に係るスクライブ工程では、第一ガラス板G1の第一主面2に対するスクライブホイール8の押圧力を調整することにより、スクライブ線SL2は、その長手方向(板引き方向Y)に沿ってメディアンクラックMCの深さが異なるように形成される。
【0050】
図2に示すように、折割り工程では、第一ガラス板G1の第二主面3側を二つの支持部材9により支持させた状態で、二本のスクライブ線SL2に沿って第一ガラス板G1を折割る。この場合、第一ガラス板G1の二本のスクライブ線SL2よりも僅かに幅方向中央側の部位をそれぞれ支持部材9により支持する。この状態で、第一ガラス板G1の幅方向両端部Gaを第一主面2側から押込み部材(図示略)により裏側(第二主面3側)に向かって押し込むことで、第一ガラス板G1を折割る。
【0051】
この二箇所での折割りによるスクライブ切断によって、第一ガラス板G1の耳部を含む幅方向両端部Gaが除去される。これにより、耳部を有しない第二ガラス板G2が得られる。この場合、二箇所でのスクライブ切断は、同時に実行してもよく、時間経過を経て別々に行ってもよい。得られる第二ガラス板G2は、幅方向の寸法が例えば1500mm以上であり、2000mm以上であることが好ましく、3000mm以上であることがより好ましい。一方、上限は例えば4000mm以下とすることができる。また、第二ガラス板G2の板引き方向の寸法は、例えば1300mm以上であり、2000mm以上であることが好ましく、2500mm以上であることがより好ましい。一方、上限は例えば3600mm以下とすることができる。
【0052】
なお、第二ガラス板G2の板引き方向は、例えば、暗室で第二ガラス板G2の角度を調整しながら光源(例えばキセノンライト)から光を照射し、その透過光をスクリーンに投影することで、筋状の縞模様として観測できる。従って、成形後の第二ガラス板G2の状態であっても、成形時の板引き方向Yを特定できる。
【0053】
第二ガラス板G2は、上端面ESUと、下端面ESBと、第一ガラス板G1の幅方向両端部Gaが除去されることによって新たに形成される一対の側端面ESSと、を有する。第二ガラス板G2の上端面ESU及び下端面ESBは、縦姿勢の第二ガラス板G2において水平方向に沿って延びる長尺状の面である。第二ガラス板G2の側端面ESSは、板引き方向Yに対応する上下方向に沿って延びる長尺状の折割面である。この側端面ESSには、第二切断工程S3(スクライブ工程)によって形成されたメディアンクラックMCを含むスクライブ痕が残存している。
【0054】
以下、第二ガラス板G2の上端面ESUから下方に25%(上端面ESUから下端面ESBまでの長さの25%)までの範囲の側端面ESSの部分を、側端面ESSの上部(端部)といい、符号UP2で示す。また、第二ガラス板G2の下端面ESBから上方に25%までの範囲の側端面ESSの部分を、側端面ESSの下部(端部)といい、符号BP2で示す。また、側端面ESSの上部UP2と下部BP2との間の部分を、側端面ESSの中間部といい、符号MP2で示す。
【0055】
第二切断工程S3によって第一ガラス板G1に形成されるスクライブ線SL2のメディアンクラックMCの深さは、第二ガラス板G2の側端面ESSに残存するスクライブ痕のメディアンクラックの深さに相当する。したがって、第二ガラス板G2の側端面ESSに残存するスクライブ痕のメディアンクラックの深さ(第一主面2からの深さ)を測定することで、第二切断工程S3によって形成されたスクライブ線SL2に係るメディアンクラックMCの深さを特定できる。メディアンクラックの深さは、第二ガラス板G2の側端面ESS又は第一ガラス板G1の耳部を含む幅方向両端部Gaの側端面を例えば電子顕微鏡で観察することによって測定される。本発明のガラス板梱包体及びガラス板において上部、中間部及び下部のメディアンクラックの最大深さは、メディアンクラックの深さを板引き方向に沿って100mmピッチで測定することによって得られる深さ分布から求めるものとする。このメディアンクラックの深さの測定は、第二ガラス板G2の側端面ESSを含むサンプルを採取し、そのサンプルを用いて側端面ESSを電子顕微鏡で観察することによって行うものとする。
【0056】
以下、第二ガラス板G2の側端面ESSに残存しているスクライブ痕のメディアンクラックの態様と、スクライブ線SL2のメディアンクラックMCとの関係について、図4乃至図9を参照しながら説明する。
【0057】
図4乃至図9は、メディアンクラックMCの態様が異なるスクライブ線SL2によって形成された第二ガラス板G2を例示する。これらの例では、図4図6及び図8において、第二ガラス板G2の側端面ESSに残存するスクライブ痕SMのメディアンクラックMCを表示している。
【0058】
図4図6及び図8において、スクライブ痕SMの上端部SMaは、スクライブ線SL2の始端部SL2aに相当する。スクライブ痕SMの下端部SMbは、スクライブ線SL2の終端部SL2bに相当する。
【0059】
スクライブ痕SMの上部は、スクライブ線SL2の上部に相当するため、同じ符号UP1を用いる。スクライブ痕SMの下部は、スクライブ線SL2の下部に相当するため、同じ符号BP1を用いる。スクライブ痕SMの中間部は、スクライブ線SL2の中間部に相当するため、同じ符号MP1を用いる。スクライブ痕SMの上部UP1は、第二ガラス板G2の側端面ESSの上部UP2に含まれる。スクライブ痕SMの下部BP1は、側端面ESSの下部BP2に含まれ、スクライブ痕SMの中間部MP1は、側端面ESSの中間部MP2に含まれる。
【0060】
図5は、図4に例示する第二ガラス板G2を形成するためのスクライブ線SL2の板引き方向Yにおける位置と、メディアンクラックMCの深さとの関係を示すグラフである。図7は、図6に例示する第二ガラス板G2を形成するためのスクライブ線SL2の位置とメディアンクラックMCの深さとの関係を示し、図9は、図8に例示する第二ガラス板G2を形成するためのスクライブ線SL2の位置とメディアンクラックMCの深さとの関係を示すグラフである。図5図7及び図9に示すスクライブ線SL2の位置は、第二ガラス板G2における側端面ESSの板引き方向Yにおけるスクライブ痕SMの位置に相当する。
【0061】
図4に示すように、第1実施形態の第二ガラス板G2の側端面ESSに残存するスクライブ痕のメディアンクラックMCの深さ(第一主面2からの深さ)は、その上部UP1から下部BP1に向かうにつれて徐々に減少している。メディアンクラックMCの深さは、スクライブ痕SMの上端部SMaにおいて最も深く、スクライブ痕SMの下端部SMbにおいて最も浅い。
【0062】
したがって、第二ガラス板G2の側端面ESSにおける下部BP2(板引き方向Yにおける端面ESSの一方の端部)のメディアンクラックMCの最大深さは、側端面ESSの上部UP2(板引き方向Yにおける端面ESSの他方の端部)におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも浅い。また、側端面ESSの下部BP2におけるメディアンクラックMCの最大深さは、側端面ESSの中間部MP2におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも浅い。また、側端面ESSの中間部MP2におけるメディアンクラックMCの最大深さは、側端面ESSの上部UP2におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも浅い。
【0063】
換言すると、図5に示すように、第二切断工程S3において第一ガラス板G1に形成されるスクライブ線SL2のメディアンクラックMCの深さは、スクライブ線SL2の始端部SL2aで最も深く(DMAX)、終端部SL2bで最も浅い(DMIN)。したがって、スクライブ線SL2は、その下部BP1におけるメディアンクラックMCの最大深さが、その上部UP1におけるメディアンクラックMCの最大深さも浅くなるように形成される。また、スクライブ線SL2は、その下部BP1におけるメディアンクラックMCの最大深さが、その中間部MP1におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも浅くなるように形成される。また、スクライブ線SL2は、その中間部MP1におけるメディアンクラックMCの最大深さが、その上部UP1におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも浅くなるように形成される。
【0064】
図6に示す第2実施形態の第二ガラス板G2の例では、側端面ESSに残存するスクライブ痕SMのメディアンクラックMCの深さは、側端面ESSの上部UP2にあるスクライブ痕SMの上端部SMaから下方に向かうにつれて徐々に増加している。メディアンクラックMCの深さは、側端面ESSの中間部MP2において最大となる。メディアンクラックMCの深さは、この最大となった位置から下方に向かうにつれて徐々に減少している。メディアンクラックMCの深さは、側端面ESSの下部BP2にあるスクライブ痕SMの下端部SMbで最小となる。
【0065】
したがって、この例では、側端面ESSの上部UP2におけるメディアンクラックMCの最大深さは、側端面ESSの中間部MP2におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも浅い。
【0066】
換言すると、図7に示すように、第二切断工程S3において第一ガラス板G1に形成されるスクライブ線SL2のメディアンクラックMCの深さは、中間部MP1で最も深くなり(DMAX)、終端部SL2bで最も浅くなる(DMIN)。また、スクライブ線SL2は、上部UP1におけるメディアンクラックMCの最大深さが、中間部MP1におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも浅くなるように形成される。
【0067】
図8に示す第1実施形態の第二ガラス板G2の変形例では、側端面ESSに残存するスクライブ痕SMのメディアンクラックMCの深さは、スクライブ痕SMの上端部SMaにおいて最大であり、この上端部SMaから下方に向かうにつれて徐々に減少している。メディアンクラックMCの深さは、側端面ESSの中間部MP2において、側端面ESSの上部UP2との境界位置から下方に向かうにつれて徐々に増加し、その中途部において極大となる。側端面ESSの中間部MP2において極大となるメディアンクラックMCの深さは、側端面ESSの上部UP2におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも浅い。なお、側端面ESSは、中間部MP2の複数箇所に深さが極大となる部分を有してもよい。メディアンクラックMCの深さは、中間部MP2において極大となった位置から下方に向かうにつれて徐々に減少している。メディアンクラックMCの深さは、側端面ESSの下部BP2にあるスクライブ痕SMの下端部SMbで最小となる。
【0068】
換言すると、図9に示すように、第二切断工程S3において第一ガラス板G1に形成されるスクライブ線SL2のメディアンクラックMCの深さは、始端部SL2aにおいて最大(DMAX)となり、中間部MP1において極大(DLM)となり、終端部SL2bにおいて最小(DMIN)となる。スクライブ線SL2は、中間部MP1において極大となる深さDLMが上部UP1の最大深さDMAXよりも浅くなるように形成される。
【0069】
第1及び第2実施形態の第二ガラス板G2では、厚みが200μm以上である場合、側端面ESSの下部BP2におけるメディアンクラックMCの最大深さは例えば90μm以下とすることができ、破損を防止する観点から、80μm以下であることが好ましい。一方、折り割りを安定させる観点から、側端面ESSの下部BP2におけるメディアンクラックMCの最小深さは30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
【0070】
第1実施形態の第二ガラス板G2では、厚みが200μm以上である場合、側端面ESSの上部UP2又は中間部MP2におけるメディアンクラックMCの最大深さを側端面ESSの下部BP2におけるメディアンクラックMCの最大深さよりも深くすることで折割り工程でガラス板に付与する曲げ応力を可及的に小さくする観点から、側端面ESSの上部UP2又は中間部MP2におけるメディアンクラックMCの最大深さは100μm以上であることが好ましく、110μm以上であることがより好ましい。一方、側端面ESSの上部UP2又は中間部MP2におけるメディアンクラックMCの最大深さは例えば180μm以下とすることができる。
【0071】
第2実施形態の第二ガラス板G2では、厚みが200μm以上である場合、側端面ESSの中間部MP2におけるメディアンクラックMCの最大深さを側端面ESSの下部BP2における折割り工程でメディアンクラックMCの最大深さよりも深くすることでガラス板に付与する曲げ応力を可及的に小さくする観点から、側端面ESSの中間部MP2におけるメディアンクラックMCの最大深さは100μm以上であることが好ましく、110μm以上であることがより好ましい。一方、側端面ESSの中間部MP2におけるメディアンクラックMCの最大深さは例えば200μm以下とすることができる。破損を防止する観点から側端面ESSの上部UP2におけるメディアンクラックMCの最大深さは90μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。一方、折り割りを安定させる観点から、側端面ESSの上部UP2におけるメディアンクラックMCの最小深さは30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
【0072】
梱包工程S4は、複数の第二ガラス板G2をパレットに積載することで、ガラス板梱包体を製造する工程である。第二ガラス板G2は、第二切断工程S3の終了後、搬送装置7によってパレットまで搬送される。
【0073】
図10に示すように、梱包工程S4では、第二切断工程S3で切り出された第二ガラス板G2が、縦姿勢で吊り下げ支持された状態で、保護シート10と交互にパレット11に積載されていく。保護シート10は、発泡樹脂シートであるが、発泡性を有しない樹脂シートや合紙などであってもよい。
【0074】
パレット11に積載されようとしている第二ガラス板G2は、鉛直面に沿う姿勢とされている。これに対して、パレット11の背面支持部12の背支持面12aは、上側に移行するにつれて後側に傾斜する傾斜面とされている。背支持面12aの水平面に対する傾斜角度は、例えば60°~85°である。そのため、パレット11に積載済みの第二ガラス板G2と保護シート10とによって構成されるガラス板積層体13は、縦姿勢ではあるものの、背支持面12aに倣って傾斜している。
【0075】
第二ガラス板G2は、搬送装置7によって縦姿勢に吊り下げ支持された状態で、パレット11に積載される。この場合、第二ガラス板G2は、保証面としての第二主面3がパレット11の背支持面12aに対向するように、パレット11に積載される。
【0076】
図11に示すように、梱包工程S4の実施によって製造されたガラス板梱包体GPBは、矩形状の第二ガラス板G2と矩形状の保護シート10とを縦姿勢(厳密には上記の傾斜姿勢)で交互に積層したガラス板積層体13と、ガラス板積層体13が積載されたパレット11と、を備える。さらに、ガラス板梱包体GPBは、ガラス板積層体13の崩れ等を防止する結束バンドBaなどの梱包具をも備える。
【0077】
パレット11は、既述の傾斜した背支持面12aを有する背面支持部12の他、ガラス板積層体13の底面を支持する底面支持部14を備える。底面支持部14の底受け面14aは、前側に移行するにつれて上側に傾斜する傾斜面とされている。
【0078】
以上説明した本実施形態によれば、第二切断工程S3において、第一ガラス板G1に形成するスクライブ線SL2の下部BP1におけるメディアンクラックMCの深さを上部UP1又は中間部MP1のメディアンクラックMCよりも浅くすることで、切り出された第二ガラス板G2の側端面ESSの下部BP2におけるスクライブ痕SMのメディアンクラックMCの深さを可及的に浅くすることができる。ガラス板梱包体GPBの状態では、その搬送時において、第二ガラス板G2に作用する荷重や衝撃により、側端面ESSの下部BP2が破損するおそれがある。特に、スクライブ痕SMのメディアンクラックMCの深さが深くなる程、側端面ESSの下部BP2が破損し易い。本実施形態では、第二ガラス板G2の側端面ESSの下部BP2におけるスクライブ痕SMのメディアンクラックMCの深さを浅くすることで、第二ガラス板G2の下部の破損を防止することが可能となる。
【0079】
さらに、第二切断工程S3におけるスクライブ線SL2の上部UP1又は中間部MP1におけるメディアンクラックMCの深さをスクライブ線SL2の下部BP1におけるメディアンクラックMCの深さよりも深くすることで、第二切断工程S3の折割り工程において、この上部UP1又は中間部MP1から発生するガラス粉の量を可及的に低減することが可能となる。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0081】
上記の実施形態では、第二ガラス板G2の折割り面(側端面ESS)におけるスクライブ痕SMのメディアンクラックMCの深さを測定する例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第二切断工程S3において、第一ガラス板G1から切除された幅方向端部Gaの折割り面に残存するスクライブ痕のメディアンクラックの深さを測定することにより、スクライブ線SL2におけるメディアンクラックMCの深さを測定してもよい。
【符号の説明】
【0082】
8 スクライブホイール(スクライブツール)
11 パレット
BP1 スクライブ線の下部
BP2 第二ガラス板の側端面の下部
ESS 第二ガラス板の側端面
G1 第一ガラス板
G2 第二ガラス板
Ga 第一ガラス板の幅方向の端部
GPB ガラス板梱包体
MC メディアンクラック
MP1 スクライブ線の中間部
MP2 第二ガラス板の側端面の中間部
S3 第二切断工程
SL2 スクライブ線
SM スクライブ痕
UP1 スクライブ線の上部
UP2 第二ガラス板の側端面の上部
X 幅方向
Y 板引き方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11