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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166985
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】エッチング液
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20231115BHJP
   C23F 1/26 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01L21/308 F
C23F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069609
(22)【出願日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】111117526
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】鍾 明諺
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA13
4K057WB08
4K057WE03
4K057WE11
4K057WE25
4K057WG02
4K057WG03
4K057WG06
4K057WN03
5F043AA26
5F043BB18
5F043DD07
(57)【要約】
【課題】半導体基板から、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するためのエッチング液であって、メタルハードマスク層を安全かつ効率的にエッチングできるエッチング液を提供する。
【解決手段】半導体基板から、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するためのエッチング液であって、(A)有機溶剤、(B)硫黄含有の塩、及び(C)酸化剤を含むことを特徴とするエッチング液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板から、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するためのエッチング液であって、(A)有機溶剤、(B)硫黄含有の塩、及び(C)酸化剤、を含むことを特徴とするエッチング液。
【請求項2】
さらに、(D)酸を含む、請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
前記(A)有機溶剤は、エチレングリコールモノプロピルエーテル(EGPE)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルグリコール、ホルムアミド、アセトアミド、炭素数3以上の脂肪酸アミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(DPGPE)、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のエッチング液。
【請求項4】
前記(B)硫黄含有の塩は、有機硫酸塩である、請求項1に記載のエッチング液。
【請求項5】
前記有機硫酸塩は、硫酸水素アンモニウム((NH)HSO)又は硫酸アンモニウム((NHSO)を含む請求項4に記載のエッチング液。
【請求項6】
前記(C)酸化剤は、過酸化水素(H)である請求項1に記載のエッチング液。
【請求項7】
前記(D)酸は、有機酸又は無機酸である請求項2に記載のエッチング液。
【請求項8】
エッチング液は(A)有機溶剤:5~85重量%,(B)硫黄含有の塩:0.010~0.05重量%、(C)酸化剤:5~10重量%、を含み、残りは水からなる請求項1に記載のエッチング液。
【請求項9】
エッチング液は(A)有機溶剤:5~85重量%,(B)硫黄含有の塩:0.010~0.05重量%、(C)酸化剤:5~10重量%、(D)酸:0.010~3重量%を含み、残りは水からなる請求項1に記載のエッチング液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング液に関し、詳しくは、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するハードマスクを選択的に除去するためのプロセスにおいて用いられる湿式エッチング液に関するものである。
本願は、2022年5月10日に台湾に出願された、台湾特許出願第111117526号に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などの微細回路を作製する際、溶液中に回路基板を浸し、不必要な部分を腐食・分解して回路基板から取り去ることが求められる。ハードマスクはCVDやスパッタリング等の成膜法によって形成されるが、ハードマスクはゲートと金属配線の内部の回路間を定めるのに用いられている。しかしながら、湿式エッチングによるシリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するハードマスクを選択的に除去するためのプロセスにおいて、ゲート材料のSiGeは酸化物としてGeOが溶解されてしまうため、装置の電気特性が変わるおそれがある。
半導体基板は、その上にTiN、TaN、TiNxOy、TiW、W、Ti、或いはTi又はWの合金のハードマスクを有する低k誘電材料を含む。該半導体基板から、低k誘電材料に対してTiN、TaN、TiNxOy、TiW、W、Ti並びにTi及びWの合金から基本的になるハードマスクを選択的に除去するための除去組成物が知られている。例えば、特許文献1には、0.1重量%~90重量%の酸化剤と、0.0001重量%~50重量%のカルボン酸と、脱イオン水を含む除去組成物の100重量%までの残部とを含む除去組成物が記載されている。
特許文献2には、ゲルマニウム(Ge)を含む第一層と、ゲルマニウム(Ge)以外の特定金属元素を含む第二層とを有する半導体基板について、第二層を選択的に除去するエッチング液であって、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、リン酸(HPO)、ホスホン酸(HPO)、または有機酸から選ばれる特定酸性化合物を含むエッチング液が記載されている。
【0003】
しかし、基板を損傷させることなく、半導体基板から、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するためのエッチング液が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016-536785号公報
【特許文献2】特許第6130810号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の湿式エッチング液は、ハードマスクを選択的に除去するためのプロセスにおいて、ゲート材料のSiGeは酸化物としてGeOが溶解されてしまうため、装置の電気特性が変わってしまう課題があった。
ハードマスクは、タングステン(W)及びタングステンの合金から基本的になる。炭化タングステンは耐酸性が著しく、典型的な難溶性の化合物であり、硫酸水素アンモニウムを用いて加熱分解できる。
【0006】
本発明は、半導体基板から、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するためのエッチング液であって、メタルハードマスク層を安全かつ効率的にエッチングできるエッチング液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の有機硫酸塩を含むエッチング液において、(A)有機溶剤と、(B)硫黄含有の塩と、及び(C)酸化剤とを特定の範囲内とすることにより、ハードマスク(炭化タングステン(以下、単に「WC」と称することがある。)を選択的に除去することが可能となることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成された。
【0008】
本発明のエッチング液は、半導体基板からシリコンゲルマニウム(SiGe)に対してハードマスクを選択的に除去することができる。
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用した。
[1]半導体基板から、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するためのエッチング液であって、(A)有機溶剤、(B)硫黄含有の塩、及び(C)酸化剤を含むことを特徴とするエッチング液。
[2]さらに、(D)酸を含む、[1]に記載のエッチング液。
[3]前記(A)有機溶剤は、エチレングリコールモノプロピルエーテル(EGPE)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルグリコール、ホルムアミド、アセトアミド、炭素数3以上の脂肪酸アミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(DPGPE)、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1]に記載のエッチング液。
[4]前記(B)硫黄含有の塩は、有機硫酸塩である、[1]に記載のエッチング液。
[5]前記有機硫酸塩は、硫酸水素アンモニウム((NH)HSO)又は硫酸アンモニウム((NHSO)を含む[1]に記載のエッチング液。
[6]前記(C)酸化剤は、過酸化水素(H)である、[1]に記載のエッチング液。
[7]前記(D)酸は、有機酸又は無機酸である、[2]に記載のエッチング液。
[8]エッチング液は(A)有機溶剤:5~85重量%,(B)硫黄含有の塩:0.010~0.05重量%、(C)酸化剤:5~10重量%、を含み、残りは水からなる、[1]に記載のエッチング液。
[9]エッチング液は(A)有機溶剤:5~85重量%,(B)硫黄含有の塩:0.010~0.05重量%、(C)酸化剤:5~10重量%、(D)酸:0.010~3重量%を含み、残りは水からなる、[1]に記載のエッチング液。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板を損傷させることなく、半導体基板から、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するためのエッチング液であって、ハードマスクを安全かつ効率的にエッチングできるエッチング液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0012】
(エッチング液)
本発明のエッチング液は、有機溶剤、硫黄含有の塩、及び酸化剤を含む。
本発明のエッチング液は、基板を損傷させることなくシリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するために用いられる。
【0013】
本実施形態のエッチング液は、以下の条件で測定されるエッチングレートAが、30Å/min以上であり、好ましくは50Å/min以上であり、より好ましくは80Å/min以上であり、その上限は100Å/min以下であり、特に好ましくは90Å/min以下である。
本実施形態のエッチング液は、以下の条件で測定されるエッチングレートBが、30Å/min以下であり、好ましくは25Å/min以下であり、より好ましくは20Å/min以下であり、更に好ましくは15Å/min以下であり、特に好ましくは10Å/min以下である。
【0014】
(エッチングレートAの測定条件)
表面に炭化タングステン(「WC」)の層を有する半導体基板を60℃にてエッチング液に浸漬し、エッチングレートを測定する。
【0015】
(エッチングレートBの測定条件)
表面にSi0.30Ge0.70の層を有する半導体基板を60℃にてエッチング液に浸漬し、エッチングレートを測定する。
【0016】
本実施形態のエッチング液は、前記エッチングレートAが30~100Å/min以上であることにより、SiGe化合物に対する炭化タングステン(「WC」)の選択性(WC/SiGe70%)が良好となる。また、本実施形態のエッチング液は、前記エッチングレートAが上記の好ましい範囲の下限値以上であると、SiGe化合物に対する「WC」の選択性(WC/SiGe70%)がより高まる。
【0017】
<有機溶剤>
本実施形態のエッチング液に含まれる有機溶剤は、例えばアルコール系溶剤(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチルグリコール、ジプロピレングリコール等)、アミド系溶剤(例えばホルムアミド、アセトアミド、炭素数3以上の脂肪酸アミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、炭酸エステル系溶剤(例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エーテル系溶剤(例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(DPGPE)、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル等)、及びこれらの組み合わせからなる群れから選ばれる少なくとも1つがあげられる。なかでも、極性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、炭酸エステル系溶剤、エーテル系溶剤が好ましく、炭酸エステル系溶剤、エーテル系溶剤がより好ましく、炭酸プロピレンとジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。上記好ましい溶剤種は、エッチング液中の有機溶剤全体に対し、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上100質量以下がさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0018】
本実施形態のエッチング液中の有機溶剤の含有量は、例えば、エッチング液の全重量に対し、2~95重量%が例示され、3~90重量%が好ましく、5~85重量%がより好ましい。
また、前記極性有機溶剤のなか、炭酸プロピレンは極性非プロトン性の共溶剤として用いられる。すなわち、共溶剤は溶剤に少量添加することで難溶性化合物の溶解度を高める。
本実施形態のエッチング液に含まれる共溶剤は、GeOの溶解を抑制し、SiGeのエッチングレートを低下させる。
本実施形態のエッチング液中の共溶剤の含有量は、例えば、エッチング液の全重量に対し、1~40重量%が例示され、5~35重量%が好ましく、10~25重量%がより好ましい。
【0019】
<硫黄含有の塩>
本実施形態のエッチング液は硫黄含有の塩を含み、前記硫黄含有の塩は、有機硫酸塩であり、前記有機硫酸塩としては、硫酸水素アンモニウム((NH)HSO)又は硫酸アンモニウム((NHSO)が挙げられる。
実施形態のエッチング液に含まれる硫黄含有の塩は、SiGeの抑制剤として表面に吸着されているため、SiGeのエッチングレートを低下する。
本実施形態のエッチング液中の硫黄含有の塩の含有量は、例えば、エッチング液の全重量に対し、0.001~0.20重量%が例示され0.003~0.15重量%が好ましく、0.008~0.13重量%がより好ましい。
本実施形態のエッチング液中の硫黄含有の塩の含有量が前記範囲内であると、SiGe化合物に対する選択性(WC/SiGe)がより高まる。
【0020】
<酸化剤>
本実施形態のエッチング液は酸化剤を含み、酸化剤としては、例えば、過酸化水素、FeCl、FeF、Fe(NO、Sr(NO、CoF、MnF、オキソン(2KHSO・KHSO・KSO)、ヨウ素酸、酸化バナジウム(V)、酸化バナジウム(IV,V)、バナジン酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、亜塩素酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、ヨウ素酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、過ホウ酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過ヨウ素酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、次亜塩素酸アンモニウム、次亜臭素酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、過硫酸カリウム、硝酸、過硫酸カリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、塩素酸テトラメチルアンモニウム、ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、過ホウ酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、過硫酸テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、酸化剤としては、過酸化水素が好ましい。
本実施形態のエッチング液に含まれる酸化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液中の酸化剤の含有量は、例えば、エッチング液の全重量に対し、5~50重量%が例示され、6~30重量%が好ましく、7~20重量%がより好ましく、8~10重量%が更に好ましい。
酸化剤の含有量が前記範囲内であると、SiGe化合物に対する「WC/SiGe」の選択性がより向上しやすい。
【0021】
<他の成分>
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、上記有機溶剤以外の他の溶剤、pH調整剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
<他の溶剤>
本実施形態のエッチング液は、硫黄含有の塩、酸化剤及びその他の任意成分を溶剤に混合して調製することが好ましい。溶剤としては上記有機溶剤以外に、他の公知の有機溶剤を用いてもよい。
【0023】
<水>
本実施形態のエッチング液は、溶剤として水を含む場合、水は、不可避的に混入する微量成分を含んでいてもよい。本実施形態のエッチング液に用いられる水は、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などの浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に一般的に使用される超純水を用いることがより好ましい。
本実施形態のエッチング液が水を含む場合、水の含有量は、例えば、エッチング液の全重量に対し、4~50重量%が例示され、6~45重量%が好ましく、8~40重量%がより好ましく、10~30重量%がさらに好ましい。
【0024】
<pH調整剤>
本実施形態のエッチング液は、「WC」に対するエッチングレートを更に向上させるために、pH調整剤を含んでいてもよい。pH調整剤としては、酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。具体的には、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸二水和物、クエン酸、酒石酸、ピコリン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、スルホコハク酸、安息香酸、プロピオン酸、ギ酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、マンデル酸、ヘプタン酸、酪酸、吉草酸、グルタル酸、フタル酸、次亜リン酸、サリチル酸、5-スルホサリチル酸、塩酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸(62重量%)、硫酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸テトラメチルアンモニウム及び他の酢酸テトラアルキルアンモニウム、酢酸ホスホニウム、酪酸アンモニウム、トリフルオロ酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸、リン酸水素ジアンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ビス(テトラメチルアンモニウム)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素テトラアルキルアンモニウム、リン酸二水素テトラアルキルアンモニウム、リン酸水素ジホスホニウム、リン酸二水素ホスホニウム、ホスホン酸アンモニウム、ホスホン酸テトラアルキルアンモニウム、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸ホスホニウムこれらの塩等が挙げられる。なかでも、pH調整剤としては、硫酸アンモニウム又は硫酸水素アンモニウムが好ましい。
【0025】
本実施形態のエッチング液において、pH調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液がpH調整剤を含む場合、pH調整剤の含有量は、例えば、エッチング液の全重量に対し、0.005~10重量%が例示され、0.010~4.5重量%が好ましく、0.012~1重量%がより好ましく、0.013~0.5重量%がさらに好ましい。pH調整剤の含有量が前記範囲内であると、「WC」に対するエッチングレートがより向上しやすい。
本実施形態のエッチング液において、pHは、0.5以上3以下であり、好ましくは、0.8以上2.7以下であり、より好ましくは、1.0以上2.5以下であり、さらに好ましくは、1.0以上2.0以下である。
本実施形態のエッチング液が酸を含む場合、酸の含有量は、例えば、エッチング液の全重量に対し、0.001~3重量%が例示され、0.005~2.5重量%が好ましく、0.010~2重量%がより好ましく、0.015~1.5重量%がさらに好ましい。
【0026】
<被処理体>
本実施形態のエッチング液は、半導体基板から、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するために用いられるものであり、「WC」を含む被処理体をエッチング処理の対象とする。被処理体は、「WC」を含むものであれば特に限定さないが、SiGe化合物含有層(SiGe化合物含有膜)を有する基板等が挙げられる。前記基板は、特に限定されず、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、等の各種基板が挙げられる。前記基板としては、半導体デバイス作製のために使用される基板が好ましい。
【0027】
前記SiGe化合物含有層は、SiGe化合物を含有する層であることが好ましく、SiGe化合物膜であることがより好ましい。基板上のSiGe化合物含有層の厚さは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
前記被処理体は、「WC」以外に、SiGe化合物を含んでいることが好ましい。本実施形態のエッチング液は、基板における「WC」含有層の微細加工を行うために用いられてもよい。
【0029】
<被処理体をエッチング処理する工程>
本工程は、本実施形態のエッチング液を用いて「WC」を含む被処理体をエッチング処理する工程であり、前記エッチング液を前記被処理体に接触させる操作を含む。エッチング処理の方法は、特に限定されず、公知のエッチング方法を用いることができる。かかる方法としては、例えば、スプレー法、浸漬法、液盛り法等が例示されるが、これらに限定されない。
スプレー法では、例えば、被処理体を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間に上記第1の態様にかかるエッチング液を噴射して、被処理体に前記エッチング液を接触させる。必要に応じて、スピンコーターを用いて基板を回転させながら前記エッチング液を噴霧してもよい。
浸漬法では、本実施形態のエッチング液に被処理体を浸漬して、被処理体に前記エッチング液を接触させる。
液盛り法では、被処理体に本実施形態のエッチング液を盛って、被処理体と前記エッチング液とを接触させる。
これらのエッチング処理の方法は、被処理体の構造や材料等に応じて適宜選択することができる。スプレー法、又は液盛り法の場合、被処理体への前記エッチング液の供給量は、被処理体における被処理面が、前記エッチング液で十分に濡れる量であればよい。
【0030】
エッチング処理の目的は特に限定されず、被処理体のWCを含む被処理面(例えば、基板上の「WC」)の微細加工であってもよい。エッチング処理の目的が、被処理体の「WC」の除去である場合、本発明のエッチング液を被処理体に接触させることで、「WC」が溶解し、「WC」を除去することができる。
【0031】
エッチング処理を行う温度は、特に限定されず、前記エッチング液に「WC」が溶解する温度であればよい。エッチング処理の温度としては、例えば、30~60℃が挙げられる。スプレー法、浸漬法、及び液盛り法のいずれの場合も、エッチング液の温度を高くすることで、エッチングレートは上昇するが、エッチング液の組成変化を小さく抑えることや、作業性、安全性、コスト等も考慮し、適宜、処理温度を選択することができる。
【0032】
エッチング処理を行う時間は、エッチング処理の目的、エッチングにより除去される「WC」の量(例えば、「WC」含有層の厚さ、量など)、及びエッチング処理条件に応じて、適宜、選択すればよい。ハードマスクがタングステン(tungsten)を含むため、ハードマスクを完全に除去するために、30℃~60℃の範囲での実質的に相対的に低い温度で実現可能である。
【実施例0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0034】
(実施例1~7、比較例1~9)
表1に示す各成分を混合し、各例のエッチング液を調製した。
【0035】
「試験片の作製」
300mmウエハをカットしてシリコンウエハに堆積された1.5x1.5cmのWC試験片が得られた。
150mmのSiGeウエハから、カットして10nm厚みのSiGeをSiO(100nm熱酸化膜(thermal oxide))/Siに堆積し、1.5cmx1.5cmのSiGe試験片が得られた。
【0036】
「厚みの測定」
試験片を洗浄液に浸漬し、X線回折装置(RIGAKU)を用いて、厚みを測定する。
「エッチングレートの測定」
エッチングレート(etch rate)は、厚さの差を浸漬時間で割り、計算することで得られる。
【0037】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(重量%)である。
有機溶剤:
A-1:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)
A-2:プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)(PC)
A-1/A-2(DPM/PC)
有機硫酸塩:
B-1:硫酸水素アンモニウム((NH)HSO
B-2:硫酸アンモニウム((NHSO
酸化剤:過酸化水素(H
pH調整剤:硫酸、酢酸、硝酸、リン酸
【0038】
<被処理体のエッチング処理>
表面に「WC」の層を有する半導体基板を60℃にてエッチング液に浸漬し、エッチングレートを測定した。結果を表2に示す。
表面にSi0.30Ge0.70の層を有する半導体基板を60℃にてエッチング液に浸漬し、エッチングレートを測定した。結果を表2に示す。
【0039】
「SiGe70%エッチングレートの評価」
SiGe70%エッチングレートは下記の基準で、評価した。例えばSiGe70%エッチングレートは8以上14未満である場合、良好である「A」と、14以上22未満である場合、良である「B」と、22以上である場合、不良である「C」とを評価する。
A:エッチングレートが8以上14未満
B:エッチングレートが14以上22未満
C:エッチングレートが22以上
表1に示す結果から、実施例1~7のSiGe70%エッチングレートは、比較例1~9のSiGe70%エッチングレートと比べて、優れることが確認された。
【0040】
「WC/SiGe70%の選択比の評価」
WC/SiGe70%の選択比は、下記の基準で、評価した。例えばWC/SiGe70%の選択比は、3以上である場合、良好である「A」と、1.9以上3未満である場合、良である「B」と、1.9未満である場合、不良である「C」とを評価する。
A:WC/SiGe70%が3以上
B:WC/SiGe70%が1.9以上3未満
C:WC/SiGe70%が1.9未満
【0041】
表2に示す結果から、実施例1~7のエッチング液は、比較例1~9のエッチング液と比べて、WC/SiGe70%の選択比が高いことが確認された。
実施例のエッチング液に有機硫酸塩(硫酸アンモニウム((NHSO)又は硫酸アンモニウム((NHSO))を含有する実施例1~7は上記の有機硫酸塩を有しない比較例1~9のエッチング液に比べ、SiGe70%エッチングレートが良好で、WC/SiGe70%の選択比も優れている。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のエッチング液によれば、基板を損傷させることなく、半導体基板から、シリコンゲルマニウム(SiGe)又はシリコンリン(SiP)に対する相溶性を有するタングステン含有ハードマスクを選択的に除去するためのエッチング液であって、ハードマスクを安全かつ効率的にエッチングできるエッチング液が提供される。