(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166844
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット及びその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20231115BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20231115BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/2465
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077667
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】堀 幹裕
(72)【発明者】
【氏名】岩田 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】島田 大輝
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA28
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE26
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】燃料電池ユニットにおいて燃料電池スタックと電気機器との間を電気的に接続するバスバーの柔軟性及び組み付け性を両立させること。
【解決手段】燃料電池ユニットは、複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、電気機器と、燃料電池スタックの端子と電気機器の端子との間を電気的に接続するバスバーとを備える。バスバーは、複数の金属板が互いに接合されることなく積層された非接合部を含む。複数の金属板は、第1金属板と、第1金属板よりも厚い第2金属板とを含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、
電気機器と、
前記燃料電池スタックの端子と前記電気機器の端子との間を電気的に接続するバスバーと
を備え、
前記バスバーは、複数の金属板が互いに接合されることなく積層された非接合部を含み、
前記複数の金属板は、第1金属板と、前記第1金属板よりも厚い第2金属板とを含む
燃料電池ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池ユニットであって、
前記非接合部は、前記複数の金属板が屈曲した屈曲部を含んでいる
燃料電池ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池ユニットであって、
前記第2金属板の数は、前記第1金属板の数よりも少ない
燃料電池ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池ユニットであって、
前記第2金属板の前記数は1である
燃料電池ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料電池ユニットであって、
前記第1金属板の数は2以上であり、
前記第2金属板は、前記2以上の第1金属板の間に挟まれている
燃料電池ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池ユニットであって、
前記第2金属板は、第1面と、前記第1面と逆の第2面とを有し、
前記第2金属板の前記第1面側に存在する前記第1金属板の数は、前記第2金属板の前記第2面側に存在する前記第1金属板の数と等しい
燃料電池ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料電池ユニットであって、
前記複数の金属板のうち前記第2金属板が重力方向において最も下に配置されている
燃料電池ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料電池ユニットであって、
前記複数の金属板のうち前記第2金属板が重力方向において最も上に配置されている
燃料電池ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料電池ユニットであって、
前記バスバーは、更に、前記燃料電池スタックの前記端子と接続される第1接続部と、前記電気機器の前記端子と接続される第2接続部とを含み、
前記非接合部は、前記第1接続部と前記第2接続部との間に存在している
燃料電池ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料電池ユニットであって、
前記非接合部は、前記複数の金属板が屈曲した屈曲部を含み、
前記第2接続部に最も近い前記屈曲部において、前記複数の金属板のうち前記第2金属板が最も外側に位置している
燃料電池ユニット。
【請求項11】
請求項9に記載の燃料電池ユニットであって、
前記非接合部において前記第2金属板は前記第1金属板よりも長い
燃料電池ユニット。
【請求項12】
請求項9に記載の燃料電池ユニットであって、
前記第1接続部及び前記第2接続部の各々において、前記複数の金属板は互いに接合されている
燃料電池ユニット。
【請求項13】
複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと電気機器とを含む燃料電池ユニットの組み立て方法であって、
第1金属板と前記第1金属板よりも厚い第2金属板とを含む複数の金属板が積層されたバスバーを形成する工程と、
前記バスバーの第1接続部を前記燃料電池スタックの端子と電気的に接続する工程と、
前記バスバーの第2接続部を前記電気機器の端子と電気的に接続する工程と
を含み、
前記バスバーを形成する工程は、前記第1接続部と前記第2接続部との間の非接合部においては前記複数の金属板を互いに接合することなく、前記第1接続部及び前記第2接続部の各々において前記複数の金属板を互いに接合することを含む
燃料電池ユニットの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バスバーを含む燃料電池ユニット及びその組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料電池ユニットを開示している。燃料電池ユニットは、複数の燃料電池セルが積層されたセル積層体を含む燃料電池スタックを有している。燃料電池ユニットは、更に、燃料電池スタックに電気的に接続された電気機器を有している。バスバーは、燃料電池スタックの端子と電気機器の端子との間を電気的に接続するように設けられる。セル積層体の積層方向のサイズは、環境に応じて変化する。セル積層体のサイズの変化に連動して、燃料電池スタックの端子の位置も変化する。バスバーは、燃料電池スタックの端子の変位に追従して変形することができるようにU字型の屈曲部(追従部)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池ユニットにおいて燃料電池スタックの端子と電気機器の端子との間を電気的に接続するバスバーについて考える。燃料電池スタックに含まれるセル積層体は、環境に応じて積層方向に膨張/収縮する。そのようなセル積層体の膨張/収縮に連動して、燃料電池スタックの端子の位置も変化する。また、製造ばらつき等により、燃料電池スタックの端子と電気機器の端子との間の相対位置関係にばらつきが発生する可能性もある。このような環境依存変位や相対位置ばらつきを吸収するためには、バスバーが「柔軟性(flexibility)」を備えていることが望ましい。
【0005】
その一方で、バスバーが過度に柔軟である場合、燃料電池スタックの端子と電気機器の端子との間にバスバーを組み付ける作業を円滑に行いづらくなる。すなわち、バスバーの「組み付け性(assemblability)」が低下する。
【0006】
本開示の1つの目的は、燃料電池ユニットにおいて燃料電池スタックと電気機器との間を電気的に接続するバスバーの柔軟性及び組み付け性を両立させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点は、燃料電池ユニットに関連する。
燃料電池ユニットは、
複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、
電気機器と、
燃料電池スタックの端子と電気機器の端子との間を電気的に接続するバスバーと
を備える。
バスバーは、複数の金属板が互いに接合されることなく積層された非接合部を含む。
複数の金属板は、第1金属板と、第1金属板よりも厚い第2金属板とを含む。
【0008】
第1の観点によれば、バスバーは、複数の金属板が互いに接合されることなく積層された非接合部を含んでいる。よって、複数の金属板が接合され1枚の厚い金属板となっている場合と比較して、非接合部の柔軟性は顕著に高くなる。非接合部の柔軟性が高いことは、非接合部が変形しやすいことを意味する。非接合部が変形しやすいため、端子の環境依存変位や端子間の相対位置関係のばらつきを容易に吸収することが可能となる。また、複数の金属板が積層されているため、非接合部全体として断面積は十分確保され、抵抗の増大が防止される。更に、非接合部の複数の金属板は、第1金属板と、第1金属板よりも厚い第2金属板を含んでいる。比較的厚い第2金属板は、第1金属板よりも剛性が高く、重力によってたわみにくい。よって、第2金属板は、組み付け時のバスバー(非接合部)の姿勢(形状)を保つことに寄与する。すなわち、第2金属板によってバスバーの組み付け性が向上する。このように、第1の観点によれば、バスバーに関して、「低抵抗」、「柔軟性」、及び「組み付け性」の全てを確保することが可能となる。
【0009】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
非接合部は、複数の金属板が屈曲した屈曲部を含んでいる。
【0010】
第2の観点によれば、非接合部が屈曲部を含んでいるため、非接合部を2次元的に変形させやすくなる。従って、端子の様々な環境依存変位を容易に吸収することが可能となる。また、端子間の相対位置関係の様々なばらつきを容易に吸収することが可能となる。
【0011】
第3の観点は、第1又は第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
第2金属板の数は、第1金属板の数よりも少ない。第2金属板の数は1であってもよい。
【0012】
第3の観点によれば、柔軟性を不必要に低下させることなく、バスバーに関して低抵抗、柔軟性、及び組み付け性を効率的に確保することが可能となる。
【0013】
第4の観点は、第1~第3の観点のいずれかにおいて、次の特徴を更に有する。
第1金属板の数は2以上である。第2金属板は、2以上の第1金属板の間に挟まれている。
第2金属板は、第1面と、第1面と逆の第2面とを有する。第2金属板の第1面側に存在する第1金属板の数は、第2金属板の第2面側に存在する第1金属板の数と等しくてもよい。
【0014】
第4の観点によれば、第1金属板が、第2金属板によって制約されることなく、より自由に変形することが可能となる。従って、非接合部の柔軟性が更に向上する。
【0015】
第5の観点は、第1~第3の観点のいずれかにおいて、次の特徴を更に有する。
複数の金属板のうち第2金属板が重力方向において最も下に配置されている。
【0016】
第5の観点によれば、第1金属板の下方に第2金属板が存在しており、第1金属板が第2金属板によって支えられる。従って、重力に起因する第1金属板のたわみが防止される。その結果、第1金属板がたわんで電気機器等の他の部品と接触することが防止される。
【0017】
第6の観点は、第1~第3の観点のいずれかにおいて、次の特徴を更に有する。
複数の金属板のうち第2金属板が重力方向において最も上に配置されている。
【0018】
第6の観点によれば、第1金属板は、重力方向に分散しやすいため、束になりにくい。このことは、非接合部の柔軟性の観点から好ましい。
【0019】
第7の観点は、第1~第3の観点のいずれかにおいて、次の特徴を更に有する。
バスバーは、更に、燃料電池スタックの端子と接続される第1接続部と、電気機器の端子と接続される第2接続部とを含む。
非接合部は、第1接続部と第2接続部との間に存在している。
【0020】
第8の観点は、第7の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
非接合部は、複数の金属板が屈曲した屈曲部を含む。
第2接続部に最も近い屈曲部において、複数の金属板のうち第2金属板が最も外側に位置している。
非接合部において第2金属板は第1金属板よりも長くてもよい。
【0021】
第8の観点によれば、バスバー全体としての最大応力値を効果的に抑制することが可能となる。
【0022】
第9の観点は、第7の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
第1接続部及び第2接続部の各々において、複数の金属板は互いに接合されている。
【0023】
第9の観点によれば、バスバーの第1接続部と第2接続部の剛性が高くなり、端子への接続が容易になる。
【0024】
第10の観点は、燃料電池ユニットの組み立て方法に関連する。
燃料電池ユニットは、複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、電気機器とを含む。
組み立て方法は、
第1金属板と第1金属板よりも厚い第2金属板とを含む複数の金属板が積層されたバスバーを形成する工程と、
バスバーの第1接続部を燃料電池スタックの端子と電気的に接続する工程と、
バスバーの第2接続部を電気機器の端子と電気的に接続する工程と
を含む。
バスバーを形成する工程は、第1接続部と第2接続部との間の非接合部においては複数の金属板を互いに接合することなく、第1接続部及び第2接続部の各々において複数の金属板を互いに接合することを含む。
【0025】
第10の観点によれば、上述の第1の観点及び第9の観点と同じ効果が得られる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、燃料電池ユニットのバスバーに関して、「低抵抗」、「柔軟性」、及び「組み付け性」の全てを確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本開示の実施の形態に係る燃料電池ユニットの構成例を示す概略図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る燃料電池ユニットにおけるバスバーの電気的接続の一例を説明するための概略図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係る燃料電池ユニットの組み立て方法を説明するための図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る燃料電池ユニットの組み立て方法を説明するための図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る燃料電池ユニットの組み立て方法を説明するための図である。
【
図6】本開示の実施の形態に係る燃料電池ユニットの組み立て方法を説明するための図である。
【
図7】本開示の実施の形態に係る燃料電池ユニットの組み立て方法を説明するための図である。
【
図8】本開示の実施の形態に係る複数の金属板を利用したバスバーの一例を説明するための概略図である。
【
図10】本開示の実施の形態に係る複数の金属板を利用したバスバーの他の例を説明するための概略図である。
【
図11】本開示の実施の形態に係るバスバーの第1の例を示す概略図である。
【
図12】本開示の実施の形態に係るバスバーの第2の例を示す概略図である。
【
図13】本開示の実施の形態に係るバスバーの第3の例を示す概略図である。
【
図14】本開示の実施の形態に係るバスバーの第4の例を示す概略図である。
【
図15】本開示の実施の形態に係るバスバーの第5の例を示す概略図である。
【
図16】本開示の実施の形態に係るバスバーの第6の例を示す概略図である。
【
図17】本開示の実施の形態に係るバスバーの第6の例による効果を説明するための概念図である。
【
図18】本開示の実施の形態に係るバスバーの第7の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0029】
1.燃料電池ユニットの全体構成
図1は、本実施の形態に係る燃料電池ユニット1の構成例を示す概略図である。燃料電池ユニット1は、燃料電池スタック10と電気機器部100を含んでいる。燃料電池スタック10と電気機器部100とは一体的に組み合わされ、それにより燃料電池ユニット1が構成される。
【0030】
燃料電池スタック10は、複数の燃料電池セル11が直列に積層されたセル積層体12を含んでいる。各燃料電池セル11は、電解質膜と、電解質膜の両側のカソード極及びアノード極を含んでいる。以下の説明において、S方向は、複数の燃料電池セル11の積層方向を表す。T方向は、各燃料電池セル11と平行な方向を表す。S方向とT方向は直交している。
【0031】
燃料電池スタック10は、更に、第1電池端子21及び第2電池端子22を含んでいる。第1電池端子21及び第2電池端子22は、セル積層体12のS方向における両端に接続されている。例えば、第1電池端子21及び第2電池端子22の各々はプレート形状を有する。第1電池端子21及び第2電池端子22の材料としては、銅等が例示される。
【0032】
スタックケース30は、燃料電池スタック10のケースである。スタックケース30は、エンドプレート31、32とエンドプレート31、32間を連結する連結部33、34から構成されている。スタックケース30の材料としては、ステンレス、アルミニウム合金、等が例示される。セル積層体12は、スタックケース30内に収容されている。第1電池端子21とエンドプレート31との間には、インシュレータ41、プレッシャープレート50、及びばね60が配置されている。第2電池端子22とエンドプレート32との間には、インシュレータ42が配置されている。ばね60の反力により、セル積層体12にはS方向の圧縮荷重が付与される。セル積層体12にかかる圧縮荷重を一定範囲内に維持することができるため、発電性能やシール性能を維持しやすくなる。
【0033】
第1電池端子21と第2電池端子22のそれぞれの一端は、セル積層体12の外に突出し、電気機器部100の方に延びている。
【0034】
電気機器部100は、電気機器110、第1端子台121、第2端子台122、及びケース130を含んでいる。
【0035】
電気機器110は、燃料電池スタック10と電気的に接続される。例えば、電気機器110は、燃料電池スタック10の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータである。他の例として、電気機器110は、燃料電池スタック10の出力電圧を降圧する降圧コンバータであってもよい。電気機器110は、昇降圧コンバータであってもよい。更に他の例として、電気機器110は、燃料電池スタック10からの直流出力を交流に変換するインバータであってもよい。その他、燃料電池スタック10と電気的に接続されるものであれば、電気機器110は何でもよい。
【0036】
第1端子台121及び第2端子台122は、電気機器110の端子である。
【0037】
電気機器110、第1端子台121、及び第2端子台122は、ケース130内に収容されている。
【0038】
燃料電池スタック10と電気機器部100が一体的に組み合わされた状態において、電気機器110は、燃料電池スタック10から離間している。
図1に示される例では、燃料電池スタック10と電気機器110は、T方向に離間している。そのような燃料電池スタック10と電気機器110とを電気的に接続するためにバスバーが用いられる。
【0039】
より詳細には、燃料電池ユニット1は、第1バスバー210及び第2バスバー220を含んでいる。第1バスバー210は、燃料電池スタック10の第1電池端子21と電気機器110の第1端子台121との間を電気的に接続する。一方、第2バスバー220は、燃料電池スタック10の第2電池端子22と電気機器110の第2端子台122との間を電気的に接続する。典型的には、第1バスバー210及び第2バスバー220の各々はプレート形状を有する。第1バスバー210及び第2バスバー220の材料としては、銅、アルミニウム、銅あるいはアルミニウムを多く含む合金、等が例示される。
【0040】
図2は、燃料電池ユニット1における第1バスバー210の電気的接続の一例を説明するための概略図である。第1バスバー210は、第1電池端子21と接続される第1接続部210Aと、第1端子台121と接続される第2接続部210Bを含んでいる。第1接続部210Aと第2接続部210Bは、第1バスバー210上で互いに離れて位置している。例えば、第1接続部210Aと第2接続部210Bは、第1バスバー210の両端に位置している。第1接続部210Aは、第1電池端子21に固定される。一方、第2接続部210Bは、第1端子台121に固定される。
【0041】
図2に示される例では、第1電池端子21の先端部21Aが折り曲げられている。第1電池端子21の先端部21Aは、S方向と平行であり、T方向と交差している。第1バスバー210の第1接続部210Aも、S方向と平行であり、T方向と交差している。また、第1電池端子21の先端部21Aにはナット25が接合されている。そして、第1電池端子21の先端部21Aと第1バスバー210の第1接続部210Aが、ボルト300によって締結される。
【0042】
一方、第1端子台121は、T方向と平行であり、S方向と交差している。第1バスバー210の第2接続部210Bも、T方向と平行であり、S方向と交差している。また、第1端子台121にはナット125が接合されている。そして、第1端子台121と第1バスバー210の第2接続部210Bが、ボルト400によって締結される。
【0043】
図2に示される例では、第1接続部210Aに平行な面と第2接続部210Bに平行な面とが交差している。この場合、第1バスバー210は、第1接続部210Aと第2接続部210Bとの間に少なくとも1つの屈曲部を有する。屈曲部の数は特に限定されない。屈曲部の曲率も特に限定されない。第1接続部210Aと第2接続部210Bとの間の部分が大きな円弧状に曲げられていてもよい。
【0044】
第2バスバー220も第1バスバー210と同様である。
【0045】
2.燃料電池ユニットの組み立て方法
図3~
図7は、
図1及び
図2で示された燃料電池ユニット1の組み立て方法を説明するための図である。
図3~
図7においては、重力方向が矢印で示されている。
【0046】
まず、燃料電池スタック10が用意される。上述の通り、燃料電池スタック10の第1電池端子21と第2電池端子22のそれぞれの一端は、セル積層体12の外に突出している。
図3に示されるように、外に突出した第1電池端子21及び第2電池端子22が上方から見えるように、燃料電池スタック10が置かれる。尚、突出している第1電池端子21と第2電池端子22の先端部が折り曲げられているため(
図2参照)、突出部の高さは低く抑えられている。
【0047】
次に、
図4に示されるように、予め形成された第1バスバー210が、ボルト300によって上方から第1電池端子21に締結される(
図2参照)。このとき、第1電池端子21の先端部が折り曲げられているため、第1バスバー210を上方からボルト300で締結しやすい。同様に、予め形成された第2バスバー220が、ボルト300によって上方から第2電池端子22に締結される。尚、本実施の形態に係るバスバーの詳細な構造とその形成方法については後に詳しく説明する。
【0048】
次に、
図5に示されるように、電気機器部100が燃料電池スタック10の上に載置される。このとき、電気機器部100の下方は開口している。燃料電池スタック10のスタックケース30と電気機器部100のケース130は、ボルト(図示されない)により締結される。電気機器部100のケース130の側面には開口部131が設けられている。
【0049】
次に、
図6に示されるように、ケース130の側面の開口部131を通してボルト400が挿入される。そして、第1バスバー210が、ボルト400によって側方から第1端子台121に締結される(
図2参照)。同様に、第2バスバー220が、ボルト400によって側方から第2端子台122に締結される
【0050】
最後に、
図7に示されるように、ケース130の側面の開口部131がカバーされる。
【0051】
3.バスバーの特徴
燃料電池スタック10に含まれるセル積層体12は、環境に応じてS方向(積層方向)に膨張/収縮する。例えば、セル積層体12は、高温時には膨張し、低温時には収縮する。他の例として、燃料電池セル11内部の相対湿度が高いときには、燃料電池セル11内の電解質膜が吸水し膨張する。更に他の例として、セル積層体12に圧縮荷重が長期間付与されると、樹脂部材が僅かにクリープし、セル積層体12が収縮する。
【0052】
セル積層体12がS方向に膨張/収縮すると、それに連動して端子位置がS方向に変化する。典型的には、ばね60側に配置された第1電池端子21の位置が、セル積層体12の膨張/収縮に連動してS方向に変化する。このような第1電池端子21の環境依存変位を吸収するためには、第1バスバー210が柔軟性(flexibility)を備えていることが望ましい。
【0053】
また、製造ばらつき等により、燃料電池スタック10の第1電池端子21と電気機器110の第1端子台121との間の相対位置関係にばらつきが発生する可能性がある。このような相対位置ばらつきを吸収するためには、第1バスバー210が柔軟性を備えていることが望ましい。
【0054】
同様に、製造ばらつき等により、燃料電池スタック10の第2電池端子22と電気機器110の第2端子台122との間の相対位置関係にばらつきが発生する可能性がある。このような相対位置ばらつきを吸収するためには、第2バスバー220が柔軟性を備えていることが望ましい。
【0055】
以上の観点から、本開示は、適切な柔軟性を有するバスバーを提案する。以下、第1バスバー210を例に挙げて説明を行う。同様の特徴は第2バスバー220にも適用可能である。
【0056】
以下の説明では、簡単のため、第1バスバー210を単に「バスバー210」と呼び、燃料電池スタック10の第1電池端子21を単に「電池端子21」と呼び、電気機器110の第1端子台121を単に「端子121」と呼ぶ。
【0057】
3-1.柔軟性の確保
板状部材の曲げ剛性は、ヤング率と断面二次モーメントの積で表される。断面二次モーメントは、板厚の3乗に比例する。従って、板厚が小さくなるにつれて、板状部材の曲げ剛性は低くなる。言い換えれば、板厚が小さくなるにつれて、板状部材の柔軟性は高くなる。
【0058】
バスバー210の柔軟性を高めるために、バスバー210を単純に薄くすることが考えられる。しかしながら、バスバー210の断面積が小さくなると、抵抗が増加し、大電流を流しにくくなり、且つ、発熱も増大する。よって、バスバー210の断面積はある程度必要である。
【0059】
そこで、本実施の形態によれば、1枚の金属板の代わりに複数の薄い金属板でバスバー210が構成される。つまり、1枚の金属板が複数の薄い金属板に分割される。上述の通り曲げ剛性は板厚の3乗に比例するため、全体としての板厚が同じであっても、1枚の金属板の場合よりも複数の薄い金属板の場合の方が柔軟性は高くなる。すなわち、抵抗を増加させることなく、バスバー210の柔軟性を増加させることが可能となる。
【0060】
図8は、複数の金属板200を用いたバスバー210の一例を説明するための概略図である。複数の金属板200は積層されている。ここで、「積層されている」とは、層状に且つ並列的に配置されていることを意味する。隣接する金属板200同士は、必ずしも接触している必要は無い。金属板200の材料としては、銅、アルミニウム、銅あるいはアルミニウムを多く含む合金、等が例示される。
【0061】
バスバー210は、燃料電池スタック10の電池端子21と接続される第1接続部210Aと、電気機器110の端子121と接続される第2接続部210Bを含んでいる。第1接続部210Aと第2接続部210Bは、バスバー210上で互いに離れて位置している。例えば、第1接続部210Aと第2接続部210Bは、バスバー210の両端に位置している。
【0062】
第1接続部210Aと第2接続部210Bの各々において、複数の金属板200同士は互いに接合されている。言い換えれば、複数の金属板200同士を互いに接合することによって、第1接続部210A及び第2接続部210Bが形成されている。例えば、複数の金属板200は、加熱圧着により接合される。他の例として、複数の金属板200は、かしめにより接合されてもよい。更に他の例として、複数の金属板200は、溶接により接合されてもよい。複数の金属板200が接合されるため、第1接続部210Aと第2接続部210Bの剛性は高くなり、電池端子21及び端子121への接続が容易になる。好ましくは、複数の金属板200は全面で接合される。複数の金属板200が全面で接合されると、第1接続部210A及び第2接続部210Bは一枚の板として振る舞うことができ、それにより、ボルト締付時に最も外側の金属板200がめくれることが防止される。
【0063】
バスバー210の第1接続部210Aと第2接続部210Bとの間の部分を、以下、「非接合部210C」と呼ぶ。非接合部210Cでは、複数の金属板200は、互いに接合(結合)されることなく積層されている。つまり、非接合部210Cでは、複数の金属板200は、互いに独立して積層されている。「積層されている」とは、層状に且つ並列的に配置されていることを意味する。隣接する金属板200同士は接触していてもよいし、接触していなくてもよい。いずれにせよ、非接合部210Cの複数の金属板200は、互いに接合(結合)されることなく独立している。非接合部210Cの複数の金属板200は、第1接続部210Aと第2接続部210Bとの間に並列的に接続されていると言うこともできる。
【0064】
好ましくは、非接合部210Cは、複数の金属板200が屈曲した屈曲部210Dを含んでいる。
図8に示される例では、非接合部210C上の3箇所に屈曲部210Dが存在する。但し、屈曲部210Dの数は特に限定されない。各屈曲部210Dの曲率も特に限定されない。非接合部210Cが大きな円弧状に曲げられていてもよい。つまり、非接合部210Cが全体として大きな1つの屈曲部210Dになっていてもよい。
【0065】
以上に説明されたように、本実施の形態に係るバスバー210は、複数の金属板200が互いに接合されることなく積層された非接合部210Cを含んでいる。上述の通り、曲げ剛性は板厚の3乗に比例する。従って、複数の金属板200が接合され1枚の厚い金属板となっている場合と比較して、非接合部210Cの柔軟性は顕著に高くなる。また、複数の金属板200が積層されているため、非接合部210C全体として断面積は十分確保され、抵抗の増大が防止される。すなわち、バスバー210の抵抗を増加させることなく、バスバー210の柔軟性を確保することが可能となる。
【0066】
非接合部210Cの柔軟性が高いことは、非接合部210Cが変形しやすいことを意味する。非接合部210Cが変形しやすいため、電池端子21と接続される第1接続部210Aの位置を容易に変えることが可能となる。従って、環境に依存した電池端子21の変位を容易に吸収することが可能となる。
【0067】
また、非接合部210Cが変形しやすいため、第1接続部210Aと第2接続部210Bとの間の相対位置関係を容易に変えることが可能となる。従って、製造ばらつき等に起因する電池端子21と端子121との間の相対位置関係のばらつきを容易に吸収することが可能となる。
【0068】
特に、
図8に示されるように、非接合部210Cが少なくとも1つの屈曲部210Dを有する場合、非接合部210CをST面内において自由に変形させやすくなる。つまり、非接合部210CをS方向にもT方向にも変形させやすくなる。従って、環境に依存する電池端子21の様々な変位を容易に吸収することが可能となる。例えば、セル積層体12の膨張/収縮に起因するS方向の変位を容易に吸収することが可能となる。また、電池端子21と端子121との間の相対位置関係の様々なばらつきを容易に吸収することが可能となる。
【0069】
3-2.組み付け性の向上
上述の燃料電池ユニット1の組み立てに関し、
図5で示された状態を考える。
図5で示された状態では、バスバー210の第1接続部210Aが燃料電池スタック10の電池端子21に既に固定されている。一方、バスバー210の第2接続部210Bは電気機器110の端子121にまだ固定されていない。これは、いわゆる“片持ち状態”に相当する。この場合、
図5及び
図9に示されるように、バスバー210が重力によってたわむ。
【0070】
バスバー210(非接合部210C)が過度に柔軟である場合、重力によるバスバー210(非接合部210C)のたわみが大きくなる。その結果、
図5で示された状態において、たわんだバスバー210の第2接続部210Bが、端子121の位置から大きく乖離するおそれがある。また、たわんだバスバー210が、電気機器部100のケース130あるいは他の部品と干渉(接触)するおそれもある。よって、バスバー210を端子121に組み付ける作業を円滑に行いづらくなる。すなわち、バスバー210の「組み付け性(assemblability)」が低下する。
【0071】
そこで、本開示は、更に、バスバー210の柔軟性だけでなく組み付け性も確保することができる技術を提案する。すなわち、本開示は、バスバー210の柔軟性及び組み付け性を両立させることができる技術を提案する。
【0072】
図10は、複数の金属板200を用いたバスバー210の例を説明するための概略図である。上述の
図8で示された例の場合と重複する説明は適宜省略する。
【0073】
複数の金属板200は、厚さの異なる複数種類の金属板を含んでいる。簡単のため、以下では、複数の金属板200が厚さの異なる2種類の金属板を含んでいる場合について説明する。3種類以上の場合も同様である。
【0074】
複数の金属板200のうち比較的薄いものを、以下、「第1金属板201」と呼ぶ。一方、複数の金属板200のうち比較的厚いものを、以下、「第2金属板202」と呼ぶ。すなわち、複数の金属板200は、第1金属板201と、第1金属板201よりも厚い第2金属板202を含んでいる。尚、比較的厚い第2金属板202であっても、複数の金属板200全体に比べれば十分に薄いことに留意されたい。
【0075】
比較的厚い第2金属板202は、第1金属板201よりも剛性が高く、重力によってたわみにくい。
図9で示された片持ち状態においても、第2金属板202の姿勢(形状)は保持されやすい。従って、第2金属板202は、組み付け時のバスバー210(非接合部210C)の姿勢(形状)を保つことに寄与する。その結果、
図5で示された状態において、バスバー210の第2接続部210Bが端子121の位置から大きく乖離することが抑制される。言い換えれば、
図5で示された状態において、第2接続部210Bが端子121の近傍に位置するようにバスバー210が保持される。従って、バスバー210の組み付け性が向上する。
【0076】
非接合部210Cの剛性及び柔軟性については、比較的厚い第2金属板202が支配的となる。但し、比較的厚い第2金属板202であっても、複数の金属板200全体に比べれば十分に薄い。従って、複数の金属板200が接合され1枚の厚い金属板となっている場合と比較して、非接合部210Cの柔軟性は十分に高くなる。
【0077】
比較的薄い第1金属板201は、非接合部210Cの剛性を増加させない。言い換えれば、比較的薄い第1金属板201は、非接合部210Cの柔軟性を低下させない。その意味で、第1金属板201は、バスバー210(非接合部210C)の柔軟性の維持に寄与していると言える。また、第1金属板201は、非接合部210C全体としての断面積を確保し、バスバー210の抵抗を下げることに寄与する。
【0078】
第1金属板201及び第2金属板202の数は特に限定されない。但し、第2金属板202が1枚あれば、組み付け性向上の効果は得られる。柔軟性の観点から言えば、第2金属板202の数はなるべく少ない方がよい。よって、第2金属板202の数は1であってもよい。一方、第1金属板201の数は、例えば、バスバー210を流れる電流の大きさ等に基づいて適切に決定される。
【0079】
典型的には、第1金属板201の数は、第2金属板202の数よりも多い。逆に言えば、第2金属板202の数は、第1金属板201の数よりも少ない。これにより、柔軟性を不必要に低下させることなく、バスバー210に関して低抵抗、柔軟性、及び組み付け性を効率的に確保することが可能となる。
【0080】
第1金属板201及び第2金属板202の厚さも特に限定されない。目安として、第1金属板201の厚さは0.3mm以下である。例えば、第1金属板201の厚さは、0.1mm、0.2mm、0.3mm、等である。一方、第2金属板202の厚さは、目安として0.5mm以上である。この場合、
図9で示された片持ち状態において、第2金属板202の姿勢(形状)を特に保持しやすくなる。例えば、第2金属板202の厚さは、0.5mm、0.8mm、1mm、1.2mm、1.5mm、2mm、等である。
【0081】
3-3.効果
以上に説明されたように、本実施の形態に係る燃料電池ユニット1のバスバー210は、複数の金属板200が互いに接合されることなく積層された非接合部210Cを含んでいる。複数の金属板200が接合され1枚の厚い金属板となっている場合と比較して、非接合部210Cの柔軟性は顕著に高くなる。非接合部210Cの柔軟性が高いことは、非接合部210Cが変形しやすいことを意味する。非接合部210Cが変形しやすいため、端子の環境依存変位や端子間の相対位置関係のばらつきを容易に吸収することが可能となる。
【0082】
また、複数の金属板200が積層されているため、非接合部210C全体として断面積は十分確保され、抵抗の増大が防止される。すなわち、バスバー210の抵抗を増加させることなく、バスバー210の柔軟性を確保することが可能となる。
【0083】
更に、非接合部210Cの複数の金属板200は、第1金属板201と、第1金属板201よりも厚い第2金属板202を含んでいる。比較的厚い第2金属板202は、第1金属板201よりも剛性が高く、重力によってたわみにくい。よって、第2金属板202は、組み付け時のバスバー210(非接合部210C)の姿勢(形状)を保つことに寄与する。すなわち、第2金属板202によってバスバー210の組み付け性が向上する。一方、第1金属板201は、バスバー210(非接合部210C)の柔軟性の維持と抵抗低下に寄与する。
【0084】
このように、本実施の形態によれば、燃料電池ユニット1のバスバー210に関して、「低抵抗」、「柔軟性」、及び「組み付け性」の全てを確保することが可能となる。
【0085】
また、第1接続部210Aと第2接続部210Bの各々において、複数の金属板200同士は互いに接合されている。複数の金属板200が接合されるため、第1接続部210Aと第2接続部210Bの剛性は高くなり、電池端子21及び端子121への接続が容易になる。
【0086】
4.バスバーの様々な例
以下、本実施の形態に係るバスバー210の様々な例について説明する。
【0087】
4-1.第1の例
図11は、バスバー210の第1の例を示す概略図である。第1の例では、第2金属板202の数は2である。2枚の第2金属板202は、複数の金属板200の積層方向の両端に配置されている。そして、複数の第1金属板201が2枚の第2金属板202の間に挟まれている。例えば、各々の第1金属板201の厚さは0.2mmであり、各々の第2金属板202の厚さは1mmである。
【0088】
4-2.第2の例
図12は、バスバー210の第2の例を示す概略図である。第2の例では、第1金属板201の数は2以上である。そして、第2金属板202が2以上の第1金属板201の間に挟まれている。言い換えれば、第2金属板202は、複数の金属板200の積層方向の両端には配置されていない。
【0089】
例えば、第2金属板202の数は1である。
図12に示されるように、第2金属板202は、互いに対向する面SUと面SLを有している。第2金属板202の面SU側には、1以上の第1金属板201Uが配置されている。一方。第2金属板202の面SL側には、1以上の第1金属板201Lが配置されている。すなわち、第2金属板202は、1以上の第1金属板201Uと1以上の第1金属板201Lとの間に挟まれている。例えば、各々の第1金属板201の厚さは0.2mmであり、第2金属板202の厚さは1mmである。
【0090】
図11で示された第1の例では、第1金属板201が2枚の第2金属板202の間に挟まれていた。その場合、第1金属板201の両側の第2金属板202が、第1金属板201の変形を制約する可能性がある。第1金属板201の変形が制約されると、非接合部210Cの柔軟性が若干低下するおそれがある。
【0091】
一方、第2の例によれば、第2金属板202が複数の第1金属板201の間に挟まれている。言い換えれば、第1金属板201は、第2金属板202によって挟まれていない。従って、第2の例における第1金属板201は、第2金属板202によって制約されることなく、第1の例における第1金属板201よりも自由に変形することが可能となる。すなわち、第2の例によれば、非接合部210Cの柔軟性が上述の第1の例の場合よりも向上する。
【0092】
4-3.第3の例
図13は、バスバー210の第3の例を示す概略図である。第3の例は、上述の第2の例の変形例である。上述の第2の例と重複する説明は適宜省略する。
【0093】
第3の例によれば、第2金属板202の面SU側に存在する第1金属板201Uの数は、第2金属板202の面SL側に存在する第1金属板201Lの数と等しい。言い換えれば、複数の第1金属板201は、第2金属板202によって面SU側と面SL側に均等に分割されている。
【0094】
薄い第1金属板201単体の剛性は極めて低いものの、複数の第1金属板201が接触して束になると、ある程度剛性は高くなる。非接合部210Cの柔軟性の観点から言えば、束になる第1金属板201の数が少ない方が好ましい。第3の例によれば、複数の第1金属板201は第2金属板202によって均等に分割されるため、束になる第1金属板201の数が最小化される。従って、非接合部210Cの柔軟性が上述の第2の例の場合よりも向上する。
【0095】
4-4.第4の例
図14は、バスバー210の第4の例を示す概略図である。
図14において、重力方向が矢印で示されている。第4の例によれば、複数の金属板200のうち第2金属板202が重力方向において最も下に配置されている。言い換えれば、第2金属板202の上に複数の第1金属板201が積層されている。例えば、各々の第1金属板201の厚さは0.2mmであり、第2金属板202の厚さは1mmである。
【0096】
比較的薄い第1金属板201は重力によってたわみやすい。しかしながら、第4の例によれば、第1金属板201の下方に第2金属板202が存在しており、第1金属板201が第2金属板202によって支えられる。従って、重力に起因する第1金属板201のたわみが防止される。その結果、第1金属板201がたわんで電気機器110等の他の部品と接触することが防止される。バスバー210の近傍に他部品が存在する場合であっても、バスバー210と他部品との間のマージンを確保することが可能となる。
【0097】
4-5.第5の例
図15は、バスバー210の第5の例を示す概略図である。
図15において、重力方向が矢印で示されている。第5の例によれば、複数の金属板200のうち第2金属板202が重力方向において最も上に配置されている。言い換えれば、複数の第1金属板201の上に第2金属板202が積層されている。また、第1金属板201は、複数の第2金属板202によって挟まれていない。例えば、各々の第1金属板201の厚さは0.2mmであり、第2金属板202の厚さは1mmである。
【0098】
薄い第1金属板201単体の剛性は極めて低いものの、複数の第1金属板201が接触して束になると、ある程度剛性は高くなる。非接合部210Cの柔軟性の観点から言えば、束になる第1金属板201の数が少ない方が好ましい。第5の例によれば、複数の第1金属板201は、重力方向に分散しやすいため、束になりにくい。このことは、非接合部210Cの柔軟性の観点から好ましい。
【0099】
バスバー210とその周辺の部品との間に十分なマージンがある場合、第5の例のような配置であっても、第1金属板201が周辺部品と接触することはない。
【0100】
4-6.第6の例
図16は、バスバー210の第6の例を示す概略図である。バスバー210の第1接続部210AはS方向と平行であり、第2接続部210BはS方向と交差している。つまり、第1接続部210Aに平行な面と第2接続部210Bに平行な面とが交差している。よって、第1接続部210Aと第2接続部210Bとの間の非接合部210Cは、少なくとも1つの屈曲部210Dを有する。
【0101】
図16に示される例では、非接合部210Cは、3個の屈曲部210D1、210D2、及び210D3を有している。それらのうち屈曲部210D3が第2接続部210Bに最も近い。その屈曲部210D3において、複数の金属板200のうち第2金属板202が最も外側(outer side)に位置している。第1金属板201は、第2金属板202よりも内側(inner side)に位置している。従って、第2接続部210Bと屈曲部210D3との間の第2金属板202の長さH2は、第2接続部210Bと屈曲部210D3との間の第1金属板201の長さH1よりも大きくなる(H2>H1)。
【0102】
別の言い方をすれば次の通りである。非接合部210Cにおいて、第2金属板202の全長は、第1金属板201の全長よりも大きい。すなわち、非接合部210Cにおいて、第2金属板202は第1金属板201よりも長い。この場合、第2接続部210Bと屈曲部210D3との間の第2金属板202の長さH2は、第2接続部210Bと屈曲部210D3との間の第1金属板201の長さH1よりも大きくなる(H2>H1)。
【0103】
図17は、
図16で示されたバスバー210の効果を説明するための概念図である。セル積層体12がS方向に膨張/収縮すると、電池端子21がS方向に変位する。それに伴い、非接合部210Cが変形し、電池端子21に接続されるバスバー210の第1接続部210AもS方向に変位する。非接合部210Cの屈曲部210D3は、変位量DだけS方向に変位する。この時、
図17に示されるように、第2接続部210Bと非接合部210Cとの境界において、各金属板200が折れ曲がり、応力が発生する。
【0104】
第2接続部210Bと非接合部210Cとの境界における各金属板200の折れ角は、次の通りである。内側の第1金属板201の折れ角θ1は、tan-1(D/H1)で表される。一方、外側の第2金属板202の折れ角θ2は、tan-1(D/H2)で表される。上述の通り、長さH2は長さH1よりも大きいため(H2>H1)、折れ角θ2は折れ角θ1よりも小さくなる(θ2<θ1)。
【0105】
折れ角が同じである条件下では、板厚が大きくなるほど応力も大きくなる。比較的厚い第2金属板202の方の折れ角θ2を可能な限り小さくすることによって、バスバー210全体としての最大応力値を効果的に抑制することが可能となる。
【0106】
4-7.第7の例
図18は、バスバー210の第7の例を示す概略図である。第7の例は、上述の第6の例の変形例である。上述の第6の例と重複する説明は適宜省略する。
【0107】
非接合部210Cにおける複数の金属板200の離間幅Wについて考える。離間幅Wは、積層された複数の金属板200のうち最外の2枚の金属板200間の距離である。屈曲部210D1と屈曲部210D2との間における離間幅W2は、屈曲部210D1と第1接続部210Aとの間における離間幅W1よりも大きい(W2>W1)。また、屈曲部210D3と屈曲部210D2との間における離間幅W3は、屈曲部210D3と第2接続部210Bとの間における離間幅W4よりも大きい(W3>W4)。離間幅W1と離間幅W4は同じであってもよい。離間幅W2と離間幅W3は同じであってもよい。
【0108】
屈曲部210D1と屈曲部210D3との間の区間では、離間幅W2、W3が比較的大きいため、金属板200同士が接触しにくく、金属板200がより自由に変形しやすい。また、離間幅W3が大きいため、長さH2と長さH1との間の差がより大きくなる。従って、第6の例で説明された最大応力値の抑制に関して、より高い効果が期待される。
【0109】
5.その他
上述の第1バスバー210の特徴は、第2バスバー220にも適用可能である。これにより、第2バスバー220に関しても、低抵抗、柔軟性、及び組み付け性を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0110】
1 燃料電池ユニット
10 燃料電池スタック
11 燃料電池セル
12 セル積層体
21 第1電池端子
22 第2電池端子
30 スタックケース
100 電気機器部
110 電気機器
121 第1端子台
122 第2端子台
130 ケース
200 金属板
201 第1金属板
202 第2金属板
210 第1バスバー
210A 第1接続部
210B 第2接続部
210C 非接合部
210D 屈曲部
220 第2バスバー