(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166850
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】水中ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20231115BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
F04D15/00 B
F04B49/06 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077675
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】502002407
【氏名又は名称】川本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】松本 海希
(72)【発明者】
【氏名】深川 豊明
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 邦宜
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA01
3H020AA08
3H020BA03
3H020BA08
3H020BA11
3H020CA07
3H020CA08
3H020CA10
3H020DA01
3H020EA04
3H020EA05
3H020EA12
3H020EA14
3H145AA06
3H145AA12
3H145AA23
3H145AA40
3H145BA03
3H145BA07
3H145BA28
3H145CA21
3H145CA24
3H145CA30
3H145DA01
3H145EA04
3H145EA15
3H145EA16
3H145EA20
3H145EA22
3H145EA36
3H145EA42
(57)【要約】
【課題】水温が高い場合であっても使用可能な水中ポンプ装置を提供すること。
【解決手段】水中ポンプ装置10は、ポンプ30と、ポンプ30を駆動するモータ40と、モータ40の停止後の経過時間及び始動後の経過時間を計測する時間計測部53と、筐体20の温度を計測する温度計測部54と、モータ40の停止設定時間及び運転設定時間、所定の温度変化を判定する単位時間及び温度変化量、を記憶する記憶部57と、温度計測部54で計測した温度が単位時間で温度変化量だけ変化したときに所定の温度変化と判定でき、モータ40の停止後から停止設定時間経過、又は、所定の温度変化の判定の少なくとも一方の条件を満たした時に、モータ40を始動し、モータ40の始動後に、所定の温度変化と判定すると、モータ40を停止する制御部51を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水部に設置され、前記貯水部の水を排水する水中ポンプ装置において、
前記貯水部内に配置された筐体と、
前記筐体に設けられたポンプと、
前記筐体内に配置され、前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータの停止後の経過時間及び始動後の経過時間を計測する時間計測部と、
前記筐体の温度を計測する温度計測部と、
前記モータの停止後の経過時間における停止設定時間、前記モータの始動後の運転設定時間、及び、所定の温度変化を判定する単位時間及び温度変化量、を記憶する記憶部と、
前記温度計測部で計測した温度が前記単位時間で前記温度変化量だけ変化したときに前記所定の温度変化と判定でき、前記モータの停止後から前記停止設定時間経過、又は、前記所定の温度変化の判定の少なくとも一方の条件を満たした時に、前記モータを始動し、前記モータの始動後に、前記所定の温度変化と判定すると、前記モータを停止する制御部と、
を具備する水中ポンプ装置。
【請求項2】
前記筐体内に配置され、前記モータを駆動するインバータと、
前記モータへの印加電流を計測する電流計測部と、
前記モータの運転周波数を計測する運転周波数計測部と、をさらに備え、
前記記憶部は、前記電流計測部における設定電流値及び前記運転周波数計測部における設定周波数を記憶し、
前記制御部は、前記モータの始動後に、前記所定の温度変化の判定に加えて、前記モータの始動後から前記運転設定時間経過、前記印加電流が前記設定電流値未満、及び、前記運転周波数が前記設定周波数以上の少なくともいずれかを満たしたときに、前記モータを停止する、請求項1に記載の水中ポンプ装置。
【請求項3】
前記貯水部の水位を計測する水位検出部をさらに備え、
前記記憶部は、始動設定水位、停止設定水位を記憶し、
前記制御部は、前記モータの前回停止後から前記停止設定時間経過、前記所定の温度変化の判定、及び、前記水位検出部により検出された水位が前記始動設定水位以上の少なくともいずれかの条件を満たした時に、前記モータを始動し、前記モータの始動後に、前記所定の温度変化の判定に加えて、前記モータの始動後から前記運転設定時間経過、前記印加電流が前記設定電流値未満、前記運転周波数が前記設定周波数以上、及び、前記水位検出部により検出された水位が前記停止設定水位未満の少なくともいずれかを満たしたときに、前記モータを停止する、請求項2に記載の水中ポンプ装置。
【請求項4】
前記水位検出部は、圧力式水位検出器である請求項3に記載の水中ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水タンク等に設置される自動運転型の水中ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貯水タンクに貯留された水を排水するため、貯水タンクには水中ポンプ装置が設置されている。このような水中ポンプ装置として、貯水タンク内の水位を検知するフロートスイッチ等の水位検知センサと、この水位検知センサの水位信号に応じてポンプを運転・停止する運転制御回路とを備え、水が一定量以上に達するとポンプを始動させる自動運転型のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、フロートスイッチは、筐体外部に配置される構成であるため、フロートスイッチと電装部とを接続するケーブルを通す孔部を筐体に形成しなければならない。また、フロートスイッチはある程度の大きさがあるため、狭い設置場所に水中ポンプ装置を設置する場合に、電源ケーブルや配管等に接触して正確な水位が検出できない虞があった。
【0004】
そこで、フロートスイッチを用いることなく、貯水タンク内の水位を検出してポンプの始動・停止制御を行うことができる水中ポンプ装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。例えば、特許文献3の水中ポンプ装置は、筐体の温度を計測し、計測温度が設定温度以上であることをポンプ始動及び停止の条件の一つとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-286990号公報
【特許文献2】特開2019-190278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポンプ始動及び停止の条件として、計測した温度と設定温度とを比較する水中ポンプ装置では、排水する水の温度が低い場合には問題とならないが、排水する水の温度が高い温水等である場合には、ポンプの始動及び停止の水位であっても、ポンプの始動及び停止の条件を満たさない虞がある。
【0007】
そこで本発明は、水温が高い場合であっても使用可能な水中ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様として、貯水部に設置され、前記貯水部の水を排水する水中ポンプ装置において、前記貯水部内に配置された筐体と、前記筐体に設けられたポンプと、前記筐体内に配置され、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータの停止後の経過時間及び始動後の経過時間を計測する時間計測部と、前記筐体の温度を計測する温度計測部と、前記モータの停止後の経過時間における停止設定時間、前記モータの始動後の運転設定時間、及び、所定の温度変化を判定する単位時間及び温度変化量、を記憶する記憶部と、前記温度計測部で計測した温度が前記単位時間で前記温度変化量だけ変化したときに前記所定の温度変化と判定でき、前記モータの停止後から前記停止設定時間経過、又は、前記所定の温度変化の判定の少なくとも一方の条件を満たした時に、前記モータを始動し、前記モータの始動後に、前記所定の温度変化と判定すると、前記モータを停止する制御部と、具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水温が高い場合であっても使用可能な水中ポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水中ポンプ装置の構成を示す説明図。
【
図2】同水中ポンプ装置における始動・停止判定プロセスの一例を示すフロー図。
【
図3】同水中ポンプ装置における始動・停止判定プロセスの他の例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る水中ポンプ装置10の説明を、
図1乃至
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水中ポンプ装置10の構成を示す説明図である。
図2は、水中ポンプ装置10の始動及び停止判定プロセスの一例を示すフロー図であり、
図3は、水中ポンプ装置10の始動及び停止判定プロセスの他の例を示すフロー図である。
【0012】
図1に示すように、水中ポンプ装置10は、例えば、貯水部としての貯水タンク100に設置される。水中ポンプ装置10は、外部配管200に接続され、貯水タンク100内の水を、外部配管200を介して外部に排水する。なお、貯水タンク100は、所定の水位の水を貯留できる。貯水タンク100は、外部から水が流入可能に形成される。
【0013】
図1に示すように、水中ポンプ装置10は、貯水タンク100内に配置された筐体20と、筐体20の下部に設けられたポンプ30と、圧力式水位検出器60と、を備える。筐体20は、ポンプ30を駆動するモータ40と、このモータ40を駆動制御する電装部50と、を備える。筐体20は、内部にモータ40及び電装部50を収容する。
【0014】
ポンプ30は、吸入孔31及び外部配管200が接続される吐出口32を備える。ポンプ30は、ケーシング内にインペラを有し、インペラがモータ40の回転軸に接続される。
【0015】
電装部50は、制御部51、インバータ52、時間計測部53、温度計測部54、電流計測部55、運転周波数計測部56、記憶部57及び外部入力部58を備える。制御部51、インバータ52、時間計測部53、温度計測部54、電流計測部55、運転周波数計測部56、記憶部57及び外部入力部58は、システムバスにより接続される。
【0016】
制御部51は、予め定められたプログラムに従い、時間計測部53、温度計測部54、電流計測部55、運転周波数計測部56、記憶部57及び外部入力部58からの出力値に基づいて制御を行う。制御部51は、「周波数一定モード」及び「電流値一定モード」を必要に応じて切り換えることが可能である。インバータ52は、モータ40を駆動する。時間計測部53は、計時する。例えば、時間計測部53は、インバータ52の動作に基づいてモータ40の停止後の経過時間T1及び始動後の経過時間S1を計測する。温度計測部54は、筐体20内部の温度t1を計測する。また、例えば、時間計測部53は、温度計測部54で温度を計測しているときに時間を計測する。例えば、制御部51は、温度計測部54で計測した温度の変化、及び、時間計測部53で計測した時間から、急激な温度変化(所定の温度変化)が生じたことを判定する。
【0017】
ここで、「急激な温度変化」とは、所定の時間(単位時間)における温度変化量(上昇又は下降)が大きい温度変化をいう。具体例として、「急激な温度変化」とは、外気温の変化又は水温の変化のみでは生じず、筐体20が外気に晒された状態から水に接触すること、又は、筐体20が水に接触した状態から外気に晒されること、のいずれかによって生じる、筐体20の所定の温度変化である。そして、「急激な温度変化」は、予め設定された単位時間で所定の温度だけ上昇又は下降したときに制御部51が判定する。また、「急激な温度変化」の条件は、任意に設定され、記憶部57に記憶される。なお、設定値は、水中ポンプ装置10の性能、予測される水温、季節、外気温等によって適宜設定される。
【0018】
例えば、制御部51は、定期的に温度計測部54で温度を検出し、所定の温度変化量での温度変化が所定の時間(単位時間)で行われたときに、急激な温度変化と判定してもよく、また、温度計測部54で温度を常時計測し、所定の温度変化量の温度変化が所定の時間(単位時間)で生じたときに、急激な温度変化が生じたと判定してもよい。
【0019】
電流計測部55は、インバータ52の動作に基づいてモータ40に印加される電流値(印加電流)c1を計測する。運転周波数計測部56は、インバータ52の動作に基づいてモータ40の運転周波数f1を計測する。
【0020】
記憶部57は、予め決められた各種値、すなわちモータ40の停止後の経過時間における、停止を維持する停止設定時間Tk及び始動後の経過時間における運転設定時間Sk、電流計測部55における設定電流値ck、運転周波数計測部56における設定周波数fkを記憶する。また、記憶部57は、「急激な温度変化」を判定する単位時間tj及び単位時間tjにおいて急激な温度変化と判定する上昇又は下降する温度変化量tkを記憶する。外部入力部58は、筐体20外部に配置された圧力式水位検出器60に接続されている。
【0021】
圧力式水位検出器60は、貯水タンク100の水位を検出する水位検出器である。圧力式水位検出器60は、無段階に圧力が検出可能なセンサである。圧力式水位検出器60は、例えば、圧力発信器又は大気圧測定器である。圧力式水位検出器60は、例えば、水位L1に対応する圧力値を出力信号として、制御部51に出力する。
【0022】
以下、このように構成された水中ポンプ装置10によって行われる貯水タンク100の排水動作におけるポンプ30の始動及び停止の判定プロセスの一例について説明する。なお、ポンプ30の始動及び停止は、制御部51がモータ40を始動及び停止することで行われる。始めに、
図2のフロー図に沿って説明する。この例においては、制御部51は、圧力式水位検出器60からの出力値を用いないため、水中ポンプ装置10は、圧力式水位検出器60を有さない構成としてもよい。
【0023】
記憶部57が記憶する各種値として、例えば、停止設定時間Tk=3分、運転設定時間Sk=3分、単位時間tj=1分、温度変化量tk=5℃、設定電流値ck=10A(モータ40の定格電流の50%)、設定周波数fk=60Hzとする。なお、これらの各種値はあくまでも一例であり、貯水タンク100の容量、ポンプ30の形式、モータ40の定格、水温や外気温等の環境条件等によって適宜変更することが可能である。
【0024】
使用者が電源をONにすると、制御部51が起動する(ステップST10)。制御部51は、ポンプ30の動作の停止を確認する(ステップST11)。制御部51は、始動条件を満たしたか否を判定する(ステップST12)。ステップST12の具体例として、制御部51は、急激な温度変化が生じたか否か、又は、停止時間T1が停止設定時間Tk以上か否かの少なくとも一方を満たしているかを判定する(ステップST12)。急激な温度変化が生じたか否かの判定として、制御部51は、例えば、温度変化量tk以上の温度変化が単位時間tj以内に生じた場合には、急激な温度変化が生じたと判定し、温度変化量tk未満の温度変化か、又は、温度変化量tk以上の温度変化が単位時間tjよりも長い時間により生じた場合には、急激な温度変化が生じていないと判定する。
【0025】
少なくとも一方を満たしていれば(ステップST12のYes)、ポンプ30を始動する(ステップST13)。両方を満たしていなければ(ステップST12のNo)、ST12に戻り、ポンプ30の始動条件を満たすまで、繰り返し、始動条件を満たしたか否かを判定する。ステップST12における始動条件は、モータ40が停止してから一定時間が経過するか、貯水タンク100の水位が筐体20の電装部50(温度計測部54)が収容されている付近の高さに達し、温度計測部54が貯水タンク100の水により冷却又は加温されていることである。
【0026】
具体的に説明すると、水位が筐体20の電装部50(温度計測部54)が収容されている付近の高さに達していない場合には、筐体20の温度は、外気温又は電装部50内の温度に準じ、水位が筐体20の電装部50(温度計測部54)が収容されている付近の高さに達すると、水温に応じて筐体20の温度が所定時間の間に変化する。制御部51は、温度計測部54で計測した温度及び時間計測部53で計測した時間から、単位時間における温度変化が所定の温度変化量であり、急激な温度変化が生じたと判定したときに、水位が始動水位に達したと推定し、始動条件の一つとする。
【0027】
ポンプ30を始動後、制御部51は、停止条件を満たしたか否かをステップST14~ステップST16に基づいて判定する。すなわち、制御部51は、ポンプ30の始動後一定時間を経過したか否かとして、運転時間S1が運転設定時間Sk以上か否かを満たしているかを判定する(ステップST14)。そして、運転時間S1が運転設定時間Sk未満であれば(ステップST14のNo)、制御部51は、ステップST14に戻る。運転時間S1が運転設定時間Sk以上であった場合には(ステップST14のYes)、制御部51は、ステップST15に進む。制御部51は、急激な温度変化が生じたか否かとして、温度計測部54で計測した温度が、単位時間tjの間に所定の温度変化量tkだけ変化したか否かを判定する(ステップST15)。そして、単位時間tjで所定の温度変化量tkだけ温度計測部54で計測した温度が変化していない場合(ステップST15のNo)には、制御部51はステップST15に戻る。単位時間tjで所定の温度変化量tkだけ温度計測部54で計測した温度が変化した場合(ステップST15のYes)には、制御部51は、急激な温度変化が生じたと判定し、ステップST16に進む。
【0028】
制御部51は、モータ40への印加電流c1が設定電流値ck未満か否か(電流値一定モードの場合)、又は、モータ40の運転周波数f1が設定周波数fk以上か否か(周波数一定モードの場合)を判定する(ステップST16)。そして、設定電流値ck以上、又は、設定周波数fk未満であれば、制御部51はステップST16に戻り(ステップST16のNo)、設定電流値ck未満、又は、設定周波数fk以上であれば(ステップST16のYes)、制御部51は、停止条件を満たしたとして、ステップST11に戻り、ポンプ30を停止する。
【0029】
このような制御により、水中ポンプ装置10では、ポンプ30が始動条件を満たすと始動し、停止条件を満たすと停止する。
【0030】
なお、ステップST14~ステップST16における停止条件は、所定の時間が経過し、貯水タンク100の水位が低下し、この水位の低下によって筐体20が水に浸されておらず、外気に晒されて筐体20の温度が急激に変化し、そして、貯水タンク100の水位がポンプ30の吸入孔に達せず、ポンプ30が空転(無負荷運転)しているときである。すなわちポンプ30が空転している場合は、ポンプ30を駆動するモータ40に印加される印加電流c1は、揚水時の電流値より小さい値となると共に、運転周波数f1が増加する。
【0031】
このように、水中ポンプ装置10は、フロートスイッチを用いることなく、ポンプ30の始動・停止を制御することができる。したがって、部品コスト・製造コストを抑えることができると共に、狭い設置場所に水中ポンプ装置を設置した場合に、フロートスイッチが電源ケーブルや配管等に接触して正確な水位が検出できないという問題が生じない。また、温度計測部54で計測した温度が所定の時間(単位時間)で所定の温度変化量(上昇又は下降)だけ変化したか否かで、水位の変化を推定することで、水中ポンプ装置10は、水温が高い温水等であっても、ポンプ30を停止及び始動することができる。
【0032】
次に、水中ポンプ装置10によって行われる圧力式水位検出器60を用いた貯水タンク100の排水動作における、ポンプ30の始動及び停止の判定プロセスの他の例について
図3に示すフロー図に沿って説明する。なお、ポンプ30の始動及び停止は、制御部51がモータ40を始動及び停止することで行われる。この例においては、制御部51には、外部入力部58を介して圧力式水位検出器60から水位L1が入力される。なお、記憶部57が記憶する各種値として上述したものと同様の数値を用いる。また、記憶部57には、始動設定水位Lk1及び停止設定水位Lk2が記憶されている。なお、始動設定水位Lk1は停止設定水位Lk2よりも高く設定されている。これらの各種値はあくまでも一例であり、貯水タンク100の容量、ポンプ30の形式、モータ40の定格によって適宜変更することが可能である。
【0033】
使用者が電源をONにすると、制御部51が起動する(ステップST20)。制御部51は、ポンプ30の動作の停止を確認する(ステップST21)。制御部51は、始動条件を満たしたか否か、すなわち急激な温度変化が生じたか否か、停止時間T1が停止設定時間Tk以上か否か、又は水位L1が始動設定水位Lk1のいずれかを満たしているかを判定する(ステップST22)。少なくとも1つの条件を満たしていれば(ステップST22のYes)、ポンプ30を始動する(ステップST23)。全ての条件を満たしていなければ(ステップST22のNo)、ST22に戻る。ステップST22における始動条件は、モータ40が停止してから一定時間が経過するか、貯水タンク100の水位が筐体20の電装部50(温度計測部54)が収容されている付近の高さに達し、温度計測部54が貯水タンク100の水により冷却又は加温され、実際に水位L1が十分に高いことである。
【0034】
ポンプ30を始動後、制御部51は、停止条件を満たしたか否かをステップST24~ステップST27に基づいて判定する。制御部51は、運転時間S1が運転設定時間Sk以上か否かを満たしているかを判定する(ステップST24)。そして、運転時間S1が運転設定時間Sk未満であれば(ステップST24のNo)、制御部51は、ステップST24に戻る。運転時間S1が運転設定時間Sk以上であった場合には(ステップST24のYes)、制御部51は、ステップST25に進む。
【0035】
制御部51は、圧力式水位検出器60で計測された水位L1が停止設定水位Lk2未満か否かを判定する(ステップST25)。そして、停止設定水位Lk2未満であれば、制御部51はステップST21に戻り(ステップST25のYes)、停止設定水位Lk2以上であれば(ステップST25のNo)、制御部51はステップST26に進む。
【0036】
制御部51は、急激な温度変化が生じたか否かとして、温度計測部54で計測した温度が、単位時間tjの間に所定の温度変化量tkだけ変化したか否かを判定する(ステップST26)。そして、単位時間tjで所定の温度変化量tkだけ温度計測部54で計測した温度が変化していない場合(ステップST26のNo)には、制御部51はステップST26に戻る。単位時間tjで所定の温度変化量tkだけ温度計測部54で計測した温度が変化した場合(ステップST26のYes)には、制御部51は、急激な温度変化が生じたと判定し、ステップST27に進む。
【0037】
制御部51は、モータ40への印加電流c1が設定電流値ck未満か否か(電流値一定モードの場合)、又は、モータ40の運転周波数f1が設定周波数fk以上か否か(周波数一定モードの場合)を判定する(ステップST27)。そして、設定電流値ck以上、又は、設定周波数fk未満であれば、制御部51はステップST27に戻り(ステップST27のNo)、設定電流値ck未満、又は、設定周波数fk以上であれば、制御部51はステップST11に戻る(ステップST27のYes)。
【0038】
このような制御により、水中ポンプ装置10では、ポンプ30が始動条件を満たすと始動し、停止条件を満たすと停止する。
【0039】
なお、ステップST24~ステップST27における停止条件は、所定の時間が経過し、貯水タンク100の水位が低下し、この水位の低下によって筐体20が水に浸されておらず、外気に晒されて筐体20の温度が急激に変化し、貯水タンク100の水位がポンプ30の吸入孔に達せず、ポンプ30が空転(無負荷運転)していることである。
【0040】
このように、水中ポンプ装置10は、フロートスイッチを用いることなく、ポンプ30の始動・停止を制御することができる。したがって、また、フロートスイッチのように機械的可動部分の無い圧力式水位検出器60を用いることで、狭い設置場所に水中ポンプ装置を設置した場合に、フロートスイッチが電源ケーブルや配管等に接触して正確な水位が検出できないという問題が生じない。また、温度計測部54で計測した温度が所定の時間(単位時間)で所定の温度変化量(上昇又は下降)だけ変化したか否かで、水位の変化を推定することで、水中ポンプ装置10は、水温が高い温水等であっても、ポンプ30を停止及び始動することができる。また、このような水中ポンプ装置10においては、圧力式水位検出器60による水位検出に基づく始動・停止制御と、水位センサを用いない始動・停止制御を並行して行っているため、動作をより確実に行われる。
【0041】
なお、上述した実施形態においては、制御部51は、計測温度t1、モータ40への印加電流c1、モータ40の運転周波数f1が全て条件を満たしている場合にのみ、ポンプ停止しているが、いずれか1つ、あるいは2つの条件が満たされれば、ポンプ停止するようにしてもよい。また、2つ以上の条件を満たしている場合にポンプ30を停止する場合には、制御部51がポンプ停止の条件を判定する順番は限定されず、また、判定を同時に行う構成としてもよい。また、制御部51は、「周波数一定モード」及び「電流値一定モード」を必要に応じて切り換えると説明したが、「周波数一定モード」及び「電流値一定モード」を同時に設定することも可能である。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0043】
10…水中ポンプ装置、20…筐体、30…ポンプ、31…吸入孔、32…吐出口、40…モータ、50…電装部、51…制御部、52…インバータ、53…時間計測部、54…温度計測部、55…電流計測部、56…運転周波数計測部、57…記憶部、58…外部入力部、60…圧力式水位検出器、100…貯水タンク(貯水部)、200…外部配管。