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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166954
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】消火器収納装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/78 20060101AFI20231115BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20231115BHJP
   A62C 35/20 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A62C13/78 A
A62C3/00 J
A62C35/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159925
(22)【出願日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2022077452
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB01
2E189EB09
(57)【要約】
【課題】監視員通路の通行を妨げることがなく、消火器を容易に取り出すことを可能とする。
【解決手段】消火栓装置10は、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面に配置された架台30の上に筐体11a、11bが設置される。消火栓装置10の消火器収納部には、側面消火器扉16の内側に消火器72を載置した引出本体32が筐体側面の引出開口34に対し出し入れ自在に設けられる。道路利用者が取出スイッチ27を操作すると、モータ駆動により消火器72を載置した引出本体32が、筐体側面の引出開口34から監視員通路の通行を妨げることのない外部の取出位置へ移動され、消火器72の取り出しを可能とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火器収納装置であって、
前記筐体内の消火器収納部に収納された消火器を、所定のスイッチの操作に応じて前記筐体の側面から外部の取り出し位置に移動させる消火器引出構造を設けたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火器収納装置において、
前記消火器引出構造は、
前記筐体の側面に形成された引出開口と、
前記引出開口に対応して前記筐体の内部に形成された消火器収納部と、
前記引出開口の底部側に位置して前記消火器収納部に対し出し入れ自在に設けられ、前記消火器を取り出し自在に載置する引出本体と、
前記引出本体の引出側の端部に設けられ、前記引出本体の出し入れに伴い前記引出開口に対し開閉される側面消火器扉と、
前記消火器収納部に対し前記引出本体を引出方向及び引入方向に移動自在に支持する引出機構と、
前記引出機構に移動自在に支持された前記引出本体を、前記スイッチの操作に応じて少なくとも前記引出開口から前記筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させる駆動機構と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項3】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記駆動機構は、
前記引出本体の引出方向に沿った所定位置に配置されたラックバーと、
前記ラックバーに噛み合ったピニオンギアと、
前記ピニオンギアの回転により前記ラックバーを移動して、前記引出本体を前記筐体の側面の前記引出開口から出し入れする駆動源と、
前記スイッチの操作により、前記引出本体の引出方向又は引入方向に前記駆動源を駆動させる制御部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項4】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記駆動機構は、
前記引出本体を前記引出開口から前記筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させるプーリー機構と、
前記プーリー機構を駆動する駆動源と、
前記スイッチの操作により、前記引出本体の引出方向に前記駆動源を駆動させる制御部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項5】
請求項4記載の消火器収納装置において、
前記プーリー機構は、
前記消火器収納部の前記引出開口に近い所定位置に配置された折返しプーリーと、
前記引出本体の後端部に一端が固定され、他端が前記折返しプーリーを巻き回した後に前記後端部側へ戻された紐部材と、
前記消火器収納部の所定位置に配置され、前記紐部材の他端が固定された巻取りプーリーと、
を備え、
前記駆動源は、前記巻取りプーリーを回転させて前記紐部材を巻き取ることにより、前記引出本体を前記引出開口から前記筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項6】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記駆動機構は、
前記引出本体を引出方向に突き出して前記引出開口から前記筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させるプランジャー駆動部と、
前記スイッチの操作により、前記引出本体を外部に突き出す方向に前記プランジャー駆動部を駆動させる制御部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項7】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記駆動機構は、
前記引出本体を引出方向に突き出して前記引出開口から前記筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させる第1プランジャー駆動部と、
前記第1プランジャー駆動部による前記引出本体の引出方向への突き出しに先立ち、前記引出本体の係止を解除する第2プランジャー駆動部と、
前記スイッチの操作により、前記第1プランジャー駆動部と第2プランジャー駆動部と駆動させる制御部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項8】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記駆動機構は、
シリンダ内に摺動自在に設けられたピストンのロックを解除して充填した不活性ガスの圧力に基づき前記シリンダと前記ピストンを相対移動させるロック制御機構を備えたガスダンパーと、
前記スイッチの操作により、前記ガスダンパーのロックを解除して前記引出本体を外部の引出位置に移動させる制御部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れかに記載の消火器収納装置において、
前記引出機構は、水平方向に対し斜め下向きに傾斜した所定角度の引出方向に前記引出本体を移動自在に支持することを特徴とする消火器収納装置。
【請求項10】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記駆動機構は、
前記消火器収納部の、前記引出本体の引出方向に沿った所定位置に回転自在に配置されたねじ軸と、
前記引出本体の奥行側の所定位置に配置され、ねじ穴が前記ねじ軸に螺合した移動部材と、
前記ねじ軸の回転により前記移動部材を移動して、前記引出本体を前記筐体の側面の引出開口から出し入れする駆動源と、
前記スイッチの操作により、前記引出本体の引出方向又は引入方向に前記駆動源を駆動させる制御部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項11】
請求項3又は10記載の消火器収納装置において、
前記制御部は、
前記消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
前記消火器の収納を指示する収納スイッチと、
前記引出本体の取出位置への移動を検出する第1位置検出器と、
前記引出本体の収納位置への移動を検出する第2位置検出器と、
前記取出スイッチの操作を検出した場合に前記引出本体の引出方向に前記駆動源を駆動し、その後、前記第1位置検出器から検出信号が得られた場合に前記駆動源の駆動を停止し、前記収納スイッチの操作を検出した場合に前記引出本体の引入方向に前記駆動源を駆動し、その後、前記第2位置検出器から検出信号が得られた場合に前記駆動源の駆動を停止する制御回路部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項12】
請求項4又は5記載の消火器収納装置において、
前記制御部は、
前記消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
前記引出本体の取出位置への移動を検出する位置検出器と、
前記取出スイッチの操作を検出した場合に前記引出本体の引出方向に前記駆動源を駆動し、その後、前記位置検出器から検出信号が得られた場合に前記駆動源の駆動を停止する制御回路部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項13】
請求項6記載の消火器収納装置において、
前記制御部は、
前記消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
前記取出スイッチの操作を検出した場合に前記引出本体を外部へ突き出す方向に前記プランジャー駆動源を駆動する制御回路部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項14】
請求項7記載の消火器収納装置において、
前記制御部は、
前記消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
前記取出スイッチの操作を検出した場合に前記引出本体の係止を解除するように前記第2プランジャー駆動源を駆動するとともに前記引出本体を外部へ突き出す方向に前記第2プランジャー駆動源を駆動する制御回路部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項15】
請求項8記載の消火器収納装置において、
前記制御部は、
前記消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
前記消火器の収納を指示する収納スイッチと、
前記引出本体の取出位置への移動を検出する第1位置検出器と、
前記引出本体の収納位置への移動を検出する第2位置検出器と、
前記取出スイッチの操作を検出した場合に前記ガスダンパーのロックを解除して前記引出本体を外部の引出位置へ移動させ、その後、前記第1位置検出器から検出信号が得られた場合に前記ガスダンパーをロックして前記引出本体の移動を停止し、前記収納スイッチの操作を検出した場合に前記ガスダンパーのロックを解除して前記引出本体の前記収納位置への移動を許容し、その後、前記第2位置検出器から検出信号が得られた場合に前記ルダンパーをロックして前記引出本体の移動を停止制御回路部と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項16】
請求項11乃至15の何れかに記載の消火器収納装置において、
前記取出スイッチは、前記消火器収納部に対応した前記筐体前面に設けられた専用のスイッチ又は前記筐体前面の電装扉に設けられた発信機を含むスイッチであることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項17】
請求項1記載の消火器収納装置において、
前記筐体内の消火器収納部に、前記消火器が縦置き又は横置きに配置されたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項18】
請求項1記載の消火器収納装置において、
前記消火器引出機構により、縦置きされた前記消火器が前記引出位置へ移動した場合に、前記消火器の縦置きされた状態を維持しながら前方の前記監視員通路の路面上に移動させる消火器移動機構を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項19】
請求項18記載の消火器収納装置において、
前記消火器移動機構は、
少なくとも前方及び上方に開口し、内部に前記消火器を縦置き状態で載置して前記引出本体に搭載された箱枠体と、
前記引出本体が前記引出位置に移動された場合に、前記箱枠体を前記引出本体から前記監視員通路の路面上の所定位置に移動させる平行リンク機構と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項20】
請求項18記載の消火器収納装置において、
前記平行リンク機構は、
前記引出本体の底部に固定された基台と、
下端が前記基台の後端側に軸支されるとともに上端が前記箱枠体の側面上部の後端側に軸支された第1横リンクと、
下端が前記基台の前端側に軸支されるとともに上端が前記箱枠体の側面上部の前端側に軸支された第2横リンクと、
を備え、
前記基台に前記第1横リンク及び前記第2横リンクの下端が軸支される位置が、前記基台に対し前記第1横リンクと前記第2横リンクが前方に回動して前記箱枠体が前記監視員通路の路面上に移動する際に、前記箱枠体の下部が前記基台に接触することなく通過する高さであることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項21】
請求項20記載の消火器収納装置において、
前記消火器移動機構は、
前記消火器引出構造により前記引出本体が前記引出位置に移動された場合に、前記箱枠体の前方への移動の固定を解除して前記平行リンク機構により前記箱枠体を前方へ移動させる固定機構を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火器等を収納してトンネル内に設置される消火栓装置及び消火器箱などを含む消火器収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内には、トンネル非常用設備として消火栓装置が設置されている。消火栓装置は、前傾扉(消火栓扉)を備えた筐体の消火栓収納部に、先端にノズルを装着した消火用ホースと消火栓弁を含むバルブ類が収納され、また、消火器扉を備えた消火器収納部に、例えば、2本の消火器が収納されている。また、消火栓装置は、一般的に、トンネル長手方向に、例えば、50メートル間隔でトンネル壁面を箱抜きして埋込み設置されている。
【0003】
ところで、シールド工法等により作られたトンネルにあっては、トンネル躯体の構造上、トンネル壁面を箱抜きして消火栓装置を埋込み設置することがコストや手間の関係から困難であることから、監視員通路に消火栓装置を露出した状態で設置する必要がある。
【0004】
また、消火栓装置をトンネル壁面に箱抜きすることなく設置するため、トンネル壁面に設置された架台に消火栓装置を取り付け固定する壁掛け構造が提案されており、この場合、架台は壁面に固定される主支持部と消火栓装置の姿勢を保持する姿勢保持部材等から構成されている(特許文献2)。
【0005】
また、壁掛け構造の消火栓装置はトンネル壁面への取付けに工数と時間がかかる等の課題があることから、設置が容易である監視員通路の路面上に設置した架台に消火栓装置を露出した状態で取り付け固定する、いわゆる据置き構造とすることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-055073号公報
【特許文献2】特開2020-078429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、壁掛け構造又は据え置き構造の消火栓装置にあっても、消火器扉を備えた筐体の消火器収納部に、例えば、2本の消火器が収納されており、火災発生に伴い道路利用者が消火器を使用する場合には、消火器扉を横開き(片側が軸支された扉が回動)して消火器収納部から消火器を取り出して消火作業を行うことになるが、消火器が取り出された後に消火器扉が横開きされたままになっていると、監視員通路から避難する避難者の通行を妨げるという問題がある。
【0008】
また、消火器扉を横開きした扉開口から消火器を取り出す場合、消火器上端の固定レバーを掴んで前に倒すようにして斜め上方に取り出す必要があり、消火器は10キログラム程度と比較的重いことから、女性や高齢者などの弱者にあっては、消火器の取り出しが大変となり、取り出す際に消火器を落としてしまうといったことが懸念される。
【0009】
この問題は、交通量やトンネル長さ等により分けられた低いランクのトンネルの非常用設備として設置されている消火器箱についても同様となる。
【0010】
本発明は、監視員通路の通行を妨げることがなく、また、道路利用者が消火器を容易に取り出すことを可能とする消火器収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(消火栓装置)
本発明は、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火器収納装置であって、
筐体内の消火器収納部に収納された消火器を、所定のスイッチの操作に応じて筐体の側面から外部の取り出し位置に移動させる消火器引出構造を設けたことを特徴とする。
【0012】
(消火器引出構造)
消火器引出構造は、
筐体の側面に形成された引出開口と、
引出開口に対応して筐体の内部に形成された消火器収納部と、
引出開口の底部側に位置して消火器収納部に対し出し入れ自在に設けられ、消火器を取り出し自在に載置する引出本体と、
引出本体の引出側の端部に設けられ、引出本体の出し入れに伴い引出開口に対し開閉される側面消火器扉と、
消火器収納部に対し引出本体を引出方向及び引入方向に移動自在に支持する引出機構と、
引出機構に移動自在に支持された引出本体を、スイッチの操作に応じて少なくとも引出開口から筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させる駆動機構と、
を備える。
【0013】
(ラックピニオン機構)
駆動機構は、
引出本体の引出方向に沿った所定位置に配置されたラックバーと、
ラックバーに噛み合ったピニオンギアと、
ピニオンギアの回転によりラックバーを移動して、引出本体を筐体の側面の引出開口から出し入れする駆動源と、
スイッチの操作により、引出本体の引出方向又は引入方向に駆動源を駆動させる制御部と、
を備える。
【0014】
(プーリー機構)
駆動機構は、
引出本体を引出開口から筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させるプーリー機構と、
プーリー機構を駆動する駆動源と、
スイッチの操作により、引出本体の引出方向に駆動源を駆動させる制御部と、
を備える。
【0015】
(プーリー機構の構成)
プーリー機構は、
消火器収納部の引出開口に近い所定位置に配置された折返しプーリーと、
引出本体の後端部に一端が固定され、他端が折返しプーリーを巻き回した後に後端部側へ戻された紐部材と、
消火器収納部の所定位置に配置され、紐部材の他端が固定された巻取りプーリーと、
を備え、
駆動源は、巻取りプーリーを回転させて紐部材を巻き取ることにより、引出本体を引出開口から筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させる。
【0016】
(第1のプランジャー機構)
駆動機構は、
引出本体を引出方向に突き出して引出開口から筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させるプランジャー駆動部と、
スイッチの操作により、引出本体を外部に突き出す方向にプランジャー駆動部を駆動させる制御部と、
を備える。
【0017】
(第2のプランジャー機構)
駆動機構は、
引出本体を引出方向に突き出して引出開口から筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させる第1プランジャー駆動部と、
第1プランジャー駆動部による引出本体の引出方向への突き出しに先立ち、引出本体の係止を解除する第2プランジャー駆動部と、
スイッチの操作により、第1プランジャー駆動部と第2プランジャー駆動部と駆動させる制御部と、
を備える。
【0018】
(ロック制御機構付きガスダンパー機構)
駆動機構は、
シリンダ内に摺動自在に設けられたピストンのロックを解除して充填した不活性ガスの圧力に基づきシリンダとピストンを相対移動させるロック制御機構を備えたガスダンパーと、
スイッチの操作により、ガスダンパーのロックを解除して引出本体を外部の引出位置に移動させる制御部と、
を備える。
【0019】
(引出機構の傾斜構造)
引出機構がプランジャー駆動部と制御部で構成される場合、引出機構は、水平方向に対し斜め下向きに傾斜した所定角度の引出方向に前記引出本体を移動自在に支持する。
【0020】
(送りねじ機構)
駆動機構は、
消火器収納部の、引出本体の引出方向に沿った所定位置に回転自在に配置されたねじ軸と、
引出本体の奥行側の所定位置に配置され、ねじ穴がねじ軸に螺合した移動部材と、
ねじ軸の回転により移動部材を移動して、引出本体を筐体の側面の引出開口から出し入れする駆動源と、
スイッチの操作により、引出本体の引出方向又は引入方向に駆動源を駆動させる制御部と、
を備える。
【0021】
(第1の制御部)
駆動機構をラックピニオン機構又は送りねじ機構とした場合の第1の制御部は、
消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
消火器の収納を指示する収納スイッチと、
引出本体の取出位置への移動を検出する第1位置検出器と、
引出本体の収納位置への移動を検出する第2位置検出器と、
取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体の引出方向に駆動源を駆動し、その後、第1位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止し、収納スイッチの操作を検出した場合に引出本体の引入方向に駆動源を駆動し、その後、第2位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止する制御回路部と、
を備える。
【0022】
(第2の制御部)
駆動機構をラックピニオン機構又はプーリー機構とした場合の第2の制御部は、
消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
引出本体の取出位置への移動を検出する位置検出器と、
取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体の引出方向に駆動源を駆動し、その後、位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止する制御回路部と、
を備える。
【0023】
(第3の制御部)
駆動機構を第2のプランジャー機構とした場合の第3の制御部は、
消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体を外部へ突き出す方向にプランジャー駆動部を駆動する制御回路部と、
を備える。
【0024】
(第4の制御部)
駆動機構を第2のプランジャー機構とした場合の第4の制御部は、
消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体の係止を解除するように第2プランジャー駆動源を駆動するとともに引出本体を外部へ突き出す方向に第2プランジャー駆動源を駆動する制御回路部と、
を備える。
【0025】
(第5の制御部)
駆動機構をロック制御機構付きのガスダンパー機構とした場合の第5の制御部は、
消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、
消火器の収納を指示する収納スイッチと、
引出本体の取出位置への移動を検出する第1位置検出器と、
引出本体の収納位置への移動を検出する第2位置検出器と、
取出スイッチの操作を検出した場合にガスダンパーのロックを解除して引出本体を外部の引出位置へ移動させ、その後、第1位置検出器から検出信号が得られた場合にガスダンパーをロックして引出本体の移動を停止し、収納スイッチの操作を検出した場合にガスダンパーのロックを解除して引出本体の収納位置への移動を許容し、その後、第2位置検出器から検出信号が得られた場合にガスダンパーをロックして引出本体の移動を停止制御回路部と、
を備える。
【0026】
(スイッチの態様)
取出スイッチは、消火器収納部に対応した筐体前面に設けられた専用のスイッチ又は筐体前面の電装扉に設けられた発信機を含むスイッチである。
【0027】
(消火器の縦置き又は横置きの配置)
消火栓装置の筐体内の消火器収納部に、消火器が縦置き又は横置きに配置される。
【0028】
(消火器移動機構)
消火器収納装置は、さらに、消火器引出構造により、縦置きされた消火器が筐体の側面外部の引出位置へ移動した場合に、消火器の縦置きされた状態を維持しながら前方の監視員通路の路面上に移動させる消火器移動機構を備える。
【0029】
(消火器移動機構の構成)
消火器移動機構は、
少なくとも前方及び上方に開口し、内部に消火器を縦置き状態で載置して引出本体に搭載された箱枠体と、
引出本体が引出位置に移動された場合に、所定の操作により箱枠体を引出本体から監視員通路の路面上の所定位置に移動させる平行リンク機構と、
を備える。
【0030】
(平行リンク機構と設置高さ)
消火器移動機構の平行リンク機構は、
引出本体の底部に固定された基台と、
下端が基台の後端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の後端側に軸支された第1横リンクと、
下端が基台の前端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の前端側に軸支された第2横リンクと、
を備え、
基台に第1横リンク及び第2横リンクの下端が軸支される位置が、基台に対し第1横リンクと第2横リンクが前方に回動して箱枠体が監視員通路の路面上に移動する際に、箱枠体の下部が基台に接触することなく通過する高さである。
【0031】
(消火器移動機構の固定機構)
消火器移動機構は、
消火器引出構造により引出本体が引出位置へ移動された場合に、箱枠体の前方への移動の固定を解除して平行リンク機構により箱枠体を前方へ移動可能とする固定機構を備える。
【発明の効果】
【0032】
(消火栓装置の効果)
本発明によれば、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火器収納装置であって、筐体内の消火器収納部に収納された消火器を、所定のスイッチの操作に応じて筐体の側面から外部の取り出し位置に移動させる消火器引出構造を備えたため、道路利用者が消火器を使用して消火活動を行う場合には、所定のスイッチの操作を行うと、筐体内の消火器収納部に収納された消火器が、筐体の側面から外部の取り出し位置へ移動して露出した状態となり、筐体前面の監視員通路の通行を妨げることなく、消火器を容易に取り出すことを可能とする。
【0033】
(消火器引出構造による効果)
また、消火器引出構造は、筐体の側面に形成された引出開口と、引出開口に対応して筐体の内部に形成された消火器収納部と、引出開口の底部側に位置して消火器収納部に対し出し入れ自在に設けられ、消火器を縦置き状態で取り出し自在に載置する引出本体と、引出本体の引出側の端部に設けられ、引出本体の出し入れに伴い引出開口に対し開閉される側面消火器扉と、消火器収納部に対し引出本体を引出方向及び引入方向に移動自在に支持する引出機構と、引出機構に移動自在に支持された引出本体を、スイッチの操作に応じて少なくとも引出開口から筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させる駆動機構とを備えたため、道路利用者が所定のスイッチの操作を行うことで、消火器を載置した引出本体が駆動機構によって筐体の側面の引出開口から外側へ自動的に移動して消火器を露出させ、消火器を取り出し可能な状態とすることを可能とする。
【0034】
(ラックピニオン機構の効果)
また、駆動機構は、引出本体の引出方向に沿った所定位置に配置されたラックバーと、ラックバーに噛み合ったピニオンギアと、ピニオンギアの回転によりラックバーを移動して、引出本体を筐体の側面の引出開口から出し入れする駆動源と、スイッチの操作により、引出本体の引出方向又は引入方向に駆動源を駆動させる制御部とを備えたため、駆動源となる、例えば、モータによるピニオンギアの回転により、引出本体の引出方向に配置したラックバーを移動させることで、消火器を載置した引出本体が筐体の側面の露出した位置(取り出し位置)に移動し、道路利用者が消火器を取り出して消火活動を行うことを可能とする。また、消火器が使用された後に、管理者が新しい消火器を引出本体に載置してモータを逆回転させることで、新しい消火器を筐体内部に引き入れて消火栓収納部への収納を可能とする。
【0035】
(プーリー機構の効果)
また、駆動機構は、引出本体を引出開口から筐体の側面の外側の取り出し位置へ移動させるプーリー機構と、プーリー機構を駆動する駆動源と、スイッチの操作により、引出本体の引出方向に駆動源を駆動させる制御部とを備え、プーリー機構は、消火器収納部の引出開口に近い所定位置に配置された折返しプーリーと、引出本体の後端部に一端が固定され、他端が折返しプーリーを巻き回した後に後端部側へ戻された紐部材と、消火器収納部の所定位置に配置され、紐部材の他端が固定された巻取りプーリーとを備え、駆動源は、巻取りプーリーを回転させて紐部材を巻き取ることにより、引出本体を引出開口から筐体の側面の外側の取り出し位置へ移動させるため、駆動源となる、例えば、モータによる巻取りプーリーの回転により、消火器を載置した引出本体が筐体の側面の露出した位置(取り出し位置)に移動され、道路利用者が消火器を取り出して消火活動を行うことを可能とする。また、消火器が使用された後に、管理者が新しい消火器を引出本体に載置して引出本体を人為的に筐体内部に押し込むことで、新しい消火器の消火栓収納部への収納を可能とする。
【0036】
(第1のプランジャー機構の効果)
また、駆動機構は、引出本体を引出方向に突き出して引出開口から筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させるプランジャー駆動部と、スイッチの操作により、引出本体を外部に突き出す方向にプランジャー駆動源を駆動させる制御部とを備えたため、例えば、電磁ソレノイドを備えたプランジャー駆動源に対する通電による引出本体の突き出しにより、消火器を載置した引出本体が筐体の側面の露出した位置(取り出し位置)に移動し、道路利用者が消火器を取り出して消火活動を行うことを可能とする。また、消火器が使用された後に、管理者が新しい消火器を引出本体に載置し、引出本体を人為的に筐体内部に押し込むことで、新しい消火器の消火栓収納部への収納を可能とする。
【0037】
(第2のプランジャー機構の効果)
また、駆動機構は、引出本体を引出方向に突き出して引出開口から筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させる第1プランジャー駆動部と、第1プランジャー駆動部による引出本体の引出方向への突き出しに先立ち、引出本体の係止を解除する第2プランジャー駆動部と、スイッチの操作により、第1プランジャー駆動部と第2プランジャー駆動部と駆動させる制御部と、を備えたため、第2プランジャー駆動部で引出本体を係止して、引出方向への移動を抑えており、引出本体が振動などにより筐体側方の外部に引き出される動きを確実に防止する。また、スイッチの操作による第2プランジャー駆動部の通電による作動でまず引出本体の係止を解除し、続いて、第1プランジャー駆動部の通電による作動で、引出本体の突き出しにより、消火器を載置した引出本体が筐体の側面の露出した位置(取り出し位置)に移動し、道路利用者が消火器を取り出して消火活動を行うことを可能とする。
【0038】
(ロック制御機構付きガスダンパー機構の効果)
また、駆動機構は、シリンダ内に摺動自在に設けられたピストンのロックを解除して充填した不活性ガスの圧力に基づきシリンダとピストンを相対移動させるロック制御機構を備えたガスダンパーと、スイッチの操作により、ガスダンパーのロックを解除して引出本体を外部の引出位置に移動させる制御部と、を備えたため、スイッチ操作によりガスダンパーのロックを解除する作動を行うことで、例えば、ロッドを固定側とし、シリンダを移動側とすることで、ガスダンパーに充填しているガス圧力による力で、引出本体を筐体の側方外部の引出位置へ滑らかに移動させることを可能とする。
【0039】
(引出機構の傾斜構造の効果)
また、引出機構がプランジャー駆動部と制御部で構成される場合、引出機構は、水平方向に対し斜め下向きに傾斜した所定角度の引出方向に前記引出本体を移動自在に支持するため、水平方向に対し、例えば、2~3°程度の斜め下向きの傾斜角の方向に引出本体を移動自在に支持することで、プランジャー駆動部が軽い力で引出本体を突き出しても、消火器を載置した引出本体の自重により傾斜方向に移動させる力が作用し、確実に消火器を取り出し位置へ移動させることを可能とする。
【0040】
(送りねじ機構の効果)
また、駆動機構は、消火器収納部の、引出本体の引出方向に沿った所定位置に回転自在に配置されたねじ軸と、引出本体の所定位置に配置され、ねじ穴がねじ軸に螺合した移動部材と、ねじ軸の回転により移動部材を移動して、引出本体を筐体の側面の引出開口から出し入れする駆動源と、スイッチの操作により、引出本体の引出方向又は引入方向に駆動源を駆動させる制御部とを備えたため、引出本体の奥行側に配置された移動部材のねじ穴が螺合しているねじ軸を駆動源となる、例えば、モータにより回転させると、消火器を載置した引出本体が筐体の側面の露出した位置(取り出し位置)に移動させ、道路利用者が消火器を取り出して消火活動を行うことを可能とする。また、消火器が使用された後に、管理者が新しい消火器を引出本体に載置し、モータによりねじ軸を逆回転させることで、新しい消火器を筐体内部に引き入れて消火栓収納部への収納を可能とする。
【0041】
(第1の制御部の効果)
駆動機構をラックピニオン機構又は送りねじ機構とした場合の第1の制御部は、消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、消火器の収納を指示する収納スイッチと、引出本体の取出位置への移動を検出する第1位置検出器と、引出本体の収納位置への移動を検出する第2位置検出器と、取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体を外部へ引き出す方向に駆動源を駆動し、その後、第1位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止し、収納スイッチの操作を検出した場合に引出本体を内部へ引き込む方向に駆動源を駆動し、その後、第2位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止する制御回路部と、を備えたため、道路利用者が取出スイッチを操作すると、消火器を載置した引出本体が筐体の側面の外部となる引出方向に移動を始め、消火器が側面外部に露出する取出位置への到達が検出されると駆動が停止し、適切な取り出し位置に消火器を載置した引出本体を移動させることを可能とする。また、消火器が使用された後に、新たな消火器に交換して筐体内に戻す場合には、管理者が新しい消火器を引出本体に載置して収納スイッチを操作すると、消火器を載置した引出本体が筐体内部となる引入方向に移動を始め、筐体内の所定の収納位置への到達が検出されると駆動が停止し、消火器収納部の適切な収納位置に新しい消火器を載置した引出本体を収納させることを可能とする。
【0042】
(第2の制御部の効果)
また、駆動機構をプーリー機構とした場合の第2の制御部は、消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、引出本体の取出位置への移動を検出する位置検出器と、取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体の引出方向に駆動源を駆動し、その後、位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止する制御回路部とを備えたため、取出スイッチを操作すると、消火器を載置した引出本体がプーリー機構の駆動により筐体の側面の外部となる引出方向に移動を始め、消火器が側面外側に露出する取り出し位置への到達が検出されると駆動が停止し、適切な引出位置に消火器を載置した引出本体を移動させることを可能とする。また、第2の制御部は、引出本体を引出方向となる一方向へ移動する制御で良いことから、その分、制御部の構成を簡単にすることを可能とする。
【0043】
(第3の制御部の効果)
また、駆動機構を第1のプランジャー機構とした場合の第3の制御部は、消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体を外部へ突き出す方向にプランジャー駆動部を駆動する制御回路部とを備えたため、道路利用者が取出スイッチを操作すると、電磁ソレノイドの通電などによるプランジャー機構の突き出しにより、消火器を載置した引出本体が筐体の側面の外側の取り出し位置へ移動し、適切な取り出し位置に消火器を載置した引出本体を移動させることを可能とする。
【0044】
(第4の制御部の効果)
また、駆動機構を第2のプランジャー機構とした場合の第4の制御部は、消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体の係止を解除するように第2プランジャー駆動源を駆動するとともに引出本体を外部へ突き出す方向に第2プランジャー駆動源を駆動する制御回路部と、を備えたため、道路利用者が取出スイッチを操作すると、電磁ソレノイドの通電などによる第2プランジャー駆動源の作動で引出本体の係止が解除され、続いて、第1プランジャー駆動源の作動による突き出しで、消火器を載置した引出本体が筐体の側面の外側の取り出し位置へ移動し、適切な取り出し位置に消火器を載置した引出本体を移動させることを可能とする。
【0045】
(第5の制御部の効果)
また、駆動機構をロック制御機構付きのガスダンパー機構とした場合の第5の制御部は、消火器の取り出しを指示する取出スイッチと、消火器の収納を指示する収納スイッチと、引出本体の取出位置への移動を検出する第1位置検出器と、引出本体の収納位置への移動を検出する第2位置検出器と、取出スイッチの操作を検出した場合にガスダンパーのロックを解除して引出本体を外部の引出位置へ移動させ、その後、第1位置検出器から検出信号が得られた場合にガスダンパーをロックして引出本体の移動を停止し、収納スイッチの操作を検出した場合にガスダンパーのロックを解除して引出本体の収納位置への移動を許容し、その後、第2位置検出器から検出信号が得られた場合にガスダンパーをロックして引出本体の移動を停止させる制御回路部と、を備えたため、道路利用者が取出スイッチを操作すると、ガスダンパーのロックが解除され、消火器を載置した引出本体が筐体の側面の外部となる引出方向に移動を始め、消火器が側面外部に露出する取出位置への到達が検出されるとガスダンパーがロックされて移動が停止し、適切な取り出し位置に消火器を載置した引出本体を移動させることを可能とする。また、消火器が使用された後に、新たな消火器に交換して筐体内に戻す場合には、管理者が新しい消火器を引出本体に載置して収納スイッチを操作すると、ガスダンパーのロックが解除され、消火器を載置した引出本体が筐体内部となる引入方向に押し込むことができ、筐体内の所定の収納位置への到達が検出されるとガスダンパーがロックされて移動が停止し、消火器収納部の適切な収納位置に新しい消火器を載置した引出本体を収納させることを可能とする。
【0046】
(スイッチの態様の効果)
取出スイッチは、消火器収納部に対応した筐体前面に設けられた専用のスイッチ又は筐体前面の電装扉に設けられた発信機を含むスイッチであるため、簡単なスイッチ操作、或いは、発信機の火災通報操作に連動して、消火器を筐体の側面の外側となる取り出し位置へ移動して、道路利用者が消火器を取り出して消火活動を行うことを可能とする。
【0047】
(消火器の縦置き又は横置きの配置の効果)
また、消火栓装置の筐体内の消火器収納部に、消火器が縦置きに配置されたため、筐体の側面の外側へ取り出された消火器は、前方及び上方に露出した縦置き状態にあり、道路利用者は、消火器上端の固定レバーを握って下から上へ持ち上げる操作により消火器を取り出すことができ、消火器を下から上に持ち上げる操作は、無理のない姿勢で力を出すことができる操作となり、そのため、女性や高齢者などの弱者であっても、容易に消火器を取り出して使用することを可能とする。
【0048】
また、消火栓装置の筐体内の消火器収納部に、消火器が横置きに配置されたため、筐体の側面の外側に取り出された消火器は、横に寝かされた状態にあり、片手で消火器の固定レバーを握り、他方の手で消火器胴部を支えるなどして、消火器を手前に取り出して使用することを可能とする。
【0049】
(消火器移動機構の効果)
消火器収納装置は、さらに、消火器引出構造により、縦置きされた消火器が筐体の側面外部の引出位置へ移動した場合に、消火器の縦置きされた状態を維持しながら前方の監視員通路の路面上に移動させる第2の消火器移動機構を備えたため、道路利用者が消火器を取り出すために所定のスイッチ操作を行うことで消火器引出構造により筐体の側面外側の引出位置に消火器が引き出されると、続いて、消火器移動機構により縦置きされた状態を維持しながら消火器が前方の監視員通路の路面上に移動して露出状態で据え置かれ、消火器を安全かつ容易に消火器を取り出すことが可能となり、消火器を用いた迅速な消火活動を可能となる。
【0050】
(消火器移動機構の構成による効果)
また、消火器移動機構は、少なくとも前方及び上方に開口し、内部に消火器を縦置き状態で載置して引出本体に搭載された箱枠体と、引出本体が引出位置に移動された場合に、所定の操作により箱枠体を引出本体から監視員通路の路面上の所定位置に移動させる平行リンク機構と、を備えたため、消火器引出構造により引出本体に搭載された消火器移動機構が筐体の側面外側の引出位置に引き出されると、続いて、消火器を縦置きして載置している箱枠体が、平行リンク機構により引出本体の前方の監視員通路上に移動して据え置かれ、監視員通路上に露出して据え置かれた箱枠体から消火器を安全かつ容易に消火器を取り出すことが可能となる。
【0051】
(平行リンク機構と設置高さの効果)
また、消火器移動機構の平行リンク機構は、消火器収納部の底部に固定された基台と、下端が基台の後端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の後端側に軸支された第1横リンクと、下端が基台の前端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の前端側に軸支された第2横リンクと、を備え、基台に第1横リンク及び第2横リンクの下端が軸支される位置が、基台に対し第1横リンクと第2横リンクが前方に回動して箱枠体が監視員通路の路面上に移動する際に、箱枠体の下部が基台に接触することなく通過する高さであるため、基台、第1横リンク、第2横リンク及び箱枠体により平行リンク機構が簡単且つ堅牢に構成され、また、基台に第1横リンク及び第2横リンクの下端が軸支される位置が所定の高さであることで、箱枠体の下部が基台に接触することなく平行リンク機構により前方の監視員通路の路面上に移動して据え置くことが可能となる。
【0052】
(消火器移動機構の固定機構の効果)
また、消火器移動機構は、消火器引出構造により引出本体が引出位置へ移動された場合に、箱枠体の前方への移動の固定を解除して平行リンク機構により箱枠体を前方へ移動させる固定機構を備えたため、消火器引出構造により引出本体が筐体の外部側方に引出された際には、引出本体に搭載された消火器を載置した箱枠体は固定されているが、固定機構に対し道路利用者が固定を解除するための所定の操作を行うと、消火器を載置した箱枠体が平行リンク機構により前方の監視員通路の路面上に自動的に移動し、筐体の側方と前方への2段階の消火器移動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】消火器を縦置きする消火栓装置の設置状態をトンネル縦断面で示した説明図である。
図2図1の消火栓装置の設置状態をトンネル横断面で示した説明図である。
図3】消火栓装置の設置状態をトンネル横断面で概略的に示した説明図である。
図4】消火器を縦置きする消火栓装置の内部構造を前傾扉が開いた状態で正面から示した説明図である。
図5】消火器を縦置きする消火栓装置の内部構造を平面で示した説明図である。
図6】消火栓装置の内部構造を右側面から示した説明図である。
図7】消火栓装置の消火器収納側の側面を示した説明図である。
図8】消火栓装置を消火器収納状態で示した説明図である。
図9】消火栓装置を消火器引出状態で示した説明図である。
図10】ラックピニオン機構を備えた消火器引出構造を消火器収納状態で正面から見て一部断面で示した説明図である。
図11】ラックピニオン機構を備えた消火器引出構造を消火器引出状態で正面から見て一部断面で示した説明図である。
図12】ラックピニオン機構に対応した消火器引出構造の引出本体側を取り出して示した説明図である。
図13】ラックピニオン機構に対応した消火器引出構造の筐体側を示した説明図である。
図14】ラックピニオン機構による引出機構の動作を示した説明図である。
図15】ラックピニオン機構の制御部を示した説明図である。
図16】プーリー機構を備えた消火器引出構造を消火器収納状態で正面から見て一部断面で示した説明図である。
図17】プーリー機構を備えた消火器引出構造を消火器引出状態で正面から見て一部断面で示した説明図である。
図18】プーリー機構の制御部を示した説明図である。
図19】第1のプランジャー機構を備えた消火器引出構造を消火器収納状態で正面から見て一部断面で示した説明図である。
図20】第1のプランジャー機構を備えた消火器引出構造を消火器引出状態で正面から見て一部断面で示した説明図である。
図21】引出方向に下向きの傾斜角が設定された第1のプランジャー機構を備えた消火器引出構造を示した説明図である。
図22】第2のプランジャー機構を備えた消火器引出構造を示した説明図である。
図23】ロック制御機構付きのガスダンパー機構を示した説明図である。
図24】ガスダンパーの詳細を示した説明図である。
図25図22の駆動機構の制御部を示した説明図である。
図26】送りねじ機構を備えた消火器引出構造を消火器収納状態で正面から見て一部断面で示した説明図である。
図27】送りねじ機構を備えた消火器引出構造を消火器引出状態で正面から見て一部断面で示した説明図である。
図28】消火器が引出される前の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した説明図である。
図29】消火器が筐体側方の引出位置へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した説明図である。
図30】消火器が監視員通路の路面上へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した説明図である。
図31】消火器が引出される前の消火栓装置の内部構造を側面から示した説明図である。
図32】消火器が監視員通路の路面上へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を側面の断面で示した説明図である。
図33】消火器引出構造に搭載された消火器移動機構を取出して示した説明図である。
図34】消火栓移動機構の移動前の状態を示した斜視図である。
図35】消火栓移動機構の移動後の状態を示した斜視図である。
図36】箱枠体の固定を操作ノブにより解除する固定機構を示した説明図である。
図37】箱枠体の下部が基台に接触しないように移動させる平行リンク機構の配置(位置関係)を示した説明図である。
図38】消火器移動機構とラックピニオン機構を備えた消火器引出構造の制御部を示した説明図である。
図39】消火器を横置きする消火栓装置を消火器収納状態で示した説明図である。
図40】消火器を横置きする消火栓装置を消火器引出状態で示した説明図である。
図41】消火器を横置きする消火栓装置の内部構造を前傾扉が開いた状態で正面から示した説明図である。
図42】消火器を横置きする消火栓装置の内部構造を平面で示した説明図である。
図43】消火器を横置きする消火器引出構造の引出本体側を取り出して示した説明図である。
図44】消火器を横置きする消火器引出構造の引出本体側を前面から見て示した説明図である。
図45】消火栓装置に横置きする消火器を示した説明図である。
図46】消火器を横置きする消火器引出構造の筐体側を示した説明図である。
図47】消火器を縦置きする消火器引出構造を備えた消火器箱を示した説明図である。
図48】消火器を横置きする消火器引出構造を備えた消火器箱を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に、本発明に係る消火栓装置及び消火器箱の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0055】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、筐体内に消火器が配置又は収納される消火栓装置及び消火器などを含む消火器収納装置に関するものである。
【0056】
ここで、「消火器収納装置」とは、消火対象領域となる高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、消火対象領域に設置された筐体内に消火用ホース等の消火栓機器、電装扉に赤色表示灯や発信機等の電装機器、及び消火器が配置又は収納されたものである。
【0057】
また、消火器収納装置は、道路を有するトンネルの内部の壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上の所定の高さに露出した状態で設置されるものである。ここで、「所定の高さ」とは、消火器収納装置をトンネル壁面に近接又は当接した位置に設置することが可能な高さであり、例えば、監視員通路の路面上に設置された架台の上部に筐体を取り付け固定すること、或いは、監視員通路の路面上方のトンネル壁面に設置された架台の道路側となる前部に筐体を取り付け固定することで、所定の高さに設置されるものである。
【0058】
また、「架台」とは、柱と梁などによって物を支える構造を指すものであり、具体例は図示していないが、支持台、土台、基台、台座、ベースなどの概念を含むものである。
【0059】
本実施形態の消火器収納装置は、筐体内の消火器収納部に収納された消火器を、所定のスイッチの操作に応じて筐体側面から外部の取り出し位置に移動させる消火器引出構造が設けられたことを特徴とするものであり、道路利用者が消火器を使用して消火活動を行う場合には、監視員通路の通行を妨げることなく、消火器収納装置の筐体側面方向に消火器を引き出して取り出すことを可能とするものである。
【0060】
「消火器引出構造」は、筐体内の消火器収納部に収納された消火器を、道路利用者のスイッチ操作により筐体側面から外部に出し入れする構造であり、その形状や構造は任意であるが、例えば、引出開口、消火器収納部、引出本体、側面消火器扉、引出機構及び駆動機構で構成されるものである。
【0061】
また、「引出開口」とは筐体の消火器収納側の側面に形成された開口である。また、「消火器収納部」とは、引出開口に対応して筐体の内部に形成された消火器が収納される空間である。また、「引出本体」とは、消火器を載置する部材、例えば、上部に開口した箱型の容器又は台であり、外部に出し入れ自在に引出開口に配置されるものである。
【0062】
また、「側面消火器扉」とは、筐体側面に設けられた消火器扉であり、引出本体の引出側に設けられ、引出本体の出し入れに伴い引出開口を開閉させるものである。さらに、「引出機構」とは、消火器収納部に対し引出本体を引出方向及び引入方向(引込方向)に移動自在に支持する機構であり、その構造や機能は任意であるが、例えば、事務机や書類ロッカーなどの引出機構が利用可能であり、筐体側に固定されたガイドレールに、引出本体側に固定されたガイドレールが、ガイドローラを介して摺動自在に嵌め込まれるものである。なお、「側面消火器扉」は「消火器側面扉」の概念を含むものである。
【0063】
また、「駆動機構」とは、引出機構によって移動自在に支持された引出本体を、スイッチの操作に応じて少なくとも引出開口から筐体側面の外部の取り出し位置へ移動させるものである。
【0064】
「駆動機構」の構造、機能、種類は任意であるが、例えば、ラックピニオン機構、プーリー機構、プランジャー機構、ガスダンパー機構、送りねじ機構などを含むものである。
【0065】
「駆動機構」の一例となる「ラックピニオン機構」の構造や機能は任意であるが、例えば、ラックバー、ピニオンギア、駆動源及び制御部で構成されるものである。ここで、「ラックバー」とは、長尺の矩形棒状部材の一側面にラックギアが直線的に形成された部材であり、引出本体の、例えば、底面の出入方向に沿って配置(固定)されるものである。
【0066】
また、「ピニオンギア」は、ラックバーに形成されたラックギアに噛み合う小ギア(小歯車)である。また、「駆動源」とは、ピニオンギアを回転させてラックバーを移動し、引出本体を筐体側面の引出開口から出し入れするものであり、その構造、機構、種類は任意であるが、例えば、電気的に動作するモータが使用される。
【0067】
また、ラックピニオン機構の「制御部」とは、引出本体を筐体側面の引出開口から引出方向又は引入方向に移動させる駆動源をスイッチの操作により制御するものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、取出スイッチ、収納スイッチ、第1位置検出器、第2位置検出器及び制御回路部で構成されるものである。
【0068】
ここで、「取出スイッチ」とは、道路利用者や管理者が操作することで、消火器収納装置に対して消火器の取り出しを指示するものであり、「収納スイッチ」とは、同様に消火器の収納を指示するものであり、「第1位置検出器」とは、引出本体の取出位置への到達を検出するものであり、「第2位置検出器」とは、引出本体の収納位置への到達を検出するものである。更に、「制御回路部」とは、取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体の引出方向に駆動源を駆動し、その後、第1位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止し、収納スイッチの操作を検出した場合に引出本体の引入方向に駆動源を駆動し、その後、第2位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止するものである。
【0069】
また、「駆動機構」の他の例となる「プーリー機構」の構造や機能は任意であるが、例えば、折返しプーリー、紐部材、巻取りプーリー、駆動源及び制御部で構成されるものである。
【0070】
ここで、「折返しプーリー」とは、消火器収納部の引出開口に近い所定位置に配置されたプーリーであり、「紐部材」とは、引出本体の後端部に一端が固定され、他端が折返しプーリーを巻き回した後に後端部側へ戻された金属製ワイヤー、テフロン(登録商標)などの樹脂強化紐、合成樹脂が含侵された強化繊維紐などを含むものである。また、「巻取りプーリー」とは、例えば、消火器収納部の所定位置に配置され、紐部材の他端が固定されて巻取りを行うプーリーであり、巻取りドラムを含む概念である。
【0071】
また、「駆動源」とは、巻取りプーリーを回転させて紐部材を巻き取ることにより、引出本体を引出開口から筐体側面の外部の取り出し位置へ移動させるものであり、その構造、機構、種類は任意であるが、例えば、電気的に動作するモータが使用される。
【0072】
また、プーリー機構の「制御部」とは、スイッチの操作により、引出本体を外部に引き出す方向(引出本体の引出方向)に駆動源を駆動させる制御を行うものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、取出スイッチ、位置検出器及び制御回路部で構成されるものである。
【0073】
ここで、「取出スイッチ」とは、道路利用者や管理者が操作することで、消火器収納装置に対して消火器の取り出しを指示するものであり、「位置検出器」とは、引出本体の取出位置への到達を検出するものである。更に、「制御回路部」とは、取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体の引出方向に駆動源を駆動し、その後、位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止するものである。
【0074】
また、プーリー機構は、駆動源が巻取りプーリーを回転させることにより引出本体を引出開口から筐体側面の外部の取り出し位置へ移動させるものであるが、筐体側面の外部の取り出し位置に移動させた引出本体を駆動源により筐体内の消火器収納部に戻すことはできず、引出本体を人為的に筐体内部に押し込むことで、消火栓収納部への収納を可能とするものである。
【0075】
また、プーリー機構の「制御部」は、前述したラックピニオン機構の「制御部」としても使用可能である。この場合、駆動源がピニオンギアを回転させることにより引出開口から筐体側面の外部の取り出し位置へ移動させた引出本体は、人為的に筐体内部に押し込むことで、消火栓収納部への収納を可能とするものである。
【0076】
また、「駆動機構」の他の例となる「第1のプランジャー機構」の構造や機能は任意であるが、例えば、プランジャー駆動部及び制御部で構成されるものである。
【0077】
ここで、「プランジャー駆動部」とは、引出本体を引出方向に突き出して引出開口から筐体側面の外部の取り出し位置へ移動させるものであり、その構造や機能は任意であるが、例えば、コイルの通電により固定鉄心を励磁させ、可動鉄心であるプランジャー(押し棒)を突出させる電磁ソレノイド(プッシュソレノイド)である。
【0078】
また、「制御部」とは、スイッチの操作により、引出本体を外部に突き出す方向にプランジャー駆動部を駆動させる制御を行うものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、取出スイッチと制御回路部で構成されるものである。ここで、「取出スイッチ」とは、前述したように、道路利用者や管理者が操作することで、消火器収納装置に対して消火器の取り出しを指示するものであり、また、「制御回路部」とは、スイッチの操作を検出した場合に引出本体を外部に突き出す方向にプランジャー駆動部を駆動させる制御を行うものである。
【0079】
また、「駆動機構」の他の例となる「第2のプランジャー機構」の構造や機能は任意であるが、例えば、第1プランジャー駆動部、第2プランジャー駆動部及び制御部で構成されるものである。
【0080】
ここで、「第1プランジャー駆動部」とは、引出本体を引出方向に突き出して引出開口から筐体の側面の外部の取り出し位置へ移動させるものであり、その構造や機能は任意であるが、例えば、コイルの通電により固定鉄心を励磁させ、可動鉄心であるプランジャー(押し棒)を突出させる電磁ソレノイド(プッシュソレノイド)である。
【0081】
また、「第2プランジャー駆動部」とは、第1プランジャー駆動部による引出本体の引出方向への突き出しに先立ち、引出本体の係止を解除するものであり、その構造や機能は任意であるが、例えば、コイルの通電により固定鉄心を励磁させ、可動鉄心であるプランジャー(押し棒)を引き込む電磁ソレノイド(プルインソレノイド)である。
【0082】
さらに、「制御部」とは、第1プランジャー駆動部と第2プランジャー駆動部と駆動させるものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、取出スイッチと制御回路部で構成されるものである。ここで、「取出スイッチ」とは、前述したように、道路利用者や管理者が操作することで、消火栓装置に対して消火器の取り出しを指示するものであり、また、「制御回路部」とは、取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体の係止を解除するように第2プランジャー駆動源を駆動するとともに引出本体を外部へ突き出す方向に第2プランジャー駆動源を駆動する制御を行うものである。
【0083】
また、「駆動機構」の他の例となる「ロック制御機構付きのガスダンパー機構」は、ガスダンパーと制御部で構成されるものである。
【0084】
ここで、「ガスダンパー」とは、シリンダ内に摺動自在に設けられたピストンのロックを解除して充填した不活性ガスの圧力に基づきシリンダとピストンを相対移動させるロック制御機構を備えるものであり、ガススプリングを含む概念である。
【0085】
また、「制御部」とは、スイッチの操作により、ガスダンパーのロックを解除して引出本体を外部の引出位置に移動させるものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、取出スイッチ、収納スイッチ、第1位置検出器、第2位置検出器及び制御回路部で構成されるものである。
【0086】
ここで、「取出スイッチ」とは、前述したように、道路利用者や管理者が操作することで、消火栓装置に対して消火器の取り出しを指示するものであり、「収納スイッチ」とは、同様に消火器の収納を指示するものであり、「第1位置検出器」とは、引出本体の取出位置への到達を検出するものであり、「第2位置検出器」とは、引出本体の収納位置への到達を検出するものである。
【0087】
更に、「制御回路部」とは、取出スイッチの操作を検出した場合にガスダンパーのロックを解除して引出本体を外部の引出位置へ移動させ、その後、第1位置検出器から検出信号が得られた場合にガスダンパーをロックして引出本体の移動を停止し、収納スイッチの操作を検出した場合にガスダンパーのロックを解除して引出本体の収納位置への移動を許容し、その後、第2位置検出器から検出信号が得られた場合にガスダンパーをロックして引出本体の移動を停止させるものである。
【0088】
駆動機構を「プランジャー機構」とする場合、引出機構は、水平方向に対し斜め下向きに傾斜した所定角度の引出方向に引出本体を移動自在に支持することが望ましい。「斜め下向きの傾斜した所定角度」は任意であるが、例えば、2~3°程度とする。プランジャー機構により引出本体を突き出した場合、引出本体の自重により傾斜方向に移動させる力が作用し、軽い力で引出本体を突き出しても、消火器を取り出し位置に確実に移動させることを可能とするものである。
【0089】
ここで、「水平」とは、水準器が示す水平に平行、即ち鉛直に対し垂直を成すことに限らず、トンネル路面に略平行、路面に変化勾配等がある場合には少なくとも設置場所に対応する路面に略平行であることを含み、更に、筐体幅方向が概ねこのような平行に沿って設置されているときには、設置状態の筐体横方向(左右方向、幅方向)に略平行或いは筐体縦方向(上下方向、高さ方向)に略垂直であることを含む概念である。また、「水平線」は、「水平」な方向に略平行な線である。
【0090】
また、「駆動機構」の他の例となる「送りねじ機構」の構造や機能は任意であるが、例えば、ねじ軸、移動部材、駆動源及び制御部で構成されるものである。
【0091】
ここで、「ねじ軸」とは、消火器収納部の、引出本体が出し入れされる方向に沿った所定位置、例えば、底部に回転自在に配置されたものである。また、「移動部材」とは、引出本体の奥行側の所定位置、例えば、底部裏面に配置(固定)され、ねじ穴がねじ軸に螺合した部材である。また、「駆動源」とは、ねじ軸の回転により移動部材を移動して、引出本体を筐体側面の引出開口から出し入れするものであり、その構造、機構、種類は任意であるが、例えば、電気的に動作するモータが使用される。また、「制御部」とは、スイッチの操作により、引出本体の引出方向又は引入方向に駆動源を駆動させる制御を行うものである。
【0092】
送りねじ機構の「制御部」は、前述したラックピニオン機構の「制御部」と同様に、取出スイッチ、収納スイッチ、第1位置検出器、第2位置検出器及び制御回路部で構成されるものであり、取出スイッチの操作を検出した場合に引出本体の引出方向に駆動源を駆動し、その後、第1位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止し、収納スイッチの操作を検出した場合に引出本体の引入向に駆動源を駆動し、その後、第2位置検出器から検出信号が得られた場合に駆動源の駆動を停止するものである。
【0093】
また、消火器引出機構の操作に用いる取出スイッチは、消火器収納部に対応した筐体前面又はその他の場所に設けられた専用のスイッチ又は筐体前面の電装扉に設けられた発信機を含むスイッチであり、消火器を使用する道路利用者が操作し易い配置や構造となっているものである。
【0094】
また、本実施形態の消火器収納装置は、筐体内の消火器収納部に、消火器が縦置きに配置されるものである。ここで、「消火器の縦置き」とは、消火器の容器を下にし、開栓レバーと固定レバーを上にして消火器を立てた状態で置くことを意味する。
【0095】
また、筐体側面の外側に引き出された引出本体に縦置きされた消火器は、前方及び上方に露出した縦置き状態にあり、道路利用者は消火器上端の固定レバーを握って下から上へ持ち上げる操作により消火器を取り出すことができ、消火器を下から上に持ち上げる操作は、無理のない姿勢で力を出すことができる操作であることから、女性や高齢者などの弱者であっても、容易に消火器を取り出して使用することを可能とするものである。
【0096】
また、本実施形態の消火器収納装置は、筐体内の消火器収納部に、消火器が横置きに配置されるものである。ここで、「消火器の横置き」とは、消火器を横に寝かせた状態で置くことであり、筐体内での高さ方向の消火器収納スペースを低減可能とするものである。
【0097】
また、「消火器の横置き」とは、引出本体に上下2段に分けて消火器が横置きされるものであり、筐体側面の外部に引き出された場合に消火器は少なくとも前側に露出した横置き状態にあり、道路利用者は片手で消火器の固定レバーを握り、他方の手で消火器胴部を支えるなどして、消火器を手前に取り出して使用することを可能とする。
【0098】
また、実施形態の「消火器引出構造」は「消火器移動機構」を備えるものである。「消火器移動機構」とは、消火器引出構造により縦置きされた消火器が筐体の側面外部の引出位置へ移動した場合に、消火器が縦置きされた状態を維持しながら前方の監視員通路の路面上に移動させるものであり、その構造や機構は任意であるが、例えば、箱枠体と平行リンク機構を備えるものである。
【0099】
ここで、「箱枠体」とは、少なくとも前方及び上方に開口し、内部に消火器を縦置き状態で載置し、引出本体に搭載される容器として機能するものである。また、「平行リンク機構」とは、箱枠体の両側面の各々に設けられ、引出本体が引出位置に移動した場合に、所定の操作により箱枠体を筐体内の消火器収納部から監視員通路の路面上の所定位置に移動させる機構である。
【0100】
また、「平行リンク機構」は、基台、第1横リンク、第2横リンク及び箱枠体で構成されるものである。ここで、「基台」とは、引出本体の上部に固定されるものである。また、「第1横リンク」とは、下端が基台の後端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の後端側に軸支される部材である。また、「第2横リンク」とは、下端が基台の前端側に軸支されるとともに上端が箱枠体の側面上部の前端側に軸支される部材である。
【0101】
さらに、「平行リンク機構」は、基台に第1横リンク及び第2横リンクの下端が軸支される位置が、基台に対し第1横リンクと第2横リンクが前方に回動して箱枠体が監視員通路の路面上に移動する際に、箱枠体の下部が基台に接触することなく通過する高さである。
【0102】
このため、消火器移動機構によれば、消火器引出構造により引出本体が筐体の側面方向の露出した引出位置に移動すると、消火器を縦置きして載置した箱枠体が、平行リンク機構により引出本体の前方の監視員通路上に移動して据え置かれ、消火器を安全かつ容易に消火器を取り出すことが可能となり、消火器を用いた迅速な消火活動を可能とする。また、消火器が監視員通路上に移動して据え置かれることで、道路利用者による監視員通路から消火器の取出しは勿論のこと、道路側からも道路利用者が安全かつ容易に消火器を取り出すことが可能となる。
【0103】
また、「消火器移動機構」は、消火器引出構造により引出本体が引出位置へ移動した場合に、所定の操作により箱枠体の前方への移動の固定を解除して平行リンク機構により箱枠体を前方へ移動可能とする「固定機構」を備える。消火器引出構造により引出本体が筐体の外部側方に引出された際には、引出本体に搭載された消火器を載置した箱枠体は固定されているが、消火器引出構造により引出本体が筐体の側面方向の露出した引出位置に移動すると、箱枠体の固定が解除されて消火器を載置した箱枠体が平行リンク機構により前方の監視員通路の路面上に自動的に移動して消火器の取出しが可能となる。
【0104】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「消火器収納装置」が「消火栓装置」又は「消火器箱」であり、「消火栓装置又は消火器箱がトンネル内の監視員通路上に設置された架台上に取り付け固定された」ものであり、「筐体の消火器収納部に「消火器の引出収納構造」が設けられ、筐体の消火器収納部に近い側面に設けた消火器扉が「側面消火器扉」であり、「消火器が縦置きされた場合の駆動機構」が「ラックピニオン機構」、「プーリー機構」、「プランジャー機構」、「ロック制御機構付きのガスダンパー機構」及び「送りねじ機構」である場合について説明する。続いて、「消火器が縦置きされた場合の消火器引出構造」に「消火器移動機構」が設けられた場合について説明し、続いて、「消火器が横置きされた場合の消火器引出構造」について説明する。さらに、トンネル内に設置される「消火器箱」について説明する。
【0105】
[実施形態の具体的内容]
消火栓装置について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.消火栓装置の概要
b.消火栓装置の設置
c.消火栓装置の設置高さと薄型化
d.消火栓装置の薄型化に対応した構成
e.消火栓装置の構造
e1.第1筐体の構造
e2.第2筐体の構造
e3.消火器収納部
f.ラックピニオン機構を備えた消火器引出構造
f1.ラックピニオン機構を備えた消火器引出構造の概要
f2.引出本体側の構造
f3.筐体側の構造
f4.引出機構
f5.ラックピニオン機構
f6.ラックピニオン機構の制御部
g.プーリー機構を備えた消火器引出構造
g1.プーリー機構
g2.プーリー機構の制御部
h.第1のプランジャー機構を備えた消火器引出構造
h1.プランジャー機構
h2.引出機構の傾斜構造
i.第2のプランジャー機構を備えた消火器引出構造
j.ロック制御機能付きのガスダンパーを設けた駆動機構
j1.ガスダンパーを設けた駆動機構
j2.ガスダンパー
j3.制御部
k.送りねじ機構を備えた消火器引出構造
k1.送りねじ機構
k2.送りねじ機構の制御部
l.消火器移動機構の概要
m.消火器移動機構の構成
m1.箱枠体
m2.平行リンク機構
m3.固定機構
m4.平行リンク機構の下リンクの高さ
m5.消火器移動機構を搭載した消火器引出機構の制御部
n.消火器を横置きする消火器引出構造を備えた消火栓装置
o.消火器を横置きする消火器引出構造
o1.消火器引出構造の引出本体側の構造
o2.消火器
o3.消火器引出構造の筐体側の構造
p.消火器箱の実施形態
p1.消火器を縦置きする消火器引出構造を備えた消火器箱
p2.消火器を横置きする消火器引出構造を備えた消火器箱
q.本発明の変形例
【0106】
[a.消火栓装置の概要]
消火器収納装置を消火栓装置とした場合の消火栓装置の概要について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器を縦置きする消火栓装置の設置状態をトンネル縦断面(トンネル長手方向の断面)で示した図1、及び、図1の消火栓装置の設置状態をトンネル横断面で示した図2を参照する。
【0107】
ここで、図1及び図2の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、消火栓装置10の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。この点は、本発明の実施形態を示す図3図48においても、X-Y-Z方向は同様となる。
【0108】
図1に示すように、本実施形態の消火栓装置10の筐体は、第1筐体11a及び第2筐体11bに分割されている。第1筐体11aの前面には化粧枠13aが装着されている。化粧枠13aの扉開口部は上下に分割され、扉開口部の下側にヒンジ12aにより下向きに開く消火栓扉として機能する前傾扉12が配置され、扉開口部の上側にヒンジ14aにより上向きに開く保守扉14が配置され、第1筐体11aの内部となる消火栓機器の収納部に消火用ホース及び消火栓弁等のバルブ類を含む所定の消火栓機器が収納されている。
【0109】
第2筐体11bの前面には化粧枠13bが装着されている。化粧枠13bの右側には扉開口部が設けられ、扉開口部の右側にはヒンジ18aにより右向きに横開きする電装扉18が配置され、左側にはヒンジ20aにより左向きに横開きして、内部の端子箱26a,26bへのアクセスを可能とする補助扉20が配置されている。電装扉18には、電装機器として、例えば、赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ25が設けられ、内側には電話ジャックが設けられている。
【0110】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から確認できるようになっている。火災が発生し、発信機24が押されて押し釦スイッチがオンすると、発信信号が送信され、これを受信した電気室等に設置された防災受信盤から火災警報が出力される。消火栓装置10は、防災受信盤からの応答信号を受信して、赤色表示灯22が点滅し、応答ランプ25が点灯する。
【0111】
補助扉20に相対した第2筐体11b内の後面には、高圧用の端子箱26aと低圧用の端子箱26bが上下方向に配置されている。高圧用の端子箱26aは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた強電用ケーブルと赤色表示灯22を接続する。低圧用の端子箱26bは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた弱電用ケーブルと発信機24、応答ランプ25及び電話ジャック等を接続する。
【0112】
また、第2筐体11bの内側は消火器収納部となっており、消火器収納部に近い第2筐体11bの左側面には、図2に示すように、消火器引出構造における側面消火器扉16が設けられている。側面消火器扉16には扉ハンドル1610と、「消火器」と縦書きされた機器名表示1612が設けられている。
【0113】
側面消火器扉16の内側には、道路利用者による所定のスイッチの操作に応じて、縦置きされている消火器を第2筐体11bの側面から外部の取り出し位置に移動させる消火器引出構造が設けられている。
【0114】
消火器引出機構を移動させるスイッチとして、本実施形態では、図1の化粧枠13bの左側に取出スイッチ27が設けられている。また、取出スイッチ27の横には、消火器を取り出すための操作案内表示1616として、例えば、スイッチの押し込み操作を示すシンボルマークが設けられている。
【0115】
道路利用者が消火器を使用する場合には、取出スイッチ27を押し込み操作すると、消火器収納部に縦置きされている消火器が、消火器引出構造の駆動機構により、側面消火器扉16と一体に第2筐体11bの側面から外部の取り出し位置に移動し、消火器が取り出し可能となる露出状態とすることができる。
【0116】
また、第2筐体11bの左側の消火器収納部に対応した化粧枠13bには、「消火器」と横書きされた器具名表示1612、図2の筐体側面と同じ操作説明1614、及び覗き窓19が設けられ、覗き窓19は外部から消火器の有無を確認可能としている。
【0117】
扉ハンドル1610による側面消火器扉16の閉鎖位置での保持は、機械的なラッチ式ではなく、磁気吸着によるマグネット式とする。さらに、側面消火器扉16の扉ハンドル1610は、後述する消火器引出構造の駆動機構がラックピニオン機構、プーリー機構、又は、プランジャー機構(図22のプランジャー機構を除く)の場合には、道路利用者が取出スイッチ27を操作しても消火器引出構造による消火器の取り出し位置への移動が、故障などにより正常に行われなかった場合に、手をかけて手前方向(側面方向)に引き出すことを可能とするものであり、フェイルセーフ機能を果たす。
【0118】
[b.消火栓装置の設置]
トンネル内の消火栓装置の設置について、より詳細に説明する。シールド工法により構築された円筒状(円形断面)のトンネル躯体の下部には、図1及び図2に示すように、道路15がトンネル長手方向(左右方向)に構築され、道路15の後側に沿ったトンネル壁面17の下側に、道路15に対し所定高さの監視員通路35が構築されている。
【0119】
シールド工法によるトンネル壁面17は、消火栓装置10を設置するための箱抜きが困難であることから、監視員通路35の路面上にトンネル壁面17に近接させて架台30を設置し、連結された第1筐体11a及び第2筐体11bを架台30上に取付け固定することで、消火栓装置10が設置されている。ここで、監視員通路35の路面から消火栓装置10に配置された発信機24までの高さが、法的に定められた800mm~1500mmの間に入るように、架台30の高さH1が設定されている。
【0120】
また、本実施形態の架台30は、図2に示すように、側面形状を底辺に対し上辺が長い逆台形とし、トンネル壁面17の湾曲形状に沿って後側が斜め下向きの傾斜面となっている。架台30の上端面は、消火栓装置10の連結された第1筐体11a及び第2筐体11bが取付け固定されるものである。また、消火栓装置10に対しては監視員通路35の路面下のダクト内から架台30を通して立ち上げられた給水配管48が接続されている。
【0121】
[c.消火栓装置の設置高さと薄型化]
消火栓装置の設置高さと薄型化について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、トンネル横断面における消火栓装置の設置状態を概略的に示した説明図である図3を参照する。
【0122】
本実施形態にあっては、架台30により監視員通路35の路面上に設置された消火栓装置10の、トンネル壁面17からの突出(出っ張り)による通路幅の制約を低減するため、消火栓装置10の設置高さを最適化し、併せて、消火栓装置10を可能な限り薄型化している。
【0123】
まず、消火栓装置10の設置高さは、架台30により定まるものであるから、架台30の高さH1の最適化について、より詳細に説明する。消火栓装置10が設置されるトンネル壁面17は円形断面となっており、図3(A)にあっては、トンネル中心(円形断面の中心)Pからの水平方向のトンネル中心線SL1に対し、監視員通路35上に設置された消火栓装置10は、その高さ方向の中心を通る横方向の筐体中心線SL2が可能な限り近付くように、架台30の高さH1が設定されている。
【0124】
この場合、筐体中心線SL2をトンネル中心線SL1に近づけるほど、消火栓装置10がトンネル壁面17から突出する度合いを低減することができる。
【0125】
図3(B)は、筐体中心線SL2をトンネル中心線SL1に一致させるように架台30の高さH1が設定された場合を示す。この場合には、消火栓装置10がトンネル壁面17から突出する度合いを最小とすることができる。ただし、架台30の高さH1は消火器の取出し等を踏まえ、可能な範囲での調整となる。
【0126】
次に、消火栓装置10の薄型化について、より詳細に説明する。消火栓装置10に収納される機器の中で前後方向のサイズが最大となるのは、第2筐体11bに収納される消火器であり、消火栓装置の幅(前後方向の厚さ)が第2筐体11bに消火器が収納できる最小値であれば、消火栓装置10の薄型化が可能であるから、消火栓装置10の幅は第2筐体11bに収納する消火器の外径に対応した所定の幅に設定される。
【0127】
消火器の外径は150~160mm程度であり、収納された消火器が第2筐体11bに接触しないように隙間を確保すると、消火栓装置10の最小幅は、例えば、180~200mm程度の範囲内となり、消火栓装置10の幅は当該範囲内の所定の幅に設定される。これに対し、トンネル躯体の壁面を箱抜きして埋込設置する従来の消火栓装置10の幅は300mm程度であることから、本実施形態の消火栓装置10の幅は従来の2/3以下にすることができ、消火栓装置10を薄型化することができる。
【0128】
[d.消火栓装置の薄型化に対応した構成]
消火栓装置10を消火器の外径に対応して、180~200mm程度の範囲の所定の幅に薄型化した場合、第1筐体11aに従来の消火栓装置と同様に所定長の消火用ホース、例えば、30mの保形ホースを内巻き状態で収納することが困難となる。そこで、本実施形態にあっては、第1筐体11aの横幅(左右方向の幅)を拡大することで、従来と同じ所定長の保形ホースが内巻き状態で収納可能となっている。
【0129】
また、消火栓装置10の薄型化に伴い、従来の消火栓装置のように、消火器が収納される消火器収納部の後側の筐体後面に端子箱26a,26bを配置することが困難となる。そこで、本実施形態にあっては、第2筐体11bの横幅(左右方向の長さ)を消火器の収納に加え、電装機器と端子箱を配置可能とする横幅に拡大している。
【0130】
[e.消火栓装置の構造]
消火栓装置の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火栓装置の内部構造を、前傾扉を開いて正面から示した図4、消火栓装置の内部構造を平面で示した図5、消火栓装置の内部構造を右側面から示した図6、及び、消火栓装置の消火器収納側の側面(左側面)を示した図7を参照する。このうち、図5図4の切断線a-aで示す断面であり、図6図4の切断線b-bで示す断面である。なお、図6の前傾扉12については、図4の扉側面を示している。
【0131】
(e1.第1筐体の構造)
第1筐体11aの構造について、より詳細に説明する。消火栓機器の収納部となる第1筐体11aの内部は、バルブ類収納部50aとホース収納部50bに分けられている。バルブ類収納部50aには、架台30を通して下から給水配管48が引き込まれて給水栓52に接続され、また、給水配管48は下向きに分岐し、分岐先には消火栓弁54及び自動調圧弁56が設けられ、続いて保形ホースを用いた消火用ホース60が接続されている。
【0132】
消火栓弁54は、消火栓弁開閉レバー58により開閉操作されるものであり、消火栓弁開閉レバー58が開閉操作されると公知のワイヤーリンク機構により消火栓弁54が遠隔的に開閉する。また、消火栓弁開閉レバー58が開閉操作されると、操作ボックスに設けられたポンプ起動連動スイッチがオン、オフする。また、給水栓52の右上には、消防隊が使用するポンプ起動スイッチ64が設けられている。
【0133】
ホース収納部50bには、ホース収納フレーム62が設けられ、下側から引き込まれた消火用ホース60が右回り又は左回りの内巻き状態で収納されている。ここで、ホース収納フレーム62は、消火栓装置10の薄型化に伴う第1筐体11aの横幅の拡大に対応して横幅を広くしており、従来の消火栓装置に比べて少ない巻き数で従来と同じ所定長の消火用ホース60が収納可能となっている。また、ホースガイド66を通して引き出された消火用ホース60の先端にはノズル68が装着され、ノズル68はノズルホルダー70に着脱自在に保持されている。
【0134】
また、図6に示すように、ホース収納部50bの上部には、1筐体11aの外部から引き込まれたケーブル、例えば、架台30を通して立ち上げられたケーブルを第2筐体11b側へ通線するため、ケーブルラック49が設けられ、ケーブルラック49の左端に相対する第1筐体11aの隔壁には通線口が開口している。
【0135】
(e2.第2筐体の構造)
第2筐体11bの電装機器配置側の構造について、より詳細に説明する。図4及び図5に示すように、第2筐体11bの内部は消火器収納部50cとなっており、第2筐体11bの前面右側となる扉開口部には、ヒンジ18aにより右方向に横開きする電装扉18が配置され、電装扉18には、上から順に赤色表示灯22、発信機24、電話ジャック28、及び応答ランプ25が配置され、電話ジャック28は電装扉18の内側に配置されている。
【0136】
ここで、電装機器の内、第2筐体11bの内部となる消火器収納部50cでの前後方向のサイズが最大となるのは赤色表示灯22であり、そのサイズは120mm程度であるから、消火栓装置10を180~200mm程度の範囲の所定の幅に薄型化した場合でも、第1筐体11a側から引き込まれたケーブルの通線スペースを確保した上で各電装機器を配置することができる。
【0137】
また、電装扉18の左側にはヒンジ20aにより左方向に横開きする補助扉20が配置され、図4に示すように、補助扉20に相対した第2筐体11bの筐体後面に、端子箱26a,26bが上下方向に配置されている。
【0138】
端子箱26a,26bは、箱本体と蓋部材で構成され、第2筐体11bに配置された状態での縦(上下)×横(左右)×奥行(前後)のサイズは、220mm×140mm×80mm程度である。
【0139】
このため、消火栓装置10を180~200mm程度の範囲の所定の幅に薄型化した場合でも、端子箱26a,26bの奥行(前後)のサイズは80mm程度であるから、第2筐体11b内には端子箱26a,26bを配置する十分なスペースが確保される。また、端子箱26a,26bは第1扉18に配置された赤色表示灯22等の電装機器に近い位置に配置されることから、端子箱26a,26bと電装機器との間は短い配線長による接続が可能となっている。
【0140】
このため、工場での第2筐体11bの組み立て等の段階で、図5に示すように、電装扉18と補助扉20を想像線で示す位置に開くことで第2筐体11bの前面を開放し、端子台26a,26bと電装扉18に配置した電装機器との間を信号線で接続する作業を容易に行うことが可能となっている。
【0141】
また、消火栓装置10をトンネル内に設置する場合にも、電装扉18と補助扉20の扉固定を解除し、図5に示すように、電装扉18と補助扉20を想像線で示す位置に開くことで、端子箱26a,26bに第1筐体11a側から引き込まれたケーブルを接続する作業を容易に行うことが可能となっている。
【0142】
(e3.消火器収納部)
図4及び図5に示すように、第2筐体11bの内部の消火器収納部50cには、消火器引出構造によって、外径が150~160mm程度となる2台の消火器72が縦置き状態で収納されている。また、前述したように、消火栓装置10を薄型化するため、消火栓装置10の幅は消火器72の外径に対応した180~200mmの範囲の所定の幅となっており、消火器引出構造によって収納された消火器72の前後に15~25mm程度の隙間が確保され、消火器72が第2筐体11bに接触することなく収納可能となっている。
【0143】
図7に示すように、消火器収納部50cに近い第2筐体11bの左側面には、図2に示したのと同様に、側面消火器扉16が手前側に引き出し自在に配置され、扉面に扉ハンドル1610と機器名表示1612が設けられ、また、扉上方の筐体側面に操作説明1614が設けられている。
【0144】
また、図5に示すように、側面消火器扉16の内側に固定された消火器引出構造の引出本体32には、2本の消火器72が縦置き状態で取り出し自在に載置され、取出スイッチ27の押込み操作に応じた駆動機構の動作により、想像線で示すように、引出本体32を側方に移動して消火器72を取り出し可能とするものである。
【0145】
[f.ラックピニオン機構を備えた消火器引出構造]
駆動機構としてラックピニオン機構を備えた消火器引出構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火栓装置を消火器収納状態で示した図8、消火栓装置を消火器引出状態で示した図9、ラックピニオン機構を備えた消火器引出構造を消火器収納状態で正面から見て一部断面で示した図10、ラックピニオン機構を備えた消火器引出構造を消火器引出状態で正面から見て一部断面で示した図11、ラックピニオン機構に対応した消火器引出機構の引出本体側を取り出して示した図12、ラックピニオン機構に対応した消火器引出構造の筐体側を示した図13、及び、ラックピニオン機構による引出機構の動作を示した図14を参照する。
【0146】
なお、図12(A)(B)(C)(D)は、消火器引出構造の左側面、正面、右側面、及び、平面を示し、図12(E)は、図12(C)のA部を拡大して示す。また、図13(A)(B)(C)(D)は消火器引出構造の筐体側の左側面、正面、平面、及び、筐体ガイドレールの拡大部分を示している。
【0147】
(f1.ラックピニオン機構を備えた消火器引出構造の概要)
ラックピニオン機構を備えた消火器引出構造の概要について、より詳細に説明する。本実施形態の消火器引出構造を備えた消火栓装置10は、通常状態では、図8に示すように、第2筐体11bの消火器収納部に対応した側面消火器扉16は閉鎖状態にあり、内部に2本の消火器が縦置き状態で収納されている。
【0148】
道路利用者が消火器を使用する場合には、第2筐体11bの前面に配置されている取出スイッチ27を押込み操作すると、図9に示すように、所定の駆動機構、例えば、ラックピニオン機構の動作により側面消火器扉16の内側に固定されている引出本体32が外部の取り出し位置に移動し、縦置きされている消火器72の取り出しを可能とする。
【0149】
また、消火器72が使用された場合には、管理者が未使用の消火器72を引出本体32に縦置き状態で載置し、例えば、引出開口34の上部手前側のコーナー部に配置しされている収納スイッチ29を押込み操作すると、ラックピニオン機構の取出スイッチ27の操作時とは逆方向の動作により、引出本体32が消火器収納部に引き入れられ、図8に示す通常状態に戻すことができる。
【0150】
図8の通常状態にあっては、図10の内部構造に示すように、消火器引出構造は、2台の消火器72を縦置きした引出本体32が消火器収納部50cに収納された状態となっている。
【0151】
これに対し、図9の消火器引出状態にあっては、図11の内部構造に示すように、消火器引出構造は、取出スイッチ27の押込み操作に応じたラックピニオン機構の動作により、2台の消火器72を縦置きした引出本体32を第2筐体11bの側面左側の外部に側面消火器扉16と一体に移動させ、縦置きされている消火器72の取り出しを可能とする。
【0152】
ここで、消火器引出構造は、第2筐体11bの消火器収納部に収納された消火器を、ラックピニオン機構により筐体内から筐体側面の外部へ引き出すものであり、その構造や機構は任意であるが、例えば、引出本体側の構造と筐体側の構造で構成されるものである。
【0153】
(f2.引出本体側の構造)
消火器引出構造の引出本体側の構造について、より詳細に説明する。消火器引出構造の引出本体側の構造は、消火器を筐体に対し出し入れする構造であり、その形状や構造は任意であるが、例えば、図12に示すように、側面消火器扉16と引出本体32で構成されるものである。
【0154】
引出本体32は、消火器72を消火器収納部に収納するとともに筐体側方の外部に移動させるものであり、その構造や形状は任意であるが、例えば、図12に示すように、側面消火器扉16の下部内側に上部に開いた箱部材である引出本体32の一端が片持ち状態で固定されている。引出本体32の内部には、ゴム等の弾性部材で作られた消火器受け台38が2基配置され、消火器72の底部が嵌め入れられることで、消火器72が縦置き状態で上側から取り出し自在に載置される。
【0155】
引出本体32の両側の側板外部には、筐体の消火器収納部に対し引出本体32を引出方向(左右方向)に移動自在に支持する引出機構の本体ガイドレール36が固定されている。本体ガイドレール36は、図12(C)のA部を拡大した図12(E)に示すように、引出本体32の側板の外部に矩形断面のレール突起3610が形成されている。また、図12(B)に示すように、本体ガイドレール36の奥側(右側)の先端にはローラ40が設けられ、ローラ40の上側には手前側(左側)が持ち上がった傾斜面のストッパ片3612が形成されている。
【0156】
引出本体32を下部内側に固定した側面消火器扉16には、扉ハンドル1610と「消火器」と縦書きされた機器名表示1612が設けられている。
【0157】
(f3.筐体側の構造)
消火器引出構造の筐体側の構造について、より詳細に説明する。消火器引出構造の筐体側の構造は、筐体本体32を筐体内に引出自在に支持するものであり、その形状や構造は任意であるが、例えば、図13に示すように、第2筐体11bの内部となる消火器収納部50cの底部から所定高さの両側コーナーに、筐体ガイドレール42が固定されている。
【0158】
筐体ガイドレール42は、図12に示した本体ガイドレール36と同じか、それより長い所定の長さを持つ。また、筐体ガイドレール42は、図13(A)のB部を拡大した図13(D)に示すように、横向きに開いたコ字形の枠板部材であり、図12に示した本体ガイドレール36の奥側の先端に配置されたローラ40が、コ字形の枠板部材の中を転動することになる。
【0159】
また、筐体ガイドレール42は、引出開口34側に上側が広がった開口部4210が形成され、図12に示した本体ガイドレール36の奥側の先端のローラ40が斜め上方からレール内に差し込み可能となっている。また、筐体ガイドレール42の開口部4210の上側には、所定の隙間を介してストッパ46が固定され、筐体ガイドレール42にはめ込まれた本体ガイドレール36が引き出される際に、ストッパ片3612が当接して抜け出さないようにしている。
【0160】
さらに、筐体ガイドレール42の開口部4210の下側にはローラ44が配置される。ローラ44は、図13(D)に示すように、ローラ44の上側が筐体ガイドレール42の底面部を超えて内側に入り込んでおり、筐体ガイドレール42に差し込まれた本体ガイドレール36のレール突起3610の下面36aが、ローラ44に乗った状態での移動を可能としている。
【0161】
(f4.引出機構)
消火器引出構造の引出機構について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、ラックピニオン機構による引出機構の動作を示した図14を参照する。なお、図14(A)は引出本体側が取り外された状態を示し、図14(B)は引出本体側が嵌め入れられた初期状態又は完全に引き出された状態を示し、図14(C)は引き出し途中状態を示し、図14(D)は引出本体側が閉じた状態を示している。また、図14(A)~(D)で筐体ガイドレール42は透視状態で示している。
【0162】
図14に示すように、引出機構は、図12に示した本体ガイドレール36と図13に示した筐体ガイドレール42で構成されるものである。勿論、ローラ40,44、ストッパ46を含む。
【0163】
筐体側の消火器収納部50cに引出本体32を収納する場合には、図14(A)に示すように、作業者は引出本体32側に設けられた本体ガイドレール36の先端のローラ40を、筐体ガイドレール42の開口部4210に位置合わし、本体ガイドレール36を斜め下向きにして筐体ガイドレール42の中に差し込む。このとき本体ガイドレール36のストッパ片3612が筐体側のストッパ46の上側を通るように差し入れる。
【0164】
これにより、図14(B)に示すように、筐体ガイドレール42の中に本体ガイドレール36のローラ40が入り、本体ガイドレール36のレール突起3610の下側36aにローラ44が接触し、更に、ストッパ46にストッパ片3612が当接して抜け止めされた状態となり、この状態が引出本体32が最も筐体側から引き出された位置となる。
【0165】
続いて、側面消火器扉16が押し込まれると、図14(C)に示すように、ローラ40,44の転動によって、筐体ガイドレール44に対し本体ガイドレール36が滑らかに移動し、図14(D)に示すように、引出本体32は、消火器収納部50cに完全に収納された位置に移動することができる。このとき、図10に示すように、側面消火器扉16の上端部が引出開口34の上部に設置されている扉受け部材47に当接する。
【0166】
(f5.ラックピニオン機構)
消火器引出構造の引出機構を動作するラックピニオン機構について、より詳細に説明する。消火器引出構造の駆動機構として機能するラックピニオン機構は、取出スイッチ27の操作により引出本体32を消火器収納部50cから外部に引き出す引出方向に移動させるとともに、収納スイッチ29の操作により引出本体32を筐体内部の消火器収納部50cに引き入れる引入方向に移動させるものであり、その構造や機能は任意であるが、図10及び図11に示すように、ラックバー76、ピニオンギア78、モータ80、第1位置検出器82、第2位置検出器84及び制御部(図示せず)で構成されるものである。
【0167】
ラックバー76は、図12(B)(C)(D)に示すように、引出本体32の底部裏面の側面方向又は平面方向から見てほぼ中央で引出方向(左右方向)に固定された断面矩形の棒状部材であり、一側面に所定ピッチのラックギアが直線状に形成されている。
【0168】
ピニオンギア78は、図10及び図11に示すように、引出本体32のラックバー76に噛み合う小歯車であり、正回転によりラックバー76を引出方向へ移動させ、逆回転によりラックバー76を引入方向へ移動させるものである。
【0169】
モータ80は、図13(A)(B)(C)に示すように、出力軸を上向きとして消火器収納部50cの引出開口34に近い所定位置に配置され、出力軸にピニオンギア78を固定している。モータ80は、正回転によるピニオンギア78の回転でラックバー76を引出方向へ移動し、これに伴い引出本体32を引出方向へ移動させる。また、モータ80は、逆回転によるピニオンギア78の回転でラックバー76を引入方向へ移動し、これに伴い引出本体32を引入方向へ移動させるものである。また、本実施形態のモータ80は、減速機構付きであり、低速で高トルクの回転を出力する、例えば、DCモータであって、印加電圧の極性切替えで回転方向を切替可能とするものである。
【0170】
第1位置検出器82は、引出本体32の消火器取出位置への到達を検出するものであり、その構造、機能、種類は任意であるが、例えば、リミットスイッチが使用され、図11に示すように、引出開口34の底部内側に配置され、引出本体32の裏面側から下方に突出して配置された位置決め部材86のスイッチレバーへの当接で、オンからオフに切り替わるスイッチ構造となっている。ここで、第1位置検出器82は、図13(C)に示すように、筐体底部の引出方向の中心線に対し片側にオフセットした位置に配置されている。この点は、第2位置検出器84も同様である。また、位置決め部材86は、図12(D)に示すように、筐体本体32の引出方向の中心線に対し第1位置検出器82及び第2位置検出器84と同じ片側にオフセットした位置から下方に突出して配置されている。
【0171】
第2位置検出器84は、引出本体32の収納位置への到達を検出するものであり、その構造、機能、種類は任意であるが、例えば、リミットスイッチが使用され、図11に示すように、筐体ガイドレール42の後端側の底部所定位置に配置され、図10に示すように、引出本体32の裏面側から下方に突出して配置された位置決め部材86のスイッチレバーへの当接で、オンからオフに切り替わるスイッチ構造となっている。
【0172】
(f6.ラックピニオン機構の制御部)
ラックピニオン機構の制御部について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、ラックピニオン機構の制御部を示した図15を参照する。なお、図15(A)はコンピュータ回路を用いた制御部を示し、図15(B)はリレー回路を用いた制御部を示す。
【0173】
ラックピニオン機構の制御部は、スイッチの操作に応じて引出本体32を引出方向又は引入方向にモータ80を制御するものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、図15(A)に示すように、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82、第2位置検出器84及び制御回路部85で構成されるものである。
【0174】
制御回路部85に対しては、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82、第2位置検出器84が入力接続され、制御回路部85の制御信号(駆動電圧)がモータ80に出力され、モータ80はラックピニオン機構88のピニオンギア78に連結されている。
【0175】
制御回路部85の構成や機能は任意であるが、例えば、CPU、メモリ、各種入出力ポートを備えたコンピュータ回路であり、CPUによるプログラムの実行により制御機能が得られる。なお、制御回路部85は、コンピュータ回路に限定されず、シーケンス回路やロジック回路等の適宜の電気回路や電子回路を含むものである。
【0176】
制御回路部85は、取出スイッチ27の操作を検出した場合に、モータ80を正回転し、ラックピニオン機構88のピニオンギア78の回転でラックバー76を引出方向に駆動し、引出本体32を筐体側面の外部の取り出し位置へ移動させる。引出本体32が取出位置に移動すると第1位置検出器82から検出信号が得られ、制御回路部85はモータ80の駆動を停止し、引出本体32を筐体側面の外部の取出位置に停止させる。
【0177】
一方、消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部へ戻す場合には、収納スイッチ29が操作される。制御回路部85は、収納スイッチ29の操作を検出した場合に、モータ80を逆回転し、ラックピニオン機構88のピニオンギア78の回転でラックバー76を引入方向に駆動し、引出本体32を消火器収納部へ移動させる。引出本体32が収納位置に移動すると第2位置検出器84から検出信号が得られ、制御回路部85はモータ80の駆動を停止し、引出本体32を消火栓収納部の収納位置に停止させる。
【0178】
また、図15(B)に示すラックピニオン機構の制御部として機能するリレー回路は、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82として機能するリミットスイッチLS1、第2位置検出器84として機能するリミットスイッチLS2、リレー接点X1,X2,X3を備えたリレーX及びリレー接点Y1,Y2,Y3を備えたリレーYで構成されるものである。
【0179】
リレー回路は、取出スイッチ72がオン操作されるとリレーXが作動し、リレー接点X1を閉じて自己保持し、また、リレー接点X2,X3が閉じてモータ80に正極性の直流電圧を印加して正回転させ、ラックピニオン機構を駆動して引出本体32を引出方向に移動させる。引出本体32が筐体側面の外部の取り出し位置に移動するとリミットスイッチLS1が開き、リレーXが復旧してリレー接点X1~X3が開き、モータ80の駆動が停止し、引出本体32を筐体側面の外部の取出位置に停止させる。
【0180】
一方、消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部へ戻す場合には、リレー回路は、収納スイッチ29がオン操作されるとリレーYが作動し、リレー接点Y1を閉じて自己保持し、また、リレー接点Y2,Y3が閉じてモータ80に逆極性の直流電圧を印加して逆回転させ、ラックピニオン機構を駆動して引出本体32を引入方向に移動させる。引出本体32が筐体内の収納位置に移動するとリミットスイッチLS2が開き、リレーYが復旧してリレー接点Y1~Y3が開き、モータ80の駆動が停止し、引出本体32を消火栓収納部の収納位置に停止させる。
【0181】
[g.プーリー機構を備えた消火器引出構造]
プーリー機構を備えた消火器引出構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、プーリー機構を備えた消火器引出構造を消火器収納状態で正面から見て一部断面で示した図16、プーリー機構を備えた消火器引出構造を消火器引出状態で正面から見て一部断面で示した図17、及び、プーリー機構の制御部を示した図18を参照する。
【0182】
(g1.プーリー機構)
プーリー機構は、所定のスイッチ操作により引出本体32を引出開口34から筐体側面の外部の取り出し位置へ移動させるものであり、その構造や機能は任意であるが、例えば、折返しプーリー90、巻取りプーリー92、紐部材94、位置検出器96、位置決め部材98及び制御部(図示せず)で構成されるものである。
【0183】
折返しプーリー90は、消火栓収納部50cの引出開口34に近い底面所定位置に回転自在に配置され、引出本体32の後端部(奥行端部)に一端が固定された紐部材94を巻き回して後端部側へ折り返している。
【0184】
巻取りプーリー92は、図17に示すように、筐体ガイドレール42の後方の底部所定位置に配置されたモータの出力軸に固定され、モータの正回転により紐部材94を巻き取る方向に回転駆動する。
【0185】
位置検出器96は、引出本体32の筐体側面の外部の消火器取出位置への到達を検出するものであり、その構造、機能、種類は任意であるが、例えば、リミットスイッチが使用される。引出本体32の後端(奥行端部)には、位置検出器96を作動させるための位置決め部材98が裏面から下方に突出して設けられている。
【0186】
通常時は、消火器引出構造の引出本体32は、図16に示すように、側面消火器扉16は筐体側面の引出開口を閉鎖する位置に押し込まれ、消火栓収納部50cの収納位置に収納されている。
【0187】
消火器72を使用する場合には、取出スイッチ27の操作によるモータの駆動により巻取りプーリー92が回転し、折返しプーリー90を介して一端が引出本体32の後部に固定されている紐部材94の巻取りが開始され、紐部材94に引っ張られることで引出本体32は引出方向に移動する。図17に示すように、引出本体32の底部裏面に突出している位置決め部材98が位置検出器96のスイッチレバーに当接する位置に移動すると、位置検出器96から検出信号が出力され、モータによる巻取りプーリー92の回転が停止することで、引出本体32は、引出開口34の外部の取出位置に引き出されて停止し、消火器72の取り出しを可能とする。
【0188】
消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部50cへ戻す場合には、管理者が側面消火器扉16を引出開口34を閉鎖する位置に手で押し込んで戻す。この場合、モータ92は、駆動電圧が印加されていないことから、引出本体32の押込みに伴う力を紐部材94を介して受けて回転可能である。このため、引出本体32の押込み移動に伴い巻取りプーリー92から紐部材94が巻き出され、側面消火器扉16は、引出開口34を閉鎖する収納位置に移動することができる。
【0189】
(g2.プーリー機構の制御部)
次にプーリー機構の制御部について、より詳細に説明する。プーリー機構の制御部は、スイッチの操作により引出本体32を外部に引き出す方向へ移動する制御を行うものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、図18(A)に示すように、取出スイッチ27、位置検出器96及び制御回路部100で構成される。
【0190】
制御回路部100に対しては、取出スイッチ27及び位置検出器96が入力接続され、制御回路部100の制御信号(駆動電圧)がモータ102に出力され、モータ102は、プーリー機構104の巻取りプーリー92を出力軸に連結されている。
【0191】
制御回路部100の構成や機能は任意であるが、例えば、CPU、メモリ、各種入出力ポートを備えたコンピュータ回路であり、CPUによるプログラムの実行により制御機能が得られる。なお、制御回路部100は、コンピュータ回路に限定されず、シーケンス回路やロジック回路等の適宜の電気回路や電子回路を含むものである。
【0192】
制御回路部100は、取出スイッチ27の操作を検出した場合に、モータ102を正回転し、プーリー機構104の巻取りプーリー92の回転で折返しプーリー90を介して紐部材94を巻き取ることで、引出本体32を外部へ引き出す方向に移動させる。引出本体32が取出位置に移動すると位置検出器96から検出信号が得られ、制御回路部100はモータ102の駆動を停止し、引出本体32を筐体側面の外部の取出位置に停止させる。
【0193】
また、プーリー機構の制御部は、他の実施形態として、図18(B)に示すリレー回路であってもよい。プーリー機構の制御部として機能するリレー回路は、取出スイッチ27、位置検出器96として機能するリミットスイッチLS、リレー接点X1,X2,を備えたリレーXで構成される。
【0194】
リレー回路は、取出スイッチ72がオン操作されるとリレーXが作動し、リレー接点X1を閉じて自己保持し、また、リレー接点X2が閉じてモータ102に直流電圧を印加して回転させ、プーリー機構の巻取りプーリー92を回転駆動し、紐部材94を巻取って引出本体32を引出方向に移動させる。引出本体32が取出位置に移動するとリミットスイッチLSが開き、リレーXが復旧してリレー接点X1,X2が開き、モータ102の駆動が停止し、引出本体32を筐体側面の外部の取出位置に停止させる。
【0195】
[h.第1のプランジャー機構を備えた消火器引出構造]
第1のプランジャー機構を備えた消火器引出構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、プランジャー機構を備えた消火器引出構造を消火器収納状態で正面から見て一部断面で示した図19、プランジャー機構を備えた消火器引出構造を消火器引出状態で正面から見て一部断面で示した図20を参照する。
【0196】
(h1.第1のプランジャー機構)
消火器引出構造の駆動機構として機能する第1のプランジャー機構は、取出スイッチ27の操作により引出本体32を外部に引き出す方向に突き出し駆動させるものであり、その構造や機能は任意であるが、図19及び図20に示すように、プランジャー駆動部106、プランジャー108及び制御部(図示せず)で構成される。
【0197】
プランジャー駆動部106は、消火栓収納部50cに収納された引出本体32の後端側(奥行端部)となる底面の所定位置に配置され、引出本体32の後端に相対して出没駆動されるプランジャー108を備えている。プランジャー駆動部106の構造や機能は任意であるが、例えば、電磁ソレノイドの場合、コイルの通電で固定鉄心を励磁させ、可動鉄心であるプランジャー108を吸引して引出本体32を引出方向へ突き出す構成となる。なお、電磁ソレノイドの通電を遮断するとプランジャー108はスプリングの力で初期位置に戻る構造となっている。
【0198】
第1のプランジャー機構の制御部は、任意の電気回路であり、例えば、取出スイッチ27の操作によりプランジャー駆動部106の電磁ソレノイドに通電し、また、引出本体32の収納位置からの移動を検出する位置検出器の検出信号が得られた場合に、電磁ソレノイドの通電を停止させる電気回路とする。
【0199】
通常時は、消火器引出構造の引出本体32は、図19に示すように、側面消火器扉16は筐体側面の引出開口を閉鎖する位置に押し込まれ、消火栓収納部50cの収納位置に収納されている。
【0200】
消火器72を使用する場合には、取出スイッチ27が操作されると、プランジャー駆動部106の電磁ソレノイドに通電し、プランジャー108を駆動して引出本体32を引出方向へ突き出す。引出本体32は引出開口34の外部の取出位置へ押し出され、消火器72の取り出しが可能となる。消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部50cへ戻す場合には、管理者が側面消火器扉16を引出開口34を閉鎖する位置に手で押し込んで戻す。
【0201】
(h2.引出機構の傾斜構造)
第1のプランジャー機構を備えた消火器引出構造における引出機構の傾斜構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、引出方向に下向きの傾斜角が設定されたプランジャー機構を備えた消火器引出構造を示した図21を参照する。
【0202】
図21に示すように、本実施形態の第1のプランジャー機構を備えた消火器引出構造の引出機構にあっては、鉛直方向に位置する側面消火器扉16の底部側に引出本体32の一端が垂直方向(直角)に固定されているが、引出本体32に設けられた本体ガイドレール36の長手方向の中心線SL2が、水平線HLに対し引出方向(左方向)に斜め下向きに傾斜する所定角度θに設定されている。また、第2筐体11bの消火器収納部50cの底部コーナーに固定される筐体ガードレール42の中心線SL3が、水平線HLに対し引出方向(左方向)に斜め下向きに傾斜する同じ所定角度θに設定されている。ここで、下向きの傾斜角θは任意であるが、例えば、2~3°程度である。
【0203】
このため、筐体ガイドレール42に本体ガイドレール36が摺動自在に差し込まれることで、引出本体32は、引出方向に向けて斜め下向きに傾いた状態で消火器収納部50cに収納され、消火器72を縦置き状態で載置している引出本体32には、自重により傾斜方向に滑落力が作用している。このため、プランジャー駆動部106の駆動によりプランジャー108が引出本体32を突き出すと、消火器72を載置した引出本体32の自重により傾斜方向に移動させる力との相乗効果が得られ、引出本体32は、消火器の取出位置へ確実に移動する。また、プランジャー駆動部106によるプリンジャー108の突き出し力を、傾斜角θがない場合に比べて小さくできるため、プランジャー機構を小型化できる。
【0204】
[i.第2のプランジャー機構を備えた消火器引出構造]
第2のプランジャー機構を備えた消火器引出構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、第2のプランジャー機構を備えた消火器引出構造を消火器収納状態で正面から見て一部断面で示した図19を参照する。
【0205】
消火器引出構造の駆動機構として機能する第2のプランジャー機構は、取出スイッチ27の操作により引出本体32を外部に引き出す方向に突き出し駆動させるものであり、その構造や機能は任意であるが、図22に示すように、第1プランジャー駆動部として機能するプランジャー駆動部106、第2プランジャー駆動部として機能する係止解除プランジャー駆動部107で構成される。
【0206】
プランジャー駆動部106は、図19に示した第1のプランジャー駆動機構と同様であり、消火栓収納部50cに収納された引出本体32の後端側(奥行端部)となる底面の所定位置に配置され、引出本体32の後端に相対して通電時に突出されるプランジャー108を備えている。なお、電磁ソレノイドの通電を遮断するとプランジャー108はスプリングの力で初期位置に戻る構造となっている。
【0207】
係止解除プランジャー駆動部107は、消火栓収納部50cに収納された引出本体32の後端側(奥行端部)となる底面の所定位置、例えば、プランジャー駆動部106の手前の位置に配置され、引出本体32の底部に相対して通電時に引き込まれるプランジャー109を備えている。なお、電磁ソレノイドの通電を遮断するとプランジャー109はスプリングの力で係止位置に突出する構造となっている。
【0208】
第2のプランジャー機構の制御部は、任意の電気回路であり、例えば、取出スイッチ27の操作により係止解除プランジャー駆動部107とプランジャー駆動部106の電磁ソレノイドに順次通電させる電気回路とする。
【0209】
通常時は、消火器引出構造の引出本体32は、図22に示すように、側面消火器扉16は筐体側面の引出開口を閉鎖する位置に押し込まれ、消火栓収納部50cの収納位置に収納され、係止解除プランジャー駆動部107のプランジャー109が引出本体32の底部に係止し、引出本体32の動きをロックしている。
【0210】
消火器72を使用する場合には、取出スイッチ27が操作されると、まず係止解除プランジャー駆動部107の電磁ソレノイドに通電し、プランジャー109の引き込みで引出本体32の係止を解除する。続いて、プランジャー駆動部106の電磁ソレノイドに通電し、プランジャー108を駆動して引出本体32を引出方向へ突き出す。このため、引出本体32は、斜め下向きに傾斜して配置した筐体ガイドレール42(図21参照)に沿った本体ガイドレール36の移動により引出開口34の外部の取出位置へ押し出され、消火器72の取り出しが可能となる。消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部50cへ戻す場合には、管理者が側面消火器扉16を、引出開口34を閉鎖する位置に手で押し込んで戻す。
【0211】
[j.ロック制御機能付きのガスルダンパーを設けた駆動機構]
ロック制御機能付きのガスダンパーを設けた構駆動機構について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、ロック制御機構付きガスダンパーを設けた駆動機構を示した図23、ガスダンパーの詳細を示した図24、及び図22の駆動機構の制御部を示した図25を参照する。なお、図24(A)はガスダンパーの組立分解図を示し、図24(B)はガスダンパーの内部構造の断面図を示す。
【0212】
(j1.ガスダンパーを設けた駆動機構)
ガスダンパーを設けた駆動機構駆動機構は、所定のスイッチ操作により引出本体32を引出開口34から筐体側面の外部の取り出し位置へ移動させるものであり、その構造や機能は任意であるが、例えば、ガスダンパー120、ロック制御機構150、プランジャー駆動部160及び制御部(図示せず)で構成されるものである。
【0213】
ガスダンパー120はシリンダ1210とロッド1212を備えており、シリンダ1210の左端を引出本体32の引出側の端部に近い底面にシリンダ連結部130により回動自在で且つ上下に若干動けるように軸支し、シリンダ1210から右側に取り出されたロッド1212の先端を消火器収納部50cの底部に配置したロッド固定部140に取付け固定している。
【0214】
図24(A)の組立分解図に示すように、ガスダンパー120のシリンダ1210から外部に取り出されたロッド1212の先端にはプッシュピン1211が突出している。プッシュピン1211を押し込むとガスダンパー120のロックが解除され、ロッド1212を固定側とすると、移動側となるシリンダ1210を引出方向となる左方向へ移動させることができる。
【0215】
ロック制御機構150は、ガスダンパー120のプッシュピン1211を押込み動作する機構であり、リリースヘッド1214.リリースワイヤー1218、及び押釦1215を備えた押釦ユニット1216で構成される。リリースヘッド1214はロッド先端のネジ部1213に取付可能であり、リリースヘッド1214からはリリースワイヤー1218が引き出され、押釦ユニット1216にワイヤー接続している。押釦ユニット1216にはばねで押し出された押釦1215が設けられている。また、ナット1220は、ねじ部1213へのねじ込みで、図23に示すように、消火器収納部50cの底部に配置したロッド固定部140に、ロッド1212の先端を取付け固定する。
【0216】
押釦ユニット1216は、図23に示すように、ロッド固定部140に続いて消火器収納部50cの底面に配置され、その押釦1215に対向して底面に配置したプランジャー駆動部160で駆動されるプランジャー162の先端が当接されている。
【0217】
プランジャー駆動部160の電磁ソレノイドへの通電によりプランジャー162を突出させて押釦1215を押込むと、押釦ユニット1216、リリースワイヤー1218及びリリースヘッド1214に至る公知のワイヤーリンク機構の動きにより、ガスダンパー120のプッシュピン1211が押し込まれ、プッシュピン1211が押し込まれているあいだ、ガスダンパー120のロックが解除される。
【0218】
(j2.ガスダンパー)
ロック制御機能付きのガスダンパー120は、図24(B)に示す構造を備える。ガスダンパー120はシリンダ1210を備え、シリンダ1210内に第1ピストンとして機能するピストン1222が摺動自在に設けられ、ピストン1222に続いて第2ピストンとして機能するセパレートピストン1226がシリンダ内に摺動自在に設けられ、ピストン1222はロッド1212と一体に設けられ、ロッド1212はシリンダ1210の一端から外部に取り出されている。
【0219】
シリンダ1210の内部には、ピストン1222とリリースピストン1226の配置により、第1シリンダ室1228、第2シリンダ室1230、及び第3シリンダ室1232が順次形成されている。第1シリンダ室1228と第2シリンダ室1230にはオイルが充填され、第3シリンダ室1232には所定圧に加圧された状態で不活性ガス、例えば窒素ガスが充填されている。
【0220】
ピストン1222にはオリフィス1234とバルブ1236が設けられている。ロッド1212の内部にはプッシュピン1211が軸方向に移動自在に設けられ、一端がロッド1212の外部に突出され、他端がバルブ1236に連結され、図示のプッシュピン1211が外部に突出された状態でバルブ1236を閉鎖し、プッシュピン1211を押し込むとバルブ1236が開放される。
【0221】
バルブ1236はピストン1222に設けた第1シリンダ室1228と第2シリンダ室1230を連通するオリフィス1234の流路を開閉する。即ち、プッシュピン1211が外部へ突出している押込み解除位置で、バルブ1236によりオリフィス1234を通る流路を閉鎖してピストン1222をロックしている。
【0222】
また、プッシュピン1211の押込み位置でバルブ1236によりオリフィス1236を通る流路を開放してピストン1222のロックを解除し、固定側となるロッド1212に対し移動側となるシリンダ1210を引出方向(左方向)へ移動させる。この場合の移動速度は、オリフィス1234を流れるオイルの流動抵抗に対応した速度となり、シリンダ1210を緩やかに移動させる。
【0223】
ここで、第1シリンダ室1228におけるシリンダ1210の右端の受圧面積S1と、第3シリンダ室1232におけるシリンダ1210の左端の受圧面積S2を比較すると、シリンダ1210にロッド1212が貫通している分、左端の受圧面積S2に対し右端の受圧面積S1が小さくなる。また、第1シリンダ室1228、第2シリンダ室1230及び第3シリンダ室1230の圧力は、第3シリンダ室1232に充填した窒素ガスの力Pとなる。
【0224】
このためロッド1212を固定側とすると、シリンダ1210には右端の受圧面積S1と圧力Pで決まる右向きの力F1が加わるとともに、左端の受圧面積S2と圧力Pで決まる左向きの力F2が加わるが、F1<F2の関係にあることから、シリンダ1210には(F2-F1)となる左向きの力(引出方向への力)が加わっている。
【0225】
この状態で、プッシュピン1211の押込みでバルブ1236を開いてピストン1222のロックを解除すると、固定側となるロッド1212に対し移動側となるシリンダ1210は、(F2-F1)となる力を受けて引出方向となる左方向へ移動する。
【0226】
(j3.制御部)
次に図23のガスダンパーを設けた駆動機構の制御部について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、ガスダンパーを設けた駆動機構の制御部を示した図25を参照する。なお、図25(A)はコンピュータ回路を用いた制御部を示し、図25(B)はリレー回路を用いた制御部を示す。
【0227】
ガスダンパーを設けた駆動機構の制御部は、スイッチの操作に応じたガスダンパー120のロック解除により引出本体32を引出方向へ移動する制御を行うものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、図25(A)に示すように、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82、第2位置検出器84及び制御回路部85で構成される。
【0228】
制御回路部85に対しては、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82、第2位置検出器84が入力接続され、制御回路部85の制御信号(駆動電圧)がプランジャー駆動部160に出力されている。ここで、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82及び第2位置検出器84は、図15に示したラックピニオン機構の制御部と同様となることからその説明は省略する。制御回路部85はプランジャー駆動部160を制御する制御回路部85が固有の構成及び機能をもつことになる。
【0229】
制御回路部85の構成や機能は任意であるが、例えば、CPU、メモリ、各種入出力ポートを備えたコンピュータ回路であり、CPUによるプログラムの実行により制御機能が得られる。なお、制御回路部85は、コンピュータ回路に限定されず、シーケンス回路やロジック回路等の適宜の電気回路や電子回路を含むものである。
【0230】
制御回路部85は、取出スイッチ27の操作を検出した場合に、プランジャー駆動部160の電磁ソレノイドに通電し、図23に示したプランジャー162を突出させて押釦1215を押込み、ロック制御機構150を介してガスダンパー120のプッシュピン1211を押込み状態としてロックを解除し、固定側となるロッド1212に対しシリンダ1210を充填している窒素ガスの圧力により引出方向へ移動させ、引出本体32を筐体側面の外部の取り出し位置へ移動させる。引出本体32が取出位置に移動すると第1位置検出器82から検出信号が得られ、制御回路部85はプランジャー駆動部160の通電を停止してプランジャー162を元に戻して押釦1215の押込みを解除し、ガスダンパー120をロック状態とし、シリンダ1210の移動を停止させる。
【0231】
一方、消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部へ戻す場合には、収納スイッチ29が操作される。制御回路部85は、収納スイッチ29の操作を検出した場合に、プランジャー駆動部160の電磁ソレノイドに通電し、図23に示したプランジャー162を突出させて押釦1215を押込み、ロック制御機構150を介してオイルダンパ装置120のプッシュピン1211を押込み状態としてロックを解除する。この状態で道路引出管理者が引出本体32を消火器収納部32へ押し込むと、ガスダンパー120のロックは解除されていることから、引出本体32を消火器収納部50cの中に移動させることができる。
【0232】
押込みを受けて引出本体32が収納位置に移動すると第2位置検出器84から検出信号が得られ、制御回路部85はプランジャー駆動部160の通電を停止してプランジャー162を元に戻して押釦1215の押込みを解除し、ガスダンパー120をロック状態とし、シリンダ1210の移動を停止させる。
【0233】
また、図25(B)に示すガスダンパーを設けた駆動機構の制御部として機能するリレー回路は、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82として機能するリミットスイッチLS1、第2位置検出器84として機能するリミットスイッチLS2、リレー接点X1,X2を備えたリレーX及びリレー接点Y1,Y2を備えたリレーYで構成されるものである。
【0234】
リレー回路は、取出スイッチ72がオン操作されるとリレーXが作動し、リレー接点X1を閉じて自己保持し、また、リレー接点X2が閉じてプランジャー駆動部160に通電することでガスダンパー120のロックを解除させ、引出本体32を引出方向に移動させる。引出本体32が筐体側面の外部の取り出し位置に移動するとリミットスイッチLS1が開き、リレーXが復旧してリレー接点X1,X2が開き、プランジャー駆動部160の通電が停止し、ガスダンパー120をロックして引出本体32を筐体側面の外部の取出位置に停止させる。
【0235】
一方、消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部へ戻す場合には、リレー回路は、収納スイッチ29がオン操作されるとリレーYが作動し、リレー接点Y1を閉じて自己保持し、また、リレー接点Y2が閉じてプランジャー駆動部160に通電することでガスダンパー120のロックを解除させ、引出本体32の押込みによる収納位置への移動を可能とする。引出本体32が筐体内の収納位置に移動するとリミットスイッチLS2が開き、リレーYが復旧してリレー接点Y1,Y2が開き、プランジャー駆動部160の通電が停止し、ガスダンパー120をロックして引出本体32を筐体側面の外部の取出位置に停止させる。
【0236】
[k.送りねじ機構を備えた消火器引出構造]
送りねじ機構を備えた消火器引出構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、送りねじ機構を備えた消火器引出構造を消火器収納状態で正面から見て一部断面で示した図26、送りねじ機構を備えた消火器引出構造を消火器引出状態で正面から見て一部断面で示した図27を参照する。
【0237】
(k1.送りねじ機構)
消火器引出構造の駆動機構として機能する送りねじ機構は、取出スイッチ27の操作により引出本体32を引出方向に移動させるとともに、収納スイッチ29の操作により引出本体32を引入方向に移動させるものであり、その構造や機能は任意であるが、図26及び図27に示すように、ねじ軸110、モータ112、移動部材114、軸受部材116、第1位置検出器82、第2位置検出器84、及び制御部(図示せず)で構成される。
【0238】
ねじ軸110は、消火器収納部50cに収納された引出本体32の下側の所定位置の引出方向(左右方向)に沿って回転自在に配置された所定ピッチの外ネジが切られた軸部材であり、引入方向(奥行方向)の一方の軸端側が消火器収納部50cの底部に固定されたモータ112の出力軸に連結され、引出方向(側面外部方向)の他方の軸端側が引出開口34に近い消火器収納部50cの底部に固定された軸受部材116に回転自在に軸支されている。
【0239】
移動部材114は、引出本体32の後端部(奥行端部)に近い裏面の所定位置に下向きに突出して固定されており、ねじ軸110に螺合するネジ穴が形成されている。このため、モータ112の出力軸に一端が連結されたねじ軸110は、引出本体32の底面に固定された移動部材114のネジ穴を通って(ねじ込まれて)、先端が軸受部材116の軸穴に回転自在に支持される。
【0240】
モータ112によりねじ軸110が正回転すると、移動部材114が引出方向へ移動し、これに伴い引出本体32が取出位置へ移動する。また、モータ112によりねじ軸110が逆回転すると、移動部材114が引入方向(収納方向)へ移動し、これに伴い引出本体32が収納位置へ移動する。
【0241】
より詳細には、ねじ軸110が右ネジの場合、モータ112から見てねじ軸110が左回転(正回転に対応)すると移動部材114が引出方向へ移動し、これに伴い引出本体32が取出位置へ移動し、一方、ねじ軸が右回転(逆回転に対応)すると、移動部材114が引込方向(収納方向)へ移動し、これに伴い引出本体32が収納位置へ移動する。
【0242】
また、モータ112は減速機構付きであり、低速で高トルクの回転を出力する、例えば、DCモータであって、印加電圧の極性切替えで回転方向を切替可能とするものである。
【0243】
第1位置検出器82は、引出本体32の消火器取出位置への到達を検出するものであり、その構造、機能、種類は任意であるが、例えばリミットスイッチが使用され、図27に示すように、引出開口34に近い底部に配置している軸受部材116の奥行側に固定され、移動部材114のスイッチレバーへの当接でオンからオフに切り替わるスイッチ構造としている。
【0244】
第2位置検出器84は、引出本体32の収納位置への到達を検出するものであり、その構造、機能、種類は任意であるが、例えば、リミットスイッチが使用され、図26に示すように、本体ガイドレール36の後端側の底面の所定位置に配置され、引出本体32の裏面に配置された移動部材114のスイッチレバーへの当接で、オンからオフに切り替わるスイッチ構造となっている。
【0245】
(k2.送りねじ機構の制御部)
送りねじ機構の制御部について、より詳細に説明する。送りねじ機構の制御部は、スイッチの操作により引出本体32を引出方向又は引入方向にモータ112を制御するものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、図15(A)(B)に示したラックピニオン機構の制御部と同様に、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82、第2位置検出器84及び制御回路部85で構成されるものであり、モータ112により送りねじ機構を制御する点で相違する。そこで、図15(A)(B)のモータ80をモータ112とし、ラックピニオン機構88を送りねじ機構として説明すると、次のようになる。
【0246】
図15(A)において、制御回路部85に対しては、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82、第2位置検出器84が入力接続され、制御回路部85の制御信号(駆動電圧)がモータ112に出力され、モータ112は送りねじ機構のねじ軸110に連結されている。
【0247】
制御回路部85は、取出スイッチ27の操作を検出した場合に、モータ112を正回転し、ねじ軸110の正回転で移動部材114を引出方向へ駆動し、引出本体32を筐体側面の外部の取出位置へ移動させる。引出本体32が取出位置に移動すると第1位置検出器82から検出信号が得られ、制御回路部85はモータ112の駆動を停止し、引出本体32を筐体側面の外部の取出位置に停止させる。
【0248】
一方、消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部へ戻す場合には、収納スイッチ29が操作される。制御回路部85は収納スイッチ29の操作を検出した場合に、モータ112を逆回転し、ねじ軸110の逆回転で移動部材114を引入方向へ駆動し、引出本体32を消火器収納部へ移動させる。引出本体32が収納位置に移動すると第2位置検出器84から検出信号が得られ、制御回路部85はモータ112の駆動を停止し、引出本体32を消火栓収納部の収納位置に停止させる。
【0249】
また、送りねじ機構の制御部の他の実施形態として、図15(B)のリレー回路の場合には、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82として機能するリミットスイッチLS1、第2位置検出器84として機能するリミットスイッチLS2、リレー接点X1,X2,X3を備えたリレーX、リレー接点Y1,Y2,Y3を備えたリレーYで構成される。
【0250】
リレー回路は、取出スイッチ72がオン操作されるとリレーXが作動し、リレー接点X1を閉じて自己保持し、また、リレー接点X2,X3が閉じてモータ112に正極性の直流電圧を印加してねじ軸110を正回転させ、移動部材114を引出方向に移動させる。引出本体32が取出位置に移動するとリミットスイッチLS1が開き、リレーXが復旧してリレー接点X1~X3が開き、モータ112の駆動が停止し、引出本体32を筐体側面の外部の取出位置に停止させる。
【0251】
一方、消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部へ戻す場合には、リレー回路は、収納スイッチ29がオン操作されるとリレーYが作動し、リレー接点Y1を閉じて自己保持し、また、リレー接点Y2,Y3が閉じてモータ112に逆極性の直流電圧を印加してねじ軸110を逆回転させ、移動部材114を引入方向に移動させる。引出本体32が筐体内の収納位置に移動するとリミットスイッチLS2が開き、リレーYが復旧してリレー接点Y1~Y3が開き、モータ112の駆動が停止し、引出本体32を消火栓収納部の収納位置に停止させる。
【0252】
[l.消火器移動機構の概要]
消火栓装置の消火器収納部に設けられた消火器移動機構の概要について、図8乃至図14に示した駆動部にラックピニオン機構を備えた消火器引出構造に適用した場合を例にとって説明する。当該説明にあっては、消火器が引出される前の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した図28、消火器が筐体側方の引出位置へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した図29、消火器を監視員通路の路面上へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を正面からの一部断面で示した図30を参照する。
【0253】
図28に示すように、消火栓装置10の消火器収納部50cには、図8乃至図14に示したラックピニオン機構を用いた消火器引出構造に搭載された消火栓移動機構200により、2本の消火器72が縦置き状態で収納されている。消火器移動機構200は、消火器引出構造に設けられた引出本体32の上に、平行リンク機構で支持された箱枠体204を搭載しており、箱枠体204の中に2本の消火器72が縦置き状態で載置されている。
【0254】
道路利用者が消火器を使用する場合には、例えば、電装扉18に設けられた取出スイッチ27を道路利用者が操作してオンすると、図29に示すように、ラックピニオン機構の駆動により引出本体32が第1筐体11bの左側方となる外部の引出位置に引き出される。続いて、図30に示すように、消火器移動機構200の平行リンク機構の前方への回動により箱枠体204が監視員通路35の路面上の位置に移動し、消火器72の取出しが可能となる。
【0255】
[m.消火器移動機構の構成]
消火器移動機構の構成について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器が引出される前の消火栓装置の内部構造を側面から示した図31、消火器が監視員通路の路面上へ移動した場合の消火栓装置の内部構造を側面の断面で示した図32、消火器引出構造に搭載された消火器移動機構を取出して示した図33、消火栓移動機構の移動前の状態を斜視図で示した図34及び消火栓移動機構の移動後の状態を斜視図で示した図35を参照する。なお、図33(A)、(B)、(C)、(D)は消火器引出構造の左側面、正面、右側面、及び、平面を示し、図33(E)は図33(C)のC部を拡大して示す。
【0256】
図33に取り出して示すように、本実施形態の消火器移動機構200は、基台202及び箱枠体204を含む平行リンク機構で構成されている。
【0257】
(m1.箱枠体)
消火器移動機構200に設けられた箱枠体204について、より詳細に説明する。図33乃至図35に示すように、箱枠体204は、前方及び上方に開口し、例えば、2本の消火器を縦置き状態で載置するとともに、外部からの取出しを可能とする容器又は収納箱である。また、図33(B)(D)に示すように、箱枠体204の内部背面の所定高さとなる位置に、2本の消火器を着脱自在に縦置き状態で保持するホルダー222が設けられている。
【0258】
(m2.平行リンク機構)
消火器移動機構200の平行リンク機構について、より詳細に説明する。図33に取り出して示すように、消火器移動機構200の平行リンク機構は、基台202、左右二組の第1横リンク206と第2横リンク208及び箱枠体204で構成されている。
【0259】
基台202は図33及び図34に示すように、消火器引出構造の引出本体32の部上に消火器移動機構200を固定する部材であり、前後及び上部が開放され、底面に対し両側面が起立した箱型の部材である。
【0260】
第1横リンク206と第2横リンク208の下端側が基台202に回動自在に軸支され、第1横リンク206と第2横リンク208の上端側が箱枠体204に回動自在に軸支される。即ち、第1横リンク206は下端が基台202の後端側に支点軸210により軸支されるとともに上端が箱枠体204の側面上部の後端側に支点軸214により軸支される。また、第2横リンク208は、下端が基台202の前端側に支点軸212により軸支されるとともに上端が箱枠体204の側面上部の前端側に支点軸216により軸支される。
【0261】
ここで、平行リンク機構は、第1横リンク206と第2横リンク208を含む4本のリンクを平行四辺形に連結するものであるが、基台202に軸支される第1横リンク206の下端の支点軸210と基台202に軸支される第2横リンク208と下端の支点軸212との間の基台202の部分により下リンクが仮想的に形成されている。また、箱枠体204に軸支される第1横リンク206の上端の支点軸214と箱枠体204に軸支される第2横リンク208の上端の支点軸216との間の箱枠体204の部分により上リンクが仮想的に形成されている。
【0262】
このため、消火器72を載置する箱枠体204は、図34に示すように、初期状態で基台202に対し第1横リンク206と第2横リンク208により吊下げ状態に支持されており、図35に示すように、第1横リンク206と第2横リンク208の前方への回動に伴い、その姿勢を維持したまま前方下方に移動する。
【0263】
また、第1横リンク206には支点軸210を中心に前方に回動させるために付勢する付勢部材が設けられている。付勢部材の構造や種類は任意であるが、例えば、巻ばね218が設けられる。巻ばね218は、支点軸210に巻着され、一端が支点軸210に固定され、他端が第1横リンク206の後ろ側に押接されている。同様に、第2横リンク208にも支点軸212を中心に前方に回動させるために付勢する付勢部材として巻ばね220が設けられている。なお、付勢部材は、第1横リンク206と第2横リンク208の両方ではなく、何れか一方に設けられる構成でも構わない。
【0264】
また、消火器移動機構200には、図32に示すように、軸支点212に緩衝装置として機能する遥動ダンパー244が設けられる。遥動ダンパー224の構造は公知であり、例えば、外部のステータと内部のローターとの間にオイルが充填され、ステータの内周に摺接するローターの突起部にオリフィスが設けられ、ステータとローターの相対回転に伴うオイルの流れをオリフィスで絞ることでトルクを発生するものである。
【0265】
このため、消火器72を載置した箱枠体204が、第1横リンク206と第2横リンク208の回動により前方へ移動する場合に、遥動ダンパー224は、ローターのオリフィス流路を流れるオイルの流動抵抗でステータの動きが抑制され、消火器72を載置した箱枠体204を緩やかな速度で前方へ移動し、監視員通路35の路面上に位置した場合に衝撃が発生しないようになっている。
【0266】
なお、遥動ダンパー224が設置される位置は任意であり、第1横リンク206及び又は第2横リンク208の下端の支点軸210,212に設置されればよい。また、消火器移動機構200の緩衝装置としては遥動ダンパー224に限定されず、例えば、ピストンダンパーを連結する構造などであってもよい。
【0267】
(m3.固定機構)
消火器移動機構200に設けられる固定機構について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、箱枠体の固定を操作ノブの押込み操作により解除する固定機構を示した図36を参照する。なお、図36(A)は固定状態を示し、図36(B)は固定を解除した状態を示す。
【0268】
消火器移動機構200の固定機構は、図31に示したように、平行リンク機構により箱枠体204が基台202の上方の初期位置にある場合に、平行リンク機構と巻ばねによる箱枠体204の前方への移動を固定し、引出本体32が消火器引出構造により筐体側方の引出位置に引き出された場合に、箱枠体204の前方への移動の固定を解除して箱枠体204を前方へ移動させるものである。
【0269】
固定機構の構造や機能は任意であるが、例えば、図36(A)に示すように、基台202側に設けられた固定レバー226,軸230及び電磁ソレノイド232で構成される。
【0270】
固定レバー226は、レバー先端に固定爪228が上向きに形成され、基台202の内部側面の軸230により回動自在に軸支されている。また、電磁ソレノイド232は、基台202の底部後方に固定され、通電により引き込まれる駆動軸が固定レバー226の後部下側に連結されている。
【0271】
このため、図28に示すように、引出本体32が第2筐体11bの消火器収納部に収納された状態では、図36(A)に示すように、電磁ソレノイド232が非通電であるため、駆動軸は前方へ押し出されており、このため、固定レバー226の固定爪228が箱枠体204の底部先端に当接し、箱枠体204が前方に移動しないように初期位置に固定されている。
【0272】
一方、図29に示したように、ラックピニオン機構により引出本体32が第2筐体11bの側方外部の引出位置に引き出されると当該引出位置への移動が検出され、図36(B)に示すように、電磁ソレノイド232に通電されて駆動軸が引き込まれることで、固定レバー226を右回り(時計回り)に回動させ、固定爪228が箱枠体204の底部先端から外れて箱枠体204の初期位置への固定が解除され、図35に示したように、箱枠体204は、平行リンク機構の第1横リンク206と第2横リンク208の巻ばね218,220による右回り(時計回り)の付勢を受けて前方へ回動し、消火器72が縦置き状態で載置された箱枠体204が監視員通路35の路面上に移動し、容易な消火器の取出しが可能となる。
【0273】
(m4.平行リンク機構の下リンクの高さ)
次に、箱枠体204の下部が基台202に接触することなく通過するための平行リンク機構の下リンクの高さについて、より詳細に説明する。当該説明にあっては、箱枠体の下部が基台に接触しないように移動させる平行リンク機構の配置(位置関係)を示した図37を参照する。
【0274】
図37に示すように、消火器移動機構200は、平行リンク機構の第1横リンク206と第2横リンク208の下端を軸支して前方への回動により第1横リンク206と第2横リンク208の上端に吊下げ状態に軸支された箱枠体204を前方の監視員通路35の路面上に移動する場合、箱枠体204の底部下面2040が基台202の底部上面2020に接触しないようにする必要がある。なお、下リンク207は基台202により仮想的に形成されており、また、上リンク209は箱枠体204により仮想的に形成されている。
【0275】
ここで、図37は、箱枠体204の後部が基台202の前端に一致する位置に移動した状態を示しており、このとき箱枠体204の底部下面2040の後端が基台202の底部上面2020の先端に接触しないようにする高さLx、即ち、基台202の底部上面2020から平行リンク機構の下リンク207までの高さLxを決定する必要がある。
【0276】
ここで、第2横リンク206の長さをL、下リンク207の長さをW、箱枠体204が基台202の先端へ移動した場合の第2横リンク208の傾斜角をθ、下リンク207及び上リンク209の箱枠体204の前方及び後方の端部までの水平方向の間隔をW1,第2横リンク208が傾斜角θにあるときの箱枠体204の上端から基台202の底部上面2020までの垂直方向の高さをL1、第1横リンク206及び第2横リンク208から箱枠体204の上方及び下方の端部までの垂直方向の間隔をL2とすると、次式の関係が得られる。
Lcosθ=W+3・W1 (式1)
θ=cos-1(W+3・W1)/L (式2)
Lsinθ=L1-L2-Lx (式3)
Lx=L1-L2-Lsinθ (式4)
即ち、L,W,W1,L2は定数として与えられることから、(式2)から傾斜角θを求め、(式4)に代入することで高さLxを求めることができる。
【0277】
ここで、初期位置にある箱枠体204について示すように、下リンク207から基台202の底部上面2020までの高さLxは、L2に箱枠体204の底部下面2040から基台202の底部上面2020までの高さLsを加えた(L2+Ls)であり、
Lx≦(L2+Ls)
の関係にあれば、平行リンク機構は、箱枠体204を基台202に接触させることなく、箱枠体204を前方へ移動させることができる。
【0278】
(m5.消火器移動機構を搭載した消火器引出機構の制御部)
消火器移動機構を搭載したラックピニオン機構を用いた消火器引出構造の制御部について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器移動機構とラックピニオン機構を備えた消火器引出構造の制御部を示した図38を参照する。なお、図38(A)はコンピュータ回路を用いた制御部を示し、図38(B)はリレー回路を用いた制御部を示す。
【0279】
制御部は、スイッチの操作に応じて引出本体32を引出方向又は引入方向に移動させる制御を行い、また、引出本体32を引出位置へ移動した場合に、消火器移動機構200の固定を解除して前方へ移動させる制御を行うものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、図38(A)に示すように、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82、第2位置検出器84、モータ80、ラックピニオン機構88、電磁ソレノイド232、固定機構234及び制御回路部85で構成されている。
【0280】
ここで、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82、第2位置検出器84、モータ80、ラックピニオン機構88及び制御回路部85により、引出本体32を引出方向又は引入方向に移動させる制御は、図15(A)と同様であることから、その説明は省略し、電磁ソレノイド232と固定機構234による消火器移動機構200の制御について説明する。
【0281】
制御回路部85は、取出スイッチ27の操作を検出した場合に、モータ80を正回転し、ラックピニオン機構88のピニオンギア78の回転でラックバー76を引出方向に駆動し、引出本体32が取出位置に移動すると第1位置検出器82から検出信号が得られ、制御回路部85はモータ80の駆動を停止し、引出本体32を筐体側面の外部の取出位置に停止させる。
【0282】
制御回路部85は、第1位置検出器82から引出位置への移動で検出信号が得られると、電磁ソレノイド232に通電し、図36(B)に示したように、固定レバー226を回動して固定爪228による固定を解除し、消火器を載置した箱枠体204が平行リンク機構により監視員通路上に移動する。
【0283】
また、図38(B)に示すラックピニオン機構の制御部として機能するリレー回路においては、取出スイッチ27、収納スイッチ29、第1位置検出器82として機能するリミットスイッチLS1、第2位置検出器84として機能するリミットスイッチLS2、リレー接点X1,X2,X3を備えたリレーX、及びリレー接点Y1,Y2,Y3を備えたリレーYは、図15(B)と同様であり、消火器移動機構200に対応して、時限接点T1,T2を備えた時限リレーTと、第1位置検出器82として機能するb接点のリミットスイッチLS1に連動するa接点のリミットスイッチLS3が新たに設けられている。
【0284】
リレー回路の取出スイッチ27のオンによる引出制御及び収納スイッチ29の引込制御は、図15(B)と同様であることから、その説明は省略する。取出スイッチ27によるリレー回路の動作により、引出本体32が筐体側面の外部の引出位置へ移動して停止すると、リミットスイッチLS1のオフに連動してリミットスイッチLS3がオンし、時限リレーTを作動して時限接点T1,T2がオンする。
【0285】
時限リレーTがオンして電磁ソレノイド232が通電されると、固定レバー226による固定が解除され、消火器を載置した箱枠体204が平行リンク機構により監視員通路上に移動する。時限リレーTは、オンから所定時間後にオフとなり、時限接点T1,T2をオフして電磁ソレノイド232への通電を停止し、消費電流を抑制する。
【0286】
なお、消火器を使用した後に、新たな消火器に交換して収納する場合には、管理者が箱枠体204を引出本体32の上部の初期位置に押し戻すと固定機構により固定され、この状態で新たな消火器を箱枠体204に搭載し、収納スイッチ29をオン操作することで、引出本体32を第2筐体11b内の消火栓収納部50cに引き込んで収納させることができる。
【0287】
また、図28乃至図35の消火器移動機構200は、消火器引出構造の駆動部がラックピニオン機構である場合を例にとっているが、図16乃至図27に示したプーリー機構、プランジャー機構、ガスダンパー機構及び送りねじ機構についても、同様に適用されるものである。
【0288】
[n.消火器を横置きする消火器引出構造を備えた消火栓装置]
消火器を横置きする消火器引出構造を備えた消火栓装置について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器を横置きする消火栓装置を消火器収納状態で示した図38、消火器を横置きする消火栓装置を消火器引出状態で示した図39、消火器を横置きする消火栓装置の内部構造を前傾扉が開いた状態で正面から示した図40、消火器を横置きする消火栓装置の内部構造を平面で示した図41を参照する。
【0289】
図38に示すように、本実施形態の消火栓装置10の筐体は、第1筐体11a及び第2筐体11bに分割されている。第1筐体11aの前面には化粧枠13aが装着され、扉開口部の下側に下向きに開く前傾扉12が配置され、扉開口部の上側に上向きに開く保守扉14が配置され、第1筐体11aの内部となる消火栓機器の収納部に消火用ホース及び消火栓弁等のバルブ類を含む所定の消火栓機器が収納されている。第1筐体11aの内部は図39及び図40に示す構造であり、図4及び図5に示した消火器を縦置きした消火栓装置の第1筐体11aの構造と同様であることから、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0290】
第2筐体11bの前面の上側には扉開口部が設けられ、図40に示すように、扉開口部にはヒンジ18aにより下向きに開く電装扉18が配置されている。電装扉18には、電装機器として、例えば、赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ25が設けられ、内側には電話ジャック28が設けられている。
【0291】
第2筐体11bの内側は消火器収納部となっており、図39に示すように、2台の消火器72が横置き状態で収納され、第2筐体11bの左側面には側面消火器扉16が設けられている。側面消火器扉16には、扉ハンドル1610、「消火器」と縦書きされた機器名表示1612、消火器を引き出して取り出し可能とする操作の案内を図形などにより表示した操作説明1624が設けられている。
【0292】
また、第2筐体11bの消火器収納部に対応した前面の化粧枠には、「消火器」と横書きされた器具名表示1612、筐体側面と同じ操作説明1624、及び、覗き窓19が設けられ、覗き窓19は外部から消火器の有無を確認可能としている。
【0293】
側面消火器扉16の内側には、上下2段に横置きされている消火器72を、道路利用者による所定のスイッチの操作に応じて、第2筐体11bの側面から外部の取り出し位置に移動させる消火器引出構造が設けられている。
【0294】
消火器引出機構を移動させるスイッチとして、筐体前面の機器名表示1612の上側の所定位置に取出スイッチ27が設けられている。また、取出スイッチ27の横には、消火器を取り出すための操作案内表示1616として、例えば、スイッチの押し込み操作を示すシンボルマークが設けられている。
【0295】
道路利用者が消火器を使用する場合には、取出スイッチ27を押し込み操作すると、図39に示すように、消火器収納部に上下2段に横置きされている消火器72が、消火器引出構造の駆動機構により、側面消火器扉16と一体に第2筐体11bの側面から外部の取り出し位置に移動し、消火器72が取り出し可能となる露出状態とすることができる。
【0296】
ここで、消火器引出構造の引出本体32は、側面消火器扉16の内側に、上下2段に分けて上部置き台38(38-1)と下部置き台38(32-8)が配置され、それぞれに消火器72が横置き状態で載置されている。
【0297】
また、引出開口34の上部右側のコーナー部には収納スイッチ29が設けられ、消火器を使用した後に、管理者が新しい消火器を横置きして載置した状態で、収納スイッチ29を押込み操作すると、側面消火器扉16、上部置き台体38(38-1)及び下部置台38(38-2)を備えた引出本体32が駆動機構により引き込まれて、引出開口34を側面消火器扉16で閉鎖する位置に収納される。
【0298】
なお、収納スイッチ29の操作による消火器の収納は、駆動機構をラックピニオン機構又は送りねじ機構とした場合であり、プーリー機構又はプランジャー機構とした場合は、管理者が側面消火器扉16を押すことで消火器を収納位置に戻すことになるため、収納スイッチ29は不要となる。
【0299】
また、扉ハンドル1610による側面消火器扉16の閉鎖位置での保持は、機械的なラッチ式ではなく、磁気吸着によるマグネット式とする。さらに、側面消火器扉16の扉ハンドル1610は、駆動機構がラックピニオン機構、プーリー機構、又は、プランジャー機構(図22のプランジャー機構を除く)の場合には、道路利用者が取出スイッチ27を操作しても消火器引出構造による消火器の取り出し位置への移動が、故障などにより正常に行われなかった場合に、手をかけて手前方向(側面方向)に引き出すことを可能とするものであり、フェイルセーフ機能を果たす。
【0300】
[o.消火器を横置きする消火器引出構造]
消火器を横置きする消火器引出構造について、引出本体側の構造と筐体の構造に分けて、より詳細に説明する。また、当該説明にあっては、消火器引出構造の駆動源としてラックピニオン機構を設けた場合を例にとっている。
【0301】
(o1.消火器引出構造の引出本体側の構造)
消火器を横置きした消火器引出構造の引出本体側の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては。消火器引出構造の引出本体側を取り出して示した図42、消火器引出構造の引出本体を前面から見て示した図43、及び、消火栓装置に横置きする消火器を示した図44を参照する。
【0302】
消火器引出構造の引出本体側は、ラックピニオン機構により消火器を筐体の消火器収納部に対し出し入れする構造であり、その形状や構造は任意であるが、例えば、図42に示すように、引出本体32は、側面消火器扉16の内側に上下2段に分けて上部置き台38(38-1)と下部置き台38(38-2)が設けられている。
【0303】
上部置き台38(38-1)は、一端を側面消火器扉16の内側に固定するとともに梁部材3813により補強されている。また、上部置き台38(38-1)は、消火器72を横置き状態に保持するため、奥行側から筐体背面側となる側面中央にかけて金属製の丸棒などを用いた支持フレーム3810が起立し、また、扉側に近い板面上にゴムなどの弾性部材を用いたフロントストッパ3811が設けられ、消火器取り出し側(筐体の正面側)となる側面に近い板面上にはサイドストッパ1812が設けられている。
【0304】
下部置き台38(38-2)は、消火器を横置き状態で載置するとともに、消火器引出構造の引出機構を備えている。横置きされる消火器72を保持するための下部置き台38(38-2)の構造は上部置き台38(38-1)と同様であり、奥行側から筐体背面側となる側面中央にかけて支持フレーム3810が起立し、また、扉側に近い板面上にフロントストッパ3811が設けられ、消火器取り出し側(筐体の正面側)となる側面に近い板面上にサイドストッパ1812が設けられている。さらに、上部置き台38(38-1)と下部置き台38(38-2)の奥行側となる右端は、支持部材1620による上下の連結で補強されている。
【0305】
また、下側置き台38(38-2)の両側の側板外部には、引出機構の本体ガイドレール36が固定されている。本体ガイドレール36は、図12(A)の切断線d-dの断面を拡大した図12(E)に示したのと同様に、下部置き台38(38-2)の側板の外部に矩形断面のレール突起3610が配置されている。また、本体ガイドレール36の奥側(右側)の先端にはローラ40が設けられ、ローラ40の上側には手前側(左側)が持ち上がった傾斜面のストッパ片3612が形成されている。
【0306】
また、図43に示すように、下部置き台38(38-1)の底部裏面には、駆動源を構成するラックピニオン機構のラックバー76が固定されている。より詳細には、ラックバー76は、下部置き台38(38-2)の底部裏面を側面方向又は平面方向から見てほぼ中央で引出方向(左右方向)に固定され、断面矩形の棒状部材の一側面に所定ピッチのラックギアが直線状に形成されている。
【0307】
(o2.消火器)
図42及び図43に示した引出本体32に上下2段に分けて横置き状態で載置される消火器72は、図34に示すように、消火器本体7210の上部に開栓レバー7211と固定レバー7212を備え、開栓レバー7211は、止め輪7213でロックされている。また、消火器本体7210の上部に接続されたホース7214の先端には、ノズル7215が装着され、ホース収納部7216に保持されている。消火器72は、例えば、20号消火器として知られたもので、消火器本体7210に、例えば、ABC粉末消火剤6kgが収納され、消火器本体7210の直径は150~160mm、ホース収納部7216を含めた横幅は200mm、高さは600mm、重量は10kg程度となる。
【0308】
このような消火器72を道路利用者が横置きされた状態から取り出す場合には、固定レバー7212を握って取り出すことになるが、横置きされた消火器72の取り出しを容易にするため、消火器本体7210の胴部中央付近に持ち手174が2本のバンド176で締め付け固定されている。消火器本体7210に対する持ち手174の固定構造は任意であり、バンド176以外に、接着等の適宜の手法で固定する場合を含む。このため、道路利用者が固定レバー7212と持ち手174の両方を持つことで、消火器72が横置きされていても、容易に取り出すことを可能としている。
【0309】
(o3.消火器引出構造の筐体側の構造)
消火器を横置きする消火器引出構造の筐体側の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器を横置きする消火器引出構造の筐体側を取り出して示した図45を参照する。消火器引出構造の筐体側の構造は、図42及び図43に示した消火器引出構造の引出本体側を筐体内に引出自在に支持するものであり、その形状や構造は任意であるが、例えば、図45に示すように、第2筐体11bの底部から所定高さの両側内面に筐体ガイドレール42が固定されている。
【0310】
筐体ガイドレール42は、図42及び図43に示した引出本体32の下部置き台38(38-2)に設けられた本体ガイドレール36と同じか、それより長い所定の長さを持つ。また、筐体ガイドレール42は、図13(A)のB部を拡大した図13(D)に示したのと同様に、横向きに開いたコ字形の枠板部材であり、図32及び図33に示した本体ガイドレール36の先端側に配置されたローラ40が、コ字形の枠板部材の中を転動することになる。
【0311】
また、筐体ガイドレール42は、引出開口34側に上側が広がった開口部4210が形成され、図32及び図33に示した本体ガイドレール36の先端のローラ40が斜め上方からレール内に差し込み可能となっている。また、筐体ガイドレール42の開口部4210の上側には、所定の隙間を介してストッパ46が固定され、筐体ガイドレール42に嵌め込まれた本体ガイドレール36が引き出される際に、ストッパ片3612に当接して抜け出さないようになっている。
【0312】
さらに、筐体ガイドレール42の開口部4210の下側にはローラ44が配置される。ローラ44は、ローラ上側が筐体ガイドレール42の底面部を超えて内側に入り込んでおり、筐体ガイドレール42に差し込まれたた本体ガイドレール36のレール突起3610の下面36aが、ローラ44に乗った状態での移動が可能となっている。
【0313】
また、消火器引出構造の筐体側には、駆動機構を構成するラックピニオン機構のピニオンギア78、モータ80、第1位置検出器82及び第2位置検出器84が設けられており、その構成や機能は任意であるが、例えば図13と同様になることから、その説明は省略する。
【0314】
ラックピニオン機構の制御部は、取出スイッチ27の操作により引出本体32を引出方向に移動させるようにモータ80を制御し、また、収納スイッチ29の操作により引出本体32を引入方向に移動させるようにモータ80を制御するものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、図15と同様になることから、その説明は省略する。また、ラックピニオン機構による引出本体32の動作は、図14に示したのと同様になることから、その説明は省略する。
【0315】
また、図39に示すように、引出本体32が筐体側方に引き出された状態で道路利用者が消火器72を取り出すには、例えば、消火器72の固定レバー7212と持ち手174(図44参照)を両手で持って手前(+Z方向)に引きながら持ち上げることで、上部置き台38(38-1)側の消火器72と下部置き台38(38-2)側の消火器72の何れであっても、簡単且つ容易に取り出すことができる。
【0316】
また、消火栓装置10の筐体側面の外部に消火器72を引き出すことができるため、避難者が通行する筐体前面方向の監視員通路35が制約されず、監視員通路35の通行を妨げることなく、消火器72を引き出して取り出すことを可能とする。
【0317】
なお、消火器を横置きした消火器引出構造の駆動機構は、ラックピニオン機構以外に、前出した消火器を縦置きした消火器引出構造の駆動機構と同様に、プーリー機構、プランジャー機構又は送りねじ機構であってもよい。
【0318】
[p.消火器箱の実施形態]
消火器引出構造を設けた消火器箱について、より詳細に説明する。本実施形態の消火器箱は、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置されものであり、筐体内の消火器収納部に収納された消火器を、所定のスイッチの操作に応じて筐体側面から外部の取り出し位置に移動させる消火器引出構造を設けたものである。このような消火器箱は、消火器を縦置きした構造と消火器を横置きした構造に分けられ、それぞれについて、以下説明する。
【0319】
(p1.消火器を縦置きする消火器引出構造を備えた消火器箱)
消火器を縦置きする消火器引出構造を備えた消火器箱の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器を縦置きする消火器引出構造を備えた消火器箱の実施形態を示した図46を参照する。なお、図46(A)は消火器収納状態を示し、図46(B)は消火器引出状態を示す。
【0320】
図36に示すように、本実施形態の消火器箱300は、図1乃至図23に示した消火栓装置10の第2筐体11bを分離して右側面を閉鎖した構造に相当する。消火器箱300の筐体3100の内部には、図1乃至図25に示した消火栓装置10の場合と同様な消火器引出構造が設けられていることから、同一の符号を付して説明は省略する。
【0321】
通常時は、図46(A)に示すように、消火器箱300の側面消火器扉16が筐体側面の引出開口を閉鎖する位置にあり、2本の消火器が筐体3100の内部の消火器収納部に縦置き状態で収納されている。
【0322】
道路利用者が消火器を使用する場合には、前面の取出スイッチ27を押込み操作すると、駆動源により図46(B)に示すように、側面消火器扉16とともに消火器72を縦置きして載置した引出本体32が引出開口34から外部の取出位置へ移動して露出し、消火器72を持ち上げるようにして取り出すことを可能とする。
【0323】
消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置して消火器収納部へ戻す場合には、駆動機構をラックピニオン機構又は送りねじ機構とした場合には、管理者が引出開口34の上部前面のコーナー部に配置されてる収納スイッチ29を押込み操作すると、ラックピニオン機構又は送りねじ機構により引出本体32が引入方向に駆動し、側面消火器扉16は、引出開口34を閉鎖する収納位置に移動する。
【0324】
また、駆動機構としてプーリー機構又はプランジャー機構を用いた場合には、新しい消火器を引出本体32に縦置き状態で載置した状態で、管理者が側面消火器扉16を引出開口34を閉鎖する位置に手で押し込んで収納位置に戻す。
【0325】
なお、図47及び図48に示した消火器箱の他の実施形態として、消火器を縦置きする消火器引出構造に、図28乃至図38に示した消火器移動機構200が同様に適用された形態であってもよい。
【0326】
(p2.消火器を横置きする消火器引出構造を備えた消火器箱)
消火器を横置きする消火器引出構造を備えた消火器箱の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器を横置きする消火器引出構造を備えた消火器箱の実施形態を示した図47を参照する。なお、図47(A)は消火器収納状態を示し、図47(B)は消火器引出状態を示す。
【0327】
図47に示すように、本実施形態の消火器箱300は、図38乃至図45に示した消火栓装置10の第2筐体11bを分離して右側面を閉鎖した構造に相当する。消火器箱300の筐体3100の内部には、図38乃至図45に示した消火栓装置10の場合と同様な消火器引出構造が設けられていることから、同一の符号を付して説明は省略する。
【0328】
通常時は、図47(A)に示すように、消火器箱300の側面消火器扉16が筐体側面の引出開口を閉鎖する位置にあり、2本の消火器が筐体3100の内部の消火器収納部に上下2段に分けて横置き状態で収納されている。
【0329】
道路利用者が消火器を使用する場合には、前面の取出スイッチ27を押込み操作すると、駆動源により図47(B)に示すように、側面消火器扉16とともに消火器72を横置きして載置した引出本体32が引出開口34から外部の取出位置へ移動して露出し、横置きされた2本の消火器72が取り出し可能となる。
【0330】
道路利用者が消火器72を取り出すには、例えば、引出本体32の上部置き台38(38-1)に横置きされている消火器72の固定レバー7212と持ち手174(図44参照)を両手で持って持ち上げることで、簡単且つ容易に取り出すことができる。
【0331】
また、道路利用者が下部置き台38(38-2)から消火器72を取り出すには、下部置き台38(38-2)に横置きされている消火器72の固定レバー7212と持ち手174(図43参照)を両手で持って手前に引きながら持ち上げることで、簡単且つ容易に取り出すことができる。
【0332】
また、消火栓装置10の筐体側面の外部に消火器72を引き出すことができるため、避難者が通行する筐体前面方向の監視員通路35が制約されず、監視員通路35の通行を妨げることなく、消火器72を引き出して取り出すことを可能とする。
【0333】
さらに、消火器を使用した後に、新しい消火器を引出本体32の上部置き台38(38-1)及び下部置き台38(38-2)に横置き状態で載置して消火器収納部へ戻す操作は、図46の消火器を縦置きした消火器箱200の場合と同様となる。
【0334】
[q.本発明の変形例]
本発明による消火器収納装置の変形例について説明する。本発明の消火器収納装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0335】
(壁掛け構造の消火栓装置)
上記の実施形態は、トンネル壁面側に近接又は当接して監視員通路の路面に設置された架台の上部に筐体が取り付け固定される据え置き構造の消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、監視員通路の路面上方のトンネル壁面に設置された架台の道路側となる前部に筐体が取り付け固定される壁掛け構造の消火栓装置についても、同様に、筐体側面に側面扉が設けられ、側面扉を開いて筐体内に対する作業を側面外部から可能とするものである。
【0336】
(トンネル壁面が円形断面以外の場合)
上記の実施形態におけるトンネル断面形状は円形となっているが、トンネル断面が円形以外、例えば、三心円等の場合には、トンネル断面形状の水平方向の幅が最も広い位置の水平線を、上記の説明におけるトンネル中心線SL1とすることで、本発明を適用することができる。
【0337】
(薄型化に対応した消火栓装置の構造)
上記の実施形態における消火栓装置では、消火栓装置の薄型化に対応して第1筐体及び第2筐体の横幅を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保しているが、第1筐体及び第2筐体の上下幅を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保するようにしても良い。
【0338】
(引出機構)
上記の実施形態における消火器引出構造の引出機構は、固定側の筐体ガイドレールに対し引出本体の本体ガイドレールが摺動自在に嵌め入れた、2本のガイドレールを用いた引出機構となっているが、筐体ガイドレールと本体ガイドレールとの間に中間レールが配置された3本のガイドレールを用いた引出機構であってもよい。
【0339】
(取出スイッチ)
上記の実施形態にあっては、消火器の取出スイッチ27は、第2筐体の前面に専用のスイッチとして配置されているが、これに限定されず、例えば、電装扉18に設けられている発信機24が取出スイッチ27の機能を兼用してもよい。その場合には、発信機24は、例えば、3回路のスイッチ接点であり、1回路のスイッチ接点は発信機用、他の1回路のスイッチ接点は応答ランプ25用、他の1回路のスイッチ接点は取出スイッチ用となる。このように、発信機24を消火器の取出スイッチに兼用した場合、道路利用者が発信機24を押込み操作して火災通報信号を防災受信盤へ送信すると、これに伴い筐体側面から外部へ側面消火器扉とともに引出本体が自動的に引き出され、消火器の取り出しを可能とする。
【0340】
(前面消火器扉)
上記の実施形態における消火器引出構造の駆動機構として設けた係止解除プランジャー駆動部を設けたプランジャー機構、ガスダンパー機構、及び送りねじ機構にあっては、故障した場合に側面消火器扉16の扉ハンドル1610による第2筐体11bの側方外部への消火器の引出しができないことから、これらの駆動機構が設けられた消火栓装置10については、第2筐体11bの前面に、ラッチ式の扉ハンドルを備えた前面消火器扉を設け、取出スイッチ27を操作しても消火器が引き出されない故障時には、前面消火器扉を開いて消火器の取り出しを可能とすることで、フェイルセープ機能を果たすようにする。
【0341】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、さらに、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0342】
10:消火栓装置
11a:第1筐体
11b:第2筐体
12:前傾扉
13a,13b:化粧枠
14:保守扉
15:道路
16:側面消火器扉
17:トンネル壁面
18:電装扉
19:覗き窓
20:補助扉
22:赤色表示灯
24:発信機
25:応答ランプ
26a,26b:端子箱
27:取出スイッチ
28:電話ジャック
29:収納スイッチ
30:架台
32:引出本体
34:引出開口
35:監視員通路
36:本体ガイドレール
38:消火器受け台
38(38-1):上部置き台
38(38-2):下部置き台
40,44:ローラ
42:筐体ガイドレール
46:ストッパ
47:扉受け部材
48:給水配管
49:ケーブルラック
50a:バルブ類収納部
50b:ホース収納部
50c:消火器収納部
52:給水栓
54:消火栓弁
56:自動調圧弁
58:消火栓弁開閉レバー
60:消火用ホース
62:ホース収納フレーム
64:ポンプ起動スイッチ
66:ホースガイド
68:ノズル
70:ノズルホルダー
72:消火器
7210:消火器本体
7211:開栓レバー
7212:固定レバー
7213:安全ピン
7214:ホース
7215:ノズル
76:ラックバー
78:ピニオンギア
80,102,112:モータ
82:第1位置検出器
84:第2位置検出器
85,100:制御回路部
86,98:位置決め部材
88:ラックピニオン機構
90:折返しプーリー
92:巻取りプーリー
94:紐部材
96:位置検出器
104:プーリー機構
106:プランジャー駆動部
107:係止解除プランジャー駆動部
108,109:プランジャー
110:ねじ軸
114:移動部材
116:軸受部材
120:ガスダンパー
1210:シリンダ
1211:プッシュピン
1212:ロッド
1213:ねじ部
1214:リリースヘッド
1215:押釦
1216:押釦ユニット
1218:リリースワイヤー
1220:ナット
1222:ピストン
1226:セパレートピストン
1228:第1シリンダ室
1230:第2シリンダ室
1232:第3シリンダ室
1234:オリフィス
1236:バルブ
130:シリンダ固定部
140:ロッド固定部
150:ロック制御機構
160:プランジャー駆動部
162:プランジャー
174:持ち手
176:バンド
200:消火器移動機構
202:基台
204:箱枠体
206:第1横リンク
208:第2横リンク
210,212,214,216:支点軸
218,220:巻ばね
222:ホルダー
224:遥動ダンパー
226:固定レバー
228:固定爪
230:軸
232:電磁ソレノイド
300:消火器箱
3100:筐体
図1
図2
図3
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図5
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図35
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