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特開2023-166769害獣被害防止装置及び害獣被害防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166769
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】害獣被害防止装置及び害獣被害防止方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/10 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
A01G13/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077532
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】521327471
【氏名又は名称】株式会社 ネクアス
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 雅和
(72)【発明者】
【氏名】船谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 登
(72)【発明者】
【氏名】岩村 正司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】北出 元博
【テーマコード(参考)】
2B024
【Fターム(参考)】
2B024GA07
(57)【要約】
【課題】巻き付け作業性を向上させるとともに、樹木の幹に巻き付けた保護テープを脱落しにくくする害獣被害防止技術を提供する。
【解決手段】害獣被害防止装置10は、樹木17に巻き付ける保護テープ18の始端を把持する第1把持部11と、樹木17に巻き付けた保護テープ18の終端を把持する第2把持部12と、第1把持部11及び第2把持部12を支持する結束バンド15と、樹木17に周回させた結束バンド15を締結して樹木17に第1把持部11及び第2把持部12を係留させる締結部と、を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木に巻き付ける保護テープの始端を把持する第1把持部と、
前記樹木に巻き付けた前記保護テープの終端を把持する第2把持部と、
前記第1把持部及び前記第2把持部を支持する結束バンドと、
前記樹木に周回させた前記結束バンドを締結して前記樹木に前記第1把持部及び前記第2把持部を係留させる締結部と、を備える害獣被害防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の害獣被害防止装置において、
前記第1把持部及び前記第2把持部の各々は、
前記結束バンドに支持される支持基板と、
前記支持基板と互いの縁端で回動自在に結合し、互いに折り重なった閉状態で前記保護テープが把持される回動板と、を有する害獣被害防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載の害獣被害防止装置において、
前記支持基板及び前記回動板の一方と他方には、前記保護テープを挟んで係合する凸部及び凹部がそれぞれ設けられている害獣被害防止装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の害獣被害防止装置において、
前記結束バンドの一側面には、セレーションが設けられており、
前記締結部には、前記結束バンドを挿通させる挿通孔と、前記挿通孔の内周面から前記セレーションに弾性的に噛合する噛合部と、が設けられている害獣被害防止装置。
【請求項5】
請求項4に記載の害獣被害防止装置において、
前記結束バンドの一端を挿通させる第1の前記挿通孔及びその他端を挿通させる第2の前記挿通孔は、それぞれの挿入口が、共に前記締結部の両側の端面を形成している害獣被害防止装置。
【請求項6】
請求項4に記載の害獣被害防止装置において、
前記結束バンドの一端を挿通させる第1の前記挿通孔及びその他端を挿通させる第2の前記挿通孔は、それぞれの挿入口が、前記締結部の片側の端面を形成している害獣被害防止装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の害獣被害防止装置において、
前記第1把持部、前記第2把持部、前記結束バンド及び前記締結部を含め、全てが生分解性物質で構成される害獣被害防止装置。
【請求項8】
請求項1に記載の害獣被害防止装置の前記結束バンドを締結して前記第1把持部及び前記第2把持部を前記樹木に係留するステップと、
前記第1把持部に始端を把持させた前記保護テープを前記樹木の下方に巻き付けるステップと、
巻付方向を折り返し前記樹木の上方に向かって前記保護テープを巻き付けるステップと、
前記保護テープの終端を前記第2把持部に把持させるステップと、を含む害獣被害防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害獣の被害を防止し樹木を保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ニホンジカやイノシシ等の鳥獣による林業被害が深刻化している。シカの被害は、雄による角研ぎによるもので、樹皮がめくれてしまうことにより、被害から一定期間経過すると木材内部に変色・腐朽が発生する等の問題がある。このような変色・腐朽した樹木は木材としての価値は大きく低下してしまう。
【0003】
ツキノワグマによる成木の剥皮被害については、被害樹種はヒノキが圧倒的に多く、スギ、カラマツ、サワラ、ドイツトウヒなどで認められている。ツキノワグマによる剥皮被害木は、ヒノキでは10~15年経過すると木材内部に変色・腐朽が発生し、ドイツトウヒでは被害から9年経過すると木材内部に変色・腐朽が発生する等といった問題が顕在化している。
【0004】
シカやツキノワグマの特性としては、嗅覚、聴覚に優れる反面、視覚は良くないといわれている。シカは二色で物を見ていて、人の目の網膜には錐体が三種類あり三色見えるのに対し、シカの網膜には二種類しかない。このため、シカは二色覚だとされている。これはシカに限らずウシやウマなどの有蹄類に共通する特徴である。そこで、成木の剥皮被害防止のために、幹に白色の保護テープを巻き付けたり、幹にネットを被せたりすることが行われている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3923901号公報
【特許文献2】特開2010-158897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、足場が悪いところに生えている成木も多く、このような成木に保護テープを巻き付ける作業には、危険と手間を要する課題があった。さらに、幹に巻き付けた保護テープや幹に被せたネットは、積雪との相互作用で、幹から脱落してしまう課題があった。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、巻き付け作業性を向上させるとともに、樹木の幹に巻き付けた保護テープを脱落しにくくする害獣被害防止技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る害獣被害防止装置において、樹木に巻き付ける保護テープの始端を把持する第1把持部と、前記樹木に巻き付けた前記保護テープの終端を把持する第2把持部と、前記第1把持部及び前記第2把持部を支持する結束バンドと、前記樹木に周回させた前記結束バンドを締結して前記樹木に前記第1把持部及び前記第2把持部を係留させる締結部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、巻き付け作業性を向上させるとともに、樹木の幹に巻き付けたテープを脱落しにくくする害獣被害防止技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る害獣被害防止装置の実施形態を示す斜視図。
図2】(A)実施形態に適用される第1把持部又は第2把持部の開状態を示す正面図、(B)第1把持部又は第2把持部の開状態を示す断面図、(C)第1把持部又は第2把持部の閉状態を示す断面図。
図3】(A)実施例として示す締結部の断面図、(B)締結部に結束バンドを挿通させた状態を示す断面図。
図4】(A)他の実施例として示す締結部の上面図、(B)締結部の断面図、(C)締結部に結束バンドを挿通させた状態を示す断面図。
図5】(A)(B)(C)(D)害獣被害防止方法の実施形態を説明する作業工程図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1の斜視図(適宜、図5の作業工程図)を参照して本発明に係る害獣被害防止装置10の実施形態を説明する。このように害獣被害防止装置10は、樹木17に巻き付ける保護テープ18の始端を把持する第1把持部11と、樹木17に巻き付けた保護テープ18の終端を把持する第2把持部12と、第1把持部11及び第2把持部12を支持する結束バンド15と、樹木17に周回させた結束バンド15を締結して樹木17に第1把持部11及び第2把持部12を係留させる締結部16と、を備えている。
【0012】
保護テープ18は、幅が3~50cm範囲、より好ましくは10~30cm範囲で、厚さが10~150μmで、長さが数十~数百メートルの単位でロール巻されているものから適当な長さ切り出して使用する。さらに、多くの害獣の色覚が二色覚である事実を鑑みて、忌避感を持たせるよう色目を白系とする。
【0013】
害獣被害防止装置10は、第1把持部11、第2把持部12、結束バンド15及び締結部16を含め、全てが生分解性物質で構成されている。さらに保護テープ18も生分解性物質で構成されている。これにより、樹木17の成長に応じて、害獣被害防止装置10及び保護テープ18の付け替えが必要になっても、その場で廃棄することができる。そのような生分解性物質としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、酢酸セルロースが挙げられる。中でも、土壌分解性及び海洋分解性に優れる酢酸セルロースが好適に利用される。
【0014】
結束バンド15の一側面に設けられたセレーション19の作用により、締結部16は、一方向のみに挿通する。結束バンド15は、無限長に製造することができ、コイル巻されたものから切り出して、樹木17の幹の太さに応じて、自由に長さ設定できる。また、結束バンドは、樹木の生長により、幹の直径、幹周囲長さが伸びた場合も、結束バンド15も追従うするようにその長さが延長できるように設計されている。
【0015】
なお、結束バンド15及び締結部16は、図示されるよう相互に分離したものに限定されることは無く、結束バンド15の一方の端に締結部16が一体成型されている場合もある。また、樹木17の外周よりも短尺な締結部16一体成型バンド15を、複数本直列に連結して用いてもよい。
【0016】
図2(A)は実施形態に適用される第1把持部11又は第2把持部12の開状態を示す正面図である。図2(B)は第1把持部11又は第2把持部12の開状態を示す断面図である。図2(C)は第1把持部11又は第2把持部12の閉状態を示す断面図である。なお第1把持部11及び第2把持部12は、構成上、全く同一のものである。
【0017】
このように、第1把持部11及び第2把持部12の各々は、結束バンド15に支持される支持基板21と、支持基板21と互いの縁端で回動自在に結合し互いに折り重なった閉状態で保護テープ18が把持される回動板22と、を有している。支持基板21と回動板22は、ヒンジ25により結合され、このヒンジ25が支持基板21に対し回動する回動板22の回動軸となり把持部11,12の開状態と閉状態が切り替える。なお図示されるヒンジ25は、可撓性を持つように、支持基板21及び回動板22の連結部分が、両者よりも薄く形成されている。また支持基板21と回動板22の結合方式は、このようなヒンジ25を用いることに限定されない。
【0018】
支持基板21には、バンドガイド23及びその両端に通し穴24,24が設けられている。そして結束バンド15を、支持基板21の外側から一方の通し穴24に通し、支持基板21の内側においてバンドガイド23に沿わし、支持基板21の内側から他方の通し穴24を通して、支持基板21の外側に引き出す。これにより、支持基板21には、バンドガイド23に支持される。なお結束バンド15が支持基板21を支持する機構については、様々であるが、支持基板21を結束バンド15に装着させる第3の部材(図示略)を用いたり、支持基板21の表面を結束バンド15で押さえ付けてその裏面を樹木17に密着させたり、すること等が挙げられる。
【0019】
また支持基板21の結束バンド15による支持は、一本でなされる以外に複数本でなされる場合もある。また、結束バンド15及び締結部16は、具体的な構成に特に限定はなく、樹木17の幹に周回し第1把持部11及び第2把持部12を係留する機能を有すれば適宜採用される。
【0020】
支持基板21及び回動板22の一方と他方には、保護テープ18を挟んで係合する凸部26及び凹部27がそれぞれ設けられている。そして、図2(B)から図2(C)に示すように、把持部11,12が開状態から閉状態に移行すると、凸部26が凹部27に係合するように構成されている。さらに閉状態では、支持基板21及び回動板22のいずれか一方の縁端に設けられた係止片28が、他方の縁端に設けられた爪29に係止されている。これにより、把持部11,12は閉状態で、保護テープ18をグリップし、安定的に維持される。そして、保護テープ18の始端と終端は、それぞれ第1把持部11又は第2把持部12により、引張力に抗って、抜ける事無く確実に把持される。
【0021】
なお、図示では支持基板21に凸部26が設けられ、回動板22に凹部27が設けられる態様が示されているが、その関係が逆であっても構わない。また凸部26及び凹部27は、複数のスリット状のものが例示されているが、その形状並びに設置数についても特に限定はない。係止片28及び爪29の形態についても特に限定は無い。また、回動板22の回動軸は、水平方向に沿うものを例示しているが、垂直方向に沿うものである場合もある。また把持部11,12の縦横サイズも、保護テープ18の幅等の形状に合わせて任意に設計できる。
【0022】
図3(A)は実施例として示す締結部16a(16)の断面図である。図3(B)は締結部16aに結束バンド15(15x、15y)を挿通させた状態を示す断面図である。このように締結部16aには、本体部36の両端に、結束バンド15(15x、15y)を挿通させる挿通孔32(32x、32y)と、挿通孔32の内周面から結束バンド15のセレーション19に弾性的に噛合する噛合部31(31x、31y)と、が設けられている。このセレーション19と噛合部31が互いに噛合する先端部分の高さを適正に設計したりこの先端部分に曲率を持たせたりすることで、樹木の生長に伴い太くなる幹に、結束バンド15の長さを追従させることができる。
【0023】
このように締結部16aは、結束バンド15の一端15xを挿通させる第1の挿通孔32x及びその他端15yを挿通させる第2の挿通孔32yは、それぞれの挿入口35(35x、35y)が、共に締結部16の両側の端面を形成している。これにより、結束バンド15のいずれか一方の端部15xを締結部16aに固定した状態で、他方の端部15yを引くことにより、周回させた結束バンド15を樹木17に締結させることができる。このようにして、作業者は足場の悪い環境でも、樹木17の幹に害獣被害防止装置10を容易に取り付けることができる。
【0024】
図4(A)は他の実施例として示す締結部16b(16)の上面図である。図4(B)は締結部16bの断面図である。図4(C)は締結部16bに結束バンド15(15m、15n)を挿通させた状態を示す断面図である。
【0025】
このように締結部16bには、中央板37を挟んで向かい合うように、結束バンド15(15m、15n)を挿通させる挿通孔32(32m、32n)と、挿通孔32の内周面から結束バンド15のセレーション19に弾性的に噛合する噛合部31(31m、31n)と、が設けられている。
【0026】
このように締結部16bは、結束バンド15の一端15mを挿通させる第1の挿通孔32m及びその他端15nを挿通させる第2の挿通孔32nの、それぞれの挿入口35(35m、35n)が、締結部16bの片側の端面を形成している。これにより、締結部16aに挿通させた後に、結束バンド15の両方の端部15m,15nを左右方向に引っ張ることにより、周回させた結束バンド15を樹木17に締結させることができる。このようにして、作業者は足場の悪い環境でも、樹木17の幹に害獣被害防止装置10を容易に取り付けることができる。
【0027】
図5(A)(B)(C)(D)の作業工程図を参照して害獣被害防止方法の実施形態を説明する。まず、図5(A)に示すように、樹木17の幹に結束バンド15を締結し、第1把持部11及び第2把持部12を樹木17に係留する。そして図5(B)に示すように、保護テープ18の始端を第1把持部11に把持させて、保護テープ18を樹木17の下方に巻き付ける。
【0028】
続いて、図5(C)に示すように、樹木17の下端までに巻き付けた保護テープ18の巻付方向を折り返し、樹木17の上方に向かって巻き付ける。そして最後に、図5(D)に示すように、保護テープ18の終端を第2把持部12に把持させる。
【0029】
以上述べた害獣被害防止技術によれば、樹木に係留させた第1把持部及び第2把持部で樹木に巻き付けた保護テープの始端及び終端を把持させることで、巻き付け作業性を向上させるとともに、樹木の幹に巻き付けた保護テープを脱落しにくくすることができる。
【符号の説明】
【0030】
10…害獣被害防止装置、11…第1把持部、12…第2把持部、15(15m,15n,15x,15y)…結束バンド、16(16a,16b)…締結部、17…樹木、18…保護テープ、19…セレーション、21…支持基板、22…回動板、23…バンドガイド、24…通し穴、25…ヒンジ、26…凸部、27…凹部、28…係止片、29…爪、31…噛合部、32(32m,32n,32x,32y)…挿通孔、35…挿入口、36…本体部、37…中央板。
図1
図2
図3
図4
図5