(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016691
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20230126BHJP
C08G 18/30 20060101ALI20230126BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230126BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20230126BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20230126BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20230126BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/78 037
C08G18/78 006
C08G18/79 020
C08G18/73
C08G18/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089724
(22)【出願日】2022-06-01
(62)【分割の表示】P 2021121054の分割
【原出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥泉 寛女
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一弥
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
4J034CB04
4J034CB05
4J034CC03
4J034CC12
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4J034CC26
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4J034CC45
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4J034CC61
4J034CC62
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4J040JB01
4J040JB04
4J040LA06
4J040LA08
(57)【要約】
【課題】耐光性に優れ、かつ、作業中の臭気が少ないことを前提としながら、耐熱クリープ性、加工性、経時安定性、及び接着強度に優れ、合成擬革用途とした場合にレザーの風合い及び柔軟性に優れた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】少なくとも脂肪族ジイソシアネート変性体を含むポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応から得られ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤であって、前記ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基の平均官能基数が2.0~3.0であり、前記ポリオール成分が、3官能以上の多官能ポリオールを前記ポリオール成分中に1~8質量%含む、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも脂肪族ジイソシアネート変性体を含むポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応から得られ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤であって、
前記ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基の平均官能基数が2.0~3.0であり、
前記ポリオール成分が、3官能以上の多官能ポリオールを前記ポリオール成分中に1~8質量%含む、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項2】
ゲル分率が85%以上である請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記脂肪族ジイソシアネート変性体がアロファネート型ジイソシアネートを含む請求項1又は2に記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記脂肪族ジイソシアネート変性体がジオールのジイソシアネートアダクト体を含む請求項1~3に記載のいずれか1項に記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記脂肪族ジイソシアネート変性体がヌレート型ポリイソシアネートを含む請求項1~4に記載のいずれか1項に記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項6】
前記ヌレート型ポリイソシアネートを、前記ポリイソシアネート成分中10~37モル%含む請求項5に記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項7】
硬化後の熱軟化点が175℃以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項8】
硬化後の25℃における破断伸度が300~1,000%である請求項1~7のいずれか1項に記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は常温固体の無溶剤接着剤であり、加熱溶融して基材に塗工し、他の基材を貼り合わせた後、湿気により硬化する接着剤である。溶剤を用いないため環境に配慮した接着剤であるが、耐光性のある無黄変型のポリウレタンホットメルト樹脂は、接着剤に残留する原料イソシアネートに起因する臭気の問題がある。
【0003】
この問題を解決するため、特許文献1は、特定の製造方法で製造されたアロファネート基含有ポリイソシアネートを用いることにより、貯蔵安定性や耐候性等が良好であり、特に接着作業時の臭気の少ない無溶剤系湿気硬化接着剤を開示している。
【0004】
この他に、特許文献2は、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、および、それらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のポリイソシアネート成分と酸化チタンを含有している一液硬化型無溶剤接着剤を開示する。
【0005】
また、特許文献3は、残存モノマー含有量の低減が図られ且つ硬化物の発泡が抑止された湿気硬化型ポリウレタンプレポリマーの製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-201460号公報
【特許文献2】特開2009-280735号公報
【特許文献3】特許第5853295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、耐熱クリープ性が十分ではなく、主に合成擬革用途の接着剤としては性能が不十分であった。このように、耐熱クリープ性が乏しいと、例えば、靴の後加工時においては、ソールとアッパーとの接着を荷重3kg、150~160℃の条件で、衣類の加工時には、シームテープでの貼り合わせを160~170℃の条件などで行う必要があることから、合皮が剥がれやすい問題がある。
【0008】
また、特許文献2では、破断伸度が比較的小さい傾向があり、やはり合成擬革用途の接着剤として用いた場合に、レザーの風合いはもとより、耐寒屈曲性や柔軟性に劣ることがあった。
さらに、特許文献3では、耐熱クリープ性のみならず、加工性(例えば、初期固化性)が低いという問題があった。
【0009】
従って、本発明は、耐光性に優れ、かつ、作業中の臭気が少ないことを前提としながら、耐熱クリープ性、加工性、経時安定性、及び接着強度に優れ、合成擬革用途とした場合にレザーの風合い及び柔軟性に優れた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1] 少なくとも脂肪族ジイソシアネート変性体を含むポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応から得られ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤であって、前記ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基の平均官能基数が2.0~3.0であり、前記ポリオール成分が、3官能以上の多官能ポリオールを前記ポリオール成分中に1~8質量%含む、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
[2] ゲル分率が85%以上である[1]記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
[3] 前記脂肪族ジイソシアネート変性体がアロファネート型ジイソシアネートを含む[1]又は[2]に記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
[4] 前記脂肪族ジイソシアネート変性体がジオールのジイソシアネートアダクト体を含む[1]~[3]に記載のいずれかに記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
[5] 前記脂肪族ジイソシアネート変性体がヌレート型ポリイソシアネートを含む[1]~[4]に記載のいずれかに記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
[6] 前記ヌレート型ポリイソシアネートを、前記ポリイソシアネート成分中10~37モル%含む[5]に記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
[7] 硬化後の熱軟化点が175℃以上である[1]~[6]のいずれかに記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
[8] 硬化後の25℃における破断伸度が300~1,000%である[1]~[7]のいずれかに記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐光性に優れ、かつ、作業中の臭気が少ないことを前提としながら、耐熱クリープ性、加工性(初期固化性)、経時安定性、及び接着強度に優れ、特に合成擬革用途とした場合にレザーの風合い及び柔軟性に優れた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例の評価で使用した試料の形態を説明する模式的な説明図である。
【
図2】実施例の評価で使用したギアオーブンの形態を説明する説明である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態(本実施形態)に係る湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、少なくとも脂肪族ジイソシアネート変性体を含むポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応から得られ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む。
ここで、上記ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基の平均官能基数が2.0~3.0であり、上記ポリオール成分は、3官能以上の多官能ポリオールを当該ポリオール成分中に1~8質量%含む。
当該ウレタンプレポリマーは、上記ポリイソシアネート成分と上記ポリオール成分とが反応した反応生成物であり、当該反応の際に他の成分が含まれていてもよい。
【0014】
本実施形態では、後述するような特定の脂肪族ジイソシアネート変性体を使用することで、耐光性に優れ、作業中の臭気が削減でき、かつ3官能以上の多官能ポリオールの導入により、レザーの風合いを保持しつつ、優れた種々の特性(耐熱クリープ性、加工性、経時安定性、柔軟性、耐寒屈曲性及び接着強度等)を有する無黄変無臭型の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を提供できることを見出した。
以下、本実施形態に係る湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤について詳細に説明する。
【0015】
(ポリイソシアネート成分)
既述のとおり、本実施形態では、ポリイソシアネート成分として、脂肪族ジイソシアネート変性体を含む。脂肪族ジイソシアネート変性体を含むことで、良好な耐光性と臭気低減を図ることができる。
【0016】
本実施形態における脂肪族ジイソシアネート変性体とは、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体(ヌレート型ポリイソシアネート:例えば、旭化成(株)製「TKA100」、三井化学(株)製「D376N」などをさす)、脂肪族ジイソシアネートのアロファネート体(アロファネート型ジイソシアネート:例えば、旭化成(株)製「A201H」、東ソー(株)製「C-2770」などをさす)、脂肪族ジイソシアネートのビウレット体(ビウレット型ジイソシアネート)、又は、脂肪族ジイソシアネートとポリオールとのアダクト体(アダクト型ジイソシアネート:例えば、旭化成(株)製「D201」などのジオールのジイソシアネートアダクト体をさす)を意味する。
本実施形態では、脂肪族ジイソシアネート変性体として、アロファネート型ジイソシアネート単独、又は少なくともアロファネート型ジイソシアネートを含むことが実用的な観点から好ましい。
【0017】
脂肪族ジイソシアネート変性体の原料成分である脂肪族ジイソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
なお、本発明の効果に問題ない範囲で、変性していないポリイソシアネートを併用できる。
【0018】
ここで、イソシアヌレート体は、ジイソシアネートの3量体である。アロファネート体は、ジイソシアネートとアルコールとの反応により形成されたウレタン基にジイソシアネートを付加させることより得られる。ビュレット体は、ジイソシアネートと水またはアミンとの反応により形成されたウレア基にジイソシアネートを付加させることにより得られる。アダクト体は、ジイソアネートを多価アルコールに付加させることにより得られる。
【0019】
本実施形態において、ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基の平均官能基数は2.0~3.0であり、2.0~2.8であることが好ましく、2.0~2.4であることがより好ましい。平均官能基数は2.0未満では硬化後に十分な皮膜物性が発現しない、3.0を超えると、経時安定性が劣ったり、合成擬革用途とした場合にレザーの風合い、耐寒屈曲性若しくは柔軟性が劣ったりする。
【0020】
上記ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基の平均官能基数とは、1種類の脂肪族ジイソシアネート変性体を用いた場合はそのイソシアネート官能基数を表し、複数の脂肪族ジイソシアネート変性体を用いた場合は各脂肪族ジイソシアネート変性体の官能基数にポリイソシアネート成分中のモル比率(モル%)を乗じた数の合計を表す。
例えば、2官能の脂肪族ジイソシアネート変性体50モル%と3官能の脂肪族ジイソシアネート変性体50モル%を組み合わせた場合、平均官能基数は、
2×0.5+3×0.5=2.5となる。なお、計算結果が小数第二位以下の数値を含む場合、小数第二位を四捨五入する。
【0021】
本実施形態に係る脂肪族ジイソシアネート変性体の好ましい態様としては、脂肪族ジイソシアネート変性体に起因する効果をより確実に発揮させる観点から、下記のいずれかの組み合わせを含むことがより好ましい。
(1)アロファネート型ジイソシアネートとアダクト型ジイソシアネート(特に、ジオールのジイソシアネートアダクト体)との組み合わせ
(2)2種以上の構造の異なるアロファネート型ジイソシアネートの組み合わせ
(3)アロファネート型ジイソシアネート及び/又はアダクト型ジイソシアネート(特に、ジオールのジイソシアネートアダクト体)と、ヌレート型ポリイソシアネートとの組み合わせ
【0022】
上記の(1)と(2)の組み合わせの場合、すなわち、アロファネート型ジイソシアネート(例えば、既述の「A201H」、「C-2770」など)とアダクト型ジイソシアネート(特に、ジオールのジイソシアネートアダクト体、例えば、既述の「D201」など)とを組み合わせる場合、あるいは、2種以上の構造の異なるアロファネート型ジイソシアネートを含む(例えば、既述の「A201H」と「C-2770」とを組み合わせる)場合には、30:70~70:30(ポリイソシアネート成分の配合比率=モル比)が好ましく、より好ましくは、60:40~40:60(モル比)である。
【0023】
また、上記の(3)の組み合わせの場合、すなわち、アロファネート型ジイソシアネート及び/又はアダクト型ジイソシアネート(特に、ジオールのジイソシアネートアダクト体)に、ヌレート型ポリイソシアネート(例えば、既述の「TKA100」、「D376N」など)を組み合わせる場合は、ヌレート型ポリイソシアネートは、全ポリイソシアネート成分中10~37モル%とすることが好ましく、15~32モル%とすることがより好ましい。ヌレート型ポリイソシアネートの配合比率が10~37モル%であることで、所望のレザー風合いや耐寒屈曲性が得られやすくなる。
なお、ヌレート型ポリイソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートや1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを用いたものが挙げられるが、低粘度で良好なハンドリング性や加工適性を得られること、架橋密度が上がり高耐久性が得られることを考慮すると、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートのヌレート型ポリイソシアネートが好ましい。
【0024】
なお、本発明の効果に問題ない範囲で変性していないポリイソシアネートを併用できるが、全ポリイソシアネート成分中、脂肪族ジイソシアネート変性体の割合は、95モル%以上であることが好ましく、98モル%であることがより好ましい。95モル%以上であることで、脂肪族ジイソシアネート変性体に起因する効果(特に、臭気低減効果)をより確実に発揮させることができる。
【0025】
(ポリオール成分)
既述のとおりポリオール成分は、3官能以上の多官能ポリオールを当該ポリオール成分中に1~8質量%含む。多官能ポリオールが1質量%未満では、合成擬革用途の接着剤として必要とされる十分な耐熱クリープ性が得られず、8質量%を超えると、経時安定性や、レザーの風合い及び柔軟性が低下してしまう。多官能ポリオールは、1~5質量%であることが好ましく、2~4質量%であることがより好ましい。
このように、前述したような脂肪族ジイソシアネート変性体を適切な比率で配合したポリイソシアネート成分の組み合わせ(1)~(3)のいずれかに、ポリオール成分として3官能以上のものを特定量配合することで、熱軟化点が向上する作用が良好に発現する結果、耐熱クリープ性と風合い(耐寒屈曲性)とを兼ね備えた接着剤を得ることができる。
【0026】
3官能以上の多官能ポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ポリエチレントリオール、ポリプロピレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシエチレンプロピレントリオール等が挙げられる。
なかでも、良好なゲル分率若しくは耐熱クリープ性の観点から、トリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレントリオールが好ましく、更に好ましくはトリメチロールプロパンである。
【0027】
良好な耐熱クリープ性、ゲル分率などの観点から、多官能ポリオールの数平均分子量は100~1000であることが好ましく、100~200であることがより好ましい。
数平均分子量が100~1000であることで良好な合成安定性を維持し、期待した効果が得られやすくなる。
【0028】
3官能以上の多官能ポリオール以外のポリオールとしてはポリウレタンに使用される2官能ポリオールであり、例としてポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリメタクリレートジオール、ポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
なお2官能ポリオールとしては、数平均分子量が500~6000であることが好ましく、700~4000であることがより好ましく、例えば、以下のものが挙げられる。
【0029】
(1)ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などが挙げられる。
【0030】
(2)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)および複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)のいずれかを重合または共重合して得られるものが挙げられる。具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールなどが挙げられる。
【0031】
(3)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)、及び芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸など)の少なくともいずれかと、低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)と、を縮重合したものが挙げられる。
具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ-3-メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールなどが挙げられる。
【0032】
(4)ポリラクトンポリオール
ポリラクトンポリオールとしては、ポリカプロラクトンジオール及びポリ-3-メチルバレロラクトンジオールなどが挙げられる。
(5)ポリオレフィンポリオール
ポリオレフィンポリオールとしては、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物などが挙げられる。
(6)ポリメタクリレートジオール
ポリメタクリレートジオールとしては、α,ω-ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω-ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
(7)ポリシロキサンポリオール
ポリシロキサンポリオールとしてジメチルポリシロキサンが好ましい。滑性を付与することができるため、特に塗工剤として使用する場合に有用である。
【0033】
これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
なお、本明細書において「数平均分子量」は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)であり、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定により求めることができる。
【0035】
本実施形態に係る湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、少なくとも既述の脂肪族ジイソシアネート変性体を含むポリイソシアネート成分と既述のポリオール成分との反応から得られる、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含むものであるが、当該ウレタンプレポリマーは、具体的には、これらポリイソシアネート成分とポリオール成分と、必要により鎖伸長剤等とを、イソシアネート基と水酸基との当量比(NCO/OH)が1.5~2.0となる配合で、ワンショット法、又は多段法により、40~150℃(好ましくは60~110℃)で、反応生成物が理論NCO%となるまで反応させることで製造することができる。
【0036】
上記のとおり、イソシアネート成分のイソシアネート基とポリオール成分の水酸基の当量比(NCO/OH)は1.5~2.0であることが好ましく1.3~2.2であることがより好ましい。当量比(NCO/OH)が1.5~2.0であることで、ゲル物が生じなく、加工に適した粘度にすることができる。
【0037】
また、鎖伸長剤としては、短鎖ジオール及び短鎖ジアミン等が挙げられる。
短鎖ジオールとしては、数平均分子量が500未満の化合物であり、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2-メチル-1,1-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、ビスフェノールA、チオビスフェノールおよびスルホンビスフェノールなどのビスフェノール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、およびC1~C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン類などの化合物が挙げられる。また、カルボキシル基、スルホ基、燐酸基、アミノ基などのイオン性基を含むジオールを使用することができる。
【0038】
短鎖ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物、フェニレンジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’-ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4-ジアミノシクロヘキサンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物、ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類などが挙げられる。
【0039】
また、上記製造方法においては、必要に応じて触媒を使用できる。例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、テトラn-ブチルチタネートなどの金属と有機および無機酸の塩、および有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。
【0040】
本実施形態に係るウレタンプレポリマーは、有機溶媒を使用しない無溶剤で反応させることが好ましい。これにより、無溶剤ウレタンプレポリマーとすることができる。
【0041】
本実施形態の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、既述のウレタンプレポリマーを90質量%以上含むことが好ましい。すなわち、本実施形態の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤においては、必要に応じて、熱可塑性ポリマー、粘着付与樹脂、触媒、顔料、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤、発泡剤等を適量配合してもよいが、ポリウレタンプレポリマーからなる(すなわち、100質量%である)ことがより好ましい。
【0042】
ここで、光安定剤としては、種々ものが使用できるが、ヒンダードアミン系光安定剤等が好ましく挙げられる。
前述したような本発明のウレタンプレポリマーに対し、ヒンダードアミン系光安定剤を特定量添加すると、ゲル分率の向上、養生時間の短縮などの優れた効果が得られる。
【0043】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(混合2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/トリデシル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、(混合1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ〔4.5〕デカン-2,4-ジオン等を用いることができる。なかでも、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)が好ましい。
なお、これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0044】
また、本実施形態の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は合成擬革用、すなわち、合成擬革用接着剤であることが好ましい。
【0045】
本実施形態の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、被着体表面に塗布することにより被着体同士を容易に接着させることができる。被着体としては、上記の合成擬革用の基材以外に例えば、金属、非金属(ポリカーボネート、ガラス等)の基材が挙げられる。
【0046】
ここで、本実施形態の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤のゲル分率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0047】
ゲル分率が85%以上であると、耐熱クリープ性、耐アルコール性、加工性(硬化速度)を向上させることができる。ゲル分率を高めるには、例えば、ウレタンプレポリマーへ、既述のヒンダードアミン系光安定剤を添加することができる。その添加量は、所望の効果(高いゲル分率、養生時間短縮化など)を得る観点から、ウレタンプレポリマーに対して0.2~1.0質量%が好ましく、0.2~0.5質量%がより好ましい。ゲル分率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0048】
本実施形態の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の硬化後の熱軟化点(熱硬化温度)は175℃以上であることが好ましく、185~220℃であることがより好ましい。
【0049】
硬化後の熱軟化点が175℃以上であると、耐熱クリープ性、耐候性、耐熱性、耐工業洗濯性が向上する。耐候性、耐熱性が向上することにより車輛用外装部材の接着剤として使用可能であり、耐工業洗濯性が向上することにより高温滅菌を必要とする衛生資材に使用可能となる。
熱軟化点は、実施例に記載の方法により測定することができる。なお、本明細書において、熱軟化点や後述の破断伸度は熱硬化後に測定するが、この硬化後とはIR測定によりNCOの消失が確認された後を意味する。
【0050】
本実施形態の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の硬化後の25℃における破断伸度は300~1000%であることが好ましく、400~800%であることがより好ましい。破断伸度が300%以上であると合成皮革にした場合、屈曲性を良好にすることができる。破断伸度が1,000%以下であると、耐熱クリープ性及び接着強度の低下が抑えられ、接着剤としての良好な機能が発揮されやすくなる。
破断伸度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【実施例0051】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下にある「部」は質量部、「%」は質量%を示す。表中、(カッコ書きの数字)は、「ポリイソシアネート成分におけるモル比(モル%)」を示す。
【0052】
使用した材料は下記のとおりである。
(1)ポリエステルポリオール
・TPEP85:アジピン酸/1,4-ブタンジオール(60/40mol%)(数平均分子量2000、台精化学製
(2)ポリエーテルポリオール
・PTMG1000:数平均分子量1000、三菱ケミカル(株)製
・PPG1000:数平均分子量1000、旭硝子(株)製
(3)3官能ポリオール
・T-700:ポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量700、三井化学(株)製
・TMP:トリメチロールプロパン、数平均分子量134、三菱ガス化学(株)製
【0053】
(4)ポリイソシアネート成分
・A201H:デュラネートA201H、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート変性体でアロファネート型ジイソシアネート、重量平均分子量488.4、NCO%=17.2、旭化成(株)製
・D201:デュラネートD201、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート変性体でジオールのジイソシアネートアダクト体、重量平均分子量558.2、NCO%=15.9、旭化成(株)製
・TKA100:ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型ポリイソシアネート、重量平均分子量578、旭化成(株)製
・C-2770:ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート型ジイソシアネート、重量平均分子量437.5、東ソー(株)製
・D376N:1,5-ペンタンジイソシアネートのヌレート型ポリイソシアネート、重量平均分子量536.1、三井化学(株)製
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート、旭化成(株)製
なお、上記「A201H」と「C-2770」とは、いずれもヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート型ジイソシアネートだが、重量平均分子量、構造などにおいて互いに相違する。
【0054】
(5)光安定剤
・HALS(ヒンダードアミン系光安定剤):CHISORB770(LS770、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート)
【0055】
[実施例1]
撹拌機、温度計、ガス導入口等を付与したガラス製反応容器に、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール(TPEP85)55部、ポリエーテルポリオール(PTMG1000)45部、及び、3官能以上の多官能ポリオール(T-700)3.0部と、ポリイソシアネート成分として、デュラネートA201Hを30部、及び、デュラネートD201を30部とを混合し、反応容器内を加熱減圧して脱水処理を行い、更に窒素ガスを封入して内温を110℃とした状態で120分間撹拌して反応させ、NCO/OH=1.7のウレタンプレポリマーを得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーに対して0.3%(対樹脂0.3%)となるように光安定剤を加え、30分間攪拌を行った。
【0056】
[実施例2~10、比較例1~10]
ポリオール成分及びポリイソシアネート成分等の種類や配合を下記表1及び表2に示すようにした以外は実施例1と同様にしてウレタンプレポリマーを得た。なお、実施例3~8、10、比較例1~10については、ウレタンポリマー合成後に光安定剤を加えていない。
【0057】
実施例及び比較例で得られたウレタンプレポリマーを用いて下記の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0058】
[ゲル分率と樹脂物性]
(評価用フィルムの作製)
各例のウレタンプレポリマーを100℃で溶融し、塗布後の膜厚が50~70μmとなるように離型紙上に塗工した。その後、熟成工程として温度40℃、相対湿度60%の環境下で60時間熟成、更に室温(20℃)で1日保管して離型紙付きの評価用フィルムを得た。
この評価用フィルムは、ゲル分率と樹脂物性を評価するために用いる。
【0059】
<ゲル分率>
離型紙を剥がして得られた評価用フィルムを8cm×8cmに切り出し、重量(W-a)を測定した。重量測定したフィルムをMEK(メチルエチルケトン)及びトルエンのそれぞれの中に浸し、蓋をして密封したものを作製し、25℃条件下で2時間放置した後、70℃で完全乾燥させた。完全乾燥させたフィルムの重量(W-b)を測定した。(W-b)/(W-a)×100の算式によりゲル分率を算定した。MEK及びトルエンのいずれの場合も85%以上であれば合格である。
【0060】
<20%モジュラス、100%モジュラス、300%モジュラス、破断強度及び破断伸度>
離型紙を剥がして得られた評価用フィルムについて、JIS3に準じてダンベル状試験片を打ち抜き、島津製作所製オートグラフAGS-Jを用いて、JIS K-6251に準拠した測定方法によって、室温(25℃)における20%モジュラス、100%モジュラス、300%モジュラス(ML(MPa))、破断強度(MPa)及び破断伸度(%)を測定した。本評価において、破断強度が高いほどフィルムの強度が高いことを示す。また、破断伸度は、合成擬革用の接着剤としては、300~1000%が好ましい。
なお、比較例3,5の300%モジュラスは、300%までフィルムが伸びていない(硬い)為、測定値が無いので、表2中「-」と表記している。
【0061】
<熱軟化点>
離型紙を剥がして得られた評価用フィルム(幅1.5cm、長さ6cm)を用いて熱軟化点を測定した。
具体的には、まず
図1に示すように、評価用フィルム10の上下にクリップ12を取り付け、セロテープ(登録商標)でさらにクリップ12を固定し、一方のクリップ12に吊り下げたときに450g/cm
2の荷重がかかるような重り14を取り付けて試料16を作製した。なお、評価用フィルム10の中央部長手方向2cmはセロテープ(登録商標)で覆われていない。
【0062】
次に、
図2に示すように、試料16の重り14が取り付けられていないクリップ12をギアオーブン20の回転盤22に取り付けた。その後、回転盤22を5rpmで回転させながら、室温から3℃/minの速度でギアオーブン20内を昇温した。評価用フィルム10が切断したとき、もしくは2倍に伸長したときの温度(℃)を熱軟化点とした。
本評価において、熱軟化点(熱軟化温度)が高いほど、フィルムとしての耐性が高いことを示す。
【0063】
[接着剤の評価]
<耐熱クリープ性>
クリープ試験として、高温状態で試験片に一定の荷重を長時間加え、変形量や破断するまでの時間を測定する試験を行った。具体的には下記1)~8)のようにして行った。
【0064】
1)試験対象の湿気硬化型PUR-HM樹脂(各例のウレタンプレポリマー)とコーティング棒を110℃のオーブンに入れて予熱した。
2)湿式成膜布(A)のPU樹脂面にPUR-HM樹脂を200μGap(厚さ200μm)にて塗工し、直ちに湿式成膜布(B)のPU樹脂面と貼り合わせを行った。
なお、湿式成膜布(A)及び湿式成膜布(B)としては、基材として用いる不織布上にDMFを媒体としたポリウレタン樹脂配合液(レザミンCU-4340NS(PU樹脂固形分30%、大日精化工業(株)製)をDMFで固形分15%に希釈した配合液)を塗工し、水槽中で凝固・脱DMFを行った後、乾燥を行うことで得られるもので、基材上に乾燥後の厚みが800~1000μmのポーラス層が形成されている合成擬革を用いた。
3)上記貼り合わせ品を25℃/60%RHで24時間硬化させた後、下記手順で耐熱性を測定した。
4)オーブンを170℃に設定した。また、貼り合わせ品を幅3cm、長さ12cm以上で切り取り、試験片とした。
5)試験片端部を貼り合わせ面で剥離させ、湿式成膜布(A)側と湿式成膜布(B)側にそれぞれクランプを取り付け固定し、片側に3kgの重りを吊るした。
6)170℃のオーブンに入れ試験試料を吊るした後、素早くオーブンのドアを閉めた。
7)ドアを閉めた後、5分間放置した。
8)5分間経過後、直ちに試験片を取り出し、170℃/5分間放置にて剥離した長さ及び剥離状態を観察し下記評価基準にて評価した。なお、〇が合格である。
【0065】
[評価基準]
○:剥離した長さ2cm未満、剥離状態は基材破壊
△:剥離した長さ2cm以上5cm未満、剥離状態は基材破壊
×:剥離した長さ5cm以上、または湿式PU樹脂層面々剥離
【0066】
<加工性能(初期固化性)>
実施例及び比較例で得られたウレタンプレポリマーを100℃で溶融し、膜厚50~70μmとなるように離型紙上に塗工した。40℃条件下で、30秒ごとに同じ基材の非塗工面を貼り合わる作業を5分まで行った。貼り合わせた基材を手で剥す際の抵抗感及び基材への樹脂の付着量によって加工(初期固化)性能の評価を行った。
〇:剥離時に抵抗がなく、付着もなく合格である。
△:剥離時に抵抗はあるが、付着なし。○よりも評価は劣る。
×:剥離時に抵抗があり、付着もあり不合格である。
【0067】
(合成擬革の作製及び評価)
(表皮層の形成)
合成擬革表皮用として、溶剤型ウレタン樹脂であるレザミンNE-8875-30(大日精化工業(株)製)と、合成擬革用着色剤としてセイカセブンBS-780(大日精化工業(株)製)と、希釈溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)及びジメチルホルムアミド(DMF)とを混合し、離型紙上にバーコーターで250μm/wetの塗布量を均一に塗工した後、120℃で5分乾燥させ膜厚40~50μmの表皮層を得た。
【0068】
(レザー風合い評価のための標準合成擬革の作製)
上記離型紙上に形成された表皮層に、レザミンUD-8351NT(ポリウレタン樹脂接着剤、大日精化工業(株)製)100質量部、C-50架橋剤(イソシアネート系架橋剤、大日精化工業(株)製)10質量部の配合で調整した接着剤を厚み100μmの接着剤層を形成するように塗工し、80℃/2分の予備乾燥後得られた接着層と基材(織物)とをラミネートロール温度40℃にて加圧圧着した。その後、50℃/48時間での条件で熟成を行い柔軟性評価のための標準合成擬革を得た。
【0069】
(実施例及び比較例に係る合成擬革の作製)
上記離型紙上に形成された表皮層上に、実施例及び比較例で得られたポリウレタンプレポリマーを100℃に熱して、塗布膜厚100μmとなるよう塗工し、基布(織物)をラミネートロール温度30℃にて加圧圧着した。熟成工程として温度40℃、相対湿度60%の環境下で5日間熟成した。離型紙から剥離しポリウレタンプレポリマーを使用した評価用合成擬革を作製した。
【0070】
<レザー風合い>
得られた各評価用合成擬革の柔軟性について、標準合成擬革を基準とし、手で触った感触で比較し、評価指標は下記のとおりとした。なお、評価が○であれば合格である。
○:標準合成擬革と同程度に柔らかい(レザー風合いとして合格)
×:標準合成擬革よりも大幅に硬い(レザー風合いとして不合格)
【0071】
<耐寒屈曲性試験>
上記得られた各合成擬革を幅50mm、長さ150mm(評価範囲100mm)の試験シートとし、当該試験シートを用いてデマッチャ試験機(安田精機製作所製、型番:NO.119-L DEMATTIA FLEXING TESTER)により、-10℃環境下、伸縮屈曲範囲72~108%、-10℃低温下にて屈曲試験を行った。評価指標は下記のとおりとした。なお、評価が○であれば合格である。
○:-10℃、30,000回以上
×:-10℃、30,000回未満
【0072】
<経時安定性:Pot Life>
実施例及び比較例で得られたウレタンプレポリマーを100℃で溶融し、100℃、24時間の条件下で粘度の経時変化と目視で沈降物を評価した(使用可能レベルは〇)。
〇:沈降物なし、粘度変化が+100%未満である。
×:沈降物あり、粘度変化が+100%以上である。
なお、粘度は下記条件で測定した。
(粘度測定)
BM型粘度計(東京計器製造所)を用い、ローターNo.4/30rpm/100℃の条件で、各ウレタンプレポリマーの粘度を測定した。
【0073】
<臭気>
実施例及び比較例で得られたウレタンプレポリマーを250mlポンド缶に入れ、100℃で2時間加熱した後、10人のパネリストのそれぞれが蓋を開けて臭気を確認した。評価基準は下記の通りである(〇が実用可能レベルとなる)。
〇:10名全員、臭気を感じなかった。
×:10人中、5名以上が臭気を感じた。
【0074】
<造膜性>
実施例及び比較例で得られたウレタンプレポリマーを、100℃に熱し、離型紙K8P(01)上に、塗布膜厚100μmとなるよう塗工した。塗工直後に40℃で10分間保温した。10分後の塗膜の連続性の有無で造膜性を評価した(〇が実用可能レベルとなる)。
〇:塗膜の連続性を維持
×:塗膜のハジキ又は収縮あり
【0075】
<養生時間>
実施例及び比較例で得られたウレタンプレポリマーを100℃で溶融し、塗布後に膜厚50~70μmとなるように離型紙上に塗工後、40℃/60RH%の条件下に保管した。12時間ごとにIR測定を行い、NCOが消滅した時間を養生時間とした。なお、養生時間の測定は、実施例1、3、8~10だけに対して行った。
【0076】
<接着強度>
既述の<レザー風合い>の評価の際に使用した各例に係る評価用合成擬革の表皮層の上面である樹脂層面に、140℃のアイロンにて1分間ホットメルトテープを圧着、1時間室温冷却した後に、基布とホットメルトテープに密着した樹脂層とを剥離させ、その強度をオートグラフにて測定することで接着強度とした。なお、合成擬革用の接着剤としては、測定値が1.2kgf/cm以上が好ましい。
【0077】
【0078】
本実施形態の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は合成擬革用、すなわち、合成擬革用の基材に対して利用可能であり、合成擬革用の基材以外に例えば、金属、非金属(ポリカーボネート、ガラス等)の基材に対しても利用することができる。また、優れた耐熱性を有するため、車輛用外装部材や高温滅菌を必要とする衛生資材への展開も期待できる。