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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167034
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】空気紫外線殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20231116BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20231116BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20231116BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
F24F8/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077857
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】591023985
【氏名又は名称】千代田工販株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505391023
【氏名又は名称】株式会社 大建設計
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】出口憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】掛江純司
(72)【発明者】
【氏名】小村貴史
(72)【発明者】
【氏名】松林寛樹
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA19
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK13
4C058KK22
4C058KK33
4C058KK42
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH17
4C180JJ01
(57)【要約】
【課題】利便性の高い空気紫外線殺菌装置を提供する。
【解決手段】気体が流入可能な第1開口部(開口部12a)、及び、当該気体が流出可能な第2開口部(前面11)が形成され、当該気体の流路となるリアクタ1と、リアクタ1の内部に配置される紫外線ランプ3とを備え、紫外線ランプ3の少なくとも第1開口部12a側の端部を軸方向に被覆するカバー35を設けることにより、利便性の高い空気紫外線殺菌装置を提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が流入可能な第1開口部、及び、当該気体が流出可能な第2開口部が形成され、当該気体の流路となるリアクタと、
前記第1開口部の内周面を前記リアクタの内部に延伸させた仮想面の内側に配置される紫外線ランプとを備え、
前記紫外線ランプの前記第1開口部側の端部である一端を軸方向に被覆するカバーを設ける
ことを特徴とする空気紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記紫外線ランプの他端を軸方向に被覆するカバーを設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の空気紫外線殺菌装置。
【請求項3】
前記紫外線ランプは、その軸心が前記第1開口部の軸心と同一直線上となるようにして、前記リアクタの内部に設けられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気紫外線殺菌装置。
【請求項4】
気体が流入可能な第1開口部、及び、当該気体が流出可能な第2開口部が形成され、当該気体の流路となるリアクタと、
前記第1開口部の内周面を前記リアクタの内部に延伸させた仮想面の外側に配置される紫外線ランプとを備える
ことを特徴とする空気紫外線殺菌装置。
【請求項5】
前記紫外線ランプは、その管面が前記仮想面から10mm以上外側に離隔するようにして、前記リアクタの内部に設けられる
ことを特徴とする請求項4に記載の空気紫外線殺菌装置。
【請求項6】
前記紫外線ランプが前記仮想面から離隔する方向は、前記リアクタの各壁面のうち前記仮想面との距離が最も短い壁面以外の方向である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の空気紫外線殺菌装置。
【請求項7】
前記リアクタの内部には、前記紫外線ランプから照射される紫外線が、前記第2開口部側から前記リアクタの外部に漏れないように遮光する遮光板が設けられる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の空気紫外線殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線による細菌やウイルス等の危害対象微生物の不活性化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には紫外線ランプにより危害対象微生物を不活性化する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-32620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された装置では、構造が複雑であるため製造やメンテナンスに手間がかかり不便である。本発明では利便性の高い空気紫外線殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点における空気紫外線殺菌装置は、
気体が流入可能な第1開口部、及び、当該気体が流出可能な第2開口部が形成され、当該気体の流路となるリアクタと、
前記第1開口部の内周面を前記リアクタの内部に延伸させた仮想面の内側に配置される紫外線ランプとを備え、
前記紫外線ランプの前記第1開口部側の端部である一端を軸方向に被覆するカバーを設ける
ことを特徴とする。
【0006】
より好適には、
前記紫外線ランプの他端を軸方向に被覆するカバーを設ける
ことを特徴とする。
【0007】
より好適には、
前記紫外線ランプは、その軸心が前記第1開口部の軸心と同一直線上となるようにして、前記リアクタの内部に設けられる
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点における空気紫外線殺菌装置は、
気体が流入可能な第1開口部、及び、当該気体が流出可能な第2開口部が形成され、当該気体の流路となるリアクタと、
前記第1開口部の内周面を前記リアクタの内部に延伸させた仮想面の外側に配置される紫外線ランプとを備える
ことを特徴とする。
【0009】
より好適には、
前記紫外線ランプは、その管面が前記仮想面から10mm以上外側に離隔するようにして、前記リアクタの内部に設けられる
ことを特徴とする。
【0010】
より好適には、
前記紫外線ランプが前記仮想面から離隔する方向は、前記リアクタの各壁面のうち前記仮想面との距離が最も短い壁面以外の方向である
ことを特徴とする。
【0011】
より好適には、
前記リアクタの内部には、前記紫外線ランプから照射される紫外線が、前記第2開口部側から前記リアクタの外部に漏れないように遮光する遮光板が設けられる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る空気紫外線殺菌装置によれば、紫外線殺菌装置に送風された空気中に存在する危害対象微生物を、高効率かつ安定的に不活化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係る空気紫外線殺菌装置(電源装置を除く)の概略的上面図である。
図2図1のA-A矢視図である。
図3図1のB-B矢視図である。
図4図1のC-C矢視図である。
図5】本発明の実施例1に係る空気紫外線殺菌装置の全体概略図である。
図6】本発明の実施例1における紫外線ランプ及び支持部材を表わす概略図である。
図7図6のD-D矢視図である。
図8】本発明の実施例1に係る空気紫外線殺菌装置の概略的上面図(遮光板配置の変形例)である。
図9】本発明の実施例1に係る空気紫外線殺菌装置の概略的上面図(紫外線ランプ配置の変形例)である。
図10】本発明の実施例2における紫外線ランプの口金付近の概略的拡大図である。
図11】本発明の実施例3に係る空気紫外線殺菌装置(電源装置を除く)の概略的上面図である。
図12図11のE-E矢視図である。
図13】本発明の実施例4における紫外線ランプの配置を説明する概略図である。
図14】本発明の実施例5における紫外線ランプの配置(仮想面内側)を説明する概略図である。
図15】本発明の実施例5における紫外線ランプの配置(仮想面外側)を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、気相中の危害対象微生物の不活性化の実現を目的とするものである。不活性化の対象となる危害対象微生物は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)等である。以下、本発明に係る空気紫外線殺菌装置について、実施例にて図面を用いて説明する。
【0015】
[実施例1]
図1~6は、本実施例に係る空気紫外線殺菌装置の概略図である。本実施例に係る空気紫外線殺菌装置は、主たる構成として、リアクタ1、入口管2、紫外線ランプ3、及び、電源装置4を備えている。
【0016】
リアクタ1は、前面11(第2開口部)が開口した箱状部材であり、それぞれ紫外線ランプ3から照射される紫外線が通過不可の材質からなる、主に側板12,13、後板14、天板17、底板18を備えている。
【0017】
一方の側板12の一部には円状の開口部12a(第1開口部)が形成されており、この開口部12aには入口管2が接続されている。また他方の側板13の一部には矩形の開口部13a(第3開口部)が形成されており、この開口部13aには、紫外線ランプ3から照射される紫外線が通過不可の材質からなるドア13bが設けられている。開口部13aは開口部12aよりも大きく、作業者が入ることができる程度の大きさであるものとする。
【0018】
本実施例に係る空気紫外線殺菌装置を使用する場合には、ドア13bを閉状態として使用してリアクタ1の内部の流路を確保し、一方、本実施例に係る空気紫外線殺菌装置のメンテナンス(例えば後述する紫外線ランプ3の点検や交換)を行う場合には、必要に応じてドア13bを開状態にすることで、リアクタ1の内部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0019】
また、開口した前面11の開口端面11aにはフランジ形状のパッキン11bが形成されている。パッキン11bには複数の螺子孔が形成されており、螺子を用いて外部に接続される。
【0020】
また、リアクタ1の内部には、リアクタ1の後板14に平行して2枚の遮光板15,16が設けられている。この遮光板15,16はそれぞれ、紫外線ランプ3から照射される紫外線が通過不可の材質からなる矩形状の板である。
【0021】
第1遮光板15は、リアクタ1における天板17の内面17a、側板12の内面12b、及び、側板13の内面13cにそれぞれ固定され、底板18とは離隔している。一方、第2遮光板16は、第1遮光板15の前方(前面11側)において、リアクタ1における底板18の上面18e、側板12の内面12a、及び、側板13の内面13cにそれぞれ固定され、天板17とは離隔している。
【0022】
また、リアクタ1の高さ方向において第1遮光板15と第2遮光板16とは一部が重複している。これにより、紫外線ランプ3が点灯している状態において、前面11側からその紫外線が外部に直接漏れることを防ぐことができる。
【0023】
入口管2は一端21が開口部12aに接続する中空円筒状部材(所謂丸ダクト)であり、他端22にはフランジ形状のパッキン23が形成されており、パッキン23には複数の螺子孔が形成されており、螺子を用いて外部に接続される。
【0024】
このような構造であることでリアクタ1は空気(気体)の流路となる。すなわち、図示しないファンを設けることにより気体が入口管2の他端22側からリアクタ1の内部に流入し、この気体はリアクタ1の内部において後方から前方に向けて、2枚の遮光板15,16をくぐり抜けるように上下に蛇行しながら、開口した前面11側から流出する。
【0025】
紫外線ランプ3は、リアクタ1の内部に設けられ、紫外線を照射可能な直線状のランプである。この紫外線ランプ3は中圧ランプ(MP)であるものとする。紫外線ランプ3による紫外線の照射により、リアクタ1の内部を通る気体中の危害対象微生物を不活性化することができる。
【0026】
中圧ランプの特性は下記のとおりである。
波長:不活性化に有効な波長範囲を含む多波長
点灯時の水銀蒸発気圧:40kPa~4MPa程度
ランプ表面温度:600~900℃
単位長さ当たりのランプ電力:50~250W/cm
不活性化に有効な紫外線出力:5~30W/cm
電力から不活性化に有効な光への変換効率:10~20%
発光長:5~120cm
寿命4000~8800時間
【0027】
図6,7に示すように、紫外線ランプ3は、内部に水銀が封入された石英ガラス製の管部30、管部30の両端に設けられた口金31,32、及び、管部30の内部において口金31,32にそれぞれ設けられた電極33,34を備えている。
【0028】
直線状の紫外線ランプ3は、リアクタ1の内部に配置される、特に、紫外線ランプ3の軸心が、入口管2及び開口部12aの軸心AXと同一直線上となるようにして配置される。これにより、最も効率よく危害対象微生物が不活性化される。図1~4に示すように、本実施例においてはこれにしたがって紫外線ランプ3を配置している。
【0029】
ただし、入口管2の直径は、30A~2000A、好ましくは75A~500Aであるものとする(ここでの単位Aとは管の外径(mm)を示すものである)。
【0030】
また図4に示すように、紫外線ランプ3の口金32にはケーブル5の一端51が電気的に接続されている。このケーブル5の他端52は、紫外線ランプ3に電力を供給する電源装置4に電気的に接続されている。
【0031】
リアクタ1の底板18の一部には貫通孔18aが形成されており、この貫通孔18aには中空筒状部材19が接続している。ケーブル5は、この貫通孔18a及び中空筒状部材19を通るようにして、紫外線ランプ3と電源装置4とを電気的に接続している。
【0032】
リアクタ1の底板18の下面18bには、リアクタ1の幅方向に延伸する脚部18c,18dが固定されている。2つの脚部18c,18dは互いにリアクタ1の前後方向に離隔して配置されている。
【0033】
図6,7に示すように紫外線ランプ3は、支持部材6によって口金31,32が把持されることで、上述した位置となるようにして支持されている。支持部材6は、ボトムフレーム61及びスタンド62を備えている。
【0034】
ボトムフレーム61は、リアクタ1の内部において底板18の上面18eに固定されており、リアクタ1の幅方向に延伸している。
【0035】
スタンド62はコの字型であって、その底部62aがボトムフレーム61に対しねじ止めにより固定されることが可能なものである。スタンド62の両端62b,62cは互いにリアクタ1の幅方向に離隔しており、その離隔距離は紫外線ランプ3の口金31,32の離隔距離に対応している。
【0036】
コの字型のスタンド62の両端(上端)62b,62cにはそれぞれ、紫外線ランプ3の口金31,32を把持可能なU字型の把持部62d,62eが設けられている。口金31,32は、把持部62d,62eに対し取り外し可能に把持される。
【0037】
把持部62d,62eについて詳述する。把持部62d,62eの上端面には、それぞれ螺子孔が複数形成されており、それぞれ板状部材62f,62gをねじ止めすることができるようになっている。これによって、開口している把持部62d,62eの上方をそれぞれ板状部材62f,62gにより覆うことができる。
【0038】
そして、把持部62d,62eに紫外線ランプ3の口金31,32を把持させた状態において、その上方側から板状部材62f,62gを取り付けることで、より確実に紫外線ランプ3を固定することができる。
【0039】
紫外線ランプ3の点検時や交換時には、把持部62d,62eからそれぞれ板状部材62f,62gを取り外した後、口金31,32を取り外すことで、支持部材6から紫外線ランプ3を取り出すことができる。
【0040】
電源装置4は、その内部に収納されている電子安定器によって、紫外線ランプ3に供給される電流、電圧を自動制御して紫外線ランプ3の点灯状態を安定化させるとともに、紫外線ランプ3の状態監視を行う。また、電源装置4は、ブレーカー及び操作切替スイッチが設けられている。これらは電子安定器を外部制御するためのものであり、これにより電子安定器自体のON/OFFや、紫外線ランプ3の点灯/消灯等の運転制御を行うことができる。
【0041】
ただし、電源装置4の操作切替スイッチを操作することで、外部の上位盤(図示略)によって(電源装置4を介して)紫外線ランプ3への電力供給の有無を切り替えるようにしてもよい。
【0042】
以上が、本実施例に係る空気紫外線殺菌装置の構成についての説明である。以下では、本実施例に係る空気紫外線殺菌装置を用いた一連の流れについて説明する。
【0043】
まず、電源装置4の制御により紫外線ランプ3を点灯状態とする。次に、図示しないファンを作動させることで、空気が入口管2の他端22側からリアクタ1の内部に流入する。
【0044】
リアクタ1の内部に流入した気体中の危害対象微生物は、紫外線ランプ3が点灯、すなわち紫外線の照射されることによって不活性化される。
【0045】
危害対象微生物が不活性化された気体は、リアクタ1の内部において後方から前方に向けて、2枚の遮光板15,16をくぐり抜けるように上下に蛇行しながら、開口した前面11側から流出する。
以上が本実施例に係る空気紫外線殺菌装置を用いた一連の流れについての説明である。
【0046】
本実施例においては、第1遮光板15が、天板17の内面17a、側板12の内面12b、及び、側板13の内面13cにそれぞれ固定され、第2遮光板16が、リアクタ1における底板18の上面18e、側板12の内面12a、及び、側板13の内面13cにそれぞれ固定され、さらに、リアクタ1の高さ方向において第1遮光板15と第2遮光板16とは一部が重複しているものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
例えば図8に示すように、第1遮光板15は側板13の内面13c(又は側板12の内面12b)と離隔し、第2遮光板16は側板12の内面12b(又は側板13の内面13c)と離隔し、第1遮光板15と第2遮光板16とは、リアクタ1の幅方向において一部重複するものとしてもよい。
【0048】
すなわち遮光板15,16は、紫外線ランプ3が点灯している状態において、紫外線ランプ3から照射される紫外線が、前面11からリアクタ1の外部に漏れないように遮光するものであればよい。
【0049】
ただし、遮光板15,16のうちどちらか一方だけでは、反射紫外線成分の漏洩を防ぐことはできない。この場合、リアクタ1の前面11にフィルターを直結すれば漏洩した紫外線の被曝によりフィルターが劣化する。もしフィルターを設けない場合には、漏洩した紫外線が直接人の目に照射されてしまう恐れがあり危険である。反対に、遮光板の枚数をさらに増やすと、圧力損失が増えるためファン容量を増加させる必要がある。そのため、本実施例では経済性との両立の観点から遮光板を2枚とした。
【0050】
また、本実施例における紫外線ランプ3は、その軸心が開口部12a(及び入口管2)の軸心AXと同一直線上となるようにして、リアクタ1の内部に設けられるものとした。危害対象微生物の不活性化の効率の観点からしてこの配置が最も好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
すなわち図9に示すように、紫外線ランプ3は、開口部12aの内周面20をリアクタ1の内部に延伸させた仮想面Pの内側に配置されるようにすればよく、その範囲内であれば、紫外線ランプ3の軸心が、軸心AXと同じ方向を向いていなくてもよい。
【0052】
以上説明した本実施例に係る空気紫外線殺菌装置によれば、気体が流入可能な開口部12a(第1開口部)、及び、当該気体が流出可能な前面11(第2開口部)が形成され、当該気体の流路となるリアクタ1と、第1開口部12aの内周面をリアクタ1の内部に延伸させた仮想面Pの内側に配置される紫外線ランプ3とを備えるので、リアクタ1内の気体中の危害対象微生物を効率よく不活性化することができる。
【0053】
さらに本実施例に係る空気紫外線殺菌装置によれば、紫外線ランプ3は、その軸心が開口部12aの軸心と同一直線上となるようにして、リアクタ1の内部に設けられるので、さらに効率よく気体中の危害対象微生物を不活性化することができる。
【0054】
さらに本実施例に係る空気紫外線殺菌装置によれば、リアクタ1の内部には、紫外線ランプ3から照射される紫外線が、前面11側からリアクタ1の外部に漏れないように遮光する遮光板15,16が設けられるので、安全性を確保することができる。
【0055】
なお、本実施例においては紫外線ランプ3が中圧ランプであるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、紫外線ランプ3が低圧ランプあるいは低圧高出力アマルガムランプであってもよい。
【0056】
[実施例2]
本実施例に係る空気紫外線殺菌装置は、実施例1に係る空気紫外線殺菌装置の構成の一部を変更したものである。以下では、実施例1と同様の部分については極力省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0057】
実施例1のように紫外線ランプ3を配置すると、気体の流れ上、紫外線ランプ3の入口管2側の口金31及び電極33が冷却されてしまい、これによって正常点灯状態が維持できず、出力低下や不点灯、電極損耗による短寿命などの不具合が発生する可能性がある。
【0058】
それを防ぐために本実施例では、図10に示すように、紫外線ランプ3の第1開口部12a側の端部(一端)(口金31及び電極33)を軸方向に被覆するカバー35を設ける。
【0059】
カバー35は、一端に底部35aを有する中空円筒状のものである。底部35aはその中央(軸心位置)に孔35bが形成されている。そして、口金31の外周面が孔35bに固定されるようにする。これにより、口金31がカバー35に支持される格好となる。
【0060】
カバー35の側壁35cは紫外線ランプ3から径方向に離隔している。また側壁35cは、軸方向において口金31の一部(又は図示とは異なるが全部でもよい)及び電極33を覆うことが可能な長さを有する。また、カバー35における底部35aと反対側の端部35dは開口している。
【0061】
また、スタンド62の一端62bに形成された把持部62dAは、図10に示すように、平板状の天板62da、ボルト62db、ナット62dcを備えるものとし、カバー35の側壁には孔を設け、ボルト62dbを当該孔に通し側壁の内側からナット62dcで係止する等によって、カバー35を支持することで、カバー35が支持する口金31すなわち紫外線ランプ3を支持するものとしてもよい。
【0062】
ただし、本発明はカバー35及び把持部62dAの形状を上述のものに限定するものではなく、カバー35が口金31(の一部又は全部)及び電極33を軸方向に被覆し、そのカバー35を把持部62dAが支持する構造であれば、これらはどのような形状であっても良い。
【0063】
さらに本実施例では、紫外線ランプ3の他端(口金32及び電極34)にもカバー35と同様(対称)のカバー36を設け、端部62c側の把持部62eAも、把持部62dと同様(対称)の構造とするのが好ましい。
【0064】
他方の口金32にもカバー36を設ける方が好ましい理由としては、そもそも紫外線ランプ3は両端の口金31,32及び電極33,34が冷えやすい構造となっているため、一方の口金31だけカバー35を設けると、他方の口金32及び電極34が過冷却され最冷点になり、そこに水銀が溜まってしまい、結局上記不具合が発生する可能性があるためである。口金31,32にそれぞれカバー35,36を設けることでこれを防ぐことができる。
【0065】
[実施例3]
本実施例に係る空気紫外線殺菌装置は、実施例1,2に係る空気紫外線殺菌装置の構成の一部を変更したものである。以下では、実施例1,2と同様の部分については極力省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0066】
図11,12に示すように、本実施例に係る空気紫外線殺菌装置は、入口管2に代えて入口管2Aを備えている。入口管2Aは、中空四角柱状部材(所謂角ダクト)である点において入口管2と異なる。
【0067】
また、本実施例におけるリアクタ1の開口部(第1開口部)12aの形状は、入口管2Aの形状に合わせて矩形(図12では入口管2A及び開口部12aが正方形となっているが、これらは長方形でもよい)となっている。
【0068】
また、リアクタ1の内部には、この開口部(第1開口部)12aを覆うようにして平板71が(溶接又はボルト締結により)固定されている。当該平板71の中央には、正円形状の孔72が形成されている。
【0069】
これにより、本実施例においては、角ダクトである入口管2Aにおいても、リアクタ1に気体が流入する際には、正円形状の孔72を通過する必要があるため、結果として、丸ダクトである入口管2を用いた実施例1,2と同等の気体の流れを実現することができる。したがって、紫外線ランプ3による殺菌においても同等の効果を奏するものとすることができる。
【0070】
なお、第1開口部12aが矩形では紫外線ランプ3による殺菌効果が完全になくなるということではなく、一定以上の効果を奏することはできる。ただし、第1開口部12aが正円形状である方がより高い効果を奏するために、本実施例ではそのような構成としている。
【0071】
[実施例4]
本実施例に係る空気紫外線殺菌装置は、実施例1~3に係る空気紫外線殺菌装置の構成の一部を変更したものである。以下では、実施例1~3と同様の部分については極力省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0072】
実施例1においては、紫外線ランプ3が仮想面Pの内側に配置されるものとして説明したが、本実施例に係る空気紫外線殺菌装置では、紫外線ランプ3が仮想面Pよりも少し外側となるようにしてリアクタ1の内部に配置されるものとする。
【0073】
上記「少し外側」とは、紫外線ランプ3の管面が仮想面Pから10mm以上外側に離隔するものであることが好ましい。このようにすることで、壁面温度を許容値以下に収めることのできる最小距離を確保したリアクタサイズを小さくすることができるため、設置スペースや製造コストを小さく抑えることができる。しかしこの場合、紫外線ランプ3の過冷却による点灯不安定性に対して、必要最低限の安全率しか確保することができない。すなわち、紫外線ランプ3の過冷却による点灯安定性に対する安全率には余裕度がほぼ確保されていないため、風量変動や気温変動により過冷却側に移行し点灯安定性を損なう危険性がある。このため、何らかの方法により別途風量や気温の安定化を図ることが望ましい。
【0074】
より好ましくは、上記「少し外側」は、紫外線ランプ3の管面が仮想面Pから20mm以上外側に離隔するものであるものとする。このようにすることで、壁面温度を許容値以下に収めることのできる最小距離を確保したリアクタサイズをある程度小さくすることができるため、設置スペースや製造コストをある程度小さく抑えることができる。またこの場合、紫外線ランプ3の過冷却による点灯不安定性に対して、ある程度の余裕度を持った安全率を確保することができる。すなわち、紫外線ランプ3の過冷却による点灯安定性に対する安全率にある程度の余裕度が確保されるため、風量変動や気温変動により過冷却側に移行し点灯安定性を損なう危険性が低い。このため、何らかの方法により別途風量や気温の安定化を図る必要性を低くすることができる。
【0075】
より好ましくは、上記「少し外側」は、紫外線ランプ3の管面が仮想面Pから30mm以上外側に離隔するものであるものとする。このようにすることで、壁面温度を許容値以下に収めることのできる最小距離を確保したリアクタサイズが「離隔距離を30mm以下とする」よりも相対的に大きくなるため、設置スペースや製造コストが相対的に増大する。しかしこの場合、紫外線ランプ3の過冷却による点灯不安定性に対して、大きな余裕度を持った安全率を確保することができる。すなわち、紫外線ランプ3の過冷却による点灯安定性に対する安全率に大きな余裕度が確保されるため、風量変動や気温変動により過冷却側に移行し点灯安定性を損なう危険性はほぼ無い。このため、何らかの方法により別途風量や気温の安定化を図ることをほぼ不要とすることができる。
【0076】
さらに、上記「少し外側」の向き、すなわち、紫外線ランプ3が仮想面Pから離隔する方向は、リアクタ1の各壁面のうち仮想面Pとの距離が最も短い壁面である後板14以外の方向、好ましくは、当該距離が最も長い壁面である天板17又は底板18の方向である。
【0077】
具体例として、図13に示すように、入口管2の直径が200Aであり、紫外線ランプ3の管径が22mmである場合、紫外線ランプ3の軸心が、軸心AXよりもリアクタ2の高さ方向に150mm以上高い位置が好ましい(ただし、紫外線ランプ3をあまりにも上方に設置すると、天板17との位置が近くなりすぎてしまい、安全性を確保しづらくなる)。
【0078】
また、実施例2ではカバー35,36を設けるものとして説明したが、本実施例に係る空気紫外線殺菌装置では、カバー35,36を設けないようにする。
【0079】
すなわち本実施例においては、紫外線ランプ3を仮想面Pの外側に配置することで口金31及び電極33(口金33及び電極34)が過冷却されることがなくなり、過冷却を防止するためのカバーを設ける必要がなくなる。
【0080】
さらに本実施例においては、リアクタ1の内面(少なくとも天板17の内面17a)から1cm程度離隔するようにして金属板材を設置することで、リアクタ1の壁を二重にする。ただしこの金属板材は、紫外線反射性が高くかつ冷却効果の高いものであり、具体的には板厚0.5mmの純アルミの表面に石英ガラスをコーティングした反射板である。
【0081】
リアクタ2と金属板材との離隔距離については、リアクタ1の内面及び金属板材の温度上昇を防ぐこと、及び、金属板材とリアクタ1の内面との間を通過して紫外線ランプ3による処理が行われないまま通過する気体を最小限に抑えることの両方を実現可能にするため、1cm程度とする。
【0082】
[実施例5]
本実施例に係る空気紫外線殺菌装置は、実施例1~4に係る空気紫外線殺菌装置の構成の一部を変更したものである。以下では、実施例1~4と同様の部分については極力省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0083】
本実施例に係る空気紫外線殺菌装置は、複数の紫外線ランプ3を備えている。実施例1の最後に説明した、紫外線ランプ3が低圧ランプあるいは低圧高出力アマルガムランプである場合や、紫外線ランプ3が中圧ランプであっても、第1開口部12aが1000mm以上である場合などに、複数の紫外線ランプ3が必要となることが有り得る。
【0084】
例えば紫外線ランプ3が4本の場合、実施例1で説明したように紫外線ランプ3を仮想面Pの内側に配置するのであれば、一例として図14に示すような配置となる。また、実施例4で説明したように紫外線ランプ3を仮想面Pの外側に配置しカバーを設けないのであれば、一例として図15に示すような配置となる。
【0085】
なお、図15を見れば、全ての紫外線ランプ3の仮想面Pからの離隔方向が、実施例4の説明に基づいた方向になっていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、空気紫外線殺菌装置として好適である。
【符号の説明】
【0087】
1 リアクタ
2,2A 入口管
3 紫外線ランプ
4 電源装置
5 ケーブル
6 支持部材
11 前面(第2開口部)
11a 開口端面
11b パッキン
12,13 側板
12a 開口部(第1開口部)
13a 開口部(第3開口部)
12b,13c 内面
13b ドア
14 後板
15 第1遮光板
16 第2遮光板
17 天板
17a 内面
18 底板
18a 貫通孔
18b 下面
18c,18d 脚部
18e 上面
19 中空筒状部材
20 内周面
21 一端
22 他端
23 パッキン
30 管部
31,32 口金
33,34 電極
35,36 カバー
51 一端
52 他端
61 ボトムフレーム
62 スタンド
62a 底部
62b 一端
62c 他端
62d,62e,62dA,62eA 把持部
62da 天板
62db ボルト
62dc ナット
62f,62g 板状部材
71 平板
図1
図2
図3
図4
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