(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166884
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】呈味改善剤、油脂組成物、及び飲食品
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20231115BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20231115BHJP
A23L 27/26 20160101ALI20231115BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20231115BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20231115BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20231115BHJP
A23L 13/40 20230101ALI20231115BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/20 G
A23L27/20 F
A23L27/26
A23D9/00 504
A23L23/00
A23J3/16
A23L13/40
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077729
(22)【出願日】2022-05-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】富田 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】魚住 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶
【テーマコード(参考)】
4B026
4B036
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG02
4B026DG03
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4B026DL02
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4B036LC01
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4B036LK01
4B042AD20
4B042AK01
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4B042AP14
4B047LB08
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4B047LG06
4B047LG11
4B047LG13
4B047LG14
4B047LG20
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、スルフロール由来の雑味を抑制しつつも、良好な畜肉感を付与できる、スルフロール含有呈味改善剤を提供することである。
【解決手段】本発明は、呈味改善剤であって、前記呈味改善剤がスルフロール、及びヒドロキシメチルフルフラールを含み、前記スルフロールの質量に対する前記ヒドロキシメチルフルフラールの質量の比率が、0.03以上12.00以下である、呈味改善剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呈味改善剤であって、
前記呈味改善剤がスルフロール、及びヒドロキシメチルフルフラールを含み、
前記スルフロールの質量に対する前記ヒドロキシメチルフルフラールの質量の比率が、0.03以上12.00以下である、
呈味改善剤。
【請求項2】
前記呈味改善剤が、フェニルエタナールをさらに含む請求項1に記載の呈味改善剤。
【請求項3】
前記呈味改善剤が、フルフリルアルコールをさらに含む請求項1に記載の呈味改善剤。
【請求項4】
前記呈味改善剤が、イソアミルアルコールをさらに含む請求項1に記載の呈味改善剤。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の呈味改善剤を含む、飲食品。
【請求項6】
請求項1から4の何れかに記載の呈味改善剤を含む、油脂組成物。
【請求項7】
請求項6の油脂組成物を含む、飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈味改善剤、油脂組成物、及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシタリアン、ベジタリアン、ビーガン等の多様なライフスタイルに対応した、植物由来の材料を原料とする代替肉や、各種調味料の市場が成長を続けている。
【0003】
例えば、油脂分野においては、各種飲食品の嗜好性を高めるための調味料として、風味油等の各種調味料が知られる。風味油とは香味油とも呼ばれ、油脂に所望の風味(ネギ、ガーリック等)を付与したものである。また、近年では、畜肉感等を付与した風味油も知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ミート系フレーバーが付与された加熱調理油が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、対象(飲食品等)にスルフロールを配合することで畜肉感を奏することを見出した。
【0007】
しかし、本発明者らは、スルフロールの配合によって畜肉感を対象に付与できるものの、雑味も生じ得るという問題を見出した。
【0008】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、スルフロール由来の雑味を抑制しつつも、良好な畜肉感を付与できる、スルフロール含有呈味改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、所定の比率を満たすように、スルフロールとともにヒドロキシメチルフルフラールを配合することで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0010】
(1) 呈味改善剤であって、
前記呈味改善剤がスルフロール、及びヒドロキシメチルフルフラールを含み、
前記スルフロールの質量に対する前記ヒドロキシメチルフルフラールの質量の比率が、0.03以上12.00以下である、
呈味改善剤。
【0011】
(2) 前記呈味改善剤が、フェニルエタナールをさらに含む(1)に記載の呈味改善剤。
【0012】
(3) 前記呈味改善剤が、フルフリルアルコールをさらに含む(1)に記載の呈味改善剤。
【0013】
(4) 前記呈味改善剤が、イソアミルアルコールをさらに含む(1)に記載の呈味改善剤。
【0014】
(5) (1)から(4)の何れかに記載の呈味改善剤を含む、飲食品。
【0015】
(6) (1)から(4)の何れかに記載の呈味改善剤を含む、油脂組成物。
【0016】
(7) (6)の油脂組成物を含む、飲食品。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スルフロール由来の雑味を抑制しつつも、良好な畜肉感を付与できる、スルフロール含有呈味改善剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0019】
<呈味改善剤>
本発明の呈味改善剤は、スルフロール、及びヒドロキシメチルフルフラールを含み、かつ、スルフロールの質量に対するヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の質量の比率が、0.03以上12.00以下である。
なお、以下、「スルフロールの質量に対するヒドロキシメチルフルフラールの質量の比率」を「HMF/スルフロール」ともいう。
【0020】
本発明者らは、種々の香気成分について検討した結果、対象にスルフロールを配合することで畜肉感を奏することを見出した。しかし、本発明者らは、スルフロールの配合量が高いほど畜肉感が増加するものの、スルフロールに由来する雑味も増加してしまうことも見出した。
【0021】
そこで、本発明者らがさらに検討した結果、スルフロールとともにヒドロキシメチルフルフラールを配合し、かつ、「HMF/スルフロール」を0.03以上12.00以下に調整することで、スルフロールを配合することによる畜肉感を損なわずに、スルフロール由来の雑味を抑制できることを見出した。
このような抑制効果は、ヒドロキシメチルフルフラールによる、雑味のマスキング効果によるものと推察される。
【0022】
本発明において「呈味」とは、本発明の呈味改善剤を添加する対象(飲食品等)が呈する味を包含する。
【0023】
本発明の呈味改善剤は、本発明の呈味改善剤を添加する対象の呈味を改善するためのものであり、例えば、該対象に畜肉感を付与できるものを包含する。
本発明において「呈味の改善」とは、対象の呈味がより良好となることや、対象が本来有しない味が付与されること等を包含する。
【0024】
本発明において「畜肉」とは、食用に供される家畜の肉全般を包含する。具体的には、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、綿羊肉、山羊肉等が挙げられる。各肉の部位としては特に限定されず、筋肉だけではなく、脂身も包含する。
【0025】
本発明において「畜肉感」とは、肉類(特に、加熱された肉)を彷彿させる風味を意味する。
このような風味の有無や程度は、実施例に示した方法で特定される。
【0026】
本発明において「スルフロール由来の雑味」とは、硫黄臭、豆臭さ、金属味を彷彿させる風味を意味する。
このような風味の有無や程度は、実施例に示した方法で特定される。
【0027】
本発明において「スルフロール由来の雑味の抑制」とは、スルフロール由来の雑味が少ないこと、スルフロール由来の雑味が全く生じていないことを包含する。
【0028】
本発明によれば、さらに、畜肉特有の「甘み」をも奏し得る。
本発明において「甘み」とは、畜肉(特に脂身を包含する豚肉を加熱調理したもの)を噛んだときに口の中に広がる肉と脂の双方に由来する甘い風味を意味する。
このような風味の有無や程度は、実施例に示した方法で特定される。
【0029】
本発明によれば、さらに、「エグ味及び収斂味」が抑制され得る。
本発明において「エグ味及び収斂味」とは、薬品を彷彿させたり、舌がしびれる感覚をもたらしたりするような、食品として違和感のある風味を意味する。
このような風味の有無や程度は、実施例に示した方法で特定される。
【0030】
本発明によれば、畜肉(特に、脂身を包含する豚肉を加熱調理したもの)に類似した風味を奏しやすい。
【0031】
以下、本発明の呈味改善剤の詳細について説明する。
なお、以下の説明における「ppm」とは、百万分率を意味し、特段の規定がない限り、質量に対する割合を示す。例えば、「1ppm」は「0.0001質量%」である。
【0032】
(スルフロール)
本発明の呈味改善剤は、スルフロール(化学式:C6H9NOS、CAS番号:137-00-8)を含む。スルフロールは、4-メチル-5-チアゾールエタノール等とも称される。
【0033】
本発明において、スルフロールは、畜肉感の向上に寄与する。
【0034】
本発明におけるスルフロールは、合成品でもよく、スルフロールをその一部に含む飲食品や抽出物等であってもよい。
【0035】
スルフロールの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
スルフロールの含有量の下限値は、充分な畜肉感を奏しやすいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは20ppm以上、より好ましくは40ppm以上、さらに好ましくは80ppm以上である。
スルフロールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは730000ppm以下、より好ましくは90000ppm以下、より好ましくは70000ppm以下、より好ましくは20000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは300ppm以下である。
【0036】
(ヒドロキシメチルフルフラール)
本発明の呈味改善剤は、ヒドロキシメチルフルフラール(化学式:C6H6O3、CAS番号:67-47-0)を含む。ヒドロキシメチルフルフラールは、5-(ヒドロキシメチル)-2-フルアルデヒド等とも称される。
【0037】
本発明において、ヒドロキシメチルフルフラールは、スルフロールによって奏される畜肉感を損なわずに、スルフロール由来の雑味を抑制(マスキング)できる成分である。
【0038】
本発明におけるヒドロキシメチルフルフラールは、合成品でもよく、ヒドロキシメチルフルフラールをその一部に含む飲食品や抽出物等であってもよい。
【0039】
ヒドロキシメチルフルフラールの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の下限値は、充分な雑味抑制効果を奏しやすいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、さらに好ましくは20ppm以上、最も好ましくは40ppm以上である。
ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは190000ppm以下、より好ましくは35000ppm以下、より好ましくは17000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、より好ましくは300ppm以下、より好ましくは150ppm以下、最も好ましくは80ppm以下である。
【0040】
(その他の成分)
本発明の呈味改善剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分が含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
その他の成分の好ましい例として、スルフロールによる畜肉感を増強しつつ、畜肉特有の甘みをも高められる観点から、フェニルエタナール、フルフリルアルコール、及びイソアミルアルコールから選択される1以上の成分が挙げられる。
【0041】
本発明の好ましい態様は、スルフロール、及びヒドロキシメチルフルフラール、並びに、フェニルエタナール、フルフリルアルコール、及びイソアミルアルコールから選択される1以上の成分のみからなる呈味改善剤を包含する。
【0042】
[フェニルエタナール]
本発明の呈味改善剤は、フェニルエタナール(化学式:C8H8O、CAS番号:122-78-1)を含んでいてもよい。フェニルエタナールは、フェニルアセトアルデヒド等とも称される。
【0043】
本発明におけるフェニルエタナールは、合成品でもよく、フェニルエタナールをその一部に含む飲食品や抽出物等であってもよい。
【0044】
フェニルエタナールの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
フェニルエタナールの含有量の下限値は、雑味のマスキング及び畜肉感及び脂の甘みの増強効果を奏しやすいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは0.08ppm以上、より好ましくは0.18ppm以上、さらに好ましくは0.35ppm以上である。
フェニルエタナールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは7500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下、特に好ましくは200ppm以下である。
【0045】
[フルフリルアルコール]
本発明の呈味改善剤は、フルフリルアルコール(化学式:C5H6O2、CAS番号:98-00-0)を含んでいてもよい。フルフリルアルコールは、2-フリルメタノール、又は2-フランメタノール等とも称される。
【0046】
本発明におけるフルフリルアルコールは、合成品でもよく、フルフリルアルコールをその一部に含む飲食品や抽出物等であってもよい。
【0047】
フルフリルアルコールの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
フルフリルアルコールの含有量の下限値は、雑味のマスキング及び畜肉感及び脂の甘みの増強効果を奏しやすいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは0.03ppm以上、より好ましくは0.08ppm以上、さらに好ましくは0.18ppm以上である。
フルフリルアルコールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは350ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。
【0048】
[イソアミルアルコール]
本発明の呈味改善剤は、イソアミルアルコール(化学式:C5H12O、CAS番号:123-51-3)を含んでいてもよい。イソアミルアルコールは、イソペンチルアルコール、3-メチル-1-ブタノール等とも称される。
【0049】
本発明におけるイソアミルアルコールは、合成品でもよく、イソアミルアルコールをその一部に含む飲食品や抽出物等であってもよい。
【0050】
イソアミルアルコールの含有量は、得ようとする風味の程度等に応じて調整できる。
イソアミルアルコールの含有量の下限値は、雑味のマスキング及び畜肉感及び脂の甘みの増強効果を奏しやすいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは0.08ppm以上、より好ましくは0.18ppm以上、さらに好ましくは0.35ppm以上である。
イソアミルアルコールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは7500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下、特に好ましくは200ppm以下である。
【0051】
(各成分の比率)
本発明の呈味改善剤は、スルフロール、及びヒドロキシメチルフルフラールを少なくとも含み、かつ、スルフロールの質量に対するヒドロキシメチルフルフラールの質量の比率(HMF/スルフロール)が、0.03以上12.00以下である。
【0052】
本発明の効果がより奏されやすいという観点から、「HMF/スルフロール」の下限値は、0.03以上、好ましくは0.07以上、より好ましくは0.10以上である。
【0053】
本発明の効果がより奏されやすいという観点から、「HMF/スルフロール」の上限値は、12.0以下、好ましくは10.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは1.5以下、最も好ましくは0.7以下である。
【0054】
スルフロールの質量に対するフェニルエタナールの質量の比率(フェニルエタナール/スルフロール)の下限値は、脂の甘みを奏しやすいという観点から、好ましくは0.0004以上、より好ましくは0.0008以上、さらに好ましくは0.0015以上である。
【0055】
スルフロールの質量に対するフェニルエタナールの質量の比率(フェニルエタナール/スルフロール)の上限値は、畜肉感を奏しやすいという観点から、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.1以下である。
【0056】
スルフロールの質量に対するフルフリルアルコールの質量の比率(フルフリルアルコール/スルフロール)の下限値は、雑味のマスキング効果を奏しやすいという観点から、好ましくは0.00015以上、より好ましくは0.0004以上、さらに好ましくは0.0008以上である。
【0057】
スルフロールの質量に対するフルフリルアルコールの質量の比率(フルフリルアルコール/スルフロール)の上限値は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.05以下である。
【0058】
スルフロールの質量に対するイソアミルアルコールの質量の比率(イソアミルアルコール/スルフロール)の下限値は、雑味のマスキング及び畜肉感及び脂の甘みを奏しやすいという観点から、好ましくは0.0004以上、より好ましくは0.0008以上、さらに好ましくは0.0015以上である。
【0059】
スルフロールの質量に対するイソアミルアルコールの質量の比率(イソアミルアルコール/スルフロール)の上限値は、脂の甘みを奏しやすいという観点から、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.1以下である。
【0060】
ヒドロキシメチルフルフラールの質量に対するフェニルエタナールの質量の比率(フェニルエタナール/ヒドロキシメチルフルフラール)の下限値は、脂の甘みを奏しやすいという観点から、好ましくは0.0015以上、より好ましくは0.003以上、さらに好ましくは0.005以上である。
【0061】
ヒドロキシメチルフルフラールの質量に対するフェニルエタナールの質量の比率(フェニルエタナール/ヒドロキシメチルフルフラール)の上限値は、畜肉感を奏しやすいという観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.5以下である。
【0062】
ヒドロキシメチルフルフラールの質量に対するフルフリルアルコールの質量の比率(フルフリルアルコール/ヒドロキシメチルフルフラール)の下限値は、雑味のマスキングを奏しやすいという観点から、好ましくは0.0005以上、より好ましくは0.0015以上、さらに好ましくは0.003以上である。
【0063】
ヒドロキシメチルフルフラールの質量に対するフルフリルアルコールの質量の比率(フルフリルアルコール/ヒドロキシメチルフルフラール)の上限値は、畜肉感を奏しやすいという観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.4以下である。
【0064】
ヒドロキシメチルフルフラールの質量に対するイソアミルアルコールの質量の比率(イソアミルアルコール/ヒドロキシメチルフルフラール)の下限値は、雑味のマスキング及び畜肉感及び脂の甘みを奏しやすいという観点から、好ましくは0.0015以上、より好ましくは0.003以上、さらに好ましくは0.006以上である。
【0065】
ヒドロキシメチルフルフラールの質量に対するイソアミルアルコールの質量の比率(イソアミルアルコール/ヒドロキシメチルフルフラール)の上限値は、脂の甘みを奏しやすいという観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.4以下である。
【0066】
<油脂組成物>
本発明は、本発明の呈味改善剤を含む油脂組成物も包含する。
【0067】
本発明の油脂組成物は、本発明の呈味改善剤とともに、油脂を含む組成物を意味する。
本発明の好ましい態様は、本発明の呈味改善剤、及び油脂のみからなる油脂組成物を包含する。
【0068】
(呈味改善成分)
本発明の油脂組成物に含まれる呈味改善成分(すなわち、スルフロール、及びヒドロキシメチルフルフラール、並びに、フェニルエタナール、フルフリルアルコール、及びイソアミルアルコールから選択される1以上の成分)の配合量等は、「HMF/スルフロール」が、0.03以上12.00以下であれば特に限定されない。
【0069】
本発明の油脂組成物に含まれる呈味改善成分の配合比率は、本発明の呈味改善剤に関する説明のうち、「(各成分の比率)」の項で挙げた条件を満たしていてもよい。
【0070】
スルフロールの含有量の下限値は、充分な畜肉感を奏しやすいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは20ppm以上、より好ましくは40ppm以上、さらに好ましくは80ppm以上である。
スルフロールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは730000ppm以下、より好ましくは90000ppm以下、より好ましくは70000ppm以下、より好ましくは20000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは300ppm以下である。
【0071】
油脂組成物中のスルフロールの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、外部標準法と呼ばれる以下の方法で測定することができる。
まず、スルフロールの濃度が2.0ppm、200ppm、2000ppm、20000ppmである4点の標準試料を、MCT(中鎖脂肪酸)で希釈することにより作製する。これらをガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量112(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。
次いで、測定対象である油脂組成物をガスクロマトグラフィーに供し、標準試料と同様のリテンションタイムにおけるイオン質量112(分子イオン)のピーク面積をカウントする。上記のように得られたカウント数を検量線に当てはめ、油脂組成物中のスルフロールの含量を測定することができる。なお、この検量線の範囲を超過する濃度を含有すると推測される場合は、測定する試料をMCTで希釈してから、測定に供する。
【0072】
ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の下限値は、充分な雑味抑制効果を奏しやすいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、さらに好ましくは20ppm以上、最も好ましくは40ppm以上である。
ヒドロキシメチルフルフラールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは190000ppm以下、より好ましくは35000ppm以下、より好ましくは17000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、より好ましくは300ppm以下、より好ましくは150ppm以下、最も好ましくは80ppm以下である。
【0073】
油脂組成物中のヒドロキシメチルフルフラールの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、外部標準法と呼ばれる以下の方法で測定することができる。
まず、ヒドロキシメチルフルフラールの濃度が1ppm、100ppm、1000ppm、10000ppmである4点の標準試料を作製する。これらをガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量126(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。
次いで、測定対象である油脂組成物をガスクロマトグラフィーに供し、標準試料と同様のリテンションタイムにおけるイオン質量126(分子イオン)のピーク面積をカウントする。
上記のように得られたカウント数を検量線に当てはめ、油脂組成物中のヒドロキシメチルフルフラールの含量を測定することができる。なお、この検量線の範囲を超過する濃度を含有すると推測される場合は、測定する試料をMCTで希釈してから、測定に供する。
【0074】
フェニルエタナールの含有量の下限値は、雑味のマスキング及び畜肉感及び脂の甘みの増強効果を奏しやすいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは0.08ppm以上、より好ましくは0.18ppm以上、さらに好ましくは0.35ppm以上である。
フェニルエタナールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは7500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下、特に好ましくは200ppm以下である。
【0075】
油脂組成物中のフェニルエタナールの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、外部標準法と呼ばれる以下の方法で測定することができる。
まず、フェニルエタナールの濃度が0.01ppm、1ppm、10ppm、100ppmである4点の標準試料を作製する。これらをガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量120(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。
次いで、測定対象である油脂組成物をガスクロマトグラフィーに供し、標準試料と同様のリテンションタイムにおけるイオン質量120(分子イオン)のピーク面積をカウントする。
上記のように得られたカウント数を検量線に当てはめ、油脂組成物中のフェニルエタナールの含量を測定することができる。なお、この検量線の範囲を超過する濃度を含有すると推測される場合は、測定する試料をMCTで希釈してから、測定に供する。
【0076】
フルフリルアルコールの含有量の下限値は、雑味のマスキング及び畜肉感及び脂の甘みの増強効果を奏しやすいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは0.03ppm以上、より好ましくは0.08ppm以上、さらに好ましくは0.18ppm以上である。
フルフリルアルコールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは350ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。
【0077】
油脂組成物中のフルフリルアルコールの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、外部標準法と呼ばれる以下の方法で測定することができる。
まず、フルフリルアルコールの濃度が0.01ppm、1ppm、10ppm、100ppmである4点の標準試料を作製する。これらをガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量98(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。
次いで、測定対象である油脂組成物をガスクロマトグラフィーに供し、標準試料と同様のリテンションタイムにおけるイオン質量(分子イオン)のピーク面積をカウントする。
上記のように得られたカウント数を検量線に当てはめ、油脂組成物中のフルフリルアルコールの含量を測定することができる。なお、この検量線の範囲を超過する濃度を含有すると推測される場合は、測定する試料をMCTで希釈してから、測定に供する。
【0078】
イソアミルアルコールの含有量の下限値は、雑味のマスキング及び畜肉感及び脂の甘みの増強効果を奏しやすいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは0.08ppm以上、より好ましくは0.18ppm以上、さらに好ましくは0.35ppm以上である。
イソアミルアルコールの含有量の上限値は、エグ味及び収斂味を生じにくいという観点から、呈味改善剤に対して、好ましくは7500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下、特に好ましくは200ppm以下である。
【0079】
油脂組成物中のイソアミルアルコールの含有量は、ガスクロマトグラフィーのSPME(固相マイクロ抽出)を用いて、外部標準法と呼ばれる以下の方法で測定することができる。
まず、イソアミルアルコールの濃度が0.01ppm、1ppm、10ppm、100ppmである4点の標準試料を作製する。これらをガスクロマトグラフィーに供し、イオン質量42(分子イオン)のピーク面積をカウントし、検量線を作成する。また、リテンションタイムも記録する。
次いで、測定対象である油脂組成物をガスクロマトグラフィーに供し、標準試料と同様のリテンションタイムにおけるイオン質量(分子イオン)のピーク面積をカウントする。
上記のように得られたカウント数を検量線に当てはめ、油脂組成物中のイソアミルアルコールの含量を測定することができる。なお、この検量線の範囲を超過する濃度を含有すると推測される場合は、測定する試料をMCTで希釈してから、測定に供する。
【0080】
(油脂)
油脂としては、通常、食用油脂が用いられる。このような油脂としては、植物性油脂、動物性油脂、合成油脂、加工油脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせた調合油として用いてもよい。
【0081】
本発明によれば、動物性原料が全く配合されていなくとも、良好な畜肉感を奏することができる。したがって、本発明によれば、油脂として動物性油脂以外のみ(好ましくは植物性油脂及び/又は植物性油脂の加工油脂のみ)を用いた場合であっても、良好な畜肉感が奏され得る。
【0082】
植物性油脂としては、菜種油、ひまわり油、ヤシ油、パーム油、大豆油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米ぬか油、小麦胚芽油、カカオ脂、パーム核油及び藻類油等が挙げられる。
【0083】
動物性油脂としては、魚油(マグロ、サバ、イワシ、カツオ、ニシン等に由来する油脂)、豚脂、牛脂、乳脂、羊脂、鶏油等が挙げられる。
【0084】
合成油脂としては、中鎖脂肪酸油、ジアシルグリセロール等が挙げられる。
【0085】
加工油脂としては、上記の油脂に対して所望の処理を施した油脂であってもよい。このような処理としては、分別(例えば分別乳脂低融点部、パームスーパーオレイン等の分別油)、硬化、エステル交換反応等が挙げられる。油脂に対しては、1又は2以上の処理を施してもよい。
【0086】
本発明においては、上記の油脂のうち、菜種油、ひまわり油、ヤシ油、パーム油、パーム系油脂の分別油、エステル交換パーム油、パーム核油とパーム油の1:1の混合物のエステル交換油、エステル交換パーム分別軟質油を用いることが好ましい。
【0087】
本発明の油脂組成物の20℃における固体脂含有量(SFC)の下限値は、畜肉感を奏しやすいという観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。
本発明の油脂組成物の20℃における固体脂含有量(SFC)の上限値は、雑味のマスキング効果を奏しやすいという観点から、好ましくは60以下、より好ましくは35以下である。
【0088】
本発明の油脂組成物の30℃における固体脂含有量(SFC)の下限値は、雑味のマスキング効果を奏しやすいという観点から、好ましくは3以上である。
本発明の油脂組成物の30℃における固体脂含有量(SFC)の上限値は、脂の甘みを奏しやすいという観点から、好ましくは12以下である。
【0089】
本発明の油脂組成物に含まれる食用油脂のトリグリセリドのうち、1分子のグリセリンに3分子のオレイン酸が結合したトリオレイン酸の占める割合は、好ましくは0質量%以上50質量%以下、より好ましくは0質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下である。
【0090】
本発明の油脂組成物に含まれる食用油脂のトリグリセリドのうち、1分子のグリセリンに3分子のパルミチン酸が結合したトリパルミチン酸の占める割合は、好ましくは0質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上12質量%以下である。
【0091】
なお、本発明において、トリグリセリドの構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2-2013 2位脂肪酸組成」)により行う。
【0092】
(その他の成分)
本発明の油脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、飲食品等に配合される公知の食品及び食品添加物を配合できる。
【0093】
食品としては、例えば、糖類、茶葉、野菜、果物、香辛料、酵母、酵母エキス、香味食用油(ネギ油、ラー油、花椒油、オニオンオイル、ガーリックオイル、しょうがオイル、マッシュルームオイル、ポルチーニ茸オイル、トリュフオイル、メンマオイル、ワサビオイル、ゆずオイル、焦がししょうゆオイル等)、ヴァージンココナッツオイル、ヴァージンオリーブオイル、ヴァージンコーンオイル、燻製油等が挙げられる。
【0094】
食品添加物としては、例えば、乳化剤、酸化防止剤、シリコーン、色素、香料、ビタミン類、pH調整剤等が挙げられる。
【0095】
上記のような食品及び食品添加物の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。このような食品及び食品添加物を本発明の油脂組成物とともに配合することで、例えば、風味や色調の調整効果、酸化劣化の抑制効果、機能の向上効果等を奏し得る。
【0096】
本発明によれば、動物性原料が全く配合されていなくとも、良好な畜肉感を奏することができる。したがって、本発明によれば、動物性の食品(畜肉等)及び食品添加物(動物性エキス等の畜肉由来成分)を含まない場合であっても、良好な畜肉感が奏され得る。
【0097】
本発明の効果を奏しやすいという観点から、本発明の油脂組成物は、水分を実質的に含まないか、水分を全く含まないことが好ましい。
本発明において「油脂組成物が水分を実質的に含まない」とは、水分の含有量が、油脂組成物全体に対して0.5質量%以下であることを意味する。
本発明において「油脂組成物が水分を全く含まない」とは、水分の含有量が、油脂組成物全体に対して0.0質量%であることを意味する。
本発明において「水分」とは水(H2O)を意味する。
なお、本発明における油脂組成物の水分は、「基準油脂分析試験法2.1.3.4-2013 水分(カールフィッシャー法)」により測定することができる。
【0098】
<呈味改善剤の製造方法>
本発明の呈味改善剤は、各成分を、撹拌機等を用いて適宜混合撹拌することで得られる。成分の混合順序等は特に限定されない。
【0099】
<油脂組成物の製造方法>
本発明の油脂組成物は、各成分を、撹拌機等を用いて適宜混合撹拌することで得られる。成分の混合順序等は特に限定されない。
本発明の呈味改善剤は、その構成成分のうち全て又は一部を予め混合した後に油脂と混合してもよく、その構成成分を個別に油脂と混合してもよい。
【0100】
呈味改善成分(すなわち、スルフロール、及びヒドロキシメチルフルフラール、並びに、フェニルエタナール、フルフリルアルコール、及びイソアミルアルコールから選択される1以上の成分)は、合成品や、各成分をその一部に含む飲食品又は抽出物、加熱工程等で各成分が合成される飲食品又は抽出物等として油脂組成物に配合し得る。合成品としては、市販の試薬や香料等が挙げられる。
【0101】
また、上記呈味改善成分としては、該成分のうち一部、又は全てを含む食品及び/又は食品添加物を使用してもよい。このような食品及び/又は食品添加物としては、例えば、畜肉類、糖類、茶葉、野菜(ネギ、タマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、ジャガイモ等)、果物(バナナ、レモン、メロン、イチゴ、ココナッツ等)、しょうゆ、みそ、スパイス類(アニス、オールスパイス、キャラウェイ、クミン、クローブ、コリアンダー、シナモン、スターアニス、セージ、タイム、ナツメグ、バジル、パプリカ、ピメント、ピンクペッパー、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、メース、レモングラス、ローズヒップ、ローズマリー、ローレル等)、香味食用油(ネギ油、ラー油、花椒油、オニオンオイル、ガーリックオイル、しょうがオイル、マッシュルームオイル、ポルチーニ茸オイル、トリュフオイル、メンマオイル、ワサビオイル、ゆずオイル、焦がししょうゆオイル等)、ヴァージンココナッツオイル、ヴァージンオリーブオイル、ヴァージンコーンオイル、燻液、燻製油、酒(日本酒、焼酎、ワイン、ビール、ウィスキー、ウォッカ等)、みりん、味噌、醤油、醤油粕、麹、塩麹、甘酒、酒粕、みりん粕、奈良漬け、はちみつ、豚肉、チーズ、コーヒー、コーヒー粕、そば、チョコレート、たん白加水分解物、ペプチド、アミノ酸、核酸、ビタミン類、ミネラル類、酵母エキス、香料等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
上記食品は、未加工の状態でそのまま使用してもよく、加工(加熱等)してから使用してもよい。例えば、上記食品を油脂中に浸漬後、加熱及びろ過等をすることで、本発明の油脂組成物を得ることができる。
【0102】
<油脂組成物の用途>
本発明の油脂組成物の用途は特に限定されず、従来知られる風味油の代替物等として使用したり、任意の調味料(従来知られる風味油等)と組み合わせて使用したりすることができる。
【0103】
本発明の油脂組成物は、任意の飲食品に配合でき、該組成物を配合された飲食品等に対し、雑味が抑制された、良好な畜肉感を付与できる。
したがって、本発明は、本発明の油脂組成物を含む飲食品(好ましくは、肉代替食品)も包含する。
【0104】
本発明の油脂組成物を配合し得る飲食品等としては、特に限定されないが、油脂を使用して作製する各種惣菜(フライ食品等)、製菓、製パン、スープ(動物性原料含有コンソメスープ、野菜ブロス含有スープ等)、ソース等が挙げられる。
【0105】
本発明の油脂組成物は、そのまま飲食品に使用することもできるが、油脂組成物を各種形態(フライ油、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、食用油脂、香味食用油、水中油型乳化物(濃縮乳、ホイップクリーム、マヨネーズ等)、粉末油脂、ドレッシング等)としても使用することができる。
【0106】
本発明によれば、動物性原料が全く配合されていなくとも、良好な畜肉感を奏することができる。
したがって、本発明によれば、例えば、肉代替食品に対して良好な畜肉感を付与することができる。
さらに、本発明によれば、肉代替食品に対して良好な甘みを付与し得る。
【0107】
本発明において「肉代替食品」とは、植物性原料(豆類(大豆、エンドウ豆、ヒヨコマメ、ソラマメ等)、米、穀物等)、真菌タンパク質(マイコプロテイン等)等を主原料として用いた任意の食品を包含する。
本発明における肉代替食品は、本発明の効果を奏しやすいという観点から、動物性原料(畜肉、畜肉由来成分、動物油脂、乳成分、卵等)を全く含まないものが好ましい。
【0108】
肉代替食品としては、豆腐ハンバーグ、大豆たん白加工食品(ハンバーグ様食品、シューマイ様食品、餃子様食品、中華まん様食品、ジャーキー様食品、ソーセージ様食品、ピザ様食品、トルティーヤ様食品)、エンドウ豆たん白加工食品(ハンバーグ様食品、シューマイ様食品、餃子様食品、中華まん様食品、ジャーキー様食品、ソーセージ様食品、ピザ様食品、トルティーヤ様食品)等が挙げられる。
【0109】
肉代替食品中の本発明の油脂組成物の含有量は、得ようとする風味等に応じて適宜調整できる。
本発明の油脂組成物の含有量の下限値は、肉代替食品の材料全体に対して、好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。
本発明の油脂組成物の含有量の上限値は、肉代替食品の材料全体に対して、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【実施例0110】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0111】
<試験1:呈味改善剤及び油脂組成物の作製及び評価>
以下の方法で呈味改善剤及び油脂組成物を作製し、その風味を評価した。
【0112】
(呈味改善剤及び油脂組成物の作製)
表1~5中の「呈味改善剤」の項に示す成分を、同項に示す濃度(単位:ppm)となるように「添加した食品」の項に示す対象へ添加した。
なお、「添加した食品」が油脂(菜種油、ひまわり油、ヤシ油、パーム油、又は加工油脂)である場合に得られた組成物が、本発明の油脂組成物に相当する。
【0113】
表1~5中、呈味改善剤を構成する各成分には、(A)~(E)の記号を付した。
「(A)」を分母とした数値(例えば、「(B)/(A)」)は、各呈味改善剤中のスルフロール含有量に対する、スルフロール以外の各成分の含有量の質量比(各成分/スルフロール)を示す。
また、「(B)」を分母とした数値(例えば、「(C)/(B)」)は、各呈味改善剤中のヒドロキシメチルフルフラール含有量に対する、ヒドロキシメチルフルフラール以外の各成分の含有量の質量比(各成分/ヒドロキシメチルフルフラール)を示す。
【0114】
表1~5中、「固体脂含有量」とは、各例における「添加した食品」の20℃又は30℃における固体脂含有量(SFC)を示す。
固体脂含有量は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.2.9-2013 固体脂含有量(NMR法)」に準じて測定した。
【0115】
なお、加工油脂として以下を用いた。
加工油脂1:パーム中融点分別油
加工油脂2:エステル交換パーム油
加工油脂3:パーム核油とパーム油の1:1の混合物のエステル交換油
加工油脂4:エステル交換パーム分別軟質油(ヨウ素価56)及びパーム油の1:1の混合物
【0116】
(油脂組成物の評価)
得られた油脂組成物の雑味、畜肉感、脂の甘み、並びに、エグ味及び収斂味のそれぞれについて、以下の評価方法に基づき官能評価を行った。その結果を表1~5中の「評価」の項に示す。
【0117】
なお、官能評価は、下記のように選抜されたパネルによって行った。
パネル候補に対し、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20名をパネルとして選抜した。
また、評価を実施するにあたり、パネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。また、官能評価におけるパネルの偏りを排除し、評価の精度を高めるために、サンプルの試験区番号や内容はパネルに知らせず、ランダムに提示した。
【0118】
[評価方法]
三元豚のバラの部位を、フライパンを用いて弱火で10分加熱した後、融解及び分離した油脂と、肉汁とを混ぜたものを、「対照」の油脂組成物として準備した。
各パネルに「対照」の油脂組成物を喫食させ、その各風味(雑味の少なさ、畜肉感、脂の甘み、並びに、エグ味及び収斂味の少なさ)を記憶させた。
各油脂組成物について、「対照」の油脂組成物の風味を「10点」とした場合の各風味を10段階評価させた。なお、数値が「10点」に近いほど、畜肉感、雑味のマスキング(雑味の少なさ)、脂の甘みのそれぞれが良好であること、及び、エグ味及び収斂味が少ないことを意味する。パネルが回答した点数の平均を求め、小数第1位を四捨五入した。
【0119】
本例では、雑味のマスキング、及び畜肉感の点数が何れも3点以上であれば、良好な風味を奏していると判断できる。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
表1~5中の実施例に示されるとおり、本発明の要件を満たすようにスルフロール、及びヒドロキシメチルフルフラールが配合された油脂組成物は、雑味が少なく、かつ、畜肉感に優れていた。
【0126】
スルフロールの含有量が多いほど、畜肉感が良好になりやすい傾向にあったが、本発明における比率を満たすようにヒドロキシメチルフルフラールを配合することで、雑味の発生は抑制されていた。
【0127】
さらに、フェニルエタナール、フルフリルアルコール、又はイソアミルアルコールを配合すると、雑味の発生が抑制されつつ、畜肉感だけではなく、脂の甘みも向上しやすいうえ、エグ味及び収斂味が抑制されている傾向にあった。
また、エグ味及び収斂味の抑制効果は、呈味改善剤を構成する成分の濃度が低いほど奏されやすい傾向にあった。
【0128】
<試験2:スープの作製>
上記試験1で作製した実施例の呈味改善剤を使用し、スープ(飲食品に相当)を作製した。なお、該スープとしては、野菜ブロスを主原料とするスープ(野菜ブロススープ)を用いた。
スープには、各呈味改善剤を表6記載の濃度で添加した。
【0129】
得られたスープを、試験1と同様に評価した。その結果を表6に示す。
表6に示されるとおり、実施例の呈味改善剤を配合したスープは、雑味が少なく、かつ、畜肉感に優れていた。
【0130】
<試験3:大豆ハンバーグの作製>
上記試験1で作製した実施例17、40、若しくは55、又は比較例6の呈味改善剤を使用し、大豆ハンバーグ(飲食品に相当する。)を作製した。なお、該大豆ハンバーグは、乾燥粒状脱脂大豆、及び乾燥粉末状脱脂大豆を主原料とし、動物性原料を全く含まないものである。大豆ハンバーグには、各呈味改善剤を表7記載の濃度で添加した。
【0131】
得られた大豆ハンバーグを、試験1と同様に評価した。その結果を表7に示す。
表7に示されるとおり、実施例の呈味改善剤を配合した大豆ハンバーグは、雑味が少なく、かつ、畜肉感に優れていた。
また、実施例の呈味改善剤を配合した大豆ハンバーグは、大豆臭が抑制されており、嗜好性が改善されていた。
【0132】
【0133】