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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166959
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】支承構造体
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
E01D19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181354
(22)【出願日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2022077745
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】北川 尚男
(72)【発明者】
【氏名】岩川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 慶嗣
(72)【発明者】
【氏名】深谷 道夫
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA31
2D059GG21
(57)【要約】
【課題】上部構造の部位のうち、支承が接合する下面接合部位が、炭素鋼よりも貴な耐食材料で形成されていても、前記下面接合部位へ支承を溶接接合することができ、かつ、前記下面接合部位への支承の接合後に異種金属接触腐食が発生することが抑制された支承構造体を提供する。
【解決手段】上部構造と下部構造とを有する構造物と、前記上部構造と前記下部構造との間に位置して、前記上部構造の荷重を前記下部構造に伝達する支承12と、を有してなる支承構造体10であって、支承12は、支承12が接合する前記上部構造の下面の部位である下面接合部位62Xに上面が接した状態で定着されるソールプレート18を有し、下面接合部位62Xに接するソールプレート18の前記上面は炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されており、かつ、前記上部構造の下面接合部位62Xも炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造と下部構造とを有する構造物と、前記上部構造と前記下部構造との間に位置して、前記上部構造の荷重を前記下部構造に伝達する支承と、を有してなる支承構造体であって、
前記支承は、前記支承が接合する前記上部構造の下面の部位である下面接合部位に上面が接した状態で定着されるソールプレートを有し、
前記下面接合部位に接する前記ソールプレートの前記上面は炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されており、かつ、前記上部構造の前記下面接合部位も炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されていることを特徴とする支承構造体。
【請求項2】
前記ソールプレートは、前記上部構造の前記下面接合部位に溶接で接合されていることを特徴とする請求項1に記載の支承構造体。
【請求項3】
前記溶接で接合されている、前記ソールプレートの部位と前記下面接合部位は、どちらの部位も、孔食指数が23以上のステンレス鋼で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の支承構造体。
【請求項4】
前記ソールプレートは、前記上部構造の前記下面接合部位に棒状部材で接合されていることを特徴とする請求項1に記載の支承構造体。
【請求項5】
前記棒状部材は金属製であり、前記棒状部材の外表面の少なくとも一部に防食被覆が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の支承構造体。
【請求項6】
前記防食被覆は、熱収縮スリーブで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の支承構造体。
【請求項7】
前記熱収縮スリーブの厚さは、0.3mm以上であることを特徴とする請求項6に記載の支承構造体。
【請求項8】
前記ソールプレートの前記上面を形成する前記耐食性金属と、前記上部構造の前記下面接合部位を形成する前記耐食性金属は、どちらも、純チタンであるか、あるいは孔食指数の差が6以下のステンレス鋼であるか、あるいはニッケル合金であることを特徴とする請求項1に記載の支承構造体。
【請求項9】
前記ソールプレートの前記上面を形成する前記耐食性金属と、前記上部構造の前記下面接合部位を形成する前記耐食性金属は、同一の耐食性金属であることを特徴とする請求項1に記載の支承構造体。
【請求項10】
前記上部構造の前記下面接合部位を含む部材は、ステンレス鋼、チタン及びニッケル合金のいずれかの単一材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の支承構造体。
【請求項11】
前記上部構造の前記下面接合部位は、クラッド鋼の合せ材で形成されており、当該クラッド鋼の合せ材は当該クラッド鋼の母材である炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の支承構造体。
【請求項12】
第1の金属部材と、前記第1の金属部材とは異なる材質の第2の金属部材とを有し、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材との間に絶縁層を有していることを特徴とする請求項1に記載の支承構造体。
【請求項13】
前記絶縁層は、塗装で形成されていることを特徴とする請求項12に記載の支承構造体。
【請求項14】
前記絶縁層は、ふっ素樹脂または充填材を混合したふっ素樹脂で形成されていることを特徴とする請求項12に記載の支承構造体。
【請求項15】
前記絶縁層は、シート状に形成されていることを特徴とする請求項14に記載の支承構造体。
【請求項16】
前記ソールプレートはクラッド鋼で形成されていて、前記ソールプレートの前記上面は、当該クラッド鋼の合せ材で形成されており、当該クラッド鋼の合せ材は当該クラッド鋼の母材である炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されていることを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の支承構造体。
【請求項17】
前記ソールプレートを形成する前記クラッド鋼を前記合せ材と前記母材の両方を横切るように厚さ方向に切断または切削して形成された厚さ方向の面において、露出している前記クラッド鋼の前記合せ材及び前記母材の両方を覆うように防食被覆が設けられていることを特徴とする請求項16に記載の支承構造体。
【請求項18】
前記厚さ方向の面は、前記ソールプレートのコバ面であることを特徴とする請求項17に記載の支承構造体。
【請求項19】
前記厚さ方向の面は、ボルトを挿入できる孔の内側面であることを特徴とする請求項17に記載の支承構造体。
【請求項20】
前記ソールプレートを形成する前記クラッド鋼の前記母材の面内方向の外表面を覆う防食被覆が設けられていることを特徴とする請求項16に記載の支承構造体。
【請求項21】
前記ソールプレートを形成する前記クラッド鋼は圧延クラッド鋼であることを特徴とする請求項16に記載の支承構造体。
【請求項22】
前記ソールプレートはステンレス鋼、チタン及びニッケル合金のいずれかの単一材で形成されていることを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の支承構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は支承構造体に関するもので、詳細には、少なくとも一部に耐食性金属を備えた支承構造体に関するものである。本願において、支承とは、構造物において上部構造と下部構造との間に位置して、上部構造の荷重を下部構造に伝達する部材のことである。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の構造物において、支承は、上部構造の荷重を下部構造に伝達するという重要な役割を担っている部材であり、また、長期にわたって使用される部材であるので、長期的な耐久性が求められる。
【0003】
一方、例えば橋梁において、支承は、上部構造から流れてきた雨水や雨水に含まれる塩分等の腐食促進物質の影響を受けやすい位置に配置されており、腐食による劣化が生じ易い配置状態に置かれている。
【0004】
この点に対応可能と思われる技術に、特許文献1に記載された技術がある。特許文献1には、構造物において上下に区分された上部構造と下部構造との間に設置され、少なくとも上部構造に定着される鋼製の上部ベースプレートと、下部構造に定着される鋼製の下部ベースプレートとを持つ構造物用支承において、上部ベースプレート及び下部ベースプレートの表面に対し、溶融亜鉛-アルミニウム合金めっきを施した上で、合成樹脂のコーティングを施すことにより、溶融亜鉛-アルミニウム合金めっきの耐食性能を持続させ、その耐用年数の延長を図る、とされている技術が記載されている(特許文献1の段落0012)。
【0005】
一方、支承への水分の通り道となっている橋梁の上部構造の下面も水分の影響を受けやすい部位であり、支承と同様に腐食の起きやすい環境であり、耐食性を向上させることが求められている。
【0006】
そのため、橋梁の上部構造の下面の耐食性を向上させる方策として、橋梁の上部構造の下面にステンレス鋼等の耐食性金属を使用することが考えられる。
【0007】
特許文献1に記載の技術では、前記したように、鋼製の上部ベースプレートの表面に対し、溶融亜鉛-アルミニウム合金めっきが施された上で、合成樹脂のコーティングが施されているが、溶融亜鉛-アルミニウム合金めっきと合成樹脂のコーティングを丹念にグラインダ等で除去してもわずかに亜鉛が残ると考えられる。このため、鋼製の上部ベースプレートを上部構造に溶接すると、残存した亜鉛が溶接熱により溶融するので、上部構造の溶接箇所またはその近傍に亜鉛脆化割れを起こす可能性のある耐食性金属(具体的には例えば、オーステナイト系および二相系のステンレス鋼、ニッケル合金)が用いられている場合、上部ベースプレートを上部構造に溶接することは困難である。また、チタンは炭素鋼と溶接することができないため、溶接を行おうとする上部構造の溶接箇所がチタンである場合には、鋼製の上部ベースプレートを上部構造に溶接することができない。
【0008】
また、上部ベースプレートを設置する際には、現地で位置合わせなどを行う必要があるが、その際に上部構造と擦過する可能性があり、溶融亜鉛-アルミニウム合金めっきと合成樹脂のコーティングが施された上部ベースプレートの合成樹脂コーティングに傷が付く可能性がある。取り付け対象の上部構造が炭素鋼製であれば、合成樹脂コーティングに傷が付いた状態において上部構造と上部ベースプレートの間に水分が浸透しても、溶融亜鉛-アルミニウム合金めっきの犠牲防食作用により上部ベースプレートは防食される。しかし、上部構造の支承構造を接合する部分に、合せ材を耐食性金属(ステンレス鋼、チタン等)とするクラッド鋼や、耐食性金属(ステンレス鋼、チタン等)の単一材が用いられている場合、上部構造と上部ベースプレートの間に水分が浸透すると、異種金属接触腐食により溶融亜鉛-アルミニウム合金めっきが早期に腐食して消失してしまう可能性がある。
【0009】
また、上部ベースプレートへの合成樹脂のコーティングは、特許文献1の段落0035の記載の方法によれば、その粉体を容器内で気流に浮遊させた中へ予熱した被塗物としての上部ベースプレートを浸漬させることにより溶融亜鉛-アルミニウム合金めっきの表面に施され、特許文献1の段落0036の記載の方法によれば、高電圧で帯電させた合成樹脂の粉体を吹付けガンで、アースした被塗物としての上部ベースプレートに吹き付けて固着させた後、加熱溶融して塗膜にすることによりめっき層の表面に施される。どちらの方法も、現場で実施することは困難であり、上部ベースプレートの合成樹脂のコーティングに傷がついても現地で補修することは困難である。
【0010】
なお、本願におけるソールプレートは、特許文献1に記載の技術における上部ベースプレートに相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006-193773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、上部構造の部位のうち、支承が接合する下面接合部位が、炭素鋼よりも貴な耐食材料で形成されていても、前記下面接合部位へ支承を溶接接合することができ、かつ、前記下面接合部位への支承の接合後に異種金属接触腐食が発生することが抑制された支承構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記課題を解決する発明であり、以下のような支承構造体である。
【0014】
即ち、本発明に係る支承構造体の第1の態様は、上部構造と下部構造とを有する構造物と、前記上部構造と前記下部構造との間に位置して、前記上部構造の荷重を前記下部構造に伝達する支承と、を有してなる支承構造体であって、前記支承は、前記支承が接合する前記上部構造の下面の部位である下面接合部位に上面が接した状態で定着されるソールプレートを有し、前記下面接合部位に接する前記ソールプレートの前記上面は炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されており、かつ、前記上部構造の前記下面接合部位も炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されていることを特徴とする支承構造体である。
【0015】
本発明に係る支承構造体の第2の態様は、前記第1の態様において、前記ソールプレートが、前記上部構造の前記下面接合部位に溶接で接合されて構成されている態様である。
【0016】
本発明に係る支承構造体の第3の態様は、前記第2の態様において、前記溶接で接合されている、前記ソールプレートの部位と前記下面接合部位が、どちらの部位も、孔食指数が23以上のステンレス鋼で形成されて構成されている態様である。
【0017】
本発明に係る支承構造体の第4の態様は、前記第1~前記第3の態様のいずれかの態様において、前記ソールプレートが、前記上部構造の前記下面接合部位に棒状部材で接合されて構成されている態様である。
【0018】
本発明に係る支承構造体の第5の態様は、前記第4の態様において、前記棒状部材は金属製であり、前記棒状部材の外表面の少なくとも一部に防食被覆が設けられている、ように構成されている態様である。
【0019】
本発明に係る支承構造体の第6の態様は、前記第5の態様において、前記防食被覆が熱収縮スリーブで形成されている態様である。
【0020】
本発明に係る支承構造体の第7の態様は、前記第6の態様において、前記熱収縮スリーブの厚さが0.3mm以上である態様である。
【0021】
本発明に係る支承構造体の第8の態様は、前記第1~前記第7の態様のいずれかの態様において、前記ソールプレートの前記上面を形成する前記耐食性金属と、前記上部構造の前記下面接合部位を形成する前記耐食性金属が、どちらも、純チタンであるか、あるいは孔食指数の差が6以下のステンレス鋼であるか、あるいはニッケル合金である、ように構成されている態様である。
【0022】
本発明に係る支承構造体の第9の態様は、前記第1~前記第8の態様のいずれかの態様において、前記ソールプレートの前記上面を形成する前記耐食性金属と、前記上部構造の前記下面接合部位を形成する前記耐食性金属が、同一の耐食性金属で構成されている態様である。
【0023】
ここで、前記耐食性金属がニッケル合金である場合の「同一の耐食性金属」とは、NCF825、NW0276、NCF625、NW6022のうちのいずれかのニッケル合金で同一のものを用いることを意味する。
【0024】
本発明に係る支承構造体の第10の態様は、前記第1~前記第9の態様のいずれかの態様において、前記上部構造の前記下面接合部位を含む部材が、ステンレス鋼、チタン及びニッケル合金のいずれかの単一材で形成されて構成されている態様である。
【0025】
本発明に係る支承構造体の第11の態様は、前記第1~前記第9の態様のいずれかの態様において、前記上部構造の前記下面接合部位は、クラッド鋼の合せ材で形成されており、当該クラッド鋼の合せ材は当該クラッド鋼の母材である炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されている、ように構成されている態様である。
【0026】
本発明に係る支承構造体の第12の態様は、前記第1~前記第11の態様のいずれかの態様において、第1の金属部材と、前記第1の金属部材とは異なる材質の第2の金属部材とを有し、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材との間に絶縁層を有している、ように構成されている態様である。
【0027】
本発明に係る支承構造体の第13の態様は、前記第12の態様において、前記絶縁層が塗装で形成されている態様である。
【0028】
本発明に係る支承構造体の第14の態様は、前記第12の態様において、前記絶縁層がふっ素樹脂または充填材を混合したふっ素樹脂で形成されている態様である。
【0029】
本発明に係る支承構造体の第15の態様は、前記第14の態様において、前記絶縁層がシート状に形成されている態様である。
【0030】
本発明に係る支承構造体の第16の態様は、前記第1~前記第15の態様のいずれかの態様において、前記ソールプレートはクラッド鋼で形成されていて、前記ソールプレートの前記上面は、当該クラッド鋼の合せ材で形成されており、当該クラッド鋼の合せ材は当該クラッド鋼の母材である炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されている、ように構成されている態様である。
【0031】
本発明に係る支承構造体の第17の態様は、前記第16の態様において、前記ソールプレートを形成する前記クラッド鋼を前記合せ材と前記母材の両方を横切るように厚さ方向に切断または切削して形成された厚さ方向の面において、露出している前記クラッド鋼の前記合せ材及び前記母材の両方を覆うように防食被覆が設けられている態様である。
【0032】
本発明に係る支承構造体の第18の態様は、前記第17の態様において、前記厚さ方向の面が、前記ソールプレートのコバ面である態様である。
【0033】
本発明に係る支承構造体の第19の態様は、前記第17の態様において、前記厚さ方向の面が、ボルトを挿入できる孔の内側面である態様である。
【0034】
本発明に係る支承構造体の第20の態様は、前記第16~前記第19の態様のいずれかの態様において、前記ソールプレートを形成する前記クラッド鋼の前記母材の面内方向の外表面を覆う防食被覆が設けられている態様である。
【0035】
ここで、「前記クラッド鋼の前記母材の面内方向の外表面」とは、前記クラッド鋼の前記母材の表面のうち外側を向いた面であって、当該クラッド鋼の面内方向の面(当該クラッド鋼が面材として広がる方向の面と略平行な方向の面)のことである。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0036】
本発明に係る支承構造体の第21の態様は、前記第16~前記第20の態様のいずれかの態様において、前記ソールプレートを形成する前記クラッド鋼が、圧延クラッド鋼である態様である。
【0037】
本発明に係る支承構造体の第22の態様は、前記第1~前記第15の態様のいずれかの態様において、前記ソールプレートがステンレス鋼、チタン及びニッケル合金のいずれかの単一材で形成されて構成されている態様である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、上部構造の部位のうち、支承が接合する下面接合部位が、炭素鋼よりも貴な耐食材料で形成されていても、前記下面接合部位へ支承を溶接接合することができ、かつ、前記下面接合部位への支承の接合後に異種金属接触腐食が発生することが抑制された支承構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第1実施形態に係る支承構造体10を模式的に示す片側断面図
図2】本発明の第1実施形態に係る支承構造体10を備えた箱桁橋60を橋軸直角方向から見た状態を模式的に示す側面図
図3】箱桁橋60の上部構造である箱桁62を橋軸方向から見た状態を模式的に示す鉛直断面図
図4】本発明の第2実施形態に係る支承構造体30を模式的に示す片側断面図
図5】本発明の第3実施形態に係る支承構造体40を模式的に示す片側断面図
図6】本発明の第4実施形態に係る支承構造体50を模式的に示す片側断面図
図7】本発明の第5実施形態に係る支承構造体70を模式的に示す鉛直断面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本発明に係る支承構造体の実施形態(第1~5実施形態)を詳細に説明する。具体的な適用対象として、鋼製の箱桁を上部構造に備えた箱桁橋の支承構造体を想定して各実施形態について説明するが、本発明の適用対象がこれに限定されるわけではなく、箱桁橋以外の橋梁の支承構造体にも適用可能であり、さらには橋梁以外の構造物の支承構造体にも適用可能である。また、以下に記載する第1~5実施形態では、ゴム体が用いられたゴム支承を支承として取り上げているが、本発明の適用対象の支承がゴム支承に限定されるわけではなく、鋼製支承にも適用可能である。
【0041】
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る支承構造体10を模式的に示す片側断面図であり、中心線よりも左側は橋軸直角方向から見た側面図であり、中心線よりも右側は橋軸直角方向から見た鉛直断面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る支承構造体10を備えた箱桁橋60を橋軸直角方向から見た状態を模式的に示す側面図であり、図3は、箱桁橋60の上部構造である箱桁62を橋軸方向から見た状態を模式的に示す鉛直断面図である。なお、図2において、符号110はプレキャストPC床版を示しており、符号120は伸縮装置を示し、図3において、符号62A1は箱桁62の底板62Aを補強する底板縦リブを示しており、符号62Cは横リブを示しており、符号62Dは上フランジを示しており、符号62D1は上フランジ先端縦リブを示しており、符号62Eは垂直補剛材を示しており、符号112はアスファルト舗装を示している。また、図2では、プレキャストPC床版110の上面よりも上方に位置する部材は描いていない。
【0042】
本第1実施形態に係る支承構造体10は、図2、3に示すように、箱桁橋60の支承構造体である。
【0043】
支承構造体10は、図1~3に示すように、支承12と、箱桁橋60の上部構造である箱桁62と、箱桁橋60の下部構造である橋脚100と、を有してなる。箱桁62の下面接合部位62Xは、支承12の最上部に位置する部材であるソールプレート18が接合する箱桁62の下面の部位である。
【0044】
支承構造体10の支承12は、箱桁橋60の上部構造である箱桁62と、箱桁橋60の下部構造である橋脚100との間に位置しており、箱桁橋60の上部構造である箱桁62の荷重を下部構造である橋脚100に伝達する役割を担っている。
【0045】
支承12は、図1に示すように、下から順に、ベースプレート14と、支承本体16と、ソールプレート18とを有してなり、ベースプレート14がアンカー14Aにより橋脚100の天端に固定されており、また、ソールプレート18の上面が箱桁62の下面の部位である下面接合部位62Xに接合するように、ソールプレート18が箱桁62の底板62Aに、ソールプレート取付ボルト24とセットボルト26により取り付けられている。
【0046】
支承12の支承本体16は、図1に示すように、下から順に、下沓16Aと、ゴム体16Bと、上沓16Cとを有してなり、下沓16Aの下面がベースプレート14の上面に接合するように取り付けられて固定されており、上沓16Cの上面がソールプレート18の下面に接合するように取り付けられて固定されている。また、ゴム体16Bの下面が下沓16Aの上面に接合するように取り付けられて固定されており、ゴム体16Bの上面が上沓16Cの下面に接合するように取り付けられて固定されている。支承本体16は、一般的に用いられているゴム支承であり、ベースプレート14も一般的に用いられている鋼製のベースプレートである。鋼製のベースプレート14の具体的な材質としては、SM490A、SM490B、SM490C、SM490YA、SM490YB、もしくはSM520B、SM520Cなどの溶接構造用圧延鋼材を挙げることができる。ゴム体16Bは、金属板とゴム層が交互に積層されて構成されていてもよい。また、ゴム体16Bは、鉛プラグ入り積層ゴムでもよい。
【0047】
本第1実施形態に係る支承構造体10に含まれる箱桁62は、底板62Aおよびウェブ62Bにクラッド鋼66が用いられて構成されている。クラッド鋼66は、鋼製の母材であるクラッド鋼母材66Aに耐食性金属であるクラッド鋼合せ材66Bが金属組織的に接合してなる部材である。クラッド鋼合せ材66Bの厚さは、耐食性や耐擦傷性の観点から、1.5mm以上であることが好ましい。箱桁62の底板62Aおよびウェブ62Bにおいては、耐食性金属であるクラッド鋼合せ材66Bが箱桁62の外面側に位置し、鋼製の母材であるクラッド鋼母材66Aが箱桁62の内面側に位置するように構成されている。クラッド鋼合せ材66Bは、炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されている。また、クラッド鋼母材66Aの箱桁62の内面側の面には防食被覆68が設けられている。防食被覆68は、鋼製の箱桁の内面に対して一般的に用いられる防食被覆を用いることができ、具体的には例えば、鋼道路橋塗装・防食便覧記載のC-5塗装やD-5塗装、D-6塗装、その他有機ジンクリッチプライマー+エポキシ樹脂塗料、有機ジンクリッチプライマー+変性エポキシ樹脂塗装、金属溶射(亜鉛、アルミニウム、亜鉛・アルミニウム合金、アルミニウム・マグネシウム合金)および前記金属溶射の上にエポキシ樹脂系塗装した防食仕様などを用いることができる。
【0048】
また、箱桁62の内部に設けられた部材である、底板縦リブ62A1、横リブ62C、上フランジ62D、上フランジ先端縦リブ62D1、垂直補剛材62Eの表面(箱桁62の内部に向いた面)にも、図示はしていないが、防食被覆68が設けられている。
【0049】
箱桁62の底板62Aおよびウェブ62Bの外面に、炭素鋼よりも貴な耐食性金属であるクラッド鋼合せ材66Bが配置されているので、箱桁62は、海洋の影響を受ける腐食環境においても好適に用いることができる。また、クラッド鋼母材66Aの箱桁62の内面側の面には防食被覆68が設けられているので、この点でも腐食環境に対応している。
【0050】
ソールプレート18は、鋼製の母材であるクラッド鋼母材20Aに耐食性金属であるクラッド鋼合せ材20Bが金属組織的に接合してなるクラッド鋼20からなる板状の部材である。クラッド鋼合せ材20Bの厚さは、耐食性や耐擦傷性の観点から、1.5mm以上であることが好ましい。クラッド鋼母材20Aは、炭素鋼よりも貴な耐食性金属で形成されている。
【0051】
本第1実施形態に係る支承構造体10においては、ソールプレート18が箱桁62の下面接合部位62Xに接合しているが、ソールプレート18の上面は耐食性金属であるクラッド鋼合せ材20Bで形成されている。一方、箱桁62の下面接合部位62Xも耐食性金属であるクラッド鋼合せ材66Bで形成されている。このため、ソールプレート18の上面が箱桁62の下面接合部位62Xと接合しても、異種金属接触腐食は起こりにくくなっている。
【0052】
ソールプレート18の上面と箱桁62の下面接合部位62Xとの接合は、ソールプレート取付ボルト24およびセットボルト26によってなされている。図1に示すように、ソールプレート取付ボルト24は、その頭部が、ソールプレート18の貫通孔18Aにおいて孔の径が大きい部位の上面に係止しており、その軸部はソールプレート18の貫通孔18Aおよび箱桁62の底板62Aの貫通孔62A2を挿通し、その軸部の先端部は箱桁62の内部に突出しており、ナットで締結されている。また、セットボルト26は、その軸部が箱桁62の底板62Aの貫通孔62A3およびソールプレート18の貫通孔18Bを挿通し、その軸部の先端部は支承本体16の上沓16Cの穴16C1に達していて、貫通孔62A3、18Bを挿通し、穴16C1に螺合している。
【0053】
ソールプレート18の上面を形成しているクラッド鋼合せ材20Bおよび箱桁62の下面接合部位62Xを形成しているクラッド鋼合せ材66Bは、どちらも、炭素鋼よりも貴な耐食性金属であれば特に制限はなく用いることができ、例えば、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系などのステンレス鋼、純チタン、ニッケル合金を使用することができる。ステンレス鋼としては、具体的には例えば、SUS410L、SUS410S、SUS430、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS317L、SUS321、SUS347、SUS310S、SUS329J1L、SUS329J3L、SUS329J4L、SUS312L、SUS836L、NAS354N、JSL310Moなどを好適に用いることができ、純チタンとしては、具体的には例えば、TP270H、TP340H、TP270C、TP340Cなどを好適に用いることができ、ニッケル合金としては、NCF825、NW0276、NCF625、NW6022などを好適に用いることができる。
【0054】
ただし、ステンレス鋼には耐食性の高いものを用いることが好ましい。ステンレス鋼の溶接部は耐食性が低下するため、溶接の有無でステンレス鋼を使い分ける必要があるが、本第1実施形態に係る支承構造体10では、上部構造である箱桁62へのソールプレート18の取り付けは、ボルト(ソールプレート取付ボルト24、セットボルト26)で行い、溶接を用いていないので、ソールプレート18のクラッド鋼合せ材20Bにステンレスを用いる場合には、孔食指数16以上の組成のものを用いることができ、好ましくは孔食指数18以上の組成のものを用いることができる。後述する第2実施形態に係る支承構造体30では、上部構造である箱桁62へのソールプレート18の取り付けに溶接を用いているので、この場合には孔食指数23以上の組成のものを用いることができ、好ましくは孔食指数28以上の組成のものを用いることができる。本願において、孔食指数とは、ステンレス鋼中に含有されるCr、Mo、Nの含有量(質量%)を用いて計算される指数であり、孔食指数=Cr+3.3Mo+16Nの式(式中の各元素記号はその元素の含有量を表している)により計算される値(質量%表示の値)のことである。
【0055】
ソールプレート18の上面を形成しているクラッド鋼合せ材20Bおよび箱桁62の下面接合部位62Xを形成しているクラッド鋼合せ材66Bは、異種金属接触腐食を抑制する観点から、同種の耐食性金属を用いることが好ましい。ここで、クラッド鋼合せ材20Bおよびクラッド鋼合せ材66Bが同種の耐食性金属であるとは、両者が、純チタンであるか、あるいは孔食指数の差が6以下のステンレス鋼であるか、あるいはニッケル合金であることを意味する。
【0056】
ソールプレート18の上面を形成しているクラッド鋼合せ材20Bおよび箱桁62の下面接合部位62Xを形成しているクラッド鋼合せ材66Bは、異種金属接触腐食をより抑制する観点から、同一の耐食性金属を用いることが好ましい。
【0057】
ソールプレート18の厚さ方向に、クラッド鋼合せ材20Bとクラッド鋼母材20Aの両方を横切るように切断または切削して形成された厚さ方向の面については、クラッド鋼合せ材20Bとクラッド鋼母材20Aの両方が露出するので、異種金属接触腐食が生じるおそれがある。そのため、ソールプレート18の前記の厚さ方向の面については、その全面を覆うように防食被覆を設けることが好ましい。
【0058】
ソールプレート18の前記の厚さ方向の面としては、ソールプレート18の端部の厚さ方向の切断面であるコバ面18Xを挙げることができ、また、ソールプレート18の連結に用いる貫通孔(ソールプレート取付ボルト24用の貫通孔18A、セットボルト26用の貫通孔18B)の内側面を挙げることができる。これらの厚さ方向の面(コバ面18X、貫通孔18A、18Bの内側面)には、その全面を覆うように防食被覆を設けることが好ましい。
【0059】
また、箱桁62の底板62Aの貫通孔62A2、62A3の内側面においても、クラッド鋼合せ材66Bとクラッド鋼母材66Aの両方が露出するので、異種金属接触腐食を抑制する観点から、箱桁62の底板62Aの貫通孔62A2、62A3の内側面の全面を覆うように防食被覆を設けることが好ましい。
【0060】
また、ソールプレート取付ボルト24およびセットボルト26に防食被覆を設けることも好ましい。設ける防食被覆としては、塗装、ふっ素樹脂被覆、エポキシ樹脂被覆、ビニルエステル樹脂被覆、およびセラミック被覆等を挙げることができる。ただし、異種金属接触腐食が起きるので、ボルトの防食被覆には亜鉛・アルミニウム合金メッキのような犠牲防食作用のある金属は用いない。ソールプレート取付ボルト24およびセットボルト26にステンレス製高力ボルト(SUS630製)を用いてもよい。
【0061】
また、ソールプレート18の鋼製のクラッド鋼母材20Aの面内方向の外表面20Xを覆うように防食被覆を設けることが好ましい。クラッド鋼母材20Aの面内方向の外表面20Xは、ソールプレート18の鋼製のクラッド鋼母材20Aの表面のうち外側を向いた面であって、当該クラッド鋼20の面内方向の面(当該クラッド鋼20が面材として広がる方向の面と略平行な方向の面)であり、上沓16Cの上面が接合する面である。
【0062】
ソールプレート18の前記の厚さ方向の面(コバ面18X、貫通孔18A、18Bの内側面)、箱桁62の底板62Aの貫通孔62A2、62A3の内側面、およびソールプレート18の鋼製のクラッド鋼母材20Aの面内方向の外表面20Xを覆うように設ける防食被覆には、現地で補修可能な防食方法を用いるのがよく、塗装(溶剤型、無溶剤型、水性、粉体)や防食テープを用いることができる。溶射を用いた場合には、溶射の上に塗装を設ける。支承は、通常、直接的には日光の当たらない場所に設置されるため、クラッド鋼製のソールプレートに行う塗装仕様は、エポキシ系プライマーの上に厚膜エポキシ樹脂塗装を行うことが多い。その上にポリウレタンやふっ素樹脂塗装を行ってもよい。
【0063】
上沓16Cや下沓16A、ベースプレート14に対する防食被覆も、前述したソールプレート18の前記の厚さ方向の面(コバ面18X、貫通孔18A、18Bの内側面)等に対する防食被覆と同様である。または、防食被覆を設けるのに替えて、上沓16Cや下沓16A、ベースプレート14に耐食性金属の単一材を用いてもよい。異種金属接触腐食を抑制する観点から、上沓16Cや下沓16A、ベースプレート14に耐食性金属の単一材を用いる場合、それらに接触する炭素鋼製の部材との間に絶縁層を設けることが好ましい。
【0064】
クラッド鋼製のソールプレート18の耐食性金属からなる合せ材部分(クラッド鋼20のクラッド鋼合せ材20B)には亜鉛含有塗料や亜鉛めっきを用いない。クラッド鋼20のクラッド鋼合せ材20Bにステンレスやチタン等の耐食性金属を用いた場合、これらと接触する部分に亜鉛めっきを用いると亜鉛が早期に消耗するためである。
【0065】
本第1実施形態に係る支承構造体10の支承12において、上揚力止め板やサイドブロックなどの変位拘束部材を用いてもよい。
【0066】
また、本第1実施形態に係る支承構造体10の支承12を覆う支承カバーを設けてもよい。支承カバーを取り付けるためのボルトが箱桁62のクラッド鋼66のクラッド鋼合せ材66Bと接触する部分には、絶縁をするためにゴム板を使用したり、被覆防食したボルトを用いて、異種金属接触腐食が生じることを抑制するようにする。
【0067】
(2)第2実施形態
図4は、本発明の第2実施形態に係る支承構造体30を模式的に示す片側断面図であり、中心線よりも左側は橋軸直角方向から見た側面図であり、中心線よりも右側は橋軸直角方向から見た鉛直断面図である。
【0068】
第1実施形態に係る支承構造体10では、ソールプレート取付ボルト24およびセットボルト26を用いて、ソールプレート18を箱桁62の下面接合部位62Xに接合させて、支承12を箱桁62に取り付けていたが、本第2実施形態に係る支承構造体30では、ソールプレート18aのクラッド鋼合せ材20Bを、箱桁62の底板62Aのクラッド鋼合せ材66Bに、隅肉溶接32で接合するとともに、セットボルト26を貫通孔62A3、18Bを挿通させ、穴16C1に螺合させて、ソールプレート18aの上面を箱桁62の下面接合部位62Xに接合させて、ソールプレート18aを箱桁62に取り付けている。それ以外の点については、本第2実施形態に係る支承構造体30は第1実施形態に係る支承構造体10と同様であるので、同様の点については説明を原則として省略し、第1実施形態についての説明で代えるものとする。また、第1実施形態に係る支承構造体10の部材や部位と対応する部材や部位には原則として同一の符号を付して、説明は原則として省略する。
【0069】
図4に示すように、本第2実施形態に係る支承構造体30では、ソールプレート18aのクラッド鋼合せ材20Bを、箱桁62の底板62Aのクラッド鋼合せ材66Bに、隅肉溶接32で接合している。このため、本第2実施形態に係る支承構造体30では、ソールプレート取付ボルト24は用いておらず、ソールプレート18aにはソールプレート取付ボルト24用の貫通孔18Aは設けられていない。これ以外の点については、ソールプレート18aおよび支承12aは、それぞれ、第1実施形態に係る支承構造体10におけるソールプレート18および支承12と同様である。本第2実施形態に係る支承構造体30では、隅肉溶接32とセットボルト26により、支承12aを箱桁62に取り付けている。
【0070】
前述したように、ステンレス鋼の溶接部は耐食性が低下するため、溶接の有無でステンレス鋼を使い分ける必要がある。本第2実施形態に係る支承構造体30では、ソールプレート18aのクラッド鋼合せ材20Bを、箱桁62の底板62Aのクラッド鋼合せ材66Bに、隅肉溶接32で接合しているので、クラッド鋼合せ材20Bおよびクラッド鋼合せ材66Bにステンレス鋼を用いている場合には、孔食指数23以上の組成のものを用いるのがよく、好ましくは孔食指数28以上の組成のものを用いるのがよい。
【0071】
また、チタンは炭素鋼とは溶接できないが、チタン同士は溶接できるので、本第2実施形態に係る支承構造体30においてチタンをクラッド鋼合せ材として用いる場合は、クラッド鋼合せ材20Bおよびクラッド鋼合せ材66Bの両方にチタンを用いることが必要である。
【0072】
(3)第3実施形態
図5は、本発明の第3実施形態に係る支承構造体40を模式的に示す片側断面図であり、中心線よりも左側は橋軸直角方向から見た側面図であり、中心線よりも右側は橋軸直角方向から見た鉛直断面図である。
【0073】
第1実施形態に係る支承構造体10では、ソールプレート18にクラッド鋼(鋼製の母材であるクラッド鋼母材20Aに耐食性金属であるクラッド鋼合せ材20Bが金属組織的に接合してなるクラッド鋼20)を用いたが、本第3実施形態に係る支承構造体40では、支承42のソールプレート44に、クラッド鋼ではなく、耐食性金属の単一材を用いている。それ以外の点については、本第3実施形態に係る支承構造体40は第1実施形態に係る支承構造体10と同様であるので、同様の点については説明を原則として省略し、第1実施形態についての説明で代えるものとする。また、第1実施形態に係る支承構造体10の部材や部位と対応する部材や部位には原則として同一の符号を付して、説明は原則として省略する。
【0074】
本第3実施形態に係る支承構造体40では、ソールプレート44を箱桁62の底板62Aのクラッド鋼合せ材66Bに溶接で接合させることは行っておらず、ソールプレート取付ボルト24およびセットボルト26の両方を用いて、ソールプレート44の上面を箱桁62の下面接合部位62Xに接合させて、ソールプレート44を箱桁62に取り付けている。
【0075】
図5に示すように、本第3実施形態に係る支承構造体40では、ソールプレート44に耐食性金属の単一材を用いているので、ソールプレート44の端部の厚さ方向の切断面であるコバ面およびソールプレート44の連結に用いる貫通孔(ソールプレート取付ボルト24用の貫通孔44A、セットボルト26用の貫通孔44B)の内側面においても、炭素鋼は露出しておらず、耐食性金属が露出しているのみであるので、それらの面に防食被覆を設けることは不要である。また、ソールプレート44の面内方向の外表面についても、耐食性金属が露出しているのみであるので、防食被覆を設けることは不要である。
【0076】
ソールプレート44に用いることができる耐食性金属は、第1実施形態に係る支承構造体10におけるソールプレート18のクラッド鋼合せ材20Bと同様である。
【0077】
異種金属接触腐食を抑制する観点から、耐食性金属からなるソールプレート44と上沓16Cとの間に絶縁層を設けてもよい。絶縁層としては、シート状に加工可能で電気抵抗の大きいゴムやプラスチックであれば用いることが可能であるが、密着させやすい点で、柔軟性のあるゴム(天然ゴム、クロロプレンゴム、ふっ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム、MSRゴム)を用いることが好ましい。
【0078】
(4)第4実施形態
図6は、本発明の第4実施形態に係る支承構造体50を模式的に示す片側断面図であり、中心線よりも左側は橋軸直角方向から見た側面図であり、中心線よりも右側は橋軸直角方向から見た鉛直断面図である。
【0079】
第3実施形態に係る支承構造体40では、ソールプレート取付ボルト24およびセットボルト26を用いて、ソールプレート44を箱桁62の下面接合部位62Xに接合させて、支承42を箱桁62に取り付けていたが、本第4実施形態に係る支承構造体50では、ソールプレート44aを、箱桁62の底板62Aのクラッド鋼合せ材66Bに、隅肉溶接52で接合するとともに、セットボルト26を貫通孔62A3、44Bを挿通させ、穴16C1に螺合させて、ソールプレート44aを箱桁62に取り付けている。それ以外の点については、本第4実施形態に係る支承構造体50は第3実施形態に係る支承構造体40と同様であるので、同様の点については説明を原則として省略し、第3実施形態についての説明で代えるものとする。また、第3実施形態に係る支承構造体40の部材や部位と対応する部材や部位には原則として同一の符号を付して、説明は原則として省略する。
【0080】
図6に示すように、本第4実施形態に係る支承構造体50では、ソールプレート44aを、箱桁62の底板62Aのクラッド鋼合せ材66Bに、隅肉溶接52で接合している。このため、本第4実施形態に係る支承構造体50では、ソールプレート取付ボルト24は用いておらず、ソールプレート44aにはソールプレート取付ボルト24用の貫通孔44Aは設けられていない。これ以外の点は、ソールプレート44aおよび支承42aは、それぞれ、第3実施形態に係る支承構造体40におけるソールプレート44および支承42と同様である。本第4実施形態に係る支承構造体50では、隅肉溶接52とセットボルト26により、ソールプレート44aの上面を箱桁62の下面接合部位62Xに接合させて、ソールプレート44aを箱桁62に取り付けている。
【0081】
前述したように、ステンレス鋼の溶接部は耐食性が低下するため、溶接の有無でステンレス鋼を使い分ける必要がある。本第4実施形態に係る支承構造体50では、ソールプレート44aを、箱桁62の底板62Aのクラッド鋼合せ材66Bに、隅肉溶接52で接合しているので、ソールプレート44aおよびクラッド鋼合せ材66Bにステンレス鋼を用いている場合には、孔食指数23以上の組成のものを用いるのがよく、好ましくは孔食指数28以上の組成のものを用いるのがよい。
【0082】
また、チタンは炭素鋼とは溶接できないが、チタン同士は溶接できるので、本第4実施形態に係る支承構造体50においてチタンを耐食性金属として用いる場合は、ソールプレート44aおよびクラッド鋼合せ材66Bの両方にチタンを用いることが必要である。
【0083】
(5)第5実施形態
図7は、本発明の第5実施形態に係る支承構造体70を模式的に示す橋軸直角方向から見た鉛直断面図である。
【0084】
本発明の第5実施形態に係る支承構造体70は、第4実施形態に係る支承構造体50において、上沓16Cを炭素鋼製の上沓16C0にし、ソールプレート44aをステンレス鋼製のソールプレート44a0にし、箱桁62の底板62Aに用いられているクラッド鋼66のクラッド鋼合せ材66Bをステンレス鋼製のクラッド鋼合せ材66B0にしてクラッド鋼66をクラッド鋼66aにするとともに、炭素鋼製の上沓16C0とステンレス鋼製のソールプレート44a0との間に絶縁層72を設けた実施形態である。炭素鋼製の上沓16C0とステンレス鋼製のソールプレート44a0は異種金属であるが、それらの間に絶縁層72を設けて、炭素鋼製の上沓16C0とステンレス鋼製のソールプレート44a0とが接触しないようにすることで、異種金属接触腐食を防止している。また、本第5実施形態に係る支承構造体70では、炭素鋼製のセットボルト26の軸部の円筒部(ねじを切っていない部分)の表面にボルトスリーブ26Aを設け、さらに、支承本体16aを覆う支承カバー74を設けて、防食性能を向上させている。それら以外の点については、本第5実施形態に係る支承構造体70は第4実施形態に係る支承構造体50と同様であるので、同様の点については説明を原則として省略し、第4実施形態についての説明で代えるものとする。また、第4実施形態に係る支承構造体50の部材や部位と対応する部材や部位には原則として同一の符号を付して、説明は原則として省略する。
【0085】
本第5実施形態に係る支承構造体70の支承42bは、箱桁橋60の上部構造である箱桁62と、箱桁橋60の下部構造である橋脚100との間に位置しており、箱桁橋60の上部構造である箱桁62の荷重を下部構造である橋脚100に伝達する役割を担っている。
【0086】
支承42bは、図7に示すように、下から順に、ベースプレート14と、支承本体16aと、絶縁層72と、ソールプレート44a0とを有してなり、ベースプレート14がアンカー14Aにより橋脚100の天端に固定されており、また、ソールプレート44a0の上面が箱桁62の下面の部位である下面接合部位62Xに接合するように、ソールプレート44a0が箱桁62の底板62Aに、セットボルト26および隅肉溶接52により取り付けられている。
【0087】
支承42bの支承本体16aは、図7に示すように、下から順に、下沓16Aと、ゴム体16Bと、上沓16C0とを有してなり、下沓16Aの下面がベースプレート14の上面に接合するように取り付けられて固定されており、炭素鋼製の上沓16C0の上面がステンレス鋼製のソールプレート44a0の下面に、絶縁層72を介して接合するように取り付けられて固定されている。また、ゴム体16Bの下面が下沓16Aの上面に接合するように取り付けられて固定されており、ゴム体16Bの上面が上沓16C0の下面に接合するように取り付けられて固定されている。支承本体16aは、一般的に用いられているゴム支承であり、ベースプレート14も一般的に用いられている鋼製のベースプレートである。
【0088】
図7に示すように、本第5実施形態に係る支承構造体70では、ステンレス鋼製のソールプレート44a0を、箱桁62の底板62Aのステンレス鋼製のクラッド鋼合せ材66B0に、隅肉溶接52で接合している。このため、本第5実施形態に係る支承構造体70では、第4実施形態に係る支承構造体50と同様に、ソールプレート取付ボルト24は用いておらず、ソールプレート44a0にはソールプレート取付ボルト24用の貫通孔44Aは設けていない。本第5実施形態に係る支承構造体70では、隅肉溶接52とセットボルト26により、ソールプレート44a0の上面を箱桁62の下面接合部位62Xに接合させて、ソールプレート44a0を箱桁62に取り付けている。
【0089】
前述したように、ステンレス鋼の溶接部は耐食性が低下するため、溶接の有無でステンレス鋼を使い分ける必要がある。本第5実施形態に係る支承構造体70では、ステンレス鋼製のソールプレート44a0を、箱桁62の底板62Aのステンレス鋼製のクラッド鋼合せ材66B0に、第4実施形態に係る支承構造体50と同様に、隅肉溶接52で接合しているので、ステンレス鋼製のソールプレート44a0およびステンレス鋼製のクラッド鋼合せ材66B0には、孔食指数23以上の組成のステンレス鋼を用いるのがよく、好ましくは孔食指数28以上の組成のステンレス鋼を用いるのがよい。
【0090】
ソールプレート44a0はステンレス鋼である一方、上沓16C0は炭素鋼であるので、異種金属接触腐食を防ぐべく、本第5実施形態に係る支承構造体70では、ソールプレート44a0と上沓16C0との間には絶縁層72を設けて、炭素鋼製の上沓16C0とステンレス鋼製のソールプレート44a0とが接触しないようにしている。
【0091】
絶縁層72としては、ステンレス鋼製のソールプレート44a0と炭素鋼製の上沓16C0との電気的な接触を防ぐことができる材質のものであれば使用することができ、具体的には例えば、所定の絶縁性能を有する塗装を用いることができる。また、ふっ素樹脂または充填材を混合したふっ素樹脂を用いることもできる。
【0092】
絶縁層72に使用可能な塗装としては、具体的には例えば、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料、超厚膜形エポキシ樹脂塗料を用いて形成された塗装を挙げることができる。また、これらの塗装を形成する際に使用可能なプライマーとしては、エポキシ樹脂プライマー、有機ジンクリッチプライマー、無機ジンクリッチプライマー等を挙げることができる。
【0093】
ふっ素樹脂はゴムよりも耐薬品性や耐クリープ性にも優れている。さらに、ふっ素樹脂にガラス繊維やアルミナを混合することで、さらに耐クリープ性が向上し、耐摩耗性も向上する。
【0094】
層の面と直交する方向に大きな荷重を受ける絶縁層部位は絶縁機能が低下しやすいため、このような絶縁層部位には、シート状に形成されたふっ素樹脂を用いることが好ましい。ソールプレート44a0と上沓16C0は、支承構造体70の部位であって大きな鉛直方向荷重を受ける部位であり、ソールプレート44a0と上沓16C0との間の絶縁層72は直交する方向に大きな荷重を受ける絶縁層部位であるので、本第5実施形態に係る支承構造体70の絶縁層72には、シート状に形成されたふっ素樹脂を用いることが好ましい。シート状に形成するふっ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、およびエチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)を用いることができる。
【0095】
また、シート状に形成されたふっ素樹脂は、上下で異なる材質の部材が配置され、かつ、水平方向のせん断力を伝える絶縁層に用いる場合に特に有効である。本第5実施形態に係る支承構造体70の絶縁層72は、その上下に異なる材質の部材(ステンレス鋼製のソールプレート44a0と炭素鋼製の上沓16C0)が配置され、かつ、水平方向のせん断力を伝える絶縁層であるので、絶縁層72には、シート状に形成されたふっ素樹脂を用いることが好ましい。
【0096】
また、本第5実施形態に係る支承構造体70において用いるセットボルト26は、炭素鋼製であるが、表面全体に亜鉛めっきがなされたものであってもよい。セットボルト26の頭部は、塗装(有機ジンクリッチ塗料、無機ジンクリッチ塗料、エポキシ塗料)もしくは金属溶射(材質:Al、Zn、Al-Zn、Al-Mg)による被覆が設けられている。また、セットボルト26の軸部の円筒部(ねじを切っていない部分)の表面にも、塗装(有機ジンクリッチ塗料、無機ジンクリッチ塗料、エポキシ塗料)もしくは金属溶射(材質:Al、Zn、Al-Zn、Al-Mg)による被覆が設けられているが、セットボルト26の軸部の円筒部の表面においては、前記被覆の上にさらにボルトスリーブ26Aを設けて防食性能をさらに向上させている。ボルトスリーブ26Aは、厚さが0.3mm以上の熱収縮スリーブである。セットボルト26の軸部の先端部分表面(ねじを切っている先端部分の外周面およびねじ先端面)にはボルトスリーブ26Aは設けておらず、また、塗装や金属溶射による前記被覆も設けておらず、炭素鋼がむき出しの状態で当該先端部分は、内側面にねじが切られた上沓16C0の穴16C1に螺合するが、上沓16C0およびセットボルト26は同じ炭素鋼であり、接触しても、異種金属接触腐食は起こらない。
【0097】
箱桁62の底板62A(クラッド鋼66a)のクラッド鋼合せ材66B0(ステンレス鋼製)およびソールプレート44a0(ステンレス鋼製)と炭素鋼製のセットボルト26との間では異種金属接触腐食が起こり得るが、貫通孔62A3、44Bを挿通するセットボルト26の軸部の円筒部(ねじを切っていない部分)の表面にボルトスリーブ26Aを設けることで、クラッド鋼合せ材66B0(ステンレス鋼製)およびソールプレート44a0(ステンレス鋼製)と炭素鋼製のセットボルト26とが接触しないようにしており、十分な絶縁がなされるので、異種金属接触腐食は起こらず、十分な防食性能を得ることができる。また、貫通孔62A3、44Bの内側面にエポキシ樹脂塗装を行うことで、さらに防食性能を上げることもできる。また、セットボルト26の頭部についても、前記の塗装や金属溶射による被覆の上に、さらに、エポキシ塗料、ウレタン塗料、アクリルシリコン樹脂塗料、ふっ素樹脂塗料、超厚膜形エポキシ樹脂塗料のうちの少なくとも1種類の塗料を用いた塗装を行ってさらに防食性能を上げてもよく、図7では、具体例としてエポキシ塗料を用いたエポキシ塗装を取り上げ、エポキシ塗装80として破線で図示している(図7の左側のみに図示し、図7の右側への記載は省略している。)。このエポキシ塗装80は、セットボルト26の頭部だけでなく、図7の左側に示すように、箱桁62の内面全面に設けてもよく、また、上沓16C0、下沓16Aおよびベースプレート14の外面(外部に露出した面)に設けてもよい。
【0098】
また、本第5実施形態に係る支承構造体70では、支承本体16aの周囲を覆うように支承カバー74を留め具76で取り付けて設けているが、留め具76は炭素鋼製であるため、ステンレス鋼製のソールプレート44a0に取り付ける留め具76については、外表面を防食被覆(例えば、エポキシ樹脂塗料を用いて形成されたエポキシ塗装)で覆ったものを用いるのがよい。また、留め具76は支承カバー74を固定するのみの役割なので、強度の高い炭素鋼製のボルトを留め具76に用いなくてもよく、ステンレス鋼製のソールプレート44a0に取り付ける留め具76として、ステンレス鋼製やチタン製のボルトを用いてもよい。
【0099】
セットボルト26の軸部の円筒部(ねじを切っていない部分)にボルトスリーブ26Aを設ける際には、ボルトスリーブ26Aにセットボルト26の軸部の円筒部を挿入し、ボルトスリーブ26Aに熱を加えて収縮させ、セットボルト26の軸部の円筒部に密着させる。熱を加える方法は、熱風、電気抵抗による加熱、遠赤外線、バーナーなどの方法を用いることができる。熱収縮スリーブを収縮させる温度は樹脂の融点よりも低い。このため、樹脂を溶解して被覆する粉体ライニングと異なり施工が容易で、かつ、特殊な装置を必要とせず、現地で施工することができる。また、予め成型したスリーブであるため、セットボルト26の軸部の円筒部に取り付けたボルトスリーブ26Aの厚さは均一となり、かつ、ピンホールも発生しにくい。ボルトスリーブ26Aとして使用可能な材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ふっ素樹脂(PFA、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP))等を挙げることができる。これらに強化繊維を混合して複合材料化することで、ボルトスリーブ26Aを貫通する傷が施工時に生じることを防止することができるが、強化繊維を用いなくても、ボルトスリーブ26Aの厚さを0.3mm以上にすることにより、ボルトスリーブ26Aを貫通する傷が施工時に生じることを防ぐことができる。
【0100】
このことを実験的に確認しているので、以下、その実験内容および実験結果について説明する。
【0101】
<スリーブ被覆ボルト落下試験>
軸部の円筒部(ねじを切っていない部分)の表面にスリーブを被覆したスリーブ被覆ボルトの当該スリーブに必要な厚さを調査するために、スリーブ被覆ボルト耐損傷試験を行った。
【0102】
亜鉛めっきした規格M16の六角ボルト(円筒部の径:φ16mm、首下長さ:100mm、半ねじ)を用いたが、その頭部と軸部の円筒部(ねじを切っていない部分)には金属溶射(Al-Mg溶射)を行った。そして、その金属溶射を行った後、軸部の円筒部に膜厚を変えてスリーブを設けた。
【0103】
角型ステンレス容器(630mm×430mm×150mm)に20~30mmの砕石を敷き詰め、その敷き詰めた砕石の上に、高さ2mからスリーブ被覆M16ボルトを落下させ、欠陥(ピンホール)が発生するかどうかを調査した。
【0104】
欠陥(ピンホール)の発生の有無は、目視とピンホールディテクター(株式会社サンコウ電子研究所製)で行った。ピンホールディテクターは、電圧を2kVにして、欠陥(ピンホール)の発生の有無を調査した。
【0105】
下記の表1にその結果を示す。×は欠陥が発生したことを示し、〇は欠陥が発生しなかったことを示している。
【0106】
【表1】
【0107】
表1からわかるように、スリーブの膜厚が0.3mm以上になると欠陥(ピンホール)が発生していない。このことから、ボルトスリーブ26Aの厚さを0.3mm以上にすることにより、ボルトスリーブ26Aを貫通する傷が施工時に生じることを防ぐことができると考えられる。
【0108】
(6)補足
本発明の実施に際してクラッド鋼(合せ材に耐食性金属を用いたクラッド鋼)を用いる場合、大きな板の製造が容易である点、および爆着クラッド鋼や肉盛クラッド鋼よりも安価である点から、圧延クラッド鋼を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0109】
10、30、40、50、70…支承構造体
12、12a、42、42a、42b…支承
14…ベースプレート
14A…アンカー
16、16a…支承本体
16A…下沓
16B…ゴム体
16C、16C0…上沓
16C1…穴
18、18a、44、44a、44a0…ソールプレート
18A、18B、44A、44B、62A2、62A3…貫通孔
18X…コバ面
20、66、66a…クラッド鋼
20A、66A…クラッド鋼母材
20B、66B、66B0…クラッド鋼合せ材
20X…クラッド鋼母材20Aの面内方向の外表面
24…ソールプレート取付ボルト
26…セットボルト
26A…ボルトスリーブ
32、52…隅肉溶接
60…箱桁橋
62…箱桁
62A…底板
62A1…底板縦リブ
62B…ウェブ
62C…横リブ
62D…上フランジ
62D1…上フランジ先端縦リブ
62E…垂直補剛材
62X…下面接合部位
68…防食被覆
72…絶縁層
74…支承カバー
76…留め具
80…エポキシ塗装
100…橋脚
110…プレキャストPC床版
112…アスファルト舗装
120…伸縮装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7