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特開2023-167009基板処理組成物およびこれを用いた基板処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167009
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】基板処理組成物およびこれを用いた基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/16 20060101AFI20231115BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231115BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20231115BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G03F7/16
G03F7/004
G03F7/004 531
G03F7/26
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077542
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】10-2022-0057150
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523169855
【氏名又は名称】エス・ケイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ジンソク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】スヨン チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンファン ハ
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA01
2H196CA20
2H196DA10
2H196EA07
2H197CA01
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H225AB03
2H225AN80P
2H225EA24P
(57)【要約】
【課題】金属含有レジスト組成物を用いるリソグラフィ工程において、エッジリンスステップやその後の基板洗浄処理ステップの間に金属による汚染およびそれによる半導体素子の電気的特性劣化を抑制できながらも、下地膜への影響や経時安定性(溶解度)側面でも改善された基板処理組成物および基板処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の基板処理組成物は、金属含有レジスト組成物が塗布された基板を処理するための組成物であって、有機溶剤と、有機酸と、添加剤とを含み、添加剤は、ケルセチンおよび/またはその誘導体からなるキレート剤を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有レジスト組成物が塗布された基板を処理するための基板処理組成物であって、
有機溶剤と、有機酸と、添加剤とを含み、
前記添加剤は、下記化学式1で表されるキレート剤を含むことを特徴とする基板処理組成物:
【化1】
化学式1中、
1、R2およびR'1 は、同一であっても異なってもよく、独立して、水素、またはヒドロキシ基であり、
RおよびR'は、同一であっても異なってもよく、独立して、水素、硫酸基または置換もしくは非置換のC1~C30の脂肪族または芳香族炭化水素基であり、
RおよびR'の水素のうちの少なくとも1つは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【請求項2】
前記添加剤の含有量は、前記基板処理組成物の全質量に対して、0.1~10質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理組成物。
【請求項3】
前記有機酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、2-ニトロフェニル酢酸、2-エチルヘキサン酸、ドデカン酸、アスコルビン酸、酒石酸、グルクロン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板処理組成物。
【請求項4】
前記有機酸の含有量は、前記基板処理組成物の全質量に対して、10~60質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤は、グリコールエーテルまたはそのエステル、アルコール、ケトン、液体サイクリックカーボネート、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の基板処理組成物。
【請求項6】
前記有機溶剤は、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項5に記載の基板処理組成物。
【請求項7】
基板上に金属含有レジスト組成物を塗布するステップと、
請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理組成物を用いて前記基板を処理する基板処理ステップと、
前記基板上に金属含有レジスト膜のパターンを形成するステップを含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
前記基板処理ステップは、前記基板上に塗布された金属含有レジスト組成物の膜の少なくとも一部を前記基板処理組成物により除去するステップを含むことを特徴とする、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記基板処理ステップは、第1基板処理組成物を用いて前記基板を処理する第1基板処理ステップと、第2基板処理組成物を用いて前記基板を処理する第2基板処理ステップとを含み、
前記第1基板処理組成物は、有機溶剤を含み、
前記第2基板処理組成物として、前記基板処理組成物を用いることを特徴とする、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1基板処理組成物に含まれる前記有機溶剤は、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記基板処理ステップは、前記第2基板処理ステップの後に、第3基板処理組成物を用いて基板を処理する第3基板処理ステップをさらに含み、
前記第3基板処理組成物は、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、またはこれらの混合物を含む有機溶剤のみからなることを特徴とする、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記基板処理ステップは、第1基板処理組成物を用いて基板を処理する第1基板処理ステップと、第2基板処理組成物を用いて基板を処理する第2基板処理ステップとを含み、
前記第1基板処理組成物として、前記基板処理組成物を用い、
前記第2基板処理組成物は、有機溶剤のみからなることを特徴とする、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記第2基板処理組成物の前記有機溶剤は、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記金属含有レジスト組成物は、有機金属化合物、有機金属ナノ粒子、または有機金属クラスタを含む金属構造物を含み、
前記金属構造物は、少なくとも1つの金属原子を含む金属コアと、前記金属コアを配位する少なくとも1つの有機リガンドとを含むことを特徴とする、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記金属含有レジスト膜のパターンを形成するステップは、前記金属含有レジスト膜が形成された前記基板を極端紫外線(EUV)または電子ビームに露出させるステップを含むことを特徴とする、請求項7に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理組成物およびこれを用いた基板処理方法に関するもので、特に金属を含有するレジスト組成物が塗布された基板を処理するための組成物およびこれを使用して基板を処理する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子技術の発達により、最近半導体素子のダウンスケーリング(down-scaling)が急速に進んでいる。半導体素子のダウンスケーリングのために、極端紫外線(EUV)または電子ビームリソグラフィ技術が活発に研究されており、量産にも適用されている。
【0003】
半導体デバイスのダウンスケーリングに伴い、半導体デバイス製造の複雑性が増して、半導体デバイスを生産するコストも増加している。例えば、露光装置の分解能より小さい回路パターンを形成するためにダブルパターニングなどの工程が使われているが、その分、製造工程が増え、複雑性が増加してしまう。これを解決するために、EUVのような極端紫外線を用いた露光装置によってパターニングする技術が使われているが、EUV露光装置は高価なため、生産費用の増加を避けられない問題点がある。
【0004】
また、極端紫外線または電子ビームを用いるリソグラフィにおいて、樹脂基盤の従来の化学増幅型レジストでは、解像度、感度とパターンラフネスを両立させることが難しくなる問題があり、解像度、感度およびパターンラフネスを両立させることができる新しいレジストが研究されている。
【0005】
特に、極端紫外線または電子ビームリソグラフィ用レジストとして、金属含有レジストが新たに脚光を浴びている。特に、金属含有レジストは、非常に高いエッチングコントラストを提供しながら、極端紫外線および電子ビームの放射線を良好に吸収するため、半導体素子の量産への適用が期待されている。
【0006】
このような新しい組成のレジストの導入により、金属含有レジスト組成物を用いるリソグラフィ工程において、基板のエッジ部分に生じるエッジビードを除去するエッジリンスステップの間に、金属含有レジスト組成物に含まれた金属による汚染、およびそれによる半導体素子の電気的特性劣化を抑制できる新しい技術開発が要求されている。
【0007】
また、エッジリンスステップに用いられるエッジリンス液により基板上の下地膜への影響を低減でき、経時安定性(溶解度)を向上させることができることが要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属含有レジスト組成物を用いるリソグラフィ工程において、エッジリンスステップやその後の基板洗浄処理ステップの間に金属含有レジスト組成物から由来した金属による汚染、およびそれによる半導体素子の電気的特性劣化を抑制できながらも、下地膜への影響や経時安定性(溶解度)側面でも改善された基板処理組成物および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様による基板処理組成物は、金属含有レジスト組成物が塗布された基板を処理するための組成物であって、該基板処理組成物は、有機溶剤と、有機酸と、添加剤とを含み、前記添加剤は、下記の化学式1で表されるキレート剤を含む。
【化1】
【0010】
化学式1において、
1、R2およびR'1は、同一であっても異なってもよく、独立して、水素、またはヒドロキシ基であり、
RおよびR'は、同一であっても異なってもよく、独立して、水素、硫酸基、または置換もしくは非置換のC1~C30の脂肪族または芳香族炭化水素基であり、
RおよびR’の水素のうちの少なくとも1つは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0011】
本発明の第2態様による基板処理方法は、基板上に金属含有レジスト組成物を塗布するステップと、本発明の第1態様による基板処理組成物を用いて基板を処理する基板処理ステップと、前記基板上に金属含有レジスト膜のパターンを形成するステップとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の技術的思想に係る基板処理組成物および基板処理方法によれば、金属含有レジスト組成物を用いるリソグラフィ工程において、金属含有レジスト組成物から由来した金属による基板汚染および設備汚染を抑制することで工程効率を高めることができ、半導体素子の電気的特性の劣化を防止することができる。また、窒化膜やポリシリコン膜のような下地膜への影響を低減でき、経時安定性(溶解度)も改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の技術的思想に係る実施例による基板処理方法を説明するためのフローチャートである。
図2】本発明の技術的思想に係る他の実施例による基板処理方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図面上の同じコンポーネントについては同じ参照符号を付けて、これらに対する重複した説明は省略する。
【0015】
本発明の一実施態様によれば、金属含有レジスト組成物が塗布された基板の処理ステップ、例えば、エッジリンスステップおよび/または基板洗浄後処理に用いられる組成物が提供される。
【0016】
本明細書において、金属含有レジスト組成物は、有機金属化合物、有機金属ナノ粒子、または有機金属クラスタを含む金属構造物と、有機溶剤とを備える。
【0017】
金属含有レジスト組成物の金属構造物は、少なくとも1つの金属原子を含む金属コアと、金属コアを配位する少なくとも1つの有機リガンドとを含むことができる。 金属コアと有機リガンドとの間は、イオン結合、共有結合、金属結合、またはファンデルワールス結合により結合されうる。
【0018】
金属コアは、金属原子、金属性イオン、金属化合物、金属合金、またはこれらの組み合わせの形態を有する少なくとも1つの金属元素を含むことができる。金属化合物は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属ケイ化物、金属炭化物、またはこれらの組み合わせからなることができる。例示的な実施例において、前記金属コアは、Sn、Sb、In、Bi、Ag、Te、Au、Pb、Zn、Ti、Hf、Zr、Al、V、Cr、Co、Ni、Cu、GおよびFeの中から選択される少なくとも一つの金属元素を含むことができるが、本発明の技術的思想はこれに限定されない。
【0019】
有機リガンドは、C1~C30の直鎖型アルキル、C1~C30の分岐型アルキル、C3~C30のシクロアルキル、C2~C30のアルケニル、C2~C30のアルキニル、C6~C30のアリール、C3~C30のアリル、C1~C30のアルコキシ、C1~C30のアリールオキシ、またはこれらの組み合わせを含むことができる。有機リガンドは、酸素原子、窒素原子、ハロゲン元素、シアノ、チオ、シリル、エーテル、カルボニル、エステル、ニトロ、アミノまたはこれらの組み合わせを含む少なくとも一つのヘテロ原子作用基で置換されたヒドロカルビル基(hydrocarbyl group)を含むことができる。 前記ハロゲン元素は、F、Cl、Br、またはIであることができる。
【0020】
例えば、有機リガンドは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、第3ブチル、第3アミール、第2ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルを含むことができる。
【0021】
金属構造物は、複数の有機リガンドを含み、複数の有機リガンドのうち2つの有機リガンドが1つのサイクリックアルキル基(cyclic alkyl moiety)を形成することができる。サイクリックアルキル基は、1-アダマンチルまたは2-アダマンチルを含むことができる。
【0022】
本発明の一実施例において、金属含有レジスト組成物は、金属元素としてスズ(Sn)を含有することができる。
【0023】
例えば、スズ含有レジスト組成物は、化学式RzSnO(2-(z/2)-(x/2))(OH)xによって表される組成物(式中、0<z≦2および0<(z+x)≦4であり、Rは、C1~C31のヒドロカルビル基である)であってもよい。このようなスズ含有レジスト組成物のオキソ/ヒドロキソリガンドの少なくとも一部は、基板への塗布後のインサイチュの加水分解によって化学式RnSnX4-nで表される組成物になり得る。式中、Xとしては、アルキニドRC≡C、アルコキシドRO-、アジドN3 -、カルボン酸塩RCOO-、ハロゲン化物およびジアルキルアミドが挙げられる。さらに、RzSnO(2-(z/2)-(x/2))(OH)x 組成物の一部は、MO((m/2)-l/2)(OH)lで代替されうる(式中、mはMm+の公式原子価、0≦l≦m、y/z=(0.05~0.6)、MはM’またはSnであり、ここで、M’は、周期表の2~16族の非スズ金属である)。
【0024】
したがって、本発明の一実施態様による基板処理方法の間に処理される基板上に塗布される金属含有レジスト組成物は、RzSnO(2-(z/2)-(x/2))(OH)x、R'nSnX4-nおよび/またはMO((m/2)-l/2)(OH)lを含むことができ、その他に、ジブチルスズジアセタートなどの金属カルボン酸塩結合(例えば、アセタート、プロパノアート、ブタノアート、ベンゾアートなどのリガンド)を有する組成物を含むことができる。
【0025】
例示的な実施例において、金属構造物は、(tBu)Sn(NEt2)2(OtBu)、(tBu)Sn(NEt2)(NH2)(OtBu)、(tBu)Sn(NEt2)(OtBu)2、(Me)Sn(NEt2)(OtBu)2、(Me)Sn(NEt2)2(OtBu)、(tBu)2Sn(NEt2)(OtBu)、(Me)2Sn(NEt2)(OtBu)、(Me)(tBu)Sn(NEt2)2、(Me)(tBu)Sn(NEt2)(OtBu)、(iPr)(tBu)Sn(NMe2)(OtBu)、またはこれらの組合せからなることができるが、これらに限定されない。ここで、「Me」はメチル、「Et」はエチル、そして「tBu」は第3ブチルを意味する。
【0026】
金属含有レジスト組成物に含まれる有機溶剤は、エーテル、アルコール、グリコールエーテル、芳香族炭化水素化合物、ケトンおよびエステルの少なくとも一つを含むことができるが、これらに限定されない。例えば、有機溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコルエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘプタノン、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル(methyl pyruvate)、ピルビン酸エチル(ethyl pyruvate)、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、ガンマ-ブチロラクトン(gamma-butyrolactone)、メチル-2-ヒドロキシイソブチレート(methyl 2-hydroxyisobutyrate)、メトキシベンゼン(methoxybenzene)、n-ブチルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、メトキシエトキシプロピオネート、エトキシエトキシプロピオネート、またはそれらの組み合わせからなることができる。
【0027】
このような金属含有レジスト組成物を基板上に塗布すると、金属と酸化物のクラスタがシリコンウェハーなどの基板表面に結合して残渣が生じる場合がある。
【0028】
しかし、従来の樹脂基盤のレジスト組成物のエッジリンス用の洗浄液の組成物では、このような金属と酸化物のクラスタによる残渣を十分に除去することができない。
【0029】
そこで本発明の一実施態様においては、金属含有レジスト組成物の塗布膜に含まれる金属の除去性を向上させるために、有機溶剤と有機酸と、下記化学式1で表されるキレート添加剤とを含む基板処理組成物を提供する。
【0030】
【化2】
【0031】
化学式1中、
R1、R2およびR'1は、同一であっても異なってもよく、独立して、水素、またはヒドロキシ基であり、
RおよびR’は、同一であっても異なってもよく、独立して、水素、硫酸基、または置換もしくは非置換のC1~C30の脂肪族または芳香族炭化水素基であり、RおよびR'の水素の少なくとも一つは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0032】
化学式1で表されるキレート添加剤は、下記式で表されるように、分子内に少なくとも3つのキレートサイト(3-ヒドロキシカルボニル基、5-ヒドロキシカルボニル基および3',4'-ジヒドロキシル基)を含むため、他のキレート剤に比べて金属(例えば、スズ)の除去性をさらに向上させることができる。それだけでなく、基板上に形成された下地膜(窒化膜、ポリシリコン膜など)への影響を低減でき、基板処理組成物の溶解度などの経時安定性も向上させることができる。
【0033】
【化3】
【0034】
化学式1で表されるキレート添加剤としては、具体的に下記式で表されるケルセチンまたはその誘導体が挙げられる。
【0035】
【化4】
【0036】
本発明の一実施態様による基板処理組成物において、キレート添加剤の含有量は、基板処理組成物の全質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.3~5質量%がより好ましく、0.5~2.5質量%が特に好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態に係る基板処理組成物に含まれる有機酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、2-ニトロフェニル酢酸、2-エチルヘキサン酸、ドデカン酸等のカルボン酸;アスコルビン酸、酒石酸、グルクロン酸などの糖酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのスルホン酸;ビス(2-エチルヘキシル)リン酸のようなリン酸エステル、リン酸などが挙げられる。
【0038】
そのなかでも、有機酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸が好ましく、ギ酸がより好ましい。
【0039】
本発明の一実施形態による基板処理組成物において、有機酸の含有量は、基板処理組成物の全質量に対して、10~60質量%が好ましく、15~55質量%がより好ましく、20~50質量%が特に好ましい。
【0040】
本発明の基板処理組成物の有機酸は、基板上に塗布された金属含有レジスト組成物中の金属と反応して、金属含有レジスト組成物の膜からの金属の除去性をさらに向上させることができる。
【0041】
本発明の一実施形態による基板処理組成物に含まれる有機溶剤としては、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールブチルエーテル(PGBE)、エチレングリコールメチルエーテルなどのグリコールエーテルおよびそのエステル;エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール;γ-ブチロラクトンなどの環状エステル;酢酸n-ブチル、酢酸エチルなどのエステル;2-ヘプタノンなどのケトン;プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの液体環状カーボネート;スルホラン等の環状スルホン等が挙げられる。
【0042】
そのなかでも、水酸基を有さない有機溶剤が好ましく、グリコールエーテルおよびそのエステルまたはケトンがより好ましく、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が特に好ましい。
【0043】
有機溶剤として、水酸基を有さない有機溶剤を用いることにより、基板処理組成物中の有機酸のエステル化反応を抑制しやすく、基板処理組成物の経時安定性を向上しやすくなる。
【0044】
本実施形態において、有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。例えば、有機溶剤として、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)またはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)またはそれらの混合溶剤を用いてもよい。混合溶剤としては、例えば、PGMEとPGMEAが7:3で混合された溶剤を用いることができるが、これに限定されない。
【0045】
本実施形態に係る基板処理組成物において、有機溶剤の含有量は、基板処理組成物の全質量に対し、40~90質量%が好ましく、45~85質量%がより好ましく、50~80質量%が特に好ましい。
【0046】
本実施形態にかかる基板処理組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分に加えて他の成分を含んでいてもよい。
【0047】
他の成分としては、無機フッ酸、テトラアルキルアンモニウム化合物、界面活性剤等が挙げられる。
【0048】
無機フッ酸としては、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロホウ酸等が挙げられる。
【0049】
テトラアルキルアンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオロシリケート、テトラメチルアンモニウムビフルオリド、テトラエチルアンモニウムビフルオリド、テトラプロピルアンモニウムビフルオリド、テトラブチルアンモニウムビフルオリド、テトラペンチルアンモニウムビフルオリド、テトラヘキシルアンモニウムビフルオリド、テトラヘプチルアンモニウムビフルオリド、テトラオクチルアンモニウムビフルオリド 等が挙げられる。
【0050】
界面活性剤としては、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤等が挙げられる。
【0051】
これらの他の成分は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本実施形態に係る基板処理組成物において、これらの他の成分の含有量は、基板処理組成物の全質量に対し、0~10質量%が好ましい。
【0053】
以下、図面を参照して、本発明の一実施態様による基板処理組成物を用いて基板を処理する方法について説明する。
【0054】
図1は、本発明の一実施例による基板処理方法を説明するためのフローチャートである。
【0055】
まず、半導体材料からなるウエハなどの基板を準備する(S10)。例示的な実施形態においては、基板は、SiまたはGeなどの半導体元素からなることができるが、これらに限定されず、例えば、SiGe、SiC、GaAs、InAs、またはInPなどの化合物半導体からなってもよい。さらに、基板は、SOI(シリコンオンインシュレータ)構造を有してもよい。基板は、ベア基板(Bare Substrate)であってもよく、絶縁膜や導電膜などの下地膜を含んでもよい。下地膜は、例えば、金属、合金、金属炭化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物、半導体、ポリシリコン、酸化物、窒化物、酸窒化物、またはそれらの組み合わせからなってもよいが、これらに限定されない。下地膜は反射防止膜などであってもよい。
【0056】
ステップS20では、基板上に金属含有レジスト組成物を塗布して、レジスト膜を形成する。金属含有レジスト組成物の塗布は、通常、所定の回転速度で回転する基板上に液状の金属含有レジスト組成物を乗せるスピンコート法により行われ、液状の金属含有レジスト組成物は遠心力により基板の縁部へ広がりながら塗布される。
【0057】
この過程で、基板の縁部が他の部分よりも金属含有レジスト組成物の膜厚が厚くなるエッジビードが生じ、場合によっては基板の側面や背面にまで金属含有レジスト組成物が塗布されることがある。
【0058】
そこで、本発明の一実施形態に係る基板処理方法では、本発明の一実施形態に係る基板処理組成物を用いて基板のエッジ部分に形成されたエッジビードを除去するためのエッジリンスステップS30(エッジビード除去ステップ)を行う。
【0059】
例えば、基板の縁部に本発明の基板処理組成物を供給して金属含有レジスト膜のエッジビード部分を除去することにより、金属含有レジスト膜の周辺部(基板の中心からの放射方向における周辺部)における基板の縁部の表面を露出させる。
【0060】
本発明の一実施形態に係る基板処理方法のエッジリンスステップS30において、基板処理組成物を好ましくは0.05~50mL、より好ましくは0.075~40mL、更に好ましくは0.1~25mLの量で滴下することができる。
【0061】
他の実施形態としては、エッジリンスステップS30において、基板処理組成物を好ましくは5mL/分~50mL/分の流速で、より好ましくは1秒~5分、さらに好ましくは5秒~2分噴霧してもよい。
【0062】
本発明の一実施形態に係る基板処理方法によれば、エッジリンスステップS30に用いられる基板処理組成物が少なくとも3つ以上のキレートサイトを含むキレート添加剤を含むので、金属除去性が向上し、エッジリンスステップS30後に露出した基板(または下地膜)の表面に残留する金属性不純物の量を低減することができる。
【0063】
本発明の一実施形態に係る基板処理方法による金属除去性を評価するために、基板上の残留金属について誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を使って検査することができる。本実施形態においては、金属含有レジスト組成物が金属元素としてSnを含有する場合、残留Snの量は、100×1010原子/cm2以下が好ましく、90×1010原子/cm2以下がより好ましく、80×1010原子/cm2以下が特に好ましい。
【0064】
本発明の基板処理方法のエッジリンスステップS30(基板の裏面に塗布されたレジスト膜を除去するバックリンスステップを含むことができる)は、残留金属不純物の量を上述した所定値以下に低減するために(すなわち、所望のレベルの金属除去のために)、複数回にわたって行ってもよい。例えば、エッジリンスステップS30は、1~20回を行ってもよい。
【0065】
エッジリンスステップS30を複数回にわたって行う場合、これに用いられる基板処理組成物は同一であってもよく、2種以上の異なる組成物を用いてもよい。
【0066】
エッジリンスステップS30により、残留金属量が前述の所定値以下になった後、基板上に残ったレジスト膜に対して極端紫外線光源または電子ビームを用いた露光ステップおよび現像ステップ等を行って、レジストパターンを形成する(S40)。
【0067】
レジストパターン形成ステップS40では、まず、レジスト膜を約70℃~約150℃の温度でソフトベークする。ソフトベークによりレジスト膜から溶剤の少なくとも一部が除去され、その後のステップでレジスト膜が膜形状を維持することができるようになる。
【0068】
続いて、複数の遮断領域と複数の透過領域を有するマスクを用いて、金属含有レジスト膜の一部の領域を露光光源に露出させる。露光光源としては、極端紫外線(EUV)または電子ビームを用いることができるが、本発明はこれに限定されず、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2エキシマレーザ(157nm)などを用いてもよい。
【0069】
金属含有レジスト膜が露光されることにより、金属含有レジスト膜は、露光領域と非露光領域とを含むようになる。金属含有レジスト膜をEUVを用いて露光すると、金属含有レジスト膜の露光領域では、光子が金属含有レジスト膜内の金属構造物に吸収され、これにより露光領域で二次電子が生成される。
【0070】
この二次電子は、露光領域で金属構造物を構成する有機リガンドと金属コアとの間の結合を破壊し、これにより露光領域の金属構造物は、金属原子(M)と酸素原子(O)結合からなるM-O-M結合によって金属酸化物としてクラスタリングされる。例えば、金属含有レジスト膜の露光領域にSnO2などの金属酸化物を形成される。その結果、金属含有レジスト膜は、露光領域と非露光領域とにおいて現像液に対する溶解度が異なる状態となることができる。
【0071】
露光ステップを行った後、約70℃~約150℃でPEB(post exposure bake)ステップを行うことができる。次いで、露光されたレジスト膜を現像液で現像してレジストパターンを形成する。
【0072】
現像液として、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン(acetophenone)、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル(propyl acetate)、酢酸ブチル(butyl acetate)、酢酸イソブチル(isobutyl acetate)、酢酸アミル(amyl acetate)、酢酸ブテニル(butenyl acetate)、酢酸イソアミル(isoamyl acetate)、酢酸フェニル(phenyl acetate)、ギ酸プロピル(propyl formate)、ギ酸ブチル(butyl formate)、ギ酸イソブチル(isobutyl formate)、ギ酸アミル(amyl formate)、ギ酸イソアミル(isoamyl formate)、吉草酸メチル(methyl valerate)、ペンテン酸メチル(methyl pentenate)、クロトン酸メチル(methyl crotonate)、クロトン酸エチル(ethyl crotonate)、プロピオン酸メチル(methyl propionate)、プロピオン酸エチル(ethyl propionate)、3-エトキシプロピオン酸エチル(3-ethoxyethyl propionate)、乳酸メチル(methyl lactate)、乳酸エチル(ethyl lactate)、乳酸プロピル(propyl lactate)、乳酸ブチル(butyl lactate)、乳酸イソブチル(isobutyl lactate)、乳酸アミル(amyl lactate)、乳酸イソアミル(isoamyl lactate)、2-ヒドロキシメチルイソブチレート(2-hydroxymethyl isobutyrate)、 エチル-2-ヒドロキシイソブチレート(ethyl-2-hydroxy isobutyrate)、安息香酸メチル(methyl benzoate)、安息香酸エチル(ethyl benzoate)、酢酸フェニル(phenyl acetate)、酢酸ベンジル(benzyl acetate)、フェニル酢酸メチル(phenylmethyl acetate)、ギ酸ベンジル(benzyl formate)、ギ酸フェニルエチル(phenylethyl formate)、3-フェニルプロピオン酸メチル(methyl-3-phenylpropionate)、プロピオン酸ベンジル(benzyl propionate)、フェニル酢酸エチル(ethyl phenyl acetate)、酢酸2-フェニルエチル(2-phenylethyl acetate)、またはこれらの組み合わせを用いることができるが、本発明の技術的思想が前記例示したものに限定されない。
【0073】
以下では、図2を参照して、エッジリンスを複数回にわたって行う基板処理方法について説明する。ここで、エッジリンスステップとは、スピンコーティングにより基板上に金属含有レジスト組成物を塗布するステップS20と、極端紫外線光源または電子ビームを用いた露光ステップを含むレジストパターン形成ステップS40との間で行われる、エッジビード除去ステップを含む基板洗浄処理ステップの全てを指すものとする。
【0074】
図2に示す基板処理方法においては、図1に例示した基板処理方法と同様に、基板準備ステップS10および金属含有レジスト組成物塗布ステップS20が行われる。
【0075】
続いて、図2に示す基板処理方法では、図1に示す基板処理方法とは異なって、第1基板処理組成物による第1基板処理ステップ(エッジビード除去ステップ)、第2基板処理組成物による第2基板処理ステップ(エッジビード除去ステップ後の第1基板洗浄処理ステップ)、および選択的に、第3基板処理組成物による第3基板処理ステップ(第2基板洗浄処理ステップ)を行う。
【0076】
まず、第1基板処理ステップS32では、第1基板処理組成物を用いて基板のエッジビードを除去する。ここで用いられる第1基板処理組成物は、有機溶剤を含む。第1基板処理組成物に含まれる有機溶剤は、上述の基板処理組成物に含まれる有機溶剤について説明したものと概ね同じである。
【0077】
例示的な実施例においては、第1基板処理組成物に含まれる有機溶剤は、PGMEおよびPGMEAの混合物からなることができる。この場合、有機溶剤中におけるPGMEおよびPGMEAの重量比は約3:7~5:5であり、より好ましくは約4:6である。
【0078】
他の例示的な実施例においては、第1基板処理組成物は、有機溶剤および水の組み合わせからなる。
【0079】
さらに別の例示的な実施例においては、第1基板処理組成物は、界面活性剤およびキレート剤の中から選択される少なくとも1つを含む。
【0080】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、または両性界面活性剤を用いることができる。例えば、界面活性剤は、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル(Polyethylene glycol tert-octylphenyl ether: TritonTM X-100)、ノノキシノル(nonoxynol-9:26-(4-nonylphenoxy)-3,6,9,12 18,21,24-octaoxahexacosan-1-ol)、ポリソルベート(polysorbate: polyoxyethylene glycol sorbitan alkyl ester)、ソルビタンアルキルエステル(sorbitan alkyl esters: Span(登録商標))、ポロキサマー(Poloxamers)、 ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(TergitolTM)、DOSS(dioctyl sodium sulfosuccinate)、PFOS(perfluorooctanesulfonate)、線状アルキルベンゼンスルホネート(linear alkylbenzene sulfonate)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium lauryl ether sulfate)、リグノスルホネート(lignosulfonate)、ステアリン酸ナトリウム(sodium stearate)、 BAC(benzalkonium chloride)、CPC(cetylpyridinium chloride)、BZT(benzethonium chloride)、CTAB(cetyl trimethylammonium bromide)、CTAC(cetyl trimethylammonium chloride)、CHAPS((3-[(3-cholamidopropyl)dimethylammonio]-1-propanesulfonate))、またはこれらの組み合わせからなることができるが、本発明の技術的思想は前記の例に限定されない。
【0081】
第1基板処理組成物中の界面活性剤の含有量は、第1基板処理組成物の全質量に対して約0.01質量%~約15質量%であり得る。
【0082】
第1基板処理組成物が界面活性剤を含むことにより、第1基板処理組成物の有機溶剤によって溶解されたエッジビード部分が基板に再付着するのを防止することができ、これによる不良、例えばテーリング(tailing)やスカム(scum)などの問題が発生するのを防ぐことができる。
【0083】
第1基板処理組成物に含まれ得るキレート剤としては、アミノポリカルボン酸系キレート剤、芳香族または脂肪族カルボン酸系キレート剤、アミノ酸系キレート剤、エーテルポリカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤、リン酸系キレート剤、ポリマー電解質系キレート剤、ジメチルグリオキシム(DG)、またはそれらの組み合わせからなるものを挙げられる。
【0084】
例えば、前記キレート剤は、IDP(iminodimethyl phosphonic acid)、ADPA(alkyl diphosphonic acid)、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、CDTA(cyclohexanediaminetetraacetic acid)、NTA(nitrilotriacetic acid)、 エチレンジアミン、ジメルカプロル(dimercaprol)、クエン酸、ジチオオキサミド(dithiooxamide)、ジフェニルチオカルバジド(diphenylthiocarbazide)、ジチオゾン(dithiozone)、クフェロン(cupferron)、ペンタン-2,4-ジオン(petane-2,4-dione)、IDA(iminodiacetic acid)、HIMDA(N-(2-hydroxyethyl)iminodiacetic acid)、DTPA(diethylenetriaminepentaacetic acid)、EDTA-OH(N-(2-hydroxyethyl)ethylenediaminetriacetic acid)、GEDTA(glycoletherdiaminetetraacetic acid)、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート(sodium ethylenediaminetetraacetate)、ナトリウムニトリロトリアセテート(sodium nitrilotriacetate)、アンモニウムニトリロトリアセテート(ammonium nitrilotriacetate)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリアセテート(hydroxyethyl ethylenediaminetriacetic acid)、ナトリウムヒドロキシエチルエチレンジアミントリアセテート(sodium hydroxyethyl ethylenediaminetriacetate)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(diethylenetriaminepentaacetic acid)、ナトリウムジエチレントリアミンペンタアセテート(sodium diethylenetriaminepentaacetate)、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸(triethylenetetraaminehexaacetic acid)、ナトリウムトリエチレンテトラアミンヘキサアセテート(sodium triethylenetraaminehexaacetate)、またはこれらの組み合わせからなることができるが、本発明の技術的思想は前記例示したものに限定されない。
【0085】
第1基板処理組成物内の前記キレート剤の含量は、第1基板処理組成物の全体質量を基準に約0.01質量%~約15質量%であることができる。
【0086】
本実施形態に係る基板処理方法においては、上述した第1基板処理ステップS32の後に、第2基板処理組成物を用いた第2基板処理ステップS34を行う。第2基板処理ステップS34は、基板上に塗布された金属含有レジスト膜のエッジビード部分を除去する第1基板処理ステップS32を行った後、インサイチュ(in-situ)で連続的に行うことができる。
【0087】
第2基板処理ステップS34に用いられる第2基板処理組成物として、図1のエッジリンスステップS30に用いられる上述の基板処理組成物を用いることができる。すなわち、第2基板処理組成物は、有機溶剤、有機酸および化学式1で表されるキレート添加剤を含有する。前記のように第2基板処理組成物に含まれる化学式1で表されるキレート添加剤は、少なくとも3つ以上のキレートサイトを有するので、第1基板処理ステップS32後に基板の露出した縁部または基板の周辺にあるプロセス設備の表面に残留する可能性がある金属元素または金属元素を含む金属不純物を効果的に除去することができる。
【0088】
他の例示的な実施例では、第2基板処理組成物は、アルコール化合物、H22、およびHFから選択される少なくとも1つの付加化合物をさらに含んでもよい。第2基板処理組成物中の付加化合物の含有量は、約0.5重量%~約90重量%、約0.5重量%~約20重量%であり得る。
【0089】
アルコール化合物は、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、カテコール、メチルカテコール、エチルカテコール、t-ブチルカテコール、またはそれらの組み合わせから選択することができる。
【0090】
第2基板処理組成物がアルコール化合物、H22およびHFから選択される少なくとも1つの付加化合物をさらに含む場合、前記付加化合物は、第2基板処理組成物に含まれる有機酸と同様に、金属元素または金属不純物と反応することによって、エッジビード部分が除去された後の基板の露出面またはプロセス設備の表面に残り得る金属元素または金属不純物を除去する機能をする。
【0091】
別の例示的な実施例において、第2基板処理組成物は、硝酸(nitric acid)、硫酸(sulfuric acid)、塩酸(HCl)、リン酸(phosphoric acid)、フッ化ケイ酸(hexafluorosilicic acid)、ヘキサフルオロリン酸(hexafluorophosphoric acid)、フルオロホウ酸(fluoroboric acid)、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの無機酸をさらに含んでもよい。
【0092】
さらに別の例示的な実施例において、第2基板処理組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤の詳細な構成は、図1の基板処理方法において用いられる基板処理組成物に含まれ得る界面活性剤について説明したものとほぼ同じである。第2基板処理組成物中の界面活性剤の含有量は、第2基板処理組成物の全質量に対して約0.01質量%~約15質量%であり得る。
【0093】
図2の実施形態による基板処理方法は、選択的に、第3基板処理組成物を用いた第3基板処理ステップS36を含むことができる。第3基板処理ステップS36を遂行する場合、これは第2基板処理ステップS34を遂行した後、インサイチュで連続的に遂行される。
【0094】
これに用いられる第3基板処理組成物は、第1基板処理組成物と同じ組成を有することができ、より好ましくは有機溶剤のみで構成される。例えば、第3基板処理組成物の有機溶剤は、PGMEおよびPGMEAの組合せからなり得る。この場合、有機溶剤内におけるPGMEおよびPGMEAの重量比は約3:7~5:5であり、より好ましくは約4:6であることができる。
【0095】
基板のエッジ部分に第3基板処理組成物を供給することで、第2基板処理ステップS34後に基板のエッジ部分に残っている第2基板処理組成物の残留物を基板から除去することができる。例えば、基板のエッジ部分の露出された表面とその周辺の工程設備の表面に残っている可能性がある第2基板処理組成物から由来した酸残留物などの反応性不純物を効果的に除去することができる。
【0096】
図2には図示していないが、第2基板処理ステップS34または第3基板処理ステップS36を行った後に、基板のエッジ部分に残留する第2基板処理組成物または第3基板処理組成物を除去するための乾燥ステップを行うことができる。
【0097】
図2の実施形態では、第1基板処理ステップS32によってエッジビードを主に除去し、第2基板処理ステップS34によってエッジビードが除去されて露出された基板表面などに残留する金属元素を除去し、選択的に第3基板処理ステップS36によって露出された基板表面に残留する第2基板処理組成物の酸残留物を洗浄処理することで説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0098】
例えば、変形例として、図2の基板処理方法において第1基板処理ステップを省略し、第2基板処理組成物によってエッジビードを主に除去し、第3基板処理ステップによってエッジビードが除去されて露出した基板表面を洗浄処理することも可能である。これによると、第1基板処理ステップを省略することができるので、基板処理方法がさらに簡単になり生産性を向上させることができる。
【0099】
以上説明したように、本発明の技術的思想に係る基板処理方法によれば、金属含有レジスト組成物を用いるリソグラフィ工程において金属含有レジスト組成物から由来する金属による基板汚染および設備汚染を抑制することで工程効率を高めることができ、半導体素子の電気的特定劣化を防止することができる。さらに、基板上に形成された下地膜への影響を低減でき、基板処理組成物の経時安定性(溶解度)を向上させることができる。
【0100】
以下、本発明の基板処理組成物を用いた基板処理実施例について説明するが、本発明はこれに限定されない。表1に表す各成分を混合して、各実施例の基板処理組成物を調製した。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例1~5、比較例1~4の各組成物を調製し、室温で約1時間撹拌した後、有機金属スズオキシヒドロキシドレジストが塗布されたウェハを1分間組成物に浸漬した。有機金属スズオキシヒドロキシドレジストが組成物により除去されたウエハの表面をVDP-IPC法により分析して、表面Snの含有量を測定した。表面Snの残留含有量が5.00E+10atoms/cm2以下の場合は、Oと表記し、表面Snの残留含有量が5.00E+10atoms/cm2超の場合は、Xと表2に表記した。
【0103】
実施例1~5、比較例1~4の各組成物を調製し、室温で約1時間撹拌した後、窒化膜とポリシリコン膜が蒸着されたウェハを5分間、調製した組成物に浸漬した。窒化膜とポリシリコン膜が堆積されたウェハを組成物に浸漬する前後の厚さの変化をEllipsometer分析を用いて測定した。窒化膜、ポリシリコン膜の厚さの変化が5Å以下の場合は、Oと表記し、窒化膜、ポリシリコン膜の厚さの変化が5Åを超える場合は、Xと表2に表記した。
【0104】
実施例1~5、比較例1~4の各組成物を調製し、室温で約1時間撹拌した後、目視で組成物の溶解度を観察した。組成物の下部に残留物が存在せず、上部に層分離なしに溶解が良い場合はOと表記し、残渣や浮遊物が生じ、溶解度が不良な場合はXと表2に表した。
【0105】
【表2】
【0106】
表2に表したように、本発明の一実施例に係る基板処理組成物は、金属(錫)除去性だけでなく、下地膜への影響および経時安定性(溶解度)の観点から比較例に比べて改善された効果を奏することができる。
【0107】
以上、本発明を好ましい実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想および範囲内で当分野で通常の知識を有する者により種々の変形および変更が可能である。
図1
図2