(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166892
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】顔認証方法及び顔認証装置
(51)【国際特許分類】
G06V 40/16 20220101AFI20231115BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231115BHJP
【FI】
G06V40/16 A
G06T7/00 510F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077746
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 英城
(72)【発明者】
【氏名】千葉 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】御厨 裕
【テーマコード(参考)】
5B043
【Fターム(参考)】
5B043AA05
5B043BA04
5B043DA06
5B043GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両に搭載された撮像装置を用い、車外に居る乗客の顔を撮像して迅速で正確な顔認証を行う顔認証方法及び顔認証装置を提供する。
【解決手段】方法は、車両に搭載された撮像装置を用いて車外に居る乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、乗客の身長を示す情報を取得しS10、車両の現在位置から前記乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、取得した乗客の身長に基づいて、撮像装置の撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御しS60、車両の高さ又は姿勢を制御したS90後に、撮像装置を用いて乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、顔画像データに基づいて、乗客を認証する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された撮像装置を用いて車外に居る乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、前記顔画像データに基づいて前記乗客を認証する顔認証方法であって、
前記乗客の身長を示す情報を取得し、
前記車両の現在位置から前記乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、取得した前記乗客の身長に基づいて、前記撮像装置の撮像方向が前記乗客の顔へ向くように前記車両の高さ又は姿勢を制御し、
前記高さ又は姿勢を制御した後に、前記撮像装置を用いて前記乗客の顔を撮像して前記顔画像データを取得し、
前記顔画像データに基づいて、前記乗客を認証する
顔認証方法。
【請求項2】
前記距離が前記所定距離に達した時、前記乗車位置に居る、取得した前記乗客の身長から所定範囲内の身長を有する人物を前記乗客として検出し、
検出した前記乗客の身長に基づいて、前記撮像方向が前記乗客の顔へ向くように前記車両の高さ又は姿勢を制御する
請求項1に記載の顔認証方法。
【請求項3】
前記距離が前記所定距離に達した時、取得した前記乗客の身長に基づいて、前記撮像方向が前記乗客の顔へ向くように前記高さ又は姿勢の制御を開始し、
前記制御を開始した後に前記乗客を検出した場合、検出した前記乗客の身長に基づいて、前記撮像方向が前記乗客の顔へ向くように前記高さ又は姿勢を制御する
請求項2に記載の顔認証方法。
【請求項4】
前記車両が前記乗車位置に停車するまでに、前記撮像方向が前記乗客の顔へ向くように前記車両の高さ又は姿勢を制御する
請求項1から3のいずれか一項に記載の顔認証方法。
【請求項5】
前記車両の挙動が所定挙動以上と判断した場合、前記高さ及び姿勢の制御を中断し、前記挙動が所定挙動未満と判断した場合、前記制御を再開する
請求項1から3のいずれか一項に記載の顔認証方法。
【請求項6】
前記車両に備わる車高調整機構を制御して前記高さ又は姿勢を制御する
請求項1から3のいずれか一項に記載の顔認証方法。
【請求項7】
前記乗客の顔画像が記録された照合画像データを取得し、前記照合画像データから前記乗客の顔の輪郭の重心点と両目の重心点との第1の偏差を算出し、
少なくとも1つ以上の前記顔画像データから前記顔の輪郭の重心点と前記両目の重心点との第2の偏差を算出し、
前記第1の偏差と前記第2の偏差との差分が所定差分未満の顔画像データを抽出し、
抽出した前記顔画像データと前記照合画像データとに基づいて、前記乗客を認証する
請求項1に記載の顔認証方法。
【請求項8】
前記乗客の認証は、前記車両が前記乗車位置に停車する前に終了する
請求項7に記載の顔認証方法。
【請求項9】
前記認証により、前記顔画像データに映る人物と前記照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、前記車両に停車を指示する信号を出力する
請求項8に記載の顔認証方法。
【請求項10】
前記撮像装置を前記車両の前後方向に少なくとも2つ以上備え、
少なくとも2つの前記撮像装置が取得した各々の前記顔画像データに映る人物と、前記照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、前記車両に停車を指示する信号を出力する
請求項9に記載の顔認証方法。
【請求項11】
前記乗客の前記身長を示す情報を取得できなかった場合、前記乗車位置に居る人物を前記乗客として検出し、
前記撮像装置を用いて前記乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、
前記乗客の顔画像が記録された照合画像データを取得し、
前記顔画像データに映る人物と前記照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、前記乗客の身長を取得する
請求項1又は7に記載の顔認証方法。
【請求項12】
前記車両の外部に光を照射する光照射部を備え、
撮像を開始する際に、撮像方向に向けて光を照射する
請求項1に記載の顔認証方法。
【請求項13】
車両に搭載された撮像装置を用いて車外に居る乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、前記顔画像データに基づいて前記乗客を認証する顔認証装置であって、
前記車両の現在位置を取得する自車位置取得部と、
前記乗客の乗車位置及び前記乗客の身長を示す情報を取得する通信部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記車両の現在位置から前記乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、取得した前記乗客の身長に基づいて、前記撮像装置の撮像方向が前記乗客の顔へ向くように前記車両の高さ又は姿勢を制御し、
前記高さ又は姿勢を制御した後に、前記撮像装置を用いて前記乗客の顔を撮像して前記顔画像データを取得し、
前記顔画像データに基づいて、前記乗客を認証する
顔認証装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔認証方法及び顔認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、認証対象者の顔をカメラで撮像し、その顔画像と予め登録した登録画像とを照合して本人であるか否かを認証(個人認証)する顔認証装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された顔認証装置は、認証を行う人の顔を撮影する顔撮影部と、人の顔の高さを検出する顔位置検出部とが設けられた本体、及び本体を鉛直方向に移動可能な移動機構を備えている。顔認証装置は、顔位置検出部で検出された顔の高さに合わせて本体を鉛直方向に昇降移動させることで、顔撮影部を認証処理に適した高さまで移動することができ、迅速に正確な顔認証を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に搭載された撮像装置を用いて車外に居る乗客の顔を撮像した顔画像で認証を行う場合、車高調整機構は一般的に動作速度が遅いため、認証の開始タイミングが遅れてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、車両に搭載された撮像装置を用いて車外に居る乗客の顔を撮像した顔画像データで乗客を認証する顔認証方法において、迅速で正確な顔認証を行うことができる顔認証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
車両に搭載された撮像装置を用いて車外に居る乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、顔画像データに基づいて乗客を認証する顔認証方法であって、乗客の身長を示す情報を取得し、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、取得した乗客の身長に基づいて、撮像装置の撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。車両の高さ又は姿勢を制御した後に、撮像装置を用いて乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、顔画像データに基づいて、乗客を認証する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両に搭載された撮像装置を用いて迅速で正確な顔認証を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る顔認証装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る顔認証装置のカメラの取付け位置及びカメラの画角を示す模式図である。
【
図3A】
図3Aは、第1実施形態に係る顔認証装置が車両の高さを制御した状態を示す模式図である。
【
図3B】
図3Bは、第1実施形態に係る顔認証装置が車両の姿勢を制御した状態を示す模式図である(第1の例)。
【
図3C】
図3Cは、第1実施形態に係る顔認証装置が車両の姿勢を制御した状態を示す模式図である(第2の例)。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態に係る顔認証装置の第1の処理の一例を示すフローチャートである(その1)。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態に係る顔認証装置の第1の処理の一例を示すフローチャートである(その2)。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る顔認証装置の第2の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る顔認証装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7A】
図7Aは、第2実施形態に係る顔認証装置の処理の一例を示すフローチャートである(その1)。
【
図7B】
図7Bは、第2実施形態に係る顔認証装置の処理の一例を示すフローチャートである(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
[顔認証装置の構成]
図1を参照して、第1実施形態に係る顔認証装置1の構成例を説明する。顔認証装置1は、撮像部10、自車位置取得部20、通信部30、物体検出部40、光照射部50、及び制御部60を備えている。
【0011】
顔認証装置1は、輸送サービスを提供する車両に搭載される。輸送サービスを提供する車両は、自動運転機能により自律走行する車両であってもよいし、運転者により手動運転で走行する車両であってもよい。顔認証装置1は、車両に搭載された撮像部10を用いて車外にいる乗客の顔を撮像した顔画像データを取得し、取得した顔画像データに基づいて、乗客が本人であるか否かを認証する。
【0012】
撮像部10は、複数のカメラ(撮像装置:11、12、13)で構成される。撮像部10を構成する複数のカメラ(11、12、13)は、CCD(charge-coupled device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)などの撮像素子を有する。撮像部10は、車両に搭載される。より詳細には、撮像部10は、車両外部の側面に搭載され、車両側面の乗客が乗降する乗降扉より車両前方に搭載されたカメラ11、乗降扉の上方に搭載されたカメラ12、及び乗降扉より車両後方に搭載されたカメラ13の計3台で構成されている。各々のカメラはそれぞれ高さの異なる位置に搭載される。各々のカメラの撮像方向は、乗降扉が設置されている車両側方のそれぞれ異なる方向を向いている。これにより、異なる乗客の身長に対応することができ、車外に居る乗客の顔を異なる位置から撮像した複数の画像データを取得することができる。各々のカメラは車体に固定されており、撮像部10単体で撮像方向を変化させることはできない。各々のカメラの撮像方向を変化させる場合、車両に備わる車高調整機構により車両の高さ又は姿勢を変化させる。なお、各々のカメラの取付け位置及び各々のカメラの画角については、
図2を参照して後述する。また、車高調整機構により車両の高さ又は車両の姿勢の制御した際の各々のカメラの撮像方向及び画角については、
図3A~
図3Cを参照して後述する。
【0013】
撮像部10は、撮像の開始を指示する信号を受信するとともに撮像を開始し、撮像の終了を指示する信号を受信するとともに撮像を終了する。撮像の開示及び撮像の終了を指示する信号は、制御部60から送信される。各々のカメラは、所定の周期で連続的に撮像を行い、複数の画像データを取得する。撮像部10は、取得した画像データを制御部60に出力する。なお、本実施形態では、撮像部10は3つのカメラ(11、12、13)で構成されるが、撮像部10は、1乃至2つのカメラで構成されていてもよいし、4つ以上のカメラで構成されていてもよい。また、本実施形態では、顔認証装置1が撮像部10を備えるが、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)に備わるカメラを用いることができる。したがって、カメラの搭載位置は車両側面に限定されず、車両前面に搭載されていてもよい。
【0014】
自車位置取得部20は、GPS(Global Positioning System)信号を受信する受信装置を備え、車両の地球座標における位置(絶対位置)及び姿勢(絶対姿勢)を計測する。更に、自車位置取得部20は、オドメトリ又はデッドレコニングを行う演算処理回路を備える。演算処理回路は、車両の各車輪の車輪速を検出する車輪速センサ、操舵輪の転舵角を検出する舵角センサから取得した情報に基づいて、所定の基準点に対する車両の相対位置、ヨー角、及び速度を計測する。演算処理回路は、所定の基準点(絶対位置)に対する車両の相対位置及びヨー角から、車両の絶対位置及び絶対姿勢を計測することができる。自車位置取得部20は、車両の絶対位置及び絶対姿勢を制御部60に出力する。
【0015】
通信部30は、データセンタから送信される配車を指示する信号を受信する受信機と、乗客を認証する際に取得した乗客に関する情報を示す信号をデータセンタに送信する送信機とを備えている。配車を指示する信号には、乗客の情報が含まれる。乗客の情報には少なくとも、乗客の乗車位置(絶対位置)及び乗客を認証するための照合画像データが含まれる。また、既に輸送サービスを利用した乗客の情報には、さらに乗客の身長を示す情報が含まれる。照合画像データは、配車を依頼した乗客の顔画像が記録された画像データである。照合画像データは、配車を依頼した乗客と乗車位置にいる乗客とが同一人物、すなわち乗客が本人であるか否かの認証に用いられる。データセンタは、通信端末から送信された乗客の配車依頼に関する信号を受信し、受信した情報に基づいて乗客の付近にいる車両に配車を指示する信号を送信する施設である。データセンタは配車サービス又は輸送サービスを提供する会社内に設置される。なお、通信端末は、所定の場所に設置された配車を依頼するための専用端末であってもよいし、配車を依頼する人物が所有する携帯端末であっても構わない。乗客の乗車位置を示す情報は、乗客が所有するスマートフォンなどの携帯端末に備わる位置取得部(GPS信号)から取得することができる。また、通信端末から配車を依頼する信号を送信する際に乗車位置を入力させる構成としてもよい。照合画像データは、通信端末に備わるカメラで取得することができ、配車依頼と同時に送信されるよう構成することで取得することができる。なお、乗客の身長を示す情報は、携帯端末に入力され、配車依頼とともに送信されるよう構成されてもよい。データセンタは乗客の照合画像データ及び乗客の身長を記憶する。
【0016】
物体検出部40は、自車両に搭載されたレーザレーダやミリ波レーダ、カメラ、ライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)など、自車両の周囲の物体を検出する複数の異なる種類の物体検出センサで構成される。物体検出部40は、自車両の周囲における物体を検出する。物体検出部40は、二輪車を含む他車両、歩行者(人物)などの移動物体、及び路面標示、道路標識、縁石、ガードレール、停車車両、人物などの静止物体を検出することができる。物体検出部40は、複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。具体的には、物体検出部40は、物体検出センサの各々から得られた物体の位置、大きさ、及び挙動から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の位置、大きさ、及び挙動を算出する。物体検出部40は、既知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を得ることができる。物体検出部40は、物体の位置、大きさ、及び挙動を示す情報を制御部60に出力する。物体の大きさには、少なくとも物体の高さが含まれる。なお、本実施形態では、物体検出部40は、複数の物体検出センサを備えるが、例えば、1つの物体検出センサで構成されていてもよい。
【0017】
光照射部50は、車両の外部に光を照射する照明灯である。光照射部50は、撮像部10の各々のカメラの撮像方向と同方向に向けて光を照射する。本実施形態では、光照射部50は複数のカメラ(11、12、13)に対応する3つの照明灯を備えている。光照射部50は、撮像部10の各々のカメラの撮像方向と同方向に向けて光を照射することができる位置に設置されていればよい。例えば、光照射部50は、車両外部の側面に搭載された各々のカメラと隣接する位置にそれぞれ搭載される。なお、光照射部50は、各々のカメラの画角全体を含む照射範囲を備えている場合、1つの照明灯で構成されていてもよい。照明灯には、例えばLED(light-emitting diode)ライトを用いることができる。光照射部50は、制御部60から照明灯の点灯を指示する信号を受信するとともに照明灯を点灯し、消灯を指示する信号を受信するとともに照明灯を消灯する。光照射部50が光を照射することで、車外に居る乗客の顔を照明することができる。
【0018】
制御部60は、乗客の身長を示す情報を取得し、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、取得した乗客の身長に基づいて、撮像部10の撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。制御部60は、車両の高さ又は姿勢を制御した後に、撮像部10を用いて乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、顔画像データに基づいて乗客を認証する。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、RAM及びROMなどのメモリ(記憶部)及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、顔認証装置1として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、顔認証装置1が備える複数の情報処理回路(61~66)として機能する。なお、本実施形態では、ソフトウェアによって顔認証装置1が備える複数の情報処理回路(61~66)を実現する例を示すが、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。制御部60は、複数の情報処理回路として、距離計測部61、乗客検出部62、顔位置推定部63、姿勢制御部64、顔検出部65、認証判定部66を備えている。
【0019】
距離計測部61は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離を計測する。具体的には、距離計測部61は、車両に備わるナビゲーション機能により車両の現在位置から乗客の乗車位置までの走行経路が設定されている場合、走行経路をナビゲーション機能から取得し、走行経路上における車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離を計測する。なお、距離計測部61は、車両に備わるナビゲーション機能から取得せずに、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの走行経路を推定し、推定した走行経路上における車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離を計測してもよい。
【0020】
乗客検出部62は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、乗車位置に居る、取得した乗客の身長から所定範囲内の身長を有する人物を乗客として検出する。具体的には、乗客検出部62は、通信部30が受信した乗客の乗車位置及び乗客の身長(以後、「取得身長」ともいう)を示す情報、及び物体検出部40が検出した物体の位置及び物体の大きさを示す情報を取得する。乗客検出部62は、物体の位置を示す情報に基づいて、乗客の乗車位置を中心とする所定領域内に居る人物を抽出し、物体の大きさを示す情報に基づいて、抽出した人物の身長を決定する。より詳細には、乗客検出部62は、物体の大きさを示す情報に含まれる物体の鉛直方向の長さ(高さ)を人物の身長(以後、「計測身長」ともいう)として検出する。物体検出部40は、抽出した人物のうち、取得身長から所定範囲内の身長(計測身長)を有する人物を乗客として検出する。所定領域は、例えば乗客の乗車位置から半径3m以内の領域である。なお、所定距離の設定値については後述する。
【0021】
顔位置推定部63は、乗客の身長に基づいて乗客の顔の位置を推定する。具体的には、身長毎の標準的な顔の位置が予め記憶された制御部60に備わるメモリ(不図示)から乗客の身長に対応する顔の位置を取得し、取得した顔の位置を乗客の顔の位置として推定する。顔の位置とは、地面から顔の輪郭中心の位置までの高さである。顔位置推定部63は、取得身長から乗客の顔の位置を推定する。また、顔位置推定部63は、計測身長から乗客の顔の位置を推定する。顔位置推定部63は、取得身長から推定した顔の位置と、計測身長から推定した顔の位置との2つを出力する。
【0022】
姿勢制御部64は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、乗客の身長に基づいて、撮像部10の撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。具体的には、姿勢制御部64は、車両に備わる車高調整機構を制御して車両の高さ又は姿勢を制御する。姿勢制御部64は、取得身長から推定した顔の位置と、計測身長から推定した顔の位置とに基づいて、撮像部10の撮像方向が乗客の顔へ向く車両の高さ又は姿勢を算出し、算出した車両の高さ又は姿勢を車高調整機構に備わる車高調整コントローラに送信する。これにより、姿勢制御部64は、撮像部10の撮像方向を乗客の顔へ向けることができ、車両が乗車位置に停車するまでの間にカメラの画角の中央で乗客の顔を撮像することができる。なお、車両の高さは、車両のタイヤが接している地面から車両のルーフ部の最も高い位置までの鉛直方向の距離であり、車両の姿勢は、車両のロール角度及びピッチ角度である。姿勢制御部64は車両の高さと姿勢とを組みわせて制御することもできる。姿勢制御部64は、状況に応じて以下に説明する第1の制御又は第2の制御を実行して、車両の高さ又は姿勢を制御する。第3の制御は第1の制御と第2の制御とを組み合わせて実行した場合の例である。
【0023】
(第1の制御)
姿勢制御部64は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、取得した乗客の身長(取得身長)に基づいて、撮像部10の撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。具体的には、姿勢制御部64は、複数のカメラ(11、12、13)のうち、いずれかのカメラの垂直方向の画角(以後、「垂直画角」という)の中心位置が取得身長から推定した乗客の顔の位置となる車両の高さ又は姿勢を算出し、算出した車両の高さ又は姿勢を車高調整コントローラに送信する。すなわち、カメラの撮像方向を乗客の顔へ向けることは、カメラの垂直画角の中心位置を乗客の顔に合わせることである。
(第2の制御)
姿勢制御部64は、検出した乗客の身長(計測身長)に基づいて、撮像部10の撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。具体的には、姿勢制御部64は、複数のカメラ(11、12、13)のうち、いずれかのカメラの垂直画角の中心位置が計測身長から推定した乗客の顔の位置となる車両の高さ又は姿勢を算出し、算出した車両の高さ又は姿勢を車高調整コントローラに送信する。姿勢制御部64は、乗車位置に居る乗客を検出できなかった場合、計測身長を取得することができない。姿勢制御部64は、乗車位置にいる乗客を検出できなかった場合は第1の制御のみを実行する。なお、姿勢制御部64は、第1の制御を実行せずに第2の制御のみを実行してもよい。
(第3の制御)
姿勢制御部64は、車両の乗車位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、取得した乗客の身長(取得身長)に基づいて、撮像部10の撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢の制御を開始する。そして、姿勢制御部64は、車両の高さ又は姿勢の制御を開始した後に、乗車位置に居る乗客を検出した場合、検出した乗客の身長(計測身長)に基づいて、撮像部10の撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。したがって、姿勢制御部64は、乗車位置に居る乗客を検出した場合、第1の制御から第2の制御に切り替える。なお、複数のカメラ(11、12、13)のうち、取得身長又は計測身長から推定した顔の位置に垂直画角の中心位置を合わせるカメラの選定方法についての詳細は、
図2を参照して後述する。
【0024】
姿勢制御部64は、車両が乗客の乗車位置に停車するまでに、撮像部10の撮像方向が乗客の顔を向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。車両の高さ又は姿勢の制御が終了するタイミングは、所定距離の設定値により調整することができる。具体的には、所定距離は、車両の高さを標準位置から最も高い位置、又は車両の高さを標準位置から最も低い位置まで変化させるのに要する時間以上を走行可能な距離である。これにより、車両が乗客の乗車位置に停車するまでに、撮像部10の撮像方向が乗客の顔を向くように車両の高さ又は姿勢を制御することができる。したがって、所定距離を長くすることにより、より早いタイミングで撮像部10の撮像方向を乗客の顔に向けることができる。なお、車両が走行する際の高さは標準位置である。また、姿勢制御部64は、車両の高さ又は姿勢の制御を開始した後に、車両の挙動が所定値以上であると判断した場合、車両の高さ及び姿勢の制御を中断し、車両の挙動が所定値未満であると判断した場合、車両の高さ又は姿勢の制御を再開する。所定値は、例えば、車内に居る乗客が不快に感じないロール方向、ピッチ方向、及び鉛直方向における加速度の許容限界値である。姿勢制御部64は、いずれかのカメラの垂直画角の中心位置が取得身長から推定した乗客の顔の位置又は計測身長から推定した顔の位置となったと判断した場合、乗客の顔画像データの取得が可能であることを通知する信号を顔検出部65に出力する。姿勢制御部64は、乗客の顔画像データの取得が可能であることを通知する信号を顔検出部65に出力するとともに、車両に備わる光センサから車外の明るさを示す情報を取得し、車外の明るさが所定の明るさ未満と判断した場合、光照射部50に照明灯の点灯を指示する信号を出力する。所定の明るさは、例えば、車両の車幅灯及び前照灯の点灯及び消灯を制御するライトコントローラが車幅灯を点灯させる明るさである。
【0025】
顔検出部65は、姿勢制御部64が車両の高さ又は姿勢を制御した後に、撮像部10を用いて乗客の顔を撮像して乗客の顔画像データを取得する。具体的には、顔検出部65は、乗客の顔画像データの取得が可能であることを通知する信号を受信した場合、すなわち、いずれかのカメラの垂直画角の中心位置が取得身長から推定した乗客の顔の位置、又は計測身長から推定した顔の位置となった場合、撮像部10に撮像の開始を指示する信号を出力する。顔検出部65は、複数のカメラ(11、12、13)が取得した画像データを受信する。顔検出部65は、受信した画像データから人物の顔を検出し、顔が検出された画像を乗客の顔画像データとして抽出する。顔検出部65は、既知の画像解析技術であるパターンマッチングを用いることで画像データに映る人物の顔を検出することができる。
【0026】
認証判定部66は、複数のカメラ(11、12、13)が取得した乗客の顔画像データに基づいて、乗客を認証する。具体的には、認証判定部66は、乗客の顔画像データと照合画像データとを比較し、乗客の顔画像データに映る人物と照合画像データに映る人物が同一人物であるか否かを判断する。認証判定部66は、乗客の顔画像データに映る人物と照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、乗客が本人であると認証する。認証判定部66は、乗客の顔画像データ及び照合画像データに映る人物の顔から目、鼻、口、顔の輪郭などの顔の特徴が表れる部位を抽出し、抽出した各々の部位の一致率が所定一致率以上であると判断した場合、乗客が本人であると認証する。なお、2つの顔画像を比較して同一人物であるか否かを判定する方法は、上記方法に限定されない。認証判定部66は、既知の顔認証技術を用いて顔画像データに映る人物と照合画像データに映る人物が同一人物であるか否かを判断することができる。認証判定部66は、複数のカメラ(11、12、13)のうち、少なくとも2つのカメラが取得した乗客の顔画像データに映る人物と照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、乗客が本人であると認証してもよい。認証判定部66は、乗客が本人であると認証した場合、車両に備わるインターフェイス又は乗降扉を制御するドアコントローラに乗降扉の開放を許可する信号を出力する。これにより、車外に居る乗客が配車を依頼した本人であることを確認したうえで、乗客を乗車させることができる。
【0027】
なお、車両が乗客の乗車位置に停車する前に、撮像部10の撮像方向が乗客の顔を向くように制御されている場合、認証判定部66は、車両が停車するまでに乗客の認証に係る処理を終了させる。この場合、認証判定部66は、乗客の顔画像データと照合画像データとが一致したと判断した場合、車両に停車を指示する信号を出力する。また、認証判定部66は、乗客の顔画像データと照合画像データとが一致しないと判断した場合、車両に停車を禁止する信号を出力する。
【0028】
次に、
図2を参照して、カメラの取り付け位置及びカメラの画角について説明する。車両100には、複数のカメラ(11、12、13)がそれぞれ異なる位置に搭載され、各々のカメラの撮像方向はそれぞれ異なる方向を向いている。具体的には、カメラ11は、乗降扉Dより車両前方の地上から170cmの高さに搭載されている。カメラ12は、乗降扉Dの上方の地上から180cmの高さに搭載されている。カメラ13は、乗降扉Dより車両後方の地上から150cmの高さに搭載されている。複数のカメラ(11、12、13)は全て同一のカメラであり、カメラ11の画角Av1、カメラ12の画角Av2、及びカメラ13の画角Av3は同じである。カメラ11の撮像方向は車幅方向へ水平に向けられ、カメラ12の撮像方向は水平方向から下側へ傾斜し、カメラ13の撮像方向は車幅方向から車両前方側かつ上側へ傾斜している。カメラ13の撮像方向が車両前方へ傾斜している理由は、車両100は乗降扉Dと乗客が正対するように停車するためである。したがって、カメラ13の撮像方向が車両前方側へ傾斜するように搭載することで、乗降扉Dと乗客が正対するように停車した場合でも、カメラ13の画角内に乗客の顔が入るようにすることができる。以上説明したように、本実施形態では、複数のカメラ(11、12、13)をそれぞれ異なる位置に搭載し、各々のカメラの撮像方向はそれぞれ異なる方向を向いている。これにより、車両の高さ又は姿勢を制御する前の状態から、いずれかのカメラの垂直画角の中心位置が乗客の顔の位置となるようにしておくことができる。姿勢制御部64は、取得身長から推定した乗客の顔の位置又は計測身長から推定した顔の位置に垂直画角の中心位置が最も近いカメラを、垂直画角の中心位置を顔の位置に合わせるカメラとして選定する。例えば、顔の位置が155cmの場合、地上からの高さが150cmの位置に搭載されたカメラ13を画角の鉛直方向の中心位置を顔の位置に合わせるカメラとして選定する。これにより、車高調整機構の制御量を最小とすることができ、最短時間で車両の高さ又は姿勢を目標とする車両の高さ又は姿勢に制御することができる。なお、カメラの搭載位置、画角、及び撮像方向は上記に限定されず、車両寸法及び想定する乗客の身長に合わせて適宜設定することができる。
【0029】
次に、
図3Aから
図3Cを参照して、車高調整機構により車両の高さ又は姿勢の制御した際の各々のカメラの撮像方向及び画角について説明する。車高調整機構には複数の種類が存在するが、車両100に搭載される車高調整機構は、空気圧により自ら伸び縮みすることができるエアサスペンションである。なお、エアサスペンションは既知の車高調整機構であり、詳細な説明は省略する。車高調整機構は、全てのサスペンションを同様に制御することもできるし、各々のサスペンションを個別に制御することもできる。なお、
図3A~
図3Cに示すカメラの画角(Av1、Av1h、Av1u、Av1d)は、全てカメラ11の画角を示している。以下では、カメラ11の垂直画角の中心位置を顔の位置に合わせることを前提に説明する。なお、車高調整機構は、サスペンションの長さを伸縮させる構成に限定されず、車両の高さ又は姿勢を制御できる構成を有していればよい。
【0030】
図3Aは、車両の高さを制御した状態を示している。具体的には、車高調整機構が全てのサスペンションを伸ばして、車両の高さを上昇させた状態を示している。車両の高さを上昇させたことで、カメラ11の画角Av1h及び画角Av1hの垂直画角の中心位置c1hは、標準状態におけるカメラ11の画角Av1及び画角Av1の垂直画角の中心位置c1に対して上方向Uに移動する。これにより、標準状態におけるカメラ11の垂直画角の中心位置c1よりも高い乗客の顔の位置にカメラ11の垂直画角の中心位置を合わせることができる。
【0031】
図3Bは、車両の姿勢を変化させた状態(第1の例)を示している。具体的には、車高調整機構が車両右側Rのサスペンションを縮ませて、相対的に車両左側Lを上昇させた状態を示している。車両左側Lを相対的に上昇させることで、カメラ11の画角Av1u及び画角Av1uの垂直画角の中心位置c1uは、標準状態におけるカメラ11の画角Av1及び画角Av1の垂直画角の中心位置c1に対して車両の左上方向へと傾く。これにより、標準状態における垂直画角の中心位置c1よりも高い乗客の顔の位置にカメラ11の垂直画角の中心位置を合わせることができる。なお、
図3Bでは、車両右側Rのサスペンションを縮ませる例を示したが、車両左側Lのサスペンションを伸ばし、車両右側Rのサスペンションを縮めるように制御することもできる。これにより、カメラ11の撮像方向をより高い乗客の顔の位置に向けることができる。
【0032】
図3Cは、車両の姿勢を変化させた状態(第2の例)を示している。具体的には、車高調整機構が車両左側Lのサスペンションを縮ませて、相対的に車両右側Rを上昇させた状態を示している。車両右側Rを相対的に上昇させることで、カメラ11の画角Av1d及び画角Av1dの鉛直画角の中心位置c1dは、標準状態におけるカメラ11の画角Av1及び画角Av1の垂直画角の中心位置c1に対して車両の左下方向へと傾く。これにより、標準状態における垂直画角の中心位置c1よりも低い乗客の顔の位置にカメラ11の垂直画角の中心位置を合わせることができる。なお、
図3Cでは、車両左側Lのサスペンションを縮ませる例を示したが、車両右側Rのサスペンションを伸ばし、車両左側Lのサスペンションを縮めるように制御することもできる。これにより、カメラ11の撮像方向をより低い乗客の顔の位置に向けることができる。以上説明したように、車両の高さ又は姿勢を制御していずれかのカメラの垂直画角の中心位置を乗客の顔の位置に合わせることで、車両が停車するまでの間に、いずれかのカメラの画角の中央位置で乗客の顔を撮像した顔画像データを取得することができる。
【0033】
[顔認証方法]
(第1の処理)
次に、
図4A及び
図4Bを参照して
図1に示す顔認証装置の第1の処理の一例を説明する。
図4のフローチャートに示す顔認証装置1の動作は、データセンタから配車の指示を受信すると同時に開始され、乗降扉の開放の可否が判断された時点で処理を終了する。
【0034】
ステップS10において、制御部60は通信部30が受信した乗客の乗車位置、身長、及び照合画像データを取得する。処理はステップS20に進み、制御部60は自車位置取得部20が計測した自車両の位置を取得する。処理はステップS30に進み、乗客検出部62は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達したか否かを判断する。具体的には、ステップS30において、距離計測部61は、車両に備わるナビゲーション機能から乗客の乗車位置までの経路を取得し、取得した経路における車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離を算出する。なお、距離計測部61は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までのルートを推定し、推定したルート上における車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離を算出してもよい。乗客検出部62は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達したと判断した場合(ステップS30でYES)、処理はステップS40に進む。乗客検出部62は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達していないと判断した場合(ステップS30でNO)、処理はステップS20に戻る。
【0035】
ステップS40において、乗客検出部62は、乗車位置に居る乗客を検出した場合(ステップS40でYES)、処理はステップS50に進む。ステップS40において、乗客検出部62は、乗車位置に居る乗客を検出できなかった場合(ステップS40でNO)、処理はステップS70に進む。具体的には、ステップS40において、乗客検出部62は、通信部30が受信した乗客の乗車位置及び乗客の身長を示す情報、及び物体検出部40が検出した物体の位置及び物体の大きさを示す情報を取得する。乗客検出部62は、物体の位置を示す情報に基づいて、乗客の乗車位置を中心とする所定領域内に居る人物を抽出し、物体の大きさを示す情報に基づいて、抽出した人物の身長を決定する。より詳細には、乗客検出部62は、物体の大きさを示す情報に含まれる物体の鉛直方向の長さ(高さ)を人物の身長(計測身長)として検出する。乗客検出部62は、抽出した人物のうち、取得身長から所定範囲内の身長(計測身長)を有する人物を乗客として検出する。所定領域は、例えば乗客の乗車位置から半径3m以内の領域である。ステップS50において、乗客検出部62は検出した乗客の身長を取得し、処理はステップS60に進む。
【0036】
ステップS60において、姿勢制御部64は、計測身長に基づいて撮像部10の撮像方向が乗客の顔へ向く車両の高さ又は姿勢を算出する。具体的には、姿勢制御部64は、複数のカメラ(11、12、13)のうち、いずれかのカメラの垂直画角の中心位置が計測身長から推定した乗客の顔の位置となる車両の高さ又は姿勢を算出する。ステップS70において、姿勢制御部64は、取得身長に基づいて撮像部10の撮像方向が乗客の顔へ向く車両の高さ又は姿勢を算出する。具体的には、姿勢制御部64は、複数のカメラ(11、12、13)のうち、いずれかのカメラの垂直画角の中心位置が取得身長から推定した乗客の顔の位置となる車両の高さ又は姿勢を算出する。処理はステップS80に進み、姿勢制御部64は、算出した車両の高さ又は姿勢における車両の最低地上高が所定地上高以上あると判断した場合(ステップS80でYES)、処理はステップS90に進む。姿勢制御部64は、算出した車両の高さ又は姿勢における車両の最低地上高が所定地上高未満であると判断した場合(ステップS80でNO)、処理は終了する。ステップS90において、姿勢制御部64は、ステップS60又はステップS70で算出された車両の高さ又は姿勢を車高調整コントローラに送信し、車両の高さ又は姿勢を制御する。処理はステップS100に進み、姿勢制御部64は、車両に備わる光センサから車外の明るさを示す情報を取得し、車外の明るさが所定の明るさ未満であると判断した場合(ステップS100でYES)、処理はステップS110に進む。ステップS100において、姿勢制御部64は、車外の明るさが所定の明るさ以上であると判断した場合(ステップS100でNO)、処理はステップS120に進む。ステップS110において、姿勢制御部64は光照射部50に照明灯の点灯を指示する信号を出力する。
【0037】
ステップS120において、姿勢制御部64は、車両の挙動が所定値(所定挙動)以上であると判断した場合(ステップS120でYES)、処理はステップS130に進む。姿勢制御部64は、車両の挙動が所定値未満であると判断した場合(ステップS120でNO)、処理はステップS140に進む。ステップS130において、姿勢制御部64は車両の高さ及び姿勢の制御を中断する。処理はステップS170に進み、姿勢制御部64は、車両の挙動が所定値未満となったと判断した場合(ステップS170でYES)、処理はステップS90に戻る。ステップS170において、車両の挙動が所定値未満となっていないと判断した場合(ステップS170でNO)、処理はステップS130に戻る。なお、所定値は、車内に居る乗客が不快に感じないロール方向、ピッチ方向、及び鉛直方向における加速度の許容限界値である。ステップS140において、顔検出部65は乗客の顔を撮像して乗客の顔画像データを取得し、処理はステップS150に進む。
【0038】
ステップS150において、認証判定部66は、乗客の顔画像データと照合画像データとが一致したと判断した場合(ステップS150でYES)、処理はステップS160に進む。認証判定部66は、乗客の顔画像データと照合画像データとが一致しないと判断した場合(ステップS150でNO)、処理は終了する。具体的には、認証判定部66は、複数のカメラ(11、12、13)のうち、少なくとも2つのカメラが取得した乗客の顔画像データに映る人物と照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、乗客が本人であると認証する。認証判定部66は、乗客の顔画像データ及び照合画像データに映る人物の顔から目、鼻、口、顔の輪郭などの顔の特徴が表れる部位を抽出し、抽出した各々の部位の一致率が所定一致率以上であるか否かを判断する。処理はステップS160に進み、認証判定部66は、車両に備わるインターフェイス又は乗降扉Dを制御するドアコントローラに乗降扉の開放を許可する信号を出力する。
【0039】
なお、車両が乗車位置に停車する前に乗客の認証(ステップS150)が終了するよう設定されている場合、乗客の顔画像データと照合画像データとが一致したと判断した場合(ステップS150でYES)、車両に停車を指示する信号を出力する。また、車両が乗車位置に停車する前に乗客の認証(ステップS150)が終了するよう設定されている場合、乗客の顔画像データと照合画像データとが一致しないと判断した場合(ステップS150でNO)、車両に停車を禁止する信号を出力する。
【0040】
(第2の処理)
次に、
図5を参照して、
図1に示す顔認証装置1の第2の処理の一例を説明する。
図5のフローチャートに示す顔認証装置1の動作は、データセンタから配車の指示を受信すると同時に開始され、取得した乗客の身長をデータセンタに送信した時点で処理を終了する。なお、
図5に示す顔認証装置1の処理は、乗客の情報に乗客の身長を示す情報が含まれていない場合に実行される。
【0041】
ステップS200において、距離計測部61は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離に基づいて、車両が乗客の乗車位置に停車しているか否かを判断する。距離計測部61は、車両が乗客の乗車位置に停車していると判断した場合(ステップS200でYES)、処理はステップS210に進む。距離計測部61は、車両が乗客の乗車位置に停車していないと判断した場合(ステップS200でNO)、処理はステップS200に戻る。ステップS210において、乗客検出部62は、物体の位置を示す情報に基づいて、乗客の乗車位置を中心とする所定領域内に居る人物を乗客として検出する。顔検出部65は、撮像部10を用いて乗客の顔を撮像して乗客の顔画像データを取得する。なお、取得した乗客の顔画像データは、車両の高さ又は姿勢を制御せずに取得されたものである。所定領域は、例えば乗客の乗車位置から半径3m以内の領域である。
【0042】
処理はステップS220に進み、認証判定部66は、乗客の顔画像データと照合画像データとが一致したと判断した場合(ステップS220でYES)、処理はステップS230に進む。認証判定部66は、乗客の顔画像データと照合画像データとが一致しないと判断した場合(ステップS220でNO)、処理は終了する。具体的には、認証判定部66は、複数のカメラ(11、12、13)のうち、少なくとも2つのカメラが取得した乗客の顔画像データに映る人物と照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、乗客が本人であると認証する。処理はステップS230に進み、乗客検出部62は乗客の身長を取得する。具体的には、乗客検出部62は、物体の大きさを示す情報から乗客に対応する人物の身長を取得する。処理はステップS240に進み、認証判定部66は、車両に備わるインターフェイス又は乗降扉を制御するドアコントローラに乗降扉の開放を許可する信号を出力する。処理はステップS250に進み、乗客検出部62は、通信部30を介して、乗客の身長をデータセンタに送信する。
【0043】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態によれば以下作用効果が得られる。
【0044】
顔認証装置1は、乗客の身長を示す情報を取得し、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、取得した乗客の身長に基づいて、撮像装置10の撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。顔認証装置1は、車両の高さ又は姿勢を制御した後に、撮像装置10を用いて乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、顔画像データに基づいて、乗客を認証する。これにより、顔認証装置1は、予め撮像装置10の撮像方向を乗客の顔へ向けておくことができ、撮像装置10の画角の中央部に乗客の顔が映る顔画像データを取得することができる。したがって、顔認証装置1は、迅速で正確な顔認証を行うことができる。顔認証装置1は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、乗車位置に居る、取得した乗客の身長から所定範囲内の身長を有する人物を乗客として検出し、検出した乗客の身長に基づいて、撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。これにより、顔認証装置1は、取得した乗客の身長に基づいて、乗車位置に居る乗客を検出することができる。したがって、顔認証装置1は、より精度良く撮像装置10の撮像方向を乗客の顔へ向けることができ、より正確な顔認証を行うことができる。
【0045】
顔認証装置1は、車両の現在位置から乗客の乗車位置までの距離が所定距離に達した時、取得した乗客の身長に基づいて、撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢の制御を開始する。顔認証装置1は、車両の高さ又は姿勢の制御を開始した後に乗客を検出した場合、検出した乗客の身長に基づいて、撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。これにより、顔認証装置1は、取得した乗客の身長に基づいて、早い段階から車両の高さ及び姿勢を制御することができるので、迅速に顔認証を行うことができる。さらに、顔認証装置1は、乗客を検出した場合、検出した乗客の実際の身長に基づいて、撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御するので、より正確な顔認証を行うことができる。顔認証装置1は、車両が乗車位置に停車するまでに、撮像方向が乗客の顔へ向くように車両の高さ又は姿勢を制御する。これにより、顔認証装置1は、遅くとも車両の停車と同時に顔認証を開始することができるので、乗車位置に停車した後に車両の高さ又は姿勢を制御する場合に対して、より迅速に顔認証を行うことができる。
【0046】
顔認証装置1は、車両の挙動が所定挙動以上と判断した場合、車両の高さ及び姿勢の制御を中断し、車両の挙動が所定挙動未満と判断した場合、車両の高さ又は姿勢の制御を再開する。これにより、顔認証装置1は、既に車両に乗車している乗客に対して不快な揺れが発生するのを防止しつつ、迅速に顔認証を行うことができる。顔認証装置1は、車両に備わる車高調整機構を制御して車両の高さ又は姿勢を制御する。これにより、顔認証装置1は、撮像装置10の撮像方向を乗客の顔へ向けることができる。顔認証装置1は、乗客の認証を車両が乗車位置に停車する前に終了する。これにより、顔認証装置1は、迅速な顔認証を行うことができ、車両の停車とともに乗客を乗車させることができる。顔認証装置1は、顔画像データに映る人物と照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、車両に停車を指示する信号を出力する。これにより、顔認証装置1は、乗客が本人であると判断できた場合のみ車両を停車させることができ、不要な停車を避けることができる。
【0047】
顔認証装置1は、撮像装置10を車両の前後方向に少なくとも2つ以上備え、少なくとも2つの撮像装置の各々が取得した顔画像データに映る人物と、照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、車両に停車を指示する信号を出力する。これにより、顔認証装置1は、より正確で迅速な顔認証を行うことができ、乗客が本人であると判断できた場合のみ車両を停車させることができる。したがって、不要な停車を避けることができる。顔認証装置1は、乗客の身長を示す情報を取得できなかった場合、乗車位置に居る人物を乗客として検出し、撮像装置10を用いて乗客の顔を撮像して顔画像データを取得し、乗客の顔画像が記録された照合画像データを取得する。顔認証装置1は、顔画像データに映る人物と照合画像データに映る人物が同一人物であると判断した場合、乗客の身長を取得する。これにより、顔認証装置1は、乗客の身長を取得することができ、次回以降に乗客を認証する際に、迅速で正確な顔認証を行うことができる。顔認証装置1は、車両の外部に光を照射する光照射部を備え、撮像を開始する際に、撮像方向に向けて光を照射する。これにより、顔認証装置1は、夜間の場合であっても顔画像データを精度良く取得することができ、正確な顔認証を行うことができる。
【0048】
(第2実施形態)
[顔認証装置の構成]
図6を参照して、第2実施形態に係る顔認証装置1の構成例を説明する。なお、第2実施形態に係る顔認証装置1は、第1実施形態に対して、重心点推定部67をさらに備える点で異なるが、その他の構成は共通する。よって、相違点についてのみ説明し、その他の共通する部分についての説明は省略する。重心点推定部67は、乗客の顔画像が記録された照合画像データを取得し、照合画像データから乗客の顔の輪郭の重心点と両目の重心点との第1の偏差を算出する。また、重心点推定部67は、取得した顔画像データのうち、少なくとも1つ以上の顔画像データから乗客の顔の輪郭の重心点と両目の重心点との第2の偏差を算出する。重心点推定部67は、第1の偏差と第2の偏差との差分が所定差分未満の顔画像データを抽出し、抽出した顔画像データを認証判定部66に出力する。
【0049】
[顔認証方法]
次に、
図7A及び
図7Bを参照して、
図6に示す顔認証装置1の処理の一例を説明する。なお、第2実施形態係る顔認証装置1の処理は、
図1に示す顔認証装置1の処理に対して、ステップS310~ステップS330の処理を更に備える点で相違するが、その他の処理は同じである。よって、相違点についてのみ説明し、その他の共通する処理についての説明は省略する。ステップS310において、重心点推定部67は、照合画像データから乗客の顔の輪郭の重心点と両目の重心点との第1の偏差を算出する。両目の重心点とは、例えば左右の目の輪郭の中心位置を結ぶ線分の中点である。顔の輪郭の重心点と両目の重心点との偏差は、顔の輪郭の重心点と両目の重心点との距離である。処理はステップS320に進み、重心点推定部67は、少なくとも1つ以上の顔画像データから顔の輪郭の重心点と両目の重心点との第2の偏差を算出する。処理はステップS330に進み、重心点推定部67は、第1の偏差と第2の偏差との差分が所定差分未満の顔画像データを抽出し、認証判定部66に出力する。
【0050】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、第1実施形態での作用効果に加え、以下作用効果が得られる。顔認証装置1は、乗客の顔画像が記録された照合画像データを取得し、照合画像データから乗客の顔の輪郭の重心点と両目の重心点との第1の偏差を算出し、少なくとも1つ以上の顔画像データから顔の輪郭の重心点と両目の重心点との第2の偏差を算出する。顔認証装置1は、第1の偏差と第2の偏差との差分が所定差分未満の顔画像データを抽出し、抽出した顔画像データと照合画像データとに基づいて、乗客を認証する。これにより、顔認証装置1は、顔画像データに映る人物が乗客でない場合、乗客の認証処理を実行する前に当該顔画像データを排除することができ、認証にかかる処理負荷を軽減することができる。したがって、より迅速で正確な顔認証を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 顔認証装置
10 撮像装置(撮像部)
20 自車位置取得部
30 通信部
50 光照射部
60 制御部