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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166771
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】同期モータ及びポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20231115BHJP
   H02K 21/46 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K21/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077534
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 滉人
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621AA01
5H621GA01
5H621HH01
5H621HH10
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA09
5H622CA10
5H622CA12
5H622CB03
5H622CB05
(57)【要約】
【課題】自己始動が可能で、同期速度での高効率運転を可能とする。
【解決手段】実施形態の同期モータは、中心に回転軸が配置されると共に、外周部に断面が放射方向に長い複数個のスロットを円周方向に並んで有する円柱状の回転子鉄心と、回転子鉄心の各スロット内に設けられた複数本の導体バー及びそれら導体バーを回転子鉄心の軸方向両端部において接続するエンドリングを含むかご形導体と、回転子鉄心のスロットよりも内層側に設けられ2極の回転子磁極を構成する永久磁石とを備え、永久磁石は、回転子鉄心の1極を構成する半円部において、軸方向に見て、半径方向に延びる中心線に対し対称的に設けられ、外側端部がスロットのうちいずれかの内周端部に連続又は近接すると共に、内側端部が中心線部分まで延びる2本の内層スリット内に、2個が配設され、各内層スリットが連続又は近接する2つのスロットのなす開き角度αが、100°以上とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己始動を可能とした同期モータであって、
中心に回転軸が配置されると共に、外周部に断面が放射方向に長い複数個のスロットを円周方向に並んで有する円柱状の回転子鉄心と、
前記回転子鉄心の各スロット内に設けられた複数本の導体バー及びそれら導体バーを該回転子鉄心の軸方向両端部において接続するエンドリングを含むかご形導体と、
前記回転子鉄心の前記スロットよりも内層側に設けられ2極の回転子磁極を構成する永久磁石とを備え、
前記永久磁石は、前記回転子鉄心の1極を構成する半円部において、軸方向に見て、半径方向に延びる中心線に対し対称的に設けられ、外側端部が前記スロットのうちいずれかの内周端部に連続又は近接すると共に、内側端部が前記中心線部分まで延びる2本の内層スリット内に、2個が配設され、
前記各内層スリットが連続又は近接する前記2つのスロットのなす開き角度αが、100°以上とされている同期モータ。
【請求項2】
前記内層スリットが連続又は近接する2つのスロットのなす開き角度αは、150°以下とされている請求項1記載の同期モータ。
【請求項3】
前記回転子鉄心の外周部の複数個のスロットは、前記回転子鉄心の1極を構成する半円部において、軸方向に見て、その断面形状が中心線側は比較的幅狭に、両端側がそれよりも幅広になるように設けられている請求項1記載の同期モータ。
【請求項4】
前記回転子鉄心の外周部のスロットは、形成位置によって、外周端部に位置する頂点の位置が、放射方向に対して円周方向に傾いて設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の同期リラクタンスモータ。
【請求項5】
前記内層スリットの外側の端部においては、前記スロットとの間にブリッジが形成されている請求項1記載の同期モータ。
【請求項6】
ポンプ本体と、
前記ポンプ本体の駆動源となるモータであって、請求項1から5のいずれか一項に記載の同期モータとを備えるポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自己始動を可能とした同期モータ、及び、その同期モータを組込んだポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ装置例えばモータ直結型の油圧ポンプ装置に一体的に組込まれてその駆動源となるモータとして、同期リラクタンスモータが知られている。一般に、同期リラクタンスモータにあっては、始動のためにインバータが必要となり、コスト高となる問題点がある。そこで、従来では、例えば特許文献1に示されるように、回転子に、かご形導体と永久磁石との双方を備えて構成され、商用電源により駆動される自己始動形の永久磁石式同期モータが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-37126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した永久磁石式同期モータは、三層巻線が巻装された固定子の内周側に、回転子を配置して構成される。前記回転子は、回転子鉄心の外周部に設けられた複数のスロットに、導体バーを配設し、短絡環で短絡して始動用のかご形導体を設けていると共に、導体バーの内側に、永久磁石埋め込み用の穴を設けて、それら穴に永久磁石を埋め込んで2極の回転子磁極を形成している。この場合、前記永久磁石埋め込み用の穴は、4本が全体で正方形の枠状をなし、それら穴の端部は、前記スロットのうち、直径方向両端部の2箇所に、径方向に長く形成された短絡防止用スリットに近接配置して設けられている。各磁極において、永久磁石埋め込み用の2個の穴内に、2個の永久磁石が軸方向に見てL字形をなすように配置されている。
【0005】
しかしながら、本発明者らの研究によれば、上記のような同期モータにおいて、かご形導体と永久磁石とを単に組合せただけでは、高効率を得るには不十分であった。鉄損を小さくして高い効率を得たり、更にトルクリップルを低減させたりするといった観点からは、永久磁石の配置について、さらに最適な構造の探究が求められるのである。
そこで、自己始動が可能で、高効率を得ることができる同期モータ、及び、その同期モータを用いたポンプ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の同期モータは、自己始動を可能としたものであって、中心に回転軸が配置されると共に、外周部に断面が放射方向に長い複数個のスロットを円周方向に並んで有する円柱状の回転子鉄心と、前記回転子鉄心の各スロット内に設けられた複数本の導体バー及びそれら導体バーを該回転子鉄心の軸方向両端部において接続するエンドリングを含むかご形導体と、前記回転子鉄心の前記スロットよりも内層側に設けられ2極の回転子磁極を構成する永久磁石とを備え、前記永久磁石は、前記回転子鉄心の1極を構成する半円部において、軸方向に見て、半径方向に延びる中心線に対し対称的に設けられ、外側端部が前記スロットのうちいずれかの内周端部に連続又は近接すると共に、内側端部が前記中心線部分まで延びる2本の内層スリット内に、2個が配設され、前記各内層スリットが連続又は近接する前記2つのスロットのなす開き角度αが、100°以上とされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態を示すもので、同期モータの内部構成を角度180度(半円部)の範囲で概略的に示す図
図2】ポンプ装置の外観を概略的に示す図
図3】回転子の外観を示す斜視図
図4】開き角度αと振幅との関係を調べた結果を、基本波の実効値、3次高調波の実効値、基本波以外の全ての実効値について示す図
図5】実施例1、2及び比較例1の回転子鉄心のモデルの構成を並べて示す図
図6】第2の実施形態に係る回転子鉄心の構成を示す図
図7】第3の実施形態に係る回転子鉄心の構成を示す図
図8】一つのスロット部分の拡大図
図9】第4の実施形態に係る回転子鉄心の構成を示す図
図10】ブリッジ部分の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)第1の実施形態
以下、第1の実施形態について図1から図5を参照して説明する。まず、図2は、本実施形態に係るポンプ装置1の構成を概略的に示している。このポンプ装置1は、例えば油圧ポンプからなるポンプ本体2と、このポンプ本体2の駆動源となる、本実施形態に係る2極の同期モータ10とを備えている。この場合、ポンプ本体2に同期モータ10が一体的に結合され、同期モータ10の図示しない回転軸が、ポンプ本体2を直接駆動するように構成されている。
【0009】
図1は、同期モータ10の軸方向に見た1極分即ち角度180度の半円部の構成を示している。図1に示すように、本実施形態に係る同期モータ10は、例えば円筒状をなすフレーム11(図2参照)の内周面に、固定子12を装着すると共に、固定子12の内周部に僅かなエアギャップをおいて回転子13を配置して構成されている。前記固定子12は、内周側に向けて突出する複数個例えば24個のティース14aを有する固定子鉄心14に、図示しない巻線を装着して構成されている。
【0010】
前記回転子13は、図3にも示すように、例えば2極の磁気的突極性を有した円柱状の回転子鉄心15を備え、その回転子鉄心15の中心部を貫通して図示しない回転軸が固定され、その回転軸が前記フレーム11の両端のブラケットに回転自在に支持されている。前記回転子鉄心15は、多数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成され、中心に、前記回転軸が配置される中心孔15aを有している。
【0011】
図1等に示すように、回転子鉄心15の外周部分には、導体バーを形成するための複数個例えば全部で28個のスロット16が、円周方向に並んで設けられている。スロット16は、例えば、断面が放射方向に長く、外周側の方が大きく膨らむようないわゆる涙形に形成され、この場合、同じ形状、大きさのものが等間隔に設けられている。詳しく図示はしないが、各スロット16内には、例えばアルミダイカストにより導体バーが設けられると共に、回転子鉄心15の軸方向両端部において、それら導体バーを接続するエンドリング20aが設けられ、以て、周知のかご形導体20が設けられるようになっている。
【0012】
そして、本実施形態では、前記回転子鉄心15の前記スロット16よりも内層側には、永久磁石挿入用の内層スリット17が軸方向全体に延びて設けられ、その内層スリット17内に、2極の回転子磁極を構成する永久磁石18が設けられている。図1等では、便宜上、永久磁石18にハッチングを付して示している。具体的には、図1に示す回転子鉄心15の1極を構成する半円部において、2本の内層スリット17が、軸方向に見て、半径方向に延びる中心線Lに対し左右対称的に、図でハの字をなすように夫々直線的に延びて設けられている。これら2本の内層スリット17の内側端部は、中心線L部分でわずかなブリッジ部19を介して互いに近接している。また、2本の内層スリット17の外側端部は、前記スロット16のうちいずれかの内周端部に連続している。
【0013】
本実施形態では、2本の内層スリット17、17の外側端部は、図5の実施例1で示すように、図で下から2番目のスロット16、16に連続している、あるは、図5の実施例2で示すように、図で下から3番目のスロット16、16に連続している。これにて、内層スリット17が接続している2つのスロット16、16のなす開き角度αが、100°以上であり、且つ、150°以下とされている。具体的には、実施例1では、開き角度αが141°とされ、実施例2では、開き角度αが116°とされている。
【0014】
前記永久磁石18は、軸方向に長い薄型の矩形板状をなし、図1図5で示す半円部においては、各内層スリット17内に、例えば外側(図で上側)がN極となり、内側(図で下側)がS極となるように設けられる。図示はしないが、回転子鉄心15の残りの図で下半分の半円部においては、2本の内層スリット17が、図1とは上下対称的に設けられると共に、夫々に、永久磁石18が、外側がS極となり、内側がN極となるように設けられる。尚、内層スリット17内には、永久磁石18の両端側に位置して、夫々一部空洞が設けられる。
【0015】
以上のように構成された本実施形態の同期モータ10は、回転子13に、かご形導体20と永久磁石18とを組合わせることにより、商用電源による自己始動が可能で、同期速度での高効率運転が可能となることが確認された。即ち、回転子鉄心15が、かご形導体20を備えることによる誘導モータとしての機能、すなわち商用電源を用いて、その電源周波数に応じた同期速度で回転駆動が可能である特性を備える。これと共に、永久磁石18を設けたことによる磁石トルクによって、自己始動が可能となると共に、誘導電動機に比べて高効率での駆動が可能となる。特に、慣性モーメントの小さいポンプ装置1に適合したものとなる。
【0016】
さて、本発明者は、同期モータ10の回転子鉄心15において、かご形導体20に加えて永久磁石18を設ける場合の永久磁石18つまり内層スリット17の配置に関して、様々な試験、研究を重ねた。ここで、回転子鉄心15の半円部において、上記のように、軸方向に見てハの字状をなすように対称的に2本の内層スリット17を設け、それら各内層スリット17に永久磁石18を配置する構成を基本配置とした。そして、上記基本配置に対し、永久磁石18を具体的にどのような角度で配置することが、トルク特性に優れ損失を減少させるかに関して調べ、本実施形態に係る同期モータ10の有効性を検証した。
【0017】
図4は、内層スリット17、17が接続している2つのスロット16、16のなす開き角度αと振幅との関係を調べた結果を、基本波の実効値、3次高調波の実効値、基本波以外の全ての実効値について示している。この結果から、開き角度αは、小さい方が基本波の振幅が大きくなり、3次高調波は、α=120°、全高調波は、α=139°で最小となる。更に本発明者は、内層スリット17、17が接続する2つのスロット16、16の位置を変更し、開き角度αを異ならせた3種類のモデルに関して、トルクリップル及び鉄損について解析した。
【0018】
図5は、解析に用いた3種類のモデルを示している。上記したように、実施例1は、内層スリット17、17が図で下から2番目のスロット16、16に連続しており、開き角度αが141°とされている。実施例2は、内層スリット17、17が図で下から3番目のスロット16、16に連続しており、開き角度αが116°とされている。そして、比較例1は、内層スリット17、17が図で下から4番目のスロット16、16に連続しており、開き角度αが90°とされている。
【0019】
上記3種類のモデルに対し、トルクリップルや鉄損の大きさを解析した結果、トルクリプルについては、実施例1が最も小さく、次いで実施例2、比較例1の順で大きくなっていた。また、鉄損についても、実施例1が最も優れ、次いで実施例2、比較例1の順で大きくなっていた。これらの結果から、開き角度αを、100°以上とすることにより、トルクリップルひいては損失が小さく、高効率が得られることが明らかとなった。更に、開き角度αを、150°以下とすることが望ましいことも明らかとなった。
【0020】
このように本実施形態の同期モータ10によれば、かご形導体20を備えることによる誘導モータとしての機能、特性に加え、永久磁石18を設けたことによる磁石トルクによって、自己始動が可能となると共に、誘導電動機に比べて高効率での駆動が可能となる。この場合、要求仕様の3倍以上の慣性モーメントで、始動が可能となった。そして、各内層スリット17が連続する2つのスロット16のなす開き角度αを、100°以上とし、かつ、150°以下としたことにより、トルクリップルひいては損失が小さく、高効率が得られるものとなった。上記構成の同期モータ10は、特に、ポンプ装置1の始動時負荷特性に適合したものとなり、ポンプ本体2に同期モータ10を組込むことにより、始動特性に優れ、高効率のポンプ装置1を安価に提供することができる。
【0021】
(2)第2の実施形態
図6は、第2の実施形態を示すものであり、上記第1の実施形態と異なるところは、回転子鉄心21の構成にある。即ち、本実施形態における回転子鉄心21は、多数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成され、中心に、回転軸が配置される中心孔21aを有していると共に、外周部分には、導体バーを形成するための複数個例えば全部で28個のスロット22が、円周方向に並んで設けられている。
【0022】
このとき、回転子鉄心21の外周部の複数個のスロット22は、その断面形状が、放射方向に長いいわゆる涙形に形成されているのであるが、軸方向に見た図示の半円部において、中心線L側つまり図で上部側、中央側では比較的幅狭に構成され、両端側がそれよりも幅広になるように設けられている。またこれと共に、複数個のスロット22の円周方向の配置間隔についても、中心線L側では比較的小さく、両端側では比較的大きくなるように設けられている。これにより、スロット22の円周方向の配置位置が、第1の実施形態のスロット16とは変動している。
【0023】
そして、回転子鉄心21のスロット22よりも内層側には、永久磁石挿入用の内層スリット23が設けられ、その内層スリット23内に、2極の回転子磁極を構成する永久磁石18が設けられている。2本の内層スリット23、23の外側端部は、図で下から2番目のスロット22、22に連続し、それら2つのスロット22、22のなす開き角度αが、100°以上であり、且つ、150°以下とされている。具体的には、上記のスロット22の配置位置の変動に伴い、開き角度αは、123°とされている。
【0024】
このように、開き角度αを123°とした場合でも、上記第1の実施形態において、開き角度αを141°とした場合と同等以上の効率を得ることができ、同様の効果を得ることができる。また、トルクリップルについて調べた結果、開き角度αを123°とした場合、及び、141°とした場合に、トルクリップルを同程度に小さくすることができた。本実施形態においては、スロット22つまり導体バーの断面形状に工夫を施したことにより、スロット22の間隔が大きくなる部分でも、断面形状が太くなることで磁束の流れやすさを確保でき、トルクリップルを改善することができる。
【0025】
(3)第3の実施形態
図7及び図8は、第3の実施形態を示すものである。この第3の実施形態においても、回転子鉄心31の構成が、上記第1の実施形態等と異なる。即ち、図7に示すように、本実施形態における回転子鉄心31は、多数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成され、中心に、回転軸が配置される中心孔31aを有していると共に、外周部分には、導体バーを形成するための複数個例えば全部で28個のスロット32が、円周方向に並んで設けられている。
【0026】
このとき、図8にも示すように、回転子鉄心31の外周部の複数個のスロット32は、軸方向に見た図示の半円部において、その断面形状が、放射方向に長いいわゆる涙形に形成されているのであるが、先端側つまり外周端部側が、山形に尖った形態をなすと共に、外周端部に位置する頂点32aの位置が、放射方向に対して円周方向に傾いて設けられている。具体的には、図7で中心線Lを挟んだ右半分のスロット32においては、図8のように、放射方向Rに対し、右回転方向に僅かな角度δだけ傾いた位置に頂点32aが位置している。図7で中心線Lを挟んだ左半分のスロット32においては、放射方向Rに対し、左回転方向に僅かな角度δだけ傾いた位置に頂点32aが位置している。
【0027】
また、図7に示すように、回転子鉄心31のスロット32よりも内層側には、永久磁石挿入用の内層スリット33が設けられ、その内層スリット33内に、永久磁石18が設けられている。2本の内層スリット33、33の外側端部は、図で下から2番目のスロット32、32に連続し、それら2つのスロット32、32のなす開き角度αは、100°以上、150°以下の範囲内である、例えば141°或いは、123°とされている。
【0028】
このような第3の実施形態によれば、自己始動が可能で、同期速度での高効率運転を可能とするといった、上記第1、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、スロット32、32の外周側の頂点32aの位置を傾けるように配置したことにより、磁束の流れをわずかに変化させることができ、更なるトルクリップルの低減を図ることができることが確認できた。
【0029】
(4)第4の実施形態、その他の実施形態
図9及び図10は、第4の実施形態を示すものであり、回転子鉄心41の構成を示している。図9に示すように、本実施形態における回転子鉄心41は、中心に中心孔41aを有し、外周部分に、導体バーを形成するための複数個例えば全部で28個のスロット42が、円周方向に並んで設けられている。上記第2の実施形態のスロット22と同様に、これらスロット42の断面形状は、軸方向に見た図示の半円部において、中心線L側では比較的幅狭に構成され、両端側がそれよりも幅広になるように構成される。
【0030】
これと共に、複数個のスロット42の円周方向の配置間隔についても、中心線L側では比較的小さく、両端側では比較的大きくなるように設けられている。しかも、本実施形態では、上記第3の実施形態と同様に、複数個のスロット42は、先端側つまり外周端部側が、山形に尖った形態をなし、それら頂点42aの位置が、放射方向に対して円周方向に傾いて設けられている。つまり、本実施形態では、スロット42は、上記第2の実施形態のスロット22と、上記第3の実施形態のスロット32とを組み合わせた如き形態で設けられている。
【0031】
そして、回転子鉄心41のスロット42よりも内層側には、永久磁石挿入用の内層スリット43が設けられ、その内層スリット43内に、永久磁石18が設けられている。2本の内層スリット43、43の外側端部は、図で下から2番目のスロット42、42に近接しており、それら2つのスロット42、42のなす開き角度αは、123°とされている。このとき、本実施形態では、図10にも示すように、内層スリット43の外側の端部においては、スロット42との間にブリッジ44が形成されている。ブリッジ44は、回転子鉄心41を構成する電磁鋼板の打抜き型の変更によって容易に形成できる。
【0032】
このような第4の実施形態によれば、上記第1の実施形態等と同様に、自己始動が可能で、且つ、同期速度での高効率運転を可能とするといった効果を得ることができる。ここで、一般に、かご形導体は、アルミダイカストにより成形されるが、形成時に、スロット42内に導入されたアルミ溶湯が内層スリット43側に侵入することを防止する必要がある。本実施形態では、別の侵入防止用の手段を設けることなく、スロット42と内層スリット43との間にブリッジ44を設けることで、簡単な構成で、アルミ溶湯の侵入を防止することができる。尚、ブリッジ44を設けたことによる特性への悪影響は、ほとんどないことが明らかになっている。
【0033】
尚、上記各実施形態では、回転子鉄心の内層スリット内に、薄板状の永久磁石18を配置するようにしたが、緩やかな円弧状に形成された永久磁石を、円弧状の内層スリット内に配置するようにしても良い。永久磁石の厚み寸法としても、減磁を考慮して、比較的厚みの大きい永久磁石を採用することもできる。また、回転子鉄心のスロット数等についても、適宜変更できることは勿論である。その他、同期モータは、油圧ポンプに限らず、各種ポンプ装置に適用することができ、ポンプ装置以外に用いることも可能である。
【0034】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
図面中、1はポンプ装置、2はポンプ本体、10は同期モータ、13は回転子、15、21、31、41は回転子鉄心、16、22、32、42はスロット、17、23、33、43は内層スリット、18は永久磁石、20はカゴ形導体、32a、42aは頂点、44はブリッジ、αは開き角度、Lは中心線を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10