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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166870
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】作業機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20231115BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20231115BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
E02F3/43 D
E02F9/20 M
E02F9/22 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077699
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】吉原 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 一茂
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003AC06
2D003BA01
2D003BA02
2D003BA03
2D003BB05
2D003BB12
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】安定した転圧力で転圧作業が行われることを可能にする制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、作業機械の転圧作業部位の実速度を検出する速度検出部と、関係情報を格納する関係情報格納部と、制御部と、を備える。関係情報は、転圧力に関係する物理量と前記移動速度との関係についての情報である。制御部は、与えられた転圧力の目標値と関係情報とに基づいて転圧作業部位の目標速度を決定し、前記転圧作業動作において実速度を目標速度に近づける制御を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転圧作業部位を含む作業装置と、前記作業装置が転圧作業動作を行うように当該作業装置を駆動することが可能であり、前記転圧作業動作は前記転圧作業部位が施工面に押付けられながら当該施工面に沿って移動する動作である作業駆動装置と、を備えた作業機械により行われる前記転圧作業動作を制御する制御装置であって、
前記転圧作業部位の実際の移動速度である実速度を検出する速度検出部と、
前記転圧作業部位が前記施工面に押付けられる力である転圧力に関係する物理量と前記移動速度との関係についての情報である関係情報を格納する関係情報格納部と、
前記物理量について与えられた目標値と前記関係情報とに基づいて前記移動速度の目標値である目標速度を決定し、前記転圧作業動作において前記実速度を前記目標速度に近づけるように前記作業駆動装置による前記作業装置の駆動を制御する制御部と、を備える、作業機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械の制御装置であって、前記作業駆動装置により前記転圧作業部位に与えられる推力を検出する推力検出部をさらに備え、前記関係情報格納部は前記関係情報として前記推力と前記移動速度との関係についての情報を格納し、前記制御部は、前記転圧作業動作の開始時に前記推力検出部により検出される前記推力と前記関係情報とに基づいて前記目標速度を決定するように構成されている、作業機械の制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械の制御装置であって、前記関係情報格納部は、複数の速度データを格納する速度データ格納部であり、前記複数の速度データのそれぞれは、前記推力及び前記移動速度の組み合わせを含み、前記複数の速度データは前記移動速度が互いに異なるものを含み、前記制御部は、前記複数の速度データのうち前記転圧作業動作開始時に前記推力検出部により検出された前記推力に対応する速度データを採択し、その採択された速度データに対応する前記移動速度に基づいて前記目標速度を決定する、作業機械の制御装置。
【請求項4】
請求項2記載の作業機械の制御装置であって、前記推力検出部は、前記推力の前記施工面に対する角度である推力角度をさらに検出するように構成され、前記関係情報格納部は、前記関係情報として前記推力及び前記推力角度と前記移動速度との関係についての情報を格納し、前記制御部は、前記転圧作業動作の開始時に前記推力検出部により検出される前記推力及び前記推力角度と前記関係情報とに基づいて前記目標速度を決定するように構成されている、作業機械の制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の作業機械の制御装置であって、前記関係情報格納部は複数の速度データを格納する速度データ格納部であり、前記複数の速度データのそれぞれは、前記推力及び前記推力角度と前記移動速度との組み合わせを含み、前記制御部は、前記複数の速度データのうち前記転圧作業動作開始時に前記推力検出部により検出された前記推力及び前記推力角度に対応する速度データを採択し、その採択された速度データに対応する前記移動速度に基づいて前記目標速度を決定する、作業機械の制御装置。
【請求項6】
請求項2記載の作業機械の制御装置であって、前記制御部は、前記転圧作業動作の開始を判定するために前記作業装置の状態について設定された転圧作業判定条件を格納し、当該転圧作業判定条件が満たされたときに前記推力検出部により検出された前記推力に基づいて前記目標速度を決定するように構成されている、作業機械の制御装置。
【請求項7】
請求項4記載の作業機械の制御装置であって、前記制御部は、前記転圧作業動作の開始を判定するために前記作業装置の状態について設定された転圧作業判定条件を格納し、当該転圧作業判定条件が満たされたときに前記推力検出部により検出された前記推力及び前記推力角度に基づいて前記目標速度を決定するように構成されている、作業機械の制御装置。
【請求項8】
請求項1記載の作業機械の制御装置であって、前記作業装置の動作速度を指定するための作業操作が入力される作業操作装置をさらに備え、前記制御部は、前記作業操作に対応する指定操作量と、前記実速度を前記目標速度に近づけるためのアシスト操作量と、の双方に基づいて前記作業装置を制御するように構成されている、作業機械の制御装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の作業機械の制御装置であって、前記作業機械は油圧ショベルであり、当該油圧ショベルは、機体をさらに含み、前記作業装置は、前記機体に対して起伏可能となるように当該機体に連結されるブームと、前記ブームに対して上下方向に回動可能となるように当該ブームに連結されるアームと、前記アームの先端部に連結されるバケットと、を含み、前記バケットは前記転圧作業部位を構成する底面を有し、前記作業駆動装置は、前記ブームを起伏させるブーム駆動器と、前記ブームに対して前記アームを回動させるアーム駆動器と、を含み、前記制御部は、前記作業駆動装置のうちの少なくとも前記ブーム駆動器を制御するように構成されている、作業機械の制御装置。
【請求項10】
請求項9記載の作業機械の制御装置であって、前記ブームの起伏速度を指定するためのブーム操作が入力されるブーム操作器をさらに備え、前記制御部は、前記ブーム操作に対応するブーム指定操作量と、前記実速度を前記目標速度に近づけるために演算されるブームアシスト操作量と、の双方に基づいて前記ブーム駆動器による前記ブームの駆動を制御するように構成されている、作業機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧作業を行うことが可能な作業機械の転圧動作を制御するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機械による作業中に当該作業機械におけるアタッチメントの押付け力を制御するための装置が知られている。前記押付け力は前記アタッチメントの先端部位、例えばバケットの底面、が作業面に押付けられる力である。
【0003】
例えば特許文献1は、演算手段と、目標値設定手段と、駆動制御手段と、を備えた作業機制御装置を開示する。前記演算手段は、作業面からアタッチメントに作用する負荷のうち当該作業面に垂直な方向の成分を演算して出力する。前記目標値設定手段は、作業に適した押付け力の目標値を設定する。前記駆動制御手段は、前記演算手段による前記演算出力が前記目標値設定手段により設定される前記目標値に一致するように複数のアクチュエータの駆動を自動制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-219727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載される制御は、作業面からアタッチメントに実際に加わる負荷と押付け力の目標値との対比に基づいて行われるため、不安定となりやすい。具体的に、前記負荷は地面の凹凸や土質の変化によって大きく変動しやすく、当該負荷と前記目標値との対比に基づく制御ではハンチング現象などが生じやすい。このような装置が転圧作業、すなわち、作業部材の特定部位を施工面に押付けながら当該施工面に沿って移動させることにより地盤を固める作業、に適用された場合、当該施工面の形状を不安定にするおそれがある。
【0006】
本発明は、転圧作業を行うことが可能な作業機械を制御するための装置であって、安定した転圧力で前記転圧作業が行われることを可能にする制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために、転圧作業部位が施工面に押付けられる力である転圧力と当該転圧作業部位の速度との関係に着目した。一般に、作業機械の運転に熟達した熟練者による転圧作業では、転圧力が安定しているのに加え、前記転圧作業部位が前記施工面に沿って移動する移動速度も安定しており、当該転圧力と当該移動速度との間には著しい相関関係がある。従って、このような相関関係に関する情報を予め用意しておき、与えられた前記転圧力の目標値に基づき目標速度を設定し、実際の前記移動速度を前記目標速度に近づけるように作業装置の駆動を制御することにより、施工面の凹凸や土質等に影響を受けることなく安定した転圧作業を実現することが可能となる。
【0008】
提供されるのは、作業機械により行われる転圧作業のための動作を制御する制御装置である。前記作業機械は、転圧作業部位を含む作業装置と、前記作業装置が転圧作業動作を行うように当該作業装置を駆動することが可能な作業駆動装置と、を備える。前記転圧作業動作は、前記転圧作業部位が前記施工面に押付けられながら当該施工面に沿って移動する動作である。前記制御装置は、前記転圧作業部位の実際の移動速度である実速度を検出する速度検出部と、関係情報を格納する関係情報格納部と、制御部と、を備える。前記関係情報は、前記転圧作業部位が前記施工面に押付けられる力である転圧力に関係する物理量と前記移動速度との関係についての情報である。前記制御部は、前記物理量について与えられた目標値と前記関係情報とに基づいて前記移動速度の目標値である目標速度を決定し、前記転圧作業動作において前記実速度を前記目標速度に近づけるように前記作業駆動装置による前記作業装置の駆動を制御する。
【0009】
前記転圧力に関係する物理量は、前記転圧力そのものでもよいが、前記作業駆動装置により前記転圧作業部位に与えられる推力であってもよい。この場合、前記制御装置は、前記推力を検出する推力検出部をさらに備え、前記関係情報格納部は前記関係情報として前記推力と前記移動速度との関係についての情報を格納し、前記制御部は、前記転圧作業動作の開始時に前記推力検出部により検出される推力と前記関係情報とに基づいて前記目標速度を決定するように構成されているのが好ましい。前記転圧作業動作開始時における前記推力検出部による前記推力の検出は、当該推力と前記関係情報とに基づいて前記目標速度が自動的に決定されることを可能にする。
【0010】
この態様において、前記関係情報格納部は、例えば、複数の速度データを格納する速度データ格納部が好適である。前記複数の速度データのそれぞれは、前記推力及び前記移動速度の組み合わせを含み、前記複数の速度データは前記移動速度が互いに異なるものを含む。前記制御部は、前記複数の速度データのうち前記転圧作業動作開始時に前記推力検出部により検出された前記推力に対応する速度データを採択し、その採択された速度データに対応する前記移動速度に基づいて前記目標速度を容易に決定することが可能である。前記複数の速度データは、例えば、熟練者により実際に良好な(転圧力及び移動速度の少なくとも一方が安定した)転圧作業が行われたときの推力及び移動速度についてのデータを多数回にわたって採取することにより、構築することが可能である。
【0011】
前記推力検出部は、前記推力の前記施工面に対する角度である推力角度をさらに検出するように構成され、前記関係情報格納部は、前記関係情報として前記推力及び前記推力角度と前記移動速度との関係についての情報を格納し、前記制御部は、前記転圧作業動作の開始時に前記推力検出部により検出される前記推力及び前記推力角度と前記関係情報とに基づいて前記目標速度を決定するように構成されていることが好ましい。前記転圧力は、前記推力及び前記推力角度によって特定されることが可能であるので、前記制御部は、前記推力及び前記推力角度の組み合わせと前記関係情報とに基づいてより適正な目標速度を決定することが可能である。
【0012】
この態様において、前記関係情報格納部が複数の速度データを格納する速度データ格納部である場合、前記複数の速度データのそれぞれは、前記推力及び前記推力角度と前記移動速度との組み合わせを含み、前記制御部は、前記複数の速度データのうち前記転圧作業動作開始時に前記推力検出部により検出された前記推力及び前記推力角度に対応する速度データを採択し、その採択された速度データに対応する前記移動速度に基づいて前記目標速度を決定することが、好ましい。
【0013】
前記制御部は、例えば、前記転圧作業動作の開始を判定するために前記作業装置の状態について設定された転圧作業判定条件を格納し、当該転圧作業判定条件が満たされたときに前記推力検出部により検出された前記推力(または前記推力及び前記推力角度)に基づいて前記目標速度を決定するように構成されていることが、好ましい。このことは、前記制御部が自動的に前記転圧作業動作の開始の判定及び当該判定に基づく目標速度の決定を行うことを可能にする。
【0014】
前記制御部により行われる制御は、オペレータによる操作を不要にする完全自動制御であってもよいし、オペレータによる操作をアシストするものであってもよい。例えば、前記制御装置は、前記作業装置の動作速度を指定するための作業操作が入力される作業操作装置をさらに備え、前記制御部は、前記作業操作に対応する指定操作量と、前記実速度を前記目標速度に近づけるためのアシスト操作量と、の双方に基づいて前記作業装置を制御するように構成されてもよい。
【0015】
前記作業機械は、例えば油圧ショベルが好適である。当該油圧ショベルは、機体をさらに含み、前記作業装置は、前記機体に対して起伏可能となるように当該機体に連結されるブームと、前記ブームに対して上下方向に回動可能となるように当該ブームに連結されるアームと、前記アームの先端部に連結されるバケットと、を含み、前記バケットは前記転圧作業部位を構成する底面を有する。前記作業駆動装置は、前記ブームを起伏させるブーム駆動器と、前記ブームに対して前記アームを回動させるアーム駆動器と、を含む。この作業機械において、前記制御部は、前記作業駆動装置のうちの少なくとも前記ブーム駆動器を制御するように構成されていることが、好ましい。前記ブームの起伏動作は前記転圧力に著しい影響を及ぼすので、前記制御部による前記ブーム駆動器の制御は有効である。
【0016】
この態様において、前記作業操作装置が、前記ブームの起伏速度を指定するためのブーム操作が入力されるブーム操作器を含む場合、前記制御部は、前記ブーム操作に対応するブーム指定操作量と、前記実速度を前記目標速度に近づけるために演算されるブームアシスト操作量と、の双方に基づいて前記ブーム駆動器による前記ブームの駆動を制御するように構成されていることが、好ましい。この場合、前記作業操作装置が前記アームの回動速度を指定するためのアーム操作が入力されるアーム操作器をさらに含んでもよいし、前記アーム駆動器により前記アームを一定の速度で回動させながら前記実速度を前記目標速度に近づけるように前記ブーム駆動器を制御するように前記制御部が構成されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、転圧作業を行うことが可能な作業機械を制御するための装置であって、安定した転圧力で前記転圧作業が行われることを可能にする制御装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る作業機械の例である油圧ショベルを示す側面図である。
図2】前記油圧ショベルに搭載される油圧回路及びコントローラを示す図である。
図3】前記コントローラの主要な機能を示すブロック図である。
図4】前記コントローラによりブームシリンダの駆動について実行される演算制御動作を示すフローチャートである。
図5】前記油圧ショベルによる転圧作業動作でのアームトップ推力及び推力角度を示す側面図である。
図6】前記油圧ショベルによる転圧作業動作が開始されるときの作業装置の姿勢の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、油圧ショベルを示し、当該油圧ショベルは、本発明の実施の形態に係る制御装置が搭載される作業機械である。前記油圧ショベルは、地面Gの上を走行可能な下部走行体10と、前記下部走行体10に搭載される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業装置14と、作業駆動装置と、を備える。
【0021】
前記下部走行体10及び前記上部旋回体12は、前記作業装置14を支持する機体を構成する。前記上部旋回体12は、旋回フレーム16と、その上に搭載される複数の要素と、を有する。前記複数の要素は、エンジンを収容するエンジンルーム17及び運転室であるキャブ18を含む。
【0022】
前記作業装置14は、掘削作業のための動作である掘削作業動作、及び、転圧作業のための動作である転圧作業動作を行うことが可能である。前記掘削作業動作は、地盤を掘削する動作であり、前記転圧作業動作は、前記作業装置14に含まれる転圧作業部位を施工面(ここでは地面G)に押付けながら、つまり施工面に転圧力を与えながら、当該転圧作業部位を前記施工面に沿って移動させることにより、地盤を固める動作である。
【0023】
前記作業装置14は、ブーム21、アーム22及びバケット24を含む。前記ブーム21は、基端部であるブームフットと、その反対側の先端部であるブームトップと、を有する。前記ブームフットは前記ブーム21が前記機体に対して起伏可能すなわち上下方向に回動可能となるように前記旋回フレーム16の前端にブームフットピン23Bを介して連結される。前記アーム22は、基端部であるアームフットと、その反対側の先端部であるアームトップと、を有する。前記アームフットは前記アーム22が前記ブーム21に対して上下方向に回動可能となるように前記ブーム21の前記先端部にアームフットピン23Aを介して連結される。前記バケット24は、前記アーム22に対して上下方向に回動可能となるように前記アームトップにバケットピン23Cを介して回動可能に取付けられる。
【0024】
前記作業駆動装置は、図1及び図2に示されるブームシリンダ26、アームシリンダ27及びバケットシリンダ28を含む。前記ブームシリンダ26は、ブーム駆動器であり、前記上部旋回体12と前記ブーム21との間に介在し、かつ、前記上部旋回体12に対して前記ブーム21を起伏方向に回動させるように伸縮する。前記アームシリンダ27は、アーム駆動器であり、前記ブーム21と前記アーム22との間に介在し、かつ、当該アーム22を前記ブーム21に対して回動させるように伸縮する。前記バケットシリンダ28は、バケット駆動器であり、前記アーム22に対して前記バケット24を上下方向に回動させるように伸縮する。
【0025】
前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28は、いずれも伸縮可能な油圧シリンダであり、互いに近似した構成を有する。代表的に前記アームシリンダ27について説明すると、前記アームシリンダ27は、図5に示されるヘッド側室27h及びその反対側のロッド側室27rを有する。前記アームシリンダ27は、前記ヘッド側室27hに作動油が供給されることにより伸長して前記アーム22をアーム引き方向(前記アームトップが前記ブーム21に近づく方向)に動かすとともに前記ロッド側室27r内の作動油を排出する。一方、前記アームシリンダ27は、前記ロッド側室27rに作動油が供給されることにより収縮して前記アーム22をアーム押し方向(前記アームトップが前記ブーム21から離れる方向)に動かすとともに前記ヘッド側室27h内の作動油を排出する。
【0026】
図2は、前記油圧ショベルに搭載される油圧回路30、作業操作装置40、速度データベース90、複数のセンサ及びこれらに電気的に接続されるコントローラ80を示し、これらは前記制御装置を構成する要素を含む。前記コントローラ80は、例えばマイクロコンピュータからなり、前記油圧回路30に含まれる各要素の作動を制御する。
【0027】
前記油圧回路30は、前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28に加え、ポンプユニット32と、ブーム制御弁36と、アーム制御弁37と、バケット制御弁38と、ブーム流量操作弁76と、アーム流量操作弁77と、バケット流量操作弁78と、を含む。
【0028】
前記ポンプユニット32は、複数の油圧ポンプを含み、当該複数の油圧ポンプは、少なくとも一つのメインポンプとパイロットポンプとを含む。前記複数の油圧ポンプは、駆動源である図略のエンジンに接続され、当該エンジンが出力する動力により駆動されて作動油を吐出する。
【0029】
前記ブーム制御弁36は、前記ポンプユニット32と前記ブームシリンダ26との間に介在し、前記ポンプユニット32から前記ブームシリンダ26に供給される作動油の方向及び流量(ブーム流量)を変化させるように開閉動作する。前記ブーム制御弁36は、ブーム上げパイロットポート及びブーム下げパイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記ブーム上げパイロットポートにパイロット圧が入力されると前記ブームシリンダ26のへッド側室に当該パイロット圧の大きさに対応した流量(ブーム上げ流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、前記ブーム下げパイロットポートにパイロット圧が入力されると前記ブームシリンダ26のロッド側室に当該パイロット圧の大きさに対応した流量(ブーム下げ流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0030】
前記アーム制御弁37は、前記ポンプユニット32と前記アームシリンダ27との間に介在し、前記ポンプユニット32から前記アームシリンダ27に供給される作動油の方向及び流量(アーム流量)を変化させるように開閉動作する。前記アーム制御弁37は、アーム引きパイロットポート及びアーム押しパイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記アーム引きパイロットポートにパイロット圧が入力されると前記アームシリンダ27の前記へッド側室27hに当該パイロット圧の大きさに対応した流量(アーム引き流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、前記アーム押しパイロットポートにパイロット圧が入力されると前記アームシリンダ27の前記ロッド側室27rに当該パイロット圧の大きさに対応した流量(アーム押し流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0031】
前記バケット制御弁38は、前記ポンプユニット32と前記バケットシリンダ28との間に介在し、前記ポンプユニット32から前記バケットシリンダ28に供給される作動油の方向及び流量(バケット流量)を変化させるように開閉動作する。前記バケット制御弁38は、バケット掘削パイロットポート及びバケット開きパイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記バケット掘削パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記バケットシリンダ28のへッド側室に当該パイロット圧の大きさに対応した流量で作動油が供給されることを許容するように開弁し、前記バケット開きパイロットポートにパイロット圧が入力されると前記バケットシリンダ28のロッド側室に当該パイロット圧の大きさに対応した流量で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0032】
前記ブーム流量操作弁76は、図3に示されるブーム上げ流量操作弁76Aと図示されないブーム下げ流量操作弁とを有し、それぞれが電磁弁(例えば電磁比例減圧弁または電磁逆比例減圧弁)により構成される。前記ブーム上げ流量操作弁76Aは、前記パイロットポンプと前記ブーム制御弁36の前記ブーム上げパイロットポートとの間に介在し、前記コントローラ80から前記ブーム上げ流量操作弁76Aに入力されるブーム上げ指令信号に対応した大きさのパイロット圧が前記ブーム上げパイロットポートに入力されることを許容するように開弁する。同様に、前記ブーム下げ流量操作弁は、前記パイロットポンプと前記ブーム制御弁36の前記ブーム下げパイロットポートとの間に介在し、前記コントローラ80から前記ブーム下げ流量操作弁に入力されるブーム下げ指令信号に対応した大きさのパイロット圧が前記ブーム下げパイロットポートに入力されることを許容するように開弁する。
【0033】
前記アーム流量操作弁77は、図示されないアーム引き流量操作弁及びアーム押し流量操作弁を有し、それぞれが電磁弁(例えば電磁比例減圧弁または電磁逆比例減圧弁)により構成される。前記アーム引き流量操作弁は、前記パイロットポンプと前記アーム制御弁37の前記アーム引きパイロットポートとの間に介在し、前記コントローラ80から前記アーム引き流量操作弁に入力されるアーム引き指令信号に対応した大きさのパイロット圧が前記アーム引きパイロットポートに入力されることを許容するように開弁する。同様に、前記アーム押し流量操作弁は、前記パイロットポンプと前記アーム制御弁37の前記アーム押しパイロットポートとの間に介在し、前記コントローラ80から前記アーム押し流量操作弁に入力されるアーム押し指令信号に対応した大きさのパイロット圧が前記アーム押しパイロットポートに入力されることを許容するように開弁する。
【0034】
前記バケット流量操作弁78は、図示されないバケット掘削流量操作弁及びバケット開き流量操作弁を有し、それぞれが電磁弁(例えば電磁比例減圧弁または電磁逆比例減圧弁)により構成される。前記バケット掘削流量操作弁は、前記パイロットポンプと前記バケット制御弁38の前記バケット掘削パイロットポートとの間に介在し、前記コントローラ80から前記バケット掘削流量操作弁に入力されるバケット掘削指令信号に対応した大きさのパイロット圧が前記バケット掘削パイロットポートに入力されることを許容するように開弁する。同様に、前記バケット開き流量操作弁は、前記パイロットポンプと前記バケット制御弁38の前記バケット開きパイロットポートとの間に介在し、前記コントローラ80から前記バケット開き流量操作弁に入力されるバケット開き指令信号に対応した大きさのパイロット圧が前記バケット開きパイロットポートに入力されることを許容するように開弁する。
【0035】
前記作業操作装置40は、前記作業装置14の動作速度を指定するための作業操作の入力を受け、当該作業操作に対応した速度指令信号を前記コントローラ80に入力する。この実施の形態に係る前記作業操作装置40は、図2に示されるブーム操作器46、アーム操作器47及びバケット操作器48を含む。
【0036】
前記ブーム操作器46は、ブームレバーを含み、当該ブームレバーに与えられるブーム操作、具体的には、前記ブーム21をブーム上げ方向及びブーム下げ方向にそれぞれ動かすためのブーム上げ操作及びブーム下げ操作、に対応したブーム上げ操作信号又はブーム下げ操作信号を生成して前記コントローラ80に入力する。
【0037】
前記アーム操作器47は、アームレバーを含み、当該アームレバーに与えられるアーム操作、具体的には、前記アーム22をアーム引き方向及びアーム押し方向にそれぞれ動かすためのアーム引き操作及びアーム押し操作、に対応したアーム引き操作信号又はアーム押し操作信号を生成して前記コントローラ80に入力する。
【0038】
前記バケット操作器48は、バケットレバーを含み、当該バケットレバーに与えられるバケット操作、具体的には、前記バケット24をバケット掘削方向及びバケット開き方向にそれぞれ動かすためのバケット掘削操作及びバケット開き操作、に対応したバケット掘削操作信号又はバケット開き操作信号を生成して前記コントローラ80に入力する。
【0039】
前記複数のセンサは、図3に示される複数のストロークセンサ66~68、アームシリンダへッド圧センサ64H及びアームシリンダロッド圧センサ64Rを含む。
【0040】
前記複数のストロークセンサ66~68は、前記作業装置14の姿勢を検出するために当該作業装置14に取付けられるものであり、詳しくは、ブームシリンダストロークセンサ66、アームシリンダストロークセンサ67及びバケットシリンダストロークセンサ68である。これらは、前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28のそれぞれのストローク長の検出、換言すれば、シリンダチューブに対するシリンダロッドのストローク方向の相対位置の検出、を行う。
【0041】
前記アームシリンダへッド圧センサ64Hは、前記アームシリンダ27のへッド圧Ph、すなわち前記へッド側室27h内の作動油の圧力、を検出する。同様に、前記アームシリンダロッド圧センサ64Rは、前記アームシリンダ27のロッド圧Pr、すなわち前記ロッド側室27r内の作動油の圧力、を検出する。
【0042】
前記複数のセンサのそれぞれは検出した物理量に対応する検出信号を生成し、当該検出信号を前記コントローラ80に入力する。
【0043】
前記コントローラ80は、前記ブーム操作器46、前記アーム操作器47及び前記バケット操作器48からそれぞれ入力される操作指令信号に基づき、基本制御を行う。当該基本制御は、前記ブーム上げ操作指令信号または前記ブーム下げ操作指令信号に対応した速度で前記ブームシリンダ26を伸縮させる(つまり前記ブーム21に起伏動作をさせる)ためのブーム上げ指令信号又はブーム下げ指令信号を生成して前記ブーム流量操作弁76に入力することと、前記アーム引き操作指令信号または前記アーム押し操作指令信号に対応した速度で前記アームシリンダ27を伸縮させる(つまり前記アーム22に回動動作をさせる)ためのアーム引き指令信号又はアーム押し指令信号を生成して前記アーム流量操作弁77に入力することと、前記バケット掘削操作指令信号または前記バケット開き操作指令信号に対応した速度で前記バケットシリンダ28を伸縮させる(つまり前記バケット24に回動動作をさせる)ためのバケット掘削指令信号又はバケット開き指令信号を生成して前記バケット流量操作弁78に入力することと、を含む。
【0044】
前記コントローラ80は、さらに、前記作業装置14により転圧作業が行われる場合において、安定した転圧力で転圧作業動作が行われるようにブーム上げ操作(前記ブーム21をブーム上げ方向に動かすための速度指定操作)をアシストするための転圧アシスト制御を実行する。当該転圧アシスト制御を実行するために前記コントローラ80は図3に示されるような複数の機能を備え、当該複数の機能は、作業装置姿勢演算部81、推力及び推力角度演算部82、転圧作業判定部83、目標速度算定部84、実速度演算部85、速度偏差演算部86、ブーム上げ操作演算部87、ブーム上げ指令演算部88及びアシスト率設定部89を含む。これらの機能は、例えば、前記コントローラ80に含まれるCPUが当該コントローラ80に含まれるメモリに予め格納されたプログラムを実行することにより、実現される。
【0045】
前記作業装置姿勢演算部81は、前記ストロークセンサ66~68によりそれぞれ検出されるシリンダストロークに基づいて前記作業装置14の姿勢を演算する。すなわち、前記作業装置姿勢演算部81は、前記ストロークセンサ66~68とともに、前記作業装置14の姿勢を検出する姿勢検出部を構成する。このような作業装置14の姿勢の検出は、当該作業装置14における任意の部位の位置が特定されることを可能にし、さらには当該位置の時間微分により当該任意の部位の移動速度が特定されることを可能にする。
【0046】
前記作業装置14の姿勢を検出するためのセンサ、すなわち姿勢検出センサ、は前記ストロークセンサ66~68に限られない。前記姿勢検出センサは、例えば、ブーム角度(上部旋回体12に対するブーム21の相対角度)、アーム角度(ブーム21に対するアーム22の相対角度)及びバケット角度(アーム22に対するバケット24の相対角度)をそれぞれ検出する角度センサと、検出された角度に基づいて前記作業装置14の姿勢を演算する演算部と、を含んでもよい。
【0047】
推力及び推力角度演算部82は、図5に示されるアームトップ推力Fm及びアームトップ推力角度θfを演算する。前記アームトップ推力Fmは、前記アームトップ、この実施形態では前記アーム22において前記バケットピン23Cが取付けられている部位、に前記アームシリンダ27から与えられる推力である。前記アームトップ推力Fmに相当する推力ベクトルの方向は、前記アームトップの回動接線方向、例えば図5では前記アームトップにおいてアームフットを中心とする円弧Aarに接する接線と平行な方向、である。前記アームトップ推力角度θfは、前記アームトップ推力Fmのベクトルが施工面、この実施の形態では図5に示される地面Gであって水平面、に対してなす角度である。
【0048】
前記推力及び前記推力角度演算部82は、後に詳述するように、前記作業装置姿勢演算部81により演算される前記作業装置姿勢と、前記アームシリンダへッド圧センサ64H及び前記アームシリンダロッド圧センサ64Rによりそれぞれ検出される前記アームシリンダ27の前記へッド圧Ph及び前記ロッド圧Prと、に基づいて前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfを演算することが可能である。すなわち、前記作業装置姿勢演算部81、前記ストロークセンサ66~68、前記アームシリンダへッド圧及びロッド圧センサ64H,64Rは、前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfを検出する推力検出部を構成する。
【0049】
前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfにより、転圧力が特定されることが可能である。前記転圧力は、前記作業装置14における転圧作業部位が施工面(この実施の形態では地面G)に押付けられる力であり、前記転圧作業部位は、この実施の形態では上述のように前記バケット24の底面24aである。
【0050】
前記転圧作業判定部83は、前記作業装置14による転圧作業の開始を判定する。この実施の形態に係る前記転圧作業判定部83は、前記作業装置14の状態について予め設定された転圧作業開始条件を格納し、前記作業装置姿勢演算部81により演算される前記作業装置14の姿勢及び前記推力及び推力角度演算部82により演算される前記アームトップ推力Fmが前記転圧作業開始条件を満たしているか否かを判定する。
【0051】
この実施の形態に係る前記転圧作業判定部83は、さらに、前記転圧作業の終了も判定する。当該終了の判定は、前記開始の判定と同様に予め設定された転圧作業終了条件が満たされているか否かによって行われることが可能である。
【0052】
前記目標速度算定部84は、目標速度Vatを算定する。前記目標速度Vatは、前記転圧力を安定させながら前記転圧作業を行うための、前記転圧作業部位の移動速度の目標値である。この実施の形態では、前記アームトップの移動速度であるアームトップ速度Vaが前記転圧作業部位の移動速度と同等とみなされ、当該アームトップ速度Vaの目標値が前記目標速度Vatとして算定される。
【0053】
前記目標速度Vatの算定は、前記転圧作業判定部83により転圧作業の開始が判定された時点において前記推力及び推力角度演算部82により演算された前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfと、前記速度データベース90に格納されている複数の速度データと、に基づいて行われる。
【0054】
前記速度データベース90は、前記複数の速度データを格納する速度データ格納部であり、当該複数の速度データのそれぞれは、後に詳述するように、前記アームトップ推力Fm、前記アームトップ推力角度θf及び前記アームトップ速度Vaの組み合わせである。前記複数の速度データは、前記アームトップ速度Vaが互いに異なるものを含む。当該複数の速度データは、前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfにより特定される転圧力と前記アームトップ速度Vaとの関係についての情報である関係情報に相当する。
【0055】
前記目標速度算定部84は、前記複数の速度データのうち前記転圧作業動作開始時に前記推力及び前記推力角度演算部82により演算された(つまり前記推力検出部により検出された)前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfに対応する速度データを採択し、その採択された速度データに対応する前記アームトップ速度Vaに基づいて前記目標速度Vatを算定する。前記複数の速度データ及びその採取方法、並びに前記速度データに基づく前記目標速度Vatの算定方法については、後述する。
【0056】
この実施の形態では、前記アームトップ速度Vaが転圧作業部位の移動速度とみなされているため、前記複数の速度データのそれぞれは前記アームトップ推力Fm、前記アームトップ推力角度θf及び前記アームトップ速度Vaの組み合わせを含むが、前記転圧作業部位(この実施の形態では前記バケット24の底面24a)の移動速度がそのまま制御対象として取扱われる場合には、前記複数の速度データのそれぞれは前記アームトップ速度Vaに代えて前記移動速度そのものを含むのがよい。
【0057】
なお、本発明に係る速度データ格納部は、前記速度データベース90のように前記コントローラ80とは独立して構成されたものに限らず、例えばコントローラ80に含まれる大容量メモリにより構成されてもよい。
【0058】
前記実速度演算部85は、実速度Varを演算する。前記実速度Varは、前記転圧作業部位の実際の移動速度であり、この実施の形態では、前記アームトップ速度Vaの実際の値が演算される。前記実速度Varは、前記作業装置姿勢演算部81により演算される前記アームトップの位置の時間微分により算定されることが可能である。従って、前記実速度演算部85は、前記姿勢検出部とともに速度検出部を構成する。
【0059】
前記速度偏差演算部86は、速度偏差ΔVaを演算する。前記速度偏差ΔVaは、前記目標速度Vatに対する前記実速度Varの偏差(=Vat-Var)である。
【0060】
前記ブーム上げ操作演算部87は、ブーム上げ操作指令Sboを演算する。前記ブーム上げ操作指令Sboは、前記ブーム操作器46の前記ブームレバーにブーム上げ操作(前記ブーム21にブーム上げ動作を行わせるための操作)が与えられたときに当該ブーム操作器46から前記コントローラ80に入力される信号、すなわち前記ブーム上げ操作信号、に対応するブーム上げ速度指令である。前記ブーム上げ操作指令Sboは、従って、前記ブームレバーの操作量(前記ブーム上げ操作の大きさ)に対応する。
【0061】
前記ブーム上げ指令演算部88は、最終ブーム上げ指令Sbfを演算して前記ブーム上げ流量操作弁76Aに入力することにより、前記ブーム21の実際のブーム上げ速度を調節する。具体的に、前記ブーム上げ指令演算部88は、前記速度偏差演算部86により演算された前記速度偏差ΔVaに基づいて、当該速度偏差ΔVaを0に近づけるためのアシストブーム上げ指令Sbaを演算し、さらに、当該アシストブーム上げ指令Sbaと、前記ブーム上げ操作演算部87により演算された前記ブーム上げ操作指令Sboと、アシスト率Raと、に基づいて前記最終ブーム上げ指令Sbfを演算する。前記アシスト率Raは、前記最終ブーム上げ指令Sbfに対する前記アシストブーム上げ指令Sbaの比率(=Sba/Sbf)であり、前記ブーム上げ動作の速度について前記アシストブーム上げ指令Sbaが加味される割合を示す。
【0062】
前記アシスト率設定部89は、前記アシスト率Raの設定を行う。前記アシスト率設定部89は、前記アシスト率Raとして予め設定された一定の値を格納するものでもよいし、オペレータ等によるアシスト設定操作を受けて当該アシスト設定操作に対応する値を前記アシスト率Raに設定するものでもよい。前記アシスト率設定部89は、あるいは、LiDAR(Light Detection and Ranging)等によって検出される施工面の状態に基づいて自動的に前記アシスト率Raを設定するものでもよい。
【0063】
次に、前記転圧作業について前記コントローラ80により実際に行われる演算制御動作を、図4のフローチャートを参照しながらより具体的に説明する。
【0064】
1.アームトップ推力Fm及びアームトップ推力角度θfの演算(ステップS1)
前記コントローラ80の前記推力及び推力角度演算部82は、前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfの演算を行う(ステップS1)。
【0065】
前記アームトップ推力Fmの具体的な算定方法は限定されないが、アームフット回り(図5に示される例では前記アームフットピン23A回り)のモーメントの釣り合いに着目することにより、前記アームトップ推力Fmを簡便に演算することが可能である。具体的に、前記バケット24の底面24aが施工面(図5では地面G)に押付けられて移動する直前(つまり静止した状態)での前記モーメントの釣り合いは、前記アームシリンダ27のシリンダ推力であるアームシリンダ推力Fa、シリンダ推力半径La、アーム22の重心22Gに作用する重力m・g、重力半径Lg、前記アームトップ推力Fm及びアームトップ推力半径Lmを用いて次式(1)のように表されることが可能である。
【0066】
Fm・Lm=Fa・La+M・g・Lg …(1)
この(1)式を変形することにより、前記アームトップ推力Fmを求めるための次式(2)を得ることができる。
【0067】
Fm=(Fa・La+M・g・Lg)/Lm …(2)
前記式(1)及び(2)において、前記アームシリンダ推力Faは前記アームシリンダ27により前記アーム22に当該アームシリンダ27の伸長方向に与えられる推力である。当該アームシリンダ推力Faは、当該アームシリンダ27におけるピストンのへッド側受圧面積Ah及びロッド側受圧面積Arと、前記アームシリンダへッド圧センサ64H及び前記アームシリンダロッド圧センサ64Rによりそれぞれ検出される前記へッド圧Ph及び前記ロッド圧Prと、に基づいて次式(3)により算出されることが可能である。
【0068】
Fa=Ah+Ph-Ar+Pr …(3)
また、前記シリンダ推力半径Laは前記アームシリンダ推力Faのモーメント半径(前記アームシリンダ推力Faと直交する方向についての前記アームフットピン23Aの中心から前記アームシリンダ推力Faまでの距離)、前記重力半径Lgは前記重力m・gのモーメント半径(水平方向についての前記アームフットピン23Aの中心から前記重力m・gまでの距離)、前記アームトップ推力半径Lmは前記アームトップ推力Fmのモーメント半径(前記アームトップ推力Fmと直交する方向についての前記アームフットピン23Aの中心から前記アームトップ推力Fmまでの距離)であり、それぞれ前記作業装置14の姿勢に基づき演算されることが可能である。
【0069】
2.転圧作業開始の判定(ステップS2)
一方、前記コントローラ80の転圧作業判定部83は、前記作業装置14による転圧作業の開始を判定する(ステップS2)。具体的には、前記作業装置14の状態が予め設定された転圧作業開始条件を満たすか否かを判定する。
【0070】
前記転圧作業開始条件は、推力条件及び姿勢条件の少なくとも一方、好ましくは双方、を含む。前記推力条件は、前記アームトップ推力Fmについての条件であり、例えば前記アームトップ推力Fmが予め設定された推力閾値Fmo以上であること(Fm≧Fmo)である。前記姿勢条件は、前記作業装置14の姿勢についての条件であり、例えば、次の3つの条件(a)~(c)を全て満たすことである。
(a)前記ブーム21の回動中心(この実施の形態では前記ブームフットピン23Bの中心)から前記アームトップの位置(この実施の形態では前記バケットピン23Cの中心)までの水平距離Lxが予め設定された水平距離閾値Lxo以上であること(Lx≧Lxo)。
(b)前記ブーム21の回動中心から前記アームトップの位置までの鉛直距離Lyが予め設定された鉛直距離閾値Lyo以下であること(Ly≦Lyo)。
(c)バケット角度θcが予め設定されたバケット角度閾値θco以下であること(Lx≧LxoかつLy≦Lyoかつθc≦θco)。前記バケット角度θcは、前記アーム22に対して前記バケット24がなす角度、詳しくは、アーム基準線LBとバケット基準線LCとの間の角度であり、前記アーム基準線LBは前記バケット24の回動中心(この実施の形態では前記バケットピン23Cの中心)と前記アーム22の回動中心(この実施の形態では前記アームフットピン23A)とを結ぶ直線、前記バケット基準線LCは前記バケット24の回動中心と前記バケット24の先端25とを結ぶ直線である。
【0071】
図6は、前記転圧作業開始時に前記作業装置14がとり得る姿勢の典型的な例を示す。一般に、前記転圧作業の開始時では、前記ブームフットから前記バケット24が前方に大きく離れた位置で当該バケット24の転圧作業部位である底面24aが施工面に対して面接触するように作業装置14全体が前方に大きく延ばされ、この姿勢から前記ブーム21のブーム上げ動作と前記アーム22のアーム引き動作とが同時に行われることにより、前記底面24aを施工面に押付けながら当該施工面に沿って前記ブームフットに近づく方向に引き寄せる転圧作業動作が行われる。従って、前記水平距離Lx、前記鉛直距離Ly及び前記バケット角度θcについて前記のような条件が設定されることにより、作業装置14が転圧作業開始姿勢にあることを的確に判定することが可能である。ただし、当該判定を簡便にすることを目的に、前記鉛直距離Lyについての前記条件(Ly≦Lyo)及び前記バケット角度θcについての前記条件(θc≦θco)の少なくとも一方が省略されてもよい。あるいは、前記推力条件(Fm≧Fmo)が省略されてもよい。
【0072】
3.目標速度Vatの算定(ステップS3,S4)
前記推力及び推力角度演算部82は、前記転圧作業判定部83により前記転圧作業の開始が判定されるまで(ステップS2でNO)前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfの演算を継続する(ステップS1)。そして、前記転圧作業判定部83により前記転圧作業の開始が判定された時点すなわち前記転圧作業開始条件の充足が判定された時点で(ステップS2でYES)、前記目標速度算定部84は当該時点で演算された前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfを記憶し(ステップS3)、その記憶したアームトップ推力Fm及びアームトップ推力角度θfに基づいて目標速度Vatを算定する(ステップS4)。
【0073】
前記目標速度Vatの算定には、前記速度データベース90に格納されている前記複数の速度データが用いられる。前記複数の速度データは、上述のとおり、前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfと前記アームトップ速度Vaとの組み合わせであり、次の表1は前記複数の速度データの一部を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
前記表1に例示される速度データは、複数の熟練作業者(表1では作業者A及び作業者B)が実際に前記油圧ショベルを運転することにより行われた転圧作業時に採取されたものであり、アームトップ速度Vaは平均速度、すなわち、前記転圧作業中に一定の時間間隔で採取された速度の平均値、である。一般に、熟練作業者により行われる転圧作業では、前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfに対応する転圧力の安定度及びアームトップ速度Vaの安定度が高く、両者の間には著しい相関関係が認められる。一般には、前記転圧力が大きいほど前記アームトップ速度Vaは小さくなる。従って、このような熟練作業者により繰り返し行われる転圧作業において採取されたデータが前記複数の速度データとして前記速度データベース90に格納されることにより、前記目標速度算定部84は、当該複数の速度データのうち前記転圧作業開始が判定された時点において演算された前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfに対応する転圧力を維持しながら転圧作業を進めるための前記目標速度Vat、つまり前記アームトップ速度Vaの目標値、を算定することが可能である。
【0076】
前記目標速度算定部84は、例えば、前記複数の速度データのうち前記転圧作業開始判定時に演算された前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfに最も近い速度データにおけるアームトップ速度Vaをそのまま前記目標速度Vatに設定してもよいし、前記複数の速度データのうち前記転圧作業開始判定時に演算された前記アームトップ推力Fm及び前記アームトップ推力角度θfに近い複数の速度データのそれぞれに対応する複数のアームトップ速度Vaの平均値、あるいは補間演算により求めた値、を前記目標速度Vatに設定してもよい。例えば、演算されたアームトップ推力Fmの大きさ及びアームトップ推力角度θfがそれぞれ80kg・f及び53degである場合、前記目標速度算定部84は、前記アームトップ推力Fmの大きさを重視して表1の上から3段目の速度データを採択することにより当該速度データのアームトップ速度(平均速度)210mm/sをそのまま前記目標速度Vatに設定してもよいし、前記3段目の速度データと、前記アームトップ推力角度θfを重視して採択される速度データ(2段目の速度データ)と、に基づいて平均演算または補間演算により前記目標速度Vatを算定してもよい。
【0077】
前記速度データベース90に格納される前記複数の速度データは、熟練作業者による作業で採取された全てのデータを含んでもよいし、当該全てのデータのうち特に有用なものとして厳選されたデータ、例えば転圧作業開始時から完了時までの前記アームトップ速度Vaのばらつきが小さいもの、のみが格納されてもよい。また、当該速度データの厳選及びその厳選された速度データの前記速度データベース90への入力が前記コントローラ80によって自動的に行われてもよい。
【0078】
前記複数の速度データの採取のための転圧作業が行われる場所は限定されない。当該場所は、前記油圧ショベルが生産される工場であってもよいし、当該油圧ショベルが実際に使用される作業現場であってもよい。また、実際に転圧作業が行われる度にさらなる速度データが採取されて前記速度データベース90に追加格納されてもよい。あるいは、前記速度データを採取するための作業は、実際の転圧作業ではなくこれに近似したデータ採取のための模擬転圧作業であってもよい。
【0079】
さらに、前記速度データベース90に格納される前記複数の速度データは、実際の作業中に採取されたものに限られない。当該複数の速度データは、例えば、コンピュータによるシミュレーションによって取得されたものであってもよい。
【0080】
4.最終ブーム上げ指令Sbfの演算(ステップS5~S7)
前記コントローラ80は、前記目標速度Vatに基づいて、前記ブーム上げ流量操作弁76Aに入力すべき最終ブーム上げ指令Sbfを演算するための動作を行う。具体的には次のとおりである。
【0081】
まず、前記コントローラ80の前記実速度演算部85が前記実速度Varすなわち実際のアームトップ速度Vaを演算し、前記速度偏差演算部86が前記速度偏差ΔVaすなわち前記目標速度Vatと前記実速度Varとの差(=Vat-Var)を演算する(ステップS5)。
【0082】
次に、前記ブーム上げ指令演算部88は、前記速度偏差ΔVaに基づいてアシストブーム上げ指令Sbaを演算する(ステップS6)。当該アシストブーム上げ指令Sbaは、前記速度偏差ΔVaを0に近づける(つまり前記実速度Varを前記目標速度Vatに近づける)ためのブーム上げ指令である。前記ブーム上げ指令演算部88は、例えば、予め設定された関係(例えば図6に示されるような速度偏差ΔVaとアシストブーム上げ指令Sbaとの関係)を格納して当該関係に基づいて前記アシストブーム上げ指令Sbaを算定してもよいし、前記速度偏差ΔVaに所定のゲインを乗じてフィードバック補正量を演算し、当該フィードバック補正量に基づいて前記アシストブーム上げ指令Sbaを算定してもよい。
【0083】
前記ブーム上げ指令演算部88は、さらに、前記アシストブーム上げ指令Sbaと、ブーム上げ操作演算部により演算されるブーム上げ操作指令Sbo(前記ブームレバーに与えられるブーム上げ操作の大きさに対応する速度指令)と、アシスト率設定部89により設定されるアシスト率Raと、に基づいて、前記最終ブーム上げ指令Sbfを演算する(ステップS7)。当該最終ブーム上げ指令Sbfは次式(4)により与えられる。
【0084】
Sbf=(1-Ra)・Sbo+Ra・Sba …(4)
前記式(4)に示されるように、前記アシスト率Raは、前記最終ブーム上げ指令Sbfにおいて前記アシストブーム上げ指令Sbaが占める割合であり、当該アシスト率Raが大きいほどブームレバーに与えられるブーム上げ操作が加味される割合が逆に小さくなる。前記アシスト率Raは、予め設定された一定の値に保たれてもよいし、オペレータ等の好みにより適宜設定されてもよい。あるいは、施工面の状態などに応じて自動的に算定されてもよい。
【0085】
5.転圧作業の終了
この実施の形態に係る前記転圧作業判定部83は、前記転圧作業の開始後、当該転圧作業の終了も判定する(ステップS8)。この判定は、前記転圧作業開始の判定と同様、作業状態が予め設定された転圧作業終了条件を満たしているか否かの判定により行われることが可能である。当該転圧作業終了条件の例としては、(i)図6に示される前記水平距離Lx(ブームフットからアームトップまでの水平方向の距離)が予め設定された転圧作業終了判定用の閾値以下であること、(ii)ブームフットからアームフットまでの鉛直距離が予め設定された閾値以上になったこと、(iii)ブームレバーまたはアームレバーの操作量が予め設定された閾値以下になったこと(ブームレバーが実質的に中立位置に戻されたこと)、などが挙げられる。
【0086】
前記コントローラ80は、前記転圧作業の終了が判定されるまで(ステップS8でNO)、前記最終ブーム上げ指令Sbfの演算のための処理(ステップS5~S7)を継続する。そして、前記転圧作業の終了が判定された時点で(ステップS8でYES)、前記転圧作業の制御のための動作を終了する。
【0087】
以上説明した制御は、従来のように転圧力を制御量とするものではなく、転圧作業部位の移動速度を制御量とするもの、具体的には、前記転圧力を特定することが可能なアームトップ推力Fm及びアームトップ推力角度θfについて転圧作業開始時に演算された値に対応する目標速度Vatを演算して当該目標速度Vatと実速度Varとの偏差である速度偏差ΔVaを0に近づける制御、であるので、施工面の凹凸や土質の変化に起因する前記転圧力の変動にかかわらず、安定した転圧作業制御を行うことが可能であり、これにより、前記施工面の性状も安定させることが可能である。
【0088】
本発明は以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0089】
(1)目標速度の決定について
本発明に係る制御部は、前記転圧作業開始時における推力及び推力角度に基づいて前記目標速度を算定するものに限られない。例えば、図6に示されるような転圧作業開始姿勢におけるアームトップ推力角度θfが安定している場合には、前記推力のみに基づいて前記目標速度が算定されてもよい。この場合、前記速度データベース90に格納される前記複数の速度データのそれぞれは、前記アームトップ推力Fm(転圧作業部位に作用する推力に相当する力)と前記アームトップ速度Va(転圧作業部位の移動速度に相当する速度)との組み合わせのみを含む(つまり前記アームトップ推力角度θfを含まない)ものでもよい。
【0090】
本発明に係る制御部は、あるいは、転圧力に相当する物理量についてオペレータにより指定される目標値(例えば目標転圧力)に基づいて、(前記推力及び推力角度を検出することなく)前記目標速度を決定するものであってもよい。
【0091】
(2)関係情報格納部について
本発明に係る関係情報格納部は、転圧力と目標速度との関係についての情報であって当該目標速度の決定を可能にする関係情報を格納するものであればよく、前記速度データベース90に限定されない。当該関係情報格納部は、例えば、前記複数の速度データに基づいて設定された関係であって前記転圧作業部位に作用する推力及びその推力角度と目標速度との関係を示す関係式またはマップを格納するものであってもよい。
【0092】
(3)作業操作装置について
本発明に係る作業操作装置は、作業装置の動作速度を指定するための作業操作が与えられるものであればよく、前記操作器46~48のように前記作業操作を電気信号に変換するものに限らない。当該作業操作装置は、例えば、前記作業操作に対応したパイロット圧が前記作業駆動装置につながるパイロット操作式の制御弁に入力されることを許容するように開弁するバルブ、すなわちリモコン弁、であってもよい。この場合も、前記作業操作に対応する指定操作量は、前記リモコン弁から出力される前記パイロット圧を圧力センサにより検出すること、及び、その検出されたパイロット圧を前記指定操作量に換算すること、により特定されることが可能である。
【0093】
(4)アシスト対象について
前記実施の形態に係るアシスト対象はブーム上げ操作であるが、当該アシスト対象はアーム引き操作であってもよい。すなわち、前記速度偏差ΔVaを0に近づけるためのアーム引きアシスト操作量が演算されて当該アシスト操作量と実際にアームレバーに与えられるアーム操作に対応する指令操作量とに基づいて最終アーム引き指令が演算されてもよい。
【0094】
(5)自動制御について
前記アシスト率は1に設定されてもよい。つまり、前記ブーム21または前記アーム22の駆動が(ブーム操作またはアーム操作に拠らず)完全に自動制御されてもよい。
【0095】
あるいは、アーム22が一定の速度で回動するようにアームシリンダ27の動作を制御する一方、当該アーム22の当該一定の速度での回動を前提として前記実速度を前記目標速度に近づけるためのブーム上げ指令を演算することが行われてもよい。このような制御は、前記ブーム21の操作のアシスト(又は自動制御)に加えて転圧作業中でのアーム操作を不要にしてオペレータの負担をさらに軽減することが可能である。前記アーム22の回動速度は、予め定められた速度であってもよいし、オペレータによる手操作(アームレバーの操作を含む)によって指定された速度でもよい。
【0096】
(6)施工面について
前記実施の形態に係る施工面は水平な地面Gであるが、本発明に係る施工面は法面(傾斜面)であってもよい。この場合も、その傾斜した施工面に沿う目標速度に実速度を近づけるような制御が行われることにより、安定した転圧力での転圧作業を実現することが可能である。例えば、速度データ格納部に格納される複数の速度データのそれぞれが、前記推力、前記推力角度及び前記施工面の角度と、前記移動速度と、の組み合わせを含み、当該複数の速度データのうち、検出される推力及び推力角度並びに実際の施工面の角度に対応する速度データを採択することにより、当該速度データに基づいて目標速度を決定することが可能である。前記施工面の角度は、LiDAR等によって自動的に検知されてもよいし、オペレータの操作により指定されてもよい。
【0097】
(7)速度検出部について
本発明に係る速度検出部は、転圧作業部位の速度またはこれに相当する速度を検出するものであればよく、必ずしも作業装置の姿勢を演算するものに限定されない。例えば、前記転圧作業部位またはこれと同等の部位に取付けられた加速度センサと、当該加速度センサにより検出される加速度に基づいて前記転圧作業部位の速度又はこれに相当する速度を演算する演算部と、を含むものでもよい。
【0098】
(8)作業装置について
本発明に係る作業装置は、転圧作業部位を含むものであればよく、前記作業装置14、すなわち、油圧ショベルに搭載される作業装置であって前記ブーム21、前記アーム22及び前記バケット24を含むものに限られない。本発明に係る作業装置は、例えば、転圧作業専用に構成されたものであって先端に転圧作業部位を含むものでもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 下部走行体(機体)
12 上部旋回体(機体)
14 作業装置
21 ブーム
22 アーム
24 バケット
26 ブームシリンダ(ブーム駆動器)
26h ヘッド側室
26r ロッド側室
27 アームシリンダ(アーム駆動器)
28 バケットシリンダ(バケット駆動器)
40 作業操作装置
46 ブーム操作器
64H アームシリンダヘッド圧センサ(推力検出部)
64R アームシリンダロッド圧センサ(推力検出部)
66~68 ストロークセンサ(姿勢検出部及び推力検出部)
80 コントローラ
81 作業装置姿勢演算部(速度検出部及び推力検出部)
82 推力及び推力角度演算部(推力検出部)
83 転圧作業判定部(制御部)
84 目標速度算定部(制御部)
85 実速度演算部(速度検出部)
89 ブーム上げ指令演算部(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4