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特開2023-166756水性インクジェット用インク組成物、及び印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166756
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】水性インクジェット用インク組成物、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20231115BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231115BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C09D11/38
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077516
(22)【出願日】2022-05-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 聡史
(72)【発明者】
【氏名】植木 将博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 有哉
(72)【発明者】
【氏名】小西 廣幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 寛仁
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA13
2C056FC01
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB54
2H186FB57
4J039AD03
4J039AD09
4J039BA20
4J039BC07
4J039BC10
4J039BC14
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA21
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】吐出安定性に優れ、非吸収性印刷媒体に印刷・記録した場合においても、ベタ部の埋まりが良好でムラがなく、さらに、紙面乾燥性に優れる、水性インクジェット用インク組成物を提供すること。
【解決手段】顔料、アニオン性基含有樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、前記水溶性溶剤中、沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤を90質量%以上含有し、前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び特定条件を満たすシリコーン系界面活性剤を含有し、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、HLB値が7以上12以下である水性インクジェット用インク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、アニオン性基含有樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、
前記水溶性溶剤中、沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤を90質量%以上含有し、
前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びシリコーン系界面活性剤を含有し、
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、HLB値が7以上12以下であり、
前記シリコーン系界面活性剤は、
水99.9質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率1)が30%以下であることの条件を満たし、かつ、
水89.9質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率2)が95%以上であることの条件を満たすことを特徴とする水性インクジェット用インク組成物。
【請求項2】
アセチレンジオール系界面活性剤、及びアルカンジオール系界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の水性インクジェット用インク組成物。
【請求項3】
前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤は、プロピレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物。
【請求項4】
前記樹脂エマルジョンは、アクリル系樹脂エマルジョン、及びスチレン-アクリル系樹脂エマルジョンからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物。
【請求項5】
前記樹脂エマルジョンの樹脂のガラス転移温度が-35℃以上35℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物を印刷して得られることを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インクジェット用インク組成物、及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷・記録方式は、非常に微細なノズルから水性インクジェット用インク組成物の液滴を印刷・記録媒体に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る印刷・記録方式である。このような水性インクジェット用インク組成物は、通常、顔料、アルカリ可溶性樹脂、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水等を含有し、例えば、特許文献1では、顔料、アニオン性基含有樹脂(アルカリ可溶性樹脂)、樹脂エマルジョン、特定の界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-222754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された水性インクジェット用インク組成物のように、吐出安定性に優れ、コート紙やポリ塩化ビニルシート等の非吸収性印刷媒体(メディア)にインクジェット印刷・記録した場合においても、ベタ部の埋まりが良好で、ベタ部のムラがないものが求められている。また、印刷物の乾燥時間を短くし、生産性を向上させる観点から、紙面乾燥性の良好な水性インクジェット用インク組成物が求められている。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたのものであり、吐出安定性に優れ、非吸収性印刷媒体に印刷・記録した場合においても、ベタ部の埋まりが良好でムラがなく、さらに、紙面乾燥性に優れる、水性インクジェット用インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[項1]すなわち、本発明は、顔料、アニオン性基含有樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、前記水溶性溶剤中、沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤を90質量%以上含有し、前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びシリコーン系界面活性剤を含有し、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、HLB値が7以上12以下であり、前記シリコーン系界面活性剤は、水99.9質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率1)が30%以下であることの条件を満たし、かつ、水89.9質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率2)が95%以上であることの条件を満たす水性インクジェット用インク組成物に関する。
【0007】
[項2]また、本発明は、アセチレンジオール系界面活性剤、及びアルカンジオール系界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の界面活性剤を含有する前項1記載の水性インクジェット用インク組成物に関する。
【0008】
[項3]また、本発明は、前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤は、プロピレングリコールである前項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物に関する。
【0009】
[項4]また、本発明は、前記樹脂エマルジョンは、アクリル系樹脂エマルジョン、及びスチレン-アクリル系樹脂エマルジョンからなる群より選ばれる1種以上である前項1~3のいずれかに記載の水性インクジェット用インク組成物に関する。
【0010】
[項5]また、本発明は、前記樹脂エマルジョンの樹脂のガラス転移温度が-35℃以上35℃以下である前項1~4のいずれかに記載の水性インクジェット用インク組成物に関する。
【0011】
[項6]また、本発明は、前項1~5のいずれかに記載の水性インクジェット用インク組成物を印刷して得られる印刷物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果の発現機構は定かではないが、以下のように推察される。本発明の水性インクジェット用インク組成物は、上記の特許文献1の配合とは異なり、界面活性剤として、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用することにより、印刷媒体上に着弾したインク液滴の表面張力を低下させ、ドットの濡れ広がりが良化する。更に、インクが乾燥する過程でインク中の水分が蒸発し、相対的にインク成分中の水溶性溶剤の割合が大きくなった状態でも表面張力を低下させる効果が維持されるため、乾燥のムラを抑制し、インクを均一に乾燥させることができる。したがって、水性インクジェット用インク組成物をコート紙やポリ塩化ビニルシート等の非吸収性印刷媒体にインクジェット印刷・記録した場合においても、インク組成物の吐出安定性に優れ、かつ印刷・記録画像の、ベタ部の埋まりが良好であり、ベタ部のムラがない。また、沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤を特定量以上含有するため、紙面乾燥性に優れる。よって、本発明の水性インクジェット用インク組成物は、これら非吸収性印刷媒体に対して塗工安定性を有し、かつ良好な印刷・記録画像を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、少なくとも、顔料、アニオン性基含有樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する。
【0014】
<顔料>
前記顔料は、インクジェット用インク組成物に使用される有機顔料や無機顔料を特に制限なく使用することができる。前記有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジコ系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、フラバンスロン系顔料、キノフタロン系顔料、ピランスロン系顔料、インダンスロン系顔料等が挙げられる。また、前記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。前記顔料は、公知の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。前記顔料は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
前記顔料の代表的な色相ごとの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0016】
イエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等が挙げられる。
【0017】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。
【0018】
シアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等が挙げられる。
【0019】
ブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等が挙げられる。
【0020】
ホワイト顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理されていてもよい。
【0021】
前記水性インクジェット用インク組成物中の前記顔料の割合は、印刷物の印画濃度を向上させる観点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。ただし、前記顔料が白色顔料である場合、前記水性インクジェット用インク組成物中の前記白色顔料の割合は、4質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、そして、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
<アニオン性基含有樹脂>
前記アニオン性基含有樹脂としては、通常のインキや塗料の顔料分散用やバインダーとして利用できるアルカリ可溶性樹脂であって、塩基性化合物の存在下で、水性媒体中に溶解できるものであれば特に制限はないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等のアニオン性基の1種又は2種以上を含有する樹脂が好ましい。
【0023】
前記アニオン性基含有樹脂は、さらに、主に顔料との吸着性を向上させるための疎水性部分、及び/又は、主に水性媒体中での凝集防止に有効な作用を得るための親水性部分を分子中に有することが好ましい。分子内に導入する疎水性部分としては、長鎖アルキル基、脂環族又は芳香族の環状炭化水素基等の疎水性基が挙げられ、分子内に導入する親水性部分としては、(ポリ)オキシアルキレン鎖、塩基性含窒素基、水酸基、エポキシ基等の親水性基が挙げられる。
【0024】
前記アニオン性基含有樹脂の酸価は、50mgKOH/g以上であることが好ましい。前記アニオン性基含有樹脂の酸価は、顔料の分散安定性を高める観点から、60mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。前記アニオン性基含有樹脂の酸価は、印刷物の耐水性を高める観点から、350mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましい。なお、前記酸価は、アニオン性基含有樹脂を合成するために用いる単量体の組成に基づいて、アニオン性基含有樹脂1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数を算術的に求めた理論酸価である。
【0025】
前記アニオン性基含有樹脂の重量平均分子量は、顔料の分散安定性を高める観点から、3,000以上が好ましく、7,000以上がより好ましい。前記アニオン性基含有樹脂の重量平均分子量は、後述する水性媒体への溶解性を高める観点から、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。
【0026】
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0027】
前記アニオン性基含有樹脂としては、例えば、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。この様なアニオン性基含有樹脂を合成するための材料については、例えば、特開2000-94825号公報に開示されており、該公報に記載されている材料を使用して得られるアクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が利用可能である。さらには、もちろんその他の材料を用いて得られた樹脂も利用可能である。前記アニオン性基含有樹脂は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
前記アクリル系共重合樹脂としては、例えば、アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体の混合物を通常のラジカル発生剤(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等)の存在下、溶媒中で重合して得られるものが使用できる。
【0029】
前記アニオン性基含有単量体としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有する単量体が挙げられ、これらの中でもカルボキシル基を有する単量体が特に好ましい。
【0030】
前記カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水フマール酸、マレイン酸ハーフエステル等が挙げられる。前記スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、スルホエチルメタクリレート等が挙げられる。前記ホスホン酸基を有する単量体としては、例えば、ホスホノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
前記アニオン基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、顔料との吸着性を向上させる観点から、疎水性基含有単量体を含むことが好ましい。
【0032】
前記疎水性基含有単量体としては、例えば、長鎖アルキル基を有する単量体として、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸の炭素数が8以上のアルキルエステル類(例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレート等)、炭素数が8以上のアルキルビニルエーテル類(例えば、ドデシルビニルエーテル等)、炭素数が8以上の脂肪酸のビニルエステル類(例えば、ビニル2-エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、ビニルステアレート等);脂環族炭化水素基を有する単量体として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等;芳香族炭化水素基を有する単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-スチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等が挙げられる。
【0033】
前記アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、後述する水性媒体中でアニオン性基含有樹脂の凝集を抑制する観点から、親水性基含有単量体を含むことが好ましい。
【0034】
前記親水性基含有単量体としては、例えば、(ポリ)オキシアルキレン鎖を有する単量体として、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸とのエステル化物や、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸へのエチレンオキシド付加物及び/又はプロピレンオキシド付加物等;塩基性基含有単量体として、例えば、1-ビニル-2-ピロリドン、1-ビニル-3-ピロリドン等のビニルピロリドン類、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等のビニルピリジン類、1-ビニルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール等のビニルイミダゾール類、3-ビニルピペリジン、N-メチル-3-ビニルピペリジン等のビニルビペリジン類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸第3ブチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシ(メタ)アクリルアミド、N-エトキシ(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の含窒素誘導体類等;水酸基を有する単量体として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類等;エポキシ基を有する単量体として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
前記疎水性基含有単量体及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の(メタ)アクリル酸の炭素数が8未満のアルキルエステル類等が挙げられる。
【0036】
前記アニオン性基含有樹脂の使用量は、前記顔料100質量部に対して、顔料の分散安定性を高める観点から、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。前記アニオン性基含有樹脂の使用量は、前記顔料100質量部に対して、インク組成物の粘度を低下させる観点から、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。
【0037】
<塩基性化合物>
前記水性インクジェット用インク組成物には、前記アニオン性基含有樹脂を溶解させる観点から、塩基性化合物を含むことが好ましい。前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、N、N-ジメチルエタノールアミン、N、N-ジエチルエタノールアミン、N、N-ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等の有機塩基性化合物等が挙げられる。前記塩基性化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
前記水性インクジェット用インク組成物中の塩基性化合物の割合は、前記アニオン性基含有樹脂を媒体中に溶解させる量であればよいが、通常、アニオン性基含有樹脂の分散安定性を高める観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、印刷物の耐水性を高める観点から、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
<樹脂エマルジョン>
前記樹脂エマルジョンは、水系エマルジョンである。前記水系エマルジョンの例としては、例えば、アクリル系樹脂エマルジョン、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、ポリエステル系樹脂エマルジョン、ポリウレタン系樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、ポリ塩化ビニル系樹脂エマルジョン、ポリブタジエン系樹脂エマルジョン、ポリエチレン系樹脂エマルジョン等が挙げられる。中でも、得られる印刷物の外観及び耐水性、耐溶剤性、耐擦性、耐熱性等の各種耐性に優れることから、アクリル系樹脂エマルジョン、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョンが好ましい。前記樹脂エマルジョンは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
前記樹脂エマルジョンの樹脂のガラス転移温度は、インク組成物の吐出安定性を高める観点から、-35℃以上であることが好ましく、-30℃以上であることがより好ましく、-20℃以上であることがさらに好ましい。前記樹脂エマルジョンの樹脂のガラス転移温度は、印刷媒体上におけるインクの成膜性を高める観点から、35℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることがさらに好ましい。
【0041】
前記樹脂エマルジョンの樹脂のガラス転移温度は、エマルジョンの樹脂がアクリル系樹脂又はスチレン-アクリル系樹脂エマルジョンの場合、下記のwoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
Woodの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・+Wx/Tgx
[式中、Tg1~Tgxはアニオン性基含有樹脂を構成する単量体1、2、3・・・xのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W1~Wxは単量体1、2、3・・・xのそれぞれの重合分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である。]
【0042】
前記アクリル系樹脂又はスチレン-アクリル系樹脂以外におけるエマルジョンの樹脂のガラス転移温度は、熱分析により求めた実測ガラス転移温度である。熱分析の方法としては、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、パーキンエルマー社製Pyris1 DSCを用いて、昇温速度20℃/分、窒素ガス流速20ミリリットル/分の条件下でガラス転移温度を測定する事ができる。
【0043】
前記樹脂エマルジョンの平均粒子径は、インク組成物の吐出安定性を高める観点から、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。前記エマルジョンの平均粒子径は、一例として、日機装製Microtrac粒度分布測定機「UPA-150」を用いて、測定時間60秒、希釈溶媒を水として、D50値の測定によって求める事ができる。
【0044】
前記水性インクジェット用インク組成物中の樹脂エマルジョンの樹脂固形分の割合は、印刷・記録画像のベタ部のムラを抑制する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。前記水性インクジェット用インク組成物中の樹脂エマルジョンの樹脂固形分の割合は、インク組成物の粘度を抑制する観点から、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
<界面活性剤>
前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びシリコーン系界面活性剤を含有する。
【0046】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、HLB値が7以上12以下であるノニオン性界面活性剤である。前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、混和性の観点から、HLB値が7.5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、そして、印刷・記録画像のベタ埋まりを良化させる観点から、11.5以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましい。なお、HLB値とは、グリフィン法によって算出される界面活性剤の親水性と親油性の程度を表す指標であり、HLB値が小さいほど親油性が高く、HLB値が大きいほど親水性が高いことを示す。前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、上記のHLB値を満たせば、アルキル基の炭素数及びエチレンオキシ基の平均付加モル数に制限はないが、例えば、炭素数が10~15程度であることが好ましく、エチレンオキシ基の平均付加モル数が3~10程度であることが好ましい。また、アルキル基が直鎖又は分岐鎖であってもよく、印刷・記録画像のベタ埋まりを良化させる観点から、分岐鎖であることが好ましい。
【0048】
前記シリコーン系界面活性剤は、ポリシロキサン骨格を有する化合物であり、水99.9質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率1)が30%以下であることの条件を満たし、かつ、水89.9質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率2)が95%以上であることの条件を満たすものである。
【0049】
前記シリコーン系界面活性剤の具体例としては、例えば、特開2016-222754号公報が参考となり、ビックケミー・ジャパン社製のBYK-347、BYK-377、BYK-3455等が挙げられる。前記シリコーン系界面活性剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
<その他の界面活性剤>
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び前記シリコーン系界面活性剤以外の、その他の界面活性剤として、公知のものが使用できる。とくに、水性インクジェット用インク組成物の印刷・記録画像のベタ埋まりを良好にする効果を有する観点から、アセチレンジオール系界面活性剤、アルカンジオール系界面活性剤が好ましい。
【0051】
前記水性インクジェット用インク組成物中のポリオキシエチレンアルキルエーテルの割合は、印刷・記録画像のベタ埋まりを良化させる観点から、0.2~2質量%であることが好ましく、0.4~1質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
前記水性インクジェット用インク組成物中のシリコーン系界面活性剤の割合は、インク組成物の印刷・記録画像のベタ部のムラを抑制する効果を高める観点から、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
<水溶性溶剤>
前記水溶性溶剤は、沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤を90質量%以上含有する。
【0054】
前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤は、このような沸点を満たす水性インクジェット用インク組成物に使用される公知の水溶性溶剤が特に制限なく使用でき、例えば、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、窒素含有化合物類等が挙げられる。前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤としては、例えば、1-オクタノール(沸点195℃)、2-エチルヘキサノール(沸点184℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1、2-ブタンジオール(沸点197℃)、エチレングリコール(沸点197℃)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(沸点174℃)、ジエチレングリコール(沸点245℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点196℃)等が挙げられる。
【0056】
前記水性インクジェット用インク組成物中の水溶性溶剤の割合は、インク組成物の吐出安定性、及び非吸収印刷媒体(メディア)上でのインク皮膜の形成を高める観点から、15質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。前記水性インクジェット用インク組成物中の水溶性溶剤の割合は、インク組成物の保存安定性を高める観点から、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
<水>
前記水は、後述する顔料分散液中に含有する水性媒体としての水、及び本発明の水性インクジェット用インク組成物の濃度調製のために加える水、等を含むものである。前記水としては、例えば、イオン交換水、純水、蒸留水、工業用水等が挙げられる。前記水は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
前記水性インクジェット用インク組成物中の水の割合は、インク組成物の吐出安定性を高める観点から、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。前記水性インクジェット用インク組成物中の前記水の割合は、インク組成物の吐出安定性を高める観点から、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
<その他の添加剤>
本発明の水性インクジェット用インク組成物には、さらに、目的に応じて公知の樹脂、ワックスエマルション、顔料分散剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保存性向上剤、消泡剤、pH調整剤等の添加剤を添加することができる。
【0060】
<水性インクジェット用インク組成物の調製方法>
前記各水性インクジェット用インク組成物の調製は、従前の調製方法を利用すればよく、上記の成分を順番に、あるいは同時に添加して、混合すればよく、例えば、(1)前記塩基性化合物の存在下にアニオン性基含有樹脂を水性媒体に溶解した水性樹脂ワニス、顔料、必要に応じて顔料分散剤等を混合した後、各種分散機、例えばボールミル、アトライター、ロールミル、サンドミル、アジテーターミル等を利用して顔料分散液(インクベース)を調製し、さらに残りの材料を添加して、水性インクジェット用インク組成物を調製する方法や、(2)上記の方法で顔料を分散した後、酸析法や再公表特許WO2005/116147号公報に記載のイオン交換手段等により、顔料表面にアルカリ可溶性樹脂を析出させた樹脂被覆顔料を得、次いで得られた樹脂被覆顔料を塩基性化合物で中和し、各種分散機(高速攪拌装置等)を用いて水に再分散し、さらに残りの材料を添加して、水性インクジェット用インク組成物を調製する方法等が挙げられる。
【0061】
前記各水性インクジェット用インク組成物は、初期粘度としては、2.0~15.0mPa・sが好適であり、3.0~10.0mPa・sがより好適である。粘度は、例えば、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)により測定できる。
【0062】
<印刷物>
本発明の印刷物は、前記水性インクジェット用インク組成物を印刷して得られる。前記水性インクジェット用インク組成物の印刷媒体としては、アート紙、インクジェット専用紙、及びインクジェット光沢紙等のコート紙、並びにポリ塩化ビニルシートのようなプラスチック系基材等の非吸収性印刷媒体、普通紙やオフセット紙等の未コート紙が利用できる。
【0063】
前記水性インクジェット用インク組成物の印刷方法としては、例えば、前記水性インクジェット用インク組成物をインクカートリッジに収容し、該インクカートリッジをシングルパス方式等のインクジェット記録装置に装着して、ノズルから前記印刷媒体へ噴射することによりインクジェット印刷をする方法が挙げられる。
【実施例0064】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものである。
【0065】
<シリコーン系界面活性剤の混合物の特定透過率1の測定>
水99.9質量部と前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物を調製した。この混合物の25℃での波長380nmから780nmにおける透過率を測定し、その最大値(特定透過率1)を求めた。
測定機器:UV-2500PC(島津製作所社製)
測定条件:スリット幅2nm、スキャンスピードは高速、測定開始波長780nm、測定終了波長380nm、サンプリングピッチはオート、測定モードはシングル。リファレンスは水。
結果を表1に示す。
【0066】
<シリコーン系界面活性剤の混合物の特定透過率2の測定>
水89.9質量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)10部と前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物を調製した。この混合物の25℃での波長380nmから780nmにおける透過率を測定し、その最大値(特定透過率2)を求めた。
測定機器:UV-2500PC(島津製作所社製)
測定条件:スリット幅2nm、スキャンスピードは高速、測定開始波長780nm、測定終了波長380nm、サンプリングピッチはオート、測定モードはシングル。リファレンスは水。
結果を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1及び2中、BYK-347は、固形分100%、ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製;
BYK-3455は、固形分100%、ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製;
BYK-333は、固形分100%、ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製;
BYK-348は、固形分100%、ポリエーテル変性シロキサン型界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製を示す。
【0070】
<水性樹脂ワニスの製造>
ガラス転移温度45℃、重量平均分子量30,000、酸価185mgKOH/gの、アクリル酸/ラウリルアクリレート/スチレン共重合体(アニオン性基含有樹脂)20質量部を水酸化カリウム2.5質量部と水77.5質量部との混合溶液に溶解させて、固形分20%の水性樹脂ワニスを得た。
【0071】
<ブラックインクベースの調製>
上記水性樹脂ワニスの23.7質量部に水64.3質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、更にカーボンブラック(商品名プリンテックス90、デグサ社製)の12質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、ブラックインクベースを調製した。
【0072】
<イエローインクベースの調製>
上記水性樹脂ワニスの23.7質量部に水64.3質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、更にイエロー顔料(商品名ノバパームイエロー4G01、クラリアント社製)の12質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、イエローインクベースを調製した。
【0073】
<マゼンタインクベースの調製>
上記水性樹脂ワニスの23.7質量部に水64.3質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、更にマゼンタ顔料(商品名インクジェットマゼンタE5B02、クラリアント社製)の12質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、マゼンタインクベースを調製した。
【0074】
<シアンインクベースの調製>
上記水性樹脂ワニスの23.7質量部に水64.3質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、更にシアン顔料(商品名ヘリオゲンブルーL7101F、BASF社製)の12質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、シアンインクベースを調製した。
【0075】
<水性インクジェット用インク組成物の製造>
<実施例1>
表3の質量割合になるように、上記のブラックインクベース、プロピレングリコール、界面活性剤として、Triton HW1000(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ノニオン性界面活性剤、DOW社製)とBYK-347、樹脂エマルジョンとしてNeoCryl A-1092(スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、樹脂のガラス転移温度9℃、Covestro Coating Resins社製)及び水を攪拌混合し、実施例1の水性インクジェット用インク組成物を製造した。
【0076】
<実施例2~14、比較例1~8>
各実施例及び各比較例において、使用する原料及びその量を、表3及び4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、各実施例及び各比較例の水性インクジェット用インク組成物を製造した。
【0077】
<水性インクジェット用インク組成物の評価>
以下の方法により評価し、それらの結果を表3及び表4に示す。
【0078】
<インク組成物の吐出安定性>
上記で得られた水性インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンターPX105(エプソン社製)のカートリッジに詰めて、コート紙(OKトップコート+、王子製紙社製)に印字を行い、吐出安定性の評価を行った。合格基準は、△又は〇であればよく、〇がより好ましい。
[評価基準]
○:印字の乱れがほとんどなく、安定して吐出できるもの
△:多少の印字の乱れがあるものの、吐出はできるもの
×:吐出できないもの
【0079】
<紙面乾燥性>
上記で得られた水性インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンターPX105(エプソン社製)のカートリッジに詰めて、コート紙(OKトップコート+、王子製紙社製)に印字を行い、得られた印刷物を80℃×1分間放置後に、印刷部を綿棒で擦り、インクの付着具合により乾燥性を評価した。合格基準は、△又は〇であればよく、〇がより好ましい。
[評価基準]
○:インクが全く付着しなかった
△:インクが少量付着した
×:インクが多量に付着した
【0080】
<印刷画像のベタ埋まり>
上記で得られた水性インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンターPX105(エプソン社製)のカートリッジに詰めて、コート紙(OKトップコート+、王子製紙社製)にベタ印字を行い、ベタ印字の形成性について、スジ・白抜けがあるかどうかについて目視にて評価した。合格基準は、△又は〇であればよく、〇がより好ましい。
[評価基準]
○:スジ・白抜けがないもの
△:スジ・白抜けが少しあるもの
×:スジ・白抜けが多くあるもの
【0081】
<印刷画像のベタ部のムラ>
上記で得られた水性インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンターPX105(エプソン社製)のカートリッジに詰めて、コート紙(OKトップコート+、王子製紙社製)にベタ印字を行い、ベタ印字のムラについて目視にて評価した。合格基準は、△又は〇であればよく、〇がより好ましい。
[評価基準]
○:印字ムラがないもの
△:印字ムラが一部にあるもの
×:印字ムラが全体的にあるもの
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
表3及び4中、Triton HW1000は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が10.9、ノニオン性界面活性剤、DOW社製;
Genapol X050は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が10.6、ノニオン性界面活性剤、Clariant社製;
サンノニック SS-30は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が8.0、ノニオン性界面活性剤、三洋化成社製;
ニューコール2502Aは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が6.3、ノニオン性界面活性剤、日本乳化剤社製;
サンノニック SS-70は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が12.1、ノニオン性界面活性剤、三洋化成社製;
エマルゲン1135S-70は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値が17.9、ノニオン性界面活性剤、花王社製;
Surfynol AD01は、アルカンジオール系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、EVONIK社製;
NeoCryl A-1092は、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、ガラス転移温度が9℃、Covestro Coating Resins社製;
NeoCryl A-655は、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、ガラス転移温度が33℃、Covestro Coating Resins社製;
ヨドゾールAD173は、アクリル系樹脂エマルジョン、ガラス転移温度が-25℃、ヘンケル社製;
モビニール966Aは、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、ガラス転移温度が-32℃、ジャパンコーティングレジン社製;を示す。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、アニオン性基含有樹脂、樹脂エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、
前記水溶性溶剤中、沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤を90質量%以上含有し、
前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びシリコーン系界面活性剤を含有し、
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、HLB値が7以上12以下であり、アルキル基の炭素数が10~15である分岐鎖であり、かつエチレンオキシ基の平均付加モル数が3~10であり、
前記シリコーン系界面活性剤は、
水99.9質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率1)が30%以下であることの条件を満たし、かつ、
水89.9質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、及び前記シリコーン系界面活性剤0.1質量部からなる混合物の、25℃での波長380nmから780nmにおける透過率の最大値(特定透過率2)が95%以上であることの条件を満たすことを特徴とする水性インクジェット用インク組成物。
【請求項2】
アセチレンジオール系界面活性剤、及びアルカンジオール系界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の水性インクジェット用インク組成物。
【請求項3】
前記沸点が1気圧下で200℃以下である水溶性溶剤は、プロピレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物。
【請求項4】
前記樹脂エマルジョンは、アクリル系樹脂エマルジョン、及びスチレン-アクリル系樹脂エマルジョンからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物。
【請求項5】
前記樹脂エマルジョンの樹脂のガラス転移温度が-35℃以上35℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の水性インクジェット用インク組成物を印刷して得られることを特徴とする印刷物。