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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166786
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】給電装置の埋設構造
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20231115BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20231115BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231115BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20231115BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20231115BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20231115BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077566
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩一
(72)【発明者】
【氏名】川上 好弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和博
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA01
5G503FA06
5G503GB08
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC04
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC27
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】走行路を移動する移動体に設けられた受電装置に非接触で給電を行う給電装置を、走行路の路面近傍に長期共用性を確保しつつ埋設することである
【解決手段】走行路を移動する移動体に設けられた受電装置に、非接触で給電を行う給電装置を走行路に埋設する給電装置の埋設構造であって、前記給電装置は、給電コイルを収納するコイルケースと比較して、前記給電コイルに直列接続される共振コンデンサを収納する保護ケースが、走行路横断方向の長さを短小に形成されて、前記走行路に埋設されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路を移動する移動体に設けられた受電装置に、非接触で給電を行う給電装置を走行路に埋設する給電装置の埋設構造であって、
前記給電装置は、給電コイルを収納するコイルケースと比較して、前記給電コイルに直列接続される共振コンデンサを収納する保護ケースが、走行路横断方向の長さを短小に形成されて、
前記走行路に埋設されていることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項2】
請求項1に記載の給電装置の埋設構造において、
前記保護ケースと前記走行路との間に、充填材が充填されていることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項3】
請求項2に記載の給電装置の埋設構造において、
前記充填材が、繊維補強セメントモルタルであることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電装置の埋設構造において、
前記走行路が、アスファルト舗装層を備えるとともに、
前記保護ケースは、前記アスファルト舗装層に埋設されていることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項5】
請求項4に記載の給電装置の埋設構造において、
前記走行路が、道路であることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電装置の埋設構造において、
前記保護ケースが、平面視面積を前記走行路横断方向に対向する面の面積より狭小に形成されていることを特徴とする給電装置の埋設構造
【請求項7】
請求項1に記載の給電装置の埋設構造において、
前記走行路の路面下に前記保護ケースを収納する収納空間が設けられるとともに、
該収納空間を挟んだ両側に、天端が路面高さに位置する荷重受け部材が設けられていることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電装置の埋設構造において、
前記コイルケースの下側に、前記保護ケースが配置されるとともに、
該保護ケースの少なくとも下側に、前記保護ケースを被覆する被覆部材を備えることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電装置の埋設構造において、
前記給電装置が、前記給電コイル及び前記コイルケースに替えて、前記走行路の縦断方向に延在するよう設けられる平行二線路を備えることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行路を移動する移動体に設けられた受電装置に、非接触で給電を行う給電装置を走行路に埋設するための、給電装置の埋設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、給電装置と受電装置との間で生じる磁場共振現象(磁界共鳴現象)を利用して、非接触で電力伝送を行うワイヤレス電力伝送に関する研究開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、受電用共振手段と給電用共振手段とを備えた非接触電力供給装置に、所定の周波数内で給電側から見たインピーダンスの値に応じて、交流電力の周波数を設定する周波数可変手段を設ける構成が開示されている。これにより、受電用共振手段と給電用共振手段の結合状態が変化しても、電力送電効率がより高い周波数を設定し、電力送電効率の低下を抑制できる。
【0004】
このような技術は、様々な分野で活用されているが、なかでも、走行中の車両に電力を供給する走行中給電システムへの利用が期待されている。走行中給電システムは、給電装置が備える給電コイル、及びこの給電コイルと直列に接続される共振コンデンサを道路側に設ける一方で、受電コイルを備える受電装置を車両側に設ける。これにより、走行中の車両に対して非接触で、連続的もしくは断続的に電力を供給しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-233442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の走行中給電システムによれば、航続時間が短い、また充電時間が長いといった電気自動車の課題に対応できるため、電気自動車の利用を促し、運輸による二酸化炭素排出量の削減に寄与できる。ところが、走行安全性を考慮すると道路側に設ける給電コイル及び共振コンデンサは、道路内に埋設する必要がある。これらを道路内に埋設すると、受電コイルとの間で電力送電効率の低下を招く恐れがあるため、埋設深さは道路の路面に近接した浅い位置が好ましい。
【0007】
しかし、路面に近接した浅い位置に埋設すると、車両などの鉛直荷重が繰り返し伝達されやすく給電コイル及び共振コンデンサに不具合を生じやすい。特に、共振コンデンサは衝撃や高温環境に脆弱であるため、路面側から伝達される鉛直荷重に起因して発生する振動や、太陽光を受けることにより生じる温度上昇など、様々な外力に対応できる対策が求められている。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、走行路を移動する移動体に設けられた受電装置に非接触で給電を行う給電装置を、走行路の路面近傍に長期共用性を確保しつつ埋設することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明の給電装置の埋設構造は、走行路を移動する移動体に設けられた受電装置に、非接触で給電を行う給電装置を走行路に埋設する給電装置の埋設構造であって、前記給電装置は、給電コイルを収納するコイルケースと比較して、前記給電コイルに直列接続される共振コンデンサを収納する保護ケースが、走行路横断方向の長さを短小に形成されて、前記走行路に埋設されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記保護ケースと前記走行路との間に、充填材が充填されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記充填材が、繊維補強セメントモルタルであることを特徴とする。または、樹脂モルタルや、安価なセメント系の材料を採用してもよい。
【0012】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記走行路が、アスファルト舗装層を備えるとともに、前記保護ケースは、前記アスファルト舗装層に埋設されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記走行路が、道路であることを特徴とする。
【0014】
本発明の給電装置の埋設構造によれば、保護ケースの走行路横断方向の長さを短小に形成することで、移動体などの鉛直荷重は、保護ケースとこれに隣接する路面、及び充填材に分散して伝達される。すると、鉛直荷重に起因して、保護ケースに収納した共振コンデンサに作用する衝撃を低減できる。このため、交通量の多い走行路であれば、上面を充填材で被覆することにより路面高さに合わせることのできる程度の浅い位置に、給電装置を埋設できる。一方、交通量が比較的少ない走行路であれば、給電装置を道路の路面高さと略同一高さに合わせて埋設できる。
【0015】
このように、給電装置を、電力送電効率に与える影響を最小限に抑制できる走行路の路面近傍に、長期共用性を確保しつつ埋設することが可能となる。したがって、駐車場や工場敷地などの車路だけでなく、埋設工事に時間を要するとともに更新工事を容易に実施できない交通量の多い一般道や高速道路などにも、給電装置を設けることが可能となる。
【0016】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記保護ケースが、平面視面積を前記走行路横断方向に対向する面の面積より狭小に形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の給電装置の埋設構造によれば、平板形状の保護ケースを縦向けに形成することで、太陽光に晒されて保護ケースの内部が昇温する現象を抑制できる。その一方で、保護ケース内の共振コンデンサやコイルによる発熱を、走行路の深い部分に逃がすことも可能となる。
【0018】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記走行路の路面下に前記保護ケースを収納する収納空間が設けられているとともに、該収納空間を挟んだ両側に、天端が路面高さに位置する荷重受け部材が設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明の給電装置の埋設構造によれば、繰り返し伝達される移動体などの鉛直荷重は、対をなす荷重受け部材を介して走行路内に伝達され、収納空間に収納された保護ケースに直接伝達されることがない。また、路面にわだち掘れなどの経年劣化が生じた場合も同様であるから、保護ケースを堅牢な構造とすることなく、これに収納した共振コンデンサを長期にわたって保護することが可能となる。
【0020】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記コイルケースの下側に、前記保護ケースが配置されるとともに、該保護ケースの少なくとも下側に、前記保護ケースを被覆する被覆部材を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の給電装置の埋設構造によれば、保護ケースがコイルケースの下側に配置されるため、走行路から鉛直荷重が直接伝達されることがない。また、被覆部材に、耐衝撃性を有する材料を採用する、もしくは、放熱性能を有する材料を採用することにより、保護ケース内の共振コンデンサを、長期にわたり好適な環境で保護することが可能となる。
【0022】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記給電装置が、前記給電コイル及び前記コイルケースに替えて、前記走行路の縦断方向に延在するよう設けられる平行二線路を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の給電装置の埋設構造によれば、給電コイルもしくは平行二線路のいずれを採用した給電装置であっても、簡略な構造で長期共用性を確保しつつ、走行路の路面近傍に埋設することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、共振コンデンサを収納した保護ケースに、繰り返し伝達される移動体などの鉛直荷重を低減できるため、給電装置を走行路の路面近傍に長期共用性を確保しつつ埋設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態における走行中給電システムの概略を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における給電装置の概要を示す図である。
図3】本発明の第1の実施の形態における給電装置の埋設構造を示す図である(その1)。
図4】本発明の第1の実施の形態における給電装置の埋設構造を示す図である(その2)。
図5】本発明の第2の実施の形態における給電装置の埋設構造を示す図である。
図6】本発明の第3の実施の形態における給電装置の埋設構造を示す図である。
図7】本発明の第4の実施の形態における給電装置の埋設構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、走行中給電システムを構成する給電装置を走行路に埋設する際の、埋設構造に関するものであり、走行中給電システムを利用して移動する移動体は、電力によりモータを駆動して走行する電動車両であれば、何ら限定されるものではない。
【0027】
また、給電装置を埋設する走行路も、一般道や高速道路、駐車場や工場敷地内などに設けられている車路、地盤などいずれでもよい。さらに、走行路が道路や車路である場合において、舗装の種類はコンクリート舗装やアスファルト舗装、半たわみ性舗装など、いずれの舗装構造であってもよい。
【0028】
本実施の形態では、走行路が道路であり、道路の表層及び基層にアスファルト舗装層を備える場合を事例に挙げ、給電装置の埋設構造について、図1図7を参照しつつその詳細を説明する。給電装置の埋設構造を説明するに先立ち、まずは、走行中給電システムについて説明する。
【0029】
≪≪≪走行中給電システム100≫≫≫
走行中給電システム100は、図1(a)で示すように、道路30のアスファルト舗装層31に埋設される給電装置10と、電動車両Vに搭載される受電装置20と、を備えている。
【0030】
給電装置10は、コイルケース13に収納された給電コイル11と、保護ケース14に収納された共振コンデンサ12とを備えている。給電コイル11には、電源装置(図示せず)で発生した高周波電力が出力される。また、給電コイル11は、共振コンデンサ12と直列接続されて直列共振回路を構成する。一方、受電装置20は、受電コイル21と負荷22とを備えている。負荷22は、受電コイル21に接続され、受電コイル21は、電動車両V側に備える共振コンデンサ(図示せず)と直列接続されて直列共振回路を構成する。
【0031】
これにより、受電コイル21と給電コイル11が、磁場共鳴により磁気的に結合し、給電装置10から受電コイル21に高周波電力が伝送される。伝送された高周波電力は、電動車両Vの負荷22に供給される。こうして、走行中給電システム100はワイヤレスで、アスファルト舗装層31に埋設された給電装置10から電動車両Vに搭載される受電装置20に、電力を供給することができる。
【0032】
上記の給電装置10は、コイルケース13に収納された給電コイル11に替えて、平行二線路を採用することもできる。平行二線式の給電装置10については、後述する(第3の実施の形態を参照)。
【0033】
≪≪コイルケース13及び保護ケース14≫≫
上記の走行中給電システム100において、図2(a)で示すように、給電コイル11を収納するコイルケース13は、耐衝撃性を有する材料(例えば、ポリカーボネート製やポリプロピレン製、硬質ゴム)により製造されている。また、給電コイル11を形成する線材の出口部を含む全体に、防水性能を高める構造が設けられている。これらを道路30に埋設する際には、電力伝送効率を考慮するとアスファルト舗装層31の路面33近傍に埋設することが好ましい。
【0034】
一方、コイルケース13に外付けされる保護ケース14も、コイルケース13と同様の材料により製造され、耐衝撃性と防水性能を備えている。しかし、保護ケース14に収納されている共振コンデンサ12は、給電コイル11と比較して衝撃や高温環境に脆弱であるため、路面33近傍に埋設すると、電動車両Vなどの鉛直荷重や太陽光に晒されることによる昇熱の影響を受けて、長期共用性に課題が生じる。
【0035】
そこで、路面33を介して伝達される様々な外力の影響を、最小限に抑制可能な態様で保護ケース14をアスファルト舗装層31の路面33近傍に埋設することで、給電装置10に要求される電力伝送効率の維持と長期共用性を確保する。以下に、給電装置10の埋設構造を埋設方法と併せて、第1~第4の実施の形態に説明する。
【0036】
≪≪第1の実施の形態≫≫
第1の実施の形態では、図2(b)で示すように、保護ケース14をコイルケース13の縦断方向に隣り合わせて外付けすることにより給電装置10を構成し、これを図1(a)及び(b)で示すように、アスファルト舗装層31の路面33近傍に埋設している。そして、少なくとも保護ケース14は、アスファルト舗装層31との間に充填された充填材40と一体に構成されている。
【0037】
保護ケース14は、横断方向長さLが、図2(b)で示すように、コイルケース13の横断方向長さLcより短小に形成されている。これにより、電動車両Vが保護ケース14の直上を通過した場合に、電動車両Vなどの鉛直荷重を保護ケース14だけでなくその周囲の路面33に分散させることができる。したがって、伝達された鉛直荷重に起因して保護ケース14に収納した共振コンデンサ12に作用する衝撃も低減できる。
【0038】
また、保護ケース14の平面視面積S1が、図2(b)で示すように、横断方向に面する側面視面積S2より狭小に形成されている。このように、平板形状の保護ケース14を縦向けに形成することで、路面33近傍に埋設しても、太陽光に晒されて保護ケース14の内部が昇温する現象を抑制することができる。その一方で、保護ケース14内の共振コンデンサ11が発熱した場合には、その熱をアスファルト舗装層31の深い部分に逃がすことが可能となる。
【0039】
このような態様で給電装置10をアスファルト舗装層30に埋設する手順は、次のとおりである。
【0040】
まずは、図3(a)で示すように、アスファルト舗装層31に設置領域Pを形成する。設置領域Pは、道路30が新設の場合には、例えば、設置領域Pと同形状の型枠を予め配置しておくいわゆる箱抜きを行って、アスファルト混合物を打設し、アスファルト舗装層31を構築する。
【0041】
また、道路30が既設の場合には、設置領域Pの形成予定位置に沿って道路カッターにより切り込みを入れたのち、切込みで囲まれた範囲内を剥がし取る。又は形成予定位置を切削機で?がし取り、底部表面を充填材40などにより平らに均しても良い。次に、図3(b)で示すように、設置領域P内に給電装置10を配置するとともに、アスファルト舗装層31との間に充填材40を充填する。
【0042】
充填材40は、保護ケース14に作用する衝撃を低減できるとともに、道路構造の基層・表層への採用に適した圧縮強度を発現できる材料であれば、いずれをも採用できる。なかでも、耐衝撃性及び耐摩耗性を有する樹脂モルタルや、靭性に優れた繊維補強セメントモルタルを例示することができる。または、安価なセメント系の材料を採用してもよい。
【0043】
これにより、充填材40が、路面33側から伝達される鉛直荷重をアスファルト舗装層31とともに分担して支持する。これにより、保護ケース14に伝達される鉛直荷重が減少するため、鉛直荷重に起因して生じる振動から保護ケース14に収納した共振コンデンサ12を保護することができる。
【0044】
また、図4(a)で示すように、設置領域Pにおける保護ケース14が配置される領域の横断方向溝幅Lpを、電動車両Vで採用されるタイヤ幅wの最小値(例えば、13インチ)より短小に形成してもよい。そして、図4(b)で示すように、保護ケース14における横断方向長さLを、この設置領域Pの溝幅Lp内に収まる長さに形成する。こうすると、保護ケース14に伝達される鉛直荷重をより低減させることができる
【0045】
したがって、道路交通量が比較的少ない道路30であれば、図1(a)で示すように、ゴムなど弾性素材よりなるカバー材Cなどでコイルケース13及び保護ケース14を被覆する程度の状態で、道路30の路面33と略同一高さに合わせることができる。また、交通量の多い道路であっても、図1(b)で示すように、充填材40で被覆することにより路面33との高さ合わせをできる程度の浅い深度に、コイルケース13及び保護ケース14を埋設することができる。
【0046】
保護ケース14の上面を充填材40で被覆する場合には、充填材40を天端が路面33と略同一となる高さまで打設してもよいし、図4(b)で示すように、充填材40を天端が路面33より低位置となるよう打設してもよい。
【0047】
なお、天端を路面33より低位置となるように打設する場合には、図4(c)で示すように充填材40を打ち継いで、上面を充填材40の天端と路面33とをなだらかに連続させるなどして、充填材40路面33との境界部分を補強するとよい。
【0048】
上記の第1の実施の形態では、保護ケース14をアスファルト舗装層31に充填材40を介して埋設する場合を説明したが、アスファルト舗装層31に収納空間Hを設け、この収納空間Hに保護ケース14を収納してもよい。
【0049】
≪≪第2の実施の形態≫≫
第2の実施の形態では、図5(a)で示すように、空間形成具50を利用してアスファルト舗装層31に収納空間Hを形成する。そして、この収納空間Hに保護ケース14を収納するようにして、給電装置10を、アスファルト舗装層31の路面33近傍に埋設している。
【0050】
空間形成具50は、保護ケース14を挟んで道路30の横断方向に対をなす荷重受け部材51と、荷重受け部材51の下方側に位置する底版52とを備えている。荷重受け部材51は、図5(b)で示すように、略直方体に形成され、縦断方向の長さが保護ケース14と同程度もしくは長大に形成されている。
【0051】
また、その高さは、底版52の上面に設置された状態で、保護ケース14より十分高く、図5(a)で示すように、アスファルト舗装層31の層厚と同程度の高さを有している。また、底版52は、対をなす荷重受け部材51を跨ぐ大きさに形成され、その上面が荷重受け部材51と当接している。
【0052】
これらはいずれも、鉛直荷重が伝達された際に、変形することない圧縮強度を確保していれば、その形状や材質は何ら限定されるものではない。例えば、高靭性を有する材料で製作したプレキャスト部材などが好ましい。また、図5(c)で示すように、路盤32が、荷重受け部材51を介して鉛直荷重を伝達された際に変形しない程度の圧縮強度を有していれば、底版52を省略して空間形成具50を構成してもよい。
【0053】
このような形状の空間形成具50を利用して、図5(a)及び(c)で示すように、アスファルト舗装層31に収納空間Hを設ける手順は、次のとおりである。
【0054】
道路30が新設の場合には、図5(a)を参照すると、まず、路盤32を設けたのちアスファルト舗装層31を構築する前に、路盤32に底版52を上面が露出した状態で埋設する。次に、底版52上に対をなす荷重受け部材51を設置するとともに、これらを型枠として利用し、アスファルト混合物を打設する。
【0055】
もしくは収納空間Hを含む荷重受け部材51の設置領域と同形状の型枠を底版52上に予め配置しておくいわゆる箱抜きを行って、アスファルト混合物を打設する。アスファルト混合物が硬化したのち、箱抜き跡に空間形成具50を設置することにより、アスファルト舗装層31に収納空間Hを設けることができる。
【0056】
一方、道路30が既設の場合には、図5(c)を参照すると、まず、収納空間Hを含む荷重受け部材51の設置領域の外周に沿って、道路カッターなどを用いてアスファルト舗装層31に切り込みを入れる。次に、切り込みで囲まれた範囲内のアスファルト舗装層31を剥がし取り、露出した路盤32の上面に、対をなす荷重受け部材51を設置する。これにより、アスファルト舗装層31に空間形成具50が埋設され、空間形成具50と路盤32とにより形成された領域の内方に、収納空間Hが形成される。
【0057】
上記の手順で形成された収納空間Hにおいて、図5(a)及び(c)で示すように、道路30が新設及び既設のいずれの場合にも、対をなす荷重受け部材51がその天端を、アスファルト舗装層31と連続する高さに位置決めされている。また、対をなす荷重受け部材51の離間間隔LHは、例えば、電動車両Vで採用されるタイヤ幅wの最小値(例えば、13インチ)より短小に形成されている。そして、保護ケース14は、荷重受け部材51の天端より低い位置に収納されている。
【0058】
こうすると、繰り返し伝達される電動車両Vなどの鉛直荷重は、対をなす荷重受け部材51を介して路盤32に伝達され、収納空間Hに収納された保護ケース14に直接作用することがない。また、路面32にわだち掘れなどの経年劣化が生じた場合も同様であるから、保護ケース14を堅牢な構造とすることなく、これに収納した共振コンデンサ12を長期にわたって保護することが可能となる。
【0059】
上記の第1及び第2の実施の形態では、保護ケース14がコイルケース13における道路30の縦断方向に外付けされている給電装置10を事例に挙げた。しかし、コイルケース13に対する保護ケース14の外付け位置はいずれでもよく、両者を車幅方向に隣接させてもよいし、対角線をつなぐように配置してもよい。また、コイルケース13に外付けされる保護ケース14は、必ずしも側面ではなくてもよく、下面側に設けてもよい。
【0060】
≪≪第3の実施の形態≫≫
第3の実施の形態では、図6(a)で示すように、コイルケース23の下面側に平板状の保護ケース14を設けるととにもに、保護ケース14の下面側に被覆部材15を設けて、給電装置10を層構造に構成する。そして、図6(b)で示すように、コイルケース13が路面33近傍に配置されるようにして、給電装置10をアスファルト舗装層31に埋設している。また、給電装置10とアスファルト舗装層31との間には、充填材40が充填されている。
【0061】
保護ケース14は、図6(a)及び(b)で示すように、横断方向長さLを、コイルケース13の横断方向長さLCより短小に形成されている。この点は、第1及び第2の実施の形態と同様の構成である。。
【0062】
被覆部材15は、少なくとも耐衝撃性と放熱性を有する部材が好ましい。これにより、コイルケース13に鉛直荷重が伝達されることに起因して、保護ケース14に生じる衝撃や振動を、被覆部材15で効率よく吸収できる。また、共振コンデンサ12の発熱により保護ケース14に温度上昇が生じた場合に、この熱を被覆部材15により放熱し、保護ケース14を高温環境から保護できる。
【0063】
したがって、被覆部材15の設置位置は、保護ケース14の下面側だけでなく側面にも設けるなどして、保護ケース14全体を覆うよう設置してもよい。
【0064】
このような形状の給電装置10を、図6(b)で示すように、アスファルト舗装層31に埋設する手順は、次のとおりである。まず、アスファルト舗装層31に設置領域Pを形成する。設置領域Pは、道路30が新設の場合には、例えば、設置領域Pと同形状の型枠を予め配置しておくいわゆる箱抜きを行って、アスファルト混合物を打設する。また、道路30が既設の場合には、設置領域Pの形成予定位置に沿って道路カッターにより切り込みを入れたのち、切り込みで囲まれた範囲内を剥がし取る。
【0065】
こうして形成した設置領域P内に給電装置10を配置し、アスファルト舗装層31との間に充填材40を充填する。充填材40は、第1の実施の形態で説明したものと、同様の材料を用いることができる。
【0066】
上記の第1~第3の実施の形態では、給電装置10が給電コイル11とこれを収納するコイルケース13と備える場合を事例に挙げた。しかし、給電装置10は、これに限定するものではなく、いわゆる平行二線方式であってもよい。
【0067】
≪第4の実施の形態≫
第4の実施の形態では、図7(a)で示すような、平行二線路16と共振コンデンサ12を収納した保護ケース14とを備える給電装置10を、図7(b)及び(c)で示すように、アスファルト舗装層31の路面33近傍に埋設している。
【0068】
平行二線路16は、平行に配置された左右一対の第1部材16L及び第2部材16Rを備える。これら第1部材16L及び第2部材16Rは、それぞれ平板状の導電体により構成され、電源装置(図示せず)で発生した高周波電力が出力される。また、共振コンデンサ12と直列接続されて、直列共振回路を構成する。
【0069】
これにより、平行二線路16と受電コイル21とは、磁場共鳴により磁気的に結合し、平行二線路16から受電コイル21に高周波電力が伝送され、伝送された高周波電力が負荷22に供給される。
【0070】
一方、共振コンデンサ12を収納する保護ケース14は、第1及び第2の実施の形態と同様に、平面視面積S1が、横断方向に面する側面視面積S2より狭小に形成されている。また、保護ケース14の横断方向長さLが、平行二線路16の全体幅Lwより短小に形成されている。このように、平板形状の保護ケース14は、縦向けに形成されている。これらの点は、第1及び第2の実施の形態と同様の構成である。
【0071】
上記の構成を有する給電装置10をアスファルト舗装層31に埋設する手順は、次のとおりである。図7(b)を参照すると、道路30が新設の場合には、例えば、保護ケース14を設置するために必要な設置領域Pと同形状の型枠を予め配置しておくいわゆる箱抜きを行って、アスファルト混合物を打設する。
【0072】
また、道路30が既設の場合には、設置領域Pの形成予定位置に沿って道路カッターにより切り込みを入れたのち、切り込みで囲まれた範囲内を剥がし取る。こうして形成した設置領域P内に、図7(b)で示すように、保護ケース14を配置するとともに、アスファルト舗装層31との間に充填材40を充填する。
【0073】
このとき、図7(b)では、設置領域Pの横断方向溝幅Lp1を、例えば、電動車両Vで採用されるタイヤ幅wの最小値を超えない範囲で大きく形成する。そして、部材厚の大きい堅牢な構造の保護ケース14を設置領域Pに配置し、充填材40と一体化しているている。しかし、これに限定するものではなく、図7(c)で示すように、設置領域Pの横断方向溝幅Lp2を細く形成し、スリムな構造の保護ケース14を設置領域Pに配置し、充填材40と一体化してもよい。
【0074】
スリムな構造とは、設置領域Pと保護ケース14との間に充填する充填材40の充填圧に耐えうる強度と防水性を少なくとも確保した構造である。設置領域Pの横断方向溝幅Lp2を小さく設けるほど、鉛直荷重が保護ケース14に伝達されにくくなる。また、太陽光に晒される平面視面積S1も小さくなる。このため、保護ケース14をスリムな構造としても、共振コンデンサ12を振動や熱等の外力から保護することが可能となる。
【0075】
上記の図7(b)及び(c)ともに、充填材40は、第1の実施の形態で使用したものと同様の材料を使用できる。また、保護ケース14の上面を充填材40で被覆する場合には、充填材40を天端が路面33と略同一となる高さまで打設し、図1(a)を参照して説明したように、ゴムなど弾性素材よりなるカバー材Cで上面を被覆すると良い。
【0076】
また、充填材40は、第1の実施の形態で、図4(b)を参照しつつ説明したように、天端が路面33より低位置となるよう打設してもよい。この場合には、図4(c)を参照しつつ説明したように、充填材40を打ち継いで、充填材40と路面33との境界部分を補強するとよい。
【0077】
一方、平行二線路16の埋設方法はいずれでもよく、その姿勢も、図7(b)及び(c)で示すように、第1部材16L及び第2部材16Rがそれぞれ平面を路面に向けて埋設してもよいし、平面を路面33と直交させてアスファルト舗装層31内に埋設してもよい。なお、平行二線路16は、第1部材16L及び第2部材16Rをそれぞれ、塩化ビニール樹脂等の絶縁材で被覆してもよいし、絶縁材による被覆がなされない状態で、アスファルト舗装層31に埋設してもよい。
【0078】
本発明の給電装置の埋設方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0079】
例えば、第4の実施の形態で説明した平行二線方式の給電装置10の埋設構造において、図7(b)及び(c)で示すような、保護ケース14の構造やアスファルト舗装層31に埋設する態様は、第1の実施の形態で説明した、給電コイル11を備えた給電装置10の埋設構造にも適用可能である。
【0080】
また、本実施の形態では、給電装置10の保護ケース14に共振コンデンサ12が収納されている場合を事例に挙げたが、これに限定されるものではない。保護ケース14は、共振コンデンサ12を含む給電装置10に必要な、その他の機器を併せて収納するものであってもよい。さらには給電設備に用いる他の設備を単独で収納するものであってもよい。
【0081】
加えて、走行中給電システム100を構成する給電コイル11について、本実施の形態では、「磁界結合方式」を事例に挙げているが、「電解結合方式」を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
100 走行中給電システム
10 給電装置
11 給電コイル
12 共振コンデンサ
13 コイルケース
14 保護ケース
15 被覆部材
16 平行二線路
16L 第1部材
16R 第2部材
20 受電装置
21 受電コイル
22 負荷
30 道路
31 アスファルト舗装層
32 路盤
33 路面
40 充填材
P 設置領域
C カバー材
H 収納空間
T タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7