(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166860
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】地震動シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
G01V 1/28 20060101AFI20231115BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20231115BHJP
【FI】
G01V1/28
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077688
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大渕 正博
(72)【発明者】
【氏名】本田 栞
(72)【発明者】
【氏名】久家 英夫
【テーマコード(参考)】
2G105
5B146
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105MM01
5B146AA04
5B146DC05
5B146DG02
5B146DJ14
(57)【要約】
【課題】ユーザの調整に応じて地震動シミュレーションの概算的な結果を即時に提供する。
【解決手段】地震動シミュレーション装置14は、震源情報、地震規模情報、及び建設地点情報と、設定パラメータとに基づいて、建設地点情報が表す建設地点における地震動シミュレーションを実行し、地震動シミュレーションの結果を表示部に表示させる。地震動シミュレーション装置14は、ユーザから入力されたパラメータであって、地震動シミュレーションの条件を調整するためのパラメータである調整パラメータを受け付ける。地震動シミュレーション装置14は、調整パラメータと、地震動シミュレーションの結果とに基づいて、再度の地震動シミュレーションを実行することなく、調整パラメータに応じて地震動シミュレーションの結果を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シミュレーション対象とする地震の震源の位置に関する震源情報と、前記地震の規模に関する地震規模情報と、建物を建設する地点を表す建設地点に関する建設地点情報とを取得する取得部と、
地震の震源毎に予め設定されたパラメータであって、かつ地震動シミュレーションの条件に関するパラメータである設定パラメータを記憶している記憶部から、前記震源情報が表す震源に対応付けられた前記設定パラメータを読み出すパラメータ読出部と、
前記取得部により取得された前記震源情報、前記地震規模情報、及び前記建設地点情報と、前記パラメータ読出部により読み出された前記設定パラメータとに基づいて、前記建設地点情報が表す建設地点における地震動シミュレーションを実行し、前記地震動シミュレーションの結果を表示部に表示させるシミュレーション部と、
ユーザから入力されたパラメータであって、前記地震動シミュレーションの条件を調整するためのパラメータである調整パラメータを受け付ける調整パラメータ受付部と、
前記調整パラメータ受付部により受け付けられた前記調整パラメータと、前記地震動シミュレーションの結果とに基づいて、再度の前記地震動シミュレーションを実行することなく、前記調整パラメータに応じて前記地震動シミュレーションの結果を補正する補正部と、
を備えた地震動シミュレーション装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記調整パラメータ受付部により受け付けられた前記調整パラメータと、前記調整パラメータの種類毎に予め設定されたパラメータであって、かつ前記調整パラメータに応じて前記地震動シミュレーションの結果を補正するパラメータである補正係数パラメータと、前記地震動シミュレーションの結果とに基づいて、前記地震動シミュレーションの結果を補正する、
請求項1に記載の地震動シミュレーション装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記調整パラメータ受付部により受け付けられた前記調整パラメータと、前記地震動シミュレーションの結果とを、予め機械学習された学習済みモデル又は予め生成された統計モデルへ入力し、前記学習済みモデル又は前記統計モデルから出力される、補正済みの前記地震動シミュレーションの結果を取得することにより、前記地震動シミュレーションの結果を補正する、
請求項1に記載の地震動シミュレーション装置。
【請求項4】
前記地震動シミュレーションは、設定された断層毎に繰り返される、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の地震動シミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震動シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、将来発生すると考えられる地震動を高精度で評価・予測するための地震動評価モデルを生成可能な地震動評価モデル生成方法が知られている(例えば、特許文献1~5を参照)。この地震動評価モデル生成方法は、機械学習することにより地震動評価モデルを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-189134号公報
【特許文献2】特開2021-189135号公報
【特許文献3】特開2021-189136号公報
【特許文献4】特開2021-189137号公報
【特許文献5】特開2021-189138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地震動シミュレーションを実行する際には多数のパラメータを設定する必要がある。例えば、地震動シミュレーションを実行する際には、震源特性に関して、震源の位置、規模、傾斜、破壊の開始点、方向、及び速度といった多数のパラメータの設定が求められる。ここで、例えば、ユーザが多数のパラメータを設定した上で、コンピュータに地震動シミュレーションを実行させたとする。この場合、ユーザはその地震動シミュレーションの結果を参照しつつ、パラメータを変更して再度の地震動シミュレーションをコンピュータに実行させ、その地震動シミュレーションの結果を確認したい、と考える場合もある。
【0005】
しかし、地震動シミュレーションを実行するために設定すべきパラメータは多く、また再度の地震動シミュレーションの実行には多くの時間を要する、という課題がある。実務的には、地震動シミュレーションの概算的な結果は即時に得られる方が好ましい。
【0006】
上記特許文献1~5に開示されている技術は、地震動を高精度に評価・予測するための地震動評価モデルを生成するものであり、地震動シミュレーションの概算的な結果を即時に提供することを目的とするものではない。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、ユーザの調整に応じて地震動シミュレーションの概算的な結果を即時に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の態様は、シミュレーション対象とする地震の震源の位置に関する震源情報と、前記地震の規模に関する地震規模情報と、建物を建設する地点を表す建設地点に関する建設地点情報とを取得する取得部と、地震の震源毎に予め設定されたパラメータであって、かつ地震動シミュレーションの条件に関するパラメータである設定パラメータを記憶している記憶部から、前記震源情報が表す震源に対応付けられた前記設定パラメータを読み出すパラメータ読出部と、前記取得部により取得された前記震源情報、前記地震規模情報、及び前記建設地点情報と、前記パラメータ読出部により読み出された前記設定パラメータとに基づいて、前記建設地点情報が表す建設地点における地震動シミュレーションを実行し、前記地震動シミュレーションの結果を表示部に表示させるシミュレーション部と、ユーザから入力されたパラメータであって、前記地震動シミュレーションの条件を調整するためのパラメータである調整パラメータを受け付ける調整パラメータ受付部と、前記調整パラメータ受付部により受け付けられた前記調整パラメータと、前記地震動シミュレーションの結果とに基づいて、再度の前記地震動シミュレーションを実行することなく、前記調整パラメータに応じて前記地震動シミュレーションの結果を補正する補正部と、を備えた地震動シミュレーション装置である。これにより、ユーザの調整に応じて地震動シミュレーションの概算的な結果を即時に提供することができる。
【0009】
また、本発明に係る第2の態様の前記補正部は、前記調整パラメータ受付部により受け付けられた前記調整パラメータと、前記調整パラメータの種類毎に予め設定されたパラメータであって、かつ前記調整パラメータに応じて前記地震動シミュレーションの結果を補正するパラメータである補正係数パラメータと、前記地震動シミュレーションの結果とに基づいて、前記地震動シミュレーションの結果を補正する。これにより、予め設定される補正係数パラメータに応じて、地震動シミュレーションの結果を適切に補正することができる。
【0010】
また、本発明に係る第3の態様の前記補正部は、前記調整パラメータ受付部により受け付けられた前記調整パラメータと、前記地震動シミュレーションの結果とを、予め機械学習された学習済みモデル又は予め生成された統計モデルへ入力し、前記学習済みモデル又は前記統計モデルから出力される、補正済みの前記地震動シミュレーションの結果を取得することにより、前記地震動シミュレーションの結果を補正する。これにより、予め機械学習された学習済みモデル又は予め生成された統計モデルを利用して、地震動シミュレーションの結果を適切に補正することができる。
【0011】
また、本発明に係る第4の態様の前記地震動シミュレーションは、設定された断層毎に繰り返される。これにより、断層毎のシミュレーション結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザの調整に応じて地震動シミュレーションの概算的な結果を即時に提供することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る地震動シミュレーションシステム10の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【
図3】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【
図4】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【
図5】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【
図6】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【
図7】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【
図8】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【
図9】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【
図10】実施形態の地震動シミュレーション装置のコンピュータの構成例を示す図である。
【
図11】地震動シミュレーション装置が実行する処理ルーチンの一例を示す図である。
【
図12】地震動シミュレーション装置が実行する処理ルーチンの一例を示す図である。
【
図13】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【
図14】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
[実施形態の概要]
【0016】
近年、各種の法律によって指定されている地震荷重(例えば、応答スペクトル等)以外に、建設地点において発生し得る地震動を理論的なシミュレーションにより予測し、その地震動波形を建物の耐震設計に用いなければならない場合がある。
【0017】
しかし、従来の震源モデルを用いた理論的な地震動シミュレーションでは、入力パラメータ(例えば、震源の位置及び規模、並びに深部地盤の特性等)の設定において煩雑かつ専門的な知識が必要となるため、地震動の専門家以外のユーザが設計用地震動を生成することは困難である、という課題がある。
【0018】
建物の耐震設計においては、本来、地震動と建物耐力との両方が考慮された建物の耐震性に基づいて設計判断がなされるべきである。しかし、地震動の専門家は必ずしも構造設計の専門的知識を有しておらず、また構造設計の専門家は地震動の専門的知識を有していないことから、建物の耐震性を適切に評価するための設計用地震動を短期間に生成することは難しい、という課題がある。
【0019】
また、地震動シミュレーションにより模擬地震動を計算する際には、震源特性、伝播経路特性、及び地盤増幅特性の3種類に大別される各種パラメータの設定が必要である。このうち震源特性に関しては、震源の位置、規模、傾斜、破壊の開始点、方向、及び速度といった多数のパラメータの設定が求められる。
【0020】
従来の計算プログラムを利用する際には、上記のパラメータが数値情報として書き込まれた入力用のテキストファイルを作成する必要がある。しかし、このようなテキストファイルに書き込まれたパラメータは、パラメータの3次元的及び地震理学的な意味を理解するのが難しく、専門家以外のユーザが模擬地震動を適切に計算することが困難である。
【0021】
さらに、震源を表す複数のパラメータの間には地震理学に基づく関係性があり、専門家以外が適正な値で設定することが困難となっている。また、震源を表すパラメータは非常に大きなばらつきがあるため、一意に設定できるものではなく、地震動の予測の際には各パラメータを変更しながらばらつきを考慮することが望ましい。しかし、震源のパラメータを過度に変化させてしまうと、過大又は過小な地震動波形が生成される。このため、パラメータを調整する度に生成される地震動波形を構造設計者に提示し、設計判断を確認する必要があり、その地震動波形が適切であるか否かを短期間で判断することは困難である。
【0022】
そこで、本実施形態では、PC(Personal Computer)、AR(Augmented Reality)デバイス、VR(Virtual Reality)デバイス、又はタッチデバイスの画面上において、地震動シミュレーションの概算結果をユーザに対して提示し、ユーザである構造設計者が地震動シミュレーションの条件を直感的に設定でき、かつ設定された条件に基づいた地震動波形を生成することが可能な地震動シミュレーションシステムを提案する。本実施形態の地震動シミュレーションシステムによれば、ユーザの調整に応じて地震動シミュレーションの概算的な結果を即時に提供することができる。以下、具体的に説明する。
【0023】
[実施形態]
<地震動シミュレーションシステムの構成>
図1は、実施形態に係る地震動シミュレーションシステム10の構成の一例を示すブロック図である。地震動シミュレーションシステム10は、機能的には、
図1に示されるように、操作部12と、地震動シミュレーション装置14と、表示部16と、を含んだ構成で表すことができる。
【0024】
操作部12は、ユーザから入力された操作情報を受け付ける。操作部12は、例えばキーボードやマウス等である。具体的には、ユーザは、地震動シミュレーションを実行するための各種情報を操作部12により入力する。
【0025】
表示部16には、地震動シミュレーション装置14から出力された情報が表示される。表示部16は、例えばディスプレイ等によって実現される。
【0026】
地震動シミュレーション装置14は、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、ネットワークインタフェース等を含んで構成されている。地震動シミュレーション装置14は、機能的には、
図1に示されるように、データ記憶部18と、取得部20と、パラメータ読出部22と、シミュレーション部24と、調整パラメータ受付部26と、補正部28とを備えている。
【0027】
本実施形態の地震動シミュレーション装置14は、平均的なパラメータに基づいて地震動シミュレーションを実行し、その結果である平均的な地震動シミュレーションの結果(以下、単に「平均的シミュレーション結果」とも称する。)をユーザへ提示する。そして、地震動シミュレーション装置14は、ユーザから入力された調整パラメータに基づいて、平均的シミュレーション結果を補正し、補正後の平均的シミュレーション結果をユーザへ提示する。ユーザは、補正後の平均的シミュレーション結果を概算的な結果であるとして確認し、その補正後の平均的シミュレーション結果に対応する震源条件で詳細な地震動シミュレーションを実行するか否かを判断する。
【0028】
以下の式(1)は、補正後の平均的シミュレーション結果を計算するための数式の一例である。
【0029】
【0030】
上記式(1)におけるGiは、補正による概算的な予測結果である。平均的シミュレーション結果は平均的な地震動特性を表し、iはシミュレーションによって得られる各種結果のインデックスである。例えば、G1は地震動時刻歴波形を表し、G2は地震動の最大加速度等を表す。Giとしては、地震動時刻歴波形、最大加速度、最大速度、応答スペクトル、及び震度等が挙げられる。
【0031】
また、上記式(1)におけるGi
-は平均的シミュレーション結果を表す。また、上記式(1)におけるSj
-は平均的な設定パラメータを表し、Sjはユーザから入力される調整パラメータを表し、Cijは補正係数パラメータを表し、jはパラメータの種類を表すインデックスである。ε(1,σ)は平均値1、標準偏差σの誤差項である。調整パラメータSjは、ユーザから入力されるパラメータであって、地震動シミュレーションの条件を調整するためのパラメータである。補正係数パラメータCijは、調整パラメータSjの種類毎に予め設定されたパラメータであって、かつ調整パラメータSjに応じて平均的シミュレーション結果Gi
-を補正するパラメータである。
【0032】
なお、補正係数パラメータCijは過去に発生した地震の震源情報とその際の地震観測記録データとを用いて予め設定される。例えば、補正係数パラメータCijは、過去に発生した地震の地震観測記録データに相当する地震動特性Gi(例えば、地震動時刻歴波形、最大加速度、最大速度、応答スペクトル、及び震度等)を被説明変数とし、その地震の震源データ(具体的には、調整パラメータ又は設定パラメータに相当)を説明変数とした統計分析により予め計算することができる。また、補正係数パラメータCijの算定は、統計分析以外にも機械学習等を用いることも可能である。
【0033】
データ記憶部18には、各処理を実行するためのデータが格納されている。例えば、データ記憶部18には、地震動特性の種類を表すインデックスi毎に、補正係数パラメータCijと調整パラメータSjとが対応付けられて格納されている。また、データ記憶部18には、地震動シミュレーションを実行する際に必要なパラメータの種類を表すインデックスj毎に、平均的な設定パラメータSj
-が格納される。また、データ記憶部18には、各種シミュレーション結果等も格納される。
【0034】
取得部20は、シミュレーション対象とする地震の震源の位置に関する震源情報と、地震の規模に関する地震規模情報と、建物を建設する地点を表す建設地点に関する建設地点情報とを取得する。なお、震源は断層に相当する。例えば、取得部20は、ユーザから入力された、震源情報と地震規模情報と建設地点情報との組み合わせ(以下、単に「震源条件」とも称する。)を取得する。これらの各情報は、後述する地震動シミュレーションを実行する際に用いられる。
【0035】
例えば、表示部16には、
図2及び
図3に示されるような震源条件の入力画面が表示される。
【0036】
ユーザは、
図2に示されるような日本地図が表示部16に表示された場合、建設地点情報Aを地震動シミュレーション装置14へ入力する。また、
図3に示されるような入力画面が表示部16に表示された場合、ユーザは、震源情報と地震規模情報とを地震動シミュレーション装置14へ入力する。このようにして、ユーザは、
図2及び
図3に示されるような入力画面を介して、各種の震源条件を地震動シミュレーション装置14へ入力する。なお、
図2に示されるような入力画面を介して震源情報が入力された場合、その震源情報を満たす震源(断層)として、例えば、
図4に示されるような震源Bが対象震源として選択される。
【0037】
パラメータ読出部22は、データ記憶部18から平均的な設定パラメータSj
-を読み出す。この設定パラメータSj
-は、地震の震源毎に予め設定されたパラメータであって、かつ地震動シミュレーションの条件に関する平均的なパラメータである。
【0038】
シミュレーション部24は、取得部20により取得された震源条件と、パラメータ読出部22により読み出された設定パラメータSj
-とに基づいて、震源条件のうちの建設地点情報が表す建設地点における地震動シミュレーションを実行することにより、平均的シミュレーション結果Gi
-を取得する。
【0039】
そして、シミュレーション部24は、平均的シミュレーション結果G
i
-を表示部16に表示させる。例えば、シミュレーション部24は、
図5に示されるような形式で、平均的シミュレーション結果G
i
-を表示部16に表示させる。また、シミュレーション部24は、
図6に示されるような、調整パラメータS
jの入力画面を表示部16に表示させる。
図6の入力画面では、「スクロールバーを用いて応力降下量を設定してください」との文章が表示されているため、ユーザはシミュレーションの結果を調整するために、調整パラメータS
jの一つである応力降下量を設定する。
【0040】
なお、調整パラメータS
jの入力画面としては、
図7及び
図8に示されるような形式であってもよい。
図7の例では、選択肢により調整パラメータS
jの設定が可能である。
図8の例では、偏差値により調整パラメータS
jの設定が可能である。
【0041】
調整パラメータ受付部26は、調整パラメータSjを受け付ける。
【0042】
補正部28は、調整パラメータ受付部により受け付けられた調整パラメータSjと、平均的シミュレーション結果Gi
-とに基づいて、再度の地震動シミュレーションを実行することなく、調整パラメータSjに応じて平均的シミュレーション結果Gi
-を補正する。
【0043】
具体的には、補正部28は、調整パラメータSjに対応付けられている補正係数パラメータCijをデータ記憶部18から読み出す。そして、補正部28は、調整パラメータSjと、補正係数パラメータCijと、平均的シミュレーション結果Gi
-とに基づいて、上記式(1)に従って、平均的シミュレーション結果Gi
-を補正する。これにより、再度の地震動シミュレーションを実行することなく、調整パラメータSjに応じて平均的シミュレーション結果Gi
-を補正することが可能となる。
【0044】
補正部28は、補正による概算的な予測結果G
iを表示部16に表示させる。例えば、
図9に示されるような補正による概算的な予測結果G
iが表示部16に表示される。ユーザは、表示部16に表示された補正による概算的な予測結果G
iを確認し、補正による概算的な予測結果G
iが得られた際の震源条件を採用するか否かを判断する。そして、ユーザが、その震源条件を採用すると判断した場合には、シミュレーション部24は、補正による概算的な予測結果G
iが得られた際の震源条件を用いて、通常の地震動シミュレーションを実行する。
【0045】
これにより、ユーザの調整に応じて地震動シミュレーションの概算的な結果を即時に提供することができる。さらに、地震動シミュレーションの概算的な結果が得られた際の震源条件を用いて、詳細な地震動シミュレーションを実行することができる。
【0046】
地震動シミュレーション装置14は、例えば、
図10に示すようなコンピュータ60によって実現することができる。地震動シミュレーション装置14を実現するコンピュータ60は、CPU61、一時記憶領域としてのメモリ62、及び不揮発性の記憶部63を備える。また、コンピュータ60は、入出力装置等(図示省略)が接続される入出力interface(I/F)64、及び記録媒体69に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write(R/W)部65を備える。また、コンピュータは、インターネット等のネットワークに接続されるネットワークI/F66を備える。CPU61、メモリ62、記憶部63、入出力I/F64、R/W部65、及びネットワークI/F66は、バス67を介して互いに接続される。
【0047】
記憶部63は、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部63には、コンピュータを機能させるためのプログラムが記憶されている。CPU61は、プログラムを記憶部63から読み出してメモリ62に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0048】
<地震動シミュレーションシステムの作用>
【0049】
次に、地震動シミュレーションシステム10の作用を説明する。
【0050】
ユーザが、所定の操作情報を地震動シミュレーション装置14へ入力すると、
図11及び
図12に示される処理ルーチンが実行される。
【0051】
ステップS100において、取得部20は、
図2及び
図3に示されるような入力画面を表示部16に表示させる。
【0052】
ユーザは、表示部16に表示された入力画面に対して、震源情報と地震規模情報と建設地点情報との組み合わせである震源条件を入力する。
【0053】
次に、ステップS102において、取得部20は、ユーザから入力された震源条件を取得する。
【0054】
ステップS104において、シミュレーション部24は、地震動シミュレーションを実行する対象震源群を決定する。具体的には、シミュレーション部24は、ステップS102で取得された震源条件のうちの震源情報を満たす複数の震源を、対象震源群として決定する。
【0055】
ステップS106において、シミュレーション部24は、ステップS104で決定された複数の対象震源群から、1つの対象震源を設定する。
【0056】
ステップS108において、パラメータ読出部22は、ステップS106で設定された対象震源に紐づけられている平均的な設定パラメータSj
-をデータ記憶部18から読み出す。
【0057】
ステップS110において、シミュレーション部24は、ステップS102で取得された震源条件と、ステップS108で読み出された設定パラメータSj
-とに基づいて、震源条件のうちの建設地点情報が表す建設地点における地震動シミュレーションを実行する。これにより、平均的シミュレーション結果Gi
-が取得される。
【0058】
ステップS112において、シミュレーション部24は、ステップS110で取得された平均的シミュレーション結果G
i
-を表示部16に表示させる。例えば、表示部16には、
図5に示されるような平均的シミュレーション結果が表示されると共に、
図6~
図8に示されるような調整パラメータの入力画面が表示される。
【0059】
ユーザは、例えば、
図6~
図8の入力画面に対して調整パラメータS
jを入力する。
【0060】
ステップS114において、調整パラメータ受付部26は、ユーザから入力された調整パラメータSjを受け付ける。
【0061】
ステップS116において、補正部28は、ステップS114で受け付けた調整パラメータSjに対応付けられている補正係数パラメータCijをデータ記憶部18から読み出す。
【0062】
ステップS118において、補正部28は、ステップS114で受け付けた調整パラメータSjと、ステップS116で読み出された補正係数パラメータCijと、ステップS110で取得された平均的シミュレーション結果Gi
-とに基づいて、上記式(1)に従って、平均的シミュレーション結果Gi
-を補正することにより、補正による概算的な予測結果Giを生成する。
【0063】
ステップS120において、補正部28は、
図9に示されるような、補正による概算的な予測結果G
iを表示部16に表示させる。また、補正部28は、
図13に示されるような入力画面を表示部16に表示させる。
【0064】
ユーザは、補正による概算的な予測結果Giを確認し、補正による概算的な予測結果Giが得られた際の震源条件を採用し、その震源条件を用いて詳細な地震動シミュレーションを実行するか否かの判断をする。
【0065】
ユーザは、補正による概算的な予測結果G
iが得られた際の震源条件を採用すると判断した場合には、その旨の指示信号を
図13に示されるような入力画面を介して地震動シミュレーション装置14へ入力する。例えば、
図13の「この条件で地震動シミュレーションを実行」が押下される。
【0066】
一方、ユーザは、補正による概算的な予測結果G
iが得られた際の震源条件を採用しないと判断した場合には、その旨の指示信号を
図13に示されるような入力画面を介して地震動シミュレーション装置14へ入力する。例えば、
図13の「条件を再設定する」が押下される。
【0067】
ステップS122において、シミュレーション部24は、ユーザから入力された指示信号が、補正による概算的な予測結果G
iが得られた際の震源条件を採用することを表しているか否かを判定する。指示信号が震源条件の採用を表している場合には、
図12のステップS124へ進む。一方、指示信号が震源条件の採用を表していない場合には、ステップS114へ戻り、調整パラメータの入力画面が再度表示される。
【0068】
ステップS124において、シミュレーション部24は、補正による概算的な予測結果Giが得られた際の調整パラメータSjに相当する震源条件を用いて、通常の地震動シミュレーションを実行する。
【0069】
ステップS126において、シミュレーション部24は、ステップS124で得られた地震動シミュレーションの結果を表示部16に表示させる。また、シミュレーション部24は、
図14に示されるような入力画面を表示部16に表示させる。
【0070】
ユーザは、表示部16に表示された地震動シミュレーションの結果を確認し、そのシミュレーションにより発生した地震動を設計用地震動として採用するか否かを判断する。ユーザは、シミュレーションにより発生した地震動を設計用地震動として採用すると判断した場合には、その旨の指示信号を地震動シミュレーション装置14へ入力する。例えば、
図14の「この震源の地震動を設計に考慮する」が押下される。
【0071】
一方、ユーザは、シミュレーションにより発生した地震動を設計用地震動として採用しないと判断した場合には、その旨の指示信号を地震動シミュレーション装置14へ入力する。例えば、
図14の「この震源の地震動を設計に考慮しない」又は「条件設定から再検討する」が押下される。
【0072】
ステップS128において、シミュレーション部24は、ユーザから入力された指示信号が、シミュレーションにより発生した地震動を設計用地震動として採用することを表しているか否かを判定する。指示信号が設計用地震動としての採用を表している場合には、ステップS130へ進む。一方、指示信号が設計用地震動としての採用を表していない場合には、ステップS114へ戻り、調整パラメータの入力画面が再度表示される。
【0073】
ステップS130において、シミュレーション部24は、ステップS104で設定された対象震源群に含まれる全ての震源について、上記ステップS106~ステップS128の処理を実行したか否かを判定する。ステップS104で設定された対象震源群に含まれる全ての震源について、上記ステップS106~ステップS128の処理を実行した場合には、ステップS132へ進む。一方、対象震源群に含まれる震源のうち、上記ステップS106~ステップS128の処理を実行していない震源が存在する場合には、ステップS106へ戻り新たな震源が設定される。これにより、地震動シミュレーションは、設定された断層毎に繰り返される。
【0074】
ステップS132において、シミュレーション部24は、ステップS124で得られた震源毎の設計用地震動の各々を結果として出力して処理ルーチンを終了する。設計用地震動の出力形態としては、例えばCSVデータで1列目に時刻、2列目に加速度の値を出力することが考えられる。
【0075】
ステップS132で得られた震源毎の設計用地震動の各々は、ユーザによって利用される。
【0076】
以上説明したように、実施形態の地震動シミュレーション装置14は、シミュレーション対象とする地震の震源の位置に関する震源情報と、地震の規模に関する地震規模情報と、建物を建設する地点を表す建設地点に関する建設地点情報とを取得する。地震動シミュレーション装置14は、地震の震源毎に予め設定されたパラメータであって、かつ地震動シミュレーションの条件に関するパラメータである設定パラメータを記憶しているデータ記憶部から、震源情報が表す震源に対応付けられた設定パラメータを読み出す。地震動シミュレーション装置14は、取得された震源情報、地震規模情報、及び建設地点情報と、読み出された設定パラメータとに基づいて、建設地点情報が表す建設地点における地震動シミュレーションを実行し、地震動シミュレーションの結果を表示部に表示させる。ユーザから入力されたパラメータであって、地震動シミュレーションの条件を調整するためのパラメータである調整パラメータを受け付ける。地震動シミュレーション装置14は、受け付けられた調整パラメータと、地震動シミュレーションの結果とに基づいて、再度の地震動シミュレーションを実行することなく、調整パラメータに応じて地震動シミュレーションの結果を補正する。これにより、ユーザの調整に応じて地震動シミュレーションの概算的な結果を即時に提供することができる。
【0077】
実施形態の地震動シミュレーション装置14によれば、直感的な操作で地震動シミュレーションの条件を設定でき、かつ設定された条件に対する地震動シミュレーションの概算的な予測結果を即時に表示することができる。
【0078】
より具体的には、実施形態の地震動シミュレーション装置14によれば、構造設計者を含めた地震動の非専門家が直感的に震源条件を設定することが可能であり、設定された震源条件に基づくシミュレーションの概算結果が即時に表示される。このため、ユーザは、地震及び震源に関する条件と建物に関する条件の両方を考慮しながら建物の耐震性を検討することが可能となる。
【0079】
また、ユーザは、スクロールバー、タッチパネル、VR/AR等が実装された地震動シミュレーションシステム10を利用することにより、検討対象の候補となっている震源条件のパラメータを直感的に設定することができる。最終的には設定された震源条件に対する地震動シミュレーションが行われるが、地震動シミュレーションの実行には時間を要するため、パラメータを見直すごとに地震動シミュレーションを再実行するのは非常に手間である。これに対し、地震動シミュレーションシステム10によれば、平均的なパラメータに対する地震動予測結果に対し、補正係数により補正することで、ユーザである構造設計者が設定したパラメータに応じた地震動波形や応答スペクトルの概算結果を瞬時に表示することができる。このため、構造設計者は地震動波形や応答スペクトルを確認しながら震源の条件を設定することが可能になる。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0081】
例えば、上記実施形態の地震動シミュレーション装置14は、上記式(1)に従って、平均的シミュレーション結果を補正する場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。例えば、調整パラメータと平均的シミュレーション結果とを、予め機械学習された学習済みモデル又は予め生成された統計モデルへ入力し、学習済みモデル又は統計モデルから出力される、補正済みの地震動シミュレーションの結果を取得することにより、地震動シミュレーションの結果を補正するようにしてもよい。この場合には、学習済みモデル又は統計モデルへの入力データと、学習済みモデル又は統計モデルからの出力データとの組み合わせである学習用データに基づいて、学習済みモデル又は統計モデルの生成が事前になされる。
【0082】
また、上記では本発明に係るプログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 地震動シミュレーションシステム
12 操作部
14 地震動シミュレーション装置
16 表示部
18 データ記憶部
20 取得部
22 パラメータ読出部
24 シミュレーション部
26 調整パラメータ受付部
28 補正部
60 コンピュータ