(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166861
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
H04R 9/02 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
H04R9/02 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077689
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 大蔵
【テーマコード(参考)】
5D012
【Fターム(参考)】
5D012BB01
5D012BB03
5D012BB04
5D012BB05
5D012FA01
(57)【要約】
【課題】ボイスコイルに作用する逆磁界の影響を抑制振動発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ポールピース25、ポールピースの厚さ方向の一端側に設けられる第1磁石23、及びポールピースから離れるように配置されポールピースとの間に磁気ギャップ38を形成するヨーク16、を含む第1磁気回路15Aと、ポールピース、ポールピースの厚さ方向の他端側に設けられる第1磁石に反発する第2磁石34、及びヨーク、を含む第2磁気回路15Bと、磁気ギャップに配置され第1磁気回路で発生した磁界の影響を受けながら振動するボイスコイル47と、ポールピースの厚さ方向の他端側の外周縁に設けられた、第2磁気回路によって形成され且つ前記磁界とは逆向きの逆磁界RMを、磁界から遠ざける逆磁界遠ざけ部26と、
を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポールピース、前記ポールピースの厚さ方向の一端側に設けられる第1磁石、及び前記ポールピースから離れるように配置され、前記ポールピースとの間に磁気ギャップを形成するヨーク、を含む第1磁気回路と、
前記ポールピース、前記ポールピースの前記厚さ方向の他端側に設けられる、前記第1磁石に反発する第2磁石、及び前記ヨーク、を含む第2磁気回路と、
前記磁気ギャップに配置され、前記第1磁気回路で発生した磁界の影響を受けながら振動するボイスコイルと、
前記ポールピースの前記厚さ方向の前記他端側の外周縁に設けられた、前記第2磁気回路によって形成され且つ前記磁界とは逆向きの逆磁界を、前記磁界から遠ざける逆磁界遠ざけ部と、
を備える振動発生装置。
【請求項2】
ポールピース、前記ポールピースの厚さ方向の一端側に設けられるヨーク、前記ポールピースから離れるように配置され、前記ポールピースとの間に磁気ギャップを形成するトップポール、及び前記トップポールの前記厚さ方向の一端側に設けられる第1磁石を含む第1磁気回路と、
前記ポールピース、前記ポールピースの前記厚さ方向の他端側に設けられる第2磁石、及び前記トップポール、を含む第2磁気回路と、
前記磁気ギャップに配置され、前記第1磁気回路で発生した磁界の影響を受けながら振動するボイスコイルと、
前記ポールピースの前記厚さ方向の前記他端側の外周縁に設けられた、前記第2磁気回路によって形成され且つ前記磁界とは逆向きの逆磁界を、前記磁界から遠ざける逆磁界遠ざけ部と、
を備える振動発生装置。
【請求項3】
前記逆磁界遠ざけ部が、前記ポールピースの外周面の前記他端側の端部に形成された、前記ポールピースの軸線を中心とする環状凹部である請求項1又は請求項2記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記ヨークが、前記環状凹部の外周側に位置する円筒状部を備え、
前記環状凹部の内面が、前記軸線に対して直交する直交面を有し、
前記円筒状部の前記軸線方向の端面と前記直交面の前記軸線方向の位置が同一である請求項3記載の振動発生装置。
【請求項5】
前記ポールピースの前記他端側の端部の前記ポールピースの軸線を中心とする径と、前記第2磁石の前記軸線を中心とする径とが略同一である請求項1又は請求項4記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、ヨークと、永久磁石と、ポールピースと、ボイスコイルと、を備える振動発生装置が開示されている。ヨークは、所定の軸線に沿って延びる支持部と、支持部の外周側に位置し且つ上記軸線を中心とする環状体である円筒状部と、を有する。支持部の軸線方向の端面に永久磁石が固定され、永久磁石の支持部と反対側の端面にポールピースが固定されている。
【0003】
ポールピースと円筒状部との間で磁界が形成される。さらに、環状体であるボイスコイルが、磁界と干渉するように、ポールピースと円筒状部の間の環状空間に配置される。ボイスコイルに電流が流れると、ボイスコイルが上記軸線に沿って往復移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-259190号公報
【特許文献2】特開2013-201769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2の振動発生装置では、所定方向の磁界と、この磁界とは逆向きの逆磁界とが発生し、これら2つの磁界がボイスコイルに作用することがある。しかし上記特許文献1、2の振動発生装置は、ボイスコイルに作用する逆磁界の影響を抑制することに関して改善の余地がある。
【0006】
本発明は、ボイスコイルに作用する逆磁界の影響を抑制できる振動発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の振動発生装置は、ポールピース、前記ポールピースの厚さ方向の一端側に設けられる第1磁石、及び前記ポールピースから離れるように配置され、前記ポールピースとの間に磁気ギャップを形成するヨーク、を含む第1磁気回路と、前記ポールピース、前記ポールピースの前記厚さ方向の他端側に設けられる、前記第1磁石に反発する第2磁石、及び前記ヨーク、を含む第2磁気回路と、前記磁気ギャップに配置され、前記第1磁気回路で発生した磁界の影響を受けながら振動するボイスコイルと、前記ポールピースの前記厚さ方向の前記他端側の外周縁に設けられた、前記第2磁気回路によって形成され且つ前記磁界とは逆向きの逆磁界を、前記磁界から遠ざける逆磁界遠ざけ部と、を備える。
【0008】
請求項2に記載の振動発生装置は、ポールピース、前記ポールピースの厚さ方向の一端側に設けられるヨーク、前記ポールピースから離れるように配置され、前記ポールピースとの間に磁気ギャップを形成するトップポール、及び前記トップポールの前記厚さ方向の一端側に設けられる第1磁石を含む第1磁気回路と、前記ポールピース、前記ポールピースの前記厚さ方向の他端側に設けられる第2磁石、及び前記トップポール、を含む第2磁気回路と、前記磁気ギャップに配置され、前記第1磁気回路で発生した磁界の影響を受けながら振動するボイスコイルと、前記ポールピースの前記厚さ方向の前記他端側の外周縁に設けられた、前記第2磁気回路によって形成され且つ前記磁界とは逆向きの逆磁界を、前記磁界から遠ざける逆磁界遠ざけ部と、を備える。
【0009】
請求項1、2に記載の発明では、ボイスコイルに電流が流れたときに、ボイスコイルが振動する。仮に、ボイスコイルが第2磁気回路による逆磁界の大きな影響を受けると、移動方向の一方側の領域においてボイスコイルに及ぶ磁界の強さと、移動方向の他方側の領域においてボイスコイルに及ぶ磁界の強さと、の間に大きな差が生じる。この場合、ボイスコイルが一方側の領域において発生する力と、ボイスコイルが他方側の領域において発生する力と、の間に大きな差が生じる。しかし、請求項1、2に記載の発明では、ポールピースの厚さ方向の他端側の外周縁に、第2磁気回路によって形成され且つ第1磁気回路によって形成された磁界とは逆向きの逆磁界を、当該磁界から遠ざける逆磁界遠ざけ部が形成されている。従って、ボイスコイルに作用する逆磁界の影響が抑制される。そのため、移動方向の一方側の領域においてボイスコイルに及ぶ磁界の強さと、移動方向の他方側の領域においてボイスコイルに及ぶ磁界の強さと、の間に大きな差が生じ難い。そのためボイスコイルが一方側の領域において発生する力と、ボイスコイルが他方側の領域において発生する力と、の間に大きな差が生じ難い。
【0010】
請求項3に記載の振動発生装置は、請求項1又は請求項2において、前記逆磁界遠ざけ部が、前記ポールピースの外周面の前記他端側の端部に形成された、前記ポールピースの軸線を中心とする環状凹部である。
【0011】
請求項3に記載の発明では、逆磁界遠ざけ部をポールピースの軸線を中心とする環状凹部とすることで、ポールピースの厚さ方向の他端側の外周縁と、ボイスコイルとの間に空間が形成される。そのため、第2磁気回路が発生する逆磁界が、ボイスコイルの振動方向に縦長に形成され、上記磁界から遠ざかる。そのため、ボイスコイルの振動範囲内に逆磁界が形成され難くなるので、ボイスコイルが受ける逆磁界の影響を抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載の振動発生装置は、請求項1において、前記ヨークが、前記環状凹部の外周側に位置する円筒状部を備え、前記環状凹部の内面が、前記軸線に対して直交する直交面を有し、前記円筒状部の前記軸線方向の端面と前記直交面の前記軸線方向の位置が同一である。
【0013】
請求項4に記載の発明では、円筒状部の軸線方向の端面と直交面の軸線方向の位置を同一とすることで、磁気ギャップにおける磁界の向きがボイスコイルの振動方向に直交する。そのため、磁気ギャップから遠ざけた所望の位置に逆磁界を形成することができ、ボイスコイルが受ける逆磁界の影響を抑制することができる。
【0014】
請求項5に記載の振動発生装置は、請求項1又は請求項4において、前記ポールピースの前記他端側の端部の前記ポールピースの前記軸線を中心とする径と、前記第2磁石の前記軸線を中心とする径とが略同一である。
【0015】
請求項5に記載の発明では、第2磁石の外径が環状凹部の外径と略同一であることで、第2磁気回路が第2磁石とポールピースとの間に形成する磁界の向きがボイスコイルの振動方向の向きとなる。そのため、磁気ギャップから遠ざけた所望の位置に逆磁界を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の振動発生装置によれば、ボイスコイルに作用する逆磁界の影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係るスピーカの断面図である。
【
図3】第1実施形態の磁束密度分布及びBLカーブを示すグラフである。
【
図4】第1実施形態の比較例の
図2と同様の断面図である。
【
図5】第1実施形態の比較例の磁束密度分布及びBLカーブを示すグラフである。
【
図16】第2実施形態に係るスピーカの断面図である。
【
図18】第2実施形態の
図3と同様のグラフである。
【
図19】第2実施形態の比較例の
図2と同様の断面図である。
【
図20】第2実施形態の比較例の磁束密度分布及びBLカーブを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、第1実施形態に係るスピーカ(振動発生装置)10について
図1~
図15を参照しながら説明する。なお、便宜上、
図1に示された中心軸CAは上下方向と平行であるものとする。スピーカ10が実際に使用される際の中心軸CAは、上下方向と異なる方向と平行になることがある。
【0019】
図1に示されるようにスピーカ10は、磁気回路15、フレーム40、ボイスコイル47、ダンパ48及び振動板49を備える。
【0020】
磁気回路15は、ヨーク16、第1磁石23、ポールピース25、第2磁石34及びトップポール36を備える。
【0021】
軟質磁性体であるヨーク16は、基部17、中央凸部18及び円筒状部19を備える。ヨーク16は、中心軸CAを中心とする回転対称物である。基部17は円盤である。中央凸部18は基部17の中央部から中心軸CAに沿って上方に突出する円柱状の部位である。円筒状部19は基部17の外周縁部から上方に突出する。円筒状部19の上端部には、環状のフランジ20が形成されている。円筒状部19の上端面21は、中心軸CAと平行な方向に対して直交する平面である。円筒状部19の基部17からの上方への突出量は中央凸部18よりも大きい。
【0022】
中央凸部18の上端面には、円柱状の硬質磁性体(永久磁石)である第1磁石23の下面が固定されている。本実施形態の第1磁石23はNd(ネオジム)磁石である。第1磁石23の上側がN極であり、下側がS極である。さらに本実施形態の第1磁石23の外径R23(
図1参照)は18.5mmであり、第1磁石23の上下寸法H23は4.0mmである。
【0023】
第1磁石23の上端面には、中心軸CAを中心とする円柱状の軟質磁性体であるポールピース25の下面が固定されている。ポールピース25は一体成形品である。ポールピース25の外周面の上部には、中心軸CAを中心とする環状凹部(逆磁界遠ざけ部)26が形成されている。そのため、ポールピース25は、ポールピース25の下部を構成する大径部27と、ポールピース25の上部を構成する小径部28と、を有する。
図1及び
図2に示されるように、大径部27の外周部の上面は中心軸CAに対して直交する平面である直交面29によって構成されている。小径部28の外周面は、中心軸CAを中心とする円筒面30によって構成されている。直交面29と円筒面30は略直交する。ポールピース25の小径部28は、大径部27から上方に突出した突出部を構成する。さらに直交面29の外周縁部には、直交面29に対して傾斜し且つ環状をなすテーパ面31が形成されている。さらにヨーク16の上端面21と直交面29の中心軸CA方向の位置は同一である。本実施形態の大径部27の上下寸法H27(
図1参照)は6.0mmであり、小径部28の上下寸法H28(
図1参照)は1.6mmである。さらに直交面29の径方向寸法R29は5.0mmであり、小径部28の直径R28は15.0mmである。
【0024】
小径部28の上端面には円柱状の硬質磁性体である第2磁石34の下面が固定されている。本実施形態の第2磁石34はNd磁石である。第2磁石34の外径は小径部28と略同一である。第2磁石34の下側がN極であり、上側がS極である。即ち、第2磁石34と第1磁石23は互いに反発する。さらに本実施形態の第2磁石34の上下寸法H34(
図1参照)は4.0mmである。
【0025】
第2磁石34の上端面には円柱状の軟質磁性体であるトップポール36の下面が固定されている。さらに本実施形態のトップポール36の上下寸法H36(
図1参照)は1.6mmである。トップポール36の外径は第2磁石34と略同一である。このように中央凸部18と同軸をなすように第1磁石23及び第2磁石34が設けられている。即ち、磁気回路15は内磁式の磁気回路である。
【0026】
ヨーク16の円筒状部19と、ポールピース25の大径部27と、の間には、中心軸CAを中心とする環状空間である磁気ギャップ38が形成されている。
【0027】
フレーム40は中心軸CAを中心とする回転対称物である。フレーム40の下端部には取付孔41が設けられており、取付孔41の内周面には環状の取付溝42が形成されている。フレーム40の上端部43は下端部より大径であり、フレーム40の上端全体が開口している。フレーム40の下端部と上端部43の間の部分にはテーパ部44と、テーパ部44の下端部に接続する段差部45と、が設けられている。
図1に示されるように、取付溝42にフランジ20が嵌合されている。即ち、フレーム40の下端部がフランジ20によって支持されている。
【0028】
磁気ギャップ38には、ボイスコイル47が設けられている。ボイスコイル47は、中心軸CAを中心とする略円筒形状のボビン47Aと、ボビン47Aの外周面に巻き付けられ且つ中心軸CAを中心とする略円筒形状のコイル47Bと、を有する。ボイスコイル47は中心軸CAに沿って直線的に往復移動可能である。コイル47Bを構成する電線の両端部は、制御装置(図示省略)を介して交流電源(図示省略)に接続される。さらにダンパ48の内周部がボビン47Aに接続され、ダンパ48の外周部がフレーム40の段差部45に接続されている。
【0029】
さらにボビン47Aには、中心軸CAを中心とする環状部材である振動板49の内周部が接続され、振動板49の外周部がフレーム40の上端部43の内周面に接続されている。
【0030】
次に、第1実施形態の作用及び効果を説明する。
【0031】
第1実施形態に係るスピーカ10では、
図2に示されるように、円筒状部19、基部17、中央凸部18、第1磁石23、及びポールピース25の大径部27によって第1磁気回路15Aが構成され、第1磁気回路15Aにおいて第1磁界(磁界)MF1が形成されている。第1磁界MF1の向きは、
図2に示された矢印の方向である。さらにポールピース25の大径部27、小径部28、第2磁石34、トップポール36及び円筒状部19の上端部によって第2磁気回路15Bが構成され、第2磁気回路15Bにおいて第2磁界(逆磁界)MF2が形成されている。第2磁界MF2の向きは、
図2に示された矢印の方向である。即ち、第2磁界MF2の向きは、第1磁界MF1の向きと逆向きである。例えば、第2磁界MF2は図示反時計回りであり、第1磁界MF1は図示時計回りである。そのため、ポールピース25と円筒状部19との間の磁気ギャップ38において、第1磁界MF1及び第2磁界MF2の向きは同じ向きとなっている。これにより、磁気ギャップ38における磁界密度を増加させて、ボイスコイル47の振動力を向上させることができる。
【0032】
図2から明らかなように、コイル47Bは第1磁界MF1及び第2磁界MF2と干渉する。なお、
図2に示した符号47Bは、コイル47Bの右側の側縁部であって、その可動範囲を模式的に示す。上記交流電源の電力がコイル47Bに通電されると、ボイスコイル47が磁気回路15に対して中心軸CAに沿って往復運動する。これに伴って振動板49が上下方向に振動し、これにより音が発生する。
【0033】
図3はスピーカ10の磁束密度分布及びBLカーブを表す。
図3の横軸は中心軸CA方向の位置を示す。横軸の「0」は、大径部27の中心軸CA方向の中心と略一致する点の中心軸CA方向の位置CP(
図1及び
図2参照)を示す。縦軸は、磁束密度B及びBLカーブの大きさを表す。磁束密度Bの単位はT(テスラ)であり、T=N×A
-1×M
-1である。BLカーブの単位はT×M=N/Aである。なお、BLのBは磁束密度であり、Lはコイル47Bの巻き数であり、BLは力係数である。さらにAは電流のアンペア、Nはニュートン、Mはコイル47Bの軸線方向の長さである。
図3では、コイル47Bの中心軸CA方向の中心点と位置CPの上下方向の位置がほぼ一致している。
【0034】
図3のグラフGr1は、磁束密度Bの大きさを表す。
図3の実線で表されたグラフGr2は、上記交流電源からボイスコイル47へ一方向の電流が供給されたときの力係数を表し、点線で表されたグラフGr2は、実線で表されたグラフGr2を中心軸に対してミラー反転したものを表す。コイル47Bの中心点と位置CPの上下方向の位置がほぼ一致するとき、コイル47Bに及ぶ磁界の磁束密度Bが大きくなるので、ボイスコイル47は大きな駆動力を発生する。一方、中心点が位置CPから離れると、コイル47Bに及ぶ磁界の磁束密度Bが小さくなるので、コイル47Bが発生する駆動力は小さくなる。
【0035】
図4は比較例のスピーカ100の
図2と同様の断面図を示す。スピーカ100は、ポールピース125以外はスピーカ10と同じ構造である。ポールピース125は大径部27と同じ構成である。ポールピース125の上端面126は中心軸CAに対して直交する平面であり、ヨーク16の上端面21と上端面126の中心軸CA方向の位置は同一である。
【0036】
スピーカ100では、
図4に示されるように、円筒状部19、基部17、中央凸部18、第1磁石23、及びポールピース125によって第1磁気回路15A-Xが構成され、第1磁気回路15A-Xにおいて第1磁界MF1-Xが形成されている。第1磁界MF1-Xの向きは、
図4に示された矢印の方向である。さらにポールピース125、第2磁石34、トップポール36及び円筒状部19の上端部によって第2磁気回路15B-Xが構成され、第2磁気回路15B-Xにおいて第2磁界MF2-Xが形成されている。第2磁界MF2-Xの向きは、
図4に示された矢印の方向である。即ち、第2磁界MF2-Xの向きは、第1磁界MF1-Xの向きと逆向きである。
【0037】
さらに
図2及び
図4から明らかなように、スピーカ10では第2磁界MF2と第1磁界MF1が干渉(合流)し、スピーカ100では第2磁界MF2-Xと第1磁界MF1-Xが干渉(合流)する。しかしながら、スピーカ10のポールピース25に環状凹部26が形成されており且つポールピース25の上下寸法がポールピース125より大きいため、スピーカ10の第2磁界MF2はスピーカ100の第2磁界MF2-Xより全体的に上側に位置する。
【0038】
このため比較例を表す
図5のグラフGr1-Xでは、第2磁界MF2-Xの影響により、ポールピース125の中心軸CA方向の中心と略一致する点の中心軸CA方向の位置CPから上方へ5.5mm以上離れた領域において磁束密度Bの大きさが-(マイナス)になる。即ち、位置CPから上方へ5.5mm以上離れた領域において、第2磁界MF2-Xの一部が、第1磁界MF1-X及び第2磁界MF2-Xの第1磁界MF1-Xと同じ向きの磁界(以下、主磁界と称する)と逆向きの逆磁界RM-X(
図4参照)となる。これに対して、第1実施形態を表す
図3のグラフGr1では、第2磁界MF2の影響を受けるものの、位置CPから上方へ6.7mm以上離れた領域において、磁束密度Bの大きさが-(マイナス)になる。即ち、位置CPから上方へ6.7mm以上離れた領域において、第2磁界MF2の一部が、第1磁界MF1及び第2磁界MF2の主磁界と逆向きの逆磁界RM(
図2参照)となる。ポールピース25に環状凹部26が形成され、且つ、第2磁石34の外径は小径部28と略同一である。そのため、第2磁気回路15Bが発生する逆磁界RMが、上下方向に縦長に形成され主磁界から遠ざかる。そのため、本実施形態の逆磁界RMは、比較例の逆磁界RM-Xより上方に形成される。さらにグラフGr1及びグラフGr1-Xでは、位置CPより下方の領域の磁束密度Bの大きさは+(プラス)又はほぼゼロである。そのため、グラフGr1はほぼ左右対称であるのに対して、グラフGr1-Xは左右対称ではない。
【0039】
このようにグラフGr1はほぼ左右対称であるため、
図3のBLカーブを表すグラフGr2はほぼ左右対称である。換言すると、逆磁界RMの発生領域が、位置CPから上方へ相応の距離だけ離れた領域に限定されている。主磁界と干渉するボイスコイル47に逆磁界RMが及ぶと、逆磁界RMの影響によりボイスコイル47の移動力が低下する。しかし本実施形態では逆磁界RMの発生領域が、位置CPから上方へ相応の距離だけ離れた領域に限定されている。さらに直交面29と上端面21の上下方向の位置が同一なので、磁気ギャップ38における第1磁界MF1及び第2磁界MF2の向きが略水平方向となる。そのため、磁気ギャップ38から上方に離れた所望の位置に逆磁界RMを形成することができる。そのため位置CPより上方の領域におけるボイスコイル47の移動力が低下し難い。そのため、位置CPより上方の領域におけるボイスコイル47の移動力と、位置CPより下方の領域におけるボイスコイル47の移動力の大きさが略同一である。そのため、スピーカ10のパフォーマンスが低下し難い。
【0040】
これに対してグラフGr1-Xは左右対称でないため、
図5に示された比較例のBLカーブを表すグラフGr2-Xは左右対称ではない。即ち、位置CPより上方の領域におけるボイスコイル47の移動力と、位置CPより下方の領域におけるボイスコイル47の移動力と、の間に大きな差がある。そのため、スピーカ100のパフォーマンスは低下し易い。
【0041】
続いて第1実施形態の変形例について
図6~
図16を参照しながら説明する。
【0042】
図6及び
図7は第1変形例を示す。
図6に示されるように、第1変形例のスピーカ(振動発生装置)10Aのポールピース25Aの直交面29はヨーク16の上端面21より0.8mmだけ下方に位置する。
図7に示されるように、第1変形例のグラフGr1もほぼ左右対称である。これはポールピース25Aに環状凹部26が形成され、且つ、直交面29と上端面21の上下方向の位置のズレ量が小さいためである。直交面29と上端面21の上下方向の位置のズレ量が小さい場合も、磁気ギャップ38における第1磁界MF1及び第2磁界MF2の向きは略水平方向となる。そのため
図7に示されるように、BLカーブを表すグラフGr2もほぼ左右対称である。
【0043】
図8及び
図9は第2変形例を示す。
図8に示されるように、第2変形例のスピーカ(振動発生装置)10Bのポールピース25Bの直交面29はヨーク16の上端面21より0.8mmだけ上方に位置する。
図9に示されるように、第2変形例のグラフGr1もほぼ左右対称である。これはポールピース25Bに環状凹部26が形成され、且つ、直交面29と上端面21の上下方向の位置のズレ量が小さいためである。そのため
図9に示されるように、BLカーブを表すグラフGr2もほぼ左右対称である。
【0044】
図10及び
図11は第3変形例を示す。
図10に示されるように、第3変形例のスピーカ(振動発生装置)10Cのポールピース25Cの環状凹部(逆磁界遠ざけ部)26Cの内面の断面形状は略円弧面である。この円弧面の曲率半径Rは1.6mmである。
図11に示されるように、第3変形例のグラフGr1もほぼ左右対称である。これはポールピース25Bに環状凹部26Cが形成され、且つ、環状凹部26Cの下端と上端面21の上下方向の位置が同一のためである。そのため
図11に示されるように、BLカーブを表すグラフGr2もほぼ左右対称である。なお、上記第1変形例及び第2変形例に第3変形例を適用してもよい。
【0045】
図12及び
図13は第4変形例を示す。
図12に示されるように、第4変形例のスピーカ(振動発生装置)10Dのポールピース25Dの環状凹部(逆磁界遠ざけ部)26Dの内面の一部は、中心軸CAを中心とするテーパ面30Dである。さらに環状凹部26Dの内面の別の一部は直交面29である。
図13に示されるように、第4変形例のグラフGr1もほぼ左右対称である。これはポールピース25Dに環状凹部26Dが形成され、且つ、直交面29と上端面21の上下方向の位置が同一のためである。そのため
図13に示されるように、BLカーブを表すグラフGr2もほぼ左右対称である。なお、上記第1変形例及び第2変形例に第4変形例を適用してもよい。
【0046】
図14及び
図15は第5変形例を示す。
図14に示されるように、第5変形例のスピーカ10Eのポールピース25Eの環状凹部(逆磁界遠ざけ部)26Eの内面全体が、中心軸CAを中心とするテーパ面30Eによって構成されている。
図15に示されるように、第5変形例のグラフGr1もほぼ左右対称である。これはポールピース25Eに環状凹部26Eが形成され、且つ、テーパ面30Eの下端と上端面21の上下方向の位置が同一のためである。そのため
図15に示されるように、BLカーブを表すグラフGr2もほぼ左右対称である。なお、上記第1変形例及び第2変形例に第5変形例を適用してもよい。
【0047】
続いて第2実施形態に係るスピーカ(振動発生装置)50について
図16~
図20を参照しながら説明する。スピーカ50は、磁気回路51の構成がスピーカ10とは異なる。なお、以下の説明では、第1実施形態と同じ部材及び構造が多少異なるものの実質的に同一視できる部材には、第1実施形態と同じ符号を付す。
【0048】
第2実施形態の磁気回路51は、ポールピース25、ヨーク52、第2磁石54、第1トップポール56、第2磁石60及び第2トップポール62を備える。
【0049】
軟質磁性体であるヨーク52は、基部17、中央凸部18、及び円筒状部53を備える。円筒状部53の上下寸法は円筒状部19より短い。
【0050】
中央凸部18の上端面にはポールピース25の下面が固定されている。
【0051】
ポールピース25の上端面には円柱状の硬質磁性体(永久磁石)である第2磁石54の下面が固定されている。本実施形態の第2磁石54はNd磁石である。第2磁石54の外径は小径部28と略同一である。第2磁石54の上側がS極であり、下側がN極である。
【0052】
第2磁石54の上端面には円柱状の軟質磁性体である第1トップポール56の下面が固定されている。第1トップポール56の外径は第2磁石54と略同一である。このように中央凸部18と同軸をなすようにポールピース25、第2磁石54及び第1トップポール56が設けられている。
【0053】
円筒状部53の上面には、環状の硬質磁性体(永久磁石)である第1磁石60の下面が固定されている。本実施形態の第1磁石60はNd磁石である。第1磁石60の上側がS極であり、下側がN極である。
【0054】
第1磁石60の上端面には、環状の軟質磁性体である第2トップポール62の下面が固定されている。第2トップポール62の上端部には、環状のフランジ63が形成されている。第2トップポール62の上端面64は、中心軸CAと平行な方向に対して直交する平面である。このように、中央凸部18の外周側に第1磁石60及び第2トップポール62が設けられている。即ち、磁気回路51は外磁式の磁気回路である。
【0055】
図16に示されるように、取付溝42にフランジ63が嵌合されている。即ち、フレーム40の下端部がフランジ63によって支持されている。
【0056】
次に、第2実施形態の作用及び効果を説明する。
【0057】
第2実施形態に係るスピーカ50では、
図17に示されるように、円筒状部53、基部17、中央凸部18、ポールピース25の大径部27、第1磁石60及び第2トップポール62によって第1磁気回路15Aが構成され、第1磁気回路15Aにおいて第1磁界MF1が形成されている。第1磁界MF1の向きは、
図17に示された矢印の方向である。さらにポールピース25の大径部27、小径部28、第2磁石54、及び第1トップポール56によって第2磁気回路15Bが構成され、第2磁気回路15Bにおいて第2磁界MF2が形成されている。第2磁界MF2の向きは、
図17に示された矢印の方向であり、第1磁界MF1の向きと逆向きである。例えば、第2磁界MF2は図示反時計回りであり、第1磁界MF1は図示時計回りである。そのため、ポールピース25と第2トップポール62との間の磁気ギャップ38において、第1磁界MF1及び第2磁界MF2の向きは同じ向きとなっている。これにより、磁気ギャップ38における磁界密度を増加させて、ボイスコイル47の振動力を向上させることができる。
【0058】
上記交流電源の電力がコイル47Bに通電されると、ボイスコイル47が磁気回路51に対して中心軸CAに沿って往復運動し、振動板49が上下方向に振動するので音が発生する。
【0059】
図19は第2実施形態の比較例のスピーカ130の
図17と同様の断面図を示す。スピーカ130は、ポールピース125以外はスピーカ50と同じ構造である。第2トップポール62の上端面64とポールピース125の上端面126の中心軸CA方向の位置は同一である。
【0060】
比較例のスピーカ130では、
図19に示されるように、円筒状部53、基部17、中央凸部18、ポールピース125、第1磁石60及び第2トップポール62によって第1磁気回路15A-Xが構成され、第1磁気回路15A-Xにおいて第1磁界MF1-Xが形成されている。第1磁界MF1-Xの向きは、
図19に示された矢印の方向である。さらにポールピース125、第2磁石54、及び第1トップポール56によって第2磁気回路15B-Xが構成され、第2磁気回路15B-Xにおいて第2磁界MF2-Xが形成されている。第2磁界MF2-Xの向きは、
図19に示された矢印の方向であり、第1磁界MF1-Xの向きと逆向きである。
【0061】
さらに
図17及び
図19から明らかなように、スピーカ50では第2磁界MF2と第1磁界MF1が干渉(合流)し、スピーカ130では第2磁界MF2-Xと第1磁界MF1-Xが干渉(合流)する。しかしながら、スピーカ50のポールピース25に環状凹部26が形成されており且つポールピース25の上下寸法がポールピース125より大きいため、スピーカ50の第2磁界MF2はスピーカ130の第2磁界MF2-Xより全体的に上側に位置する。
【0062】
このため比較例を表す
図20のグラフGr1-Xでは、第2磁界MF2-Xの影響により、位置CPから上方へ5.5mm以上離れた領域において磁束密度Bの大きさが-(マイナス)になる。即ち、位置CPから上方へ5.5mm以上離れた領域において、第2磁界MF2-Xの一部が、主磁界と逆向きの逆磁界RM-X(
図19参照)となる。これに対して、第2実施形態を表す
図18のグラフGr1では、第2磁界MF2の影響を受けるものの、位置CPから上方へ6.0mm以上離れた領域において、磁束密度Bの大きさが-(マイナス)になる。即ち、位置CPから上方へ6.0mm以上離れた領域において、第2磁界MF2の一部が、主磁界と逆向きの逆磁界RM(
図17参照)となる。ポールピース25に環状凹部26が形成され、且つ、第2磁石54の外径が小径部28と略同一である。そのため、第2磁気回路15Bが発生する逆磁界RMが、上下方向に縦長に形成され主磁界から遠ざかる。そのため、本実施形態の逆磁界RMは、比較例の逆磁界RM-Xより上方に形成される。さらにグラフGr1及びグラフGr1-Xでは、位置CPより下方の領域の磁束密度Bの大きさは+(プラス)又はほぼゼロである。そのため、グラフGr1はほぼ左右対称であるのに対して、グラフGr1-Xは左右対称ではない。
【0063】
このようにグラフGr1はほぼ左右対称であるため、第2実施形態のBLカーブを表す
図18のグラフGr2はほぼ左右対称である。換言すると、逆磁界RMの発生領域が、位置CPから上方へ相応の距離だけ離れた領域に限定されている。さらに直交面29と上端面64の上下方向の位置が同一なので、磁気ギャップ38における第1磁界MF1及び第2磁界MF2の向きが略水平方向となる。そのため、磁気ギャップ38から上方に離れた所望の位置に逆磁界RMを形成することができる。そのため位置CPより上方の領域におけるボイスコイル47の移動力が低下し難い。そのため、位置CPより上方の領域におけるボイスコイル47の移動力と、位置CPより下方の領域におけるボイスコイル47の移動力の大きさが略同一である。そのため、スピーカ50のパフォーマンスが低下し難い。
【0064】
これに対してグラフGr1-Xは左右対称でないため、
図20が示す比較例のBLカーブを表すグラフGr2-Xは左右対称ではない。即ち、位置CPより上方の領域におけるボイスコイル47の移動力と、位置CPより下方の領域におけるボイスコイル47の移動力と、の間に大きな差がある。そのため、スピーカ130のパフォーマンスは低下し易い。
【0065】
以上、本発明を第1実施形態及び第2実施形態に基づいて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0066】
例えば、第2実施形態に第1~第5変形例の各技術思想を適用してもよい。
【0067】
上述の各永久磁石がフェライト磁石であってもよい。
【0068】
磁気回路15、51及びボイスコイル47を、スピーカとは異なる振動発生装置の構成部材として利用してもよい。例えば、磁気回路15及びボイスコイル47を振動アクチュエータの構成部材として利用してもよい。
【0069】
大径部27と小径部28をそれぞれ別々に製造した後に、大径部27と小径部28とを接合してポールピース25を製造してもよい。
【0070】
環状凹部とは異なる構成により逆磁界遠ざけ部が構成されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 10A 10B 10C 10D 100 スピーカ(振動発生装置)
16 ヨーク
18 中央凸部
19 円筒状部
23 第1磁石
25 25A 25B 25C 25D 25E ポールピース
26 26C 26D 26E 環状凹部(逆磁界遠ざけ部)
29 直交面
34 第2磁石
38 磁気ギャップ
47 ボイスコイル
50 スピーカ(振動発生装置)
52 ヨーク
53 円筒状部
60 第2磁石
62 第2トップポール
CA 中心軸
RM 逆磁界