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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166802
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ヤゲン支持装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/02 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
B23Q3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077591
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏隆
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016BA05
(57)【要約】
【課題】ワークを適切に押圧することができるワーク押圧装置、工作機械及びワーク押圧方法を提供すること。
【解決手段】ヤゲン支持装置は、工作機械に設置される受台と、受台に設けられていて、工作機械によって加工されるワークを支持するヤゲンに形成された柱状の固定部を収容可能な収容部と、収容部に収容された固定部の被押圧面を押圧して被押圧面に対する背面を収容部の基準面に接触させる押圧部材と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に設置される受台と、
前記受台に設けられていて、前記工作機械によって加工されるワークを支持するヤゲンに形成された柱状の固定部を収容可能な収容部と、
前記収容部に収容された前記固定部の被押圧面を押圧して前記被押圧面に対する背面を前記収容部の基準面に接触させる押圧部材と、
を備えた、ヤゲン支持装置。
【請求項2】
前記収容部は、前記基準面において、前記受台に対して前記ヤゲンを支持する際の向きを決定する凸部材が組み付けられ、
前記固定部は、前記背面に前記凸部材を収容する凹部が設けられる、請求項1に記載のヤゲン支持装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、所定の押圧力によって前記被押圧面を押圧する、請求項1又は2に記載のヤゲン支持装置。
【請求項4】
前記収容部に収容された前記固定部の鉛直方向に沿った固定位置を調整する調整部材を備えた、請求項1又は2に記載のヤゲン支持装置。
【請求項5】
前記受台は、前記工作機械の水平方向に延設された主軸に対して鉛直方向にて下方に配置されており、
前記ヤゲンは、前記固定部が前記収容部に収容された状態で、前記ワークを鉛直方向にて下方から支持する、請求項1又は2に記載のヤゲン支持装置。
【請求項6】
前記ヤゲンは、前記ワークが前記工作機械によって加工される状態において、鉛直方向にて下方に向けて相対移動して前記ワークから離間する、請求項5に記載のヤゲン支持装置。
【請求項7】
前記収容部は、前記ヤゲンが前記ワークを支持した際、前記固定部と当接して前記ワークに対する水平方向への前記ヤゲンの変位を規制する規制面を有する、請求項5に記載のヤゲン支持装置。
【請求項8】
前記固定部は、前記収容部に収容される収容方向に直交する方向の断面形状が四角形状である、請求項1又は2に記載のヤゲン支持装置。
【請求項9】
前記ヤゲンは、前記工作機械による前記ワークの複数の加工内容の各々に対応し、且つ、共通した形状の前記固定部を有するように、複数種類が設けられており、
前記受台は、複数種類の前記ヤゲンのうち前記加工内容に応じて選択された前記ヤゲンを前記固定部が前記収容部に収容された状態で支持する、請求項1又は2に記載のヤゲン支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ヤゲン支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示されたVブロックの固定装置(以下、単に、「固定装置」と称呼する。)が知られている。この従来の固定装置は、T型ソケットレンチを用いて、受台に対して着脱可能にVブロックを固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-120431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の固定装置において、工作機械による加工内容や加工されるワークの形状に併せてVブロックであるヤゲンを交換する際には、T型ソケットレンチ等の工具を用いる必要がある。そして、従来の固定装置においては、工具を用いてボルトを緩めて受台からヤゲンを取り外し、又、取り替えたヤゲンを受台に対してボルトを締めて固定する必要がある。従って、従来の固定装置においては、ヤゲンの交換作業が煩雑である。
【0005】
本明細書は、交換作業が簡単なヤゲン支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、工作機械に設置される受台と、受台に設けられていて、工作機械によって加工されるワークを支持するヤゲンに形成された柱状の固定部を収容可能な収容部と、収容部に収容された固定部の被押圧面を押圧して被押圧面に対する背面を収容部の基準面に接触させる押圧部材と、を備えたヤゲン支持装置を開示する。
【0007】
本明細書では、出願当初の請求項4において、「請求項1又は2に記載のヤゲン支持装置」を「請求項1-3の何れか一項に記載のヤゲン支持装置」に変更した技術的思想も開示されている。又、本明細書では、出願当初の請求項5において、「請求項1又は2に記載のヤゲン支持装置」を「請求項1-4の何れか一項に記載のヤゲン支持装置」に変更した技術的思想も開示されている。又、本明細書では、出願当初の請求項8において、「請求項1又は2に記載のヤゲン支持装置」を「請求項1-7の何れか一項に記載のヤゲン支持装置」に変更した技術的思想も開示されている。更に、本明細書では、出願当初の請求項9において、「請求項1又は2に記載のヤゲン支持装置」を「請求項1-8の何れか一項に記載のヤゲン支持装置」に変更した技術的思想も開示されている。
【0008】
ヤゲン支持装置によれば、工具を用いることない。そして、ヤゲン支持装置によれば、ヤゲンの固定部を収容部に収容したり取り外したりすることのみで、簡単にヤゲンの交換作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】工作機械の構成を説明するための図である。
図2】ヤゲン支持装置の構成を説明するための一部断面図である。
図3図2のヤゲン支持装置によって支持されるヤゲンの構成を説明するための図である。
図4】ヤゲン支持装置によるヤゲンの支持、及び、ヤゲンによるワークの支持を説明するための一部断面図である。
図5図4におけるV-V断面におけるヤゲン支持装置及びヤゲンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ヤゲン支持装置について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、NC旋盤である工作機械にヤゲン支持装置が設置されており、ヤゲン支持装置によって支持されたヤゲンが工作機械による切削加工前及び切削加工後のワークを支持する場合を例示する。
【0011】
1.工作機械10
工作機械10は、図1に示すように、ベッド11上に設けられており、主軸台20、加工ヘッド30、心押台40及びヤゲン支持装置50を備えている。そして、工作機械10は、主軸台20、加工ヘッド30及び心押台40の各々の作動を制御する制御装置12を備えている。ここで、制御装置12は、コンピュータ装置を主要構成部品とするものであり、図示を省略する各種プログラムを実行することにより、主軸台20、加工ヘッド30及び心押台40の各々の作動を制御する。
【0012】
尚、本実施形態において、ベッド11は、案内面111がX軸方向にて機体前側(図1において下方側)に傾斜するスラントベッド構造を採用する。但し、ベッド11の構造に関しては、スラントベッド構造に限らず、傾斜した案内面111を有していないフラットベッド構造を採用可能であることは言うまでもない。
【0013】
主軸台20は、Z軸方向に沿った軸心Oを有していて、水平方向に延設された主軸21を回転可能に支持する。又、主軸台20は、主軸21の先端部においてワークWを把持する主軸チャック22を有する。主軸21は、例えば、スピンドルモータ等によって回転駆動される。
【0014】
ここで、本実施形態においては、シャフト形状のワークWを保持するため、主軸21には挿通孔211が設けられる。そして、主軸21の内部には、押出しシャフトをアクチュエータによって軸心Oに沿って進退させる押出し装置23が組み込まれている。尚、ワークWの形状に応じて、挿通孔211及び押出し装置23を省略することが可能である。
【0015】
加工ヘッド30は、ベッド11の案内面111上にてZ軸方向に延設されたガイド31と、ガイド31に摺動可能に組み付けられてZ軸方向に案内されるZ軸スライド32とを備えている。又、加工ヘッド30は、Z軸スライド32においてX軸方向に延設された一対のガイドレール33と、ガイドレール33によりX軸方向に案内されるX軸スライド34とを備える。尚、Z軸スライド32及びX軸スライド34は、各々、図示省略のサーボモータ及びボールねじ機構等により、ガイド31及びガイドレール33に沿って往復移動するようになっている。
【0016】
本実施形態において、加工ヘッド30は、X軸スライド34上に支持されたタレット装置35を備えている。タレット装置35は、多角形の工具台36がZ軸方向に平行な回転軸を中心として旋回可能である。タレット装置35は、工具台36の各辺に取り付けられた各種の切削工具37のうち、ワークWの切削加工に応じた所定の切削工具37を旋回割出しにより選択する。尚、加工ヘッド30においては、タレット装置35を省略し、X軸スライド34に回転不能に1つの工具台36を取り付け、工具台36が1つの切削工具を保持するようにすることも可能である。
【0017】
ここで、加工ヘッド30は、X軸スライド34に支持されている。又、X軸スライド34は、Z軸スライド32に支持されている。これにより、加工ヘッド30は、Z軸スライド32及びX軸スライド34の各々の移動により、案内面111に沿った方向、即ち、Z軸方向、X軸方向及びY軸方向に移動することができる。そして、加工ヘッド30は、移動したZ軸スライド32及びX軸スライド34により、切削工具37がワークWを加工する加工位置に位置決めされる。これにより、切削工具37は、ワークWを切削加工することができる。
【0018】
心押台40は、主軸21に仮装着されたワークWの心出しを行うものである。心押台40は、Z軸方向において主軸台20の主軸21の軸心Oと同軸に配置される。心押台40は、軸状の押圧部41と、押圧部41を支持する支持部42とを備えている。押圧部41は、先端が尖頭状に形成されており、Z軸方向(軸心Oの方向)にてベッド11に対して相対移動することによってワークWに形成された収容凹部W1に収容される。
【0019】
又、心押台40は、ベッド11上にてZ軸方向に延設された一対のガイドレール43と、ガイドレール43に案内されて押圧部41及び支持部42をZ軸方向に沿って往復移動させる駆動装置44とを備えている。ここで、駆動装置44は、図示省略のサーボモータ及びボールねじ機構等により、押圧部41及び支持部42をガイドレール43に沿って、即ち、主軸台20の主軸21の軸心Oと同軸に往復移動させるようになっている。
【0020】
2.ヤゲン支持装置50の概要
工作機械10においては、主軸台20に軸状のワークWの一端を収容して固定すると共に、心押台40によってワークWの他端を主軸台20に向けて押圧することにより、主軸台20、ワークW及び心押台40を軸線Oに対して同軸とする。そして、工作機械10においては、主軸台20及び心押台40に対して同軸に固定されたワークWを回転させた状態で、切削工具37がワークWの外面を切削加工する。
【0021】
ここで、工作機械10においては、図2に示すように、ヤゲン60が、例えば、図示省略の搬送ロボット等によって搬送された切削加工前の種々のワークWを一旦支持し、その後、ワークWの一端が主軸台20に対して装着される。又、工作機械10においては、ヤゲン60が、例えば、心押台40による押圧から解放された切削加工後の種々のワークWを一旦支持し、その後、ワークWが主軸台20から搬出される。
【0022】
このため、工作機械10において用いられるヤゲン60は、工作機械10によるワークWの複数の加工内容及び形状の各々に対応して、複数種類が用いられる。従って、工作機械10に設置されるヤゲン支持装置50は、複数種類のヤゲン60のうちから、ワークWに対する加工内容やワークWの形状に応じて選択されたヤゲン60を簡単に交換可能に支持する必要がある。
【0023】
ところで、上述した従来の固定装置を用いる場合、作業者はT型ソケットレンチ等の工具を用意し、ボルト等の緩めや締め付けの作業を行う必要がある。このため、従来の固定装置を用いた場合には、ヤゲンの交換作業が煩雑になる。特に、ヤゲンの交換頻度が高い場合には、ヤゲンの交換作業が煩雑であり、且つ、交換作業に時間を要すると、工作機械10によるワークWの生産効率が悪化する虞がある。
【0024】
従って、ヤゲン支持装置50においては、工具を用いることなく、ヤゲン60の交換が行えることが好ましい。工具を用いることなくヤゲン60の交換作業が行えることにより、ヤゲン支持装置50における交換作業を簡単且つ短時間で行うことができ、ひいては、工作機械10によるワークWの生産効率を向上させることが可能となる。
【0025】
そこで、本実施形態において、図2に示すように、ヤゲン支持装置50は、工作機械10に設置される受台51と、受台51に設けられていて、工作機械10によって加工されるワークWを支持するヤゲン60に形成された柱状の固定部61を収容可能な収容部52と、収容部52に収容された固定部61の被押圧面611を押圧して被押圧面611に対する背面612を収容部52の基準面521に接触させる押圧部材53と、を備える。
【0026】
又、本実施形態において、ヤゲン支持装置50は、収容部52の基準面521において受台51に対してヤゲン60を支持する際の向きを決定する凸部材54を備える。更に、本実施形態において、ヤゲン支持装置50は、収容部52に収容されたヤゲン60の固定部61のY軸方向(鉛直方向)に沿った固定位置を調整する調整部材55を備える。
【0027】
ここで、ヤゲン60は、収容部52に収容された状態の固定部61に対し、Y軸方向(鉛直方向)にて上方に配置されてワークWを支持する支持部62を有する。支持部62は、図3に示すように、Z軸方向に沿って形成されたV溝を有し、例えば、ワークWの外径の大きさに応じてV溝の角度が変更される。これにより、ヤゲン60は、図3にて一点鎖線により示すように、支持部62の形状(V溝の角度)が異なるように、複数種類が設けられる。
【0028】
そして、支持部62の形状(V溝の角度)が異なるヤゲン60であっても、固定部61は共通の形状を有する。具体的に、本実施形態において、ヤゲン60の固定部61は、図4及び図5示すように、収容部52に収容される収容方向D(Y軸方向に平行)に直交する方向であるX軸方向及びZ軸方向を含む断面Hにおける断面形状が四角形状(長方形)である。これにより、複数種類のうちから選択されたヤゲン60の全ては、ヤゲン支持装置50の収容部52に同様に収容されて支持される。
【0029】
又、ヤゲン60は、図2図5に示すように、固定部61の背面612において、収容部52に設けられる凸部材54を収容する凹部613が設けられる。ヤゲン60においては、凹部613が凸部材54を収容することにより、ヤゲン60が収容部52に収容される向き、換言すれば、図2に示すように支持部62がワークWを支持する支持方向が決定される。
【0030】
2-1.ヤゲン支持装置50の構成の詳細
受台51は、図2に示すように、工作機械10のZ軸方向に延設された主軸21に対してY軸方向にて下方に配置される。受台51は、工作機械10のベッド11に対して固定されたベース511と、ベース511に固定されたアーム512と、アーム512の先端に固定された保持部513と、を備える。
【0031】
保持部513は、主軸21に対してY軸方向にて下方、より詳しくは、主軸21に仮装着されたワークWに対してY軸方向にて下方に配置される。そして、保持部513は、収容部52及び調整部材55を保持する。これにより、ヤゲン60の支持部62は、固定部61が収容部52に収容された状態で、ワークWをY軸方向にて下方から支持することができる。
【0032】
収容部52は、図4及び図5に示すように、角筒状に形成されており、ヤゲン60の断面形状が四角形状の固定部61を挿通可能に収容する。収容部52は、図5に示すように、固定部61を収容した状態で、固定部61の背面612と接触する基準面521と、固定部61のZ軸方向にて被押圧面611と背面612とを連結する側面614と当接可能な規制面522と、被押圧面611に対向する対向面523と、を有する。規制面522は、X軸方向にて一対として設けられており、ヤゲン60の支持部62がワークWを支持した際、固定部61の側面614と当接してワークWに対するX軸方向即ち水平方向へのヤゲン60の変位を規制する。
【0033】
押圧部材53は、図2,4,5に示すように、収容部52に対し、工具等によって締め付けられるボルトを用いて固定されている。押圧部材53は、スプリング531と、スプリング531によって一方向に向けて付勢されるピン532とを有する、所謂、プランジャである。押圧部材53は、ピン532の先端側が収容部52の対向面523から基準面521に向けて突出するように組み付けられている。尚、本実施形態において、押圧部材53は、2つ設けられ、X軸方向にて離間されて配置される。
【0034】
押圧部材53は、スプリング531の縮小に伴って発生する弾性力を、ピン532を介して、所定の押圧力として固定部61の被押圧面611に伝達する。即ち、収容部52に対して収容方向Dに沿ってヤゲン60の固定部61が進入する場合、押圧部材53のピン532は、固定部61の先端に設けられた面取り部分を乗り越えて、被押圧面611と接触する。
【0035】
そして、押圧部材53は、ピン532がスプリング531を縮める方向に移動することにより、スプリング531の弾性力がピン532を介して所定の押圧力として被押圧面611に伝達される。これにより、押圧部材53のピン532が被押圧面611を押圧する。そして、被押圧面611が押圧部材53(より詳しくは、ピン532)によって押圧されたヤゲン60は、固定部61の背面612が基準面521と接触する方向に付勢され、最終的に、背面612と基準面521とが接触した状態となる。
【0036】
ここで、収容部52及びヤゲン60においては、押圧部材53による押圧力に起因して、ピン532と被押圧面611との間、及び、背面612と基準面521との間には摩擦力が発生する。そして、摩擦力が発生することにより、例えば、ヤゲン60が軽量であっても、工作機械10によるワークWの切削加工時に発生する振動に伴って、ヤゲン60が収容部52に対してX軸方向及びY軸方向にて相対移動することが抑制される。尚、ヤゲン60のZ軸方向への相対移動は、背面612と基準面521とが当接することによって抑制される。又、ヤゲン60のX軸方向への相対移動は、上述した摩擦力に加え、収容部52の規制面522が固定部61の側面614と当接することによって抑制される。
【0037】
凸部材54は、図5に示すように、基準面521から対向面523に向けて突出するように設けられる。凸部材54としては、基準面521に向けて貫通するように形成されたドリル孔に挿入されるスプリングピン等を用いることができる。
【0038】
調整部材55は、図4に示すように、保持部513において、Y軸方向にて収容部52よりも下方に配置される。調整部材55は、保持部513に保持された状態で、Y軸方向に沿って伸縮可能とされている。そして、調整部材55は、収容部52に対して、収容方向Dに沿ってヤゲン60の固定部61が進入した状態において、固定部61の下面と当接する。尚、調整部材55は、例えば、1つのボルト及び2つのナットを有して形成することが可能である。この場合、調整部材55においては、ナットを緩めたり締めたりすることによって、ボルトをY軸方向に沿って伸縮させることができ、固定部61即ちヤゲン60の固定位置を調整することができる。
【0039】
これにより、調整部材55は、Y軸方向に沿って伸長した場合には、ヤゲン60の固定位置をY軸方向にて上方、即ち、ヤゲン60の支持部62をY軸方向にて上方に位置させることにより、ワークWを相対的にY軸方向にて上方で支持する。又、調整部材55は、Y軸方向に沿って縮短した場合には、ヤゲン60の固定位置をY軸方向にて下方、即ち、ヤゲン60の支持部62をY軸方向にて下方に位置させることにより、ワークWを相対的にY軸方向にて下方で支持する。
【0040】
2-2.ヤゲン支持装置50を含めた工作機械10の動作
次に、ヤゲン支持装置50を含めた工作機械10の動作について説明する。工作機械10がワークWを切削加工する場合、例えば、搬送ロボット等によって切削加工前のワークWが搬入される。そして、搬入された切削加工前のワークWは、図2にて一点鎖線により示すように、一端側が主軸21の挿通孔211に挿通されて仮装着される。又、搬入された切削加工前のワークWは、他端側が、Y軸方向にて下方に配置されたヤゲン支持装置50に収容されたヤゲン60によってY軸方向にて下方から支持される。
【0041】
ところで、ヤゲン支持装置50の収容部52は、固定部61の側面614と当接可能な規制面522を有している。これにより、V溝を有する支持部62が、例えば、X軸方向に位置ずれしたワークWを支持した際であっても、規制面522が側面614と当接することによってヤゲン60のX軸方向への移動を防止することができる。従って、ワークWのX軸方向への位置ずれを修正することができる。
【0042】
ここで、ヤゲン支持装置50の受台51は、複数種類のヤゲン60のうち工作機械10によるワークWの加工内容やワークWの形状に応じて選択されたヤゲン60を、共通の形状を有する固定部61が収容部52に収容された状態で支持する。この場合、例えば、ワークWの外径が大きい(太い)場合、支持部62のV溝の角度が大きいヤゲン60が選択され、ワークWの外径が小さい(細い)場合、支持部62のV溝の角度が小さいヤゲン60が選択される。そして、選択されたヤゲン60が収容部52を介して受台51によって支持される。
【0043】
続いて、主軸21に対して仮装着されたワークWは、図2にて実線により示すように、心押台40によって軸心Oと同軸になるように押圧される。上述したように、仮装着された状態のワークWの他端側は、ヤゲン60の支持部62によって支持されている。この場合、仮装着されたワークWは、図2にて一点鎖線により示すように、軸心Oに対してY軸方向にて下方に位置している。
【0044】
そして、仮装着されたワークWは、心押台40の尖頭状の押圧部41が凹部W1に進入しながらZ軸方向に沿って押圧されることによってY軸方向にて上方に移動して、軸心Oと一致するように心出しが行われる。これにより、図2にて実線により示すように、ワークW、主軸21、心押台40の軸線Oが一致する。尚、工作機械10においては、心出しが行われることによってワークW、主軸21、心押台40の軸線Oが一致すると、主軸台20の主軸チャック22がワークWを把持し、ワークWが主軸21に装着される。
【0045】
従って、ヤゲン60、より詳しくは、支持部62においては、図4にて実線により示すように仮装着されたワークWと接触した状態(支持している状態)から、図4にて一点鎖線により示すように心出しが行われることによってワークWと離間した状態になる。即ち、ヤゲン60の支持部62は、ワークWが工作機械10によって切削加工される状態においては、ワークWに対してY軸方向にて下方に向けて相対移動してワークWから離間する。つまり、切削加工中においては、ヤゲン60は、ワークWと接触せず、従って、ワークWを支持しない。
【0046】
工作機械10においては、切削加工後、例えば、心押台40がZ軸方向にて主軸台20から離間する方向に退避する。又、工作機械10においては、心押台40の退避に伴い、主軸チャック22が解放される。そして、切削加工後のワークWは、一端側が主軸台20に仮装着された状態で、他端側がヤゲン60によって支持される。これにより、切削加工後のワークWが、例えば、主軸台20から脱落することが防止される。工作機械10においては、ヤゲン60によって支持されている切削加工後のワークWが、例えば、搬送ロボット等によって搬出される。
【0047】
そして、工作機械10においては、例えば、段替え等により切削加工を施すワークWが変更された場合、切削加工の内容及びワークWの形状に合わせて、ヤゲン支持装置50に支持されているヤゲン60がワンタッチで交換される。具体的に、作業者は、例えば、次に切削加工を施すワークWの形状が、以前に切削加工を施したワークWの外径よりも大きい場合、支持部62におけるV溝の角度が大きいヤゲン60に交換する。このとき、作業者は、以前の切削加工時にヤゲン支持装置50によって支持されているヤゲン60について、収容方向Dとは逆方向(例えば、Y軸方向にて上方)に向けて固定部61を収容部52から引き抜く。
【0048】
この場合、ヤゲン60においては、図5に示すように、固定部61の被押圧面611が押圧部材53による所定の押圧力によってのみ押圧されている状態である。このため、作業者は、T型ソケットレンチ等の工具を用いることなく、押圧部材53と被押圧面611との間、及び、基準面521と背面612との間に生じる摩擦力に抗して、ヤゲン60を容易に引き抜くことができる。
【0049】
続いて、作業者は、交換するヤゲン60の固定部61を収容方向Dに沿って収容部52に収容する。この場合、作業者は、固定部61の背面612に形成された凹部613に基準面521から突出した凸部材54が収容されるように、ヤゲン60の向きを合わせて、固定部61を収容部52に収容する。収容部52に収容された固定部61は、図5に示すように、被押圧面611が押圧部材53によって基準面521に向けて押圧される。
【0050】
その結果、ヤゲン60は、背面612が基準面521と接触した状態で、ヤゲン支持装置50によって支持される。これにより、ヤゲン支持装置50によって支持されたヤゲン60は、ワークWに対して適切な位置に配置される。又、ヤゲン支持装置50によって支持されたヤゲン60は、押圧部材53によって所定の押圧力によって押圧されることにより、押圧部材53と被押圧面611との間、及び、基準面521と背面612との間で摩擦力が生じる。これにより、仮にヤゲン60が軽量であっても、例えば、工作機械10におけるワークWの切削加工に伴って発生する振動等により、ヤゲン60がヤゲン支持装置50に対して相対移動して脱落することが防止される。
【0051】
又、収容方向D(Y軸方向)に沿って収容部52に収容された固定部61については、最終的に、Y軸方向にて下方に設けられた調整部材55と当接した状態となる。これにより、ヤゲン支持装置50によって支持されたヤゲン60、より詳しくは、支持部62は、仮装着されたワークW及び心出しされたワークWと、上述したように、Y軸方向にて適切な位置関係を維持することができる。
【0052】
ここで、複数種類のヤゲン60においては、固定部61の形状は全て共通する。このため、ワークWに対する加工内容やワークWの形状に応じて選択されるヤゲン60については、作業者は、上述した同じ交換作業によって交換することができる。
【0053】
以上の説明からも理解できるように、ヤゲン支持装置50は、工作機械10に設置される受台51と、受台51に設けられていて、工作機械10によって加工されるワークWを支持するヤゲン60に形成された柱状の固定部61を収容可能な収容部52と、収容部52に収容された固定部61の被押圧面611を押圧して被押圧面611に対する背面612を収容部52の基準面521に接触させる押圧部材53と、を備える。
【0054】
ヤゲン支持装置50によれば、工具を用いることなく、ヤゲン60の固定部61を収容部52に収容したり取り外したりすることのみで、簡単にヤゲン60の交換作業を行うことができる。即ち、ヤゲン支持装置50は、ワンタッチでヤゲン60の交換作業を完了させることができる。
【0055】
又、ヤゲン支持装置50によれば、押圧部材53が固定部61の被押圧面611を押圧することによって背面612を基準面521に接触させることができる。これにより、例えば、工具による締め付け等が必要なボルトやナットを用いることなく、押圧部材53と被押圧面611との間で生じる摩擦力、及び、基準面521と背面612との間に生じる摩擦力によって、ヤゲン支持装置50はヤゲン60を脱落させることなく支持することができる。これによっても、交換作業を簡単に行うことができる。
【0056】
3、変形例
上述した実施形態においては、ヤゲン支持装置50が凸部材54を備えると共に、ヤゲン60が固定部61の背面612に凸部材54を収容する凹部613を備えるようにした。これにより、作業者がヤゲン支持装置50の受台51に対するヤゲン60の向きを容易に認識できるようにした。しかしながら、ヤゲン支持装置50においては、凸部材54を省略することも可能である。
【0057】
例えば、上述した実施形態においては、固定部61は断面Hにおける断面形状が四角形状(長方形)であるとした。これに代えて、例えば、固定部61が台形となる断面形状を有し、且つ、角筒状の収容部52の開口の形状を台形することにより、固定部61を収容部52に収容する際のヤゲン60の向きを規制することができる。
【0058】
これにより、ヤゲン60の向きを決定する(認識する)ための凸部材54を省略した場合であっても、作業者は適切にヤゲン60の向きを認識できるため、製造コストを低減しつつ、上述した実施形態と同様の効果が期待できる。但し、この場合には、上述した実施形態の場合と比べて、作業者は、収容部52に対して台形状の固定部61の4面の向きを合わせてから交換作業を行うことが必要になる。
【0059】
又、上述した実施形態においては、ヤゲン支持装置50が調整部材55を有するようにした。しかし、例えば、受台51において、保持部513のY軸方向(鉛直方向)に沿った位置の変更が可能である場合には、調整部材55を省略することも可能である。
【0060】
この場合には、収容部52に収容された固定部61の下面は、受台51の保持部513に直接的に当接するようになるものの、上述した実施形態と同様に、Y軸方向におけるヤゲン60の支持部62とワークWとの位置関係を維持することができる。従って、この場合においても、製造コストを低減しつつ、上述した実施形態と同様の効果が期待できる。但し、この場合には、上述した実施形態の場合と比べて、Y軸方向におけるヤゲン60の支持部62とワークWとの位置関係を精度良く調整して維持することは難しくなる。
【符号の説明】
【0061】
10…工作機械、11…ベッド、111…案内面、12…制御装置、20…主軸台、21…主軸、211…挿通孔、22…主軸チャック、23…押出し装置、30…加工ヘッド、31…ガイド、32…Z軸スライド、33…ガイドレール、34…X軸スライド、35…タレット装置、36…工具台、37…切削工具、40…心押台、41…押圧部、42…支持部、43…ガイドレール、44…駆動装置、45…アクチュエータ、50…ヤゲン支持装置、51…受台、511…ベース、512…アーム、513…保持部、52…収容部、521…基準面、522…規制面、523…対向面、53…押圧部材、531…スプリング、532…ピン、54…凸部材、55…調整部材、60…ヤゲン、61…固定部、611…被押圧面、612…背面、613…凹部、614…側面、62…支持部、W…ワーク、W1…収容凹部、O…軸心、D…収容方向、H…断面
図1
図2
図3
図4
図5