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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166914
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077773
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】前地 洋明
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730BB27
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】高出力時においても、スイッチング損失を低減できるDC-DCコンバータを実現する。
【解決手段】DC-DCコンバータ(1)は、第1レグ(11)および第2レグ(12)を含む1次側ブリッジ回路(10)と、第3レグ(21)および第4レグ(22)を含む2次側ブリッジ回路(20)と、変換部(30)と、を備え、半周期毎にスイッチングし、互いに位相差を有する第1仮想レグ(Q1)および第2仮想レグ(Q2)ならびに第3仮想レグ(Q3)および第4仮想レグ(Q4)を含み、各レグを制御する各仮想レグを切り替える。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の1次側スイッチング素子と、各前記1次側スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される還流ダイオードと、を含み、第1レグと第2レグとを有した1次側ブリッジ回路と、
複数の2次側スイッチング素子と、各前記2次側スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される還流ダイオードと、を含み、第3レグと第4レグとを有した2次側ブリッジ回路と、
トランスを有し、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、
前記1次側スイッチング素子および前記2次側スイッチング素子を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1レグを第1仮想レグ、前記第2レグを第2仮想レグ、前記第3レグを第3仮想レグ、前記第4レグを第4仮想レグと見なす第1動作と、
前記第2レグを第1仮想レグ、前記第1レグを第2仮想レグ、前記第4レグを第3仮想レグ、前記第3レグを第4仮想レグと見なす第2動作とを、交互に実行するとともに、
前記第1動作および前記第2動作を通じて、前記第1仮想レグ、第2仮想レグ、第3仮想レグ及び第4仮想レグにおいて、各スイッチング素子が半周期毎にスイッチングが行われ、
前記仮想第1レグと前記仮想第2レグとの間に第1レグ間位相差を設け、
前記仮想第3レグと前記仮想第4レグとの間に第2レグ間位相差を設け、
前記第1レグ間位相差と前記第2レグ間位相差の比を、前記1次側ブリッジ回路の入力電圧と前記2次側ブリッジ回路の出力電圧の比に応じた値に定めて、
各前記1次側スイッチング素子および各前記2次側スイッチング素子を制御することを特徴とする、DC-DCコンバータ。
【請求項2】
前記第1動作と前記第2動作とを1周期毎に切り替えることを特徴とする、請求項1に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1動作と前記第2動作とを前記周期のN倍の期間(Nは1以上の自然数)毎に切り替えることを特徴とする、請求項1に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、
前記仮想第1レグと前記仮想第3レグとの間にブリッジ間位相差を設け、
前記ブリッジ間位相差の長さを、前記第1レグから前記第4レグまでの各レグにおけるデッドタイムの長さと等しいように定めることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項5】
前記1次側ブリッジ回路の入力側から、前記2次側ブリッジ回路の出力側へと電力が伝送される場合に、
前記第1動作においては、各前記1次側スイッチング素子、および前記第3レグの各前記2次側スイッチング素子は、それぞれに流れる電流が0のときにスイッチングし、前記第2動作においては、各前記1次側スイッチング素子、および前記第4レグの各前記2次側スイッチング素子は、それぞれに流れる電流が0のときにスイッチングすることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項6】
前記2次側ブリッジ回路の1次側換算出力電圧は、前記1次側ブリッジ回路の入力電圧よりも高圧であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項7】
前記第1レグ間位相差をφL1、前記第2レグ間位相差をφL2、前記1次側ブリッジ回路の入力電圧をE1、前記2次側ブリッジ回路の出力電圧をE2、前記変換部の前記トランスの2次側に対する1次側の巻線比をnとしたとき、次式の関係が成立することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のDC-DCコンバータ。
【数4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
デュアルアクティブブリッジ方式のDC-DCコンバータが知られている。
【0003】
特許文献1には、スイッチ4つによる1次側のフルブリッジ回路と、スイッチ2つとダイオード2つによる2次側のフルブリッジ回路とによる、昇圧動作におけるスイッチング損失を低減できる手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-75943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のDC-DCコンバータでは、低出力時では、スイッチング素子に電流が流れていない期間にスイッチングを行うことができるため、スイッチング損失を低減することができる。しかし、高出力時にまで、各スイッチング素子において、スイッチングを行うタイミングには電流が流れないようにすることはできず、高出力時にはスイッチング損失が発生してしまうことが判明した。
【0006】
本発明の一態様は、高出力時においても、スイッチング損失を低減できるDC-DCコンバータを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るDC-DCコンバータは、複数の1次側スイッチング素子と、各前記1次側スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される還流ダイオードと、を含み、第1レグと第2レグとを有した1次側ブリッジ回路と、複数の2次側スイッチング素子と、各前記2次側スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される還流ダイオードと、を含み、第3レグと第4レグとを有した2次側ブリッジ回路と、トランスを有し、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、前記1次側スイッチング素子および前記2次側スイッチング素子を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1レグを第1仮想レグ、前記第2レグを第2仮想レグ、前記第3レグを第3仮想レグ、前記第4レグを第4仮想レグと見なす第1動作と、前記第2レグを第1仮想レグ、前記第1レグを第2仮想レグ、前記第4レグを第3仮想レグ、前記第3レグを第4仮想レグと見なす第2動作とを、交互に実行するとともに、前記第1動作および前記第2動作を通じて、前記第1仮想レグ、第2仮想レグ、第3仮想レグ及び第4仮想レグにおいて、各スイッチング素子が半周期毎にスイッチングが行われ、前記仮想第1レグと前記仮想第2レグとの間に第1レグ間位相差を設け、前記仮想第3レグと前記仮想第4レグとの間に第2レグ間位相差を設け、前記第1レグ間位相差と前記第2レグ間位相差の比を、前記1次側ブリッジ回路の入力電圧と前記2次側ブリッジ回路の出力電圧の比に応じた値に定めて、各前記1次側スイッチング素子および各前記2次側スイッチング素子を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、高出力時においてもスイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係るDC-DCコンバータを示す回路図である。
図2】参考動作例に係るDC-DCコンバータの昇圧動作における制御信号のタイミングチャートである。
図3】参考動作例に係るDC-DCコンバータにおける各スイッチング素子の電圧および電流波形である。
図4】参考動作例に係るDC-DCコンバータでの最大出力時における各スイッチング素子の電圧および電流波形である。
図5】参考動作例に係るDC-DCコンバータにおける複数周期でのタイミングチャートである。
図6】参考動作例に係るDC-DCコンバータの昇圧動作におけるデッドタイムを考慮した場合での、制御信号のタイミングチャートである。
図7】参考動作例に係るDC-DCコンバータにおけるデッドタイムを考慮した場合での、各スイッチング素子の電圧および電流波形である。
図8図7におけるスイッチング素子S5をターンオフする前後を拡大した図である。
図9】参考動作例に係るDC-DCコンバータの昇圧動作におけるデッドタイムを考慮し、電力損失を削減した場合での、制御信号のタイミングチャートである。
図10】参考動作例に係るDC-DCコンバータにおけるデッドタイムを考慮し、電力損失を削減した場合での、各スイッチング素子の電圧および電流波形である。
図11図10におけるスイッチング素子S5をターンオフする前後を拡大した図である。
図12】実施形態1に係るDC-DCコンバータにおける複数周期でのタイミングチャートである。
図13】参考動作例と実施形態1とでのタイミングチャートを比較したものである。
図14】実施形態1に係るDC-DCコンバータにおける制御部のブロック図を示す。
図15】第1仮想レグ、第2仮想レグ、および切替信号SELによって、第1レグおよび第2レグを制御するタイミングチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔参考動作例〕
実施形態1の説明に先立ち、まず、図1~11を用いて本発明の参考動作例について、詳細に説明する。
【0011】
(DC-DCコンバータ1の構成)
図1は、実施形態1に係るDC-DCコンバータ1を示す回路図である。DC-DCコンバータ1は、1次側ブリッジ回路10と、2次側ブリッジ回路20と、変換部30と、制御部40と、を備える。
【0012】
1次側ブリッジ回路10は、1次側電圧E1の直流電源に接続されている。2次側ブリッジ回路20は、2次側電圧E2の直流電源に接続されている。ここで、1次側電圧E1および2次側電圧E2は、制御部40が取得する時間平均値であり、後述する制御に用いる。
【0013】
1次側ブリッジ回路10は、4つの1次側スイッチング素子S1~S4が設けられたフルブリッジ回路である。1次側ブリッジ回路10は、第1レグ11と、第2レグ12と、コンデンサ素子C1とにより構成されている。第1レグ11は、1次側スイッチング素子S1と1次側スイッチング素子S2とが直列に接続されている。第2レグ12は、1次側スイッチング素子S3と1次側スイッチング素子S4とが直列に接続されている。
【0014】
2次側ブリッジ回路20は、4つの2次側スイッチング素子S5~S8が設けられたフルブリッジ回路である。2次側ブリッジ回路20は、第3レグ21と、第4レグ22と、コンデンサ素子C2とにより構成されている。第3レグ21は、2次側スイッチング素子S5と2次側スイッチング素子S6とが直列に接続されている。第4レグ22は、2次側スイッチング素子S7と2次側スイッチング素子S8とが直列に接続されている。
【0015】
1次側スイッチング素子S1~S4および2次側スイッチング素子S5~S8(以降、まとめてスイッチング素子S1~S8と称する)は、それぞれ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)またはその他のFET(Field Effect Transistor)で構成できる。あるいは、スイッチング素子S1~8は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、その他のトランジスタで構成されてもよい。以降は、スイッチング素子S1~S8としては、MOSFET前提の記述とする。
【0016】
スイッチング素子S1~S8には、還流ダイオードD1~D8がそれぞれ並列に接続されている。
【0017】
変換部30は、巻線比n(=1次巻線の巻線数/2次巻線の巻線数)のトランスTrを少なくとも備える。図1の回路図においては、変換部30のインダクタンス成分が、1次側に設けられたリアクトルL1と、2次側に設けられたリアクトルL2として等価的に表されている。図1の等価回路においてリアクトルL1は、1次側スイッチング素子S1と1次側スイッチング素子S2との接続点と、トランスTrの1次巻線に接続されている。リアクトルL2は、2次側スイッチング素子S5と2次側スイッチング素子S6との接続点と、トランスTrの2次巻線に接続されている。
【0018】
変換部30に現実の素子としてのリアクトル素子が設けられる場合には、リアクトル素子は、トランスTrの1次側に配置されても、2次側に配置されても、あるいは両方に配置されてもよい。
【0019】
変換部30の1次側の電圧、すなわち、1次側スイッチング素子S3と1次側スイッチング素子S4との接続点から、1次側スイッチング素子S1と1次側スイッチング素子S2との接続点までの電圧を、1次側交流電圧Vac1とする。また、変換部30の1次側の電流、すなわち、変換部30と1次側ブリッジ回路10との間に流れる電流を、1次側交流電流Iac1とする。
【0020】
変換部30の2次側の電圧、すなわち、2次側スイッチング素子S7と2次側スイッチング素子S8との接続点から、2次側スイッチング素子S5と2次側スイッチング素子S6との接続点までの電圧を、2次側交流電圧Vac2とする。また、変換部30の2次側の電流、すなわち、変換部30と2次側ブリッジ回路20との間に流れる電流を、2次側交流電流Iac2とする。
【0021】
制御部40は、1次側電圧E1と、2次側電圧E2とを参照して、スイッチング素子S1~S8のスイッチングを制御する。
【0022】
ここで、DC-DCコンバータ1の構成として、1次側から2次側へと電力が伝送されることを想定している。そのため、1次側電圧を入力電圧と、2次側電圧を出力電圧とも呼称する。また、2次側ブリッジ回路の出力電圧は、1次側ブリッジ回路の入力電圧よりも、巻線比nを考慮した上で高圧とする。つまり、2次側ブリッジ回路の1次側換算出力電圧は、1次側ブリッジ回路の入力電圧よりも高圧とする。すなわち、DC-DCコンバータ1は昇圧動作で動作するものとする。
【0023】
参考動作例のDC-DCコンバータ1は、双方向のデュアルアクティブブリッジ方式のDC-DCコンバータである。各部の名称の「1次」および「2次」という表現は、便宜上のものであり、電力の伝送方向に応じ、入力側を1次、出力側を2次と表しているにすぎない。
【0024】
(DC-DCコンバータ1の昇圧動作)
図2は、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1の昇圧動作における制御信号のタイミングチャートである。タイミングチャートとしては、各スイッチング素子S1~8の制御信号と1次側/2次側交流電圧および電流の変化を表している。各制御信号は、オン(High)で閉を表し、オフ(Low)で開を表す。
【0025】
図2に示すように、各スイッチング素子は半周期ごとにスイッチングを行う。すなわち、各スイッチング素子のデューティ比は50%である。
【0026】
第2レグ12のスイッチング素子S3は、第1レグ11のスイッチング素子S1に対して第1レグ間位相差φL1分だけ遅れた制御信号でオンオフする。第4レグ22のスイッチング素子S7は、第3レグ21のスイッチング素子S5に対して第2レグ間位相差φL2分だけ遅れた制御信号でオンオフする。1次側ブリッジ回路10と2次側ブリッジ回路20との間には位相差を設けない。スイッチング素子S2、4、6、8はそれぞれスイッチング素子S1、3、5、7に対し180°位相がずれてスイッチングする。つまり、第1レグと第2レグとの間に第1レグ間位相差φL1を設け、第3レグと第4レグとの間に第2レグ間位相差φL2を設けている。
【0027】
第1レグ間位相差φL1と第2レグ間位相差φL2との比を、1次側ブリッジ回路の入力電圧(1次側電圧E1)と2次側ブリッジ回路の出力電圧(2次側電圧E2)の比に応じて、次式の関係が成立するように定めている。
【数1】
参考動作例では、この関係性を満たしさえすれば、リアクトルL1、L2の値およびスイッチング周波数等には関係なく、DC-DCコンバータ1を制御することができる。
【0028】
図3は、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1における各スイッチング素子の電圧および電流波形である。図3においては、スイッチング素子S1、3、5、7に関して示したが、スイッチング素子S2、4、6、8に関する波形はそれぞれの位相が180°ずれた波形(逆位相の波形)になる。
【0029】
図2では、各スイッチング素子S1~8の制御信号に関して示したが、図3では各スイッチング素子S1、3、5、7の電圧および電流波形を示す。ここで、電流は各スイッチング素子におけるドレインからソースへと流れる電流であり、電圧は各スイッチング素子におけるソースに対するドレインの電位差である。
【0030】
そのため、図2図3の電圧波形とを比較した場合、各スイッチング素子がオンになっている区間において、電圧波形は0になり、各スイッチング素子がオフになっている区間において、電圧波形は0以外の値となることに注意されたい。また、電流が正の値の場合は、各スイッチング素子を電流が流れており、電流が負の値の場合は、各スイッチング素子に並列に接続された還流ダイオードを電流が流れている。
【0031】
図3に示すように、スイッチング素子S1、3、5に関して、ターンオン時およびターンオフ時において、スイッチング素子S1、3、5を流れる電流が0である。そのため、ターンオンおよびターンオフに伴う電力損失が発生しない。
【0032】
対して、スイッチング素子S7に関しては、ターンオン時およびターンオフ時において、ともにスイッチング素子S7を流れる電流が0ではない。そのため、ターンオンおよびターンオフに伴う電力損失が発生する。
【0033】
S2、4、6、8はS1、3、5、7に対し対称的に動作する。つまり、1次側ブリッジ回路10の入力側から、2次側ブリッジ回路20の出力側へと電力が伝送される場合に、1次側スイッチング素子S1~S4、および第3レグの2次側スイッチング素子S5~S6は、それぞれに流れる電流が0のときにスイッチングする。そのため、スイッチング素子S1~S6においては、スイッチング損失が発生せず、スイッチング損失を低減することができる。
【0034】
このように、第1レグ間位相差φL1と第2レグ間位相差φL2の比が上式を満たすように制御することで、2次側の一方のレグ(第4レグ22)を除いた各レグのスイッチング素子は、ターンオン時およびターンオフ時に、スイッチング素子を流れる電流が0となる。
【0035】
これは次の2点からである。
【0036】
(i)(a)2次側交流電圧Vac2が0であり1次側交流電圧Vac1のみが変換部30に印加される区間と、(b)2次側交流電圧Vac2から1次側交流電圧Vac1を差し引いた電圧が変換部30に印加される区間と、における、電圧の時間積分値が0となる。すなわち、(a)の区間の時間積分値は、(b)の区間の時間積分値の絶対値が等しく、逆符号である。
【0037】
さらに、(ii)第2レグがスイッチングするタイミング、すなわち、1次側交流電圧Vac1が0ではなくなるタイミングにおいて、1次側交流電流Iac1が0である。
【0038】
(最大出力時の電圧・電流波形)
伝送する電力は、第1レグ間位相差φL1の値によって決まり、第1レグ間位相差φL1が大きいほど、伝送する電力は大きくなる。そのため、第1レグ間位相差φL1が180°の場合が最大出力となる。
【0039】
図4は、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1での最大出力時における各スイッチング素子の電圧および電流波形である。図4においては、スイッチング素子S1、3、5、7に関して示したが、スイッチング素子S2、4、6、8に関する波形はそれぞれの位相が180°ずれた波形になる。
【0040】
図4に示すように最大出力時においても、スイッチング素子S1~6においてはターンオン時およびターンオフ時に各スイッチング素子S1~6に流れる電流が0になっているため、スイッチング素子S1~6におけるスイッチングに伴う電力損失が発生しない。そのため、参考動作例に係る昇圧動作では、出力電力によらずスイッチング損失を低減することができる。
【0041】
また、図5は、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1における複数周期でのタイミングチャートである。
【0042】
図5において、制御信号S1~S4は、それぞれのスイッチング素子S1~S4をオンオフする信号である。ここで、当該制御信号S1~S4ではデッドタイムを考慮していない。デッドタイムの考慮に関しては、後述する。
【0043】
また、「S1電圧」はスイッチング素子S1におけるソースに対するドレインの電位差であり、「S1電流」は正の場合は、スイッチング素子S1におけるドレインからソースへと流れる電流であり、負の場合は、還流ダイオードD1におけるアノードからカソードへと流れる電流である。「S3」、「S5」、「S7」に関しても「S1」と同様である。また、スイッチング素子S2、S4、S6、S8に関しては、それぞれスイッチング素子S1、S3、S5、S7に対して半周期位相がおくれた波形となる。
【0044】
(デッドタイム)
上述した参考動作例においては、簡単にするためにデッドタイムを考慮していなかった。ここで、実際の動作に即するために、デッドタイムを考慮する。
【0045】
ここで、デッドタイムとは、各レグの直列に接続された2個のスイッチング素子が同時にオンとなることによって、貫通電流が流れることを防ぐための時間である。
【0046】
(デッドタイムによる損失発生)
図6は、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1の昇圧動作におけるデッドタイムを考慮した場合での、制御信号のタイミングチャートである。図7は、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1におけるデッドタイムを考慮した場合での、各スイッチング素子の電圧および電流波形である。
【0047】
図6図2と比較すると、各レグで同時に各スイッチング素子がオフになっている期間がある。この期間がデッドタイムである。
【0048】
図8は、図7におけるスイッチング素子S5をターンオフする前後を拡大した図である。図8の上図は、スイッチング素子S5をターンオフする前後のコレクタ‐エミッタ間電圧およびコレクタ電流の波形を拡大した図である。図8の下図は、スイッチング素子S5をターンオフする前後のスイッチング素子S5、6のゲート‐ソース間電圧の波形を拡大した図である。
【0049】
図8の上図に示すように、スイッチング素子S5(またはスイッチング素子S6)がターンオフするタイミング(コレクタ‐エミッタ間電圧が立ち上がるタイミング)において、コレクタ電流が流れているため、電力損失が発生してしまう。この電力損失はスイッチング素子S1(またはスイッチング素子S2)でも発生する。
【0050】
また、図8の下図において、スイッチング素子S5のゲート‐ソース間電圧が下がり始めて、スイッチング素子S6のゲート‐ソース間電圧が上がり始めるまでの間隔がデッドタイムである。
【0051】
(デッドタイムによる損失分の削減)
そこで更に、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1では、デッドタイムによる損失を削減するための制御を実行する。デッドタイムを考慮し、デッドタイムより前に電流が0となるように制御する。図9は、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1の昇圧動作におけるデッドタイムを考慮し、電力損失を削減した場合での、制御信号のタイミングチャートである。図10は、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1におけるデッドタイムを考慮し、電力損失を削減した場合での、各スイッチング素子の電圧および電流波形である。
【0052】
図9は、図6と同様に、各レグで同時に各スイッチング素子がオフになっている期間があり、デッドタイムを考慮していることがわかる。また、図6図9とを比較すると、1次側ブリッジ回路10と2次側ブリッジ回路20との間にブリッジ間位相差φBを設けていることがわかる。当該ブリッジ間位相差φBの長さを、第1レグから第4レグまでの各レグにおけるデッドタイムの長さと等しいように定める。
【0053】
図11は、図10におけるスイッチング素子S5をターンオフする前後を拡大した図である。図11の上図は、スイッチング素子S5をターンオフする前後のコレクタ‐エミッタ間電圧およびコレクタ電流の波形を拡大した図である。図11の下図は、スイッチング素子S5をターンオフする前後のスイッチング素子S5、6のゲート‐ソース間電圧の波形を拡大した図である。
【0054】
図11図8とを比較すると、スイッチング素子S5(またはスイッチング素子S6)がターンオフするタイミング(コレクタ‐エミッタ間電圧が立ち上がるタイミング)において、流れるコレクタ電流が図8よりも図11の方が減少している。そのため、ブリッジ間位相差φBを設けることで、電力損失が低減していることがわかる。この傾向は、スイッチング素子S1(またはスイッチング素子S2)でも同様である。
【0055】
また、図11においても、スイッチング素子を流れるコレクタ電流が完全に0とはなっていない。これは、一般的なスイッチング素子は、理想的な素子による理論計算とは異なる特性をもっており、寄生成分が含まれるためである。この電力損失を解消するためには、スイッチング素子を構成する半導体の寄生成分を考慮するように、ブリッジ間位相差φBを微調整する必要がある。
【0056】
ただし、スイッチング素子に寄生成分がなく、理想的な理論計算に則った素子である場合は、ブリッジ間位相差φBの長さを、デッドタイムの長さと等しいように定めることによって、スイッチング損失を0にすることができる。
【0057】
(小括)
したがって、数1の関係を満たす、第1レグ間位相差φL1および第2レグ間位相差φL2を設け、デッドタイムと等しいブリッジ間位相差φBを設けることで、スイッチング素子S1~S6において、ZCS(Zero Current Switching)が可能であり、損失を低減することができる。
【0058】
しかしながら、参考動作例では、スイッチング素子S7およびS8ではZCSすることができない。そのため、当該スイッチング素子S7およびS8において発熱し、DC-DCコンバータ1としての発熱が当該スイッチング素子S7およびS8に局所化するため、放熱が効率的ではなくなる。
【0059】
〔実施形態1〕
次に、実施形態1に係るDC-DCコンバータ1における平準化した整流器動作に関して説明する。実施形態1に係るDC-DCコンバータ1は、参考動作例に係るDC-DCコンバータ1と同様の回路を有する。
【0060】
まず、実施形態1の概要を説明する。実施形態1では、参考動作例の2次側ブリッジ回路20において、スイッチング素子S7およびS8においてのみスイッチング損失が大きくなるように動作していたのに対し、スイッチング素子S5~S8におけるスイッチング損失が均一化するように動作させる。そのために、参考動作例における各レグの動作をスイッチングの周期毎に第1レグ11と第2レグ12間および第3レグ21と第4レグ22間で入れ替えることで、各レグの発熱を平準化し、放熱効率を向上させる。
【0061】
具体的には、実施形態1では、第1仮想レグQ1、第2仮想レグQ2、第3仮想レグQ3、および第4仮想レグQ4を定義し、制御部が第1仮想レグQ1、第2仮想レグQ2、第3仮想レグQ3、第4仮想レグQ4を、それぞれ参考動作例における第1レグ11、第2レグ12、第3レグ21、および第4レグ22と同様に制御するものとする。その上で、更に、第1レグ11を第1仮想レグQ1、第2レグ12を第2仮想レグQ2、第3レグ21を第3仮想レグQ3、および第4レグ22を第4仮想レグQ4と見なす第1動作と、第2レグ12を第1仮想レグQ1、第1レグ11を第2仮想レグQ2、第4レグ22を第3仮想レグQ3、および第3レグ21を第4仮想レグQ4と見なす第2動作と、をスイッチング周期毎に交互に実行するように各スイッチング素子を制御する。
【0062】
図12は、実施形態1に係るDC-DCコンバータ1における複数周期でのタイミングチャートである。また、図13は、参考動作例と実施形態1とでのタイミングチャートを比較したものである。
【0063】
図13において、参考動作例と実施形態1とに係るタイミングチャートを比較すると、1次側電流I1および2次側電流I2は同一であるのに対し、1次側交流電圧Vac1、2次側交流電圧Vac2、および1次側交流電流Iac1は異なっている。
【0064】
参考動作例では、1次側交流電圧Vac1、2次側交流電圧Vac2、および1次側交流電流Iac1がそれぞれ半周期毎に正負が反転するような振動波形になっている。
【0065】
対して、実施形態1では、1次側交流電圧Vac1、2次側交流電圧Vac2、および1次側交流電流Iac1がそれぞれ1周期毎に正負が反転するような振動波形になっている。ただし、当該振動波形は、半周期毎に正負が反転しない範囲で振動しており、その結果、1周期において、正負が反転しない範囲において2度の振動を成している。
【0066】
(第1仮想レグQ1~第4仮想レグQ4)
制御部40の内部では、第1仮想レグQ1(図示省略)、第2仮想レグQ2(図示省略)、第3仮想レグQ3(図示省略)、および第4仮想レグQ4(図示省略)を制御する信号に相当する信号が含まれていてもよい。この場合、制御部40は、第1仮想レグQ1、第2仮想レグQ2、第3仮想レグQ3、および第4仮想レグQ4を介して第1レグ11、第2レグ12、第3レグ21、および第4レグ22を制御する。
【0067】
第1仮想レグQ1、第2仮想レグQ2、第3仮想レグQ3、および第4仮想レグQ4は、それぞれデューティを50%、すなわち半周期毎にスイッチングする。第1仮想レグQ1と第2仮想レグQ2との間に第1レグ間位相差φL1を設け、第3仮想レグQ3と第4仮想レグQ4との間に第2レグ間位相差φL2を設ける。第1レグ間位相差φL1と第2レグ間位相差φL2との比を、1次側ブリッジ回路の入力電圧(1次側電圧E1)と2次側ブリッジ回路の出力電圧(2次側電圧E2)の比に応じて、次式の関係が成立するように定めている。
【数2】
実施形態1では、この関係性を満たしさえすれば、リアクトルL1、L2の値およびスイッチング周波数等には関係なく、DC-DCコンバータ1を制御することができる。
【0068】
(切替信号SEL)
制御部40において、スイッチング素子S1~S8の制御信号を生成するための具体的手法について以下に説明する。制御部40は、切替信号SEL(図示省略)を含む。制御部40は2つの動作モードを有する。第1動作では、第1仮想レグQ1で第1レグ11を制御し、第2仮想レグQ2で第2レグ12を制御し、第3仮想レグQ3で第3レグ21を制御し、第4仮想レグQ4で第4レグ22を制御する。対して、第2動作では、第1仮想レグQ1で第2レグ12を制御し、第2仮想レグQ2で第1レグ11を制御し、第3仮想レグQ3で第4レグ22を制御し、第4仮想レグQ4で第3レグ21を制御する。この第1動作および第2動作のどちらを実行するかを選択する信号が切替信号SELである。ここで、第1動作では、参考動作例と同様の動作を行うことになる。
【0069】
切替信号SELによって、第1動作と第2動作とを切り替えることによって、図13における参考動作例での1次側交流電圧Vac1、2次側交流電圧Vac2、および1次側交流電流Iac1の正負を部分的に反転(図11の参考動作例における矢印箇所の正負を反転)し、図13における実施形態1での1次側交流電圧Vac1、2次側交流電圧Vac2、および1次側交流電流Iac1の波形を作っている。
【0070】
実際に切替信号SELを考慮した第1レグ11および第2レグ12は、図12のように制御されている。図5に対し図12では、各制御信号S1~S8の間隔が半周期ごとではなくなっている。これは、切替信号SELによって、例えば第1レグ11を制御するものが、第1仮想レグQ1から第2仮想レグQ2に変化し、第3レグ21を制御するものが、第3仮想レグQ3から第4仮想レグQ4に変化しているためである。
【0071】
また、「S5電流」および「S7電流」を比較すると、電流が流れている状況でスイッチング素子がオフしている場合と、電流が0の状況でスイッチング素子がオフしている場合と、が交互にあることがわかる。そのため、ZCSできていないスイッチング素子が交互になっており、熱損失が分散することになる。したがって、熱分布が改善し、放熱効率が向上する。
【0072】
(制御部40のブロック図)
図14は、実施形態1に係るDC-DCコンバータ1における制御部40のブロック図を示す。図14に示すように、2次側電圧E2および2次側電流I2から出力電力Poutを算出する。当該出力電力Poutと、目標電力Pout*とから電力偏差ΔPoutを導出する。
【0073】
電力偏差ΔPoutに対しゲインKpをかけた値と、第2レグ間位相差φL2とを足し合わせ、制御第2レグ間位相差φL2*を得る。数2の関係から、制御第2レグ間位相差φL2*を用いて、制御第1レグ間位相差φL1を導出する。
【0074】
PWM(Pulse Width Modulation)信号から第1仮想レグQ1、第2仮想レグQ2、第3仮想レグQ3、および第4仮想レグQ4を生成する。ここで、第2仮想レグQ2は、第1仮想レグQ1に対して、第1レグ間位相差φL1分だけ位相が遅れた信号であり、第4仮想レグQ4は、第3仮想レグQ3に対して、第2レグ間位相差φL2分だけ位相が遅れた信号である。
【0075】
また、図14に示すように、第1仮想レグQ1、第2仮想レグQ2、および切替信号SELを論理演算することで、スイッチング素子S1~S4のオンオフが決定する。第3仮想レグQ3、第4仮想レグQ4、および切替信号SELを論理演算することで、スイッチング素子S5~S8のオンオフが決定する。
【0076】
図15は、第1仮想レグQ1、第2仮想レグQ2、および切替信号SELによって、第1レグ11および第2レグ12を制御するタイミングチャートの一例である。図12の制御信号S1および制御信号S3は、図15の制御信号S1および制御信号S3と同様に、図14に示すブロック図に従い、第1仮想レグQ1、第2仮想レグQ2、および切替信号SELより導出している。
【0077】
また、第3仮想レグQ3、第4仮想レグQ4、および切替信号SELによって、第3レグ21および第4レグ22を制御するタイミングチャートは、図15において、第1仮想レグQ1を第3仮想レグQ3に、第2仮想レグQ2を第4仮想レグQ4に、制御信号S1を制御信号S5に、制御信号S3を制御信号S7に読み替えたものである。なお、制御信号S2、S4、S6、S8に関しては、それぞれ制御信号S1、S3、S5、S7の逆論理である。
【0078】
(小括)
したがって、DC-DCコンバータ1において電力を伝送する際に、ZCSを行うスイッチング素子を定期的に入れ替えることで平準化し、DC-DCコンバータ1の出力を維持したまま、スイッチング素子S1~S8の発熱を平準化することができる。そのため、DC-DCコンバータ1を構成するスイッチング素子S1~S8の放熱効率が改善する。
【0079】
(変形例)
実施形態1では、切替信号SELが1周期毎にオンオフしたが、これに限定されない。すなわち、切替信号SELは周期のN倍(Nは1以上の自然数)の期間にオンオフすればよい。
【0080】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係るDC-DCコンバータは、複数の1次側スイッチング素子と、各前記1次側スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される還流ダイオードと、を含み、第1レグと第2レグとを有した1次側ブリッジ回路と、複数の2次側スイッチング素子と、各前記2次側スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される還流ダイオードと、を含み、第3レグと第4レグとを有した2次側ブリッジ回路と、トランスを有し、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、前記1次側スイッチング素子および前記2次側スイッチング素子を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1レグを第1仮想レグ、前記第2レグを第2仮想レグ、前記第3レグを第3仮想レグ、前記第4レグを第4仮想レグと見なす第1動作と、前記第2レグを第1仮想レグ、前記第1レグを第2仮想レグ、前記第4レグを第3仮想レグ、前記第3レグを第4仮想レグと見なす第2動作とを、交互に実行するとともに、前記第1動作および前記第2動作を通じて、前記第1仮想レグ、第2仮想レグ、第3仮想レグ及び第4仮想レグにおいて、各スイッチング素子が半周期毎にスイッチングが行われ、前記仮想第1レグと前記仮想第2レグとの間に第1レグ間位相差を設け、前記仮想第3レグと前記仮想第4レグとの間に第2レグ間位相差を設け、前記第1レグ間位相差と前記第2レグ間位相差の比を、前記1次側ブリッジ回路の入力電圧と前記2次側ブリッジ回路の出力電圧の比に応じた値に定めて、各前記1次側スイッチング素子および各前記2次側スイッチング素子を制御する。
【0081】
上記の構成によれば、第3レグおよび第4レグがZCSする場合と、ZCSしない場合と、を切り替えることによって、スイッチング素子における発熱を分散することができ、放熱効率が良い。
【0082】
本発明の態様2に係るDC-DCコンバータは、上記態様1において、前記第1動作と前記第2動作とを1周期毎に切り替えてもよい。
【0083】
上記の構成によれば、ZCSするレグを1周期毎で切り替えることができる。そのため、発熱を第3レグと第4レグとの間で均一化することができる。
【0084】
本発明の態様3に係るDC-DCコンバータは、上記態様1において、前記第1動作と前記第2動作とを前記周期のN倍の期間(Nは1以上の自然数)毎に切り替えてもよい。
【0085】
上記の構成によれば、ZCSするレグを周期のN倍の期間で切り替えることができる。そのため、発熱を第3レグと第4レグとの間で均一化することができる。
【0086】
本発明の態様4に係るDC-DCコンバータは、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記制御部は、さらに、前記仮想第1レグと前記仮想第3レグとの間にブリッジ間位相差を設け、前記ブリッジ間位相差の長さを、前記第1レグから前記第4レグまでの各レグにおけるデッドタイムの長さと等しいように定めてもよい。
【0087】
上記の構成によれば、デッドタイムにおいて生じるスイッチング損失を低減することができる。
【0088】
本発明の態様5に係るDC-DCコンバータは、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記1次側ブリッジ回路の入力側から、前記2次側ブリッジ回路の出力側へと電力が伝送される場合に、前記第1動作においては、各前記1次側スイッチング素子、および前記第3レグの各前記2次側スイッチング素子は、それぞれに流れる電流が0のときにスイッチングし、前記第2動作においては、各前記1次側スイッチング素子、および前記第4レグの各前記2次側スイッチング素子は、それぞれに流れる電流が0のときにスイッチングしてもよい。
【0089】
上記の構成によれば、第1動作においては、第1レグ・第2レグ・第3レグにおけるスイッチングで、第2動作においては、第1レグ・第2レグ・第4レグにおけるスイッチングで、スイッチング損失を0にすることができる。
【0090】
本発明の態様6に係るDC-DCコンバータは、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記2次側ブリッジ回路の1次側換算出力電圧は、前記1次側ブリッジ回路の入力電圧よりも高圧であってもよい。
【0091】
上記の構成によれば、1次側ブリッジ回路よりも2次側ブリッジ回路の電圧を大きくすることができる。すなわち、DC-DCコンバータを昇圧動作させることができる。
【0092】
本発明の態様7に係るDC-DCコンバータは、上記態様1から6のいずれかにおいて、前記第1レグ間位相差をφL1、前記第2レグ間位相差をφL2、前記1次側ブリッジ回路の入力電圧をE1、前記2次側ブリッジ回路の出力電圧をE2、前記変換部の前記トランスの2次側に対する1次側の巻線比をnとしたとき、次式の関係が成立してもよい。
【0093】
【数3】
上記の構成によれば、第1レグ間位相差と第2レグ間位相差とを一意に定めることができる。
【0094】
〔ソフトウェアによる実現例〕
DC-DCコンバータ1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部40に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0095】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0096】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0097】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0098】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1 DC-DCコンバータ
10 1次側ブリッジ回路
11 第1レグ
12 第2レグ
20 2次側ブリッジ回路
21 第3レグ
22 第4レグ
30 変換部
40 制御部
D1~D8 還流ダイオード
Q1 第1仮想レグ
Q2 第2仮想レグ
Q3 第3仮想レグ
Q4 第4仮想レグ
SEL 切替信号
S1~S4 1次側スイッチング素子
S5~S8 2次側スイッチング素子
Tr トランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15