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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166901
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077756
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】501486741
【氏名又は名称】株式会社森久エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】森 一生
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022DA01
2B022DA05
(57)【要約】
【課題】光ムラの発生を抑制すると共に効率的に光強度を上げる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】植物栽培装置1は、植物2が栽培される栽培面4と、栽培面4の上方に位置する天面9と、天面9に設けられ、植物2に向けて光を照射するLED光源13を有する照明機器10と、栽培面4に設けられ、LED光源13を通る縦断面において、LED光源13の位置を焦点とする放物線を包含する曲面状に形成され、LED光源13から放射された光を平行光として天面9側に反射させる栽培面側反射部6と、天面9に設けられ、栽培面側反射部6により反射された平行光を、栽培面側に反射させる天面側反射部14と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が栽培される栽培面と、
該栽培面の上方に位置する天面と、
該天面に設けられ、前記植物に向けて光を照射するLED光源を有する照明機器と、
前記栽培面に設けられ、前記LED光源を通る縦断面において、前記LED光源の位置を焦点とする放物線を包含する曲面状に形成され、前記LED光源から放射された光を平行光として前記天面側に反射させる栽培面側反射部と、
前記天面に設けられ、前記栽培面側反射部により反射された前記平行光を前記栽培面側に反射させる天面側反射部と、を備えることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記天面側反射部は、前記栽培面側反射部により反射された前記平行光を、所定の位置が焦点となるように収束させる凹曲面を有することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記天面側反射部は、前記天面側に向けて反射された光を、前記栽培面側に拡散させる凸曲面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記天面側反射部は、前記天面側に向けて反射された光を、前記栽培面側に反射させる平面を有することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記天面側反射部は曲面を有するように変形可能であり、
前記曲面の曲率が変わるように前記天面側反射部を変形させる曲率変更機構を有することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記LED光源は120度以上の半値角を有することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物工場で使用される植物栽培装置に係り、特に、LED光源を用いた照明機器を備える植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場等の施設を用いた栽培では、照明機器を用いた植物栽培装置が利用されている。植物栽培装置は、例えば蛍光管等の人工光だけで植物を育成する装置、若しくは、日中の日照不足を人工光により補うか意識的に日照時間を延ばすことにより植物の育成を制御する装置である。従来の植物栽培装置に取り付けられた照明機器の多くでは蛍光管が使用され、蛍光管の上部に笠を被せて植物栽培装置の棚や柱に取り付けられていた(例えば、特許文献1参照)。また、近年では、照明機器の光源として蛍光管からLED光源へ移行している。
【0003】
LED光源を用いた照明装置を備える植物栽培装置101を図1(a)に示す。LED光源113は放射する光に指向性があり、所定の半値角θ(指向角とも呼ばれる)で一定の範囲(照射範囲R)で光を当てる構造となっている。そのため、図1(a)に示すように、LED光源113をその放射方向が栽培水槽103の植物102に向くように配置すると、栽培空間や床面に大きな光ムラが生じていた。すなわち、照射範囲R内に一部の植物102が含まれず、植物102の生長にムラが生じていた。
【0004】
従来、この光ムラを解消するため、LED光源113の数を増やして、照射範囲Rを増やすことが行われていた。しかしながら、LED光源113の数を増やすと、植物工場のイニシャルコストが高くなると共に、消費電力も増大しランニングコストも高くなるという課題があった。さらに、LED光源113を発光させる基板や電源の発熱量も大きくなるため、発生した熱量を除去するために空調の負荷も増大していた。
【0005】
また、光ムラを解消するために別のアプローチとして、LED光源113の半値角θを拡大することも試みられている。図1(b)は、の半値角θを拡大したLED光源113aを用いた場合の光の照射範囲Raを示している。図1(b)に示すように、照射範囲Raが広がるため、植物栽培装置101aの縦断面における栽培空間での光ムラは減少し、いずれの植物102にも光が照射されるようになる。しかしながら、半値角θを拡大したことで栽培面における単位面積当たりの照度が下がり、植物102の生育が遅くなったり品質が下がったりする影響があった。一定の光強度を得るためにはLED光源113aの数量を増やす必要があり、イニシャルコストやランニングコストが高くなることから課題の解決とはならなかった。
【0006】
また、野菜等の植物は、毎日生長するため草丈や形状が変化することから、照明環境も変化する。そのため、植物の生長に応じて場合分けを行いながら、照明環境を調整する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-182998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、光ムラの発生を抑制すると共に効率的に光強度を上げる植物栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、本発明の植物栽培装置によれば、植物が栽培される栽培面と、該栽培面の上方に位置する天面と、該天面に設けられ、前記植物に向けて光を照射するLED光源を有する照明機器と、前記栽培面に設けられ、前記LED光源を通る縦断面において、前記LED光源の位置を焦点とする放物線を包含する曲面状に形成され、前記LED光源から放射された光を平行光として前記天面側に反射させる栽培面側反射部と、前記天面に設けられ、前記栽培面側反射部により反射された前記平行光を、前記栽培面側に反射させる天面側反射部と、を備えることにより解決される。
【0010】
上記のように構成された本発明の植物栽培装置は、LED光源から照射された光を、栽培面側反射部により平行光として反射し、平行光を天面に設けられた天面側反射部(凹曲面、凸曲面、平面を含む)により、栽培面側に反射する。それにより、照度が低くなる部分にも光を当てることができ、光ムラの発生を抑制することができる。
また、植物(野菜)に到達せず、天面、側面、栽培面(床面)に達した反射光を再利用するため、効率的に光強度を上げることができる。
また、LED光源及び天面側反射部により植物の葉の表面に、栽培面側反射部により植物の葉の裏面に光が当たるため、植物の生長を促すことができる。
また、栽培面側反射部及び天面側反射部により、植物の栽培空間から外側に光が漏らすことがなく、最小のLED光源の数量で最大の照明効果を上げることができる。LED光源の数を増やすことなく光強度が上がり、イニシャルコストやランニングコストの増加を抑制することができる。植物の栽培空間において光ムラの発生が抑制され効率的な照明をすることが可能になる。
【0011】
上記の植物栽培装置において好適な構成を述べると、前記天面側反射部は、前記栽培面側反射部により反射された前記平行光を所定の位置が焦点となるように収束させる凹曲面部を有するとよい。
それにより、例えばLED光源の光が直接照射されず、照度が低くなる部分にも光を当てることができ、光ムラの発生をより抑制することができる。
【0012】
また、上記の植物栽培装置において好適な構成を述べると、前記天面側反射部は、前記天面側に向けて反射された光を、前記栽培面側に拡散させる凸曲面を有するとよい。
天面側反射部の凸曲面部により、例えば植物の葉により天面側に向けて反射された光が拡散されるため、光ムラの発生を抑制することができる。
【0013】
また、前記天面側反射部は、前記天面側に向けて反射された光を、前記栽培面側に反射させる平面を有するとよい。
天面側反射部の平面により、例えば植物の葉により天面側に向けて反射された光が拡散されるため、光ムラの発生を抑制することができる。
【0014】
また、上記の栽培装置において好適な構成を述べると、前記天面側反射部は曲面を有するように変形可能であり、前記曲面の曲率が変わるように前記天面側反射部を変形させる曲率変更機構を有するとよい。
曲率変更機構により天面側反射部の曲面の曲率を変更することで、反射光の焦点の位置を変更して収束させたり、反射光を拡散させたりすることができる。植物の草丈に合わせて照明することができ、効率的な植物栽培を行うことができる。
【0015】
また、上記の植物栽培装置に関して好適な構成を述べると、前記LED光源は、120度以上の半値角を有するとよい。
植物が充分生長すると、LED光源と植物の頂点の距離が近づき、植物の株同士が過密状態で栽培され栽培面からの反射光が略無くなる場合がある。このとき、120度以上の半値角を有するLED光源を用いることで、植物との距離が近づいた場合でも陰となる部分が小さくなり光ムラを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の植物栽培装置によれば、光ムラの発生を抑制すると共に、植物(例えば野菜)に到達せず天面、側面及び床面(栽培面)に達した反射光を再利用できるため、効率的に光強度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来のLED光源を有する植物栽培装置を示す図で、(a)は通常の半値角θを有するLED光源を用いた場合の照射範囲を示す図、(b)は拡大された半値角θを有するLED光源を用いた場合の照射範囲を示す図である。
図2】本実施形態の植物栽培装置の構成を示す構成図であり、植物の生長初期段階を示す図である。
図3】栽培パネルに設けられる栽培面側反射部の形状を示す説明図である。
図4】天面に設けられる天面側反射部の形状を示す説明図である。
図5】植物の生長中期段階における天面側反射部の形状と、天面側反射部による照射領域を示す図である。
図6】植物の生長後期段階における照明環境を示す図である。
図7】植物の生長後期段階における別の照明環境を示す図で、天面側反射部が平面を有する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る植物栽培装置1について、図2図7を用いてその構成を説明する。なお、以下の実施形態において同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付して示し、理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
【0019】
また、本実施形態では、図2に示すように、植物栽培装置1において、照明機器10が取り付けられる天面側を上方(上側)とし、その反対方向を下方(下側)とする。また、植物栽培装置1の上下方向を高さ方向と称し、横方向を幅方向と称する場合がある。
【0020】
本実施形態の植物栽培装置1は、植物工場において水耕により植物2を栽培するための装置であり、栽培水槽3と、栽培水槽3の上方に位置する天面9に設けられた照明機器10とから構成されている。栽培水槽3内には水耕養液5が満たされており、栽培面としての栽培パネル4が水耕養液5上を浮遊移動可能になっている。照明機器10は、栽培水槽3を浮遊する栽培パネル4及び植物2を照明するように天面9に付設されている。
【0021】
<栽培パネル4>
栽培パネル4は、複数の苗が一定の間隔(株間ピッチ)で植えられると共に、生長した植物2を支持する部材である。栽培パネル4は、植物2の生長に合わせて栽培パネル4ごと交換するようになっている。栽培パネル4は水耕養液5に浮遊するように例えば発泡性の材料を用いて作製されるが、中空樹脂、木材等から作製されてもよい。
栽培パネル4の上面には、照明機器10から放射される光を反射する栽培面側反射部6が設けられている。栽培面側反射部6の詳細については後述する。
【0022】
<照明機器10>
照明機器10について説明する。植物工場においては、天候不順による植物2の育成のばらつきを抑制するために、人工光を有する照明機器10を用いて植物2が栽培されている。近年では、人工光として蛍光管の代わりにLED光源13が利用されるようになった。照明機器10は複数の照明ユニット11から構成され、本実施形態の照明機器10では、2つの照明ユニット11が平行に並べて配置されている。各照明ユニット11は、直線状に並べて配置された複数のLED光源13と、複数のLED光源13が実装された細長のLED基板12と、から構成されている。また、LED光源13の照射方向は下方に向くようにLED基板12に取り付けられている。また、2つの照明ユニット11は、支持部材17により支持されており、一体的に天面9に取り付け、取り外しが可能になっている。
【0023】
図2では2本の照明ユニット11が示されているが、照明ユニット11の数は一例であり、栽培水槽3の幅にあわせて1本でもよく、また、3本以上設けられてもよい。
隣り合う照明ユニット11の間には、天面側反射部14が設けられている。天面側反射部14の詳細については後述する。
なお、植物栽培装置1の側部には、天面9から下方に延びる不図示の側壁が設けられており、照明機器10からの光が外に漏れないようになっている。
【0024】
<栽培面側反射部6>
栽培面側反射部6は、上述したように栽培パネル4の上面に設けられている。栽培面側反射部6の上面は高い光反射率を有する反射面であり、照明機器10からの光を反射して植物2に対して下方から光を当てるよう構成されている。栽培面側反射部6は、例えば金属製又は高い光反射率を有する樹脂製の板材により作製される。
【0025】
栽培面側反射部6は、図3に示すように、LED光源13を含む縦断面、すなわち垂直な断面において放物線(二次曲線)を包含する曲面状の反射面を有している。
反射面の放物線は、LED光源13が焦点になるよう設定されている。この放物線は、幅方向の大きさをx、高さ方向の大きさをy、栽培パネル4の上面からLED光源13までの高さをpとすると、以下の式で表される放物線により定められる。
=4py …(式1)
栽培面側反射部6の反射面を式1に基づく放物線で形成することにより、LED光源13から放射された光(図2図3で実線の矢印で示す)は、栽培面側反射部6の反射面により、平行光(破線の矢印で示す)として上方向に植物2に向けて反射される。植物2に当たらない平行光は天面9に設けられた天面側反射部14に到達する。
【0026】
<天面側反射部14>
天面側反射部14は、図2及び図4に示すように、隣り合う照明ユニット11の間、より詳しくはLED光源13の間に設けられており、栽培面側反射部6により反射された平行光(破線の矢印で示す)を、植物2に向けて反射するよう構成されている。また、天面側反射部14は金属製又は高い光反射率を有する樹脂により作製される。
また、天面側反射部14は、例えば図5に示すように曲率変更機構20を用いることで、曲面を有するように変形させることができる。
【0027】
天面側反射部14は、図4に示すように、所定の曲率半径rを有する凹曲面14a(曲面の一例)を有しており、天面側反射部14が受けた平行光が反射され、その反射光(図2及び図4で一点鎖線の矢印で示す)が焦点15に収束されるように構成されている。この場合の焦点距離fは、曲率半径rにより以下の式で表される。
f=r/2 …(式2)
【0028】
そして、図2に示すように、栽培パネル4の栽培面から天面側反射部14(より詳しくは凹曲面14a)の頂部までの高さをH(mm)とし、植物2の根本2aの位置に焦点15を設定する場合、焦点距離fが高さHとなるため、凹曲面14aの曲率半径rを以下のように求めることができる。
r=2×H(mm) …(式3)
また、曲率半径rの曲率kは1/rである。そして、栽培パネル4の上面から天面側反射部14の頂部までの高さHが350(mm)である場合、曲率半径rは700mmとなる。
【0029】
栽培面側反射部6により反射された平行光は、天面側反射部14により焦点15に向けて反射され、図2に示す照射領域16に収束するようになる。そのため、従来はLED光源13からの光が当たらなかった部分にも光が当たるようになり、光ムラを抑制することができる。
栽培パネル4に向けて照射された光を反射して、天面9側に設けられた天面側反射部14の凹曲面14aを用いて集光し植物2に再度反射していることから、LED光源13から放射された光のロスを減らすことができる。そのため、LED光源13を増やすことなく光の強度を高めることができる。ランニングコストもかからず、発熱量も抑えられるため空調の負荷も軽減される。
【0030】
栽培面側反射部6及び天面側反射部14の反射面には高反射材が貼り付けられるとよい。高反射材として、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、コバルトなどがある。また、高反射材は、高反射樹脂を積層した高反射樹脂積層板であってもよい。高反射樹脂として例えば酸化チタン等の白色顔料を含む樹脂が挙げられる。また、植物栽培装置1の側壁にも高反射材が貼り付けられてもよい。
【0031】
<曲率変更機構20>
植物2は生長するに従い、その頂部が照明ユニット11に近付くようになる。そのため、植物2の生長に合わせて、天面側反射部14により照射される照射領域16の位置が変更できるとよい。本実施形態の植物栽培装置1の天面側反射部14は、曲面を有するように変形可能である。また、植物栽培装置1は、天面側反射部14を変形させ、天面側反射部14の曲面の曲率kを変える曲率変更機構20を備えている。
【0032】
曲率変更機構20は、上下移動可能なシリンダ21を備えている。シリンダ21の下端は天面側反射部14の頂部に接続されており、天面側反射部14の両端部はその高さが維持されるようにLED基板12の側部に取り付けられている。そのため、曲率変更機構20は、シリンダ21を上下移動させることで、天面側反射部14の曲率半径r(曲率k)を変更することができる。例えば、図5に示すように、シリンダ21を上げることで、天面側反射部14の中央部が持ち上げられ曲率半径rが小さくなることから、焦点距離fも小さくなり焦点15の位置が上昇する。それにより、植物2の生長に合わせて照射領域16の位置を設定することができる。
【0033】
なお、シリンダ21を用いた曲率変更機構20は一例であり、他の手段を用いて天面側反射部14の曲率kを変更してもよい。例えば、天面側反射部14が左右方向から押圧されることにより、天面側反射部14の幅が縮まり、頂部が持ち上げることにより曲率kが変更されてもよい。
また、例えば、曲率kが異なる複数の天面側反射部14を予め準備しておき、植物2の生長に合わせて最適な照射領域16が提供できるように天面側反射部14を交換してもよい。
【0034】
また、植物2が十分に生長して収穫直前となった生長後期では、図6に示すように、LED光源13と植物2の頂点との距離が近づき、株同士も過密状態となる。そのため、栽培面に設けられた栽培面側反射部6からの反射光が期待できなくなる場合がある。
そのため、図6に示すように、天面側反射部14が凸曲面14bを有するよう天面側反射部14を変形させ、植物2の葉の表面から反射された光成分を拡散するようにしてもよい。また、図7に示すように、天面側反射部14が平面14cを有するよう天面側反射部14を変形させ、光成分を拡散するようにしてもよい。
【0035】
<半値角θの広いLED光源13>
植物2が十分に生長して収穫直前となった生長後期では、LED光源13の半値角θが小さい、例えば約60度である場合、植物2の栽培空間にできる影の面積が拡大する。そのため、本実施形態では、図6に示すように、約120度の半値角θを有するLED光源13が使用されている。半値角θが通常のものより広いLED光源を用いることで、植物2との距離が近い場合でも、陰となる部分が小さくなり植物の上部において均等な照明を行うことができ、植物2の生長による影響が受けにくくなる。
また、植物2の葉の表面から反射された光成分を、天面9に設けられた天面側反射部14で反射することにより、再度照明することができ、光のロスを防ぐことができる。
【0036】
LED光源13の半値角θと光源距離とが栽培空間の光ムラに与える影響について図6を用いて説明する。
LED光源13を用いて照明する場合、LED光源13には指向性があることから、植物2が生長すると、照射範囲外となる陰の領域(陰領域SA)ができるようになる。この陰領域SAにおける、LED光源13からの距離Dが大きいほど陰の部分が多いこととなる。
例えば、LED光源13から栽培面までの距離Dが350mmであり、隣り合うLED光源13の間の距離Wが273mm(6灯式)、328mm(5灯式)、410mm(4灯式)である場合、陰領域SAの高さ方向の距離Dは表1に示すようになる。
なお、6灯式とは、同一の幅(1640mm)を有する栽培水槽3に6本の照明ユニット11が均等な間隔(272mm)で配置されていること示している。
【0037】
<表1>
【0038】
半値角θが拡大すると陰領域SAの距離Dは小さくなる。また、LED光源13間の距離Wが狭くなる場合でも陰領域SAの距離Dは小さくなることが分かる。半値角θを120度以上とすることにより陰となる部分が小さくなり、植物2の上部において均等な照明を行うことができる。
【0039】
本実施形態の植物栽培装置1による効果について以下に述べる。
<植物生長初期~中期>
天面9に設けられたLED光源13及び天面側反射部14と、栽培パネル4に設けられた栽培面側反射部6とにより、植物2の葉の表面、裏面共に光を当てることが可能となる。
また、栽培面側反射部6及び天面側反射部14の高反射面により、植物2の栽培空間から外側に光が漏れない構造であるため、最小の光源の数量で最大の照明効果を上げることができる。
また、曲率変更機構20により天面側反射部14の曲率半径rを変えることで焦点15の位置を調節できるため、植物2の草丈に合わせて照明することができ、効率的な植物栽培を行うことができる。
<植物生長後期>
半値角θの大きいLED光源13を採用することで、栽培パネル4の栽培面側反射部6から反射光がない生長後期においても植物2の生長に影響を及ぼす栽培空間上の光ムラを抑制することができる。
また、天面側反射部14が凸曲面14b又は平面14cを有するように、天面側反射部14を形成することで、植物2の葉の表面から反射された光成分を拡散させることができ再度照明することができる。
【0040】
以上、図を用いて本発明の実施形態である植物栽培装置1について説明した。ただし、上記実施形態は、本発明の理解を容易に理解するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。例えば、植物栽培装置1は、水耕により栽培される植物2に対して光を照射する装置を例に説明したが、植物栽培装置1は、地面の土壌により栽培される植物に対して利用されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 植物栽培装置
2 植物
3 栽培水槽
4 栽培パネル(栽培面)
5 水耕養液
6 栽培面側反射部
9 天面
10 照明機器
11 照明ユニット
12 LED基板
13 LED光源
14 天面側反射部
14a 凹曲面
14b 凸曲面
14c 平面
15 焦点
16 照射領域
17 支持部材
20 曲率変更機構
21 シリンダ
SA 陰領域
r 曲率半径
k 曲率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7