(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166912
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】取り合い部構造及び防火区画構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20231115BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
E04B1/94 K
E04B2/74 551E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077770
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】荻野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DE01
2E001FA03
2E001FA07
2E001FA08
2E001FA52
2E001FA71
2E001GA06
2E001GA12
2E001GA52
2E001GA82
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD04
2E001HD09
2E001HF12
(57)【要約】
【課題】建築物の断熱性及び耐火性を両立でき、かつ施工の手間がかからない、壁と間仕切壁との取り合い部構造を提供することを課題とする。
【解決手段】建築物の壁と間仕切壁との取り合い部の構造であって、前記取り合い部は、有機系難燃材料を含む断熱材からなる、取り合い部構造。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁と間仕切壁の端面との間の取り合い部構造であって、
前記壁と間仕切壁の端面の間に設けられ、有機系難燃材料から形成される断熱材を有する、取り合い部構造。
【請求項2】
前記断熱材のISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/m2にて5分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m2以下である、請求項1に記載の取り合い部構造。
【請求項3】
前記断熱材の熱伝導率が、0.04W/m・K以下である、請求項1又は2に記載の取り合い部構造。
【請求項4】
前記間仕切壁の厚みが80mm以上である、請求項1又は2に記載の取り合い部構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の取り合い部構造を有する、防火区画構造。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の取り合い部構造の施工方法であって、
前記建築物の壁に前記断熱材を施工し、前記断熱材が施工された壁に対して前記断熱材を介して間仕切壁を設置する、取り合い部構造の施工方法。
【請求項7】
建築物の壁と間仕切壁の端面との間の取り合い部構造に使用される取り合い部構造用断熱材であって、有機系難燃材料から形成される、取り合い部構造用断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物における壁と間仕切壁との取り合い部構造、及び防火区画構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内部においては、区画の仕切り壁として、間仕切耐火壁が設置されることがある。間仕切耐火壁を設置することによって、建築物のいずれかの区画で火災が発生した際に、他の区画への延焼や煙の充満などを防止することができる。例えば、特許文献1には、駐車装置の内部に設置するための間仕切耐火壁が開示されている。
また、近年では、温室効果ガスの削減が世界的に求められている中、建築物、中でも、ビルなどの大型建築物の省エネ対策も強化されており、その一環として、建築物の外壁の内側などに、断熱材が設けられることがある。断熱材の具体例としては、例えば、特許文献2に記載されているように、吹き付けによって充填されるウレタン断熱材などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-176466号公報
【特許文献2】特開2020-033728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、断熱材が設けられた壁面に対して、間仕切耐火壁が突き合わされて設置されることがある。この場合、耐火性能を優先する必要があるため、突き合わせ部分に断熱材を設けないように、断熱材を2つに分けて施工し、2つの断熱材の間に間仕切耐火壁を設置することが一般的である。また、本施工方法によれば、通常、上記断熱材と間仕切耐火壁との間にも隙間が設けられるので、そのような隙間にも別の断熱材を別途で充填することが一般的である。
【0005】
上記のような構造の場合、間仕切耐火壁と壁面の突き合わせ部分には断熱材が配置されないこととなる。また、断熱材と間仕切耐火壁との隙間に充填される別の断熱材には、主にグラスウールなどの無機系材料が使用されており、有機系材料の断熱材よりも断熱性が低いことが多い。したがって、建築物全体の断熱性が損なわれることとなり、建築物の省エネ対策に逆行することとなる。また、施工に多くの手間を要する問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、建築物の断熱性及び耐火性をいずれも良好にでき、かつ施工の手間がかからない、壁と間仕切壁との取り合い部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]建築物の壁と間仕切壁の端面との間の取り合い部構造であって、前記壁と間仕切壁の端面の間に設けられ、有機系難燃材料から形成される断熱材を有する、取り合い部構造。
[2]前記断熱材のISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/m2にて5分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m2以下である、[1]に記載の取り合い部構造。
[3]前記断熱材の熱伝導率が、0.04W/m・K以下である、[1]又は[2]に記載の取り合い部構造。
[4]前記間仕切壁の厚みが80mm以上である、[1]又は[2]に記載の取り合い部構造。
[5][1]又は[2]に記載の取り合い部構造を有する、防火区画構造。
[6][1]又は[2]に記載の取り合い部構造の施工方法であって、前記建築物の壁に前記断熱材を施工し、前記断熱材が施工された壁に対して前記断熱材を介して間仕切壁を設置する、取り合い部構造の施工方法。
[7]建築物の壁と間仕切壁の端面との間の取り合い部構造に使用される取り合い部構造用断熱材であって、有機系難燃材料から形成される、取り合い部構造用断熱材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、建築物の断熱性及び耐火性をいずれも良好にでき、かつ施工の手間がかからない、壁と間仕切壁との取り合い部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の取り合い部構造の一形態を示す横断面図である。
【
図2】本発明の取り合い部構造の一形態を示す横断面図である。
【
図3】本発明の取り合い部構造の一形態を示す横断面図である。
【
図4】大型冷蔵倉庫と、その内部に設置される冷凍倉庫とを示す平面図である。
【
図5】本発明の取り合い部構造の一形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の取り合い構造について説明する。
図1~3、又は5に示すように、本発明の取り合い部構造は、壁10と、間仕切壁12との取り合い部を含む構造である。
【0011】
[取り合い部材]
本発明の取り合い部構造は、
図1~3に示すように、壁10と間仕切壁12の端面の間に設けられる取り合い部材11を備える。取り合い部材11は、有機系難燃材料から形成される断熱材である。本発明の取り合い部構造は、以上の取り合い部材11を有することで、取り合い部構造における断熱性及び耐火性をいずれも良好にでき、かつ施工性も向上させることができる。
【0012】
取り合い部材11は、少なくとも、壁10の一面と間仕切壁12の端面との間に形成されればよく、
図1に示すように、間仕切壁の厚みWと少なくとも同じ長さL1を有するように形成すればよいが、
図2、3に示すように、間仕切壁の厚みWよりも長い長さL2、L3を有してもよい。
例えば、
図2に示すように、数cm~数10cm程度(例えば1cm以上、より具体的には1~20cm程度)厚みWよりも長くなるように長さL2で、間仕切壁からはみ出るように施工してもよい。このように、間仕切壁からはみ出すように施工することで、断熱材の施工を精緻に行う必要がないので、施工が容易となる。
また、取り合い部材11(すなわち、断熱材)は、
図3に示すように、厚みWよりも数十cm以上(例えば、50cm以上、好ましくは1m以上)長くなるように長さL3で形成してもよく、好ましくは壁10の一面全体に形成するとよい。取り合い部材11は、厚みWよりも十分に長くすることで、取り合い部のみならず壁の断熱材としても機能し、簡易な構造で断熱性の高い建築物とすることができる。
なお、長さL1~L3とは、
図1~
図3に示すとおり、取り合い部構造の横断面における長さである。
【0013】
取り合い部材11は、後述するとおり、吹付などにより壁10の一面に接着されて形成されるとよい。また、壁11の一面に形成された取り合い部材11に、間仕切壁の端面を接触するようにして間仕切壁12を配置するとよい。このような構造により、壁10の一面と、間仕切壁12の端面との間に隙間ができなくなるので、取り合い部における断熱性及び耐火性の両方を適切に確保できる。
【0014】
取り合い部材11は、上記の通り断熱材からなるものである。断熱材は、有機系難燃材料から形成されるとよい。有機系難燃材料は、有機系準不燃材料であることが好ましく、有機系不燃材料であることがさらに好ましい。取り合い部材に使用される断熱材としては、発泡体が好ましく、例えば、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、スチレンフォームなど、断熱材として使用できるものであればよいが、中でもウレタンフォームが好ましい。ウレタンフォームを使用することにより、施工性が良好となり、取り合い部における耐火性と断熱性の両方を良好にしやすくなる。
【0015】
《ウレタンフォーム》
取り合い部材に使用できるウレタンフォームとしては、ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを含有するウレタン系樹脂組成物を吹き付けることで得ることができ、ポリオール組成物、ポリイソシアネート化合物は、いずれも公知のものを使用することができる。なお、ポリオール組成物は、好ましくは、ポリオールに加えて、難燃剤を含有するものを使用するとよい。難燃剤を使用することで、ウレタンフォームを難燃材料、準不燃材料又は不燃材料とすることができる。ウレタン系樹脂組成物は、1液型であってもよいし、2液型であってもよいが、2液型であることが好ましい。2液型である場合には、ポリオール組成物にポリイソシアネート化合物を混合して得たウレタン系樹脂組成物を吹き付けるとよい。
【0016】
<ポリオール>
ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。ポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、ポリオールは、ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。また難燃性を向上させるという観点から、含ハロゲンポリオールや含リンポリオールなどの使用も好ましい。
このような観点から、ポリオール100質量部のうち、ポリエステルポリオールを20質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることがさらに好ましく、100質量部とすることが特に好ましい。
【0017】
本発明で用いるポリオールの平均水酸基価は、取り合い部材の難燃性を向上させる観点から、100~500mgKOH/gが好ましく、150~450mgKOH/gがより好ましく、200~400mgKOH/gがさらに好ましい。
【0018】
なお、平均水酸基価とはポリオールが1種類である場合には、そのポリオールの水酸基価を意味する。また、2種類以上のポリオールを用いる場合は、ポリオールの水酸基価として、当該2種類以上のポリオール化合物の配合比率に従った水酸基の加重平均値を平均水酸基価とする。
例えば、ポリオールとして、2種類のポリオール(d1)、ポリオール(d2)を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX1、配合比率をm1、ポリオール(d2)の水酸基価をX2、配合比率をm2とすると、該平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合比率は、質量基準である。
平均水酸基価(mgKOH/g)=X1×(m1/(m1+m2))+X2×(m2/(m1+m2))
水酸基価は、JIS K1557-1:2007に準拠して測定される値である。
【0019】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、芳香環を有するポリエステルポリオールでもよいし、脂肪族ポリエステルポリオールでもよいが、得られるポリウレタンフォームの難燃性を考慮した場合、芳香環を有するポリエステルポリオールを使用することが好ましい。芳香環を有するポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタンフォームの難燃性を高める観点から、ポリオール化合物は、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことが好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましい。
グリコールとしては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリエステルポリオールの構成成分として公知の低分子量脂肪族グリコールを使用することが好ましい。
【0020】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、100~500mgKOH/gが好ましく、150~450mgKOH/gがより好ましく、200~400mgKOH/gがさらに好ましい。
【0021】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールは、2個以上の活性水素原子を有する開始剤に、アルキレンオキサイドを開環付加重合させて得られたポリオキシアルキレンポリオールである。開始剤としては、具体的には例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどの4官能アルコール類、シュクロース類、ソルビトール類などの高官能類)、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミンなどのアルキレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン)、芳香族アミン(例えば、アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、マンニッヒ縮合物など)などが挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、芳香環を有することが好ましい。上記のうち、芳香環を有する開始剤を用いて製造したポリエーテルポリオールが、芳香環を有するポリエーテルポリオールであり、例えば芳香族アミンを開始剤として用いて製造したポリエーテルポリオールは、芳香環を有するポリエーテルポリオールである。芳香環を有するポリエーテルポリオールの中でも、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールなどを好適に使用することができる。
【0022】
トリレンジアミン系ポリエーテルポリオールとは、開始剤としてトリレンジアミンを用いて製造したトリレンジアミン系ポリエーテルポリオールである。
上記マンニッヒ系ポリエーテルポリオールとは、マンニッヒ反応を利用して得られるものであって、分子内に2個以上の水酸基を有するマンニッヒ縮合物、又はそのようなマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールである。より具体的には、フェノール及びそのアルキル置換誘導体の少なくともいずれか、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られたマンニッヒ縮合物、又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールである。
【0023】
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、200~2000mgKOH/gであることが好ましく、300~1000mgKOH/gであることがより好ましい。
【0024】
<難燃剤>
ポリオール組成物中の難燃剤としては、例えば、固体難燃剤として、赤燐系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、塩素含有難燃剤、金属水酸化物、針状フィラー等を使用することができる。これらの固体難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
(赤燐系難燃剤)
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物等を混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0026】
(リン酸塩含有難燃剤)
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期律表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも1種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。なお、用語「各種リン酸」は、リン酸のみならず、亜リン酸、次亜リン酸等も含まれる概念である。
周期律表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0027】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。モノリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ニアンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等が挙げられる。
ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(臭素含有難燃剤)
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温(23℃)、常圧(1気圧)で固体である化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0029】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物等が挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、未架橋又は架橋臭素化ポリスチレン等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカン等の臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(ホウ素含有難燃剤)
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(アンチモン含有難燃剤)
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 本発明に使用するアンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
【0032】
(塩素含有難燃剤)
塩素含有難燃剤は、ポリウレタンフォームに通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテン等が挙げられる。
【0033】
(金属水酸化物)
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0034】
(針状フィラー)
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。針状フィラーを使用することで取り合い部材の機械特性を効果的に向上させることができる。
これらの針状フィラーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0035】
ポリオール組成物中の難燃剤としては、上記した固体難燃剤以外にも、液状難燃剤として、リン酸エステル難燃剤などを使用してもよい。
【0036】
(リン酸エステル)
本発明のポリオール含有組成物は、上記した固形難燃剤以外の難燃剤を含有してもよい。そのような難燃剤としては、常温(23℃)、常圧(1気圧)にて液体である液状難燃剤が挙げられ、具体的にはリン酸エステルが挙げられる。
【0037】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0038】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
【0039】
リン酸エステルは、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール含有組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
【0040】
ポリオール組成物中の難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、25~200質量部が好ましく、35~180質量部がより好ましく、50~170質量部がさらに好ましい。難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、取り合い部材の難燃性が向上し、建築物における断熱性と耐火性との両立が実現しやすい。また、難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、良質なウレタンフォームを得ることができ、施工性に優れるようになる。
【0041】
(その他の成分)
ポリオール組成物は、上記したポリオール及び難燃剤に加え、通常、発泡剤及び触媒を含有する。発泡剤及び触媒は、いずれも公知のものを使用でき、発泡剤としては、例えば、ハイドロフルオロオレフィン、炭化水素、エーテル化合物などの有機系発泡剤を使用するとよい。これらの中では、ハイドロフルオロオレフィンが好ましい。また、水などを使用してもよく、水とハイドロフルオロオレフィンを併用してもよい。触媒としては、アンモニウム塩等の三量化触媒、イミダゾール誘導体等の樹脂化触媒などを使用することができる。
また、本発明の目的を損なわない範囲内で、整泡剤、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤(金属不活性化剤)、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、可塑剤、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤等から選択される1種以上を含有してもよい。
【0042】
(ポリイソシアネート)
本発明において、ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等が挙げられる。
【0043】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、又はこれらの混合物がより好ましく、中でもジフェニルメタンジイソシアネートがさらに好ましく、特に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、ポリイソシアネートは、ポリオール含有組成物と混合する前に、ポリイソシアネートに配合される公知の添加剤が適宜配合されてもよい。
【0046】
なお、ポリオール組成物と、ポリオール組成物に混合されるポリイソシアネートは、互いに体積が実質的に同じであることが好ましい。具体的には、ポリオール組成物に対する、ポリイソシアネートの体積比は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、0.95~1.05がさらに好ましい。
【0047】
(熱伝導率)
本発明に係る取り合い部材を形成する断熱材は、熱伝導率が0.04W/m・K以下であることが好ましい。断熱材の熱伝導率が0.04W/m・K以下であることにより、取り合い部材の難燃性及び不燃性が向上する。そのため、断熱材に対し間仕切壁を垂直に接触させても、間仕切壁が接触する部分は耐火性が損なわれることがなく、施工性に優れた取り合い部構造としつつ、建築物の断熱性と耐火性とを両立させることができる。以上の観点を踏まえると、断熱材の熱伝導率は、0.036W/m・K以下であることがより好ましく、0.032W/m・K以下であることがさらに好ましい。断熱材の熱伝導率の下限は、特に限定されず、0W/m・K以上であればよいが、実用的には、例えば0.015W/m・K以上、好ましくは0.02W/m・K以上である。
なお、熱伝導率は、ISO 22007-2に準拠して、断熱材の厚み方向に測定することで得ることができる。
【0048】
(総発熱量)
本発明に係る断熱材は、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/m2にて5分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m2以下であることが好ましい。総発熱量が8MJ/m2以下であることにより、本発明に係る断熱材は、所定の難燃性を有し、かつ燃え広がらない性質を兼ね備えた断熱材となり、火災時の延焼をより有効に防止することができる。
断熱材の難燃性をより向上させる観点から、上記総発熱量は、7MJ/m2以下であることがより好ましく、5MJ/m2以下であることがさらに好ましい。
また、断熱材が準不燃材料の場合は、上記と同様の加熱方法で10分間加熱したときの総発熱量が、8MJ/m2以下であることが好ましく、7MJ/m2以下であることがより好ましく、5MJ/m2以下であることがさらに好ましい。さらに、断熱材が不燃材料の場合は、上記と同様の加熱方法で20分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m2以下であることが好ましく、7MJ/m2以下であることがより好ましく、5MJ/m2以下であることがさらに好ましい。
上記総発熱量は、コーンカロリーメーター試験により得られ、詳細には実施例に記載の方法で測定することができる。
なお、上記コーンカロリーメーター試験の際、試験に供したポリウレタン発泡体がコーンカロリーメーターのスパーク点火器に接触しない程度の形状安定性を有することが好ましい。
【0049】
(厚み)
本発明に係る取り合い部材である断熱材の厚みは、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましい。厚みが上記下限値以上であることにより、建築物の断熱性が向上しやすくなる。また、厚みにより断熱材の強度が増すため、間仕切壁を設置しやすくなる。他方で、上記厚みは、施工コストに見合った断熱性とする観点から、50mm以下であることが好ましく、45mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることがさらに好ましい。
【0050】
[間仕切壁]
本発明では、
図1~3に示すように、取り合い部材11を介して、壁10の一面に対して垂直方向に、間仕切壁12が設置されるとよい。このような間仕切壁12としては、特に限定されず、例えば、一般的な間仕切壁、耐火間仕切壁、遮煙壁などが挙げられる。本発明における間仕切壁12としては、耐火間仕切壁であることが好ましい。間仕切壁12として耐火間仕切壁を使用することで、建築物内部の一区画で火災が発生した場合でも、他の区画に延焼したり、煙が充満したりすることを防止することができる。間仕切壁12としては、例えば、中空壁、ALC、中空セメント板、金属サンドイッチパネル、石膏ボード、コンクリート、陶磁器質タイル、繊維強化セメント板、金属板、モルタル、しっくい、ロックウール、パルプセメント等の公知の不燃材料又は準不燃材料を使用することができ、好ましくは石膏ボード、中空壁、ALC、中空セメント板、金属サンドイッチパネルである。なお、耐火間仕切壁は、不燃材料単体又は準不燃材料単体で形成されてもよいし、それらを重ね合わせて形成されてもよいし、その他の部材を備えることもできる。例えば、不燃材料又は不燃材料の少なくとも片面に塗装が形成され、又は樹脂シートなどが貼り付けられてもよい。
間仕切壁12の厚みは、例えば75mm以上であり、80mm以上であることが好ましく、85mm以上であることがより好ましく、90mm以上であることがさらに好ましい。間仕切壁12の厚みが上記下限値以上であると、煙の充満をより効果的に防止することができる。また、火炎や煙によって間仕切壁12が高温に晒された場合でも、間仕切壁12が熱によって溶解することを防止することができる。また、間仕切壁12の厚みの上限は、特に限定されないが、施工性の観点から、例えば150mm以下、好ましくは120mm以下である。
なお、上記した中空壁は、一般的に2つの壁部の間に中空部が設けられるものであるが、間仕切壁12として中空壁を使用する場合、一方の壁部の外面から他方の壁部の外面までの距離を間仕切壁12の厚みとする。また、中空壁の場合、両壁部の端面を取り合い部材11に接触するように配置させるとよい。さらに、中空壁の各壁部としては、上記の間仕切壁で列挙したものを適宜選択して使用することができる。
【0051】
[壁]
本発明の取り合い部材が施工される壁は、建築物の外壁であってもよいし、上記間仕切壁とは別途で設置される、建築物の内部の壁であってもよい。建築物の外壁である場合には、取り合い部構造は、外壁の内面と、間切壁の端面との間に施工される。
建築物の内部の壁としては、例えば、
図4に示されるような、大型冷蔵倉庫21の内部に設置される冷凍倉庫20の壁20Aなどが想定される。本発明では、建築物の外壁に取り合い部材を施工することが好ましい。建築物の外壁に取り合い部材を施工することにより、建築物の断熱性が向上しやすくなる。
なお、壁の素材は、例えばコンクリートなどを使用することができる。
また、デザイン性を重視した建築物などの場合、床面又は天井面に対して壁の一部が斜めに設置されていたり、壁が円弧状になっていたりする場合があるが、本発明に係る壁は、このような形態であってもよく、壁がこのような形態である場合においても、建築物の耐火性と断熱性とをいずれも良好なものとすることができる。
【0052】
[取り合い部構造のその他の形態]
本発明に係る取り合い部構造に使用される断熱材は、
図1~3に示すように、有機系難燃材料により形成される断熱材のみであってもよいが、本発明に係る取り合い部構造は、有機系難燃材料以外の材料により形成された断熱材13を備えていてもよい。すなわち、
図5に示すように、壁10と間仕切壁12の端面との間の部分に有機系難燃材料より形成される断熱材(取り合い部材)11を設置する限り、有機系難燃材料以外の材料により形成された断熱材13を備えていてもよい。断熱材13は、壁10と間仕切壁12の端面との間の部分以外において、壁10の一面に形成されるものである。このような構造によれば、材料コストを上昇させることなく、取り合い構造に適切に耐火性を付与しつつ、壁10に高い断熱性を付与できる。
有機系難燃材料以外により形成された断熱材13は、例えば、有機系難燃材料以外の有機材料で形成されたものである。有機系難燃材料以外により形成された断熱材は、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/m
2にて5分間加熱したときの総発熱量が8MJ/m
2未満となるとよい。
有機系難燃材料以外により形成された断熱材13は、好ましくは発泡体であり、より好ましくはウレタンフォームである。ウレタンフォームとする場合には、断熱材は、ウレタン系樹脂組成物により形成すればよいが、上記で説明したウレタン系樹脂組成物において、難燃剤の種類及び量を適宜調整し、または難燃剤を配合しないことで、難燃材料以外により形成されたものとすることができる。
なお、
図5では、取り合い部材11の長さL4は、間仕切壁の厚みと同一である場合の構造を示すが、
図2で示した構造と同様に間仕切壁の厚みよりも長くしてもよい。
【0053】
[施工方法]
本発明では、建築物の壁に対し、まず、取り合い部材となる断熱材を施工し、上記施工後の壁に対して、施工した断熱材を介して、間仕切壁を設置するとよい。本発明では、取り合い部材が、断熱材として機能すると共に、耐火材としても機能するため、
図3に示すとおりに壁10に断熱材を形成する場合でも、断熱材を2つ以上に分けて施工したり、断熱材と間仕切壁との隙間とを充填したりする手間を要さず、施工性にも優れた取り合い部構造を提供することができる。
【0054】
(断熱材の施工方法)
断熱材は、壁の一面に対して、断熱材の材料を吹き付ける方法で施工することが好ましい。例えば、ウレタンフォームの場合には、それぞれ別の容器に保存されたポリオール組成物とポリイソシアネートとを公知の吹付装置により混合し、吹付装置に設けられた公知のスプレーガンにより吹き付けを行うとよい。
また、それぞれカードリッジ容器、スプレー缶などの容器に保存したポリオール組成物とポリイソシアネートとを静止型混合器などにより混合し、コーキングガン等の吐出器から吐出させてもよい。
【0055】
(間仕切壁の設置方法)
間仕切壁は、壁に施工された断熱材に接触させるようにして設置する。この際、間仕切壁は、断熱材との間に隙間ができないように、壁の一面に形成された断熱材に突き合わせるように設置するとよい。
間仕切壁の設置方法は、特に限定されないが、例えば、縦桟と横桟とを組んで、縦桟及び横桟に沿って設置するとよい。縦桟と横桟とを組む場合には、少なくとも、天井側に配される上横桟と、床側に配される下横桟と、間仕切壁の両端側に配される縦桟とをそれぞれ組むとよい。また、必要に応じ、これらの横桟の間に中間横桟を組んでもよいし、又は縦桟の間に中間縦桟を組んでもよい。また、これらの中間横桟又は中間縦桟を2本以上組む場合には、中間桟間の間隔の幅も、特に限定されず、設置する間仕切壁の大きさなどに応じて調整するとよい。
これらの縦桟及び横桟(以下、まとめて「桟」という場合がある。)の組み方は、特に限定されず、公知の方法で行えばよい。縦桟及び横桟の材料も、特に限定されず、例えば鋼製の角パイプ材などの公知のものを使用することができる。
【0056】
[防火区画構造]
本発明の取り合い部構造は、防火区画構造に使用することができる。防火区画構造は、少なくとも間仕切壁12と壁10により形成されるものであり、間仕切壁12と壁10の取り合い構造に上記した取り合い部材11が設けられることで、建築基準法に定められた適切な防火区画にすることができる。
【0057】
[用途]
本発明の取り合い部構造又は防火区画構造は、集合住宅、商業施設、ホテル、劇場、オフィスビル、工場、倉庫などの大型建築物に使用されることが好ましい。耐火性、断熱性のいずれにも優れたこれらの構造が大型建築物に使用されることで、耐火性、断熱性の性能を最大限に発揮することができる。また、施工性にも優れていることから、工期を大幅に短縮させることができ、特に大型建築物の建設においては、その効果を最大限に発揮することができる。
【実施例0058】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0059】
[使用材料]
実施例において、取り合い部構造の材料として使用した各部材の詳細は次の通りである。
・断熱材(取り合い部):不燃性ウレタン系樹脂組成物(積水化学工業社製、ウレタン系不燃断熱材料、製品名「PUX FLAME」)
・間仕切壁:耐火石膏ボード
・ケイカル板
【0060】
各物性及び性状の測定方法は、以下のとおりである。
[耐火試験]
上記使用材料から作製した取り合い部構造の模擬サンプルについて、ISO834に準拠した耐火試験を実施した。該耐火試験においては、遮煙性及び遮熱性を評価した。また、模擬サンプルの加熱面の裏側に熱電対を取り付けて、耐火試験開始前の裏面温度と、上記耐火試験にて60分間加熱した直後の裏面温度とを測定し、これらの裏面温度の上昇幅を求めた。これらの結果を表1に示す。
なお、模擬サンプルは、以下のように作製した。四角形の開口が設けられた金属板の開口内縁に額縁状のケイカル板を固定した。開口においてケイカル板のさらに内側に厚み80mmの石膏ボードを配置した。この際、ケイカル板と石膏ボードの間には、30mmの隙間があった。ケイカル板と石膏ボードの間に、吹付により、不燃性ウレタン樹脂組成物を充填し、模擬的に不燃有機材料により形成された取り合い部を作製した。熱電対は取り合い部に取り付けた。
【0061】
【0062】
[熱伝導率]
ISO 22007-2に準拠して、厚み方向の熱伝導率を測定した。
【0063】
[総発熱量]
実施例で使用した断熱材の総発熱量は、以下の方法により評価した。
上記した不燃性ウレタン系樹脂組成物から形成した断熱材を、縦99mm、横99mmおよび厚み50mmに切断して、コーンカロリーメーター試験用サンプルを準備した。コーンカロリーメーター試験用サンプル用いて、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/m2にて5分間、10分間、20分間加熱したときのコーンカロリーメーター試験による5分経過後、10分経過後、20分経過後それぞれの総発熱量を測定した。
【0064】
実施例における、上記耐火試験に係るもの以外の各物性及び性状の測定結果は、以下のとおりである。
[熱伝導率]
0.033W/m・K以下であった。
[総発熱量]
20分経過後で、8MJ/m2以下であった。
【0065】
本発明の要件を満たす取り合い部構造は、施工性に優れるだけでなく、また、以上の実施例の結果から明らかなように、耐火性、断熱性のいずれにも優れている。