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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166992
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】電解質組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20231115BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20231115BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231115BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20231115BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20231115BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0569
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023074364
(22)【出願日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】22172595.5
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510010894
【氏名又は名称】ベレノス・クリーン・パワー・ホールディング・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ヨアン・メタン
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029AM09
5H029DJ07
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
【課題】 塩が沈殿するリスクを大きく低下させるようなアノードがフリーな金属電池セル用の電解質組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、アノードがフリーな金属電池セルのための電解質組成物を開示するものであり、前記金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族の金属であり、前記電解質組成物は、第1の溶媒と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族の金属の塩と、添加剤とを含み、前記塩は、前記第1の溶媒に溶けることができ、前記電解質組成物における前記塩の濃度は、2M~3Mであり、前記添加剤は、少なくとも1種類のハロゲン原子を含む過フッ素化有機化合物であり、前記ハロゲンは、塩素、臭素又はヨウ素である。本発明は、前記電解質(3)を含むアノード(5)がフリーな金属電池セル(1)を開示するものである。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードがフリーな金属電池セルのための電解質組成物であって、
前記金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族の金属であり、
前記電解質組成物は、
第1の溶媒と、
アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族の金属の塩と、
添加剤とを含み、
前記塩は、前記第1の溶媒に溶けることができ、
前記電解質組成物における前記塩の濃度は、2M~3Mであり、
前記添加剤は、フッ素以外に少なくとも1種類のハロゲン原子を含む過フッ素化有機化合物であり、
前記ハロゲンは、塩素、臭素又はヨウ素である
ことを特徴とする電解質組成物。
【請求項2】
前記金属は、リチウム(Li)又はマグネシウム(Mg)であり、これに対してそれぞれ、
前記塩は、リチウム塩又はマグネシウム塩であり、
前記電池セルは、リチウム金属電池セル又はマグネシウム金属電池セルである
ことを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
前記添加剤は、式(I)、
XCF2-(CF2)x-CF3-yy (I)
に従うペルフルオロアルキルハライドであり、
ここで、Xは、Cl、Br又はIであり、
Yは、Cl、Br又はIであり、
xは、0~10、好ましくは2~6、であり、
yは、0~3、好ましくは0又は1、である
ことを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項4】
XとYは、Iであり、
前記添加剤は、ペルフルオロアルキルヨウ化物である
ことを特徴とする請求項3に記載の電解質組成物。
【請求項5】
前記添加剤は、1-ヨードペルフルオロブタン、1,4-ジヨードペルフルオロブタン、1-ヨードペルフルオロヘキサン、1,6-ジヨードペルフルオロヘキサン、及び1,8-ジヨードペルフルオロオクタンからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項4に記載の電解質組成物。
【請求項6】
前記添加剤は、式(II)、
66-qq (II)
に従う芳香族化合物であり、
ここで、Zは、Cl、Br、I又はCa2a+1-bbであり、
Qは、Cl、Br又はIであり、
qは、1~5、好ましくは1~3、であり、
aは、1~10、好ましくは1~4、であり、
bは、2a+1-bが1以上である値である
ことを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項7】
前記添加剤は、1,4-ジヨード-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンである
ことを特徴とする請求項6に記載の電解質組成物。
【請求項8】
前記電解質組成物の総重量を基準にして、前記添加剤を0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、含む
ことを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項9】
前記第1の溶媒は、炭酸塩、エーテル、ニトリル、スルホン、スルホキシド、エステル、及びイオン液体のアルキルエステルからなる群から選択され、
好ましくは、前記第1の溶媒は、1,2-ジメトキシエタン(DME)又はイオン液体である
ことを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項10】
前記第1の溶媒は、イオン液体であり、
前記イオン液体は、カチオンとアニオンを含み、
前記カチオンは、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム、環状飽和アンモニウム、又はこれらの組み合わせを含み又は実質的にこれからなり、
前記アニオンは、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)又はこれらの組み合わせを含む又は実質的にこれからなる
ことを特徴とする請求項9に記載の電解質組成物。
【請求項11】
前記電解質組成物は、さらに、第2の溶媒を含み、
前記第2の溶媒は、ヒドロフルオロエーテル又は部分的にフッ素化されたアルキルエーテルである
ことを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項12】
アノードがフリーな金属電池セル(1)であって、
請求項1に記載の電解質組成物(3)を含み、
前記金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は周期表のIIIa族の金属であり、
ことを特徴とする電池セル。
【請求項13】
前記電池セルは、リチウム金属電池セル又はマグネシウム金属電池セルである
ことを特徴とする請求項12に記載の電池セル。
【請求項14】
二次電池セルである
ことを特徴とする請求項12に記載の電池セル。
【請求項15】
前記アノード(5)は、裸の集電体を含む
ことを特徴とする請求項12に記載の電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノードがフリーな金属電池セル用の電解質組成物に関する。本発明は、さらに、本発明に係る電解質を含むアノードがフリーな金属電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム金属電池、マグネシウム金属電池、アルミニウム金属電池、ナトリウム金属電池のような、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族の金属をベースとする金属電池が登場してからしばらく経過している。例えば、リチウム金属二次電池である。エネルギー密度、コスト、安全性の観点から、この電池技術の最適化によって、いわゆる「アノードがフリー」な構成をもたらした。この構成において、アノードは、実質的に、銅集電体のような裸の集電体のみからなる。特に、銅集電体上にて典型的に用いられるグラファイト被覆は用いられない。
【0003】
アノードがフリーな電池における充放電機構は、アノードの古典的な概念/組成に従うアノードが存在しないために、伝統的な再充電可能電池とは異なる。アノードがフリーな電池セルは、電解質においても、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族金属においても、過剰な量を含まない。しかし、アノードが存在しないにもかかわらず、リチウムやナトリウムのようなアルカリ金属、マグネシウムのようなアルカリ土類金属、又はアルミニウムのような周期表のIIIa族の金属が必要とされる。なぜなら、充電中に金属イオンがアノード集電体上に堆積するからである。これは、電気化学的に安定な固体電解質間相(SEI)とともに堆積リチウムを形成する。この堆積リチウムは、電池セルの放電のために利用可能な唯一のリチウムであり、すなわち、アノード側に活性リチウム源が存在しない。このことは、リチウム金属電池において発生することがある安全上のリスクを大幅に低減させる。
【0004】
この結果、電解質の消費、利用できないアルカリ金属又はアルカリ土類金属の形成は、電池セルの容量損失及び性能低下につながってしまう。したがって、システムが効率的に機能するためには、すべてのセルの構成要素が互いに完全に調整されていることが必要である。このことは現状においても課題となっている。
【0005】
電解質は、あらゆる電池セルにおいて重要な構成要素である。電解質は、アルカリ金属やアルカリ土類金属のイオンのキャリアとしてはたらく。また、電解質は、界面の間の主要な接触媒体である。
【0006】
国際特許出願WO2021213743は、集電体を含むカソードと、アノードとしての集電体と、アノードとカソードの集電体の間の液体電解質と、セパレーターとを含むアノードレスなリチウムイオン電池を開示している。この液体電解質は、少なくとも1種類のリチウム塩と、電解質組成物の全体積に対して少なくとも70体積%の溶媒混合物とを含む。この溶媒混合物は、少なくとも1種類のフッ素化エーテル化合物と、少なくとも1種類のフッ素化されていないエーテル化合物を含む。しかし、フッ素化エーテル化合物の添加によってリチウム塩の全体的な濃度を低下させることが可能になるところ、フッ素化エーテル化合物はリチウム塩に対してほとんど又はまったく溶けないことが知られている。したがって、フッ素化されていないエーテル化合物中のリチウム塩の局所的濃度は高いままとなり、このことによって、リチウム塩の全体的な濃度が低いにもかかわらず溶媒混合物においてリチウム塩の望ましくない沈殿を発生させてしまう。
【0007】
アノードがフリーな金属電池セルにおいて用いることが知られている電解質は、いわゆる高濃度電解質(HCE)又は超高濃度電解質である。典型的には、このような電解質は、3Mよりも大きい、しばしば4M以上の、さらには5.5Mである、濃度の金属の塩、すなわち、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、を含む。このような電解質の既知の例は、ジメチルカーボネート中に5.5Mのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含み、これは安定であり、カソードの電圧が高く、アルミニウム集電体の腐食を防ぐ。例えば、文献、'High rate and stable cycling of lithium metal anode', J. Qian, W. A. Henderson, et al., Nature Communications, 6, 6362 (2015)は、DMC中の4MのLiFSIがリチウム金属アノードのクーロン効率を99.2%まで向上させることができることを開示している。
【0008】
用いられる塩は、しばしばフッ素を含む。塩のアニオン濃度が高いおかげで、アノードとカソードの両方においてフッ素の濃度が高いSEIが形成される。このことによって、金属表面上の樹枝状結晶の形成を減少ないし抑制させ、電池セルのめっき/剥離(充放電)クーロン効率が高くなる。
【0009】
別の電解質の概念として、局所的高濃度電解質(LHCE)や局所的超高濃度電解質があり、これらは、塩が溶媒に溶けるときに電解質の溶媒と塩の間に形成される塩-溶媒クラスターの濃度を維持しつつ、最終的な電解質組成物中の全体的な塩濃度を低下させるために希釈剤の使用を必要とするが、その濃度は3Mより高いままである。希釈剤は、高濃度電解質に対して不活性であり、塩がほとんど又はまったく溶けない。また、希釈剤は溶媒和溶媒と容易に混和し、相分離を防ぐ。また、希釈剤は、形成された電解質中において高濃度の塩-溶媒クラスターを保持する必要がある。言い換えると、希釈剤は、HCEの局所的配位環境が保持されるように、すなわち、溶媒和溶媒の配位とのLi+イオンの配位が保持されるように、Li+イオンに対する溶媒和能力が低い。希釈剤は、Li塩のアニオン及びHCEの溶媒和溶媒を包囲する。
【0010】
国際特許出願WO2020106762は、局所的超高濃度電解質(LSE)(局所的高濃度電解質(LHCE)とも呼ばれる)及びこのようなLSEを含むデバイスの実施形態を開示している。LSEは、アノードがフリーな電池セルを含む再充電可能なアルカリ金属及びアルカリイオン電池において用いられる。電解質は、活性塩と、活性塩が可溶性である溶媒と、活性塩が不溶性又は溶けにくい希釈剤とを含む。希釈剤は、フッ素化オルトギ酸塩である。塩は、3Mよりも大きく10Mまでのような3Mよりも大きい濃度で溶媒中に存在する。希釈剤中の塩の溶解度が低いことによって、局所的に塩の濃度が高くなり、このことによって、溶媒混合物中における塩の望ましくない沈殿が発生する。この現象は、貯蔵中に特に顕著になる。
【0011】
このような高濃度電解質や超高濃度電解質の短所として、塩が溶媒に高度に溶けなければならないことがある。別の短所として、局所的に高い塩濃度が電解質中における塩の望ましくない沈殿を発生させることがあることがある。また、塩の解離定数は、HCEとLHCEにおいて高くなければならない。したがって、通常用いられるいくつかの種類の塩を用いることはできない。また、電解質に加えられる希釈剤の量がかなり増えるという短所がある。希釈剤はしばしば非常に高価なので、電解質が高価となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の課題の一又は複数を克服することを目的とする。本発明の目的の1つは、アノードがフリーな金属電池セル用の電解質組成物であって、塩が沈殿するリスクを大きく低下させるものを提供することである。本発明は、さらに、広範囲の市販の塩を用いることができる電解質組成物を提供することを目的とする。本発明は、さらに、既知の電解質に比べて安価な電解質を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、さらに、安定なSEIの形成を可能にするとともに、電力密度が大きく、充放電の繰り返しに対する安定性が良好であるような、アノードがフリーな金属電池セルを提供することを目的とする。本発明は、さらに、寿命が長くなった、すなわち、既知のアノードがフリーな金属電池セルよりも多く充電し放電することができるような、アノードがフリーな金属電池セルを提供することを目的とする。本発明は、さらに、安価なアノードがフリーな金属電池セルを提供することを目的とする。
【0014】
本発明に関連して、「電池」と「電池セル」という用語は、同じ意味である。
【0015】
本発明の第1の態様は、添付の請求の範囲に記載の、アノードがフリーな金属電池セルのための電解質組成物に関する。前記電解質組成物は、第1の溶媒と、金属の塩と、添加剤とを含む。所望に応じて、前記電解質組成物は、さらに、第2の溶媒を含むことができる。
【0016】
前記金属の塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族の金属の塩を含む又は実質的にこれからなる。好ましいことに、前記金属は、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、又はアルミニウムであり、好ましくは、リチウム又はマグネシウムである。
前記電解質組成物における前記塩の濃度は、2M~3Mであり、
前記添加剤は、少なくとも1種類のハロゲン原子を含む過フッ素化有機化合物であり、
前記ハロゲンは、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0017】
前記金属の塩は、前記第1の溶媒に溶けることができる。好ましいことに、前記電解質組成物が第2の溶媒を含む場合、前記金属の塩は、前記第2の溶媒にも溶けることができる。前記電解質における前記塩の濃度は、0.5M~3.25M、好ましくは1M~3.1M、より好ましくは2M~3Mである。
【0018】
好ましいことに、前記第1の溶媒は、炭酸塩、エーテル、ニトリル、スルホン、スルホキシド、エステル、及びイオン液体のアルキルエステルからなる群から選択される。例えば、前記第1の溶媒は、1,2-ジメトキシエタン(DME)を含む又は実質的にこれからなることができる。
【0019】
イオン液体は、イオン、すなわち、アニオンとカチオン、のみからなる非分子化合物の種類に含まれる。本発明に関連して、前記電解質組成物における前記第1の溶媒として好適なイオン液体は、好ましいことに、ピロリジニウム、ピペリジニウム、環状飽和アンモニウム、又はこれらの組み合わせを含む又は実質的にこれからなる、カチオンを含む。好ましいことに、前記アニオンは、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)又はこれらの組み合わせを含む又は実質的にこれからなる。
【0020】
前記添加剤は、少なくとも1種類のハロゲン原子をさらに含む過フッ素化有機化合物である。前記ハロゲンは、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)である。好ましいことに、前記添加剤は、前記第1の溶媒に溶けることができる。好ましいことに、前記添加剤は、前記第2の溶媒に溶けることができる。
【0021】
前記添加剤は、式(I)、
XCF2-(CF2)x-CF3-yy (I)
に従うペルフルオロアルキルハライドであることができ、ここで、Xは、Cl、Br又はIであり、Yは、Cl、Br又はIであり、xは、0~10、好ましくは1~8、より好ましくは2~6、であり、yは、0~3、好ましくは0又は1、である。
【0022】
好ましいことに、少なくともXは、Iである。好ましいことに、XとYは、Iである。すなわち、前記ペルフルオロアルキルハライドの添加剤は、ペルフルオロアルキルヨウ化物である。ペルフルオロアルキルヨウ化物の例として、1-ヨードペルフルオロブタン(すなわち、XはI、xは2、yは0であり、yが0であるのでYはI、Cl又はBrのいずれかであることができる)、1,4-ジヨードペルフルオロブタン(すなわち、XはI、YはI、xは2、yは1)、1-ヨードペルフルオロヘキサン(すなわち、XはI、xは4、yは0であり、yが0であるのでYはI、Cl又はBrのいずれかであることができる)、1,6-ジヨードペルフルオロヘキサン(すなわち、XはI、YはI、xは4、yは1)、1,8-ジヨードペルフルオロオクタン(すなわち、XはI、YはI、xは6、yは1)が挙げられる。なお、これに限定されない。
【0023】
前記第1の溶媒がイオン液体である場合、式(I)に従う添加剤、特に、ペルフルオロアルキルヨウ化物が特に好ましい。このような添加剤は、イオン液体において、すなわち、イオン強度が高い溶液において、溶解度が高い。
【0024】
前記添加剤は、式(II)、
66-qq (II)
に従う芳香族化合物であることができ、ここで、Zは、Cl、Br、I又はCa2a+1-bbであり、Qは、Cl、Br又はIであり、qは、1~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、であり、aは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、であり、bは、2a+1-bが1以上である値である。
【0025】
好ましいことに、ZはIである。式(II)に従う好適な添加剤の例としては、1,4-ジヨード-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン(すなわち、ZはI、qは2)、1-ヨード-2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼン(すなわち、ZはI、qは1)が挙げられる。なお、これに限定されない。
【0026】
好ましいことに、前記電解質組成物は、前記電解質組成物の総重量を基準にして、前記添加剤を0.01~20重量%、好ましくは0.05~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%、含む。
【0027】
好ましいことに、前記電解質組成物は、さらに、第2の溶媒を含み、
前記第2の溶媒は、希釈剤としてはたらく。前記第2の溶媒は、ヒドロフルオロエーテル、、部分的にフッ素化されたアルキルエーテル、又はこれらの組み合わせを含む又は実質的にこれからなることができる。
【0028】
本発明の第2の態様は、本発明に係る電解質組成物を含む、アノードがフリーな金属電池セルに関する。好ましいことに、このアノードがフリーな金属電池セルは、二次電池セルである。
【0029】
好ましいことに、前記アノードがフリーな電池セルの金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族の金属である。好ましくは、前記金属は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。アルカリ金属の好ましい例は、リチウム(Li)(この場合、アノードがフリーな金属電池セルは、アノードがフリーなリチウム金属電池セルである)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)である。アルカリ土類金属の好ましい例は、マグネシウム(Mg)(この場合、アノードがフリーな金属電池セルは、アノードがフリーなマグネシウム金属電池セルである)、及びカルシウム(Ca)である。IIIa族の金属の好ましい例は、アルミニウムである。
【0030】
好ましくは、前記金属塩の金属、及び前記アノードがフリーな電池セルの金属は同じである。好ましいことに、前記金属塩は、リチウム塩又はマグネシウム塩であり、前記電池セルはそれぞれ、アノードがフリーなリチウム金属電池セル又はアノードがフリーなマグネシウム金属電池セルである。
【0031】
好ましいことに、前記アノードがフリーな電池セルのアノードは、裸の集電体を含む。裸の集電体とは、本発明に関連して、グラファイト層のような層が上に堆積していない集電体を意味する。
【0032】
本発明に係る電解質組成物は、安定なSEI形成が得られるアノードがフリーな金属電池セルを得ることを可能にする。また、本発明に係る電解質は、充放電の繰り返しする際に、より高い比放電容量を得ることを可能にする。すなわち、本発明に係る電解質は、充電/放電を繰り返す際の電池セルの安定性を向上させることを可能にする。
【0033】
また、本発明に係る電解質組成物には、広範囲の市販の金属塩を用いることができ、これによって、意図されている用途に必要な性質を有する電池セルを得ることができるという利点がある。また、本発明に係る電解質は、金属の損失、いわゆる「無効金属(dead metal)の発生」を避け、これによって、電池セルの寿命及び電力密度を増加させることができる。この好ましい効果は、さらに、本発明に係る電解質中のアニオンの移動度が低下して、金属イオンの移動数が大きくなることによって、強くなる。
【0034】
電解質には、さらに、希釈剤のような第2の溶媒の存在が必須条件ではなく、存在する場合には少量で十分であるという利点がある。希釈剤が高価であることが知られており、本発明に係る電解質は、当技術分野において知られている電解質よりも安価であることができる。
【0035】
添付の図面を参照しながら本発明のいくつかの態様について詳細に説明する。なお、図面において、同じ参照符号は同じものを表す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】アノードがフリーな金属2電極セルの構成を概略的に示している。
図2図1における2電極セルの比容量を示しており、電解質はそれぞれ、添加剤(基準電池セル)及びペルフルオロアルキルヨウ化物添加剤(本発明に係る電池セル)を含まない。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る電解質組成物は、第1の溶媒、添加剤、及び金属塩を含む。
【0038】
前記金属塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族の金属の塩を含む又は実質的にこれからなる。アルカリ金属の好ましい例は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)である。アルカリ土類金属の好ましい例は、マグネシウム(Mg)及びカルシウム(Ca)である。IIIa族の金属の好ましい例は、アルミニウム(Al)である。好ましいことに、前記金属は、実質的に、リチウム、マグネシウム、アルミニウム又はナトリウム、好ましくはリチウム又はマグネシウム、からなる。
【0039】
前記電解質組成物は、2種類以上の金属塩の組み合わせを含むことができる。2種類以上の金属塩が存在する場合、これらの金属塩は、同じ金属を含むことができ、特に、すべての塩がリチウム塩であることができ、あるいはこれらの金属塩は、異なる金属を含むことができ、特に、リチウム塩とマグネシウム塩を含むことができる。
【0040】
本発明に係る電解質組成物に用いることができるリチウム塩の例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTf)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、及びこれらの誘導体が挙げられる。なお、これに限定されない。
【0041】
好ましいことに、LiFSIとLiTFSIの誘導体としては、リチウムビス(R-スルホニル)イミド、及びリチウム(R1,R2-スルホニル)イミド塩が挙げられる。なお、これに限定されない。
ここで、R、R1、R2は、少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル基である。例えば、R1とR2は、互いに独立して、フルオロ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ノナフルオロブチルであることができる。このような誘導体の例としては、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びリチウム(ペンタフルオロエタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが挙げられる。
【0042】
マグネシウム塩の例としては、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO42)、マグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(Mg(TFSI)2)、及び式、
Mg(((R3456)B)2
のマグネシウム(フルオロアルコキシ)ホウ酸塩が挙げられる。なお、これに限定されない。
ここで、R3、R4、R5及びR6は、少なくとも部分的にフッ素化されたアルコキシ基である。R3~R6のうちの2つ以上が同じであることができ、又はR3~R6は互いに異なることができる。R3~R6の一又は複数は、完全にフッ素化されていることができる。特に、R3~R6は、一座配位子又は二座配位子であることができる。このようなマグネシウム塩の例は、以下のものである。
【0043】
【0044】
ナトリウム塩の例としては、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)、ヘキサフルオロヒ酸ナトリウム(NaAsF6)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(NaTf)、ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(NaTFSI)、及びナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NaFSI)が挙げられる。なお、これらに限定されない。
【0045】
好ましいことに、NaFSIとNaTFSIの誘導体としては、ナトリウムビス(R-スルホニル)イミド、及びナトリウム(R1,R2-スルホニル)イミド塩が挙げられる。なお、これに限定されない。
ここで、R、R1、R2は、少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル基である。例えば、R1とR2は、互いに独立して、フルオロ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ノナフルオロブチルであることができる。このような誘導体の例としては、ナトリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びナトリウム(ペンタフルオロエタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが挙げられる。
【0046】
前記金属の塩は、第1の溶媒に溶けることができる。電解質中の塩の濃度は、0.5M~3.25M、例えば1M~3.1M、好ましくは1.5M~3.05M、より好ましくは2M~3M、である。
【0047】
発明者らは、これらの適度な塩濃度において、金属塩が第1の溶媒中において溶解度が高く解離定数が高いことが必要ではないことを見出した。したがって、広範囲の市販の金属塩を本発明に係る電解質組成物に用いることができる。
【0048】
発明者らは、さらに、驚くべきことに、このような適度な塩濃度において、溶媒中の金属塩の溶解性を損なうことなく、フッ素イオンの濃度が適度に高い安定なSEI層の形成を得ることができることを見出した。この分野で知られているように、SEI中のフッ素イオンの存在には、形成される無効金属(すなわち、分離され電気的に隔離された金属)の量が大幅に減少するに従って、全体的な金属損失を抑制する傾向がある。このことは、電解質の分解を防ぐ。この結果、効率損失が減少し、さらには阻止され、また、クーロン効率が改善することがある。したがって、SEI層中のフッ素イオンの存在は、電池セルの性能が良くなることに寄与する。
【0049】
本発明に係る電解質組成物は、さらに、第1の溶媒を含む。好ましいことに、前記電解質は、電解質組成物の総重量に基づいて、第1の溶媒を2~40重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは7~20重量%、例えば10~15重量%、含む。
【0050】
第1の溶媒は、炭酸塩のアルキルエステル、エーテル、ニトリル、スルホン、スルホキシド、エステル、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせのような有機溶媒を含む又は実質的にこれからなることができる。
【0051】
有機溶媒の例としては、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル、スルホラン、ジメチルスルホキシド、酢酸メチル、及びプロピオン酸メチルが挙げられる。なお、これらに限定されない。
【0052】
代わりに、かつ/又は付加的に、第1の溶媒は、イオン液体を含む又は実質的にこれからなることができる。イオン液体は、イオン、すなわち、アニオンとカチオン、のみからなる非分子化合物の種類に含まれる。これらは室温で、無視できる蒸気圧と高い熱安定性を有することが知られ、このことによって、伝統的な(有機)溶媒の代わりに又はそれに加えて用いるために適している。
【0053】
本発明に関連して、電解質組成物中の第1の溶媒として好適なイオン液体は、好ましいことに、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム、環状飽和アンモニウムのようなアンモニウム、又はこれらの組み合わせを含む又は実質的にこれからなる、陽イオンを含む。環状飽和アンモニウムは、以下の式(III)に従うことができる。ここで、Xは、CH2又はOであり、nは、1~3である。
【0054】
【0055】
本発明に関連して、電解質組成物中の第1の溶媒として適したイオン液体は、好ましいことに、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ヘキサフルオロリン酸塩、ジシアナミド、テトラクロロアルミン酸塩、又はこれらの組み合わせを含む又は実質的にこれからなるアニオンを含む。アニオンの好ましい例は、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)である。
【0056】
本発明に係る電解質組成物の添加剤は、少なくとも1種類のさらなるハロゲン原子を含む過フッ素化有機化合物である。好ましいことに、前記ハロゲンは、塩素(Cl)、臭素(Br)、又はヨウ素(I)である。好ましいことに、前記添加剤は、第1の溶媒に溶けることができる。
【0057】
発明者らは、電解質組成物中に過フッ素化有機化合物を用いることによって、この化合物のハロゲン原子が金属塩のアニオンと結合することを見出した。塩のアニオンと添加剤のハロゲン原子の間のハロゲン結合の相互作用は、金属塩のアニオンとカチオンの間の相互作用を破壊するために十分に強いことがわかった。したがって、このようなハロゲン結合は、金属塩の金属イオンが自由に動くことを可能にする。また、ハロゲン化物とアニオンの間のハロゲン結合は、アニオンの移動度を低下させる。この結果、電解質中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンの移動数を増加させることができる。
【0058】
移動数は、全電流に対する、ここではアルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンである、カチオンから導出される電流の比として定められる。移動数が大きいと、充電ステップと放電ステップ中の電解質の濃度の偏りを減らすことができ、したがって、パワー密度を大きくすることができることが知られている。
【0059】
したがって、本発明に係る電解質組成物中において添加剤として過フッ素化有機化合物を用いることによって、この添加剤を用いない電池セルと比べてパワー密度が大きい電池セルを得ることができる。また、発明者らは、本発明に係る添加剤を用いることによって、電池とのあらゆる寄生反応も低減されることも見出した。この低減によって、電池セルの寿命が長くなる。
【0060】
ハロゲン結合は、ハロゲンがヨウ素(I)であるときに最も強く、臭素(Br)と塩素(Cl)が続く。したがって、ハロゲンは、好ましくは、ヨウ素(I)である。
【0061】
添加剤は、式(I)、
XCF2-(CF2)x-CF3-yy (I)
に従うペルフルオロアルキルハライドであることができる。ここで、Xは、Cl、Br又はIであり、Yは、Cl、Br又はIであり、xは、0~10、好ましくは1~8、より好ましくは2~6、であり、yは、0~3、好ましくは0又は1、である。
【0062】
式(I)に従うペルフルオロアルキルハライドは、直鎖状であることができ、また、分枝鎖状であることができる。
【0063】
好ましいことに、少なくともXはIである。好ましいことに、XとYはIである。すなわち、ペルフルオロアルキルハライドの添加剤は、好ましくは、ペルフルオロアルキルヨウ化物である。好適なペルフルオロアルキルヨウ化物の例として、1-ヨードペルフルオロブタン(すなわち、XはI、xは2、yは0であり、yが0であるのでYはI、Cl又はBrのいずれかであることができる)、1,4-ジヨードペルフルオロブタン(すなわち、XはI、YはI、xは2、yは1)、1-ヨードペルフルオロヘキサン(すなわち、XはI、xは4、yは0であり、yが0であるのでYはI、Cl又はBrのいずれかであることができる)、1,6-ジヨードペルフルオロヘキサン(すなわち、XはI、YはI、xは4、yは1)、1,8-ジヨードペルフルオロオクタン(すなわち、XはI、YはI、xは6、yは1)が挙げられる。なお、これに限定されない。
【0064】
代わりに、XとYは、Clであることができる。すなわち、添加剤は、好ましいことに、ペルフルオロアルキルクロリドである。好適なペルフルオロアルキルクロリドの例としては、1-クロロペルフルオロブタン(すなわち、XはCl、xは2、yは0であり、yが0であるのでYはI、Cl又はBrのいずれかであることができる)、1,4-ジクロロペルフルオロブタン(すなわち、XはCl、YはI、xは2、yは1)、1,6-ジクロロペルフルオロヘキサン(すなわち、XはCl、YはI、xは4、yは1)が挙げられる。なお、これに限定されない。
【0065】
代わりに、XとYは、Brであることができる。すなわち、添加剤は、好ましいことに、ペルフルオロアルキルブロミドである。好適なペルフルオロアルキルブロミドの例としては、1-ブロモペルフルオロブタン(すなわち、XはBr、xは2、yは0であり、yが0であるのでYはI、Cl又はBrのいずれかであることができる)、1,4-ジブロモペルフルオロブタン(すなわち、XはBr、YはI、xは2、yは1)、1,6-ジブロモペルフルオロヘキサン(すなわち、XはBr、YはI、xは4、yは1)が挙げられる。なお、これに限定されない。
【0066】
式(I)に従う添加剤、特に、上記のようなペルフルオロアルキルヨウ化物は、第1の溶媒がイオン液体である場合に特に好ましい。このような分子が、イオン液体中において、すなわち、イオン強度が高い溶液中において、溶解性が高いことが知られている。
【0067】
添加剤は、式(II)に従う芳香族化合物であることができる。
66-qq (II)
ここで、Zは、Cl、Br、I、又はCa2a+1-bbであり、Qは、Cl、Br又はIであり、qは、1~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、であり、aは、1~10、好ましくは1~8、例えば1~6、より好ましくは1~4、であり、bは、2a+1-bが1以上になるように選択される。
【0068】
好ましいことに、ZはIである。式(II)に従う好適な添加剤の例としては、1,4-ジヨード-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン(すなわち、ZはI、qは2)、1-ヨード-2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼン(すなわち、ZはI、qは1)が挙げられる。なお、これに限定されない。
【0069】
代わりに、Zは、Ca2a+1-bbである。ZがCa2a+1-bbの場合、直鎖状であることができ、また、分枝鎖状であることができる(Cが3以上の場合にのみ分枝鎖状であることが可能である)。例えば、添加剤は、1-[ジフルオロ(ヨード)メチル]-2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼン(すなわち、QはI、qは1、aは1、bは1、したがって、ZはCF2I)であることができる。
【0070】
好ましいことに、前記電解質組成物は、電解質の総重量に基づいて、添加剤を、0.01~20重量%、好ましくは0.05~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%、含む。
【0071】
所望に応じて、前記電解質組成物は、さらに、第2の溶媒を含む。好ましいことに、第2の溶媒は希釈剤としてはたらく。好ましいことに、前記添加剤は第2の溶媒に溶けることができる。好ましいことに、前記金属塩は第2の溶媒に溶けることができる。
【0072】
好ましいことに、前記電解質は、第2の溶媒を含む場合、電解質組成物の総重量に基づいて、第2の溶媒を、2~40重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは7~20重量%、例えば10~15重量%、含む。
【0073】
第2の溶媒は、ヒドロフルオロエーテル、部分的にフッ素化されたアルキルエーテル、又はこれらの組み合わせを含む又は実質的にこれからなることができる。例えば、前記溶媒は、一又は複数種類のヒドロフルオロエーテル及び/又は一又は複数種類の部分的にフッ素化されたアルキルエーテルを含むことができる。第2の溶媒の例としては、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)が挙げられる。なお、これらに限定されない。 .
【0074】
発明者らは、驚くべきことに、電解質組成物が本発明に係る添加剤を含む場合、第2の溶媒の量は、含ませるときに、当技術分野における電解質の量よりも低くすることができることを見出した。したがって、これらの溶媒は電解質中の化合物の中で最も高価なものであるために、本発明に係る電解質、及びこのような電解質を含む電池セルを安価にすることができる。
【0075】
本発明の第2の態様において、本発明に係る電解質を含むアノードがフリーな金属電池セルが提供される。好ましいことに、アノードがフリーな電池セルは、二次電池セルである。
【0076】
図1は、アノードがフリーな金属電池セル1の例示的実施形態を示している。セル1は、積層構成を有することができる。電池セル1は、アノード5とカソード2とを含む。電池セル1は、さらに、本発明に係る電解質組成物3を含む。
【0077】
好ましいことに、カソード2は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は周期表のIIIa族の金属を含む。アルカリ金属の好ましい例は、リチウム(Li)(この場合、金属電池セルはリチウム金属電池セルである)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)である。アルカリ土類金属の好ましい例は、マグネシウム(Mg)(この場合、電池セルは、マグネシウム金属電池セルである)、及びカルシウム(Ca)である。IIIa族の金属の好ましい例は、アルミニウムである。好ましくは、前記金属は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。好ましいことに、前記金属は、リチウム、マグネシウム、アルミニウム又はナトリウムである。好適なカソード組成物の例としては、リン酸鉄リチウム(LiFePO4、しばしばLFPと略称される)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMCと略称され、例えば、NMCタイプのNMC622及びNMC811)、高電圧スピネルリチウムマンガンニッケル酸化物(しばしばLNMOと略称されるLiNi0.5Mn1.54)、及びリン酸マンガン鉄リチウム(LiMnFePO4)が挙げられる。
【0078】
好ましいことに、アノード5は、裸の集電体を含む。裸の集電体とは、本発明に関連して、グラファイト層のような層が上に堆積していない集電体を意味する。集電体は、銅、ニッケル、ニッケルめっき銅、チタン、ステンレス鋼のうちの一又は複数を含む又は実質的にこれからなることができる。
【0079】
積層型電池セル1は、適宜、アノード5とカソード2の間に電池セパレーター膜4を含むことができる。電池セパレーター膜は、多孔質セパレーター膜の少なくとも1つの層を含むことができる。例えば、電池セパレーター膜は、単一層膜であることができ、また、互いに付着する、2つ以上、例えば3つ、の層を含むことができる。電池セパレーター膜の各層は、既知の材料、ポリプロピレン、ポリエチレン(PE)、芳香族ポリアミド(アラミド)、又はポリビニリデンフルオライド(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素化化合物を含む又は実質的にこれからなることができる。これらには、所望に応じてセラミックスをロードすることができる。例えば、電池セパレーターは、セラミックスロードPVDFの2つの層の間に挟まれたPE層を含むことができる。好ましいことに、セパレーターの材料の少なくとも1つは、化学的に不活性である。しかし、多孔質セパレーターが液体電解質を吸収することが好ましいところ、化学的に不活性な材料は、容易には濡れないことが多い。このために、膜材料に対して、スプレー被覆、ディップ被覆又はプラズマ被覆(大気圧プラズマや低圧プラズマ)のような表面処理ないし被覆処理をすることができる。代わりに、電池セパレーター膜は、セラミックス材料であることができる。
【0080】
好ましくは、前記金属塩の金属、及び前記アノードがフリーな電池セルの金属は同じである。好ましいことに、前記金属塩は、リチウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩又はナトリウム塩であり、前記電池セルは、アノードがフリーなリチウム金属電池セル、アノードがフリーなマグネシウム金属電池セル、アノードがフリーなアルミニウム金属電池セル、又はアノードがフリーなナトリウム金属電池セルである。
【0081】

アノードがフリーな電池セルを作り、アノードがフリーなリチウム金属電池セルの充放電の性質とサイクル寿命の性質を評価した。製造中の汚染のリスクを低減するために、-60℃の露点を有する乾燥室で、2つの電極セルを作った。
【0082】
電解質が本発明に係るものであり、その組成が、8.00gのLiFSI(リチウム塩)、6.00gのDME(第1の溶媒)、6.00gの1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(第2の溶媒)、及び0.14gの添加剤の1,4-ジヨードペルフルオロブタンである、図1に従う2つの電極の電池セルを作った。
【0083】
また、電解質組成物が、8.00gのLiFSI(リチウム塩)、6.00gのDME(第1の溶媒)、及び6.00gの1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(第2の溶媒)である、基準電池セルを作った。添加剤として、少なくとも1種類のハロゲン原子を含む過フッ素化化合物を加えなかった。
【0084】
両方の電池セルにおいて、カソードはLFPカソードであり、アノードは、裸の集電体である厚み15μmの銅箔であり、電池セパレーターは、2つのセラミックスロードPVDF層の間に挟まれたPE層を含む3層膜であった。両方の電池セルは、電解質60μlを含む。これらの電池セルを真空シールした。
【0085】
得られた本発明に係る薄膜電池セル及び基準薄膜電池セルに対して、第1の充電-放電-充電のシーケンスを行い、そして、25℃で繰り返し充電/放電サイクルを行った。前記シーケンスの初回の充電においては、1mAで3.6V(0.13mA/cm2)まで電池セルを充電した。前記シーケンスの放電においては、7.56mAで2.8V(1mA/cm2)まで電池セルを放電した。前記シーケンスの2回目の充電においては、1.52mAで3.6V(0.2mA/cm2)まで電池セルを充電した。
【0086】
充放電サイクルごとに比放電容量を測定し、その結果を図2に示した。図2は、本発明に係る電池セル(10)及び基準電池セル(20)について、155サイクルまでの充放電サイクル数に応じた比放電容量の結果を示している。図2によって、本発明に係る電池セル(10)の比放電容量が、いつでも基準電池セル(20)の容量以上であり、ほとんどの時にそれよりも大きいことが明らかである。
【符号の説明】
【0087】
1 電池セル
2 カソード
3 電解質
4 セパレーター
5 アノード
10 本発明に係る電解質組成物を含む電池セルのプロファイル
20 基準用の電解質組成物を含む電池セルのプロファイル
図1
図2
【外国語明細書】