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特開2023-167011アルミニウム前駆体及びこれを用いた薄膜形成方法,アルミニウム前駆体の製造方法,及びメモリ素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167011
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】アルミニウム前駆体及びこれを用いた薄膜形成方法,アルミニウム前駆体の製造方法,及びメモリ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/06 20060101AFI20231115BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20231115BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20231115BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C07F5/06 Z
C23C16/455
C23C16/18
H01L21/316 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078213
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】10-2022-0057133
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0113688
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0006158
(32)【優先日】2023-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518176264
【氏名又は名称】イージーティーエム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ,キュ ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハ ナ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ドク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ジュ ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヒョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョン シク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョン イル
【テーマコード(参考)】
4H048
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4H048AA02
4H048VA80
4H048VB10
4K030AA11
4K030AA14
4K030AA16
4K030BA02
4K030BA38
4K030BA43
4K030BA50
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA03
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA10
4K030LA02
4K030LA15
5F058BA09
5F058BC03
5F058BF02
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】気化特性及び熱安全性に優れたアルミニウム前駆体及びこれを用いた薄膜形成方法,アルミニウム前駆体の製造方法,及びメモリ素子の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム前駆体の製造方法は,下記<化学式3>として表されるアルミニウム化合物1モル~3モルと,エチルメチルスルフィドやエチルプロピルエーテル等の化合物1モル~3モルとを混合する方法である。

,R及びRは互いに異なり,水素原子,炭素数1~6のアルキル基,炭素数1~6のジアルキルアミン,炭素数1~6のシクロアミン基又はハロゲン元素から選ばれる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記<化学式1>又は下記<化学式2>として表される化合物1モル~3モルと,下記<化学式3>として表される化合物1モル~3モルとを混合して形成する,アルミニウム前駆体の製造方法。
前記<化学式1>において,XはO又はSであり,R1又はR2はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
前記<化学式2>において,XはO又はSであり,n=1~5であり,R1~R4はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1~5のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
前記<化学式3>において,R1,R2及びR3は互いに異なり,それぞれ独立に水素原子,炭素数1~6のアルキル基,炭素数1~6のジアルキルアミン,炭素数1~6のシクロアミン基又はハロゲン元素 から選ばれる。
【請求項2】
前記アルミニウム前駆体は,エチルメチルスルフィドとトリメチルアルミニウムとを混合して形成される請求項1記載のアルミニウム前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記アルミニウム前駆体は,エチルプロピルエーテルとトリメチルアルミニウムとを混合して形成される請求項1記載のアルミニウム前駆体の製造方法。
【請求項4】
下記<化学式1>又は下記<化学式2>として表される化合物1モル~3モルと,下記<化学式3>として表される化合物1モル~3モルとを混合して形成するアルミニウム前駆体。
前記<化学式1>において,XはO又はSであり,R1又はR2はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
前記<化学式2>において,XはO又はSであり,n=1~5であり,R1~R4はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1~5のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
前記<化学式3>において,R1,R2及びR3は互いに異なり,それぞれ独立に水素原子,炭素数1~6のアルキル基,炭素数1~6のジアルキルアミン,炭素数1~6のシクロアミン基又はハロゲン元素から選ばれる。
【請求項5】
請求項4に記載のアルミニウム前駆体を基板が載置されたチャンバの内部に供給する前駆体供給段階;
前記チャンバーの内部をパージする段階;と
前記チャンバーの内部に反応物質を供給して前記前駆体と反応させて薄膜を形成する薄膜形成段階を含む薄膜形成方法。
【請求項6】
前記薄膜は,酸化アルミニウム,窒化アルミニウム,硫化アルミニウムのいずれかである請求項5記載の薄膜形成方法。
【請求項7】
前記薄膜形成方法は50~700℃で進行する請求項5記載の薄膜形成方法。
【請求項8】
請求項5記載の薄膜形成方法を含む揮発性メモリ素子の製造方法。
【請求項9】
請求項5記載の薄膜形成方法を含む不揮発性メモリ素子の製造方法。
【請求項10】
表面保護物質を用いた薄膜形成方法において,
金属前駆体を基板が配置されたチャンバーの内部に供給し,前記金属前駆体を基板に吸着する金属前駆体供給段階;
前記チャンバーの内部をパージする段階;と
前記チャンバーの内部に反応物質を供給して吸着された前記金属前駆体と反応して薄膜を形成する薄膜形成段階を含むが,
前記方法は,前記薄膜形成工程の前に,表面保護物質を供給して前記基板に吸着する表面保護物質供給段階;と
前記チャンバーの内部をパージする段階を含むが,
前記金属前駆体は,下記<化学式1>又は下記<化学式2>として表される化合物1モル~3モルと,下記<化学式3>として表される化合物1モル~3モルとを混合して形成する,アルミニウム前駆体。
前記<化学式1>において,XはO又はSであり,R1又はR2はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
前記<化学式2>において,XはO又はSであり,n=1~5であり,R1~R4はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1~5のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
前記<化学式3>において,R1,R2及びR3は互いに異なり,それぞれ独立に水素原子,炭素数1~6のアルキル基,炭素数1~6のジアルキルアミン,炭素数1~6のシクロアミン基又はハロゲン元素から選ばれる。
【請求項11】
前記金属前駆体は,エチルメチルスルフィド又はエチルプロピルエーテル又はテトラヒドロフランとトリメチルアルミニウムとを混合して形成される,請求項10記載の表面保護物質を用いた薄膜形成方法。
【請求項12】
前記表面保護物質は,下記<化学式4>として表される,請求項10記載の表面保護物質を用いた薄膜形成方法。
前記<化学式4>において,nはそれぞれ独立に0~6の整数であり,XはO又はSであり,R1~R3は独立して炭素数が1~6のアルキル基であり,R4は水素,炭素数が1~6のアルキル基,炭素数1~6のアルコキシ基,炭素数1~6のアルキルサイオ基から選択される。
【請求項13】
前記薄膜は,アルミニウム酸化物,アルミニウム窒化物,アルミニウム硫化物のいずれかである請求項10記載の表面保護物質を用いた薄膜形成方法。
【請求項14】
前記薄膜形成方法は,50~700℃で進行する請求項10記載の表面保護物質を用いた薄膜形成方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれかに記載の薄膜形成方法を含む揮発性メモリ素子の製造方法。
【請求項16】
請求項10~14のいずれかに記載の薄膜形成方法を含む不揮発性メモリ素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,アルミニウム前駆体及びこれを用いた薄膜形成方法,アルミニウム前駆体の製造方法,及びメモリ素子の製造方法に関するものであり,より詳細には安全性に優れ,薄膜の厚さ制御が容易であり,ステップカバレッジ特性に優れたアルミニウム前駆体,そして,これを用いた薄膜形成方法,アルミニウム前駆体の製造方法,及びメモリ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2次元のNAND Flashプロセスは,狭い面積内に集積度が高くなり,セルとセル間の干渉とリーク現象が深化する技術的限界を示した。これらの欠点を克服するために,セルを垂直に積層する3D NAND Flash技術が登場した。
【0003】
多層スタックを含む3D NAND Flashの利点は,セル間の干渉を大幅に減らして特性を向上させ,Stackを増やすことでデータ容量の拡大とコスト削減を実現できることである。これにより,従来のNANDメモリ素子と比較して,2倍以上の書き込み速度,10倍以上の耐久性,及び半分の消費電力がある。
【0004】
しかし,90段以上の超高積層では高さが増加するにつれて,側壁に均一な薄膜を確保することがより困難になり,最上段と最下段セルの特性差が生じるなどの限界が発生している。したがって,アスペクト比の大きい3次元構造上に優れた段差被覆性で均一な厚さの薄膜を形成できる製造方法に対する要求が高まっている。
【0005】
また,半導体素子製造においてアルミニウムを含む薄膜は非常に重要な役割を果たす。アルミニウムを含む薄膜には,アルミニウム膜,窒化アルミニウム膜,炭化窒化アルミニウム膜,酸化アルミニウム膜,酸化窒化アルミニウム膜などが含まれ,窒化アルミニウム膜及び酸化アルミニウム膜は,パッシベーション層,層間絶縁膜,キャパシタ誘電層などとして重要な役割を果たす。
【0006】
現在,アルミニウムを含む薄膜を堆積するための前駆体としてトリメチルアルミニウム(Trimethylaluminum,TMA)又はトリイソブチルアルミニウムが使用されているが,これらの物質は爆発的な可燃性があり,取り扱いにはかなりの注意が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は,気化特性及び熱安全性に優れたアルミニウム前駆体及びこれを用いた薄膜形成方法,アルミニウム前駆体の製造方法,及びメモリ素子の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は,ステップカバレッジが良好なアルミニウム前駆体及びこれを用いた薄膜形成方法,アルミニウム前駆体の製造方法,及びメモリ素子の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は,極めて均一な厚さの薄膜を形成し,厚さ調整を容易にすることができるアルミニウム前駆体及びこれを用いた薄膜形成方法,アルミニウム前駆体の製造方法,及びメモリ素子の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は,以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例によれば,アルミニウム前駆体の製造方法は,下記<化学式1>又は下記<化学式2>として表される化合物1モル~3モルと,下記<化学式3>として表される化合物1モル~3モルとを混合して形成される。
【0012】
【化1】
前記<化学式1>において,XはO又はSであり,R1又はR2はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0013】
【化2】
前記<化学式2>において,XはO又はSであり,n=1~5であり,R1~R4はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1~5のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0014】
【化3】
前記<化学式3>において,R1,R2及びR3は互いに異なり,それぞれ独立に水素原子,炭素数1~6のアルキル基,炭素数1~6のジアルキルアミン,炭素数1~6のシクロアミン基又はハロゲン元素から選ばれる。
【0015】
前記アルミニウム前駆体は,エチルメチルスルフィドとトリメチルアルミニウムとを混合して形成されることができる。
【0016】
前記アルミニウム前駆体は,エチルプロピルエーテルとトリメチルアルミニウムとを混合して形成されることができる。
【0017】
本発明の一実施例によれば,アルミニウム前駆体は,下記<化学式1>又は下記<化学式2>として表される化合物1モル~3モルと,下記<化学式3>として表される化合物1モル~3モルとを混合して形成される。
【0018】
【化4】
前記<化学式1>において,XはO又はSであり,R1又はR2はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0019】
【化5】
前記<化学式2>において,XはO又はSであり,n=1~5であり,R1~R4はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1~5のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0020】
【化6】
前記<化学式3>において,R1,R2及びR3は互いに異なり,それぞれ独立に水素原子,炭素数1~6のアルキル基,炭素数1~6のジアルキルアミン,炭素数1~6のシクロアミン基又はハロゲン元素から選ばれる。
【0021】
本発明の一実施例によれば,薄膜形成方法は,前記アルミニウム前駆体を基板が載置されたチャンバーの内部に供給する前駆体供給段階;前記チャンバーの内部をパージする段階;前記チャンバーの内部に反応物質を供給して前記前駆体と反応させて薄膜を形成する薄膜形成段階を含む。
【0022】
前記薄膜は,酸化アルミニウム,窒化アルミニウム,硫化アルミニウムのいずれかであることができる。
【0023】
本発明の一実施例によれば,表面保護物質を用いた薄膜形成方法は,金属前駆体を基板が配置されたチャンバーの内部に供給し,前記金属前駆体を基板に吸着する金属前駆体供給段階;前記チャンバーの内部をパージする段階;前記チャンバーの内部に反応物質を供給して吸着された前記金属前駆体と反応して薄膜を形成する薄膜形成段階を含むが,前記方法は,前記薄膜形成工程の前に,表面保護物質を供給して前記基板に吸着する表面保護物質供給段階;前記チャンバーの内部をパージする段階を含むが,前記金属前駆体は,下記<化学式1>又は下記<化学式2>として表される化合物1モル~3モルと,下記<化学式3>として表される化合物1モル~3モルとを混合して形成される。
【0024】
【化7】
前記<化学式1>において,XはO又はSであり,R1又はR2はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0025】
【化8】
前記<化学式2>において,XはO又はSであり,n=1~5であり,R1~R4はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1~5のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0026】
【化9】
前記<化学式3>において,R1,R2及びR3は互いに異なり,それぞれ独立に水素原子,炭素数1~6のアルキル基,炭素数1~6のジアルキルアミン,炭素数1~6のシクロアミン基又はハロゲン元素から選ばれる。
【0027】
前記金属前駆体は,エチルメチルスルフィド又はエチルプロピルエーテル又はテトラヒドロフランとトリメチルアルミニウムとを混合して形成されることができる。
【0028】
前記表面保護物質は,下記<化学式4>として表されることができる。
【0029】
【化10】
前記<化学式4>において,nはそれぞれ独立に0~6の整数であり,XはO又はSであり,R1~R3は独立して炭素数が1~6のアルキル基であり,R4は水素,炭素数が1~6のアルキル基,炭素数1~6のアルコキシ基,炭素数1~6のアルキルサイオ基から選択される。
【0030】
前記薄膜は,アルミニウム酸化物,アルミニウム窒化物,アルミニウム硫化物のいずれかであることができる。
【0031】
前記薄膜形成方法は,50~700℃で進行することができる。
【0032】
本発明の一実施例によれば,揮発性メモリ素子の製造方法は,前記薄膜形成方法を含むことができる。
【0033】
本発明の一実施例によれば,不揮発性メモリ素子の製造方法は,前記薄膜形成方法を含むことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一実施形態によれば,ステップカバレッジが良好な薄膜を形成することができる。
【0035】
表面保護物質は,工程進行中の金属前駆体と同様の挙動を有し,高アスペクト比構造において上部(又は入口側)に高密度に吸着され,下部(又は内部側)に低密度に吸着され,後続工程において金属前駆体が吸着するのを妨げる。したがって,金属前駆体は構造内に均一に吸着することができる。
【0036】
特に,優れた段差被覆性で超高積層構造でも最上段,最下段のセル特性差を低減しながら不純物のない純度の高い薄膜を形成することができ,素子の電気的特性及び信頼性を向上させることができる。
【0037】
また,アルミニウム前駆体が空気中の露出により自然発火する現象を防止することができ,熱安全性に優れ,安定した気相で基板表面まで伝達可能である。
【0038】
特に,表面保護物質とともに導入され,その効果を最大化することで,サイクル当たりの蒸着厚さを最小限に抑えて厚さ調節を容易にすることができ,蒸着された薄膜は優れた均一性及びステップカバレッジを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施例1による前駆体X1の1H-NMRグラフである。
図2】本発明の実施例2による前駆体X2の1H-NMRグラフである。
図3】本発明の実施例3による前駆体Y2の1H-NMRグラフである。
図4】実施例1~3に対する示差走査熱量分析(DSC)試験結果及び熱重量分析(TGA)試験結果を示すグラフである。
図5】実施例1~3に対する示差走査熱量分析(DSC)試験結果及び熱重量分析(TGA)試験結果を示すグラフである。
図6】実施例1~3に対する示差走査熱量分析(DSC)試験結果及び熱重量分析(TGA)試験結果を示すグラフである。
図7】実施例1~3に対する示差走査熱量分析(DSC)試験結果及び熱重量分析(TGA)試験結果を示すグラフである。
図8】実施例1~3に対する示差走査熱量分析(DSC)試験結果及び熱重量分析(TGA)試験結果を示すグラフである。
図9】実施例1~3に対する示差走査熱量分析(DSC)試験結果及び熱重量分析(TGA)試験結果を示すグラフである。
図10】実施例1~3に対する外気露出試験結果を示す写真である。
図11】実施例2及び3に対する外気露出後の重量変化を示すグラフである。
図12】TMAと本発明の実施例とを比較する模式図である。
図13】本発明の比較例1及び実施例2に係るアルミニウム酸化膜のGPC(周期当たりの成長率,Growth Per Cycle)を工程温度に沿って示したグラフである。
図14】本発明の実施形態による薄膜形成方法を概略的に示すフローチャートである。
図15】本発明の実施形態による供給周期を概略的に示すグラフである。
図16】実施例2及び4に対する外気露出後の重量変化を示すグラフである。
図17】比較例1-1に該当する前駆体TMAと表面保護物質TMOFを液相で混合した結果を示すグラフである。
図18】実施例2-1に該当する前駆体TMA-THFと表面保護物質TMOFを液相で混合した結果を示すグラフである。
図19】同じ堆積温度での前駆体のフィードイング時間の増加に伴うアルミニウム酸化物膜のGPC(サイクル当たりの成長率,Growth Per Cycle)を示す。
図20】同じ堆積温度での前駆体のフィードイング時間の増加に伴うアルミニウム酸化物膜のGPC(サイクル当たりの成長率,Growth Per Cycle)を示す。
図21】本発明の実施形態による酸化アルミニウム膜の表面を分析するためのXPS深度プロファイルを示すグラフである。
図22】本発明の実施形態によるアルミニウム酸化物膜をパターンウェハに蒸着してステップカバレッジを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下,本発明の好ましい実施例を添付した図1図22を参照してより詳細に説明する。本発明の実施例は様々な形態に変形されてもよく,本発明の範囲が以下で説明する実施例に限ると解釈されてはならない。本実施例は,該当発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明をより詳細に説明するために提供されるものである。よって,図面に示した各要素の形状はより明確な説明を強調するために誇張されている可能性がある。
【0041】
本発明の一実施例によれば,薄膜形成方法は,アルミニウム前駆体を基板が載置されたチャンバーの内部に供給する前駆体供給段階;前記チャンバーの内部をパージする段階;前記チャンバーの内部に反応物質を供給して前記前駆体と反応させて薄膜を形成する薄膜形成段階を含む。
【0042】
前記前駆体供給段階及び薄膜形成段階は,50~700℃で進行することができる。
【0043】
前記薄膜は,アルミニウム酸化物,アルミニウム窒化物,アルミニウム硫化物のいずれかであることができる。
【0044】
本発明の一実施例によれば,アルミニウム前駆体の製造方法は,下記<化学式1>又は下記<化学式2>として表される化合物1モル~3モルと,下記<化学式3>として表される化合物1モル~3モルとを混合して形成される。
【0045】
【化11】
前記<化学式1>において,XはO又はSであり,R1又はR2はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0046】
【化12】
前記<化学式2>において,XはO又はSであり,n=1~5であり,R1~R4はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1~5のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0047】
【化13】
前記<化学式3>において,R1,R2及びR3は互いに異なり,それぞれ独立に水素原子,炭素数1~6のアルキル基,炭素数1~6のジアルキルアミン,炭素数1~6のシクロアミン基又はハロゲン元素から選ばれる。
【0048】
前記アルミニウム前駆体は,エチルメチルスルフィドとトリメチルアルミニウムとを混合して形成されることができる。
【0049】
前記アルミニウム前駆体は,エチルプロピルエーテルとトリメチルアルミニウムとを混合して形成されることができる。
【0050】
- 実施例1
室温のグローブボックス内で500ml丸フラスコにエチルメチルスルフィド5.28g(0.069mol)を加え,トリメチルアルミニウム5g(0.069mol)を非常にゆっくり投入して前駆体X1を得た。
【0051】
図1は,本発明の実施例1による前駆体X1の1H-NMRグラフであり,実施例1/エチルメチルスルフィド/トリメチルアルミニウムのNMRスペクトルを示す。
【0052】
エチルメチルスルフィドに由来する化学移動δ=2.19ppm,1.76ppm,1.20ppmのピークは,前駆体X1形成後もピークの形状が変わらず,それぞれ1.92ppm,1.41ppm,0.69ppmに移動した。
【0053】
トリメチルアルミニウムに由来する化学的移動δ=-0.36ppmのピークも,前駆体X1形成後,形状が変わらず微細に移動して安定した前駆体を形成することが確認できる。 Ha(9H):Hb(3H)の積分比は,9:2.8程度でエチルメチルスルフィド1分子が前駆体を形成することが確認できる。
【0054】
実施例2:TMA-EMSの製造
室温のグローブボックス内で500ml丸フラスコにエチルメチルスルフィド10.56g(0.139mol)を加え,トリメチルアルミニウム5g(0.069mol)を非常にゆっくり投入して前駆体X2(TMA-EMS)を得た。
【0055】
図2は,本発明の実施例2による前駆体X2の1H-NMRグラフであり,実施例2/エチルメチルスルフィド/トリメチルアルミニウムのNMRスペクトルを示す。
【0056】
エチルメチルスルフィドに由来する化学移動δ=2.19ppm,1.76ppm,1.20ppmのピークは,前駆体X2形成後もピークの形状が変わらず,それぞれ2.05ppm,1.58ppm,0.85ppmに移動した。
【0057】
EMSに由来する化学的移動δ=2.19ppm,1.76ppm,1.20ppmのピークが前駆体形成後もピークの形状が変わらず,それぞれ2.05ppm,1.58ppm,0.85ppmに移動して安定な物質を形成したことを確認した。
【0058】
トリメチルアルミニウムに由来する化学移動δ=-0.36ppmのピークも,前駆体X2形成後,形状が変わらず微細に移動して安定した前駆体を形成することが確認できる。 Ha(9H):Hb(3H)の積分比は9:5.7程度でエチルメチルスルフィド2分子が前駆体を形成することが確認できる。
【0059】
- 実施例3
室温のグローブボックス内で500ml丸フラスコにエチルプロピルエーテル12.23g(0.139mol)を加え,トリメチルアルミニウム5g(0.069mol)を非常にゆっくり投入して前駆体Y2を得た。
【0060】
図3は,本発明の実施例3による前駆体Y2の 1 H-NMRグラフであり,実施例3/エチルプロピルエーテル/トリメチルアルミニウムのNMRスペクトルを示す。
【0061】
エチルプロピルエーテルに由来する化学移動δ=0.89ppm,1.12ppm,1.55ppmのピークは,前駆体Y2形成後もピークの形状が変わらず,それぞれ0.65ppm,0.89ppm,1.35ppmに移動した。
【0062】
トリメチルアルミニウムに由来する化学移動δ=-0.36ppmのピークも,前駆体Y2形成後,形状が変わらず微細に移動して安定した前駆体を形成することが確認できる。 Ha(9H):Hb(3H)の積分比は,9:5.7程度でエチルプロピルエーテル2分子が前駆体を形成することが確認できる。
【0063】
- 熱分析
図4図9は,実施例1~3に対する示差走査熱量分析(DSC)試験結果及び熱重量分析(TGA)試験結果を示すグラフである。実施例1~3で得られたX1,X2,Y2について示差走査熱量分析(DSC)試験及び熱重量分析(TGA)試験を実施し,各試験で熱分解温度を測定するための熱分析試験条件は以下の通りである。
移送ガス:アルゴン(Ar)ガス
移送ガス流量:200ml/min
加熱プロファイル:30℃から500℃まで10℃/分の昇温速度で加熱する
【0064】
DSC試験での熱分解温度は,DSC熱曲線(thermogram)で昇温時に熱流量が突然上昇する点の温度として決定した。
【0065】
下記[表1]を参照すると,X1とX2ともに気化特性に優れながら残留成分量が0.1%以下であることが確認され,薄膜に不純物を残さないことが分かる。また,分解温度は340℃以上で,TMA単独使用に比べ有機分子がTMA間のAl-Al interactionを効果的にブロッキングし,分解温度が高く熱安定性が改善された特性を示し,安定した気相で基板表面まで配信可能性を確認することができる。
【0066】
【表1】
【0067】
また,X2がX1対比分子量が大きくなったにもかかわらず気化特性がさらに改善されることから,有機物質2分子がTMA間のAl-Al interactionを効果的にブロッキング(blocking)することが見られ,安定性の点でX2を活用することがより適していると言える。
【0068】
また,Y2も2分子ブロッキング効果でALD前駆体として使用するだけの気化特性を有することが確認され,分解温度は344℃以上であり,TMA単独使用に比べ分解温度が高く,熱安定性が改善された特性を示し,安定した気相で基板表面まで伝達可能であることを確認することができる。
【0069】
- 外気露出テスト
図10は,実施例1~3に対する外気露出試験結果を示す写真である。実施例1~3で得られたX1,X2,Y2同量を常温/常圧に暴露した。X1の場合はピペット状態にさらされるとすぐに発火したが,X2/Y2の場合は微小ヒュームのみ発生し,発火しなかった。大気中で引火性が極めて減少し,空気中でも発火しないことが確認できる。X1対比X2/Y2の自然発火が抑制されるのは,Alの空のP軌道(empty P orbital)を2分子が完全にブロッキング(blocking)することで,非常に安定した物質を形成した効果とみられる。
【0070】
図11は,実施例2及び3に対する外気露出後の重量変化を示すグラフである。X2/Y2同量を外気露出した結果,Y2の場合は急速に重量が減少し,5時間経過時に全部固化し,これ以上重量変化は発生しなかったが,X2の場合は比較的重量減少速度が遅く,7時間経過後から全部固化し,もはや重量変化は起こらなかった。
【0071】
どちらの場合も酸化反応は起こるが,それによる発火は発生せず,取り扱い時の安定性が非常に増加し,事故リスクを大幅に減少させることができる。
【0072】
図10及び図11の外気露出試験は,表面で前駆体が吸着する化学反応と類似していると考えられる。外気暴露の際,前駆体は大気中のH2Oと反応してAl-C結合が切断され,Al-O結合に置き換えられる化学反応を経ることになり,これは酸化膜の-OH*終結表面と前駆体が出会い,リガンドが落ちて吸着する反応と非常に似ているからだ。
【0073】
図10及び図11の結果から実施例のX2,Y2前駆体はいずれもAlのempty P orbitalが有機物質で完全にブロッキング(blocking)され,外気暴露時にも酸化反応が非常にゆっくり起こり反応性が非常に減少したことを確認することができる。図12の模式図で完全にブロックされた前駆体の低い反応性を確認することができる。
【0074】
さらに,X2前駆体の直径は約6.6Å程度で,TMA直径である4.1Åと比較して大きさが非常に増加する。これは,X2前駆体のAl中心と表面-OH*の接近性をさらに減少させるだけでなく,表面上にいくつかの吸着前駆体が存在する場合,立体障害がより大きく作用するので,サイクル当たりの堆積厚さを減少させる。図13のX2前駆体を活用した蒸着結果を通じて確認することができる。
【0075】
これと同様に,X2,Y2前駆体は,表面の-OH*終結グループとの反応性が減少し,これによる固着係数(Sticking Coefficient)の減少,表面での拡散増加で均一な膜を形成することができ,最終的に均一性(uniformity)及びステップカバレッジを向上させることができる。
【0076】
- 比較例1:TMA蒸着結果
シリコン基板上にアルミニウム酸化膜を形成した。ALD工程によりアルミニウム酸化膜を形成し,ALD工程温度は250~400℃,反応物質はO3ガスを用いた。
【0077】
ALD工程によるアルミニウム酸化膜形成工程は以下の通りであり,以下の工程を1サイクルとして進行した。
1)Arをキャリアガスとし,常温でアルミニウム前駆体TMA(Trimethylaluminium)を反応室に供給し,基板にアルミニウム前駆体を吸着
2)反応室内にArガスを供給して未吸着アルミニウム前駆体又は副生成物を除去する
3)O3ガスを反応室に供給してモノレイヤーを形成する
4)反応室内にArガスを供給して未反応物質又は副生成物を除去する
【0078】
上記のような過程により得られたアルミニウム酸化膜の厚さを測定した結果,ALD工程の1サイクル毎に得られたアルミニウム酸化膜の厚さは250~400℃で約0.9Å/サイクルであった。
【0079】
図13は,本発明の比較例1及び実施例2に係るアルミニウム酸化膜のGPC(周期当たりの成長率,Growth Per Cycle)を工程温度に沿って示したグラフである。図13に示すように,基板の温度250~400℃の範囲内で基板の温度上昇に伴うGPC変化がほとんどない理想的なALD挙動を示した。DRAMのZrO2/Al23/ZrO2複合誘電膜において誘電膜全厚を50Å,比較例1のAl23を3サイクル程度使用すると仮定すると,誘電膜のEOT=5.93Åである。
【0080】
実施例2:TMA-EMSの蒸着結果
本発明の実施例2に係る前駆体X2を用いてシリコン基板上にアルミニウム酸化膜を形成した。前駆体を変更したことを除いて,比較例1と同様の方法でアルミニウム酸化膜を形成した。
【0081】
上記の手順で得られたアルミニウム酸化物膜の厚さを測定した結果,ALD工程の1サイクル毎に得られたアルミニウム酸化物膜の厚さは250~400℃で約0.7Å/サイクルであった。
【0082】
また,図13に示すように,基板の温度250~400℃の範囲内で基板の温度上昇に伴うGPC変化がほとんどない理想的なALD挙動を示し,比較例1に比べ約20%の減少効果を示している。DRAMのZrO2/Al23/ZrO2複合誘電膜において誘電膜全厚を50Å,比較例1のAlを3サイクル程度使用すると仮定すると,誘電膜のEOT=5.72Åであり,比較例1に比べ約4%のスカリングダウンを実現できる。
【0083】
一方,従来の前駆体単独工程では,高アスペクト比構造で上部(又は入口側)は薄膜が厚くなり,下部(又は内部側)は薄膜が薄くなるなど薄膜が均一でなく,ステップカバレッジが不良な問題がある。
【0084】
しかしながら,以下で説明する表面保護物質は金属前駆体と同様に挙動し,構造物の下部より上部に高密度に吸着した状態で後続工程である金属前駆体が吸着するのを妨げることにより構造物内に均一な厚さの薄膜を形成できるようにする。
【0085】
図14は,本発明の実施形態による薄膜形成方法を概略的に示すフローチャートであり,図15は,本発明の実施形態による供給周期を概略的に示すグラフである。基板はプロセスチャンバーの内部にロードされ,以下のALDプロセス条件は調整される。ALDプロセス条件は,基板又はプロセスチャンバーの温度,チャンバー圧力,ガス流量を含むことができ,温度は50~700℃である。
【0086】
基板はチャンバーの内部に供給された表面保護物質にさらされ,表面保護物質は基板の表面に吸着される。表面保護物質は,プロセスの進行中に金属前駆体と同様の挙動を有し,高アスペクト比構造で上部(又は入口側)に高密度に吸着され,下部(又は内側)に低密度で吸着され,その後のプロセスで金属前駆体が吸着するのを妨げる。
【0087】
具体的には,金属前駆体は,下記<化学式1>又は下記<化学式2>として表される化合物1モル~3モルと,下記<化学式3>として表される化合物1モル~3モルとを混合して形成される。
【0088】
【化14】
前記<化学式1>において,XはO又はSであり,R1又はR2はそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0089】
【化15】
前記<化学式2>において,XはO又はSであり,n=1~5であり,R1~R4はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1~5のアルキル基,炭素数3~6のシクロアルキル基,炭素数6~12のアリール基から選択される。
【0090】
【化16】
前記<化学式3>において,R1,R2及びR3は互いに異なり,それぞれ独立に水素原子,炭素数1~6のアルキル基,炭素数1~6のジアルキルアミン,炭素数1~6のシクロアミン基又はハロゲン元素 から選ばれる。
【0091】
また,前記金属前駆体は,エチルメチルスルフィド又はエチルプロピルエーテル又はテトラヒドロフランとトリメチルアルミニウムとを混合して形成されることができる。
【0092】
また,前記表面保護物質は,下記<化学式4>として表されることができる。
【0093】
【化17】
前記<化学式4>において,nはそれぞれ独立に0~6の整数であり,XはO又はSであり,R1~R3は独立して炭素数が1~6のアルキル基であり,R4は水素,
炭素数が1~6のアルキル基,炭素数1~6のアルコキシ基,炭素数1~6のアルキルサイオ基から選択される。
【0094】
その後,チャンバーの内部にパージガス(例えば,Arなどの不活性ガス)を供給して,未吸着表面保護物質又は副生成物を除去又は浄化する。
【0095】
その後,基板はチャンバーの内部に供給された金属前駆体に露出され,基板の表面に金属前駆体が吸着される。このとき,前駆体供給工程は50~700℃で進行する。
【0096】
例えば,説明すると,前述の表面保護物質は構造の上部から下部よりも密に吸着され,金属前駆体は表面保護物質が吸着された位置に吸着することができない。すなわち,従来の金属前駆体は,構造物の上部から下部よりも密に吸着されて高い密度を示したが,本実施例のように,表面保護物質が構造物の上部で密に吸着して金属前駆体の吸着を妨げるため,金属前駆体は構造物の上部に過吸着することなく構造物の上部/下部に均一に吸着することができ,後述する薄膜のステップカバレッジを改善することができる。
【0097】
その後,チャンバーの内部にパージガス(例えば,Arなどの不活性ガス)を供給して,未吸着金属前駆体又は副生成物を除去又は浄化する。
【0098】
その後,基板をチャンバーの内部に供給された反応材料に露出させ,基板の表面に薄膜を形成する。反応物質は金属前駆体層と反応して薄膜を形成し,反応物質はO3,O2,H2Oガスであり,反応物質を介して金属酸化物膜を形成することができる。このとき,反応物質は吸着された表面保護物質を酸化させ,基板の表面から分離して除去する。薄膜形成工程は50~700℃で進行し,薄膜はアルミニウム酸化物,アルミニウム窒化物,アルミニウム硫化物のいずれでもよい。
【0099】
その後,チャンバーの内部にパージガス(例えば,Arなどの不活性ガス)を供給して,未吸着表面保護物質/未反応材料又は副生成物を除去又は浄化する。
【0100】
一方,表面保護物質は金属前駆体よりも先に供給されると説明したが,これとは対照的に,表面保護物質は金属前駆体の後に供給されてもよいし,金属前駆体の前後に供給されてもよい。
【0101】
比較例1-1:TMAと表面保護物質TMOFを用いた蒸着結果
表面保護物質として,上記<化学式4>のTMOF(Trimethyl orthoformate)を用いてシリコン基板上にアルミニウム酸化膜を形成した。表面保護物質を用いることを除いて,比較例1と同様の方法でアルミニウム酸化膜を形成した。
【0102】
ALD工程によるアルミニウム酸化膜形成工程は以下の通りであり,以下の工程を1サイクルとして進行した。
1)反応チャンバー内に表面保護物質を供給して基板に吸着
2)反応チャンバー内にArガスを供給して未吸着表面保護物質又は副産物を除去
3)Arをキャリアガスとし,常温でアルミニウム前駆体を反応チャンバーに供給し,基板にアルミニウム前駆体を吸着
4)反応チャンバー内にArガスを供給して未吸着アルミニウム前駆体又は副生成物を除去する
5)O3ガスを反応チャンバーに供給してモノレイヤーを形成
6)反応チャンバー内にArガスを供給して未反応物質又は副生成物を除去する
【0103】
実施例2-1:TMA-EMSと表面保護物質TMOFを用いた蒸着結果
表面保護物質として,上記<化学式4>のTMOF(Trimethyl orthoformate)を用いてシリコン基板上にアルミニウム酸化膜を形成した。 前駆体を変更することを除いて,比較例1-1と同様の方法でアルミニウム酸化膜を形成した。
【0104】
実施例4:TMA-THFの製造及び蒸着結果
本発明の<化学式2>によるTHF(テトラヒドロフラン)とTMAとを混合してAl前駆体を形成した。室温のグローブボックス内で500ml丸フラスコにテトラヒドロフラン10g(0.139mol)を加え,トリメチルアルミニウム10g(0.139mol)を非常にゆっくり投入して前駆体TMA-THFを得た。
【0105】
EMSに由来する化学的移動δ=3.57ppm,1.42ppmのピークが前駆体形成後もピークの形状が変わらず,それぞれ3.35ppm,0.96ppmに移動して安定な物質を形成したことを確認した。
【0106】
製造したTMA-THFを用いてシリコン基板上にアルミニウム酸化膜を形成した。前駆体を変更したことを除いて,比較例1と同様の方法でアルミニウム酸化膜を形成した。
【0107】
実施例4-1:TMA-THFと表面保護物質TMOFを用いた蒸着結果
表面保護物質として,上記<式4>のTMOF(トリメチルオルトフォーム)をそれぞれ用いてシリコン基板上にアルミニウム酸化膜を形成した。前駆体を変更することを除いて,比較例1-1と同様の方法でアルミニウム酸化膜を形成した。
【0108】
- 外気露出テスト
実施例2及び4に対する外気露出後の重量変化を示すグラフである。両前駆体とも大気中で引火性が極めて減少し,空気中でも発火することなく液体状態で存在することを確認した。自然発火が抑制されるのは,Alのempty P orbitalを有機分子が完全にブロッキング(blocking)することにより,非常に安定な物質を形成した効果とみなすことができる。
【0109】
どちらの前駆体も,重量減少が非常に遅く,酸化反応速度が遅いことを確認することができる。外気露出試験は,表面で前駆体が吸着する化学反応と類似していると考えられる。外気暴露の際,前駆体は大気中のH2Oと反応してAl-C結合が切断され,Al-O結合に置き換えられる化学反応を経ることになり,これは酸化膜の-OH*終結表面と前駆体が出会い,リガンドが落ちて吸着する反応と非常に似ているからだ。したがって,大気中のAl前駆体の反応性の低下が表面反応においても同様に起こることを推測することができる。
【0110】
図17は,比較例1-1に該当する前駆体TMAと表面保護物質TMOFを液相で混合した結果を示すグラフである。表面で表面保護物質との反応を模倣するために,比較例1-1に該当する前駆体と表面保護物質とを液状に混合した。
【0111】
Trimethyl Aluminium 1当量をTMOF(Trimethyl orthoformate) 6当量にゆっくり加えた後,十分に撹拌する。混合溶液を1 H NMR(C6D6)分析によりピークアサインした。
TMOF,HC(OCH3)2:δ4.82(s),3.12(s)
(CH3)2Al(OCH3):δ3.05(s),-0.57(s)
CH3CH(OCH3)2:δ4.42(m),3.10(s),1.17(d)
【0112】
TMOF(Trimethyl orthoformate)過剰添加により,反応しなかった表面保護物質に起因するδ4.82,3.12が確認され,前駆体と表面保護物質のLigand置換反応で形成された生成物Peakが確認された。反応前のTrimethyl Aluminiumに起因するδ-0.36は全て消失し,完全に反応したことを確認した。
【0113】
図18は,実施例4-1に該当する前駆体TMA-THFと表面保護物質TMOFを液相で混合した結果を示すグラフである。実施例4-1に該当する前駆体と表面保護物質を液相に混合した。
【0114】
TMA-THF1当量をTMOF(Trimethyl orthoformate)1当量にゆっくり加え,十分に撹拌する。混合溶液を1H NMR(C6D6)分析によりピークアサインした。
TMOF,HC(OCH3)2:δ4.82(s),3.12(s)
TMA-THF:δ3.43(m),δ1.16(m),-0.39(s)
(CH3)2Al(OCH3):δ3.05(s),-0.57(s)
CH3CH(OCH3)2:δ4.42(m),3.10(s),1.17(d)
【0115】
前駆体と表面保護物質とのLigand置換反応で形成された生成物Peakが前の結果と同様に確認された。しかし,Trimethyl Aluminium前駆体がすべて反応して消えたものとは異なって反応しなかったTMA-THFとTrimethyl orthoformate peakを確認した。また,TMA-THFと表面保護物質との反応性が非常に低くなったと解釈でき,蒸着時の表面反応でも固着係数(Sticking Coefficient)の減少,表面での拡散の増加につながり,既存の前駆体に対するステップカバレッジ(step coverage)が改善することができると予想することができる。
【0116】
下記[表2]は,本発明の比較例と実施例2及び4によるアルミニウム酸化膜のGPC(周期当たりの成長率,Growth Per Cycle)を示す。
【0117】
【表2】
【0118】
表面保護物質を用いなかったAl前駆体のGPCを比較すると,TMA単独使用に比べて実施例2及び4のGPCがそれぞれ26%,23%減少したことが確認できる。これは,Al Blocking効果による前駆体の反応性の低下,TMAに対するSizeの増加によるAl centerと表面-OH*のアクセシビリティの減少と解釈できる。
【0119】
このような表面-OH*終端グループとの反応性の減少は,固着係数(Sticking Coefficient)の減少,表面での拡散の増加につながり,均一な膜を形成することができ,最終的に均一性(uniformity)及びステップカバレッジ(step coverage)を改善することができる。
【0120】
表面保護物質を用いたAl前駆体のGPC減少はさらに最大化されることが確認できる。比較例1-1で表面保護物質のみ適用した減少率は30%であるのに対し,実施例4-1で本特許のTMA-THF前駆体と表面保護物質の両方を適用すると70%の高い減少率で大きく増加することが確認できる。
【0121】
DRAMのZrO2/Al23/ZrO2複合誘電膜において誘電膜全厚を50Å,実施例2-1のAl23を3サイクル程度使用すると仮定すると,誘電膜のEOT=5.21Åであり,比較例1のTMA単独使用比約12%のスカリングダウンを実現できる。
【0122】
図19及び図20は,同じ堆積温度での前駆体のフィードイング時間の増加に伴うアルミニウム酸化物膜のGPC(サイクル当たりの成長率,Growth Per Cycle)を示す。
【0123】
図19の比較例で表面保護物質を適用したGPCは,前駆体Feeding timeが増加するにつれて連続的に増加し,Saturation特性が良くなくControlが容易ではない。一方,図20の実施例で表面保護物質を適用したGPCは,既存の前駆体単独プロセスと比較してGPCが非常に低く,前駆体フィーディング時間の増加にもGPC変化が非常に少なく,Saturation特性を示し,ALD工程として適している。
【0124】
図21は,本発明の実施形態による酸化アルミニウム膜の表面を分析するためのXPS深度プロファイルを示すグラフである。薄膜中のカーボン濃度は0%で不純物のない薄膜を形成した。
【0125】
図22は,本発明の実施形態によるアルミニウム酸化物膜をパターンウェハに蒸着してステップカバレッジを確認した結果である。全ての実施例において,ステップカバレッジ100%で優れた特性を示すことを確認した。
【0126】
結論として,本発明のAl前駆体と表面保護物質を適用して高いGPC低減効果を得ることができ,これにより精密な厚さ制御及び優れたステップカバーを得ることができるだけでなく,素子の電気的特性及び信頼性を向上させることができる。また,既存のALD工程により得られる1つのモノレイヤー厚より薄く不純物なしで純度の高い薄膜を形成することができる。
【0127】
これまで本発明を実施例を介して詳細に説明したが,これとは異なる形態の実施例も可能である。よって,以下に記載する請求項の技術的思想と範囲は実施例に限らない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22