(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166821
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/58 20100101AFI20231115BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20231115BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20231115BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01L33/58
H01L33/50
G02B5/26
G02B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077627
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】秋野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 啓次郎
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 涼介
【テーマコード(参考)】
2H148
2H249
5F142
【Fターム(参考)】
2H148FA01
2H148FA05
2H148FA15
2H148FA24
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA46
2H249AA55
2H249AA64
5F142AA22
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA03
5F142CA11
5F142CB01
5F142CB03
5F142CD16
5F142CD44
5F142CD48
5F142CE22
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG24
5F142DA02
5F142DA14
5F142DB20
5F142DB30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】視感度の高い光を効率良く取り出すことを可能とする光源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】光を出射する発光層を含む半導体層を含み、上面を出射面とする発光素子と、前記発光素子上に設けられ、前記光によって励起され第1の波長範囲の蛍光を出射する蛍光体を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の上面に設けられ、上面視において、金属又は金属酸化物からなる複数のナノアンテナが前記蛍光のピーク波長よりも短い波長範囲にある第2の波長範囲の波長に応じた所定の周期で配列されたアンテナアレイを含み、前記光及び前記蛍光に対して透光性を有する材料からなる回折光学素子層と、前記回折光学素子層の上面に設けられ、前記第2の波長範囲の光に反射性を有する誘電体多層膜と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する発光層を含む半導体層を含み、上面を出射面とする発光素子と、
前記発光素子上に設けられ、前記光によって励起され第1の波長範囲の蛍光を出射する蛍光体を含む蛍光体層と、
前記蛍光体層の上面に設けられ、上面視において、金属又は金属酸化物からなる複数のナノアンテナが前記蛍光のピーク波長よりも短い波長範囲にある第2の波長範囲の波長に応じた所定の周期で配列されたアンテナアレイを含み、前記光及び前記蛍光に対して透光性を有する材料からなる回折光学素子層と、
前記回折光学素子層の上面に設けられ、前記第2の波長範囲の光に反射性を有する誘電体多層膜と、を有する光源装置。
【請求項2】
前記回折光学素子層は、
前記蛍光体層の上面に形成されかつ前記光及び前記蛍光に対して透光性を有する第1の透光性層と、
前記第1の透光性層の上面に、上面視において前記所定の周期で配列された前記複数のナノアンテナと、
前記第1の透光性層の上面において前記複数のナノアンテナを埋設するように形成され、かつ前記光及び前記蛍光に対して透光性を有する第2の透光性層と、を含む請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第1の透光性層の屈折率は、前記蛍光体層の屈折率よりも高い請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第2の波長範囲の波長λ、前記所定の周期又は前記所定の周期に√3/2を乗じた結果をa、前記回折光学素子層への光の入射角をθ
in、前記複数のナノアンテナの周囲の部材の屈折率をn、回折の次数をm
1及びm
2とし、
回折の波数ベクトルの平行成分を以下の式で表し、
【数1】
入射の波数ベクトルの平行成分を以下の式で表すと、
【数2】
前記複数のナノアンテナによって回折が起こる条件は、次式
【数3】
によって表される請求項1乃至3のいずれか1つに記載の光源装置。
【請求項5】
前記第2の波長範囲は、前記第1の波長範囲の下限を含む波長範囲内にある請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
前記第2の波長範囲は510nm以下の波長範囲を含む波長範囲である請求項1に記載の光源装置。
【請求項7】
前記複数のナノアンテナは、六方格子状又は正方格子状の配列パターンで配列されている請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記複数のナノアンテナの各々は、円柱、円錐、角柱、又は角錐の形状を有している請求項1に記載の光源装置。
【請求項9】
前記複数のナノアンテナは、Al,Au、Ag、Ni、又はTiO2からなる請求項1に記載の光源装置。
【請求項10】
前記第1の透光性層は、TiO2又はTa2O5からなる請求項2又は3に記載の光源装置。
【請求項11】
前記第2の透光性層は、SiO2からなる請求項2又は3に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換を伴って光を出射する光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の波長域の励起光によって励起されて蛍光を放出する蛍光体を用いて、発光素子から出射された光と、当該光が蛍光体によって波長変換された光との混色によって所望の波長域の光を取り出す光源装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、蛍光体プレートの励起光受光面に、励起光を透過し、かつ、当該蛍光体プレートが発する蛍光を反射する誘電体多層膜が形成されている蛍光光源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】R. Kamakura, S. Murai, Y. Yokobayashi, K. Takashima, M. Kuramoto, K. Fujita, and K. Tanaka, J. Appl. Phys. 124, 213105(2018), "Enhanced photoluminescence and directional white-light generation by plasmonic array"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、上記のような蛍光体を含む蛍光体層上に誘電体多層膜を設けて、蛍光体層からの蛍光のうちの特定の波長域の視感度の低い光を選択的に蛍光体層側へ反射させることによって当該特定の波長の光をより視感度の高い波長に変換して有効利用することが考えられる。この場合、蛍光体層から出射する光は、出射面から等方的に拡散するランバーシアン配光であるため、特定の波長であっても、誘電体多層膜に対する入射角に幅があり、一部が誘電体多層膜を透過する。その場合、視感度が低い光を有効利用できないことが課題となっていた。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、視感度の高い光を効率良く取り出すことを可能とする光源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光源装置は、光を出射する発光層を含む半導体層を含み、上面を出射面とする発光素子と、前記発光素子上に設けられ、前記光によって励起され第1の波長範囲の蛍光を出射する蛍光体を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の上面に設けられ、上面視において、金属又は金属酸化物からなる複数のナノアンテナが前記蛍光のピーク波長よりも短い波長範囲にある第2の波長範囲の波長に応じた所定の周期で配列されたアンテナアレイを含み、前記光及び前記蛍光に対して透光性を有する材料からなる回折光学素子層と、前記回折光学素子層の上面に設けられ、前記第2の波長範囲の光に反射性を有する誘電体多層膜と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図2の一部を拡大した部分拡大断面図である。
【
図4】実施例におけるナノアンテナの平面形状及び配列パターンを示す図である。
【
図5】励起光及び白色LEDのスペクトルと視感度との関係を示す図である。
【
図7】変形例に係るナノアンテナの配列パターンを示す図である。
【
図9】ナノアンテナの形状の他の例を示す上面図である。
【
図10】ナノアンテナの形状及び配列パターンの他の例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【実施例0011】
添付図面を参照しつつ、本実施例に係る光源装置10の構成について説明する。
【0012】
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、光源装置10の全体の構成について説明する。
【0013】
図1は、光源装置10の上面図である。
図2は、
図1に示す光源装置10を
図1中の2-2線に沿って切断した断面図である。
【0014】
光源装置10は、実装基板11上に実装された発光素子13及び発光素子13の光出射面上に設けられた波長変換部材15を含んで構成されている。
【0015】
実装基板11は、上面が矩形の実装面11Sとなっている基板である。言い換えれば、実装基板11は、実装面11Sとしての上面に垂直な方向から見た上面視において、平面形状が長方形の平板状の基板である。実装基板11は、例えば、AlN、アルミナ等の材料からなる基板である。
【0016】
n側給電パッド17は、実装面11Sに形成された平面形状が矩形の金属の配線電極パターンである。n側給電パッド17の1の辺は、実装基板11の短辺に平行に設けられている。n側給電パッド17は、例えば実装基板11を貫通するスルーホール17H及び実装基板11の下面に設けられたn側裏面配線18を介して外部の電源に接続可能に形成されている。
【0017】
p側給電パッド19は、実装面11Sに、n側給電パッド17と離間して形成された平面形状が長方形の金属の配線電極パターンである。p側給電パッド19は、実装面11Sの一方の短辺と、n側給電パッド17との間に設けられている。p側給電パッド19の長辺は、近接するn側給電パッド17の辺に対応する長さ、例えば同じ長さである。p側給電パッド19は、例えば実装基板11を貫通するスルーホール19Hを及び実装基板11の下面に設けられたp側裏面配線20を介して外部の電源に接続可能に形成されている。
【0018】
発光素子13の構成について説明する。
【0019】
支持基板21は、平面形状がn給電パッドの平面形状と同一の矩形の平板状の基板であり、発光素子13の構成要素である。支持基板21は、Si基板等の導電性を有する基板である。支持基板21は、実装面11S上に、主面が実装面11Sに平行となるように配置されている。支持基板21は、上面視においてn側給電パッド17と重なるように配置されている。
【0020】
裏面電極23は、支持基板21の実装面11Sに面した主面、すなわち支持基板21の下面に形成された金属膜であり、発光素子13の構成要素である。裏面電極23は、例えば導電性の接合材(図示せず)を介して、n側給電パッド17に接合されている。すなわち、裏面電極23がn側給電パッド17に接合されることで、支持基板21と実装基板11とが接合されている。
【0021】
半導体積層体25は発光素子13の構成要素であり、支持基板21の上面に設けられており、かつ活性層を含む複数の半導体層からなる。半導体積層体25は矩形の平面形状を有し、各辺が支持基板21の各辺に平行となるように配置されている。
【0022】
半導体積層体25は、金属の接合層(図示せず)を介して支持基板21の上面に貼り合わせられている。例えば、当該金属の接合層は、支持基板21の上面において互いに離間しており、電気的に絶縁されている2つの層からなっている。2つの層の一方は支持基板21と電気的に接続されており、他方は支持基板21と、例えば、支持基板21の上面に形成された絶縁層によって電気的に絶縁されている。
【0023】
より詳細には、半導体積層体25は、支持基板21側から、p型半導体層、活性層及びn型半導体層がこの順に積層されて構成されている。活性層から出射される出射光の波長は、半導体積層体25の材料及び組成に応じた波長となる。半導体積層体25の上面が光出射面となる。
【0024】
本実施例において、例えば、半導体積層体25のp型半導体層は、MgドープGaN層である。半導体積層体25の活性層(発光層)は、例えば、InGaN井戸層とGaN障壁層からなる多重量子井戸構造を有する半導体層である。半導体積層体25のn型半導体層は、例えばSiドープGaN層である。また、半導体積層体25の活性層からは、約450nmの波長の青色光が出射される。
【0025】
半導体積層体25のp型半導体層は、上記した接合層のうち支持基板21と絶縁されている接合層と電気的に接続されている。半導体積層体25のn型半導体層は、支持基板21と電気的に接続されている接合層と電気的に接続されている。
【0026】
給電部27は、発光素子13の構成要素であり、支持基板21上に設けられた金属の電極である。給電部27は、長方形の形状を有し、長辺が半導体積層体25の一辺と平行になるように配置されている。
【0027】
例えば、給電部27は、例えば支持基板21の上面に形成された絶縁層(図示せず)によって支持基板21と絶縁されている。また、給電部27は、上述した支持基板21の前記支持基板21と絶縁されている方の接合層(図示せず)と電気的に接続されている。従って、給電部27は、半導体積層体25のp型半導体層に電気的に接続されている。
【0028】
給電部27は、ボンディングワイヤ29を介して実装面11S上に設けられたp側給電パッド19に電気的に接続されている。
【0029】
このように、発光素子13は、支持基板21、裏面電極23、半導体積層体25、及び給電部27を含んで構成されている。半導体積層体25は、成長基板(図示せず)上に成長された活性層を含む複数の半導体層が接合層を介して支持基板21に接合され、例えばレーザーリフトオフ等により成長基板が除去されたものである。
【0030】
つまり、発光素子13は、いわゆるシンフィルム(Thin-film)型の貼り合わせ構造を有する上面発光タイプのLED素子である。半導体積層体25の上面は、発光素子13の光出射面となる。
【0031】
波長変換部材15は、発光素子13の半導体積層体25上に配置されており、発光素子13の活性層から出射される光の波長を変換する部材である。波長変換部材15は、直方体の形状を有している。
図1及び
図2に示すように、波長変換部材15の下面は、半導体積層体25の上面よりも僅かに大きく、半導体積層体25の上面の外側まで広がっている。
【0032】
波長変換部材15の下面は、透光性の接着材31によって、発光素子13の半導体積層体25の上面に接着されている。すなわち、波長変換部材15は、透光性の接着材31を介して、発光素子13に接着されている。
【0033】
以下、波長変換部材15の構造について詳細に説明する。
【0034】
蛍光体層35は、発光素子13からの出射光によって励起されて蛍光を発する蛍光体等の波長変換材を含む層である。本実施例において、蛍光体層35は、セリウムを発光中心としたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)の単相からなるセラミックス蛍光体プレートである。なお、蛍光体層35は、例えばガラス製の支持体の表面に蛍光体を含む薄膜が形成されたプレートであってもよい。また、蛍光体層35は、例えばYAG:Ce蛍光体等の蛍光体粒子を含有する樹脂層であってもよい。
【0035】
上記のような蛍光体は、約450nmの波長の青色光によって励起されて約460~750nmの波長の黄色蛍光を発する。従って、本実施例において、発光素子13の光出射面から出射された青色光が蛍光体層35に導入されると、青色光の一部は波長変換されて黄色蛍光となり、残りは波長変換されずに蛍光体層35を通過する。従って、蛍光体層35を通過した青色光と、蛍光体層35に含まれる蛍光体からの黄色蛍光とが蛍光体層35の上面から出射される。
【0036】
蛍光体層35の上面から出射する青色光と黄色蛍光との混色によって、光源装置10から白色光が取り出される。安定した白色化を行うことを考慮すると、蛍光体層35は40~200μmの範囲内の厚さを有することが好ましい。本実施例において、蛍光体層35の層厚は100μmである。
【0037】
蛍光は、励起された蛍光体から全方位に出射されるため、蛍光体層35の上面から出射する蛍光は、蛍光体層35の上面から等方的に拡散する。
【0038】
回折光学素子層37は、層内に、言い換えれば実装面11Sと平行な面内において配列された金属片からなる回折素子構造(
図1及び2では図示せず)を有する回折機能層である。回折光学素子層37は、蛍光体層35の上面から回折光学素子層37に入射した光を回折させることで、当該光の進行方向を実装面11Sに垂直な軸である軸AXに沿う方向に傾ける。言い換えれば、回折光学素子層37は、回折光学素子層37を経て誘電体多層膜39に入射する光について、当該光の回折光学素子層37への入射角よりも誘電体多層膜39への入射角を小さくする機能を有する。
【0039】
誘電体多層膜39は、蛍光体層35からの蛍光のうちの特定の波長域の光を反射する機能を有する多層膜反射鏡である。具体的には、誘電体多層膜39には、蛍光のうち、視感性の低い、蛍光の中で比較的短い波長域の光を反射するように構成されている。蛍光体から発せられた蛍光のうち、短い波長域の光は、再度蛍光体に入射することで蛍光体を励起することができる。
【0040】
誘電体多層膜39の反射特性は、ブラッグ反射を用いるため、設計時に想定した範囲から外れた大きな入射角で入射する光に対しては、所望の反射特性が得られない。そこで、本実施例の光源装置10は、回折光学素子層37によって誘電体多層膜39への入射角を小さくすることで、誘電体多層膜39によって上記特定の波長の光に対する反射率を高めるように構成している。
【0041】
以上のように、波長変換部材15は、蛍光体層35と、蛍光体層35上に形成された回折光学素子層37と、回折光学素子層37上に形成された誘電体多層膜39とを含んで構成されている。
【0042】
波長変換部材15に入射した励起光は、波長変換部材15の上面15Tに向かう。その際に、励起光の一部は蛍光体層35において蛍光体を励起して黄色蛍光を発し、当該黄色蛍光の一部は、回折光学素子層37及び誘電体多層膜39からなる機能層によって狭角化及び反射されて蛍光体層35に戻される。波長変換部材15の上面15Tは、光源装置10の光取り出し面となる。
【0043】
反射部材41(
図1には図示せず)は、波長変換部材15の側面を覆うように設けられている。反射部材41は、光反射性の粒子を含む部材である。反射部材41は、例えば、樹脂に光反射性の粒子を混合したものである。例えば、反射部材41の光反射性の材料として、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の粒子が用いられる。また、反射部材41には、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。
【0044】
発光素子13の光出射面から出射されて波長変換部材15に入射した光のうち、波長変換部材15の側面に進行した光は、波長変換部材15と反射部材41との界面で反射される。
【0045】
例えば、反射部材41の上面と、波長変換部材15の上面15Tとは、発光素子13の光出射面からの高さが同等となるように形成されている。
【0046】
反射部材41は、発光素子13及び波長変換部材15の側面からの出射を防いで光取り出し効率を高める機能を有する。
【0047】
また、反射部材41によって、発光素子13、p側給電パッド19及びボンディングワイヤ29が、実装基板11上において埋設されている。反射部材41は、光源装置10の封止材としても機能し得る。
【0048】
続いて、
図3を参照しつつ、回折光学素子層37及び誘電体多層膜39の構成及び機能について詳細に説明する。
図3は、
図2中の破線に囲まれた部分Aを拡大して示す部分拡大断面図である。
【0049】
第1の透光性層43は、蛍光体層35上に形成されている。第1の透光性層43は、発光素子13からの励起光及び当該励起光が蛍光体によって波長変換された蛍光に対して透光性を有する材料からなる層である。また、第1の透光性層43は、蛍光体層35からの蛍光を効率良く導入する観点から、蛍光体層35の屈折率よりも屈折率が高い材料からなる層である。
【0050】
本実施例で蛍光体層35に使用しているYAG:Ceの蛍光体プレートの屈折率は1.82であり、第1の透光性層43には、励起光及び蛍光に対して透光性を有し、かつ蛍光体層35よりも屈折率が高いTiO2(屈折率2.33)を用いている。第1の透光性層43の層厚は、例えば200nmである。
【0051】
第1の透光性層43は、発光素子13からの励起光及び蛍光体からの蛍光に対して透光性を有し、かつ、蛍光体層35よりも屈折率が高い屈折率を有していれば、他の材料から構成されていてもよい。例えば、第1の透光性層43には、励起光及び蛍光に対して透光性を有し、かつ蛍光体層35よりも屈折率が高いTa2O5(屈折率2.165)を用いてもよい。
【0052】
第1の透光性層43は、蛍光体層35の上面に、例えばEB蒸着等によって成膜することで形成される。
【0053】
ナノアンテナ45は、上述した回折光学素子層37内の回折格子構造を形成する構造体である。第1の透光性層43上面に、層内方向において、言い換えれば実装面11Sと平行な面内において互いに離間して複数配列された金属からなる柱状の構造体である。また、本実施例において、ナノアンテナ45は、Al(アルミニウム)からなる。ナノアンテナ45は、実装面11Sと平行な面内において、言い換えれば上面視において、一定の周期及び一定の配列パターンで配列されてアンテナアレイを形成している。
【0054】
本実施例において、ナノアンテナ45からなるアンテナアレイは、第1の透光性層43の上面の全面に形成されている。
【0055】
図4は、本実施例におけるナノアンテナ45の平面形状及び上面視における配列パターンを示す上面図である。
図4に示すように、ナノアンテナ45は、正方形の平面形状を有している。また、複数のナノアンテナ45は、所定の周期Pで六方格子状の配列パターンで配列されてアンテナアレイを形成している。
【0056】
なお、アンテナアレイは、第1の透光性層43の上面の任意の領域に形成され得る。例えば、アンテナアレイは、上面視において、発光素子13の半導体積層体25が形成されている領域に対応する領域に形成され得る。
【0057】
本実施例において、ナノアンテナ45の配列周期Pは340nmである。複数のナノアンテナ45の各々の上面視における一辺の長さWは、例えば200nmである。また、複数のナノアンテナ45の各々の高さH(
図4)は、例えば130nmである。
【0058】
なお、ナノアンテナ45の形状は、柱状又は錐状とすることができ、四角柱形状以外に、例えば、円柱形状、円錐形状、角錐形状等の形状とすることができる。
【0059】
また、ナノアンテナ45は、Alのほか、Au,Ag,Ni等の金属又はTiO2、Al2O3等の金属酸化物によって形成してもよい。
【0060】
複数のナノアンテナ45は、例えば、EB蒸着等によって第1の透光性層43上に成膜したAl表面に、ナノインプリント等によりレジストパターンを形成し、RIEエッチングを行うことによって形成することができる。
【0061】
複数のナノアンテナ45は、回折光学素子層37に入射した光のうち、特定の波長域の光について強く回折を生じさせる。言い換えれば、複数のナノアンテナ45は、回折光学素子として機能する。具体的には、複数のナノアンテナ45は、蛍光体層35から回折光学素子層37への入射角θin1よりも、回折光学素子層37から誘電体多層膜39への入射角θin2が小さくなるように、当該特定の波長域の光の進行方向を変化させる。
【0062】
第2の透光性層47は、
図3に示すように、第1の透光性層43上に、複数のナノアンテナ45を埋設するように形成されている。第2の透光性層47は、発光素子13からの励起光及び当該励起光が蛍光体によって波長変換された蛍光に対して透光性を有する材料からなる層である。
【0063】
第2の透光性層47は、例えば、SiO2層である。例えば、第2の透光性層47は、複数のナノアンテナ45の形成後、スパッタ装置等を用いて成膜することによって形成される。第2の透光性層47の上面は例えば化学機械研磨(CMP)等によって平坦化されている。
【0064】
第1の透光性層43と、複数のナノアンテナ45と、第2の透光性層47と、を含んで構成されている回折光学素子層37は、全体として、回折光学素子層37に入射した光の特定の波長域の光を一部について回折させて、当該一部の光の配光を挟角化する。
【0065】
誘電体多層膜39は、第2の透光性層47上に形成されており、屈折率が互いに異なる2種類の誘電体膜が交互に積層されて構成されている。本実施例において、誘電体多層膜39は、蒸着等によりSiO2膜とTa2O5膜とが交互に積層されて構成されている。
【0066】
誘電体多層膜39は、その積層面に対して、例えば0°を中心とする所定の入射角範囲内で入射する、特定の波長の光を反射するように設計された光学部材である。誘電体多層膜39は、発光素子13からの励起光を透過し、蛍光体層35からの蛍光のピーク波長よりも短波長側の特定の波長範囲の光を反射し、蛍光体層35からの蛍光のピーク波長付近及びそれより長い波長の光を透過するように設計されている。具体的には、誘電体多層膜39は、青色の励起光のスペクトルと黄色蛍光のスペクトルとが重なる波長域である475nm~510nmの波長の光を反射し、青色の励起光の大部分を含む波長領域である425nm~475nmの光、および、黄色蛍光の大部分を含む510nmより長波長の光は透過するように設計されている。
【0067】
ここで、
図5を参照しつつ、本実施例における各光の波長と視感度との関係について説明する。
【0068】
図5は、発光素子13からの励起光のスペクトルを示す励起スペクトル、白色光を出射するLED素子からの出射光のスペクトルの一例である白色LEDスペクトル及び人間の目が最も強く感じる波長約555nmの光を1とする視感度を示すスペクトルを併せて示す図である。
図5中、475-510nmの波長域を矢印で示している。
【0069】
図5に示すように、視感度のピークとなる波長は約555nmであり、例えば、明るい場所に順応したときに、ヒトの目が最大感度となる波長である。白色LEDスペクトルは、青色光の約450nmのピーク及び黄色光の約550nmを中心とするピークを含んでいる。
【0070】
図5から明らかなように、475-510nmの波長域の光は555nmの光と比べて視感度が低い。従って、475-510nmの波長域の光が光源装置10の出射光として出射されても、人間の目によって明るい光として認識され難く、光源装置10の出射光として有効利用できない。
【0071】
本実施例では、475-510nmの波長域の光を有効利用するために、より視感度の高い光に変換する。すなわち、475-510nmの光の波長をより長波長の約550nmに近づける。
【0072】
475-510nmの波長域は励起光の波長域に含まれるため、475-510nmの波長域の光を再度蛍光体層35に入射させることで、蛍光体によって波長変換させてより長波長の黄色光とすることができ、視感度の高い光とすることができる。
【0073】
以上のことから、本実施例の光源装置10は、475nm~510nmの波長の光を誘電体多層膜39によって反射させ、蛍光体層35に入射させるように構成されている。
【0074】
一方、上記したように、誘電体多層膜39は、光の入射角によって反射率が異なる。本実施例において、誘電体多層膜39は、入射する光の入射角が0°を中心とする所定の範囲内の場合に475nm~510nmの波長域の光を反射するように設計されており、例えば、入射角が30°、60°と大きくなると、高い反射率が得られる波長域が低波長側にシフトする。従って、475nm~510nmの波長域の光は、入射角が大きくなると誘電体多層膜39によって反射されにくくなる。
【0075】
従って、設計通りの475nm~510nmの波長域の光を誘電体多層膜39によって反射させるためには、設計通りの波長域の光の誘電体多層膜39への入射角を小さくすることが必要となる。
【0076】
再び
図3を参照し、回折光学素子層37及び誘電体多層膜39における475nm~510nmの波長域の光の挙動について説明する。
【0077】
上記したように、蛍光体層35からの蛍光は、入射角θin1が大きい光を含む。本実施例においては、回折光学素子層37に入射角θin1で入射した475nm~510nmの波長の光は、回折光学素子層37を通過すると、ナノアンテナ45の作用により回折されて回折光学素子層37から誘電体多層膜39に入射する際の入射角θin2が、入射角θin1よりも小さい光となる。従って、当該475nm~510nmの波長の光の誘電体多層膜39への入射角が、当該誘電体多層膜39の0°を中心とする所定の設計値の角度範囲に入りやすくなり、当該475nm~510nmの波長の光が誘電体多層膜39に反射され易くなる。
【0078】
このように、回折光学素子層37に含まれるナノアンテナ45の作用により誘電体多層膜39への入射角が小さい光が多くなるので、蛍光体層35からの蛍光のうちより多くの光を誘電体多層膜39によって反射させて蛍光体層35に戻すことができる。
【0079】
蛍光体層35に戻った光は、蛍光体を励起して475nm~510nmよりも長波長の黄色蛍光が当該励起された蛍光体から出射される。475nm~510nmよりも長波長側の黄色蛍光は、蛍光体層35を通過した青色光とともに誘電体多層膜39を透過して、波長変換部材15の上面15Tから出射される。
【0080】
これによって、波長変換部材15の上面15Tから視感度の高い光がより多く出射されて光束が高くなる。より詳細には、蛍光体層35に戻って波長変換された黄色蛍光は、青色光と混色されて光源装置10から出射される白色光の光束の増加に寄与する。
【0081】
従って、光源装置10は波長変換効率が高く、視感度の高い光を効率良く出射することができる。
【0082】
例えば、本実施例において、ナノアンテナ45を設けない場合は、475nm~510nmの波長の光であっても、誘電体多層膜39への入射角が大きい光は反射されずに誘電体多層膜39を透過して、光出射面15Tから取り出される。上記したように、475nm~510nmの波長の光は視感度が低いので、光源装置10の出射光として有効利用することができない。
【0083】
上記のようなナノアンテナ45によるアンテナ作用は、上記したように、回折光学素子層37内に形成された複数のナノアンテナ45によって光回折が起こることによって生じる。回折が起こる条件は、以下のレイリーアノマリーの式(1)によって表される。
【0084】
【数1】
ここで、
は回折の波数ベクトルの平行成分であり、以下の式(2)で表される。
【0085】
【数2】
また、
は入射の波数ベクトルの平行成分であり、以下の式(3)で表される。
【0086】
【0087】
λは光の波長、aは回折光学素子(ナノアンテナ45)の周期Pに√3/2を乗じた値、θinは回折光学素子層37への光の入射角、nはナノアンテナ45の周囲の部材の屈折率、m1及びm2は回折の次数を表している。
【0088】
上記の式(2)及び式(3)を(1)に代入する。まず、以下のように、α、β、γを設定する。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
式(4)~(6)を用いて式(2)及び式(3)を(1)に代入してλについて求めると、以下の式(7)ようになる。
【0093】
【0094】
式(7)を用いて、波長を回折光学素子層37への入射角θinの関数としてプロットすると、回折線が引ける。アンテナの周囲の屈折率毎に、かつ、回折の次数毎に回折線を引くと、アンテナの作用によって光が減衰する度合いを示すLSPR(局在表面プラズモン共鳴)バンドが回折線に沿って変調する。
【0095】
当該入射角θ
inに代えて、回折光学素子層37からの出射角θ
emの関数として同様に回折線を引くと、回折線を境界として区切られる領域と、実際に光がアンテナ作用を受けて挟角化されて増強される度合いの違いによって生じる領域とがよく一致することがわかっている(非特許文献1)。そこで、上記の式を用いて、ナノアンテナ45の作用を受ける光の波長を出射角θ
emの関数としてプロットした回折線によって、どの波長域の光が強く回折されるかを見積もることができる。なお、回折光学素子層37からの出射角θ
emは、
図3において説明した誘電体多層膜39への入射角θ
in2となる。
【0096】
図6は、波長λを回折光学素子層37からの出射角θ
emの関数として表した回折線を示す図である。
図6中のグラフは、横軸を回折光学素子層37からの出射角θ
emとし、縦軸を回折光学素子層37から出射する光の波長を示している。
【0097】
図6のグラフ中、実線は、第1の透光性層43を構成するTiO
2の屈折率n=2.33を用いて、θ
em毎に式(7)によって回折次数(m
1, m
2)=(1,0)として算出した波長λをプロットした回折線である(TiO
2(1,0))。
【0098】
同様に、
図6のグラフ中の一点鎖線は、TiO
2について回折次数(m
1, m
2)=(1,-1)とし(TiO
2(1,-1))、
図6のグラフ中の二点鎖線は、回折次数(m
1, m
2)=(-1,0)として(TiO
2(-1,0))算出した波長λをプロットした回折線である。
【0099】
図6のグラフ中、破線は、第2の透光性層47を構成するSiO
2の屈折率n=1.457を用いて、θ
em毎に式(7)によって回折次数(m
1, m
2)=(-1,0)として算出した波長λをプロットした回折線である(SiO
2(-1,0))。
【0100】
図6に示すように、出射角θ
emの低角度側において、実線TiO
2(1,0)と破線(SiO
2(-1,0)とで囲まれた領域Bが生じている。当該領域B内の波長域の光がナノアンテナ45によって強く回折されて、領域B内の小さい出射角θ
emとなる。
図6に示すように、領域B内の光には、475-510nmの波長域の光が含まれる。
【0101】
上記したように、レイリーアノマリーの式(1)~(3)は、光の波長λ、ナノアンテナ45の周囲の屈折率n及びナノアンテナ45の周期Pをパラメータとして含んでいるので、屈折率n及びナノアンテナ45の周期Pを変更すると、回折線が変化し、ナノアンテナ45が作用する光の波長域及び出射角の範囲が変化する。従って、本実施例において、アンテナ作用が強くなる領域に所望の波長域が含まれるように、屈折率n及びナノアンテナ45の周期Pを調整することによって、所望の波長域の光について、出射角θem、すなわち誘電体多層膜39への入射角θin2を小さくすることができる。言い換えれば、上記の回折線を用いて、所望の波長域に応じたナノアンテナ45の周期P及びナノアンテナ45の周囲の屈折率nを求めることができる。
【0102】
例えば、第1の透光性層43及び第2の透光性層47の材料を固定することで屈折率nを一定とし、ナノアンテナ45の周期Pを変化させて回折線を引くことによってナノアンテナ45が作用する光の波長域を最適化してもよい。また、例えば、ナノアンテナ45の周期Pを一定として、第1の透光性層43の複数の候補材料の屈折率を用いて回折線を引き、最適な材料を選定してもよい。
【0103】
以上、詳細に説明したように、本実施例の光源装置は、光を出射する発光層を含む半導体層を含み、上面を出射面とする発光素子と、発光素子上に設けられ、発光素子からの出射光である励起光によって励起され第1の波長範囲の蛍光を出射する蛍光体を含む蛍光体層と、蛍光体層の上面に設けられ、上面視において、金属又は金属酸化物からなる複数のナノアンテナが蛍光のピーク波長よりも短い波長範囲にある第2の波長範囲の波長に応じた所定の周期で配列されたアンテナアレイを含み、励起光及び蛍光に対して透光性を有する材料からなる回折光学素子層と、回折光学素子層の上面に設けられ、第2の波長範囲の光に反射性を有する誘電体多層膜と、を有する。
【0104】
回折光学素子層37は、例えば、蛍光体層の上面に形成されかつ励起光及び前記蛍光に対して透光性を有する第1の透光性層と、第1の透光性層の上面に、上面視において所定の周期で配列された複数のナノアンテナと、第1の透光性層の上面において複数のナノアンテナを埋設するように形成され、かつ励起光及び蛍光に対して透光性を有する第2の透光性層と、を含んで構成されている。
【0105】
このように、本実施例の光源装置は、視感度の低い光を蛍光体層側に反射する誘電体多層膜を設けている。当該誘電体多層膜には角度依存性があり、反射性を有する波長域の光であっても入射角が大きい光は透過する。蛍光体層からの蛍光は等方的に拡散するため、誘電体多層膜への入射角が大きいことによって反射されない成分も多い。そこで、本実施例では、蛍光体層と誘電体多層膜との間に回折光学素子層を設け、回折光学素子層に含まれるナノアンテナの作用によって蛍光体層からの蛍光のうち視感度の低い光について誘電体多層膜への入射角が小さい光を増加させている。これによって、蛍光体層から出射した視感度の低い光のうちのより多くの光が蛍光体層に戻されて視感度の高い光に変換される。従って、視感度の高い光を効率良く取り出すことができる。
【0106】
上記のようなナノアンテナの作用は、上記したレイリーアノマリーの式を用いて、目的の波長域の光が回折されるように、第1の透光性層及び第2の透光性層の屈折率及びアンテナが配列されている周期を最適化することによって実現できる。
【0107】
なお、本実施例においては、ナノアンテナ45が六方格子状に配列されている例について説明したが、これに限定されない。ナノアンテナ45は、一定の周期で配列されていればよく、例えば、正方格子状、長方格子状に配列されていてもよい。
【0108】
[変形例]
図7は、上記の実施例の変形例に係るナノアンテナ51の配列を示す図である。
図7に示すように、ナノアンテナ51は、正方格子状に配列されている。アンテナ51は、
図3に示したナノアンテナ45とは配列の態様のみが異なる。
【0109】
図8は、ナノアンテナ51を有し、その他の点については実施例の光源装置10と同様に構成されている変形例の光源装置について、波長λを回折光学素子層37からの出射角θ
emの関数として表した回折線を示す図である。
【0110】
図8に示す回折線は、
図6に示した場合と同様に作成可能であるが、周期に関するパラメータaについては、
図6の場合のように√3/2を乗じることなく、aをナノアンテナ51の周期(nm)とする。
【0111】
図8に示す回折線は、ナノアンテナ51によって回折される領域に475-510nmの波長域が含まれるように最適化を行って、ナノアンテナ51の周期を290nmとした場合の回折線である。
【0112】
図8に示すように、出射角θ
emの低角度側において、実線TiO
2(1,0)と破線SiO
2(-1,0)とで囲まれた領域Cが生じている。当該領域C内の光がナノアンテナ51によって回折される。
図8に示すように、領域C内の光には、475-510nmの波長域の光が含まれる。
【0113】
また、上記したように、ナノアンテナ45の形状は、柱状又は錐状とすることができ、四角柱形状以外に、例えば、円柱形状、円錐形状、角錐形状等の形状とすることができる。
【0114】
図9は、実施例においてナノアンテナ45の形状を円柱形状又は円錐形状としたナノアンテナ61が六方格子状に配列されている例を示す上面図である。
【0115】
図10は、実施例においてナノアンテナ45の形状を円柱形状又は円錐形状としたナノアンテナ71が正方格子状に配列されている例を示す上面図である。
【0116】
上述した実施例における構成は例示に過ぎず、用途等に応じて適宜変更可能である。
【0117】
例えば、上記の実施例において、回折光学素子層37は、第1の透光性層43を有し、第1の透光性層43上にナノアンテナ45が形成されている例について説明したが、これに限られない。例えば、ナノアンテナ45は、蛍光体層35上に形成されていてもよく、蛍光体層35上に形成されたナノアンテナ45が第2の透光性層47によって埋設されていてもよい。なお、第1の透光性層43は蛍光体層35よりも屈折率が高く、蛍光体層35からの光(蛍光体層35を通過する励起光及び蛍光体から放出された蛍光)を効率良く回折光学素子層に導入できること、蛍光体層35からの光がナノアンテナ45によって反射されて蛍光体層35側に戻ることを第1の透光性層43によって抑制できることから、第1の透光性層43を設けることが好ましい。
【0118】
上記の実施例において、光源装置に含まれる発光素子13がシンフィルム型のLED素子である場合について説明したが、これに限られない。例えば、発光素子13に代えて、フリップチップ型の発光素子を用いてもよい。
【0119】
上記の実施例において、波長変換部材15が発光素子13上に接着されている例について説明したが、これに限られない。波長変換部材15は、発光素子13からの励起光が入射するようになっていれば、発光素子13からから離れた位置に配置されてもよい。