(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166967
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】イオン衝撃による部品の表面状態の改質方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/04 20060101AFI20231115BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20231115BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231115BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20231115BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B05D3/04 C
B05D3/06 102Z
B05D3/00 D
B05D3/12 A
B05D5/06 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023024906
(22)【出願日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】22172494.1
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519195497
【氏名又は名称】ルバテル・エ・ワイエルマン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・ポリ
(72)【発明者】
【氏名】コリーナ・バルボス
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・ジャンルノー
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AD01
4D075BB42Z
4D075BB43Z
4D075BB46Z
4D075BB49Z
4D075BB56Z
4D075BB57Z
4D075BB91Z
4D075BB93Z
4D075BB95Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB02
4D075DA06
4D075DA07
4D075DB01
4D075DB06
4D075DB14
4D075DB31
4D075DB63
4D075DC16
4D075EA05
4D075EB22
4D075EB33
4D075EB38
4D075EB51
4D075EC30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、部品の標的表面をプラズマ処理する方法を提供する。
【解決手段】以下のステップ:部品10上の標的表面11を得るステップ;上記部品をプラズマ生成器のチャンバに入れるステップ;10
-6~10mbarの圧力まで上記チャンバを排気するステップ;10
-4~10
2mbarの上記チャンバ内の圧力に到達するまで、好適なガスを上記チャンバに注入するステップ;プラズマを生成するために、発電機によって上記チャンバ内で電流放電を生成するステップ;特に上記電流放電の電力、上記チャンバに注入された上記ガス、及び上記標的表面の材料に応じた所定の期間にわたって、上記部品の上記標的表面を上記プラズマに曝露することにより、上記標的表面の表面状態を劣化させて、上記標的表面の粗度を上昇させ、上記標的表面をつや消し状態又はよりつや消し状態にするステップを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(10)の標的表面(11)をプラズマ処理する方法であって、前記方法は以下のステップ:
‐ワニスのコート(13)を前記標的表面(11)の対象エリアに堆積させる作業、及び前記標的表面(11)の少なくとも一部分を紫外線照射に曝露することによって、前記ワニスのコート(13)の少なくとも一部分を予備架橋させる作業を含む、前記部品(10)上の前記標的表面(11)を得るステップ;
‐前記部品(10)をプラズマ生成器(20)のチャンバに入れるステップ;
‐10-6~10mbarの圧力まで前記チャンバを排気するステップ;
‐10-4~102mbarの前記チャンバ内の圧力に到達するまで、好適なガスを前記チャンバに注入するステップ;
‐プラズマを生成するために、発電機によって前記チャンバ内で電流放電を生成するステップ;
‐少なくとも前記電流放電の電力、前記チャンバに注入された前記ガス、及び前記標的表面(11)の材料に応じた所定の期間にわたって、前記部品(10)の前記標的表面(11)を前記プラズマに曝露することにより、前記標的表面(11)の表面状態を劣化させて、前記標的表面(11)の粗度を上昇させ、前記標的表面(11)をつや消し処理するステップ
を含み、前記部品(10)の前記標的表面(11)を前記プラズマに曝露する前記ステップは、予備架橋された前記ワニスコート(13)の前記一部分の前記架橋を終了させるために実施される、方法。
【請求項2】
前記予備架橋作業中、前記標的表面(11)は5~10秒にわたって前記紫外線照射に曝露される、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記チャンバは0.1~1mbarの圧力まで排気される、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記ガス注入ステップ中、アルゴンが、15~25sccmの質量流量で、前記チャンバ内において0.6~0.8mbarの圧力に到達するまで、前記チャンバに注入される、請求項1に記載の処理方法。
【請求項5】
前記発電機は、電流放電を生成する前記ステップ中に、2,000~2,600Wの電力を生成し、前記標的表面(11)を曝露する前記ステップは、1~2分にわたって実施される、請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記ワニスコート(13)は、60°で測定した場合に5GU未満のグロスユニット(Gloss Unit)を有する、請求項1に記載の処理方法。
【請求項7】
前記部品(10)上の前記標的表面(11)を得る前記ステップの終了時に、前記標的表面(11)の「マスキングエリア(masked area)」と呼ばれる一部分にわたって、マスキング層を堆積させるステップが実施され、前記標的表面(11)の残りの部分は「露出エリア(exposed area)」と呼ばれ、前記マスキング層は、前記マスキングエリアを前記プラズマから保護することを目的としている、請求項1に記載の処理方法。
【請求項8】
前記ワニスコート(13)の前記予備架橋作業中、前記コートの一部分のみが予備架橋され、他の部分は完全に架橋される、請求項1に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理の分野、特にイオン衝撃による部品の表面状態の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの用途において、特に外装部品の場合には美観上の理由により、つや消し、即ち光沢のない外観を有する可視表面を得ることが求められる。
【0003】
換言すれば、特定の外装部品の表面をつや消し処理する、即ち上記表面のつや消しの程度を高めることが求められる。
【0004】
典型的には、部品の表面について、つや消しの外観は上記表面の粗度を高めることによって得られる。より具体的には、表面の光沢は、上記表面が光照射をどの程度反射するかに依存する。特に、光沢のある外観を有する表面は光を鏡面反射し、つや消しの外観を有する表面は光を乱反射する。
【0005】
部品の表面をつや消し処理するために、既知の解決策は、上記表面に向かって、その粒子サイズが所望の結果に応じて異なる研磨材料の粒子を、所定の圧力で所与の期間にわたって発射することからなる。上記研磨材料の粒子は、ガラス、セラミック、又は酸化アルミニウム等で作製されたビーズであってよい。
【0006】
しかしながら、これらの解決策の欠点は、研磨材料が摩耗し、使用後に特別な廃棄物処理が必要となる点である。これは、研磨材料粒子が、上記研磨材料粒子の使用の結果として表面がつや消し処理されることになる部品に由来する材料の粒子によって、汚染されるためである。更に、上記研磨材料の粒子の粒子サイズに不均衡が存在するリスクが高い。最後に、部品の厚さに応じて、粒子の発射が不可逆的な損傷又は変形を引き起こす恐れがある。
【0007】
他の場合では、部品の全体又は一部の材料の性質を変更することによって、上記部品の表面をつや消し処理できる。特に、つや消し処理される表面が、部品上に堆積されたワニスコートの表面である場合、ワニス組成物に適切な樹脂又は添加剤を加えることができる。
【0008】
しかしながらこの解決策は、ワニスコートの表面の存在時にしか適用されないため、限定的である。更に、ワニスコートの組成の変更後、ワニスコートが、機械的若しくは化学的ストレスに耐えられること、特定の温度にある程度耐えられること、又は紫外線照射への曝露に耐えられること等といった特定の要件を満たさなくなる場合がある。この解決策の別の欠点は、この解決策が、外装部品の製造に、ワニスの組成の変更に関わる追加のステップを付加する点であり、これは、上記部品を産業規模で製造しなければならない場合に、特に制約を生むものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、標的表面をつや消し処理するための、即ち上記標的表面のつや消しの程度を向上させるための、上記表面上に酸化物を生成しない又はいずれのコーティングを用いない解決策を提供することによって、上述の欠点を克服する。
【0010】
換言すれば、本発明により、標的表面の表面状態のみを改質して、上記標的表面をつや消し処理できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、部品の標的表面をプラズマ処理する方法に関し、上記方法は以下のステップ:
‐ワニスのコートを上記標的表面の対象エリアに堆積させる作業、及び上記標的表面の少なくとも一部分を紫外線照射に曝露することによって、上記ワニスコートの少なくとも一部分を予備架橋させる作業を含む、上記部品上の上記標的表面を得るステップ;
‐上記部品をプラズマ生成器のチャンバに入れるステップ;
‐10-6~10mbarの圧力まで上記チャンバを排気するステップ;
‐10-4~102mbarの上記チャンバ内の圧力に到達するまで、好適なガスを上記チャンバに注入するステップ;
‐プラズマを生成するために、発電機によって上記チャンバ内で電流放電を生成するステップ;
‐特に上記電流放電の電力、上記チャンバに注入された上記ガス、及び上記標的表面の材料に応じた所定の期間にわたって、上記部品の上記標的表面を上記プラズマに曝露することにより、上記標的表面の表面状態を改質して、上記標的表面の粗度を上昇させ、上記標的表面をつや消し状態又はよりつや消し状態にする、即ち上記標的表面をつや消し処理するステップ
を含み、上記部品の上記標的表面を上記プラズマに曝露する上記ステップは、予備架橋された上記ワニスコートの上記一部分の架橋を終了させるために実施される。
【0012】
特定の実装形態では、本発明は、以下の特徴のうちの1つ以上を、単独で、又は技術的に可能ないずれの組み合わせに従って、含むことができる。
【0013】
特定の実装形態では、上記予備架橋作業中、上記標的表面は5~10秒にわたって上記紫外線照射に曝露される。
【0014】
特定の実装形態では、上記チャンバは0.1~1mbarの圧力まで排気される。
【0015】
特定の実装形態では、上記ガス注入ステップ中にアルゴンが注入される。このガスは、15~25sccmの質量流量で、上記チャンバ内において0.6~0.8mbarの圧力に到達するまで、上記チャンバに注入される。
【0016】
有利には、上記プラズマの生成のための上記ガスとしてアルゴンを選択することは、上記標的表面が機械的にしか影響を受けないことを意味する。換言すれば、上記プラズマは、上記標的表面の上記表面状態を化学的に劣化させない。
【0017】
特定の実装形態では、上記発電機は、電流放電を生成する上記ステップ中に、2,000~2,600Wの電力を生成し、上記標的表面を曝露する上記ステップは、1~2分にわたって実施される。
【0018】
特定の実装形態では、上記ワニスコートは、60°で測定した場合に5GU未満のグロスユニット(Gloss Unit)を有する。
【0019】
特定の実装形態では、上記部品上の上記標的表面を得る上記ステップの終了時に、上記標的表面の「マスキングエリア(masked area)」と呼ばれる一部分にわたって、マスキング層を堆積させるステップが実施され、上記標的表面の残りの部分は「露出エリア(exposed area)」と呼ばれ、上記マスキング層は、上記マスキングエリアを上記プラズマから保護することを目的としている。
【0020】
特定の実装形態では、上記ワニスコートの上記予備架橋作業中、上記コートの一部分のみが予備架橋され、他の部分は完全に架橋される。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、非限定的な例として与えられている以下の詳細な説明を読めば、明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1-4】
図1~4は、本発明のある好ましい例示的実装形態による、部品の標的表面をプラズマ処理する方法の、連続する異なるステップの模式図である。
【
図5】
図5は、本発明による方法の上述の好ましい例示的実装形態に対する代替例による、部品の標的表面をプラズマに曝露するステップの断面の模式図である。
【
図6】
図6は、本発明による方法の別の例示的実装形態による、部品の標的表面をプラズマに曝露するステップの断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
分かりやすくするために、図面は正確な縮尺で描画されていないことに留意されたい。
【0024】
図1~4は、本発明のある好ましい例示的実装形態による、部品10の標的表面11をプラズマ処理する方法の、連続する異なるステップの模式図である。
【0025】
本発明による方法は、標的表面11をつや消し処理することを目的とする。
【0026】
上記方法は、部品10上の標的表面11を得る予備的ステップを含む。
【0027】
この予備的ステップは、例えばガルバニックコーティングであるコーティングの堆積、補助具の配置、装飾の印刷、又は洗浄等を伴う作業を含むことができる。
【0028】
図1は、ワニスのコート13を受け入れることを目的とした補助具12を備える部品10の模式図である。
【0029】
本発明のこの好ましい例示的実装形態では、この第1のステップの間に、
図2に示されているように、ワニスのコート13を部品10の外面の対象エリアに堆積させるための作業を実施する。より具体的には、上記対象エリアは、
図2~5に示されているように、既に上記部品の外面上に配置されている補助具12上に形成でき、及び/又は部品10の外面上に直接形成できる。
【0030】
この予備的ステップにおいては、ワニスのコート13を堆積させるこの作業の後に、
図3に示されているように、紫外線照射への曝露によってワニスのコート13を予備架橋させる作業が続く。本発明のこの例示的実施形態では、標的表面11はワニスコート13の可視表面である。
【0031】
ワニスコート13は、オペレータが手作業で堆積させることも、好適なロボットによって自動的に堆積させることもできる。更にワニスコート13は、合成樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリエポキシド樹脂、又は発光材料等を含むことができる。
【0032】
ワニスコート13を予備架橋させる上記作業の間に、標的表面11を、数秒又は数十秒、好ましくは5~10秒間、紫外線照射に曝露できる。
【0033】
上記紫外線照射は、発光ダイオード、水銀ランプ等といった当業者に公知のいずれの手段によって、100~400nmの波長を有するように放出させることができる。
【0034】
標的表面11を得た後、
図4に示されているように、部品10をプラズマ生成器20のチャンバに入れる。特に部品10は、プラズマ生成器20の発電機の電極上に、直接又は基材を介して配置される。好ましくは部品10は、プラズマ生成器20の陽極と対面する陰極上に配置される。
【0035】
次に本発明による方法は、当業者に公知の真空ポンプを用いて、チャンバを排気するステップを含む。用語「排気(evacuation)」はここでは、言葉の簡略化のために、上記チャンバが、典型的には10-6~10mbar、好ましくは0.1~1mbarである低圧下に置かれることを意味するものと理解される。
【0036】
次に、チャンバ内において10-4~102mbarの作動圧力、好ましくは0.6~0.8mbarの作動圧力に到達するまで、ガス注入ステップを実施する。
【0037】
例えばガスは、チャンバが上記作動圧力に到達するまで、15~25sccmの質量流量で注入される。
【0038】
上記チャンバ内でプラズマを生成するために、発電機によってチャンバ内で電流放電を生成するステップを実施する。有利には、プラズマの流れを部品10に向かって配向し、
図4に模式図で示されているように、標的表面11に対するイオン衝撃を発生させる。特に、発電機の電極間の電位差によって、ガスの原子がイオン化され、部品10の標的表面11における衝撃を引き起こす。
【0039】
使用されるガスは、本発明による方法の上記実装形態に好適なものであり、Ar、He、O2、CO、CO2、H2、Cl2、CF4、Ne、N2、及びNO2から選択できる。Arはイオン化が容易であり、少ない電力の入力でプラズマを生成できるため、好ましいガスである。更に、Arを使用した場合、標的表面11の表面状態の改質、及び部品10上に堆積した任意のワニスコート13の架橋に特に適しているという点で、標的表面11に対するプラズマの効果はより高くなる。最後にArは、安価でありかつ入手が容易であるという利点を有する。
【0040】
特に上記電流放電の電力、上記チャンバに注入された上記ガス、及び標的表面11の材料に応じた所定の期間にわたって、標的表面11を上記プラズマに曝露することにより、上記標的表面11の表面状態を改質して、上記標的表面11の粗度、従ってつや消しの程度を上昇させる。本発明では、プラズマ、特にイオン衝撃に対する標的表面11の曝露は、チャンバに注入されたガスに応じて機械的作用又は物理化学的作用によって、上記標的表面11の表面状態を改質する効果を有する。
【0041】
本発明の上記好ましい例示的実装形態では、部品10の標的表面11をプラズマに曝露するステップを実施することにより、ワニスコート13の架橋を完了する。
【0042】
例えば、電流放電を生成する上記ステップでは、上記発電機は2,000~2,600Wの電力を生成でき、標的表面11は1~2分にわたって曝露できる。
【0043】
これもまた例として、上記方法の実施後、ワニスコート13は、60°で測定した場合に5GU未満のグロスユニットを有する。換言すれば、上述のパラメータは、ワニスコート13の標的表面11がこのようなグロスユニットを有するように、発明者らによって具体的に決定されたものである。
【0044】
本発明の利点のうちの1つは、本発明によって、部品10をプラズマに曝露したときに、ワニスコート13の架橋と標的表面11のつや消し処理とを同時に行うことができる点である。従って、後続の架橋ステップの必要を回避することによって製造時間が大幅に削減されることに加えて、本発明により、紫外線照射への曝露の時間が削減されるため、紫外線照射の使用に関連するリスクが限定される。
【0045】
本発明は更に、考えられる本発明のいずれの例示的実施形態によっても、いずれの表面のつや消しの程度を、その表面状態に関わらず、例えば上記表面がマイクロメートル未満又はマイクロメートルレベルの寸法のキャビティを有する場合であっても、上昇させることができる。
【0046】
有利には、部品10上の標的表面11を得る上記ステップの終了時に、標的表面11の「マスキングエリア」と呼ばれる一部分にわたって、マスキング層を堆積させるステップを実施でき、上記標的表面11の残りの部分は「露出エリア」と呼ばれる。上記マスキング層は、上記マスキングエリアを上記プラズマの影響から保護することによって、標的表面11が2つの異なる光沢レベルを有する部品10を得ることを目的としている。
【0047】
マスキング層を堆積させる上記ステップを用いることにより、その標的表面11が光沢部分もつや消し部分も有する部品10を得ることができる。
【0048】
上記マスキング層は、ポリマーコーティング、ガルバニックコーティング、又は物理蒸着法によって作製されたコーティングによって製造できる。
【0049】
標的表面11をプラズマに曝露する上記ステップに続いて、上記マスキング層を、堆積したコーティングの性質に適合した溶液によって、除去できる。例えば、上記マスキング層がポリマー材料製である場合には、これを好適な溶媒で除去でき、上記マスキング層が金属材料製である場合には、これを酸性溶液で除去できる、等である。
【0050】
必要に応じて、ワニスコート13の、上記マスキング層で保護された部分を、後続の架橋ステップで架橋させることができる。
【0051】
本発明の上記好ましい例示的実装形態では、ワニスコート13を予備架橋させる作業の間は、上記ワニスコート13の一部分しか予備架橋させることができないため、他の部分は完全に架橋される。ワニスコート13の完全に架橋した部分はプラズマによって架橋されないため、その表面状態は、
図5に模式図で示されているように、改質されないままであるか、又は肉眼で知覚できない方法で改質される。
【0052】
このような特徴により、マスキング層の堆積に代わるものとして、異なる複数の光沢レベルを有する標的表面11を備えた部品10を得ることができる。
【0053】
図6に模式図で示されている例示的実施形態では、
図1~4に示されている例示的実施形態とは対照的に、標的表面11は、部品10の表面、又は上記部品10のコーティングの表面によって形成される。換言すれば、本発明のこの例示的実装形態では、つや消し処理される表面は、部品10の表面又は部品10のコーティングの表面であり、部品10上に堆積したワニス13の表面ではない。
【0054】
このような例示的実施形態は、標的表面11が:銅、鉄、アルミニウム、若しくはチタン合金等といった金属合金;酸化物、亜硝酸塩若しくはケイ酸塩と結合した金属材料といったセラミック材料;複合材料;又はポリマー材料で作製された部品の表面である場合に、特に好適である。本発明のこの例示的実施形態はまた、標的表面11が、部品10の、金、銀、ニッケル、銅、ロジウム、ルテニウム、又は銀等のコーティングの表面である場合にも、特に好適である。
【0055】
標的表面11を有する部品10又は部品10のコーティングの材料に応じて、本発明による方法のパラメータの値は変動し得る。例えば、チャンバへのガス注入の質量流量は、最大で1,000sccmとなる可能性があり、発電機の電力は最大で4kWとなる可能性があり、プラズマ曝露の持続時間は、数秒~数分、例えば5秒~10分となる可能性がある。
【0056】
本発明は有利には、時計学の分野、特に部品10が腕時計の外装部品10、例えば文字盤である場合に適用される。
【0057】
より一般には、上で考察した実装形態及び実施形態は、非限定的な例として説明されていること、従って他の変形例が可能であることに留意されたい。
【符号の説明】
【0058】
10 部品
11 標的表面
13 ワニスのコート、ワニスコート
20 プラズマ生成器
【外国語明細書】