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  • 特開-ファン装置およびモータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166770
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ファン装置およびモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
H02K9/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077533
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】辻永 成樹
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB02
5H609BB19
5H609PP01
5H609PP05
5H609QQ02
5H609QQ12
5H609RR09
(57)【要約】
【課題】構造が簡単で軽量であり、回転数に応じた空気の流量の確保と騒音の低減とを両立するファン装置、およびこれを用いるモータを提供する。
【解決手段】一実施形態によるファン装置10は、ファン本体41、溝部42、ファンブレード43およびばね部材44を備える。ファン本体41は、回転子と一体に一方向へ回転する。溝部42は、ファン本体41に設けられ、径方向の中心から外側へ伸びている。ファンブレード43は、溝部42において径方向へ移動可能に設けられている。ばね部材44は、ファンブレード43に、押付力として径方向の外側へ押し付ける力を加える。ファンブレード43は、ファン本体41の回転数の増加にともなう空気の流れによって径方向内側へ加わる力である移動力が、ばね部材44の押付力よりも大きくなると、溝部42に沿って径方向内側へ移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と一体に一方向へ回転するファン本体と、
前記ファン本体に設けられ、径方向の中心から外側へ伸びている溝部と、
前記溝部において径方向へ移動可能に設けられているファンブレードと、
前記ファンブレードに、押付力として径方向の外側へ押し付ける力を加えるばね部材と、を備え、
前記ファンブレードは、前記ファン本体の回転数の増加にともなう空気の流れによって径方向内側へ加わる力である移動力が、前記ばね部材の前記押付力よりも大きくなると、前記溝部に沿って径方向内側へ移動する、
ファン装置。
【請求項2】
請求項1記載のファン装置を備えるモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、フォン装置およびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
全閉型の外扇モータは、冷却のための空気の流れを形成するファンを備えている。このファンは、回転数によって空気の流量および発生する音が増減する。モータの回転数が比較的小さいとき、ファンは空気の流量を十分に確保することが求められる。一方、モータの回転数が比較的大きくなると、空気の流量は十分に確保されるのに対し、ファンから発生する音は増大する。そのため、モータの回転数が大きくなると、音の発生を低減することが求められる。このように、モータのファンは、回転数に応じて相反する性能が求められる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示されているファンの場合、回転数によってファンブレードの角度を変更することを開示している。すなわち、特許文献1の場合、ファンの回転数によってファンブレードの角度を変更し、回転数が小さいときは風量の増大を図りつつ、回転数が大きいときは発生する音の低減を図っている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、ファンブレードは、形成する空気の流れに対して角度が変更される。そのため、ファンブレードの角度を変更するための機構が複雑化するとともに、ファンの自重の増大を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-194058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本実施形態では、構造が簡単で軽量であり、回転数に応じた空気の流量の確保と騒音の低減とを両立するファン装置、およびこれを用いるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によるファン装置は、ファン本体、溝部、ファンブレードおよびばね部材を備える。ファン本体は、回転子と一体に一方向へ回転する。溝部は、前記ファン本体に設けられ、径方向の中心から外側へ伸びている。ファンブレードは、前記溝部において径方向へ移動可能に設けられている。ばね部材は、前記ファンブレードに、押付力として径方向の外側へ押し付ける力を加える。前記ファンブレードは、前記ファン本体の回転数の増加にともなう空気の流れによって径方向内側へ加わる力である移動力が、前記ばね部材の前記押付力よりも大きくなると、前記溝部に沿って径方向内側へ移動する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態によるファン装置を図2の矢印I方向から見た概略図
図2】一実施形態によるファン装置を備えるモータを示す部分断面図
図3】一実施形態によるファン装置を図2の矢印I方向から見た概略図
図4】一実施形態によるファン装置のファン本体において、溝部に沿った図1の断面を示す概略図
図5】一実施形態によるファン装置のファン本体において、溝部に沿った図3の断面を示す概略図
図6図1のVI-VI線における断面を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ファン装置の一実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、ファン装置10は、モータ11に設けられている。モータ11は、ファン装置10に加え、フレーム12、固定子13および回転子14を備えている。固定子13は、フレーム12の内部に設けられている。固定子13は、固定子鉄心15および固定子巻線16を有している。固定子巻線16は、固定子鉄心15に巻かれている。回転子14は、回転子鉄心17、回転子巻線18および軸部材19を有している。回転子巻線18は、かご形に形成され、回転子鉄心17に巻かれている。軸部材19は、回転子鉄心17と一体に設けられている。回転子14は、軸部材19の中心軸21を中心に回転する。
【0010】
モータ11は、軸方向の両端部にブラケット22およびブラケット23を有している。ブラケット22は、ボルト24およびナット25でフレーム12に固定されている。また、ブラケット23は、ボルト26およびナット27でフレーム12に固定されている。軸部材19は、軸方向の一方の端部がベアリング28を挟んでブラケット22に支持され、他方の端部がベアリング29を挟んでブラケット23に支持されている。軸部材19は、一方の端部31がブラケット22から外側へ突出し、他方の端部32がブラケット23から外側へ突出している。軸部材19の端部32は、回転にともなう動力が取り出される出力部である。この端部32は、図示しない回転負荷に連結される。また、軸部材19は、端部31側にファン装置10が取り付けられている。
【0011】
ファン装置10は、軸部材19の端部31側に取り付けられている。モータ11は、ファン装置10側の端部にファンカバー33を備えている。ファンカバー33は、ファン装置10の全体を覆っている。ファンカバー33は、軸方向においてブラケット22と対向する面に図示しない通気孔を有している。通気孔は、ファンカバー33の内側と外側とを接続している。これにより、ファン装置10が駆動されると、ファンカバー33の内部へ通気孔を通して空気が流入する。流入した空気は、モータ11のフレーム12およびブラケット22を通してモータ11の全体を冷却する。このように、一実施形態によるモータ11は、全閉外扇形である。
【0012】
一実施形態によるファン装置10は、図1および図3図6に示すようにファン本体41、溝部42、ファンブレード43およびばね部材44を備えている。ファン本体41は、軸部材19の端部31側に取り付けられており、回転子14である軸部材19と一体に回転する。本実施形態のモータ11は、回転子14が一方向へ回転する。そのため、ファン本体41も、回転子14とともに一方向へ回転する。
【0013】
溝部42は、ファン本体41に設けられている。溝部42は、径方向へ伸びている。具体的には、溝部42は、ファン本体41の中心側から外側へ、内周側に設定した仮想的な円の接線方向へ設けられている。これにより、溝部42は、ファン本体41の周方向へ傾斜しつつ、ファン本体41の内周側から外周側へ設けられている。溝部42は、ファン本体41の周方向へ複数設けられている。本実施形態の場合、ファン装置10は、ファン本体41の周方向へ等間隔に6本の溝部42を有している。溝部42は、2本以上であれば任意の本数設けることができる。
【0014】
ファンブレード43は、この溝部42を径方向へ移動可能に設けられている。具体的には、ファンブレード43は、図4および図5に示すようにブレード本体45および筒部46を有している。ブレード本体45と筒部46とは、一体に接続されている。筒部46は、ブレード本体45の根元側、つまりブレード本体45のファン本体41側においてブレード本体45と接続している。筒部46は、溝部42に挿入されている。ブレード本体45は、溝部42からファン本体41の外側へ突出している。ファン本体41は、溝部42に沿って軸状に伸びるガイド軸部47を有している。ガイド軸部47は、ファン本体41と一体に設けられている。ガイド軸部47は、ファン本体41の径方向において溝部42の内周側の端部である内周壁48から溝部42に沿って突出している。このガイド軸部47は、筒状の筒部46の内側に挿入されている。これにより、筒部46は、ガイド軸部47に案内されて溝部42の内側を移動する。すなわち、筒部46は、内側がガイド軸部47に案内されるとともに、外側が溝部42を形成するファン本体41の内壁によって案内される。これらの結果、ファンブレード43は、筒部46が溝部42に案内されつつ移動することにより、溝部42に沿って径方向へ移動することができる。
【0015】
ばね部材44は、ファン本体41とファンブレード43との間に設けられている。具体的には、ばね部材44は、一方の端部がファン本体41の内周壁48に接し、他方の端部がファンブレード43の筒部46に接している。ばね部材44は、伸びる方向の力を有している。そのため、ばね部材44は、ファンブレード43をファン本体41の径方向において外側へ押し付ける。すなわち、ばね部材44は、ファンブレード43に対して径方向の外側へ向かう押付力を加える。これにより、ファンブレード43は、内周壁48から遠ざかる方向つまりファン本体41の径方向の外側へ力を受ける。
【0016】
モータ11が停止しているとき、ファン装置10も停止し、ファン装置10は空気の流れを形成しない。そのため、ファンブレード43は、空気から力を受けない。これにより、ファンブレード43は、ばね部材44からの力だけを受けることとなり、図1および図4に示すように溝部42において径方向の外側へ押し込まれている。つまり、ファンブレード43
は、モータ11が停止しているとき、ファン本体41の径方向において最も外側に位置している。その結果、ファン装置10の外径は、最大となる。
【0017】
ファン装置10がモータ11の軸部材19とともに回転すると、ファン装置10はモータ11を冷却するための空気の流れを形成する。そのため、ファンブレード43は、形成する空気の流れによって反力を受ける。この反力によってファンブレード43に加わる移動力は、ファンブレード43に対してファン本体41の周方向において内側へ向けて加わる。モータ11の回転数が上昇するにつれて、空気からファンブレード43に加わる移動力は増大する。そして、ファンブレード43に加わる移動力がばね部材44の押付力よりも大きくなると、図3および図5に示すようにファンブレード43は溝部42に沿ってファン本体41の径方向において内側へ移動する。つまり、ファンブレード43は、モータ11の回転数が上昇すると、ファン本体41の径方向において内側へ向けて移動する。その結果、ファン装置10の外径は、モータ11の回転数の上昇に応じて徐々に縮小する。
【0018】
このように、ファン装置10は、モータ11が停止しているとき、およびモータ11の回転数が小さいとき、ファンブレード43がファン本体41の径方向において外側に位置している。そのため、ファン装置10の外径は、モータ11が停止しているとき、およびモータ11の回転数が小さいとき、大きくなる。一方、モータ11の回転数が上昇すると、ファンブレード43はばね部材44の押付力に抗してファン本体41の径方向において内側へ移動する。そのため、ファン装置10の外径は、モータ11の回転数の上昇に応じて縮小する。
【0019】
モータ11の回転数と、ファンブレード43の移動量つまりファン装置10の外径との関係は、複数の要素によって決定される。すなわち、ファンブレード43の移動量つまりファン装置10の外径は、例えばファンブレード43の面積、ファンブレード43の傾斜角度θ、モータ11の回転数、ばね部材44のばね定数、およびファンブレード43の移動量などによって決定される。そして、モータ11の回転数とファンブレード43の移動との関係は、例えばばね部材44のばね定数を変更することにより任意に調整することができる。例えば、ばね部材44のばね定数を調整することにより、モータ11の回転数に比例してファン装置10の外径が変化する構成としたり、モータ11の回転数が特定の回転数に達した後にファン装置10の外径が変化する構成としたりすることができる。また、ファン本体41とファンブレード43との間にばね定数の異なるばね部材44を複数設けることにより、ファンブレード43がモータ11の回転数に応じて段階的に移動する構成としてもよい。傾斜角度θは、図6に示すようにファン本体41の外周壁が中心軸21に対して形成する角度である。
【0020】
以上説明した一実施形態のファン装置10を備えるモータ11は、ファン装置10の外径がモータ11の回転数に応じて変化する。すなわち、モータ11の回転数が低いとき、ファン装置10の外径は大きくなる。そのため、モータ11の回転数が小さいときでも、ファン装置10はモータ11の冷却に十分な空気の流量を確保する。一方、モータ11の回転数が上昇するにしたがって、ファン装置10の外径は縮小する。そのため、モータ11の回転数の上昇にともなって空気の流量の確保が容易になると、ファン装置10の外径が縮小し、ファン装置10が発する音は低減される。したがって、回転数に応じた空気の流量の確保と騒音の低減とを両立することができる。
【0021】
また、一実施形態では、ファン装置10は、ファン本体41とファンブレード43との間に設けられたばね部材44の押付力によって外径が変更される。すなわち、ファン装置10は、空気の流れの形成によってファンブレード43に生じる反力を利用して、外径が変化する。したがって、ファン装置10の構造を簡略化することができ、軽量化を図ることができる。
【0022】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
例えば、上述の一実施形態では、ファンブレード43をブレード本体45と筒部46とで構成している。この筒部46に代えて、例えば棒状の柱部としてもよい。この場合、ブレード本体45のガイド軸部47は不要であり、ファンブレード43は溝部42を形成するファン本体41の案内によって溝部42を移動する。
【符号の説明】
【0023】
図面中、10はファン装置、11はモータ、14は回転子、41はファン本体、42は溝部、43はファンブレード、44はばね部材を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6