(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166842
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ゴルフボール用ゴム組成物およびこれを用いたゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20231115BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20231115BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A63B37/00 512
A63B37/00 532
C08L21/00
C08K5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077660
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】永倉 光
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】林 界
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002BB151
4J002EF036
4J002EJ027
4J002EJ037
4J002EU077
4J002EV048
4J002EV058
4J002EV138
4J002EV278
4J002FD146
4J002FD207
4J002FD208
4J002GC01
(57)【要約】
【課題】ゴルフボールに優れた耐久性を付与できるゴルフボール用ゴム組成物の硬化物を提供する。
【解決手段】ゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、および、(c)架橋開始剤を含有するゴルフボール用ゴム組成物を硬化してなり、有効架橋密度DC(mmol/cm3)と、0.05%~0.25%歪時の引張弾性率TM(MPa)とが、TM-333.32×ln(DC)>100の関係を満足することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、および、(c)架橋開始剤を含有するゴルフボール用ゴム組成物を硬化してなり、
硬化物の有効架橋密度DC(mmol/cm3)と0.05%~0.25%歪時の引張弾性率TM(MPa)とが、数式(1)の関係を満足することを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物の硬化物。
TM-333.32×ln(DC)>100・・・(1)
【請求項2】
前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(d)ラジカル捕捉剤を含有する請求項1に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物。
【請求項3】
前記(d)ラジカル捕捉剤が、ヒンダードフェノール系化合物またはヒンダードアミン系化合物である請求項2に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物。
【請求項4】
前記ヒンダードフェノール系化合物は、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-({2-[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)スルファニル]プロパン-2-イル}スルファニル)フェノール、および、アクリル酸2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルよりなる群から選択される一種である請求項3に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物。
【請求項5】
前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(a)基材ゴム100質量部に対して、前記(d)ラジカル捕捉剤を0.5質量部以上、4質量部以下含有する請求項2に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物。
【請求項6】
前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(a)基材ゴム100質量部に対して、前記(d)ラジカル捕捉剤を0.5質量部以上、2質量部未満含有する請求項2に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物。
【請求項7】
前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(a)基材ゴム100質量部に対して、前記(d)ラジカル捕捉剤を0.5質量部以上、1.5質量部以下含有する請求項2に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物。
【請求項8】
前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(e)有機硫黄化合物として、チオール類、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、および、チアゾール類よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する請求項1に記載のゴルフボール用組成物の硬化物。
【請求項9】
構成部材の少なくとも一部が、請求項1~8のいずれか一項に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項10】
コアと前記コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアが、請求項1~8のいずれか一項に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物からなることを特徴とするゴルフボール。
【請求項11】
前記コアは、コア中心からコア半径の75%地点の硬度(H75)が、ショアC硬度で70~80のときに、硬度H75に対するコア表面硬度(Hs)の比(Hs/H75)が、0.90以上、1.20以下である請求項10に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボール用ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールのコアを形成する材料として、反発性が良い点から、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤を含有するゴム組成物が広く使用されている。また、このようなゴム組成物から形成されたコアについて、架橋密度を制御することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、および、(c)架橋開始剤を含有するゴルフボール用ゴム組成物を硬化してなり、有効架橋密度DC(mmol/cm3)と、0.05%~0.25%歪時の引張弾性率TM(MPa)とが、数式(1)の関係を満足することを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物の硬化物が開示されている。
TM-3.33×ln(DC)>(-0.10)・・・(1)
【0004】
特許文献2には、コアと前記コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および(d)ヒンダードフェノール系化合物を含有するコア用ゴム組成物から形成されたものであり、前記コア用ゴム組成物には、(b)前記共架橋剤と(d)前記ヒンダードフェノール系化合物とが、以下の関係式(1)を満足するように配合されていることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
0.04≦HF/B≦0.35・・・・(1)
(式(1)中、HF=(d)ヒンダードフェノール系化合物1分子が有するOH基の官能基数×(a)基材ゴム100質量部に対する(d)ヒンダードフェノール系化合物の配合量(モル数)、B=(a)基材ゴム100質量部に対する(b)共架橋剤の配合量(モル数)である。)
【0005】
特許文献3には、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤を含有するゴルフボール用ゴム組成物を硬化してなり、以下の数式(1)を満足することを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物の硬化物が開示されている。
Y<0.1×X-1.30・・・・(1)
式(1)中、Y:ゴム組成物の硬化物の有効架橋密度(mmol/cc)
X:(a)基材ゴム100質量部に対する(b)成分の配合量(質量部)
【0006】
特許文献4には、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、および、(c)架橋開始剤を含有するゴルフボール用ゴム組成物を硬化してなり、ショアC硬度でのスラブ硬度と、-80℃における損失正接(tanδ-80)と0℃における損失正接(tanδ0)との差(tanδ-80-tanδ0)との積(硬度×(tanδ-80-tanδ0))が、28.0以上であることを特徴とするゴルフボール用ゴム組成物の硬化物が開示されている。
【0007】
特許文献5には、基材ゴム、α,β-エチレン系不飽和カルボン酸金属塩、ヒンダードフェノール基を有するエチレン系不飽和カルボン酸エステルおよび過酸化物を含有するゴム組成物から形成された弾性部分を少なくとも一部に有するソリッドゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-090715号公報
【特許文献2】特開2020-185067号公報
【特許文献3】特開2020-196868号公報
【特許文献4】特開2021-137300号公報
【特許文献5】特公平7-108321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ゴルフボールの打球感を低下させることなく、優れた耐久性を付与できるゴルフボール用ゴム組成物の硬化物を提供することを課題とする。さらに、本発明は、良好な打球感を維持しつつ耐久性に優れたゴルフボールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することができた本発明のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、および、(c)架橋開始剤を含有するゴルフボール用ゴム組成物を硬化してなり、硬化物の有効架橋密度DC(mmol/cm3)と0.05%~0.25%歪時の引張弾性率TM(MPa)とが、数式(1)の関係を満足することを特徴とする。
TM-333.32×ln(DC)>100・・・(1)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴルフボールの打球感を低下させることなく、優れた耐久性を付与できるゴルフボール用ゴム組成物の硬化物が得られる。さらに、本発明によれば、良好な打球感を維持しつつ耐久性に優れたゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、および、(c)架橋開始剤を含有するゴルフボール用ゴム組成物を硬化してなる。そして、前記ゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、有効架橋密度DC(mmol/cm3)の自然対数値(ln(DC))と、0.05%~0.25%歪時の引張弾性率TM(MPa)とが、数式(1)の関係を満足することを特徴とする。
TM-333.32×ln(DC)>100・・・(1)
【0014】
すなわち、値(TM-333.32×ln(DC))が、100超である。前記引張弾性率TMと有効架橋密度DCとが前記関係を満足することで、得られるゴルフボールの耐久性が向上する。この観点から、前記値(TM-333.32×ln(DC))は、105以上が好ましく、より好ましくは110以上、さらに好ましくは120以上であり、500以下が好ましく、より好ましくは480以下であり、さらに好ましくは450以下である。
【0015】
前記引張弾性率TMは、50MPa以上が好ましく、より好ましくは60MPa以上、さらに好ましくは70MPa以上であり、310MPa以下が好ましく、より好ましくは300MPa以下、さらに好ましくは290MPa以下である。前記引張弾性率TMが50MPa以上であればゴム組成物が柔らかくなりすぎず、反発性がより良好となり、310MPa以下であればゴム組成物が硬くなりすぎず、打球感が良好となる。引張弾性率は、引張応力を引張ひずみで除した値である。
【0016】
前記有効架橋密度DCは、0.4mmol/cm3以上が好ましく、より好ましくは1.0mmol/cm3以上、さらに好ましくは1.3mmol/cm3以上であり、8.0以下が好ましく、より好ましくは4.0mmol/cm3以下、さらに好ましくは2.0mmol/cm3以下である。前記有効架橋密度DCが0.4mmol/cm3以上であればゴム組成物が柔らかくなりすぎず、反発性がより良好となり、8.0mmol/cm3以下であればゴム組成物が硬くなりすぎず、打球感が良好となる。
【0017】
引張弾性率、有効架橋密度を測定する硬化物は、加硫がほぼ終わっている状態(架橋密度が最大となっている状態)のものである。具体的には、架橋開始剤の1分間半減期温度±10℃で30分間以上加硫したゴム組成物の硬化物である。
【0018】
以下、前記ゴルフボール用ゴム組成物が含有する材料について説明する。
【0019】
[(a)基材ゴム]
前記(a)基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴムが好適であり、特に、反発に有利なシス-1,4-結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上有するハイシスポリブタジエンおよび/またはハイシスポリイソプレンが好適である。
【0020】
反発性がより高いコアが得られる観点から、基材ゴム中におけるハイシスポリブタジエンの含有率は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。(a)基材ゴムが、ハイシスポリブタジエンのみからなることも好ましい。
【0021】
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2-ビニル結合の含有量が2.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると反発性が低下する場合がある。
【0022】
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4-シス結合が高含量、1,2-ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
【0023】
前記ハイシスポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは55以下である。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0024】
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.0以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下するおそれがある。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC-8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
【0025】
前記ゴム組成物は、前記(a)基材ゴムとして、ポリブタジエンゴムおよびポリイソプレンゴムを含有することも好ましい。前記ポリイソプレンゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、55以上が好ましく、より好ましくは60以上、さらに好ましくは65以上であり、120以下が好ましく、より好ましくは110以下、さらに好ましくは100以下である。
【0026】
前記(a)基材ゴム中のポリブタジエンゴムとポリイソプレンゴムとの質量比(ポリブタジエンゴム/ポリイソプレンゴム)は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
【0027】
[(b)共架橋剤]
前記ゴム組成物に使用される(b)炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、共架橋剤としてゴム組成物に配合されるものであり、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。
【0028】
前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。
【0029】
前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの三価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、得られるゴルフボールの反発性が高くなるということから、アクリル酸亜鉛が好適である。なお、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0030】
前記(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、55質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、45質量部以下がさらに好ましい。(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が20質量部未満では、ゴム組成物から形成される硬化物(例えば、コア)を適当な硬さとするために、後述する(c)架橋開始剤の量を増加しなければならず、得られるゴルフボールの反発性が低下する傾向がある。一方、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が55質量部を超えると、ゴム組成物から形成される硬化物(例えば、コア)が硬くなりすぎて、得られるゴルフボールの打球感が低下するおそれがある。
【0031】
[(c)架橋開始剤]
前記ゴム組成物に使用される(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0032】
前記(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましく、5.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましい。架橋開始剤の含有量が0.2質量部未満では、ゴム組成物から形成される硬化物(例えば、コア)が柔らかくなりすぎて、得られるゴルフボールの反発性が低下する傾向があり、5.0質量部を超えると、ゴム組成物から形成される硬化物(例えば、コア)を適切な硬さにするために、前述した(b)共架橋剤の使用量を減少する必要があり、得られるゴルフボールの反発性が不足したり、耐久性が悪くなるおそれがある。
【0033】
[(d)ラジカル捕捉剤]
前記ゴム組成物は、(d)ラジカル捕捉剤を含有することも好ましい。(d)ラジカル捕捉剤としては、例えば、(d1)ヒンダードフェノール系化合物、および、(d2)ヒンダードアミン系化合物を挙げることができる。ゴム組成物が(d)成分を含有することにより、硬化物の硬度を保持しつつ架橋密度を低下させることができる。
【0034】
(d1)ヒンダードフェノール系化合物
前記(d1)ヒンダードフェノール系化合物は、ヒドロキシ基が、嵩高い官能基によって立体的に保護されたヒドロキシフェニル構造を有する化合物である。嵩高い官能基は、ヒドロキシ基に隣接する位置に存在することが好ましい。嵩高い官能基としては、例えば、t-ブチル基、炭素の一部が硫黄で置換されていてもよい長鎖アルキル基などが挙げられる。前記(d1)ヒンダードフェノール系化合物としては、tert-ブチル基を少なくとも一つ有するtert-ブチルヒドロキシフェニル構造を有する化合物が好ましく、tert-ブチル基を二つ有するジ-tert-ブチルヒドロキシフェニル構造を有する化合物がより好ましい。
【0035】
前記tert-ブチル基を少なくとも一つ有するtert-ブチルヒドロキシフェニル構造を有する化合物としては、例えば、3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル、または、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルなどの構造を有する化合物を挙げることができる。これらの中でも、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル構造を有する化合物が好ましい。
【0036】
前記(d1)ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス〔(ドデシルチオ)メチル〕-o-クレゾール、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール(例えば、BASFジャパン社製イルガノックス(登録商標)1141)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、アデカ社製アデカスタブ(登録商標)AO-50)などのヒドロキシフェニル構造を一つ有する化合物を挙げることができる。
【0037】
前記(d1)ヒンダードフェノール系化合物の別の具体例としては、例えば、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)(例えば、三菱ケミカル社製ヨシノックス(登録商標)425)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(例えば、三新化学工業社製サンダント(登録商標)2246)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(例えば、三菱ケミカル社製ヨシノックスBB)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(例えば、大内新興化学工業社製ノクラック(登録商標)300)、4,4-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-({2-[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)スルファニル]プロパン-2-イル}スルファニル)フェノール(プロブコール)、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(例えば、アデカ社製アデカスタブAO-80)などのヒドロキシフェニル構造を二つ有する化合物を挙げることができる。
【0038】
前記(d1)ヒンダードフェノール系化合物の別の具体例としては、1,3,5-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3-5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H-)-トリオン(例えば、アデカ社製アデカスタブAO-20)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、アデカ社製アデカスタブAO330)などのヒドロキシフェニル構造を三つ有する化合物を挙げることができる。
【0039】
前記(d1)ヒンダードフェノール系化合物の別の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](例えば、アデカ社製アデカスタブAO-60)のようなヒドロキシフェニル構造を四つ有する化合物を挙げることができる。
【0040】
前記(d1)ヒンダードフェノール系化合物の別の具体例としては、アクリル酸2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニル(例えば、住友化学社製スミライザーGM)を挙げることができる。
【0041】
前記(d1)ヒンダードフェノール系化合物は、単独でもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
前記(d1)ヒンダードフェノール系化合物としては、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-({2-[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)スルファニル]プロパン-2-イル}スルファニル)フェノール、または、アクリル酸2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルを挙げることができる。
【0043】
(d2)ヒンダードアミン系化合物
前記(d2)ヒンダードアミン系化合物としては、下記化学式(1)で表される2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル基を有する化合物が好ましい。
【0044】
【化1】
[式(1)中、R
11は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のヒドロキシアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のヒドロキシアルコキシ基、又は、オキシラジカルである。*は結合手である。]
【0045】
化学式(1)で表されるヒンダードアミン系化合物には、化学式(2)または化学式(3)で表されるようなヒンダードアミン系化合物が含まれる。
【0046】
下記化学式(2)で表されるヒンダードアミン系化合物は、いわゆるN-アルキル型ヒンダードアミン系化合物、および、NH型ヒンダードアミン系化合物と言われるものである。
【0047】
【化2】
[式(2)中、R
12は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のヒドロキシアルキル基、又は、オキシラジカルである。*は結合手である。]
【0048】
下記化学式(3)で表されるヒンダードアミン系化合物は、いわゆるN-アルコキシ型ヒンダードアミン化合物と言われるものである。
【0049】
【化3】
[化学式(3)中、R
12は、炭素数1~30のアルキル基、又は、炭素数1~30のヒドロキシアルキル基である。*は結合手である。]
【0050】
前記(d2)ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、化学式(4)~(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0051】
【化4】
[化学式(4)中、R
13は、炭素数が1~30のアルキレン基である。R
14、R
15は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のヒドロキシアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のヒドロキシアルコキシ基、又は、オキシラジカルである。]
【0052】
【化5】
[化学式(5)中、R
16は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のヒドロキシアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のヒドロキシアルコキシ基、又は、オキシラジカルである。R
17は、炭素数1~30のアルキル基、または、炭素数が2~30のアルケニル基である。]
【0053】
【化6】
[化学式(6)中、R
18、R
19は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のヒドロキシアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のヒドロキシアルコキシ基、又は、オキシラジカルである。]
【0054】
前記(d2)ヒンダードアミン化合物の具体例としては、例えば、アデカ社製アデカススタブLA-52(テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート)、アデカスタブLA-57(テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート)、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-72(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、アデカスタブLA-77Y(ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、アデカスタブLA-81(ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネートなどを挙げることができる。
【0055】
前記(d2)ヒンダードアミン化合物の具体例としては、BASFジャパン社から市販されているものとして、以下のものを挙げることができる。
(1)チマスソーブ(Chimassorb)(登録商標)2020FDL
1,6-Hexanediamine, N,N’―bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl)-polymer with 2,4,6-trichloro-1,3,5-triazine, reaction products with N-butyl-1-butanamine and N-butyl-2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinamine
(2)チマスソーブ(Chimassorb)944FDL
Poly[[6-[(1,1,3,3-tetramethylbutyl)amino]-1,3,5-triazine-2,4-diyl][(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl)imino]-1,6-hexanediyl[(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidinyl)imino]])
(3)チヌビン(登録商標)622SF
Butanedioic acid, dimethylester, polymer with 4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidine ethanol)、
(4)チヌビンPA144
Bis(1,2,2,6,6-pentamethyl-4-piperidinyl)-2-butyl-2-(4-hydroxy-3,5-di-tert.- butylbenzyl)propanedioate
【0056】
前記(d2)ヒンダードアミン系化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、前記(d1)ヒンダードフェノール化合物と(d2)ヒンダードアミン化合物とを組み合わせて使用してもよい。
【0057】
前記(d)ラジカル捕捉剤の配合量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、0.6質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましく、4.0質量部以下が好ましく、2.0質量部未満がより好ましく、1.8質量部以下がさらに好ましく、1.5質量部以下が特に好ましい。前記(d)ラジカル捕捉剤の配合量が、前記範囲内であれば、共架橋剤の添加量の割に有効架橋密度が低くなり、破断ひずみが増加し、耐久性が向上するからである。
【0058】
[(e)有機硫黄化合物]
前記ゴム組成物は、さらに(e)有機硫黄化合物を含有してもよい。(e)有機硫黄化合物を含有することにより、得られるコアの反発性が向上する。
【0059】
前記(e)有機硫黄化合物としては、チオール類(チオフェノール類、チオナフトール類)、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、および、チアゾール類よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物が好ましい。
【0060】
チオール類としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類が挙げられる。前記チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4-フルオロチオフェノール、2,4-ジフルオロチオフェノール、2,5-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,4,5-トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6-テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2-クロロチオフェノール、4-クロロチオフェノール、2,4-ジクロロチオフェノール、2,5-ジクロロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、2,4,5,6-テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4-ブロモチオフェノール、2,4-ジブロモチオフェノール、2,5-ジブロモチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,4,5-トリブロモチオフェノール、2,4,5,6-テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4-ヨードチオフェノール、2,4-ジヨードチオフェノール、2,5-ジヨードチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリヨードチオフェノール、2,4,5,6-テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
【0061】
前記チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、2-チオナフトール、1-チオナフトール、1-クロロ-2-チオナフトール、2-クロロ-1-チオナフトール、1-ブロモ-2-チオナフトール、2-ブロモ-1-チオナフトール、1-フルオロ-2-チオナフトール、2-フルオロ-1-チオナフトール、1-シアノ-2-チオナフトール、2-シアノ-1-チオナフトール、1-アセチル-2-チオナフトール、2-アセチル-1-チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができ、2-チオナフトール、1-チオナフトール、またはこれらの金属塩が好ましい。金属塩としては、好ましくは2価の金属塩、より好ましくは亜鉛塩である。金属塩の具体的としては、例えば、1-チオナフトールの亜鉛塩、2-チオナフトールの亜鉛塩が挙げられる。
【0062】
ポリスルフィド類とは、ポリスルフィド結合を有する有機硫黄化合物であり、例えば、ジスルフィド類、トリスルフィド類、テトラスルフィド類が挙げられる。前記ポリスルフィド類としては、ジフェニルポリスルフィド類が好ましい。
【0063】
ジフェニルポリスルフィド類としては、ジフェニルジスルフィドの他;ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィド等のハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド等のアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;などが挙げられる。
【0064】
チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムテトラスルフィド類が挙げられる。チオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンチオカルボン酸が挙げられる。ジチオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンジチオカルボン酸が挙げられる。スルフェンアミド類としては、例えば、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
【0065】
前記(e)有機硫黄化合物としては、チオフェノール類および/またはその金属塩、チオナフトール類および/またはその金属塩、ジフェニルジスルフィド類、チウラムジスルフィド類が好ましく、より好ましくは2,4-ジクロロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、1-チオナフトール、2-チオナフトール、ジフェニルジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0066】
前記(e)有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0067】
前記(e)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。(e)有機硫黄化合物の含有量が0.05質量部未満では、(e)有機硫黄化合物を添加した効果が得られず、ゴルフボールの反発性が向上しないおそれがある。また、(e)有機硫黄化合物の含有量が5.0質量部を超えると、得られるゴルフボールの圧縮変形量が大きくなって、反発性が低下するおそれがある。
【0068】
[(f)その他の成分]
前記ゴルフボール用ゴム組成物は、さらに金属化合物を含有することが好ましい。金属化合物は、例えば、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の中和剤として使用される。また、金属化合物は、質量調整剤として使用することもできる。
【0069】
前記金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。前記金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。
【0070】
前記金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。また、前記金属化合物の含有量は、所望とする(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の中和度に応じて、適宜調整すればよい。
【0071】
前記ゴルフボール用ゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。
【0072】
前記ゴルフボール用ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの質量を調整するための質量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤として特に好ましいのは、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、加硫助剤として機能して、硬化物(例えば、コア全体)の硬度を高めるものと考えられる。
【0073】
前記充填剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0074】
しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0075】
前記ゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、ゴルフボールの構成部材のいずれの部分に用いてもよい。例えば、ワンピースゴルフボール本体、コア、あるいは、中間層に好適に用いることができる。これらの中でも、前記ゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、単層コア、内層コアおよび外層コアからなる二層コアの内層コアおよび/または外層コアに好適に用いることができる。
【0076】
[ゴルフボール]
本発明には、構成部材の少なくとも一部が、前記ゴルフボール用ゴム組成物の硬化物から形成されているゴルフボールが含まれる。本発明のゴルフボールの好ましい態様では、コアと前記コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアの少なくとも一部が、前記ゴルフボール用ゴム組成物の硬化物から形成されている。以下、本発明のゴルフボールについて説明する。
【0077】
前記コアの一部が、前記ゴルフボール用ゴム組成物の硬化物から形成されている場合、コア表面が、前記数式(1)を満足することが好ましい。具体的には、コア表面から厚み0.5mmの領域が、前記数式(1)を満足することが好ましい。なお、コア表面を形成する硬化物の物性は、コアから試験片を切り出すことで確認できる。また、コア表面を形成する硬化物の物性は、コアの形成に用いられたゴム組成物を使用し、コア成型時と同様の条件で作製したスラブを評価することでも確認できる。
【0078】
[コア]
本発明のゴルフボールが有するコアは、前述のゴルフボール用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより得ることができる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130℃~200℃、圧力2.9MPa~11.8MPaで10分間~60分間で行われる。例えば、前記ゴルフボール用ゴム組成物を130℃~200℃で10分間~60分間加熱することが好ましい。
【0079】
前記コアは、コアの表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で、50以上であることが好ましく、55以上であることがより好ましく、60以上であることがさらに好ましく、95以下であることが好ましく、90以下であることがより好ましく、85以下であることがさらに好ましい。前記コアの表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で50以上であれば、コアの反発性がより良好になる。また、前記コアの表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で95以下であれば、ドライバーショットをした時の打球感がより向上する。
【0080】
前記コアは、コア中心からコア半径の75%地点の硬度(H75)が、ショアC硬度で、68以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、72以上であることがさらに好ましく、82以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましく、78以下であることがさらに好ましい。前記コアの中心からコア半径の75%地点の硬度(H75)が、ショアC硬度で68以上であれば、反発性が良好になる。また、前記コアの中心からコア半径の75%地点の硬度(H75)がショアC硬度で82以下であれば、ドライバーショット時の打感が向上する。
【0081】
前記コアの中心硬度(Ho)は、ショアC硬度で、30以上であることが好ましく、35以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましい。コアの中心硬度(Ho)がショアC硬度で30以上であれば、軟らかくなりすぎず、反発性が良好となる。また、コアの中心硬度(Ho)は、ショアC硬度で70以下が好ましく、68以下であることがより好ましく、67以下であることがさらに好ましい。前記中心硬度(Ho)がショアC硬度で70以下であれば、硬くなり過ぎず、打球感が良好となる。
【0082】
前記コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)は、ショアC硬度で、5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましく、35以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、28以下であることがさらに好ましい。コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)がショアC硬度で5以上であれば、反発性の良いゴルフボールが得られる。また、コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)がショアC硬度で35以下であれば、ドライバーショットをした時の打球感がより向上したゴルフボールが得られる。
【0083】
前記コアは、コア中心からコア半径の75%地点の硬度(H75)が、ショアC硬度で70~80のときに、硬度H75に対するコア表面硬度(Hs)の比(Hs/H75)が、0.90以上であることが好ましく、0.93以上であることがより好ましく、0.95以上であることがさらに好ましく、1.20以下であることが好ましく、1.15以下であることがより好ましく、1.10以下であることがさらに好ましい。前記比(Hs/H75)が前記範囲内であれば、反発性を保ちつつ打球感を一層高めることができる。
【0084】
前記コアの直径は、34.8mm以上であることが好ましく、36.8mm以上であることがより好ましく、38.8mm以上であることがさらに好ましく、42.2mm以下であることが好ましく、41.8mm以下であることがより好ましく、41.2mm以下であることがさらに好ましく、40.8mm以下であることが最も好ましい。前記コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
【0085】
前記コアは、直径34.8mm~42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、2.0mm以上であることが好ましく、2.3mm以上であることがより好ましく、2.5mm以上であることがさらに好ましく、5.0mm以下が好ましく、4.5mm以下であることがより好ましく、4.3mm以下であることがさらに好ましい。前記圧縮変形量が、2.0mm以上であれば打球感がより良好となり、5.0mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0086】
[カバー]
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱ケミカル(株)から商品名「テファブロック」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
【0087】
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2~8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン-(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
【0088】
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。アイオノマー樹脂を使用する場合には、熱可塑性スチレンエラストマーを併用することも好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中のポリウレタンまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0089】
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0090】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下である。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
【0091】
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、所望のゴルフボールの性能に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、飛距離を重視するディスタンス系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上がさらに好ましく、80以下が好ましく、70以下がより好ましく、68以下がさらに好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度を50以上にすることにより、ドライバーショットおよびアイアンショットにおいて、高打出角で低スピンのゴルフボールが得られ、飛距離が向上する。また、カバー用組成物のスラブ硬度を80以下とすることにより、耐久性に優れたゴルフボールが得られる。また、コントロール性を重視するスピン系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、50未満が好ましく、45以下がより好ましく、40以下がさらに好ましく、20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度が、ショアD硬度で50未満であれば、アプローチショットのスピン量が高くなり、グリーン上で止まりやすいゴルフボールが得られる。また、スラブ硬度を20以上とすることにより、耐擦過傷性が向上する。複数のカバー層の場合は、各層を構成するカバー用組成物のスラブ硬度は、同一あるいは異なっても良い。
【0092】
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0093】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
【0094】
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa~15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃~250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒~5秒で注入し、10秒~60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0095】
カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個以上、500個以下であれば、ディンプルの効果が十分に得られる。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0096】
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上である。カバーの厚みが0.3mm以上であれば、カバーの耐久性や耐摩耗性が良好となる。複数のカバー層の場合は、複数のカバー層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0097】
前記カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、9μm以上がさらに好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm以上であれば、継続的に使用しても塗膜が摩耗消失にくく、膜厚が50μm以下であればディンプルの効果が十分に発揮され得る。
【0098】
[ゴルフボール]
本発明のゴルフボールの構造は、コアと、前記コアを被覆する一層以上のカバーとを有するものであれば、特に限定されない。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、球状コア2を被覆するカバー3とを有する。このカバーの表面には、多数のディンプル31が形成されている。このゴルフボール1の表面のうち、ディンプル31以外の部分は、ランド32である。このゴルフボール1は、カバー3の外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0099】
前記コアの形状は、球状であることが好ましい。また、前記コアの構造は、単層構造と多層構造のいずれもよいが、単層構造であることが好ましい。単層構造のコアは、多層構造の界面における打撃時のエネルギーロスがなく、反発性が向上するからである。また、カバーは、一層以上の構造であればよく、単層構造、あるいは、二層以上の多層構造を有していてもよい。本発明のゴルフボールとしては、例えば、コアと前記コアを被覆するように配設された単層のカバーとからなるツーピースゴルフボール;コアと前記コアを被覆するように配設された二層以上のカバーを有するマルチピースゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む)などを挙げることができる。上記いずれの構造のゴルフボールにも本発明を好適に利用できる。
【0100】
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、本発明のゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0101】
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.3mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは3.3mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【実施例0102】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0103】
[評価方法]
(1)有効架橋密度(mmol/cm3)
ゴルフボール用ゴム硬化物の有効架橋密度は、ゴム硬化物のスラブサンプルの膨潤測定から算出した。ゴム組成物を混練ロールにより混練し、170℃で30分間熱処理して、厚み0.5mm、長さ12cm、幅14cmのスラブを作製した。このスラブから、厚み0.5mm、2cm×2cmのスラブを切り出し、測定用のスラブサンプルとした。
【0104】
膨潤測定は、得られたスラブサンプルをトルエン(分子量:92mol/g)に40℃24時間浸漬して実施した。膨潤前後のスラブ質量(23℃)を測定し、Flory-Rehnerの式を用いて有効架橋密度を算出した。
【0105】
【数1】
ν:有効架橋密度
V
0:溶剤(トルエン)のモル体積(108.15cm
3/mol)
μ:基材ゴムと溶剤(トルエン)の相互作用定数(0.49)
【0106】
【数2】
V
BR:ゴム組成物中の基材ゴムの体積
V
T:膨潤により吸収されたトルエンの体積
W
F:膨潤前サンプル質量
W
S:膨潤後サンプル質量
v
F:ゴム組成物中の基材ゴムの質量分率
ρ:基材ゴムの密度
ρ
T:トルエン(37℃)の密度(0.8507g/cm
3)
【0107】
(2)引張試験
ゴム硬化物の引張試験は、JIS K6254(2016)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を混練ロールにより混練し、170℃で30分間熱処理して、厚さ2.0mmのスラブを作製した。このスラブから2つの試験片を打ち抜き、23℃で2週間保存した。試験片の形状は、短冊状4号形(幅15mm、全長100mm、厚さ2.0mm、標線間距離20mm)とした。
精密万能試験機(島津製作所社製、AUTOGRAPH(登録商標) AG-X plus)を用いて、引張試験を行った。試験温度は23℃、つかみ具の間隔は60mm、つかみ具の移動速度は50mm/minとした。引張試験では、試験片を破断させるまで伸びを与え、各伸びにおける引張応力を記録し、下記式により引張弾性率を算出した。
引張弾性率=(σ0.25-σ0.05)/(0.0025-0.0005)
σ0.25:伸び0.25%における引張応力
σ0.05:伸び0.05%における引張応力
【0108】
(3)コア硬度
H.バーレイス社製自動硬度計デジテストIIを用いて、コアの表面部において測定したショアC硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、また、コアを半球状に切断し、切断面の中心、および、中心からコア半径の所定の距離の硬度を測定した。なお、中心からコア半径の所定の距離の硬度は、コア断面の中心からコア半径の所定距離の4点で硬度を測定して、これらを平均することにより算出した。
【0109】
(4)圧縮変形量(mm)
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
【0110】
(5)スラブ硬度(カバー用組成物)
カバー用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
【0111】
(6)耐久性
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(住友ゴム工業社製、XXIO S ロフト11°)を取り付け、ヘッドスピード45m/秒でゴルフボールを繰り返し打撃し、割れが生じるまでの打撃回数を測定した。なお、測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの打撃回数とした。
評価基準:
〇:比較例(標準、No.19)に対し4%以上耐久性向上
△:比較例(標準、No.19)に対し2%以上4%未満耐久性向上
×:比較例(標準、No.19)と同等、もしくはそれ以下
【0112】
(7)打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、ドライバーを用いた実打テストを行って、各人の打撃時のフィーリングを下記基準で評価させた。
評価基準
〇:比較例(標準、No.19)と比較してフィーリングが良いと回答した人が8人以上
△:比較例(標準、No.19)と比較してフィーリングが良いと回答した人が5~7人
×:比較例(標準、No.19)に対して良とした回答が4人以下
【0113】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1~3に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、30分間加熱プレスすることにより直径39.7mmの球状コアを得た。なお、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.3gとなるように適量加えた。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
表1~3で用いた材料は下記の通りである。
BR730:JSR社製、ハイシスポリブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=95質量%、1,2-ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル社製、アクリル酸亜鉛(ステアリン酸亜鉛10%表面処理)
DCP:日本油脂社製、パークミル(登録商標)D(1分間半減期温度:175.2度)(ジクミルパーオキサイドの純度は98%以上)
酸化亜鉛:INDOLYSAGHT社製
PCTP-Zn:富士フイルム和光純薬社製、ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩
プロブコール:東京化成工業社製2,6-ジ-tert-ブチル-4-({2-[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)スルファニル]プロパン-2-イル}スルファニル)フェノール
4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール):東京化成工業社製
アクリル酸2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニル:東京化成工業社製
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
【0118】
(2)カバーの作製およびゴルフボールの作製
表4に示した配合のカバー用材料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状のカバー用組成物を調製した。カバー用組成物の押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160~230℃に加熱された。得られたカバー用組成物を厚さ1.5mmとなるように上述のようにして得られた球状コア上に射出成形して、球状コアと前記コアを被覆するカバーを有するゴルフボールを作製した。得られたゴルフボールについて評価した結果を、表1~3に併せて示した。
【0119】
【0120】
表4で用いた材料は以下の通りである。
ハイミラン(登録商標)1555:三井・デュポン・ポリケミカル社製、Na中和アイオノマー
ハイミラン1605:三井・デュポン・ポリケミカル社製、Na中和アイオノマー
ハイミランAM7329:三井・デュポン・ポリケミカル社製、Zn中和アイオノマー
A-220:石原産業社製、二酸化チタン
JF-90:城北化学社製、光安定剤
【0121】
表1~3の結果から、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、および、(c)架橋開始剤を含有するゴルフボール用ゴム組成物を硬化してなり、硬化物の有効架橋密度DC(mmol/cm3)と0.05%~0.25%歪時の引張弾性率TM(MPa)とが、数式(1)の関係を満足するゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、打球感を低下させることなく、優れた耐久性をゴルフボールに付与できることが分かる。
TM-333.32×ln(DC)>100・・・(1)
また、本発明のゴルフボールは、良好な打球感を維持しつつ耐久性に優れている。
本発明(2)のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(d)ラジカル捕捉剤を含有する本発明(1)に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物である。
本発明(3)のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、前記(d)ラジカル捕捉剤が、ヒンダードフェノール系化合物またはヒンダードアミン系化合物である本発明(2)に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物である。
本発明(4)のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、前記ヒンダードフェノール系化合物は、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-({2-[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)スルファニル]プロパン-2-イル}スルファニル)フェノール、および、アクリル酸2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルよりなる群から選択される一種である本発明(3)に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物である。
本発明(5)のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(a)基材ゴム100質量部に対して、前記(d)ラジカル捕捉剤を0.5質量部以上、4質量部以下含有する本発明(1)~4のいずれか一項に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物である。
本発明(6)のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(a)基材ゴム100質量部に対して、前記(d)ラジカル捕捉剤を0.5質量部以上、2質量部未満含有する本発明(1)~(4)のいずれか一項に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物である。
本発明(7)のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(a)基材ゴム100質量部に対して、前記(d)ラジカル捕捉剤を0.5質量部以上、1.5質量部以下含有する本発明(1)~(4)のいずれか一項に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物である
本発明(8)のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物は、前記ゴルフボール用ゴム組成物が、(e)有機硫黄化合物として、チオール類、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、および、チアゾール類よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する本発明(1)~(7)のいずれか一項に記載のゴルフボール用組成物の硬化物。
本発明(9)のゴルフボールは、構成部材の少なくとも一部が、本発明(1)~(8)のいずれか一項に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物から形成されていることを特徴とする。
本発明(10)のゴルフボールは、コアと前記コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアが、本発明(1)~(8)のいずれか一項に記載のゴルフボール用ゴム組成物の硬化物からなることを特徴とする。
本発明(11)のゴルフボールは、前記コアは、コア中心からコア半径の75%地点の硬度(H75)が、ショアC硬度で70~80のときに、硬度H75に対するコア表面硬度(Hs)の比(Hs/H75)が、0.90以上、1.20以下である本発明(10)に記載のゴルフボールである。