(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166871
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/085 20220101AFI20231115BHJP
H04L 12/50 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H04L41/085
H04L12/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077701
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】井上 武
(72)【発明者】
【氏名】間野 暢
(72)【発明者】
【氏名】宇野 毅明
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA14
5K030HA01
5K030MD07
(57)【要約】
【課題】一般的な3層交換網における閉塞を判定する。
【解決手段】 処理装置1は、入力層、中間層および出力層からなる回線交換網において、入力層および出力層の各スイッチのターミナル数、入力層および中間層の各スイッチ間のリンク数、および出力層および中間層の各スイッチ間のリンク数を特定する特定部21と、入力層のスイッチと出力層のスイッチの組み合わせで特定されるスイッチペアについて、閉塞を判定する判定部22を備える。判定部22は、スイッチペアの入力層のスイッチに空きターミナルがあり、スイッチペアの出力層のスイッチに空きターミナルがある、各ネットワーク状況のいずれかにおいて、中間層の各スイッチについて、スイッチペアで特定される入力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致し、または、スイッチペアで特定される出力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致する場合、閉塞と判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力層、中間層および出力層からなる回線交換網において、前記入力層の各スイッチのターミナル数、前記出力層の各スイッチのターミナル数、前記入力層の各スイッチと前記中間層の各スイッチ間のリンク数、および前記出力層の各スイッチと前記中間層の各スイッチ間のリンク数を特定する特定部と、
前記入力層の各スイッチのうちのいずれかと、前記出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定されるスイッチペアについて、閉塞を判定する判定部を備え、
前記判定部は、
前記スイッチペアで特定される前記入力層のスイッチに空きターミナルがあり、前記スイッチペアで特定される前記出力層のスイッチに空きターミナルがある、各ネットワーク状況のいずれかにおいて、
前記中間層の各スイッチについて、前記スイッチペアで特定される前記入力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致し、または、前記スイッチペアで特定される前記出力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致する場合、
前記スイッチペアについて、閉塞と判定する一方、それ以外の場合、非閉塞と判定する
処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記スイッチペアについて、
前記各ネットワーク状況のそれぞれにおいて、
前記中間層のいずれかのスイッチについて、前記スイッチペアで特定される前記入力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致せず、かつ、前記スイッチペアで特定される前記出力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致しない場合、
非閉塞と判定する
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記入力層の各スイッチのうちのいずれかと、前記出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定される各スイッチペアのいずれかについて閉塞と判定する場合、前記回線交換網について閉塞と判定し、
各スイッチペアについて非閉塞と判定する場合、前記回線交換網について非閉塞と判定する
請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記スイッチペアについて、式1の連立不等式において、X={x
ijk}とy={y
k}の実行可能解を持つ場合、閉塞と判定する
請求項1に記載の処理装置。
【数1】
【請求項5】
前記回線交換網において、入力層の各スイッチのターミナル数と、出力層の各スイッチのターミナル数が一様である場合、
前記判定部は、前記スイッチペアについて、ナップサック問題用の動的計画法で、実効可能解を持つか否かを判定する
請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
前記回線交換網において、中間層の各スイッチの入力層側のリンク数が一様で、かつ出力層側のリンク数が一様である場合、
前記判定部は、前記スイッチペアについて、式2の連立不等式において、m
1, m
3, s
pおよびs
qの実行可能解を持つ場合、前記スイッチペアについて閉塞と判定する
請求項1に記載の処理装置。
【数2】
【請求項7】
コンピュータが、入力層、中間層および出力層からなる回線交換網において、前記入力層の各スイッチのターミナル数、前記出力層の各スイッチのターミナル数、前記入力層の各スイッチと前記中間層の各スイッチ間のリンク数、および前記出力層の各スイッチと前記中間層の各スイッチ間のリンク数を特定するステップと、
前記入力層の各スイッチのうちのいずれかと、前記出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定されるスイッチペアについて、閉塞を判定するステップを備え、
前記判定するステップは、
前記スイッチペアで特定される前記入力層のスイッチに空きターミナルがあり、前記スイッチペアで特定される前記出力層のスイッチに空きターミナルがある、各ネットワーク状況のいずれかにおいて、
前記中間層の各スイッチについて、前記スイッチペアで特定される前記入力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致し、または、前記スイッチペアで特定される前記出力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致する場合、
前記スイッチペアについて、閉塞と判定する一方、それ以外の場合、非閉塞と判定する
処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
1953年にClosは3層交換網の非閉塞条件を発見した(非特許文献1)。現在でも、 データセンタネットワークのIPClosとしてその名が残されている。なおIP Closはパケット交換網であり、回線交換網ではない。
【0003】
Closは対称(symmetric)かつ一様(uniform)な3層交換網が非閉塞になる必要十分条件を証明した。1st/3rd-stageSWのterminal数をnとし、2nd-stageSW数をmとすると、非閉塞の必要十分条件は、よく知られたm≧2n-1となる。その後、Closの理論はより一般的(general)な構造に拡張されている。
【0004】
たとえば、いくつかの一般的な構造に対し、非閉塞である必要十分条件が示される(非特許文献2-4)。
【0005】
一般的に、Clos NWの中間層に世代ごとの異なるサイズのSWが配備されるネットワークがある(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C. Clos, “A study of non-blocking switching networks,” Bell System Technical Journal, vol.32, no.2, pp.406-424, 1953.
【非特許文献2】W. Kabacinski and F. Liotopoulos, “Multirate non-blocking generalized three-stage Clos switching networks,” IEEE Transactions on Communications,vol.50,no.9,pp.1486-1494,2002.
【非特許文献3】W. Kabacinski, “Non-blocking asymmetrical three-stage multirate switching networks,” in ICCT’98.1998International Conference on Communication Technology. Proceedings (IEEE Cat.No.98EX243), vol.1, 1998, p.59-63vol.1.
【非特許文献4】M. Collier and T. Curan,“The strictly non-blocking condition for three-stage networks, ”in The Fundamental Role of Teletraffic in the EvolutionOf Telecommunications Networks, ser. Teletraffic Science and Engineering. Elsevier, 1994, vol.1, pp.635-644.
【非特許文献5】R. Govindan, I. Minei, M. Kallahalla, B. Koley, and A. Vahdat, “Evolve or die: High-availability design principles drawn from Googles network infrastructure, ”in Proc. of ACM SIGCOMM,2016,p.58-72.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、もっとも一般的な構造を対称とする非特許文献2でさえ2nd stageはuniformであることを想定しており、完全に一般的ではない。なお、非特許文献2の非閉塞条件には反例が見つかっており、間違っている。結局、従来技術の到達点は、非特許文献3-4が非対称な構造をサポートしたにすぎない。いずれかのステージが非一様な構造に対する非閉塞条件は、知られていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、一般的な3層交換網における閉塞を判定可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の処理装置は、入力層、中間層および出力層からなる回線交換網において、前記入力層の各スイッチのターミナル数、前記出力層の各スイッチのターミナル数、前記入力層の各スイッチと前記中間層の各スイッチ間のリンク数、および前記出力層の各スイッチと前記中間層の各スイッチ間のリンク数を特定する特定部と、前記入力層の各スイッチのうちのいずれかと、前記出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定されるスイッチペアについて、閉塞を判定する判定部を備え、前記判定部は、前記スイッチペアで特定される前記入力層のスイッチに空きターミナルがあり、前記スイッチペアで特定される前記出力層のスイッチに空きターミナルがある、各ネットワーク状況のいずれかにおいて、前記中間層の各スイッチについて、前記スイッチペアで特定される前記入力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致し、または、前記スイッチペアで特定される前記出力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致する場合、前記スイッチペアについて、閉塞と判定する一方、それ以外の場合、非閉塞と判定する。
【0010】
本発明の一態様の処理方法は、コンピュータが、入力層、中間層および出力層からなる回線交換網において、前記入力層の各スイッチのターミナル数、前記出力層の各スイッチのターミナル数、前記入力層の各スイッチと前記中間層の各スイッチ間のリンク数、および前記出力層の各スイッチと前記中間層の各スイッチ間のリンク数を特定するステップと、
前記入力層の各スイッチのうちのいずれかと、前記出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定されるスイッチペアについて、閉塞を判定するステップを備え、前記判定するステップは、前記スイッチペアで特定される前記入力層のスイッチに空きターミナルがあり、前記スイッチペアで特定される前記出力層のスイッチに空きターミナルがある、各ネットワーク状況のいずれかにおいて、前記中間層の各スイッチについて、前記スイッチペアで特定される前記入力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致し、または、前記スイッチペアで特定される前記出力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致する場合、前記スイッチペアについて、閉塞と判定する一方、それ以外の場合、非閉塞と判定する。
【0011】
本発明の一態様は、上記処理装置として、コンピュータを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一般的な3層交換網における閉塞を判定可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る処理装置の機能ブロックを説明する図である。
【
図2】
図2は、一般構造を有する回線交換網の一例を説明する図である。
【
図3】
図3は、判定部の処理を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、一般構造判定部による判定ロジックを説明する図である。
【
図5】
図5は、一般構造判定処理を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、nU構造を有する回線交換網の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は、VU構造を有する回線交換網の一例を説明する図である。
【
図8】
図8は、VU構造判定処理を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、網コストの削減例を示す対象となる回線交換網を説明する図である。
【
図10】
図10は、S-SWサイズを変化させたときの中間層のスイッチの合計コストのグラフである(ポート単価が1.5の場合)。
【
図11】
図11は、S-SWサイズを変化させたときの中間層のスイッチの合計コストのグラフである(ポート単価が2.0の場合)。
【
図12】
図12は、処理装置に用いられるコンピュータのハードウエア構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0015】
本発明の実施の形態は、
図2等のネットワーク構成図において、スイッチを矩形で示す。左列の矩形は入力層のスイッチである。中央列の矩形は中間層のスイッチである。右列の矩形は出力層のスイッチである。スイッチを結ぶ矢印は、有向リンクを示す。破線矢印は、まだコネクションが確立されていないアイドルリンクを示し、実線矢印は、コネクションが確立された接続済リンクを示す。ターミナルは、入力層のスイッチの左側、または出力層のスイッチの右側に付された円で示す。空きターミナルは白円で、コネクション済のターミナルは黒円で示す。
【0016】
(処理装置)
図1に示す、本発明の実施の形態に係る処理装置1は、3層交換網における閉塞を判定する。3層交換網は、入力層(1st stage)、中間層(2nd stage)および出力層(3rd stage)の3層からなる交換網である。非閉塞(nonblocking)とは、入力層から出力層まで、1つ以上のidleの経路がある状態である。
【0017】
処理装置1は、一般的(general)な構造を持つ3層交換網の閉塞性を判定する。本発明の実施の形態において、「一般的(general)」なネットワーク構造は、対称(symmetric)または一様(uniform)の条件が付されておらず、非対称(asymmetric)または非一様(non-uniform)な状態を含むネットワーク構造を意味する。「対称」なネットワーク構造は、中間層を中心に左右対称となるようにスイッチが配置される。所定の層のスイッチサイズが「一様」なネットワーク構造は、その所定の層の各スイッチのポート数が均一である。また処理装置1は、一般的な構造を持つ3層交換網のほか、nU構造を持つ3層交換網と、Vu構造を持つ3層交換網のそれぞれについても、効率的に閉塞性を判定する。
【0018】
図2を参照して、処理装置1による閉塞性の判定対称となる回線交換網2を説明する。回線交換網2は、入力層、中間層および出力層からなる。回線交換網2は、有効リンクによって接続されたスイッチの集合として定義される。
【0019】
スイッチの集合は、入力層、中間層および出力層に区分される。入力層のスイッチの集合をR1と称し、入力層のスイッチ数を、r1=|R1|と称する。中間層のスイッチの集合をMと称し、中間層のスイッチ数を、m=|M|と称する。出力層のスイッチの集合をR3と称し、出力層のスイッチ数を、r3=|R3|と称する。
【0020】
入力層のスイッチと中間層のスイッチ間のリンク数は、(r1m)-matrix V1で示される。V1の各要素v1,ik∈Z≧0は、入力層のスイッチi∈R1と中間層のスイッチk∈Mのリンク数となる。同様に、出力層のスイッチと中間層のスイッチ間のリンク数は、(r3m)-matrix V3で示される。
【0021】
入力層と出力層の各スイッチは、ネットワーク外部と接続するための1以上のターミナルを持つ。入力層のスイッチのターミナル数は、r1-dimension vector n1で示される。同様に、出力層のスイッチのターミナル数は、r3-dimension vector n3で示される。
【0022】
回線交換網2のネットワーク構造は、tuple<n1, n3, V1, V3>で、特定される。
【0023】
ネットワーク状態は、そのネットワークに確立されたコネクションによって決まる。コネクション要求は、入力層のスイッチのアイドルターミナルと、出力スイッチのアイドルターミナルに対して行われる。これらのターミナル間にアイドルリンクのみからなるパスが見つかれば、そのコネクション要求に対してコネクションを確立できる。本発明の実施の形態において、single-rateコネクションとsingle-channelリンクを仮定するため、各リンクは、1つのコネクションによって占有される。確立されたコネクションは、切断要求があると終了し、占有されたリンクが開放される。
【0024】
コネクションを指定する際、閉塞性の観点では、どの空きターミナルを接続しても良い。従って本発明の実施の形態において、コネクションを特定する際、個別のターミナルではなく、入力層におけるスイッチと、出力層におけるスイッチが指定される。
【0025】
入力層のスイッチi∈R
1の1つのターミナルから、中間層のスイッチk∈Mを経由して、出力層のスイッチj∈R
3の1つのターミナルをつなぐ確立済みの接続数を、x
ikj∈Z≧0とする。3層交換網ネットワークの状態は、この3次元テンソルX={x
ikj} for (i,j,k)∈R
1×R
3×Mによって特定される。
図2に示す例において、x
221=2であり、そのほかはx
ikj=0である。
【0026】
本発明の実施の形態において、式1に示す表記を用いる。
【数1】
【0027】
図1に示すように処理装置1は、ネットワーク構造データ11と、特定部21および判定部22の各機能を備える。データは、メモリ902またはストレージ903等の記憶装置に記憶される。各機能は、CPU901に実装される。
【0028】
特定部21は、閉塞性の判定対象となる回線交換網2を特定する。特定部21は、回線交換網において、入力層の各スイッチのターミナル数、出力層の各スイッチのターミナル数、入力層の各スイッチと中間層の各スイッチ間のリンク数、および出力層の各スイッチと中間層の各スイッチ間のリンク数を特定する。
【0029】
例えば入力層の各スイッチのターミナル数は、
図2のn
1に示すように、各スイッチのターミナル数を要素に持つベクトルで表現される。出力層の各スイッチのターミナル数は、
図2のn
3に示すように、各スイッチのターミナル数を要素に持つベクトルで表現される。入力層の各スイッチと中間層の各スイッチ間のリンク数は、
図2のV
1に示すように、各スイッチ間のリンク数を要素に持つベクトルで表現される。V
1において、行方向は、入力層の各スイッチに対応し、列方向は、中間層の各スイッチに対応する。出力層の各スイッチと中間層の各スイッチ間のリンク数は、
図2のV
3に示すように、各スイッチ間のリンク数を要素に持つベクトルで表現される。V
3において、行方向は、出力層の各スイッチに対応し、列方向は、中間層の各スイッチに対応する。
【0030】
特定部21は、各情報を含むネットワーク構造データ11を出力する。
【0031】
判定部22は、ネットワーク構造データ11を参照して、入力層の各スイッチのうちのいずれかと、出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定されるスイッチペアについて、閉塞を判定する。判定部22は、入力層の各スイッチのうちのいずれかと、出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定される各スイッチペアのいずれかについて閉塞と判定する場合、回線交換網について閉塞と判定する。一方判定部22は、各スイッチペアについて非閉塞と判定する場合、回線交換網について非閉塞と判定する。
【0032】
判定部22は、回線交換網の構造毎に、閉塞を判定する判定部を備える。判定部22は、一般構造判定部23、nU構造判定部24およびVU構造判定部25を備える。一般構造判定部23は、一般構造の回線交換網における閉塞を判定する。nU構造判定部24は、nU構造の回線交換網における閉塞を判定する。VU構造判定部25は、Vu構造の回線交換網における閉塞を判定する。各処理部の判定方法は、後に詳述する。
【0033】
(処理方法)
図3を参照して、本発明の実施の形態に係る処理装置1による処理方法を説明する。
図3等のフローチャートに示す順序は一例であってこれに限るものではない。
【0034】
ステップS1において処理装置1は、閉塞性の判定対象となる回線交換網を特定する。
【0035】
ステップS2において処理装置1は、ステップS1で特定された判定対象の構造種別毎に、処理を振り分ける。一般構造の場合、ステップS3において、一般構造判定部23による一般構造判定処理が行われる。nU構造の場合、ステップS4において、nU構造判定部24によるnU構造判定処理が行われる。Vu構造の場合、ステップS3において、VU構造判定部25によるVu構造判定処理が行われる。
【0036】
各処理部による閉塞性が判定されると、処理装置1は、処理を終了する。
【0037】
(一般構造判定部)
一般構造判定部23による処理を説明する。一般構造判定部23は、回線交換網2における対称性、または各スイッチにおけるポート数の一様性の制限がない、一般的な回線交換網における閉塞を判定する。
【0038】
一般構造判定部23は、入力層のスイッチpと出力層のスイッチqで構成されるスイッチペア(p, q)ごとに、閉塞性を判定する。
【0039】
一般構造判定部23は、処理対象の回線交換網2において、スイッチペアで特定される入力層のスイッチpに空きターミナルがあり、スイッチペアで特定される出力層のスイッチqに空きターミナルがある、各ネットワーク状況を特定する。
【0040】
特定される各ネットワーク状況は、以下の(i)から(vi)の条件を満たす。なお、下記の(i)ないし(iv)の条件は、ターミナル間を、スイッチを経由してコネクションが確立されるネットワークにおいて、当然に満たす条件である。下記の(v)および(vi)は、スイッチペアで特定される各スイッチに、空きターミナルがあることを意味する。
(i) 入力層の各スイッチについて、スイッチを通る接続数が、スイッチのターミナル数以下である。
(ii) 出力層の各スイッチについて、スイッチを通る接続数が、スイッチのターミナル数以下である。
(iii) 入力層の各スイッチと中間層の各スイッチの組み合わせについて、各組み合わせのスイッチ間の接続数が、そのスイッチ間のリンク数以下である。
(iv) 出力層の各スイッチと中間層の各スイッチの組み合わせについて、各組み合わせのスイッチ間の接続数が、そのスイッチ間のリンク数以下である。
(v) 処理対象のスイッチペアで特定される入力層のスイッチを通る接続数が、入力層のスイッチのターミナル数-1以下である。
(vi) 処理対象のスイッチペアで特定される出力層のスイッチを通る接続数が、出力層のスイッチのターミナル数-1以下である。
【0041】
一般構造判定部23は、(i)から(vi)の条件を満たす各ネットワーク状況のいずれかにおいて、以下の(vii)を満たす場合、処理対象のスイッチペアについて、閉塞と判定する一方、それ以外の場合、非閉塞と判定する。
(vii) 中間層の各スイッチについて、処理対象のスイッチペアで特定される入力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致し、または、スイッチペアで特定される出力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致する。
【0042】
一般構造判定部23は、上記(i)から(vi)の条件を満たす各ネットワーク状況のそれぞれにおいて、下記(viii)の条件を満たす場合、処理対象のスイッチペアについて非閉塞と判定する。
(viii) 中間層のいずれかのスイッチについて、処理対象のスイッチペアで特定される入力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致せず、かつ、処理対象のスイッチペアで特定される出力層のスイッチとの接続数とリンク数が一致しない。
【0043】
図4を参照して、一般構造判定部23による判定ロジックを説明する。入力層のスイッチpと出力層のスイッチpは、処理対象のスイッチペアを構成する。
図4に示すネットワークは、上記(i)ないし(iv)の条件を満たす。
【0044】
スイッチpは、空きターミナルを有するので、上記(v)の条件を満たす。同様にスイッチqは空きターミナルを有するので、上記(vi)の条件を満たす。
【0045】
図4において、入力層のスイッチpと中間層のスイッチkの間に空きリンクがなく、スイッチpとスイッチk+1の間に空きリンクがある。出力層のスイッチqと中間層のスイッチkの間に空きリンクがあり、スイッチqとスイッチk+1の間に空きリンクがない。換言すると、中間層のスイッチkについて、スイッチqとの間に空きリンクがある一方、スイッチpとの間で空きリンクがない。中間層のスイッチk+1について、スイッチpとの間に空きリンクがある一方、スイッチqとの間で空きリンクがない。従って、
図4の例は、(vii)の条件を満たすので、一般構造判定部23は、処理対象のスイッチペア(p,q)について閉塞と判定する。(vii)の条件は、
図4に示すように、処理対象のスイッチペア(p,q)間でコネクションを確立できる中間層のスイッチがないことを意味する。
【0046】
一方、中間層のスイッチのいずれかが、処理対象のスイッチペアの入力層のスイッチとの間に空きリンクがあり、かつ、処理対象のスイッチペアの出力層のスイッチとの間に空きリンクがある場合、条件(viii)を満たすので、一般構造判定部23は、処理対象のスイッチペアについて非閉塞と判定する。
【0047】
一般構造判定部23は、閉塞性の判定において整数線形計画ILP(as integer linear programming)(1)で評価しても良い。
【0048】
一般構造判定部23は、処理対象のスイッチペアについて、式2の連立不等式において、X={xijk}とy={yk}の実行可能解を持つ場合、閉塞と判定しても良い。X={xijk}は、入力層のスイッチi、中間層のスイッチkおよび出力層のスイッチj を通るコネクション数であって、Xが1以上の場合に、式2の連立不等式を満たし、スイッチi、kおよびjを通るコネクションがないことを意味する。式2に示す連立不等式は、CPLEX(登録商標)などの一般的なソルバーで解くことができる。
【0049】
【0050】
条件(1a)-(1d)は、ネットワークフローとしての制約条件である。条件(1e)-(1h)は、閉塞性の条件である。ネットワークフローとしての制約条件とは、コネクションがターミナル数またはリンク数を超えないという容量制約である。閉塞性の条件である(1e)および(1f)は、SWペア(p, q)に空きターミナルがあることを表し、(1g)および(1h)は、スイッチペア(p, q)間にパスが存在しないことを表す。
【0051】
式2の(1a)ないし(1f)は、上述の条件(i)ないし(vi)にそれぞれ対応する。(1g)および(1h)は、上述の条件(vii)に対応し、スイッチp-k間あるいはq-k間のリンクがすべて使われている結果、p-k-qというコネクションを追加できないことを表している。
【0052】
仮にyk=1で(1g)がx1,pk≧v1,pkの場合、コネクション数がリンク数以上になるため、p-k間にコネクションを追加できないことを意味する。なお、コネクション数はリンク数より大きくなりえないのに(1g)の符号が”=”ではなく”≧”であるのは、ILPで評価するためである。同様に、yk=0とすると(1h)よりq-k間にコネクションを追加できないことを意味する。kは、0または1なので、k=ときは(1g)が有効になり、0のときは(1h)が有効になる。中間層のスイッチkについて、x1,pk≧v1,pkの場合、(1g)および(1h)の少なくともどちらかが成り立つことになり、p-k-qというコネクションを追加できないことを意味する。
【0053】
本発明の実施の形態において、スイッチペア(p, q)についてのチョーキング状態Hpq(X)は、式3で定義される。また式3の右辺は、式4に変換される。式4から、式2の(1g)および(1h)が導かれる。
【0054】
【0055】
【0056】
各スイッチペアについて、閉塞または非閉塞が判定されると、一般構造判定部23は、処理対象の回線交換網2について、閉塞または非閉塞を判定する。一般構造判定部23は、入力層の各スイッチのうちのいずれかと、出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定される各スイッチペアのいずれかについて閉塞と判定する場合、処理対象の回線交換網について閉塞と判定する。一方一般構造判定部23は、各スイッチペアについて非閉塞と判定する場合、処理対象の回線交換網について非閉塞と判定する。
【0057】
図5を参照して、一般構造判定部23による一般構造判定処理を説明する。
【0058】
入力層の各スイッチpおよび出力層の各スイッチqを組み合わせて形成される各スイッチペアについて、ステップS101において、式2の実効可能解を探索する。ステップS102において一般構造判定部23は、実効可能解の有無を判定する。実効可能解がある場合、一般構造判定部23は、ステップS103において、処理対象のスイッチペアpqについて閉塞と判定する。
【0059】
各スイッチペアについて、ステップS101ないしステップS103の処理が終了すると、ステップS104に進む。ステップS104において一般構造判定部23は、各スイッチペアのうち、閉塞と判定されたスイッチペアがあったか否かを判定する。閉塞と判定されたスイッチペアがある場合、ステップS105において一般構造判定部23は、処理対象の回線交換網について閉塞と判定して処理を終了する。閉塞と判定されたスイッチペアがない場合、ステップS106において一般構造判定部23は、処理対象の回線交換網について非閉塞と判定して処理を終了する。
【0060】
一般構造判定部23は、網の対称性または一様性を問わない一般的な回線交換網について、閉塞または非閉塞を判定することができる。一般構造判定部23は、式2の連立不等式で表現することにより、一般的な回線交換網の閉塞性を整数線形計画により解くことができる。
【0061】
(nU構造判定部)
nU構造判定部24による処理を説明する。nU構造は、
図6の回線交換網2aに示すように、入力層の各スイッチのターミナル数と、出力層の各スイッチのターミナル数nが一様(uniform)である。ここで、入力層および出力層は、2以上のスイッチを有する。
【0062】
nU構造判定部24は、処理対象のネットワーク構造がnU構造の場合、スイッチペアについて、ナップサック問題用の動的計画法で、実効可能解を持つか否かを判定する。nU構造についてナップサック問題用の動的計画法を用いることにより、ILP(1)を用いるより効率的に閉塞性を評価することができる。
【0063】
nU構造判定部24は、入力層のスイッチpと出力層のスイッチqで特定されるスイッチペア毎に、式5により閉塞性を判定する。式5は、0-1ナップサック問題であり、(2)が実効可能解を持つか否か、具体的には(2)を満たすY⊆Mが存在するか否かを調べる。ナップサック問題用の動的計画法は、周知である(例えば、https://en.wikipedia.org/wiki/Knapsack_problem参照、2022年3月25日検索)。
【数5】
【0064】
各スイッチペアについて、閉塞または非閉塞が判定されると、nU構造判定部24は、処理対象の回線交換網2aについて、閉塞または非閉塞を判定する。nU構造判定部24は、入力層の各スイッチのうちのいずれかと、出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定される各スイッチペアのいずれかについて閉塞と判定する場合、処理対象の回線交換網2aについて閉塞と判定する。一方nU構造判定部24は、各スイッチペアについて非閉塞と判定する場合、処理対象の回線交換網2aについて非閉塞と判定する。
【0065】
nU構造判定部24によるnU構造判定処理は、
図5に示す一般構造判定処理のフローチャートと同様である。但し、ステップS101の実効可能解の探索においては、式5を用いる点で異なる。
【0066】
nU構造の回線交換網2aについて、一般構造判定部23によって解を求めることも可能であるが、nU構造判定部24によってより効率的に解を求めることができる。
【0067】
(VU構造判定部)
VU構造判定部25による処理を説明する。VU構造は、
図7の回線交換網2bに示すように、中間層の各スイッチの入力層側のリンク数が一様で、かつ出力層側のリンク数が一様である。
図7の例では、中間層の各スイッチのそれぞれについて、入力層側のリンク数が2で、出力層側のリンク数は4である。
【0068】
なお
図7において、ターミナルの黒円は、実線のリンクに使われるターミナルであることを示す。斜線のハッチが施された円は、破線のリンクに使われるターミナルであることを示す。
【0069】
VU構造では、式7のように定義される。
【0070】
【0071】
VU構造において、V1とV3の各要素は、全てのk∈Mについて等しいので、単に、v1,i,v3,jのように記載される。また、v1,iおよびv3,jを要素とするベクトルを、それぞれ、v1={v1,i}およびv3={v3,j}と記載する。
【0072】
VU構造判定部25は、処理対象のスイッチペアについて、式7の連立不等式において、m1, m3, spおよびsqの4つの決定変数について実行可能解を持つ場合、スイッチペアについて閉塞と判定する。
【0073】
【0074】
VU構造について、式7を用いることにより、ILP(1)を用いるより効率的に閉塞性を評価することができる。
【0075】
各スイッチペアおよび中間層の各スイッチの組み合わせについて、閉塞または非閉塞が判定されると、VU構造判定部25は、処理対象の回線交換網2bについて、閉塞または非閉塞を判定する。VU構造判定部25は、入力層の各スイッチのうちのいずれかと、出力層の各スイッチのうちのいずれかの組み合わせで特定される各スイッチペアおよび中間層の各スイッチの組み合わせのいずれかについて閉塞と判定する場合、処理対象の回線交換網2bについて閉塞と判定する。一方VU構造判定部25は、各スイッチペア及び中間層の各スイッチの組み合わせについて非閉塞と判定する場合、処理対象の回線交換網2bについて非閉塞と判定する。
【0076】
図8を参照して、VU構造判定部25によるVU構造判定処理を説明する。
【0077】
入力層の各スイッチpおよび出力層の各スイッチqを組み合わせて形成される各スイッチペアと、中間層の各スイッチm1について、ステップS201において、式2の実効可能解を探索する。ステップS202においてVU構造判定部25は、実効可能解の有無を判定する。実効可能解がある場合、VU構造判定部25は、ステップS203において、処理対象のスイッチペアpaおよびm1について閉塞と判定する。
【0078】
各スイッチペアおよび各m1について、ステップS201ないしステップS203の処理が終了すると、ステップS204に進む。ステップS204においてVU構造判定部25は、各スイッチペアおよび各m1のうち、閉塞と判定されたスイッチペアおよびm1があったか否かを判定する。閉塞と判定されたスイッチペアおよびm1がある場合、ステップS205においてVU構造判定部25は、処理対象の回線交換網について閉塞と判定して処理を終了する。閉塞と判定されたスイッチペアおよびm1がない場合、ステップS206においてVU構造判定部25は、処理対象の回線交換網について非閉塞と判定して処理を終了する。
【0079】
VU構造判定部25は、入力層のスイッチpと出力層のスイッチqのほか、中間層のスイッチm1についてもループを回す。中間層のスイッチm1を決めれば、他の決定変数m3, spおよびsqは、容易に決められる。決定変数m3は、式7の(4a)により決定される。決定変数spは、(4b)、(4d)および(4f)のみに現れ、決定変数sqは、(4c)、(4e)および(4g)のみに現れる。決定変数spおよびsqは、式7の個別の式にのみ現れるので、それぞれ独立した存在範囲における有無を調べれば良い。
【0080】
VU構造の回線交換網2aについて、一般構造判定部23によって解を求めることも可能であるが、VU構造判定部25によってより効率的に解を求めることができる。
【0081】
(適用例)
本発明の実施の形態によって、中間層が一様でない場合でも、閉塞性を判断できる。非一様な中間層を許容することで、より最適な(低コストな)、非閉塞な回線交換網を設計できる可能性がある。
【0082】
例えば、市販スイッチを用いてネットワークを設計する状況を考える。利用可能なスイッチサイズは製品ラインによって限られ、特定のスイッチだけではポート数が合わない場合がある。また、在庫状況によっては所望サイズを有する必要数のスイッチを入手できず、異なるサイズのスイッチを組み合わせる場合もある。このような状況において、最適な中間層は、必然的に複数サイズからなる非一様なスイッチを備えることになる。
【0083】
また、構築時は一様なネットワークであっても、リンクまたはターミナルに故障が発生すると、その構造は非一様になりうる。従来、一般的な構造において閉塞性を判定する方法がなかったので、ネットワークの一部が故障して構造が歪んだ場合、構造が歪んだ状態における閉塞性を判定することができなかった。
【0084】
本発明の実施の形態に係る処理装置1によれば、任意の構造を有する3層交換網についても、非閉塞性の運用を保証することができる。例えば網の一部が故障して一様性が失われる3層交換網に対しても、処理装置1は、非閉塞性を担保した運用を支援することができる。
【0085】
処理装置1は、一般的な構造を有するネットワークにおいて閉塞性を判断できるので、設計時におけるスイッチの導入に汎用性を持たせ、また運用時における故障に対応することが可能になる。
【0086】
また処理装置1は、一様な構造のみならず任意の構造に対して閉塞性を判定することで、網コストを抑制することができる。例えば、次に示すように、DCI(Data Center Interconnection)を想定した数値評価で、数十%のコスト削減効果を得ることもある。
【0087】
次に、
図9に示す回線交換網を参照して、本発明の実施の形態にかかる処理装置1による網コストの削減例を説明する。ここでは、DCIを想定した網設計問題でのコスト削減効果を示す。
【0088】
図9に示す回線交換網は、入力層と出力層のスイッチのポート数が同じで、対称性を有する。
図9において、r
1=r
3=rかつv
1,ik=v
3,jkとなる。ここでv
1,ik=v
3,jkより、
図9に示すように、V
1とV
3の各行は同一である。以降、V
1とV
3という行列全体ではなく、列成分のみをv∈Z
m
+と表すことにする。
【0089】
中間層に利用可能なスイッチ種を定義する。各スイッチ種は、コスト、ポート数、利用可能な台数で特徴付けられる。スイッチ種の集合をTとする。スイッチ種t∈Tのコストをc
t∈R
+、ポート数をp
t∈Z
+、利用可能台数をs
t∈Z
+とする。なお、p
tは入出力それぞれのポート数であり、スイッチサイズはp
t×p
tとなる。コスト、ポート数および利用可能台数の集合をそれぞれc={c
t}、p={p
t}およびs={s
t}とする。
図9はp
red=4である赤スイッチと、p
blue=2である青スイッチの2種類で網を構成している。
図9において赤スイッチを一重線の矩形で示し、青スイッチを二重線の矩形で示す。
図9において青スイッチは、中間層のm=2,3のスイッチである。なお、網を構成する中間数のスイッチ数を、種類ごとに(m
red, m
blue)=(1,2)のように表す。
【0090】
図9に示す交換回線網について、MCP(Minimum Cost Problem)を定義する。MCPの入力は、処理対象の交換回線網の特定データと、中間層に用いられるスイッチ種である。交換回線網の特定データは、nとrである。中間層に用いられるスイッチ種は、T, c, p,およびsである。MCPの出力は、処理対象の回線交換網において、中間層に用いられるスイッチ種のみを用いて非閉塞の状態において、コストを最小化する中間層vである。
【0091】
入力層および出力層は対称かつ一様な回線交換網において、指定されたスイッチ種のみを利用して、中間層スイッチの合計コストを最小にするvを決める。合計コストvが決まれば、中間層のスイッチ種ごとの台数も決まる。
【0092】
数値評価に用いる問題例を述べる。まず、入力層および出力層を説明する。DCIに関する近年の研究に倣って、ネットワークサイズを次のように設定する。同一地域内にある20個のデータセンタから、それぞれ入出力ごとに32本の光ファイバが出ていると仮定する。データセンタ数は、周知技術(V. Dukic, G. Khana, C. Gkantsidis, T. Karagianis, F. Parmigiani, A. Singla, M. Filer, J. Cox, A. Ptasznik, N. Harland, W. Saunders, and C. Belady, “Beyond the mega-data center: Networking multi-data center regions, ”in SIGCOMM, 2020, pp.765-781.)に倣う。光ファイバ数は、周知技術(M. Filer, J. Gaudete, Y. Yin, D. Billor, Z. Bakhtiari, and J. L. Cox, “Low-margin optical networking at cloud scale,” J. Opt. Commun. Netw., vol.11, no.10,pp.C94-C108, 2019.)に倣う。入力層および出力層の合計ターミナル数を、20×32=640とする。これらのターミナルを、入力層および出力層にある10台(r=10)の64×64スイッチ(n=64)で収容する。
【0093】
現在の製品ラインを参考に、中間層では大小二種類のスイッチ(T= {L,S})を利用できると想定する。現在の製品ラインは、周知技術(M. Stepanovsky,“A comparative review of MEMS-based optical cross-connects for all-optical networks from the past to the present day, ”IEEE Communications Surveys Tutorials, vol.21, no.3, pp.2928-2946,2019.)に倣う。
【0094】
L-SW: スイッチサイズは、512×512(pL=512)である。1台あたりのコストをcL=512とする。利用可能台数をsL=2とする。なお、2台のL-SWだけでは640×640の非閉塞な交換回線網を構成できないため、小さいS-SWを必ず使わなければならない。
【0095】
S-SW: スイッチサイズpSを64ポート以上pL未満の変数pS×pSとし、その影響を数値的に評価する。1台あたりのコストは、ポート単価c0∈{1.5, 2.0}を用いて、ポート数とポート単価の積cS=pSc0で定義する。一般にスイッチにはポート数と無関係の管理部があるため、L-SWよりポート単価が割高になるように(c0>1となるように)設定する。利用台数に制限はない(sS=∞)。
【0096】
以下、本発明の実施の形態に係る提案手法(Our method)と既存手法(Regular method)を比較する。提案手法は、L-SWとS-SW両方を用いて非閉塞網を設計する。L-SWとS-SWのすべての組合せを列挙し、非閉塞な組合せのうちコスト最小のものを選ぶことでMCPを解く。なお最適解の探索方法は提案手法の主眼ではないため、シンプルな方法で解いている。既存手法は、一様な網しか扱えないため、S-SWのみで非閉塞網を設計する。非閉塞となる最小のS-SW台数を探索することでMCPを解く。
【0097】
図10-11を参照して、S-SWサイズを変化させた際の中間層のスイッチの合計コストを示す。
図10は、S-SWのポート単価c
0=1.5である。
図11は、S-SWのポート単価c
0=2.0である。図中の各点が、MCPの解に対応する。図中の線分は、中間層の最適構成(m
L*, m
s*)となる点からなる。図中の線分上では、L-SWとS-SWの数は変化しない。
【0098】
図10-11に示すように、本発明の実施の形態に係る提案手法で設計した中間層のコストは、既存方法と比べて、全体的に低くなっていることがわかる。c
0=1.5の場合、最大で41%減となり、c
0=2.0の場合、最大で53%減となる。削減率が最大となるのはいずれも、p
s=159の場合で、そのときの中間層のスイッチ構成は、(m
L*, m
s*)=(2,1)である。
【0099】
従来、非特許文献1が非閉塞条件をm≧2n-1と示したように、一つの条件式で非閉塞条件を表していた。しかしながら、網構造を一般化しようとすると式が煩雑化することになり、一般的なネットワーク構造において閉塞条件を明確化することは困難であった。
【0100】
これに対し本発明の実施の形態によれば、一般構造判定部23において、ネットワークフローと閉塞性に分離することで表現力を高めることにより、一般構成における閉塞条件を明確にすることができる。具体的には、式2において、ネットワークフローとしての制約条件(1a)-(1d)と、閉塞性の条件(1e)-(1h)に分離して、定式化した。さらに、nU構造判定部24およびVU構造判定部25によって、所定条件を満たすネットワーク構造において、効率的な閉塞条件を提示した。
【0101】
このように、本発明の実施の形態に係る処理装置1は、一般的な3層交換網における閉塞を判定することができる。また、処理装置1は、非閉塞性を担保して、コストを削減可能なネットワーク構成の設計を支援することができる。
【0102】
上記説明した本実施形態の処理装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムが用いられる。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされたプログラムを実行することにより、処理装置1の各機能が実現される。
【0103】
なお、処理装置1は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また処理装置1は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0104】
処理装置1のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0105】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 処理装置
11 ネットワーク構造データ
21 特定部
22 判定部
23 一般構造判定部
24 nU構造判定部
25 VU構造判定部
901 CPU
902 メモリ
903 ストレージ
904 通信装置
905 入力装置
906 出力装置