(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166788
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】給電装置の埋設構造及び給電装置の埋設方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/00 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
E01C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077568
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩一
(72)【発明者】
【氏名】川上 好弘
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AB03
2D051AD05
2D051AG01
2D051EA01
2D051EA07
(57)【要約】
【課題】移動体に設けられた受電装置に非接触で給電を行う給電装置を、アスファルト舗装を備える走行路の路面近傍に、高い作業性と密着性をもって埋設することである。
【解決手段】走行路を移動する移動体に設けられた受電装置に非接触で給電を行う給電装置を、走行路に埋設する給電装置の埋設構造であって、前記給電装置が、給電コイルと該給電コイルを収納するコイルケースとを備え、該コイルケースを、アスファルト混合物を硬化させて構築した前記走行路の舗装に埋設してなり、該コイルケースの表面に、粗面を形成する中間部材が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられた受電装置に非接触で給電を行う給電装置を、走行路に埋設する給電装置の埋設構造であって、
前記給電装置が、給電コイルと該給電コイルを収納するコイルケースとを備え、
該コイルケースを、アスファルト混合物を硬化させて構築した前記走行路の舗装に埋設してなり、
該コイルケースの表面に、粗面を形成する中間部材が設けられていることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項2】
請求項1に記載の給電装置の埋設構造において、
前記中間部材が、前記舗装の構築時に前記コイルケースとの間で、前記アスファルト混合物が有する熱の伝導を遮断もしくは遅延させることの可能な熱伝導性または熱容量を備えることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項3】
請求項1に記載の給電装置の埋設構造において、
前記中間部材が、空気層または真空層を備えることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電装置の埋設構造において、
前記舗装が、半たわみ性舗装体であることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項5】
請求項4に記載の給電装置の埋設構造において、
前記走行路が、道路であることを特徴とする給電装置の埋設構造。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電装置の埋設構造を構築するための給電装置の埋設方法であって、
前記アスファルト混合物を打設するとともに、該アスファルト混合物に前記コイルケースを埋設することを特徴とする給電装置の埋設方法。
【請求項7】
請求項6に記載の給電装置の埋設方法であって、
前記コイルケースを埋設した前記アスファルト混合物に、セメントミルクを浸透させることを特徴とする給電装置の埋設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に設けられた受電装置に非接触で給電を行う給電装置を走行路に埋設するための、給電装置の埋設構造及び給電装置の埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、給電装置と受電装置との間で生じる磁場共振現象(磁界共鳴現象)を利用して、非接触で電力伝送を行うワイヤレス電力伝送に関する研究開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、受電用共振手段と給電用共振手段とを備えた非接触電力供給装置に、所定の周波数内で給電側から見たインピーダンスの値に応じて、交流電力の周波数を設定する周波数可変手段を設ける構成が開示されている。これにより、受電用共振手段と給電用共振手段の結合状態が変化しても、電力送電効率がより高い周波数を設定し、電力送電効率の低下を抑制できる。
【0004】
このような技術は、様々な分野で活用されているが、なかでも、走行中の車両に電力を供給する走行中給電システムへの利用が期待されている。走行中給電システムは、給電装置が備える給電コイル、及びこの給電コイルと直列に接続される共振コンデンサを道路側に設ける一方で、受電コイルを備える受電装置を車両側に設ける。これにより、走行中の車両に対して非接触で、連続的もしくは断続的に電力を供給しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、道路側に給電装置を埋設して電力の無線供給が可能となれば、航続時間が短い、また充電時間が長いといった電気自動車の課題に対応可能となる。このため、電気自動車の利用を促し、運輸による二酸化炭素排出量の削減に寄与できる。
【0007】
給電装置は一般に、高周波電力を伝送する給電コイルをコイルケースに収納し、走行路に埋設する。そして、走行路に給電装置を埋設するに際し、電力伝送効率を考慮すると給電装置は、路面近傍の浅い深さ、つまり舗装に埋設することが好ましい。
【0008】
しかし、コイルケースは、舗装との密着性を考慮して製作されていない。このため、長期にわたって繰り返し電気自動車などの鉛直荷重が伝達されると、ガタツキなどの不具合を生じかねない。また、舗装にアスファルト舗装を採用する場合、その構築工程には、200℃を超えるアスファルト混合物を、路盤上に打設する作業が含まれる。このため、アスファルト舗装の構築作業と、給電装置をアスファルト舗装に埋設する作業とを同時進行しようとすると、給電装置が200℃を超える高温環境に晒されて、破損する恐れが生じる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、移動体に設けられた受電装置に非接触で給電を行う給電装置を、アスファルト舗装を備える走行路の路面近傍に、高い作業性と密着性をもって埋設することである。、高い作業性と密着性をもって埋設する
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため本発明の給電装置の埋設構造は、移動体に設けられた受電装置に非接触で給電を行う給電装置を、走行路に埋設する給電装置の埋設構造であって、前記給電装置が、給電コイルと該給電コイルを収納するコイルケースとを備え、該コイルケースを、アスファルト混合物を硬化させて構築した前記走行路の舗装に埋設してなり、該コイルケースの表面に、粗面を形成する中間部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記中間部材が、前記舗装の構築時に前記コイルケースとの間で、前記アスファルト混合物が有する熱の伝導を遮断もしくは遅延させることの可能な熱伝導性または熱容量を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記中間部材が、空気層または真空層を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記舗装が、半たわみ性舗装体であることを特徴とする。
【0014】
本発明の給電装置の埋設構造は、前記走行路が、道路であることを特徴とする。
【0015】
本発明の給電装置の埋設方法は、本発明の給電装置の埋設構造を構築するための給電装置の埋設方法であって、前記アスファルト混合物を打設するとともに、該アスファルト混合物に前記コイルケースを埋設することを特徴とする。
【0016】
本発明の給電装置の埋設構造及び給電装置の埋設方法によれば、給電コイルを収納したコイルケースに中間部材よりなる粗面が形成されて、走行路を構成するアスファルト舗装との密着性が高められている。したがって、移動体などの鉛直荷重がコイルケースに繰り返し伝達されてもガタツキを生じることなく、長期にわたって安定してアスファルト舗装の路面近傍に埋設することが可能となる。
【0017】
また、中間部材として、前記舗装の構築時に前記コイルケースとの間で、前記アスファルト混合物が有する熱の伝導を遮断もしくは遅延させることの可能な熱伝導性または熱容量を有する材料や、空気層を有する立体網状体、または木片などを採用する。すると、打設時に200℃を超えるアスファルト混合物からコイルケースへの熱伝導が中間部材により低減される。これにより、コイルケース及びこれに収納した給電コイルを含む高温に脆弱な設備が、高温環境に晒されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、走行中の移動体に連続的、もしくは断続的に給電する走行中給電システムの給電装置を、アスファルト舗装の路面近傍に高い作業性と密着性をもって埋設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態における給電装置の埋設構造及び方法を示す図である(第1の実施の形態)。
【
図2】本発明の実施の形態における給電装置の概略を示す図である(第1の実施の形態)。
【
図3】本発明の実施の形態における給電装置の埋設構造及び方法を示す図である(第2の実施の形態)。
【
図4】本発明の実施の形態における給電装置の埋設構造及び方法を示す図である(第3の実施の形態)。
【
図5】本発明の実施の形態における給電装置の埋設構造及び方法を示す図である(第4の実施の形態)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、走行中給電システムを構成する給電装置を走行路に埋設する際の、埋設構造に関するものであり、特に、アスファルト舗装層や半たわみ性舗装体など、アスファルト混合物を硬化して構築した舗装に埋設する場合に好適である。
【0021】
走行中給電システムを利用して移動する移動体は、電力によりモータを駆動して走行する電動車両であれば、何ら限定されるものではない。また、給電装置を埋設する走行路も、一般道や高速道路、駐車場や工場敷地内などに設けられている車路など、アスファルト舗装を設けることの可能な構造を有していれば、いずれでもよい。
【0022】
本実施の形態では、走行路が道路である場合を事例に挙げ、給電装置の埋設構造及び埋設方法について、
図1~
図5を参照しつつその詳細を説明する。給電装置の埋設構造を説明するに先立ち、まずは、走行中給電システムについて説明する。
【0023】
≪≪≪走行中給電システム100≫≫≫
走行中給電システム100は、
図1(a)及び(b)で示すように、電動車両Vに搭載される受電装置20と、アスファルト混合物311を硬化してなる道路30のアスファルト舗装層31に埋設される給電装置10と、を備えている。
【0024】
給電装置10は、コイルケース13に収納された給電コイル11と、給電コイル11に接続される電源装置12とを備えている。電源装置12は、高周波電力を発生させる。発生した高周波電力は、給電コイル11に出力される。一方、受電装置20は、受電コイル21と負荷22とを備えている。負荷22は、受電コイル21に接続され、受電コイル21は、電動車両V側に備える共振コンデンサ(図示せず)と直列接続されて直列共振回路を構成する。
【0025】
これにより、受電コイル21と給電コイル11が、磁場共鳴により磁気的に結合し、給電装置10から受電コイル21に高周波電力が伝送される。伝送された高周波電力は、電動車両Vの負荷22に供給される。こうして、走行中給電システム100はワイヤレスで、アスファルト舗装層31に埋設された給電装置10から電動車両Vに搭載される受電装置20に、電力を供給することができる。
【0026】
≪≪給電装置の埋設構造≫≫
上記の走行中給電システム100において、給電装置10の給電コイル11は、
図2(a)で示すようなコイルケース13に収納された状態で、道路30のアスファルト舗装層31に埋設されている。
【0027】
コイルケース13は、耐衝撃性を有する材料(例えば、ポリカーボネート製やポリプロピレン製、硬質ゴム)により製造されている。また、給電コイル11を形成する線材の出口部を含む全体に、防水性能を高める構造が設けられている。そして、コイルケース13はさらに、
図2(b)で示すように、アスファルト舗装層31と対向する面に、複数の中間部材14が設けられている。
【0028】
中間部材14は、コイルケース13に粗面を形成でき、かつ熱伝導性が小さいまたは熱容量の大きい材料よりなる部材が採用されている。熱伝導性または熱容量は、
図1(a)で示すような、アスファルト舗装層31の構築時にコイルケース13との間で、アスファルト混合物311が有する熱の伝導を遮断もしくは遅延させることの可能な程度が好ましい。具体的には、コンクリート片や砕石などを、中間部材14の事例として挙げることができる。これらは、例えば、接着剤など適宜の固定手段を利用して、コイルケース13に付着すると良い。
【0029】
そして、
図1(b)で示すように、硬化することによりアスファルト舗装層31をなすアスファルト混合物311は、加熱アスファルト混合物や常温施工型加熱アスファルト混合物など、道路30の舗装に採用されるものであればいずれでもよい。
【0030】
≪第1の実施の形態≫
上記の構成を有する給電装置10のコイルケース13は、電力伝送効率を考慮すると、道路30の路面33近傍に埋設することが好ましい。このため、
図1(a)及び(b)では、上面をカバー材Cなどで覆う程度の状態で路面33と連続させるようにして、コイルケース13をアスファルト舗装層31に埋設する場合を例示している。このような態様で給電装置10をアスファルト舗装層31に埋設する手順は、次に示すとおりである。
【0031】
図1(b)で示すように、路盤32上に高熱のアスファルト混合物311を打設するとともに、コイルケース13をアスファルト混合物311に埋設する。コイルケース13は、道路30の路面33と略同一高さに合わせる。また、アスファルト混合物311は、一般的な道路施工と同様に、敷き均しや締固めなど道路構造に必要な作業が実施される。こののち、アスファルト混合物311が硬化するまで養生したのち、適宜、ゴムなど弾性素材よりなるカバー材Cを用いてコイルケース13を被覆する。
【0032】
前述したように、コイルケース13にはアスファルト混合物311と対向する側周面及び下面に、複数の中間部材14が設けられている。したがって、アスファルト混合物311の養生期間中、中間部材14にアスファルト混合物311の熱が伝達されるものの、中間部材14の熱伝導性が小さいまたは熱容量が大きいため、コイルケース13への熱伝導を遮断もしくは遅延できる。これにより、コイルケース13及びこれに収納した給電コイル11が、高温環境に晒されることを抑制できる。
【0033】
また、
図1(a)で示すように、アスファルト混合物311が硬化してアスファルト舗装層31が構築されると、中間部材14により表面が粗面に形成されたコイルケース13は、アスファルト舗装層31と密着し一体化する。
【0034】
これにより、電動車両Vなどの鉛直荷重がコイルケース13に繰り返し伝達されてもガタツキを生じることなく、長期にわたって安定してアスファルト舗装層31の路面33近傍に、コイルケース13を埋設することが可能となる。このような構造は、例えば交通量が少ない道路30に適しており、コイルケース13は堅牢な構造に製造するとよい。
【0035】
≪第2の実施の形態≫
一方、交通量が多い道路30では、
図3(a)で示すように、コイルケース13全体をアスファルト舗装層31に埋設する。このとき、コイルケース13の埋設深さは、給電コイル11における電力伝送効率への影響の少ない浅い位置に適宜設定するとよい。アスファルト舗装層31に給電装置10を埋設する手順は、次のとおりである。
【0036】
まずは、第1の実施の形態と同様で、
図3(b)で示すように、路盤32上にアスファルト混合物311を打設するとともに、コイルケース13をアスファルト混合物311に埋設する。コイルケース13はその全体が、アスファルト混合物311に埋設される。このため、中間部材14は、コイルケース13の側周面及び下面だけでなく上面にも設置している。
【0037】
このように中間部材14を設けることで、コイルケース13の上面を補剛できる場合には、コイルケース13の上面側の肉厚を薄くして、収納した給電コイル11を路面33に近接させてもよい。こうすると、給電装置10における電力伝送効率の向上に寄与することも可能となる。
【0038】
上記の第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、中間部材14としてコイルケース13に粗面を形成でき、かつ熱伝導性が小さいまたは熱容量の大きい材料よりなる部材を採用したが、これに限定するものではない。第3の実施の形態では、空気層を有する部材を中間部材14に採用する場合を事例に挙げて、説明する。
【0039】
≪第3の実施の形態≫
図4(a)で示すように、アスファルト舗装層31に埋設されたコイルケース13には、その全面が立体網状体15により被覆されている。立体網状体15は、熱可塑性樹脂の長繊維を三次元方向に融着又は連結して立体構造を形成したものである。例えば、
図4(b)で示すような織物状に形成されたものや、
図4(c)で示すような長繊維を一方向又はランダムに集積した不織布状のものなどを、事例に挙げることができる。これらはいずれも土木資材として一般に用いられる、いわゆる熱可塑性三次元網状繊維構造体であり、内方に空気層を有する。
【0040】
したがって、
図4(a)で示すように、接着剤などの固定手段を利用してコイルケース13に設置すると、コイルケース13を囲繞する断熱層を形成できる。これにより、アスファルト混合物311の養生期間中、立体網状体15により、コイルケース13への熱伝導を遮断もしくは遅延できる。
【0041】
また、コイルケース13を被覆するように立体網状体15を設置すると、コイルケース13の表面に粗面を形成できる。したがって、アスファルト混合物311が硬化したのちのアスファルト舗装層31との間で、密着性を高めることができる。
【0042】
さらに、立体網状体15は反発弾性を制御可能な材料である。したがって、道路30の供用後に、路面33からコイルケース13に繰り返し伝達される電動車両Vなどの鉛直荷重を、効率よく吸収させてコイルケース13に収納した給電コイル11を衝撃や振動などの外力から保護することができる。
【0043】
空気層を有する中間部材としては、上記の立体網状体15だけでなく、例えば
図5で示すような、木片16などを挙げることができる。また、第1~第3の実施の形態では、道路30の舗装としてアスファルト舗装層31を設けたが、これに替えて半たわみ性舗装体34を採用してもよい。
【0044】
≪第4の実施の形態≫
図5(a)及び(b)は、中間部材として木片16を採用し、道路30の舗装に半たわみ性舗装体34を採用した場合の構築方法を示している。
【0045】
半たわみ性舗装体34は、塑性変形抵抗性に優れ、わだち掘れの発生を抑制できる舗装であり、
図5(b)で示すように、高温の開粒度アスファルト混合物341の空隙に、セメントミルク342を浸透させることで構築される。
【0046】
一方、木片16は、空気を含む材料であるため断熱性を有する。また、木片16は、燃え代設計法などで知られるように、高温に晒されるとその外面に炭化層が形成されて、その内部にまで熱が伝わりにくくなる。さらに、炭化層が形成されると、燃焼に必要な酸素が木片16の内部まで供給されず、燃焼の進行が抑制される。
【0047】
そこで、
図5(a)では、路盤32に高熱の開粒度アスファルト混合物341を打設し、この開粒度アスファルト混合物341にコイルケース13を埋設する。コイルケース13にはその全面に、接着剤などの固定手段を介して木片16を設けている。上記のとおり、木片16は高熱の開粒度アスファルト混合物341に接触しても、表面に炭化層が形成されるのみで燃焼することはない。
【0048】
また、アスファルト混合物311の養生期間中、上記の炭化層と木片16が有する空気層による断熱効果で、コイルケース13への熱伝導を遮断もしくは遅延させることができる。これにより、コイルケース13及びこれに収納した給電コイル11が、高温環境に晒されることを抑制できる。
【0049】
開粒度アスファルト混合物341が硬化し温度も低下したところで、
図5(b)で示すように、開粒度アスファルト混合物341の空隙に、セメントミルク342を浸透させる。これにより、半たわみ性舗装体34が構築される。また、セメントミルク342は、木片16と開粒度アスファルト混合物341との隙間にも充填される。したがって、半たわみ性舗装体34とコイルケース13とを一体化できる。
【0050】
このように、半たわみ性舗装体34にコイルケース13を埋設すると、道路30を長期にわたって供用しても、路面33にわだち掘れが生じにくくなる。これにより、
図1で示すように、路面33上を走行する電動車両Vに搭載した受電コイル21と、コイルケース13との距離L、つまりコイルケース13に収納した給電コイル11との距離に大きな経時的変化が生じることを回避できる。したがって、給電装置10の埋設構造は、長期にわたって電力伝送効率を安定的に維持させることが可能となる。
【0051】
本発明の給電装置の埋設構造、及び給電装置の埋設方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0052】
また、本実施の形態では、コイルケースに給電コイルのみを収納する場合を例示したが、これに限定するものではない。給電設備に用いる他の設備(共振コンデンサなど)を給電コイルと併せて、コイルケースに収納するものであってもよい。さらには、給電設備に用いる他の設備を単独で収納するものであってもよい。
【0053】
また、アスファルト舗装層31を構成するアスファルト混合物311は、骨材及びアスファルトバインダなどの配合比や、空隙率などは、何ら制限されるものではない。また、アスファルト混合物311は、複数層に分けて打設されるものでもよいし、一層で打設されるものであってもよい。
【0054】
同様に、半たわみ性舗装体34を構成する開粒度アスファルト混合物341も、骨材及びアスファルトバインダなどの配合比や、空隙率などは、何ら制限されるものではない。さらに、セメントミルク342の種類も、アスファルト舗装層31で使用される材料であれば、いずれをも採用できる。
【0055】
したがって、CO2の排出量を大幅に削減可能な低炭素型セメントを主原料とするセメントミルク342を採用すれば、半たわみ性舗装体34を利用した給電装置10の埋設構造を、環境に配慮した構造とすることも可能となる。
【0056】
また、本実施の形態では、半たわみ性舗装体34として、セメントミルク312を全体に浸透させる全浸透タイプを例示したが、これに限定するものではなく、上半のみに浸透させる半浸透タイプを採用してもよい。
【0057】
さらに、走行中給電システム100を構成する給電コイル11について、本実施の形態では、「磁界結合方式」を事例に挙げているが、「電解結合方式」を採用することも可能である。
【0058】
また、本実施の形態では中間部材に、立体網状体15や木片16など空気層を有するものを事例に挙げたが、これに限定するものではなく、真空層を備えるものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
100 走行中給電システム
10 給電装置
11 給電コイル
12 電源装置
13 コイルケース
14 中間部材
15 立体網状体(中間部材)
16 木片(中間部材)
20 受電装置
21 受電コイル
22 負荷
30 道路
31 アスファルト舗装層
311 アスファルト混合物
32 路盤
33 路面
34 半たわみ性舗装体
341 開粒度アスファルト混合物
342 セメントミルク
C カバー材
V 電動車両