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特開2023-166849ビームステアリング素子及びこれを含むLiDAR
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166849
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ビームステアリング素子及びこれを含むLiDAR
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231115BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20231115BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/18
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077674
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】石井 憲雄
(72)【発明者】
【氏名】町田 沙織
(72)【発明者】
【氏名】内藤 幸枝
【テーマコード(参考)】
2H149
2H249
5J084
【Fターム(参考)】
2H149AA00
2H149AA22
2H149AA24
2H149AB05
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149DA17
2H149EA03
2H149FA05Z
2H149FA08Z
2H149FA24Y
2H149FA33Y
2H149FA58Y
2H149FC09
2H249AA02
2H249AA04
2H249AA12
2H249AA14
2H249AA43
2H249AA50
2H249AA51
2H249AA55
2H249AA64
2H249AA69
5J084AA05
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA48
5J084BB04
5J084BB16
5J084BB19
5J084EA07
(57)【要約】
【課題】視野角が広く、かつ、安定した品質を付与できるビームステアリング素子を提供する。
【解決手段】偏光制御素子と、偏光回折素子とを有するビームステアリング素子であって、 前記偏光回折素子は、パターン層と液晶層とを有し、前記パターン層は、第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、前記液晶層は、前記パターン層の前記第1の面上に形成され、前記パターン層は、前記第1の面内に、複数の凹部を含むドメインを複数有し、前記複数のドメインの配列方向に沿って、前記複数の凹部が円状又は弧状に配列されたユニットを複数有し、前記複数のドメインのうち少なくとも一部のドメインが下記条件1等を満たす、ビームステアリング素子。
<条件1>
ドメイン内の凹部のうち少なくとも一部の凹部の平面視形状が、一対の弧である第1の弧及び第2の弧と、前記第1の弧と前記第2の弧との同じ側の端部同士を結ぶ線とを含む、弧状の平面視形状を有する。前記平面視形状において、前記第1の弧は内周側、前記第2の弧は外周側に位置するものとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光制御素子と、偏光回折素子とを有するビームステアリング素子であって、
前記偏光回折素子は、パターン層と液晶層とを有し、
前記パターン層は、第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記液晶層は、前記パターン層の前記第1の面上に形成され、
前記パターン層は、前記第1の面内に、複数の凹部を含むドメインを複数有し、
前記複数のドメインの配列方向に沿って、前記複数の凹部が円状又は弧状に配列されたユニットを複数有し、
前記複数のドメインのうち少なくとも一部のドメインが下記条件1~3を満たす、ビームステアリング素子。
<条件1>
ドメイン内の凹部のうち少なくとも一部の凹部の平面視形状が、一対の弧である第1の弧及び第2の弧と、前記第1の弧と前記第2の弧との同じ側の端部同士を結ぶ線とを含む、弧状の平面視形状を有する。前記平面視形状において、前記第1の弧は内周側、前記第2の弧は外周側に位置するものとする。
<条件2>
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、前記第2の弧の中点を点Xとする。前記中点は、前記第2の弧の長さの中間点とする。点Xを接点とする前記第2の弧に対する接線を引く。さらに、点X及び第2の弧の端部を通る直線を引く。前記接線と前記直線との成す角度のうち、小さい方の角度を各弧状の平面視形状を有する凹部の変曲度[度]と定義する。前記複数のユニットのうち、隣り合うユニットを比較してピッチを算出する。隣り合うユニットにおいて、位置が対応する凹部同士の間隔をピッチ[μm]と定義する。変曲度[度]とピッチ[μm]との積の平均値が1.5以上10.5以下である。
<条件3>
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、短軸方向の長さをS、長軸方向の長さをL、凹部の深さをD、と定義した際に、ドメイン内のS/Dの平均値が0.50以上である。
【請求項2】
前記弧状の平面視形状を有する凹部は、ドメイン内のL/Sの平均値が2.5以上30.0以下である、請求項1に記載のビームステアリング素子。
【請求項3】
前記長さSの平均値が5nm以上75nm以下である、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
【請求項4】
前記長さLの平均値が15nm以上340nm以下である、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
【請求項5】
前記深さDの平均値が2nm以上200nm以下である、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
【請求項6】
前記条件1~3を満たすドメインの少なくとも一部のドメインが、さらに、下記条件4を満たす、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
<条件4>
ドメイン内に、弧状の平面視形状を有する凹部であって、平面視形状が互いに相似する2個以上5個以下の凹部を含む凹部の群を有する。さらに、ドメイン内に、前記凹部の群を繰り返し有する。
【請求項7】
前記第1の面内の凹部のうち、前記弧状の平面視形状を有する凹部の割合が、個数基準で20%以上である、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
【請求項8】
前記第1の面内の凹部の合計面積をS1、前記第1の面内の凹部以外の合計面積をS2、と定義した際に、0.25≦S1/S2≦0.82である、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
【請求項9】
前記第1の面内に、2以上の凹部が連結した接合凹部を有する、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
【請求項10】
前記第1の面内に含まれる凹部のうち、前記接合凹部の割合が、個数基準で12.3%以上71.9%以下である、請求項9に記載のビームステアリング素子。
【請求項11】
同一のドメイン内に含まれる複数の凹部は、平面視形状が互いに合同又は相似である、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
【請求項12】
前記液晶層が単層構成である、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
【請求項13】
前記液晶層が正の波長分散性を有する、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子。
【請求項14】
光源と、請求項1又は2に記載のビームステアリング素子と、受光素子とを有する、LiDAR。
【請求項15】
前記光源と、前記ビームステアリング素子との間に、コリメーターを有する、請求項14に記載のLiDAR。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビームステアリング素子及びこれを含むLiDARに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザービームの伝搬方向を1次元的又は2次元的に走査することを可能とするビームステアリング素子を有する装置が開発されている。ビームステアリング素子を有する装置としては、LiDAR(light detection and ranging)、レーザープロジェクター等が挙げられる。
【0003】
ビームステアリング素子としては、鏡を機械駆動方式又は電磁駆動方式で制御する、ガルバノミラー又はMEMSミラーを用いたものが挙げられる(特許文献1)。これらの手法では、鏡の向きを変えながら反射したレーザー光の伝搬方向を変えて、2次元的なビーム走査を可能とする。ガルバノミラー又はMEMSミラーを用いたビームステアリング素子は、ミラーの共振周波数で高速なビーム走査が可能であるという特徴があるが、装置が大型化しやすい。
【0004】
一方、偏光制御素子と、偏光回折素子とを含むビームステアリング素子も提案されている(特許文献2)。偏光回折素子の構成としては、微細なパターンを有するパターン層上に液晶層を備えた構成が知られている(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/145681号
【特許文献2】特開2020-106616号公報
【特許文献3】特表2016-519327号公報
【特許文献4】特表2019-536100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビームステアリング素子では、偏光回折素子のパターン層のピッチが視野角に直結するため、パターン層のピッチを狭くすることが求められる。
しかし、パターン層のピッチを単に狭くした場合、パターン層を賦形等により安定して形成することが困難な場合があった。特許文献3及び4の偏光回折素子は、パターン層を安定して形成することを検討していない。このため、特許文献3及び4の偏光回折素子は、パターン層上に形成する液晶層の配向性が不十分であったり、ビームステアリング素子の視野角が十分に広がらなかったりする場合があり、安定した品質を付与できないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、視野角が広く、かつ、安定した品質を付与できるビームステアリング素子及びLiDARを提供することを課題とする。
【0008】
すなわち、本開示は、以下の[1]~[15]を提供する。
[1] 偏光制御素子と、偏光回折素子とを有するビームステアリング素子であって、
前記偏光回折素子は、パターン層と液晶層とを有し、
前記パターン層は、第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記液晶層は、前記パターン層の前記第1の面上に形成され、
前記パターン層は、前記第1の面内に、複数の凹部を含むドメインを複数有し、
前記複数のドメインの配列方向に沿って、前記複数の凹部が円状又は弧状に配列されたユニットを複数有し、
前記複数のドメインのうち少なくとも一部のドメインが下記条件1~3を満たす、ビームステアリング素子。
<条件1>
ドメイン内の凹部のうち少なくとも一部の凹部の平面視形状が、一対の弧である第1の弧及び第2の弧と、前記第1の弧と前記第2の弧との同じ側の端部同士を結ぶ線とを含む、弧状の平面視形状を有する。前記平面視形状において、前記第1の弧は内周側、前記第2の弧は外周側に位置するものとする。
<条件2>
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、前記第2の弧の中点を点Xとする。前記中点は、前記第2の弧の長さの中間点とする。点Xを接点とする前記第2の弧に対する接線を引く。さらに、点X及び第2の弧の端部を通る直線を引く。前記接線と前記直線との成す角度のうち、小さい方の角度を各弧状の平面視形状を有する凹部の変曲度[度]と定義する。前記複数のユニットのうち、隣り合うユニットを比較してピッチを算出する。隣り合うユニットにおいて、位置が対応する凹部同士の間隔をピッチ[μm]と定義する。変曲度[度]とピッチ[μm]との積の平均値が1.5以上10.5以下である。
<条件3>
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、短軸方向の長さをS、長軸方向の長さをL、凹部の深さをD、と定義した際に、ドメイン内のS/Dの平均値が0.50以上である。
[2] 前記弧状の平面視形状を有する凹部は、ドメイン内のL/Sの平均値が2.5以上30.0以下である、[1]に記載のビームステアリング素子。
[3] 前記長さSの平均値が5nm以上75nm以下である、[1]又は[2]に記載のビームステアリング素子。
[4] 前記長さLの平均値が15nm以上340nm以下である、[1]~[3]の何れかに記載のビームステアリング素子。
[5] 前記深さDの平均値が2nm以上200nm以下である、[1]~[4]の何れかに記載のビームステアリング素子。
[6] 前記条件1~3を満たすドメインの少なくとも一部のドメインが、さらに、下記条件4を満たす、[1]~[5]の何れかに記載のビームステアリング素子。
<条件4>
ドメイン内に、弧状の平面視形状を有する凹部であって、平面視形状が互いに相似する2個以上5個以下の凹部を含む凹部の群を有する。さらに、ドメイン内に、前記凹部の群を繰り返し有する。
[7] 前記第1の面内の凹部のうち、前記弧状の平面視形状を有する凹部の割合が、個数基準で20%以上である、[1]~[6]の何れかに記載のビームステアリング素子。
[8] 前記第1の面内の凹部の合計面積をS1、前記第1の面内の凹部以外の合計面積をS2、と定義した際に、0.25≦S1/S2≦0.82である、[1]~[7]の何れかに記載のビームステアリング素子。
[9] 前記第1の面内に、2以上の凹部が連結した接合凹部を有する、[1]~[8]の何れかに記載のビームステアリング素子。
[10] 前記第1の面内に含まれる凹部のうち、前記接合凹部の割合が、個数基準で12.3%以上71.9%以下である、[9]に記載のビームステアリング素子。
[11] 同一のドメイン内に含まれる複数の凹部は、平面視形状が互いに合同又は相似である、[1]~[10]の何れかに記載のビームステアリング素子。
[12] 前記液晶層が単層構成である、[1]~[11]の何れかに記載のビームステアリング素子。
[13] 前記液晶層が正の波長分散性を有する、[1]~[12]の何れかに記載のビームステアリング素子。
[14] 光源と、[1]~[13]の何れかに記載のビームステアリング素子と、受光素子とを有する、LiDAR。
[15] 前記光源と、前記ビームステアリング素子との間に、コリメーターを有する、[14]に記載のLiDAR。
【発明の効果】
【0009】
本開示のビームステアリング素子は、ビームステアリング素子及びLiDARを構成する偏光回折素子に関して、偏光回折素子のパターン層の形状を安定して形成できるとともに、偏光回折素子の液晶分子の配向性を良好にすることができる。このため、本開示のビームステアリング素子及びLiDARは、ビームステアリング素子及びLiDARに関して、視野角を広くすることができ、かつ、品質を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態のビームステアリング素子を有するビームステアリング装置の概略図である。
図2】本開示の第2実施形態のビームステアリング素子を有するビームステアリング装置の概略図である。
図3】本開示の第1実施形態のビームステアリング素子において、偏光回折素子の作用の一例を説明する概略図である。
図4】本開示の第1実施形態のビームステアリング素子において、スイッチング素子及び偏光回折素子の作用の一例を説明する概略図である。
図5】本開示の偏光回折素子の一実施形態を示す断面図である。
図6】本開示の偏光回折素子のパターン層の第1の面の一実施形態を示す平面図である。
図7】本開示の偏光回折素子のパターン層に含まれる凹部の一実施形態を示す平面図である。
図8】変曲度の算出方法を説明するための図である。
図9】パターン層における凹部の配列例を説明するための平面図である。
図10】パターン層内の凹部の繰り返しパターンの実施形態を示す平面図である。
図11】パターン層における凹部の配列例を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示のビームステアリング素子及びLiDARの実施形態を説明する。
[ビームステアリング素子]
本開示のビームステアリング素子は、偏光制御素子と、偏光回折素子とを有するビームステアリング素子であって、
前記偏光回折素子は、パターン層と液晶層とを有し、
前記パターン層は、第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記液晶層は、前記パターン層の前記第1の面上に形成され、
前記パターン層は、前記第1の面内に、複数の凹部を含むドメインを複数有し、
前記複数のドメインの配列方向に沿って、前記複数の凹部が円状又は弧状に配列されたユニットを複数有し、
前記複数のドメインのうち少なくとも一部のドメインが下記条件1~3を満たす、ものである。
<条件1>
ドメイン内の凹部のうち少なくとも一部の凹部の平面視形状が、一対の弧である第1の弧及び第2の弧と、前記第1の弧と前記第2の弧との同じ側の端部同士を結ぶ線とを含む、弧状の平面視形状を有する。前記平面視形状において、前記第1の弧は内周側、前記第2の弧は外周側に位置するものとする。
<条件2>
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、前記第2の弧の中点を点Xとする。前記中点は、前記第2の弧の長さの中間点とする。点Xを接点とする前記第2の弧に対する接線を引く。さらに、点X及び第2の弧の端部を通る直線を引く。前記接線と前記直線との成す角度のうち、小さい方の角度を各弧状の平面視形状を有する凹部の変曲度[度]と定義する。前記複数のユニットのうち、隣り合うユニットを比較してピッチを算出する。隣り合うユニットにおいて、位置が対応する凹部同士の間隔をピッチ[μm]と定義する。変曲度[度]とピッチ[μm]との積の平均値が1.5以上10.5以下である。
<条件3>
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、短軸方向の長さをS、長軸方向の長さをL、凹部の深さをD、と定義した際に、ドメイン内のS/Dの平均値が0.50以上である。
【0012】
図1は、本開示の第1実施形態のビームステアリング素子400を含むビームステアリング装置700の概略図である。本開示の第1実施形態のビームステアリング素子400は、偏光制御素子200と、偏光回折素子(101、102)とを有している。図1のビームステアリング素子400は、さらに、第1のスイッチング素子301、第2のスイッチング素子302を有している。
図1のビームステアリング装置700は、ビームステアリング素子400に加えて、光源500及びコリメーター600を有している。図1中の矢印は、光源から出射された光の進行方向のイメージである。
【0013】
図1は模式的な断面図である。すなわち、ビームステアリング素子を構成する各部材の縮尺及び形状等は、図示しやすくするために模式化したものであり、実際の縮尺及び形状等とは相違している。図1以外の図も同様である。
【0014】
図2は、本開示の第2実施形態のビームステアリング素子400を含むビームステアリング装置700の概略図である。本開示の第2実施形態のビームステアリング素子400は、偏光制御素子200と、偏光回折素子(101、102)とを有している。後述するように、第2実施形態の偏光回折素子(101、102)は、図示しない回転機構により回転可能に構成されている。
図2のビームステアリング装置700は、ビームステアリング素子400に加えて、光源500及びコリメーター600を有している。図2中の矢印は、光源から出射された光の進行方向のイメージである。
【0015】
本開示のビームステアリング素子は、例えば、LiDAR(light detection and ranging)、レーザープロジェクター等に用いることができる。以下、LiDAR用のビームステアリング素子を中心に説明する。
【0016】
まず、図1の第1実施形態のビームステアリング素子について説明する。
第1実施形態のビームステアリング素子は、偏光制御素子を有する。偏光制御素子は、光源から出射した光の偏光状態を制御する素子である。
偏光制御素子は、光源から出射した光を、円偏光又は楕円偏光に変換する素子であることが好ましく、円偏光に変換する素子であることがより好ましい。このため、偏光制御素子は、λ/4位相差板を有することが好ましい。また、偏光制御素子は、λ/4位相差板よりも光源側に、さらに偏光子を有するものであってもよい。
【0017】
λ/4位相差板の位相差の値は、制御する光の波長にあわせて調整すればよい。
制御する光の波長をλ[nm]とした場合、λ/4位相差板の位相差の値は、(λ/4)×0.95以上(λ/4)×1.05以下とすることが好ましく、(λ/4)×0.97以上(λ/4)×1.03以下とすることが好ましく、(λ/4)×0.99以上(λ/4)×1.01以下とすることがより好ましい。
本開示のビームステアリング素子をLiDAR用に用いる場合には、λは、905nm又は1550nmとすることが好ましい。
本明細書において、「位相差」とは、特に断りのない限り、面内位相差を意味する。また、本明細書において、位相差を算出する際の屈折率は、制御する光の波長の屈折率とすることが好ましい。
【0018】
第1実施形態のビームステアリング素子において、偏光制御素子200によって偏光状態を制御された光は、偏光回折素子に向かって進行する。
第1実施形態のビームステアリング素子では、偏光制御素子200によって偏光状態を制御された光の進行方向を、スイッチング素子と偏光回折素子との組み合わせにより制御する。図1のビームステアリング素子は、スイッチング素子と偏光回折素子との組み合わせを2つ有している。具体的には、1組目がスイッチング素子301と偏光回折素子101であり、2組目がスイッチング素子302と偏光回折素子102である。
1組のスイッチング素子と偏光回折素子との組み合わせにおいては、スイッチング素子が偏光回折素子よりも偏光制御素子側となるように配置する。
【0019】
第1実施形態のビームステアリング素子において、スイッチング素子は、偏光の状態を、必要に応じて切り替える作用を有する。例えば、スイッチング素子は、円偏光の回転方向を、必要に応じて変換する作用を有する。具体的には、スイッチング素子は、右回転の円偏光を左回転に変換する作用、又は、右回転の円偏光を右回転のまま透過する作用を有する。あるいは、スイッチング素子は、左回転の円偏光を右回転に変換する作用、又は、左回転の円偏光を左回転のまま透過する作用を有する。
【0020】
スイッチング素子としては、例えば、電源を入れた時の位相差がλ/2であり、電源を切った時の位相差が略0である駆動液晶、あるいは、電源を入れた時の位相差が略0であり、電源を切った時の位相差がλ/2である駆動液晶が挙げられる。スイッチング素子の位相差がλ/2の時に、円偏光の回転方向を変換することができる。このような駆動液晶は、汎用の材料を用いることができる。
【0021】
スイッチング素子のλ/2の値は、制御する光の波長にあわせて調整すればよい。
制御する光の波長をλ[nm]とした場合、スイッチング素子の位相差の値は、(λ/2)×0.95以上(λ/2)×1.05以下とすることが好ましく、(λ/2)×0.97以上(λ/2)×1.03以下とすることが好ましく、(λ/2)×0.99以上(λ/2)×1.01以下とすることがより好ましい。
本開示のビームステアリング素子をLiDAR用に用いる場合には、λは、905nm又は1550nmとすることが好ましい。
【0022】
第1実施形態のビームステアリング素子において、偏光回折素子は、例えば、入射した円偏光を、回折角θで回折するとともに、円偏光の回転方向を変換する作用を有する。
【0023】
図3は、本開示の第1実施形態のビームステアリング素子において、偏光回折素子100の作用の一例を説明する概略図である。
図3(A)は、左回転の円偏光が偏光回折素子に入射した時を示し、図3(B)は、右回転の円偏光が偏光回折素子に入射した時を示している。
図3(A)では、偏光回折素子100により、左回転の円偏光が、回折角θで回折されるとともに、右回転の円偏光に変換されている。図3(B)では、偏光回折素子100により、右回転の円偏光が、回折角θで回折されるとともに、左回転の円偏光に変換されている。
【0024】
図3(A)及び(B)において、偏光回折素子のパターン層の複数の凹部は、ドメインの配列方向に沿って弧状に配列されている。(偏光回折素子のパターン層の複数の凹部が、ドメインの配列方向に沿って弧状に配列されている状態については、図6が参考となる。図6では、図面の左右方向にドメインが配列され、かつ、複数のドメインの配列方向に沿って、複数の凹部が円状又は弧状に配列されている。)図3(A)及び(B)において、符号24は、複数の凹部が弧状に配列された状態を示している。図3(A)及び(B)において、パターン層のドメインは、X軸に沿って配列している。 図3(A)及び(B)の偏光回折素子は、パターン層の凹部が前述したように配列しているため、液晶層の液晶も、パターン層のドメインの配列方向に沿って、円状又は弧状に配向している。そして、円状又は弧状に配列した液晶層により、図3(A)及び(B)の偏光回折素子は、透過光を回折する作用を奏する。
図3(A)及び(B)において、円偏光は、XZ平面に沿って、Z軸に対して回折角θで回折している(図3(A)では、Z軸に対して図面の右方向に回折角θで回折している。図3(B)では、Z軸に対して図面の左方向に回折角θで回折している。)。
このように、スイッチング素子と偏光回折素子との組み合わせにより、光を様々な方向に制御することができる。
【0025】
次に、図3(A)及び(B)の変形例について説明する。変形例として、図3(A)及び(B)の偏光回折素子100をXY平面に沿って90度回転した場合を考える。図3(A)及び(B)では、パターン層のドメインはX軸に沿って配列しているが、変形例では、パターン層のドメインはY軸に沿って配列していることになる。
変形例の場合、入射光である円偏光は、YZ平面に沿って、Z軸に対して回折角θで回折することになる(変形例の場合、Z軸に対して図面の上方向に回折角θで回折させたり、Z軸に対して図面の下方向に回折角θで回折させたりすることができる。)。
このため、X軸に沿ってドメインが配列された素子、及び、Y軸に沿ってドメインが配列された素子の両方を透過した光は、より様々な方向に制御することができる。具体的には、光を上下左右に広げる制御が可能となる。このため、LiDAR用のビームステアリング素子として好適に用いることができる。
【0026】
偏光回折素子の回折角θは、ピッチをx[nm]、光の波長をλ[nm]、光の入射角をθとした場合、下記の式で表すことができる。θ及びθは、偏光回折素子の平面に対して垂直方向を0度とした際の角度である。下記式では、θは、前記垂直方向からプラス方向の場合である。符号の±は、入射光である円偏光の回転方向により、前記垂直方向に対して、プラス方向に回折する場合と、マイナス方向に回折する場合とがあるため付けられている。下記式のピッチとは、隣り合うユニットにおいて、位置が対応する凹部同士の間隔を意味する。
sinθ=±(λ/x)+sinθ
【0027】
例えば、入射角θを0度、光の波長を1550nmに固定した場合、ピッチと回折角との関係は、下記表1の関係となる。
【表1】
【0028】
表1の回折角は、偏光回折素子が1枚の場合の角度である。スイッチング素子により偏光状態を同一に制御すれば、偏光回折素子の枚数を増やすと、回折角は偏光回折素子の枚数の乗数で増加する。任意のピッチにおける回折角をθ(度)、偏光回折素子の枚数をnとした場合、回折角は2n-1×θ(度)で表すことができる。
【0029】
回折効率を上げるため、偏光回折素子の位相差の値はλ/2であることが好ましい。偏光回折素子のλ/2の値は、制御する光の波長にあわせて調整すればよい。
制御する光の波長をλ[nm]とした場合、偏光回折素子の位相差の値は、(λ/2)×0.95以上(λ/2)×1.05以下とすることが好ましく、(λ/2)×0.97以上(λ/2)×1.03以下とすることが好ましく、(λ/2)×0.99以上(λ/2)×1.01以下とすることがより好ましい。
本開示のビームステアリング素子をLiDAR用に用いる場合には、λは、905nm又は1550nmとすることが好ましい。
【0030】
第1実施形態及び第2実施形態のビームステアリング素子で用いる偏光回折素子の実施形態の詳細は後述する。
【0031】
スイッチング素子と偏光回折素子との組み合わせによる作用を、さらに図4を用いて説明する。
図4(A)及び(B)は、スイッチング素子と偏光回折素子との組み合わせを2組有している。1組目がスイッチング素子301及び偏光回折素子101であり、2組目がスイッチング素子302及び偏光回折素子102である。図4(A)及び(B)において、矢印は、光の進行方向のイメージである。
【0032】
まず、図4(A)の作用を説明する。図4(A)では、スイッチング素子301の位相差が0、スイッチング素子302の位相差がλ/2である。図4(A)では、まず、左回転の円偏光がスイッチング素子301に入射している。スイッチング素子301の位相差は0であるため、左回転の円偏光はスイッチング素子をそのまま透過する。次いで、偏光回折素子101に入射した左回転の円偏光は、偏光回折素子101により、所定の回折角で図面の左方向に回折されるとともに、右回転の円偏光に変換される。次いで、スイッチング素子302に入射した右回転の円偏光は、左回転の円偏光に変換される。次いで、偏光回折素子102に入射した左回転の円偏光は、偏光回折素子102により、所定の回折角で図面の左方向に回折されるとともに、右回転の円偏光に変換される。図4(A)において、偏光回折素子101から出光する光の回折角を-θ[度]とした場合、偏光回折素子102から出光する光の回折角は-2θ[度]である。
なお、仮に、図4(A)のスイッチング素子302の位相差が0であった場合には、偏光回折素子102に入射する円偏光は右回転となる。そして、偏光回折素子102に入射した右回転の円偏光は、偏光回折素子102により、所定の回折角で図面の右方向に回折される。このため、図4(A)のスイッチング素子302の位相差が0であった場合には、偏光回折素子102から出光する光の角度は、略0度となる。
【0033】
次に、図4(B)の作用を説明する。図4(B)では、スイッチング素子301及び302の位相差が何れもλ/2である。図4(B)では、まず、左回転の円偏光がスイッチング素子301に入射している。スイッチング素子301の位相差はλ/2であるため、左回転の円偏光は右回転の円偏光に変換される。次いで、偏光回折素子101に入射した右回転の円偏光は、偏光回折素子101により、所定の回折角で図面の右方向に回折されるとともに、左回転の円偏光に変換される。次いで、スイッチング素子302に入射した左回転の円偏光は、右回転の円偏光に変換される。次いで、偏光回折素子102に入射した右回転の円偏光は、偏光回折素子102により、所定の回折角で図面の右方向に回折されるとともに、左回転の円偏光に変換される。図4(B)において、偏光回折素子101から出光する光の回折角を+θ[度]とした場合、偏光回折素子102から出光する光の回折角は+2θ[度]である。
【0034】
図4(A)及び(B)に示すように、スイッチング素子と偏光回折素子とを組み合わせ、スイッチング素子の位相差を切り替えることにより、光を様々な進行方向に制御することができる。
【0035】
第1実施形態のビームステアリング素子は、スイッチング素子と偏光回折素子との組み合わせを2組以上有することが好ましく、4組以上有することがより好ましく、8組以上有することがさらに好ましい。
【0036】
第1実施形態のビームステアリング素子において、スイッチング素子と偏光回折素子との組み合わせを2組以上有する場合は、ビームステアリング素子内で複数の偏光回折素子を用いることになる。ビームステアリング素子内で複数の偏光回折素子を用いる場合、全ての偏光回折素子のパターン層のドメインの配列方向を揃えてもよいし、偏光回折素子のパターン層のドメインの配列方向を変えてもよい。
例えば、複数の偏光回折素子として、偏光回折素子のパターン層のドメインの配列方向が第1の方向であるものと、偏光回折素子のパターン層のドメインの配列方向が第2の方向であるもの、との2種類を用いる。そして、前記第1の方向と、前記第2の方向とが、直交するように配置する。前述したように複数の偏光回折素子を配置することにより、光をより様々な進行方向に制御することができるため、LiDAR用のビームステアリング素子として好適に用いることができる。
【0037】
次に、図2の第2実施形態のビームステアリング素子について説明する。
第2実施形態のビームステアリング素子は、偏光制御素子を有する。偏光制御素子は、光源から出射した光の偏光状態を制御する素子である。第2実施形態のビームステアリング素子の偏光制御素子は、第1実施形態のビームステアリング素子の偏光制御素子と同様のものが挙げられる。
【0038】
第2実施形態のビームステアリング素子において、偏光制御素子200によって偏光状態を制御された光は、偏光回折素子に向かって進行する。
第2実施形態のビームステアリング素子では、偏光制御素子200によって偏光状態を制御された光の進行方向を、偏光回折素子を回転することにより制御する。このため、第2実施形態のビームステアリング素子は、偏光回折素子を回転するための回転機構を備えることが好ましい。
偏光回折素子が一つのみの場合、円を描くようにしか光の進行方向を制御できない。このため、第2実施形態のビームステアリング素子は、2以上の偏光回折素子を有することが好ましく、4以上の偏光回折素子を有することがより好ましい。
【0039】
回転機構は、偏光回折素子を回転させるものである。偏光回折素子を2以上有する場合、個々の偏光回折素子に対して、それぞれ独立した回転機構を備えることが好ましい。
回転機構は、永久磁石を円環状に埋め込んだ浮遊型の回転モータ、ベアリング式の回転モータ等の汎用の回転機構を適用することができる。
【0040】
回転機構の回転速度は、ミリ秒~マイクロ秒のオーダーの範囲で調整できる。回転速度の上限値は、ビームの走査速度を律速する要因となるため、1回転あたり1000ミリ秒以下が好ましく、より好ましくは500ミリ秒以下、さらに好ましくは16ミリ秒以下、最も好ましくは1ミリ秒以下がよい。
回転機構による回転動作は、等速円運動に限定するものではなく、時間的に周波数が可変であってもよく、不規則に速度が変化してもよい。
【0041】
回転可能な偏光回折素子に対して、円偏光を入射した際の光の挙動は、「特開2021-176005号公報」、「特開2021-196408号公報」、「回転する液晶偏光回折格子を利用した円偏光ビームステアリング,2021年12月15日,著者:長岡技術科学大学 坂本 盛嗣、小野 浩司,URL:https://optronics-media.com/publication/%e8%8b%a5%e6%89%8b%e7%a0%94%e7%a9%b6%e8%80%85%e3%81%ae%e6%8c%91%e6%88%a6/20211215/75610/」等の文献に記載されている。第2実施形態のビームステアリング素子は、これらの文献に記載された物理法則に基づいて、光の進行方向を様々な方向に制御することができる。
【0042】
次に、第1実施形態及び第2実施形態のビームステアリング素子で用いる偏光回折素子の実施形態を説明する。
【0043】
<偏光回折素子>
偏光回折素子は、パターン層と液晶層とを有し、
前記パターン層は、第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記液晶層は、前記パターン層の前記第1の面上に形成され、
前記パターン層は、前記第1の面内に、複数の凹部を含むドメインを複数有し、
前記複数のドメインの配列方向に沿って、前記複数の凹部が円状又は弧状に配列されたユニットを複数有し、
前記複数のドメインのうち少なくとも一部のドメインが下記条件1~3を満たす、ものである。
<条件1>
ドメイン内の凹部のうち少なくとも一部の凹部の平面視形状が、一対の弧である第1の弧及び第2の弧と、前記第1の弧と前記第2の弧との同じ側の端部同士を結ぶ線とを含む、弧状の平面視形状を有する。前記平面視形状において、前記第1の弧は内周側、前記第2の弧は外周側に位置するものとする。
<条件2>
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、前記第2の弧の中点を点Xとする。前記中点は、前記第2の弧の長さの中間点とする。点Xを接点とする前記第2の弧に対する接線を引く。さらに、点X及び第2の弧の端部を通る直線を引く。前記接線と前記直線との成す角度のうち、小さい方の角度を各弧状の平面視形状を有する凹部の変曲度[度]と定義する。前記複数のユニットのうち、隣り合うユニットを比較してピッチを算出する。隣り合うユニットにおいて、位置が対応する凹部同士の間隔をピッチ[μm]と定義する。変曲度[度]とピッチ[μm]との積の平均値が1.5以上10.5以下である。
<条件3>
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、短軸方向の長さをS、長軸方向の長さをL、凹部の深さをD、と定義した際に、ドメイン内のS/Dの平均値が0.50以上である。
【0044】
図5は、本開示の偏光回折素子の一実施形態を示す断面図である、
図5の偏光回折素子100は、パターン層20と液晶層30とを有している。図5において、パターン層20は、第1の面20aと、第1の面とは反対側の第2の面20bとを有している。図5において、液晶層30は、パターン層20の第1の面20a上に形成されている。図5において、パターン層20は、第1の面20aに複数の凹部21を有している。図5の偏光回折素子100は、パターン層20の液晶層30とは反対側に基材10を有している。
図5において、符号Dは凹部の深さを示している。図5において、符号t1は凹部を有しない箇所のパターン層の厚みを示している。図5において、符号t2は凹部の下方のパターン層の厚みを示している。図5において、符号t3は、凹部を有しない箇所に形成される液晶層の厚みを示している。
【0045】
《パターン層》
パターン層は、第1の面と、第1の面と反対側の第2の面とを有する。パターン層の第1の面上には液晶層が形成される。
【0046】
パターン層は、第1の面内に、複数の凹部を含むドメインを複数有する。パターン層が複数の凹部を有するドメインを複数有することにより、個々の凹部が大きくなり過ぎることを抑制しやすくできるため、パターン層を安定して形成しやすくできる。賦形によりパターン層を形成する場合、パターン層の個々の凹部が小さい方が、賦形用の版からパターン層を剥離しやすいためである。
パターン層の凹部21内には、液晶層30が配置される。
パターン層の第2の面20bの形状は特に制限されない。パターン層の第2の面側と、基材等の他の部材との密着性を良好にするため、パターン層の第2の面は平坦であることが好ましい。
【0047】
パターン層は、複数のドメインの配列方向に沿って、複数の凹部が円状又は弧状に配列されたユニットを複数有することを要する。パターン層を前述したように配列することにより。液晶層の液晶も、パターン層のドメインの配列方向に沿って、円状又は弧状に配向する。そして、円状又は弧状に配列した液晶層は、透過光を回折する作用を奏する。
【0048】
図6は、パターン層の第1の面の一実施形態を示す平面図である。図6において、パターン層20は、第1の面内に、複数の凹部21を含むドメインを複数有している。図6において、符号23a~23hは、それぞれ、複数の凹部21を含むドメインである。
第1の面内において、複数のドメインは、所定の一方向に配列されていることが好ましい。図6では、ドメインは図6の左右方向に配列されている。ドメインが所定の一方向に配列されていることにより、賦形用の版からパターン層をより剥離しやすくなるため、パターン層をより安定して形成しやすくできる。
図6では、ドメインの配列方向に沿って、複数の凹部が弧状に配列されている。また、図6では、複数の凹部が配列することにより形成される弧を、図面の上下方向に複数有している。
【0049】
同一のドメインに含まれる複数の凹部は、ドメイン内で所定の一方向に配列されていることが好ましい。かかる構成とすることにより、賦形用の版からパターン層をより剥離しやすくなるため、パターン層をより安定して形成しやすくできる。
【0050】
同一のドメインに含まれる複数の凹部は、互いに合同又は相似であることが好ましい。かかる構成とすることにより、賦形用の版からパターン層をより剥離しやすくなるため、パターン層をより安定して形成しやすくできる。
本明細書における、凹部が合同である範囲、及び、凹部が相似である範囲については後述する。
【0051】
複数のドメインのうち少なくとも一部のドメインは、条件1~3を満たすことを要する。
【0052】
《条件1》
ドメイン内の凹部のうち少なくとも一部の凹部の平面視形状が、一対の弧である第1の弧及び第2の弧と、前記第1の弧と前記第2の弧との同じ側の端部同士を結ぶ線とを含む、弧状の平面視形状を有する。前記平面視形状において、前記第1の弧は内周側、前記第2の弧は外周側に位置するものとする。
【0053】
図7は、偏光回折素子のパターン層に含まれる凹部の一実施形態を示す平面図である。図7の凹部21の平面視形状は、一対の弧である第1の弧27及び第2の弧28と、第1の弧27と第2の弧28との同じ側の端部同士を結ぶ線とを含んでいる。図7において、第1の弧27は内周側、第2の弧28は外周側に位置している。
図7の凹部は、条件1の弧状の平面視形状を有している。
【0054】
本開示において、弧状の平面視形状を構成する第1の弧及び第2の弧は、本開示の効果を阻害しない範囲で、弧の途中に段差があってもよい。例えば、第1の弧及び第2の弧の途中に、2nm以下の段差があってもよい。
本開示において、第1の弧と第2の弧との同じ側の端部同士を結ぶ線は、本開示の効果を阻害しない範囲で、線の途中に段差があってもよい。例えば、線の途中に、2nm以下の段差があってもよい。
【0055】
パターン層の面内において、複数の凹部は、全体として、円状又は弧状に配列される(例えば、図6では、複数の凹部が、全体として弧状に配列されている。)。また、通常、液晶分子の大きさは、個々の凹部の大きさよりも大きい。平面視形状が直線状の凹部を、パターン層の面内において円状又は弧状に配列した場合(図9(a))、液晶分子が個々の凹部を横断する際の液晶分子の曲がりが大きくなるため、液晶分子が凹部に沿って配向しにくくなる。一方、平面視形状が弧状の凹部を、パターン層の面内において円状又は弧状に配列した場合(図9(b))、液晶分子が個々の凹部を横断する際の液晶分子の曲がりが緩やかとなるため、液晶分子が凹部に沿って配向しやすくできる。
このため、条件1を満たし、かつ、後述する変曲度[度]とピッチ[μm]との積の平均値を1.5以上とすることにより、液晶分子の配向性を良好にしやすくできる。
図9(a)及び図9(b)では、円状又は弧状に配列されたユニットを2つ有している。
【0056】
パターン層の第1の面の凹部の平面視形状は、パターン層の第1の面を走査電子顕微鏡で撮像することにより確認できる。走査電子顕微鏡は、下記の条件で撮像することが好ましい。走査電子顕微鏡は、日立ハイテクノロジーズ社の商品名「SU8000」が挙げられる。
<撮像条件>
・加速電圧:5.0Kv
・エミッション電流:5.0uA
・プローブ電流:High
・検出器:SE(U)
・WD:8mm
・コンデンサレンズ1:5.0
・コンデンサレンズ2:1.0
・資料台のTilt機能:tilt角度「0.0」と入力
【0057】
《条件2》
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、前記第2の弧の中点を点Xとする。前記中点は、前記第2の弧の長さの中間点とする。点Xを接点とする前記第2の弧に対する接線を引く。さらに、点X及び第2の弧の端部を通る直線を引く。前記接線と前記直線との成す角度のうち、小さい方の角度を各弧状の平面視形状を有する凹部の変曲度[度]と定義する。前記複数のユニットのうち、隣り合うユニットを比較してピッチを算出する。隣り合うユニットにおいて、位置が対応する凹部同士の間隔をピッチ[μm]と定義する。変曲度[度]とピッチ[μm]との積の平均値が1.5以上10.5以下である。
【0058】
図7及び図8により、弧状の平面視形状を有する凹部の変曲度の算出方法を説明する。本明細書において、変曲度の単位は「度」である。図8は、第2の弧28の中点の近傍の拡大図である。
まず、第2の弧28の中点を点Xとする。前記中点は、前記第2の弧の長さの中間点とする。次いで、点Xを接点とする第2の弧に対する接線を引く。図7及び図8の破線は、第2の弧に接する接線に相当する。次いで、点X及び第2の弧の端部Zを通る直線を引く。図7及び図8の符号Zは、第2の弧の端部に相当する。図7及び図8の一点鎖線は、前記直線に相当する。次いで、前記接線と前記直線との成す角度のうち、小さい方の角度を算出する。図7及び図8のθは、前記小さい方の角度に相当する。また、図7及び図8のθは、変曲度に相当する。これらの一連の作業は、上述した条件で撮像した、パターン層の第1の面の走査電子顕微鏡の画像データ上で実施することができる。
なお、第2の弧の端部は2つあるため、点X及び第2の弧の端部を通る直線は、2本引くことができる。2本の直線のうち、一方を第1の直線、他方を第2の直線とする。通常、前記接線と前記第1の直線との成す角度(角度1)、及び、前記接線と前記第2の直線との成す角度(角度2)、は同一となる。このため、通常は、一方の直線と接線との成す角度により、変曲度を算出すればよい。ただし、凹部の平面視形状に歪み等がある場合には、前記接線と前記第1の直線との成す角度(角度1)、及び、前記接線と前記第2の直線との成す角度(角度2)、が異なる場合がある。このような場合、角度1と角度2との平均値を、凹部の変曲度とすればよい。
【0059】
上記のようにして、個々の弧状の平面視形状を有する凹部の変曲度を測定することができる。
【0060】
ピッチは、「隣り合うユニットにおいて、位置が対応する凹部同士の間」を意味する。本明細書において、ピッチの単位はμmとする。図9(a)、図9(b)、及び図11の符号Pは、ピッチを意味する。
ピッチは、上述した条件で撮像した、パターン層の第1の面の走査電子顕微鏡の画像データ上で測定することができる。
【0061】
本明細書において、変曲度[度]とピッチ[μm]との積の平均値は、下記(A1)~(A3)の手法で算出できる。
(A1)ドメイン内の任意の凹部を7つ抽出する。
(A2)7つの凹部のそれぞれに関して、変曲度及びピッチを測定し、変曲度とピッチとの積を算出する。
(A3)7つの積から、最大値及び最小値を除外した5つの積の平均値を、「変曲度[度]とピッチ[μm]との積の平均値」とする。
【0062】
積の平均値を1.5以上とすることにより、液晶分子の配向性を良好にしやすくできる。積の平均値を1.5以上とすることにより、凹部を円状又は弧状に配列した場合に、液晶分子の曲がりが緩やかとなるため、液晶分子を配向しやすくできるためである。
積の平均値を10.5以下とすることにより、パターン層を安定して形成しやすくできる。賦形によりパターン層を形成する場合、積の平均値が小さい方が、賦形用の版からパターン層を剥離しやすいためである。
変曲度に対して、ピッチを乗じた理由は、「ピッチが大きければ、変曲度が小さくても、液晶分子の曲がりが緩やかとなるため、液晶分子を配向しやすくできること。」及び「ピッチが大きすぎると、変曲度が小さくても、賦形用の版からパターン層を剥離しにくくなること。」を考慮したためである。
【0063】
条件2において、積の平均値は、1.8以上であることが好ましく、2.1以上であることがより好ましい。
条件2において、積の平均値は、10.2以下であることが好ましく、9.9以下であることがより好ましい。
【0064】
なお、本明細書で示す構成要件において、数値の上限の選択肢及び下限の選択肢がそれぞれ複数示されている場合、上限の選択肢から選ばれる一つと、下限の選択肢から選ばれる一つとを組み合わせ、数値範囲の実施形態とすることができる。例えば、条件2の積の場合、1.5以上10.5以下、1.5以上10.2以下、1.5以上9.9以下、1.8以上10.5以下、1.8以上10.2以下、1.8以上9.9以下、2.1以上10.5以下、2.1以上10.2以下、2.1以上9.9以下、の数値範囲の実施形態が挙げられる。
【0065】
本開示の偏光回折素子は、条件1~3を満たすドメインの少なくとも一部のドメインが、下記の条件2’を満たすことが好ましい。
<条件2’>
ドメイン内の変曲度の平均値が1.5度以上10.5以下。
【0066】
ドメイン内の変曲度の平均値を1.5度以上とすることにより、液晶分子の配向性を良好にしやすくできる。変曲度の平均値を1.5度以上とすることにより、凹部を円状又は弧状に配列した場合に、液晶分子の曲がりが緩やかとなるため、液晶分子を配向しやすくできるためである。
ドメイン内の変曲度の平均値を10.5度以下とすることにより、パターン層を安定して形成しやすくできる。賦形によりパターン層を形成する場合、変曲度の平均値が小さい方が、賦形用の版からパターン層を剥離しやすいためである。
【0067】
条件2’において、ドメイン内の変曲度の平均値は、1.8度以上であることが好ましく、2.1度以上であることがより好ましい。
条件2’において、ドメイン内の変曲度の平均値は、10.2度以下であることが好ましく、9.9度以下であることがより好ましい。
本明細書において、ドメイン内の変曲度の平均値は、下記(B1)~(B3)の手法で算出できる。
(B1)ドメイン内の任意の凹部を7つ抽出する。
(B2)7つの凹部のそれぞれに関して、変曲度を算出する。
(B3)7つの変曲度から、最大値及び最小値を除外した5つの変曲度の平均値を、「ドメイン内の変曲度の平均値」とする。
【0068】
複数の凹部が配列して形成される弧、又は、複数の凹部が配列して形成される円は、ピッチの平均値が0.3μm以上2000μm以下であることが好ましく、0.5μm以上1700μm以下がより好ましく、0.7μm以上1500μm以下がさらに好ましい。ピッチを前記範囲とすることにより、変曲度とピッチとの積を上記範囲とする効果を発揮しやすくできる。
【0069】
上述したピッチの平均値は、走査電子顕微鏡でピッチが7つ入る画像を撮像し、7つのピッチから上限及び下限を除いた5つのピッチの平均値として算出することができる。ピッチが7つ入る画像は、複数の画像を連結して作成してもよい。
【0070】
《条件3》
前記弧状の平面視形状を有する凹部に関して、短軸方向の長さをS、長軸方向の長さをL、凹部の深さをD、と定義した際に、ドメイン内のS/Dの平均値が0.50以上である。
【0071】
図7により、弧状の平面視形状を有する凹部に関して、短軸方向の長さを示す「S」、長軸方向の長さを示す「L」、の算出方法を説明する。
第1の弧27の中点X’、第2の弧28の中点Xを確定する。次いで、中点X’と中点Xとを結ぶ直線を引く。前記直線の長さを、凹部の短軸方向の長さを示す「S」とする。
第1の弧27の端部と、第2の弧28の端部とを結ぶ2つの線に関して、それぞれ中点を確定する。図7において、符号Y、Y’が、2つの線の中点に相当する。次いで、中点Y’と中点Yとを結ぶ直線を引く。前記直線の長さを、凹部の長軸方向の長さを示す「L」とする。これらの一連の作業は、上述した条件で撮像した、パターン層の第1の面の走査電子顕微鏡の画像データ上で実施することができる。
【0072】
次に、弧状の平面視形状を有する凹部に関して、凹部の深さを示す「D」の算出方法を説明する。
凹部の深さDは、偏光回折素子の垂直断面を走査電子顕微鏡で撮像することにより測定できる。個々の凹部の深さは、個々の凹部の最大深さを意味する。走査電子顕微鏡は、下記の条件で撮像することが好ましい。走査電子顕微鏡としては、日立ハイテクノロジーズ社の商品名「SU8000」が挙げられる。
<撮像条件>
・加速電圧:5.0Kv
・エミッション電流:5.0uA
・プローブ電流:High
・検出器:SE(U)
・WD:8mm
・コンデンサレンズ1:5.0
・コンデンサレンズ2:1.0
・資料台のTilt機能:tilt角度「0.0」と入力
【0073】
本明細書において、ドメイン内のS/Dの平均値は、下記(C1)~(C3)の手法で算出できる。
(C1)パターン層の第1の面の走査電子顕微鏡の画像データ、及び、断面の走査電子顕微鏡の画像データから、ドメイン内の任意の凹部をそれぞれ7つ抽出する。(第1の面の画像データから抽出する凹部と、断面の画像データから抽出する凹部とは、一致させることが好ましいが、一致させなくても良い。ドメイン内において、個々の凹部の深さ「D」は微差はあるが略同一であるためである。)
(C2)7つの凹部の短軸方向の長さから、最大値及び最小値を除外した5つの長さの平均値を、「凹部の短軸方向の長さSの平均値」とする。7つの凹部の深さから、最大値及び最小値を除外した5つの凹部の深さの平均値を、「凹部の深さDの平均値」とする。
(C3)凹部の短軸方向の長さSの平均値を、凹部の深さDの平均値で除した値を、「ドメイン内のS/Dの平均値」とする。
【0074】
ドメイン内のS/Dの平均値を0.50以上とすることにより、パターン層を安定して形成しやすくできる。賦形によりパターン層を形成する場合、深さに対する短軸の長さが大きい方が、賦形用の版からパターン層を剥離しやすいためである。また、賦形用の版からパターン層を剥離する際に、パターン層の一部が変形する場合があるが、S/Dの平均値を0.50以上とすることにより、剥離時のパターン層の変形を抑制しやすくできる。
【0075】
条件3において、ドメイン内のS/Dの平均値は、0.55以上であることが好ましく、0.60以上であることがより好ましく、0.65以上であることがさらに好ましい。
S/Dが大きすぎると、液晶分子の配向性が低下する場合がある。このため、条件3において、ドメイン内のS/Dの平均値は、5.00以下が好ましく、4.50以下がより好ましく、4.00以下がさらに好ましい。
【0076】
条件1~3を満たすドメインは、ドメインに含まれる凹部のうち、弧状の平面視形状を有する凹部の割合が、個数基準で20%以上であることが好ましい。
弧状の平面視形状を有する凹部の割合を20%以上とすることにより、条件1~3を満たすことによる効果をより発揮しやすくできる。弧状の平面視形状を有する凹部の割合は、個数基準で、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましい。
本明細書において、上記の個数割合は、以下のように算出するものとする。
上述した条件で撮像した、走査電子顕微鏡の画像データの中から、同一ドメインに含まれる20個の凹部を抽出する。20個の凹部の中から、弧状の平面視形状を有する凹部の個数割合を算出する。20個の凹部は、同一のドメイン内から偏らないように抽出する。
【0077】
複数のドメインのうち、条件1~3を満たすドメインの割合は、ドメインの個数基準で、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましい。
なお、ドメインとして、複数の凹部が直線状に並んでいるドメインを含んでいる場合もある。かかるドメインでは、凹部の平面視形状が直線状である方が、液晶分子が配向しやすい場合がある。このため、複数のドメインのうち、条件1~3を満たすドメインの割合は、90%以下であってもよい。
上述したドメインの割合は、走査電子顕微鏡で撮像した、ピッチが少なくとも一つ入る大きさの画像から算出することができる。ピッチが1つ入る画像は、複数の画像を連結して作成してもよい。
【0078】
パターン層をより安定して形成しやすくするため、同一のドメイン内に含まれる複数の凹部は、平面視形状が互いに合同又は相似であることが好ましい。
【0079】
本明細書において、平面視形状が合同とは、凹部の短軸方向の長さを示すS、凹部の長軸方向の長さを示すLが同一であることを意味する。平面視形状が弧状の凹部の場合には、平面視形状が合同であるためには、さらに、変曲度が同一であることを要する。平面視形状が合同である場合には、さらに、短軸及び長軸の向きが同一であることが好ましい。
【0080】
本明細書において、平面視形状が相似とは、凹部の短軸方向の長さを示すSの比が0.9以上1.1以下であり、凹部の長軸方向の長さを示すLの比が0.9以上1.1以下であることを意味する。平面視形状が弧状の凹部の場合には、平面視形状が相似であるためには、さらに、変曲度の比が0.9以上1.1以下であることを要する。平面視形状が相似である場合には、さらに、短軸同士が成す角及び長軸同士が成す角がそれぞれ3度以内であることが好ましく、2度以内であることがより好ましく、1度以内であることがさらに好ましい。
【0081】
第1の面内の凹部のうち、前記弧状の平面視形状を有する凹部の割合は、個数基準で20%以上であることが好ましい。
弧状の平面視形状を有する凹部の割合を20%以上とすることにより、液晶分子の配向性をより良好にしやすくできる。弧状の平面視形状を有する凹部の割合は、個数基準で、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましい。
なお、ドメインとして、複数の凹部が直線状に並んでいるドメインを含んでいる場合がある。かかるドメインでは、凹部の平面視形状が直線状である方が、液晶分子が配向しやすい場合がある。このため、弧状の平面視形状を有する凹部の割合は、90%以下であってもよい。言い換えると、偏光回折素子は、凹部として、平面視形状が弧状以外の形状である凹部を有していてもよい。また、平面視形状が弧状以外の形状である凹部の割合は、個数基準で10%以上であってもよい。平面視形状が弧状以外の形状の凹部は、平面視形状が長方形であることが好ましい。
上述した凹部の割合は、走査電子顕微鏡で撮像した、ピッチが少なくとも一つ入る大きさの画像から算出することができる。ピッチが1つ入る画像は、複数の画像を連結して作成してもよい。
【0082】
平面視形状が弧状以外の形状である凹部に関して、凹部の短軸方向の長さをS1、長軸方向の長さをL1、凹部の深さをD1、と定義した際に、下記の関係を満たすことが好ましい。
S1/D1は0.50以上であることが好ましい。L1/S1は2.5以上30.0以下であることが好ましい。このように、平面視形状が弧状以外の形状である凹部は、変曲度以外のディメンジョンが、平面視形状が弧状の凹部と同等であることが好ましい。
【0083】
平面視形状が弧状以外の形状である凹部の、長軸方向の長さL1及び短軸方向の長さS1は、下記(1)及び(2)により算出できる。
(1)平面視形状が弧状以外の形状である凹部の少なくとも一部に接し、かつ、前記凹部を取り囲む長方形を描く。前記長方形を複数描ける場合、平面視の面積が最も小さくなる長方形を、(1)の長方形とする。
(2)上記(1)の長方形の長辺の長さを、「長軸方向の長さL1」とする。上記(1)の長方形の短辺の長さを「短軸方向の長さS1」とする。
【0084】
弧状の平面視形状を有する凹部は、L/Sの平均値が2.5以上30.0以下であることが好ましい。L/Sの平均値を3.0以上とすることにより、液晶分子の配向性をより良好にしやすくできる。L/Sの平均値を30.0以下とすることにより、パターン層を安定して形成しやすくできる。賦形によりパターン層を形成する場合、長軸が短い方が、賦形用の版からパターン層を剥離しやすいためである。また、賦形用の版からパターン層を剥離する際に、パターン層の一部が変形する場合があるが、L/Sの平均値を30.0以下とすることにより、剥離時のパターン層の変形を抑制しやすくできる。
L/Sの平均値は、2.7以上20.0以下であることがより好ましく、3.0以上17.0以下であることがさらに好ましい。
【0085】
偏光回折素子は、条件1~3を満たすドメインに関して、ドメイン内の弧状の平面視形状を有する凹部のL/Sの平均値が上記範囲であることが好ましい。この場合、「L/Sの平均値」は、同一ドメインに含まれる7個の弧状の平面視形状を有する凹部のL/Sの値から、最大値及び最小値を除外した5つのL/Sの値の平均値を意味する。
あるいは、偏光回折素子は、走査電子顕微鏡で撮像した、3000nm×3000nmの大きさの画像に含まれる、弧状の平面視形状を有する凹部のL/Sの平均値が上記範囲であることが好ましい。
【0086】
弧状の平面視形状を有する凹部は、短軸方向の長さSの平均値が、5nm以上75nm以下であることが好ましく、12nm以上55nm以下であることがより好ましく、20nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
短軸方向の長さSの平均値を5nm以上とすることにより、賦形用の版からパターン層をより剥離しやすくなるため、パターン層をより安定して形成しやすくできる。短軸方向の長さSの平均値を75nm以下とすることにより、液晶分子の配向性の低下を抑制しやすくできる。
【0087】
偏光回折素子は、条件1~3を満たすドメインに関して、ドメイン内の弧状の平面視形状を有する凹部のSの平均値が上記範囲であることが好ましい。この場合、「Sの平均値」は、同一ドメインに含まれる7個の弧状の平面視形状を有する凹部のSの値から、最大値及び最小値を除外した5つのSの値の平均値を意味する。
あるいは、偏光回折素子は、走査電子顕微鏡で撮像した、3000nm×3000nmの大きさの画像に含まれる、弧状の平面視形状を有する凹部のSの平均値が上記範囲であることが好ましい。
【0088】
弧状の平面視形状を有する凹部は、長軸方向の長さLの平均値が、15nm以上340nm以下であることが好ましく、30nm以上250nm以下であることがより好ましく、50nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。
長軸方向の長さLの平均値を15nm以上とすることにより、凹部に沿って液晶分子をより配向しやすくできる。長軸方向の長さLの平均値を340nm以下とすることにより、賦形用の版からパターン層をより剥離しやすくなるため、パターン層をより安定して形成しやすくできる。
【0089】
偏光回折素子は、条件1~3を満たすドメインに関して、ドメイン内の弧状の平面視形状を有する凹部のLの平均値が上記範囲であることが好ましい。この場合、「Lの平均値」は、同一ドメインに含まれる7個の弧状の平面視形状を有する凹部のLの値から、最大値及び最小値を除外した5つのLの値の平均値を意味する。
あるいは、偏光回折素子は、走査電子顕微鏡で撮像した、3000nm×3000nmの大きさの画像に含まれる、弧状の平面視形状を有する凹部のLの平均値が上記範囲であることが好ましい。
【0090】
弧状の平面視形状を有する凹部は、凹部の深さDの平均値が、2nm以上200nm以下であることが好ましく、20nm以上100nm以下であることがより好ましく、25nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。
凹部の深さDの平均値を2nm以上とすることにより、凹部に沿って液晶分子をより配向しやすくできる。凹部の深さDの平均値を200nm以下とすることにより、賦形用の版からパターン層をより剥離しやすくなるため、パターン層をより安定して形成しやすくできる。
なお、上述したように、個々の凹部の深さ「D」は、微差はあるが略同一である。「凹部の深さの平均D」は、任意に抽出した7個の凹部の深さDの値から、最大値及び最小値を除外した5つの深さDの値の平均値、として算出できる。
【0091】
パターン層の第1の面内において、複数の凹部が配列して形成される弧同士の間、又は、複数の凹部が配列して形成される円同士の間には、区分けのため、線状の凸部を有することが好ましい。線状の凸部には液晶が配向されにくいため、パターン層の第1の面内において、線状の凸部を有することにより、前述した区分けを明瞭にしやすくできる。図11の符号25は、線状の凸部を意味する。
線状の凸部は、幅が、0nm超100nm以下が好ましく、0nm超75nm以下がより好ましく、0nm超50nm以下がさらに好ましい。
【0092】
偏光回折素子は、第1の面内の凹部の合計面積をS1、第1の面内の凹部以外の合計面積をS2、と定義した際に、0.25≦S1/S2≦0.82であることが好ましい。
S1/S2を0.25以上とすることにより、液晶分子の配向性をより良好にしやすくできる。S1/S2を0.82以下とすることにより、賦形用の版からパターン層をより剥離しやすくなるため、パターン層をより安定して形成しやすくできる。
S1/S2は、0.35以上0.75以下であることがより好ましく、0.4以上0.70以下であることがさらに好ましい。
【0093】
偏光回折素子は、条件1~3を満たすドメインの少なくとも一部が、さらに、下記条件4を満たすことが好ましい。
<条件4>
ドメイン内に、弧状の平面視形状を有する凹部であって、平面視形状が互いに相似する2個以上5個以下の凹部を含む凹部の群を有する。さらに、ドメイン内に、前記凹部の群を繰り返し有する。
【0094】
図10は、弧状の平面視形状を有する凹部の繰り返しパターンの実施形態を示す平面図である。図10では、3個の凹部を含む凹部の群が、ドメイン内で繰り返し配列された状態を示している。図10では、符号21a、21b及び21cの3個の凹部が、一つの群を形成している。
図10では、符号21a、21b及び21cの凹部は、それぞれ長軸方向の長さが相違している。具体的には、長軸方向の長さは、凹部21cが最も長く、凹部21aが最も短い。
さらに、図10では、符号21a、21b及び21cの凹部は、それぞれ変曲度が相違している。具体的には、変曲度は、凹部21cが最も大きく、凹部21aが最も小さい。
【0095】
条件4を満たすことにより、偏光回折素子を光が透過する際の干渉を抑制しやすくできる。
【0096】
条件4において、凹部の群を構成する弧状の平面視形状を有する凹部は、下記(1)及び(2)の何れかを満たすことが好ましく、下記(1)及び(2)の両方を満たすことがより好ましい。下記(1)及び(2)の何れかを満たすことにより、パターン層の第1の面内において、凹部の密度を増やしやすくできるため、偏光回折素子における液晶層の割合を増やしやすくできる。
(1)凹部の長軸方向の長さが徐々に増加する。
(2)凹部の変曲度が徐々に増加する。
【0097】
条件4において、凹部の群を構成する凹部の数は、3個以上4個以下であることがより好ましく、3個であることがさらに好ましい。凹部の数を前記範囲とすることにより、上記(1)及び(2)を満たすことによる効果をより発揮しやすくできる。
【0098】
偏光回折素子は、パターン層の第1の面内に、2以上の凹部が連結した接合凹部を有していてもよい。接合凹部を有することにより、液晶分子の配向性をより良好にしやすくできる。
図6において、符号22は接合凹部22を示している。図6では、2つの凹部21が連結して接合凹部22を形成している。
一つの接合凹部を構成する凹部の数が増えすぎると、賦形用の版からパターン層を剥離しにくくなる場合がある。このため、一つの接合凹部を構成する凹部の数は、2以上3以下が好ましく、2がより好ましい。
【0099】
偏光回折素子は、第1の面内に含まれる凹部のうち、接合凹部の割合が、個数基準で12.3%以上71.9%以下であることが好ましい。前記割合を12.3%以上とすることにより、液晶分子の配向性をより良好にしやすくできる。前記割合を71.9%以下とすることにより、賦形用の版からパターン層をより剥離しやすくなるため、パターン層をより安定して形成しやすくできる。
前記割合は、15%以上65%以下であることがより好ましく、30%以上55%以下であることがさらに好ましい。
上述した接合凹部の割合は、走査電子顕微鏡で撮像した、ピッチが少なくとも一つ入る大きさの画像から算出することができる。ピッチが1つ入る画像は、複数の画像を連結して作成してもよい。
【0100】
第1の面内において、同一ドメイン内の凹部の間隔の平均値は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上75nm以下であることがより好ましく、10nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。図10において、符号W1は、同一ドメイン内の凹部21aと凹部21bとの間隔を示している。
同一ドメイン内の凹部の間隔の平均値は、偏光回折素子の平面写真の任意の7つの間隔から、最大値及び最小値を除外した5つの間隔の平均値を意味する。
【0101】
第1の面内において、隣り合うドメインの凹部の間隔の平均値は、0nm超100nm以下が好ましく、0nm超75nm以下がより好ましく、0nm超50nm以下であることがさらに好ましい。図6において、符号W2は、隣り合うドメインの凹部の間隔を示している。
隣り合うドメインの凹部の間隔の平均値は、偏光回折素子の平面写真の任意の7つの間隔から、最大値及び最小値を除外した5つの間隔の平均値を意味する。
【0102】
パターン層は、凹部の下方に厚みを有していてもよい。図5において、符号t2は凹部の下方のパターン層の厚みを示している。凹部の下方の厚みの平均値は、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上15μm以下、さらに好ましくは2μm以上7μm以下である。
t2を0.5μm以上とすることにより、パターン層を形成する際の硬化の制御をしやすくできるとともに、パターン層上に液晶層を塗工しやすくできる。t2を20μm以下とすることにより、カールの発生を抑制しやすくできる。
凹部の下方の厚みの平均値は、偏光回折素子の断面写真の任意の7箇所の厚みから、最大値及び最小値を除外した5箇所の厚みの平均値を意味する。
【0103】
《パターン層の材料》
パターン層は、樹脂を含むことが好ましい。パターン層の樹脂の割合は、パターン層の全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0104】
―樹脂―
パターン層の樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。これらの中でも、強度を良好にするため、硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。
硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、パターン層の全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0105】
硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられ、これらの中でも電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。
【0106】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましい。また、転写シートを製造する過程で樹脂層が傷つくことを抑制する観点からは、電離放射線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0107】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
【0108】
多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
上記電離放射線硬化性樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
電離放射線硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合には、樹脂層形成用塗布液は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0110】
偏光回折素子が基材を含む場合、基材とパターン層との界面での光の屈折を抑制するため、パターン層の屈折率を基材の屈折率に近づけることが好ましい。具体的には、パターン層の屈折率/基材の屈折率は、0.97以上1.03以下であることが好ましく、0.99以上1.01以下であることがより好ましい。
上記屈折率の関係は、制御する光の波長で満たすことが好ましい。本開示のビームステアリング素子をLiDAR用に用いる場合には、波長(λ)は、905nm又は1550nmとすることが好ましい。
【0111】
パターン層は、本開示の効果を阻害しない範囲で、屈折率調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0112】
《パターン層の形成方法》
パターン層は、例えば、第1の面の表面形状と相補的な形状を有する版を用いて、賦形前のパターン層を賦形することにより、形成することができる。
より具体的には、パターン層は、例えば、下記の工程1及び2により形成することができる。
【0113】
工程1:基材上に、樹脂を含むパターン層形成用塗布液を塗布し、樹脂を含む層を形成する工程。
工程2:パターン層の第1の面の表面形状と相補的な形状を有する版を用いて、樹脂を含む層を賦形する工程。
【0114】
パターン層形成用塗布液が溶剤を含む場合、工程1で溶剤を乾燥させることが好ましい。
【0115】
樹脂として、硬化性樹脂を用いる場合、工程1のパターン層形成用塗布液としては、硬化性樹脂組成物を含むパターン層形成用塗布液を用いることが好ましい。すなわち、樹脂として、硬化性樹脂を用いる場合、工程1の塗布液中の硬化性樹脂は未硬化の状態とすることが好ましい。
工程1のパターン層形成用塗布液として、電離放射線硬化性樹脂組成物を含むパターン層形成用塗布液を用いる場合、工程2の賦形と同時に電離放射線を照射して、賦形した層に含まれる電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化することが好ましい。
【0116】
基材とパターン層との間に、プライマー層等の他の層を有する場合には、工程1の前に、基材上に他の層を形成する工程を実施することが好ましい。
【0117】
工程2で使用する版は、例えば、レーザーリソグラフィ、電子線リソグラフィ、FIB(Focused Ion Beam)等の汎用の手段により作製することができる。また、前述した手段により作製した版を複製した版を多数作製し、複製した多数の版を並べて、多面付けの版とすることも好ましい。版の複製は、電鋳法等の汎用の手段により実施できる。
【0118】
<液晶層>
偏光回折素子において、液晶層は、パターン層の前記第1の面上に形成される。
液晶層は、例えば、パターン層上に、液晶化合物を含む液晶層形成用塗布液を塗布した後、必要に応じて乾燥及び硬化することにより、形成することができる。
【0119】
液晶化合物としては、ネマティック液晶化合物及びスメクティック液晶化合物等の棒状液晶化合物、コレステリック液晶化合物、ディスコティック液晶化合物(円盤状液晶化合物)等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0120】
液晶化合物は棒状液晶化合物が好ましい。棒状液晶化合物は特に制限されないが、下記(1)~(17)に示す棒状液晶化合物が挙げられる。
【0121】
【化1】
【0122】
【化2】
【0123】
液晶化合物の中でも、重合性棒状液晶材料が好ましい。重合性棒状液晶材料の重合性官能基としては、紫外線、電子線等の電離放射線、又は熱の作用によって重合するものが挙げられる。具体例としては、ラジカル重合性官能基が挙げられる。ラジカル重合性官能基としては、少なくとも1つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、より具体的には、置換基を有する又は有しない、ビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。
【0124】
液晶層は、パターン層の第1の面上の全面に形成することが好ましい。すなわち、パターン層の第1の面上において凹部を有しない箇所にも、液晶層を形成することが好ましい(図5)。
液晶化合物の厚みは、目的とする位相差の値に合わせて調整すればよい。
【0125】
液晶層の位相差は、所定の範囲とすることが好ましい。具体的には、制御する光の波長をλ[nm]とした場合、液晶層の位相差の平均値は、(λ/2)×0.95以上(λ/2)×1.05以下とすることが好ましく、(λ/2)×0.97以上(λ/2)×1.03以下とすることが好ましく、(λ/2)×0.99以上(λ/2)×1.01以下とすることがより好ましい。
液晶層の位相差の平均値を前記範囲とすることにより、光を回折させるとともに、光の位相を反転させることができる。偏光回折素子の面内位相差は、偏光回折素子の面内の20箇所平均値として算出することができる。本開示のビームステアリング素子をLiDAR用に用いる場合には、λは、905nm又は1550nmとすることが好ましい。
【0126】
液晶層は、薄膜化のため、単層構成であることが好ましい。
【0127】
液晶層は、正の波長分散性を有することが好ましい。正の波長分散性とは、透過光の波長が長くなるに従って透過光に与える位相差が減少する特性である。本明細書では、波長905nmにおけるリタデーションをRe905、波長1550nmにおけるリタデーションをRe1550と定義した際に、Re905>Re1550となる特性を、正の波長分散性と称する。
【0128】
パターン層上に液晶層が積層された偏光回折素子においては、パターン層の形状は、例えば、下記(1)又は(2)の手法で確認できる。なお、パターン層上の液晶層を簡易に除去できる方法であれば、下記(1)及び(2)の手法以外の手法により、パターン層の形状を確認してもよい。
(1)JIS K5600-5-6:1999に従い、液晶層表面に1mm間隔で100マスの碁盤目カットを入れる。その後、カット部にニチバン社製の18mmセロテープ(登録商標)をはりつけ、その上を消しゴムでこすって塗膜にしっかりテープを付着させる。その後、テープを瞬間的にひきはがす操作を10回以上繰り返し、塗膜を剥離する。前述した操作の途中で、碁盤目カットの一部の塗膜が剥離してきたら、剥離した部分を中心に前述した操作を繰り返すことが好ましい。このように、パターン層上の液晶層を剥離することにより、パターン層の形状を確認できる。
(2)STEMなどの断面観察時に用いる断面切削手法により、偏光回折素子をできる限り薄く断面切削して断面STEMを撮影する操作を繰り返す。得られた断面STEMをつなぎ合わせて3次元状に映像化することにより、パターン層の形状を確認できる。
【0129】
<基材>
偏光回折素子は、基材を有していてもよい。
【0130】
基材を構成する材料としては、種々の材料を使用することができるが、機械的特性、光学特性、安定性および加工性が良好な材料が好ましい。このような材料としては、脂環式構造を有する重合体樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等の樹脂;ガラス;等が挙げられ、樹脂が好ましい。すなわち、基材は樹脂基材が好ましい。
基材の面内位相差は、20nm以下であることが好ましいく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることがさらに好ましく、1nm以下であることがよりさらに好ましく、0nmであることが最も好ましい。前記位相差の基準となる光の波長λは、550nmとする。
【0131】
基材の厚みは、5μm以上1000μm以下の範囲で適宜調整することができる。
基材の厚みは、膜厚測定器で測定できる。膜厚測定器としては、ミツトヨ社のデジマチック標準外側マイクロメーター(品番:MDC-25SX)等が挙げられる。基材の厚みは、任意の10点を測定した平均値が上記数値であればよい。
【0132】
基材は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
基材は、JIS K7136:2000のヘイズが10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0133】
<その他の層>
偏光回折素子は、さらにその他の層を有していてもよい。
その他の層としては、例えば、基材とパターン層との密着性を向上するためのプライマー層、帯電防止層等が挙げられる。プライマー層は、基材とパターン層との間に形成することが好ましい。帯電防止層は、基材のパターン層とは反対側に形成することが好ましい。
【0134】
[LiDAR]
本開示のLiDARは、光源と、上述した本開示のビームステアリング素子と、受光素子とを有するものである。
【0135】
図1及び2は、本開示のLiDARの実施形態を示す概略図である。図1及び2のLiDARは、光源500と、ビームステアリング素子400とを有している。図1及び2のLiDARは、光源500と、ビームステアリング素子400との間に、コリメーター600を有している。
図1及び2では、受光素子を図示していないが、LiDARとして機能させるためには、受光素子が必要である。
【0136】
光源は、特に限定されないが、単一波長のレーザーを発光できる光源であることが好ましい。レーザー光を発する光源としては、半導体レーザー、全固体レーザー、DPSSレーザー等が挙げられる。「DPSS」は、「Diode Pumped Solid State」の略である。
【0137】
光源が発する光の波長λは、特に限定されないが、LiDAR用としては、750nm以上2500nm以下の波長が好ましい。特に、波長λは、905nm又は1550nmであることが好ましい。
【0138】
LiDARは、光源と、ビームステアリング素子との間に、コリメーターを有していてもよい。より詳しくは、LiDARは、光源と、偏光制御素子との間に、コリメーターを有していてもよい。コリメーターによって光源の光を平行光線とすることにより、LiDARの精度をより高めることができる。
コリメーターとしては、例えば、汎用のコリメートレンズを用いることができる。
【0139】
本開示のLiDARは、例えば、下記のS1及びS2のステップで動作する。
S1:光源から発せられた光が、ビームステアリング素子を透過した後、LiDARから出光するステップ。
S2:LiDARから出光した光が対象物に照射され、対象物から反射した光を、受光素子で検出するステップ
【0140】
S2で用いる受光素子は、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトカプラ、フォトセンサー、光電素子等の汎用の受光素子を用いることができる。
【実施例0141】
次に、本開示を実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準とする。
【0142】
1.測定及び評価
実施例及び比較例のビームステアリング素子を構成する偏光回折素子に関して、下記の測定及び評価を実施した。
各測定及び評価時の雰囲気は、温度23±5℃、相対湿度40%以上65%以下とした。各測定及び評価の開始前に、対象サンプルを前記雰囲気に30分以上60分以下晒してから測定及び評価を行った。
【0143】
1-1.パターン層の凹部の平面視形状
実施例及び比較例で用いる偏光回折素子の中間体のパターン層の第1面を、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社、商品名「SU8000」)を用いて撮像した。撮像条件は下記の通りとした。中間体とは、基材上に、プライマー層及びパターン層を有する積層体を意味する。そして、明細書本文に記載した手法に基づき、短軸方向の長さSの平均値、長軸方向の長さLの平均値、L/Sの平均値、S1/S2、接合凹部の割合、同一ドメイン内の凹部の間隔の平均値を示すW1を算出した。また、複数の凹部が配列して形成される弧のピッチを算出した。結果を表3に示す。パターン層を形成する際に、版からパターン層を剥離できなかった比較例は、結果を「-」と表記した。
<撮像条件>
・加速電圧:5.0Kv
・エミッション電流:5.0uA
・プローブ電流:High
・検出器:SE(U)
・WD:8mm
・コンデンサレンズ1:5.0
・コンデンサレンズ2:1.0
・資料台のTilt機能:tilt角度「0.0」と入力
【0144】
1-2.パターン層の凹部の深さ
実施例及び比較例の偏光回折素子の垂直断面を、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社、商品名「SU8000」)を用いて撮像した。撮像条件は上記1-1と同じとした。そして、明細書本文に記載した手法に基づき、前記中間体の凹部の深さDの平均値を測定した。本測定と、1-1の測定とから、弧状の平面視形状を有する凹部のS/Dの平均値を算出した。結果を表3に示す。
【0145】
1-3.剥離性
下記の基準で剥離性を評価した。結果を表3に示す。
A:パターン層を形成する際に、賦形用の版に樹脂が残存せず、版からのパターン層の剥離性が良好であったもの。
B:パターン層を形成する際に、賦形用の版に樹脂の一部が残存してしまい、版からのパターン層の剥離性が良好ではなかったもの。
C:パターン層を形成する際に、賦形した層から賦形用の版を剥離できなかったもの。
【0146】
1-4.パターン層の変形
版からパターン層を剥離した後に、下記の基準でパターン層の変形の有無を評価した。結果を表3に示す。1-3で評価Cのものは、本評価ができないため、結果を「-」と表記した。
A:パターン層の凹部を有しない箇所が変形していなかったもの。
B:パターン層の凹部を有しない箇所のごく一部が変形しているが、液晶層の形成には支障がなかったもの。
C:パターン層の凹部を有しない箇所の変形が目立ち、液晶層を形成できなかったもの。
【0147】
1-5.光回折性
実施例及び比較例で用いる偏光回折素子に関して、下記の基準で、偏光回折素子の光回折性の評価をした。下記の非回折率が小さいほど視野角が大きく光回折性が良好と言える。結果を表3に示す。1-3で評価Cのもの、又は、1-4で評価Cのものは、本評価ができないため、結果を「-」と表記した。
評価の際のレーザー照射装置は、下記の装置1又は2を用いた。面内位相差が452nmの偏光回折素子には、装置2を用いた。面内位相差が775nmの偏光回折素子には、装置1を用いた。
・装置1:ソーラボ社製の商品名「LPS-1550-FC」
・装置2:ソーラボ社製の商品名「LP904-SF3」
<非回折光強度>
左円偏光又は右円偏光で、波長が1550nm又は904nmのレーザーを照射したときに、回折せず直進する光の強度
<入力光強度>
入力する左円偏光又は右円偏光で、波長が1550nm又は904nmのレーザーの強度
《非回折率》
非回折率は、前記非回折光強度を前記入力光強度で除して得られる値である。実施例及び比較例で用いる偏光回折素子の非回折率を、下記の基準で評価した。
A:0.01未満
B:0.05未満 0.01以上
C:0.05以上
【0148】
2.版の作製
シミュレーションツールを使い、パターン層の第1の面の形状を設計した。第1の面は、複数の凹部が、ドメインの配列方向に沿って弧状に配列された形状とした。また、凹部の平面視形状は、全て弧状の平面視形状とした。シミュレーションにおいては、個々の凹部のディメンジョン、及び、複数の凹部が配列して形成される弧のピッチが、表2に記載の値となるようした。
6インチ角サイズの合成石英板を用い、電子線描画装置とドライエッチング装置を使用した電子線リソグラフィプロセスにより、シミュレーションで設計した表面形状を備えた、石英の母型を作製した。
次いで、母型に紫外線硬化性樹脂を流し込んだ後、紫外線を照射して樹脂を硬化した。その後、母型から樹脂を剥離して、母型の形状と相補的形状を有する樹脂版を得た。次いで、電鋳法により、樹脂版の形状と相補的形状を有する型である、母型の複製型を得た。前記複製型を複数作製した。複数の複製型をロールに巻き付け、実施例及び比較例で用いる、ロール状の版を作製した。
【0149】
3.偏光回折素子の作製
[実施例1]
基材(厚み40μmのシクロオレフィンポリマー。日本ゼオン社の商品名「ゼオノア」)上に、下記処方のプライマー層を塗布、乾燥することにより、厚み0.5μmのプライマー層を形成した。
次いで、プライマー層上に下記処方のパターン層形成用塗布液を塗布、乾燥し、未硬化の樹脂を含む層を形成した。
次いで、上記「2」で作製したロール状の版を用いて、未硬化の樹脂を含む層を賦形すると同時に、基材側から紫外線を照射して(積算光量:500mJ/cm)、賦形した樹脂を含む層を硬化させた。次いで、版から賦形した層を剥離し、基材上にプライマー層及びパターン層を有する積層体を得た。
次いで、パターン層上に下記の液晶層形成用塗布液を塗布、乾燥した後、紫外線を照射して(積算光量:150mJ/cm)、液晶層を形成した。液晶層の厚みは、面内位相差が表3の値になるように調整した。ピッチが1μmの実施例1では、前記の膜厚を12回に分割して塗工した。後述する実施例及び比較例では、ピッチが1.7μmの場合は前記の膜厚を10回に分割して塗工し、ピッチが5μmの場合は前記の膜厚を3回に分割して塗工し、ピッチが13μmの場合は前記の膜厚を2回に分割して塗工し、ピッチが22.2μm及び44.4μmの場合は前記の膜厚を1回で塗工した。ピッチの大きさにより液晶の配向性が異なるためである。
以上の工程により、実施例1のビームステアリング素子で用いる偏光回折素子を得た。
【0150】
<プライマー層形成用塗布液>
・ポリオレフィン系樹脂:70質量部
(三菱ケミカル社製、商品名:サーフレンP-1000)
・シリカ系易滑剤:5質量部
(CIKナノテック社製、商品名:SIRMIBK15WT%-E65)
・メチルエチルケトン:25質量部
【0151】
<パターン層形成用塗布液>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:96質量部
(日本化薬社製、商品名:PET-30)
・光重合開始剤:4質量部
(IGM社製、商品名:Omnirad184)
【0152】
<液晶層形成用塗布液>
・棒状液晶分子:10質量部
(LC242(商品名)、BASF社製)
・光重合開始剤:0.4質量部
(IGM社製、商品名:Omnirad184)
・メチルエチルケトン:89.6質量部
【0153】
[実施例2~14]、[比較例1、6、8~11]
版を表1のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、基材上にプライマー層及びパターン層を有する積層体、並びに、ビームステアリング素子で用いる偏光回折素子を得た。
【0154】
[比較例2~5、7]
版を表1のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、基材上にプライマー層及びパターン層を有する積層体を得た。比較例2~3、7は、パターン層が液晶層を形成できないほど変形しており、比較例4~5は、剥離性が悪くパターン層を形成できなかったため、偏光回折素子を作製できないものであった。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
実施例1~14のビームステアリング素子は、光回折性が良好であるため視野角が広くすることができることが確認でき、さらに、剥離性が良好であり、欠落を抑制できるため、安定した品質を付与できることが確認できる。
【0158】
4.ビームステアリング素子及びLiDARの作製
上記「3」で作製した実施例1、8、10~13用の偏光回折素子を用いて、実施例1、8、10~13のビームステアリング素子及びLiDARを作製した。実施例1、8、10~13のビームステアリング素子及びLiDARの構成は、表4に記載の構成とした。
【0159】
【表4】
【0160】
実施例1、8、10~13のビームステアリング素子及びLiDARは、対象物までの距離を測定する動作に支障がなかった。このため、本開示のビームステアリング素子及びLiDARによれば、ビームステアリング素子及びLiDARの品質を安定化できることが確認できる。
【符号の説明】
【0161】
10:基材
20:パターン層
20a:第1の面
20b:第2の面
21:凹部
22:接合凹部
23a、23b、23c、23d、23e、23f、23g、23h:ドメイン
24:複数の凹部が弧状に配列された状態
25:線状の凸部
27:第1の弧
28:第2の弧
30:液晶層
100:偏光回折素子
101:第1の偏光回折素子
102:第2の偏光回折素子
200:偏光制御素子
301:第1のスイッチング素子
302:第2のスイッチング素子
400:ビームステアリング素子
500:光源
600:コリメーター
700:ビームステアリング装置
701:LiDAR
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11