(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167044
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】誘導システム及び誘導灯
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20231116BHJP
G08B 5/00 20060101ALI20231116BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20231116BHJP
F21S 9/02 20060101ALI20231116BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20231116BHJP
G09F 13/20 20060101ALI20231116BHJP
G01N 21/53 20060101ALI20231116BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20231116BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231116BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20231116BHJP
【FI】
G08B17/00 F
G08B5/00 C
G08B23/00 510Z
F21S9/02 110
F21V23/00 110
F21V23/00 140
G09F13/20 J
G01N21/53 A
G08B27/00 A
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077889
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】矢部 周子
(72)【発明者】
【氏名】山口 純一
(72)【発明者】
【氏名】徳納 雄介
【テーマコード(参考)】
2G059
3K014
5C083
5C087
5C096
5G405
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB01
2G059BB09
2G059EE02
2G059GG01
2G059GG02
2G059KK04
2G059MM05
3K014AA01
5C083AA02
5C083CC25
5C083DD01
5C083FF03
5C083JJ25
5C083JJ30
5C083JJ36
5C087AA11
5C087DD04
5C087DD20
5C087EE05
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG68
5C096AA02
5C096BA04
5C096BB23
5C096BC04
5C096CB01
5C096CC06
5C096DC11
5C096FA03
5G405AA08
5G405AB02
5G405CA28
(57)【要約】
【課題】避難者が避難経路を認識しやすくなる誘導システム及び誘導灯を提供する。
【解決手段】誘導システム10は、避難者を避難経路に誘導する光を射出する第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17と、発煙状態を検知する検知部21に接続された制御装置20とを備える。制御装置20は、検知部21で検知した発煙状態に基づいて第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17からの光の射出形態を制御する。第1発光部15は、避難方向に応じた方向に光線100を射出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難者を避難経路に誘導する光を射出する発光部と、
発煙状態を検知する検知部に接続された制御装置と、を備え、
前記制御装置が、前記検知部で検知した前記発煙状態に基づいて前記発光部からの光の出力形態を制御する、誘導システム。
【請求項2】
前記発光部は、避難方向に応じた方向に光線を射出する第1発光部である、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項3】
前記第1発光部は、煙粒子に対して散乱を生じる波長の前記光線を避難方向に応じた方向に沿って射出する、請求項2に記載の誘導システム。
【請求項4】
前記発光部は、避難口の位置又は方向を示す表示面を有する誘導灯のうち、前記表示面とは異なる面に設けられた第2発光部である、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項5】
前記発光部は、避難口に設けられ、前記避難口の位置を示す第3発光部である、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項6】
前記発煙状態に応じて前記発光部が射出する光の波長を変更する、請求項1~5のいずれか1項に記載の誘導システム。
【請求項7】
前記発煙状態は煙の濃度に関する情報を含み、前記煙の濃度に基づき前記発光部が射出する光の出力形態を変える、請求項1~5のいずれか1項に記載の誘導システム。
【請求項8】
前記発煙状態は煙の粒子径に関する情報を含み、前記煙の粒子径に基づき前記発光部からの光の出力形態を変える、請求項1~5のいずれか1項に記載の誘導システム。
【請求項9】
避難口の位置又は方向を示す表示面を有する表示部と、
前記表示面とは異なる位置に設けられた発光部と、
発煙状態を検知する検知部に接続された発光制御部と、を備え、
前記発光制御部は、前記検知部で検知した前記発煙状態に応じて前記発光部からの光の出力形態を変える、誘導灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時の避難誘導を支援する誘導システム及び誘導灯に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建物には、避難口の方向を示す誘導灯の設置が義務付けられている。この誘導灯について環境に合わせて調光するものが提案されている。例えば特許文献1には、環境に応じて調光を行い、避難が必要な非常時には100%の調光レベルで全光点灯するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、火災の発生等により煙が存在する環境では、避難者が避難経路を視認しづらくなる。また、このような環境では避難者は心理的に動揺しやすい。このように、煙が存在する環境では、避難者は誘導灯が示す避難口の位置や方向を認識しにくくなる。この場合には、的確かつ効率的な避難誘導が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する誘導システムは、避難者を避難経路に誘導する光を射出する発光部と、発煙状態を検知する検知部に接続された制御装置と、を備え、前記制御装置が、前記検知部で検知した前記発煙状態に基づいて前記発光部からの光の出力形態を制御する。
【0006】
上記課題を解決する誘導灯は、避難口の位置又は方向を示す表示面を有する表示部と、前記表示面とは異なる位置に設けられた発光部と、発煙状態を検知する検知部に接続された発光制御部と、を備え、前記発光制御部は、前記検知部で検知した前記発煙状態に応じて前記発光部からの光の出力形態を変える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、避難者が避難経路を認識しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】同実施形態の第1発光部及び第2発光部の動作を示す模式図。
【
図5】同実施形態の第3発光部が発光した状態を示す図。
【
図6】同実施形態における複数の誘導灯が配置された建物の概略を示す平面図。
【
図7】他の実施形態における誘導システムの動作を示す概略図。
【
図8】他の実施形態における誘導システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図6に従って、誘導システム及び誘導灯の一実施形態を説明する。本実施形態では、建物内において、建物内の被災者(避難者、所在者)の避難誘導を支援する。
図1に示すように、誘導灯11は筐体12を備える。筐体12は、避難口の方向を示す表示板13を正面に備える。本実施形態において表示板13は透光性を有する。表示板13は、避難口の方向を示す。表示板13の正面は表示面13Aである。
【0010】
筐体12の側面12Aには、第1発光部15が設けられている。第1発光部15は、煙が存在する環境(以下、煙環境という)で発光することによって、避難口の方向を避難者に示す。第1発光部15は、通常時には発光せず、煙環境において発光する。
【0011】
筐体12の側面12A,12B、底面12C及び上面12Dには、第2発光部16が備えられている。第2発光部16は、光を射出することにより、誘導灯11の位置を避難者に報知する。第2発光部16は、通常時には発光せず、煙環境において発光する。
【0012】
図2は、避難口40に設けられた第3発光部17(扉照明装置)を示す。
図2に例示する避難口40は、枠体41と避難扉42とを備えている。避難扉42は、枠体41に対して回動可能に設けられている。避難口40が設けられた壁のうち避難口40の上方には避難口40の位置を示す避難口誘導灯43が設けられている。避難口誘導灯43は、避難口40の位置を示す表示面43Eを有している。第3発光部17は、枠体41のうち、廊下44側に位置する正面41Aに設けられている。第3発光部17は、例えば、樹脂シート等からなる帯状体と、帯状体に固定された複数の光源とからなる。光源は、可視光を発する光源であればよく、例えばLED光源等である。帯状体は避難扉42に固定される。なお、第3発光部17は、建物の壁に設けられていてもよい。この場合、第3発光部17は、枠体41を囲むように壁に設けられる。なお、避難口誘導灯43は、特許請求の範囲の誘導灯に対応する。
【0013】
また、避難口40に設けられた避難口誘導灯43も、側面43A,43B,底面43C及び上面43Dに、誘導灯11と同様に第2発光部16が設けられている。
図3を参照して、誘導システム10の構成について説明する。誘導システム10は、誘導灯11、制御装置20、検知部21及び第3発光部17を備える。誘導灯11は、発光制御部25、光源26~28、パネル29を備える。発光制御部25は、光源26~28の発光を制御する。また、発光制御部25は図示しない蓄電池を備える。なお、避難口誘導灯43は、誘導灯11と同様に発光制御部25、光源26,27、及びパネル29を備えており、第1発光部15のみが省略された構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0014】
光源26は、表示板13(
図1参照)に向かって光を照射する。表示板13には避難口40の方向を示す指標が表示されている。光源26は、点検等の状態を除き、常に点灯状態に維持されている。表示板13及び光源26は、表示部31を構成する。
【0015】
光源28は、第1発光部15を構成する。光源28は、可視光を発する光源であればよく、LED光源、レーザー光源等などである。光源28は、ユーザが角度を操作することにより、射出する光線100の方向を変更可能である。光源28は筐体12に設けられた貫通孔等から光線100を射出する。
【0016】
第1発光部15が射出する光線100の波長は、煙粒子によって散乱しやすい波長である。例えば、光線100の波長は、他の波長に比べ散乱光強度が大きくなる波長である。本実施形態においては光線100の波長は一定である。例えば、複素屈折率1.53-0.008iで粒径が0.48μm以下の粒子は、可視光域では波長の短い光がミー散乱(Mie散乱)による散乱や吸収が生じやすい傾向がある。また、煙の粒径が多様である場合、散乱を生じさせるためには可視光域において広域な波長域を有する白色光が適している。このため、誘導灯11が設置される環境に応じて、散乱しやすいと想定される波長を選択する。このため、煙環境下では、第1発光部15から射出された光線100は所定の方向に沿った筋状(線状)に見える。
【0017】
光源27及びパネル29は第2発光部16を構成する。光源27及びパネル29は、側面12A,12B、底面12C及び上面12D毎に設けられている。複数の第2発光部16は光源27を共有していてもよい。光源27は、可視光を発する光源であればよく、LED、レーザー光源等である。パネル29は、可視光を透過する透明材を有する。また、パネル29は、反射板、導光板、拡散板等の少なくとも一つを含んでいてもよい。光源27が射出した光101は、パネル29に入射した後、パネル29内で拡散される。拡散された光101はパネル29を透過する。これによりパネル29の表面全体が光って見える。
【0018】
パネル29から最終的に射出される光101の波長は、煙粒子によって散乱しにくい波長である。例えば、光101の波長は、他の波長に比べて散乱光強度が小さい波長である。例えば第2発光部16が赤色の光101を射出する場合、光源27が赤色光を発する赤色LEDであってもよく、パネル29が透過性を有する赤色の透明材であってもよい。このため、誘導灯11が設置される環境に応じて、散乱しにくいと想定される波長を選択する。例えば、第2発光部16から射出される光は、第1発光部15から射出される光よりも、長波長の光を含む。このため、避難者は煙環境でも第2発光部16を視認しやすい。
【0019】
検知部21は、煙の有無を検知する装置である。検知部21は、例えば光学式のセンサであってもよい。このセンサは、光源と、光源から射出された光を受光する受光部とを備えていてもよい。受光部は、センサ内に導入した煙粒子によって反射した反射光を受光した場合に煙が発生していると判定する。又は、このセンサは、CMOSイメージセンサ等の撮像部を備えていてもよい。撮像部は、センサ内に導入した煙粒子を撮像して、煙粒子の有無を判定する。検知部21は、検出結果に応じた検出信号を制御装置20に出力する。なお、建物に設置された複数の誘導灯11及び避難口誘導灯43が検知部21を1つずつ備えるのではなく、誘導灯11及び避難口誘導灯43のうち複数に対して1つの検知部21が設けられていてもよい。
【0020】
制御装置20は、演算部、記憶部、通信部を備える(いずれも図示略)。演算部は、記憶部に記憶されるプログラムやデータを用いて、誘導灯11等を制御する。演算部の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。記憶部は、誘導システム10の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。通信部は、他の装置との間で通信ルートを確立して、データの送受信を実行するインタフェースである。
【0021】
制御装置20は、検知部21が出力した検出信号に基づいて発光制御部25を制御する。制御装置20は、1つの誘導灯11のみに接続してもよいし、複数の誘導灯11に接続していてもよい。制御装置20が複数の誘導灯11に接続する場合、制御装置20と発光制御部25との間に分電盤等を備えていてもよい。制御装置20は、発煙状態を示す検出信号を検知部21から受信する。そして、煙が発生していないと判定した場合には、光源27,28を消灯状態に維持する。また、制御装置20は、煙が発生していると判定した場合には、発光制御部25を制御して光源27,28を発光させる。また、制御装置20は、第3発光部17の発光(照明)を制御する。
【0022】
また、制御装置20は、煙が発生していないと判定した場合には、第3発光部17を消灯状態に維持する。また、制御装置20は、煙が発生していると判定した場合には、第3発光部17を発光させる。第3発光部17から射出される光の波長は一定である。第3発光部17から出力される波長は、環境に応じて、散乱しにくいと想定される波長を選択する。
【0023】
図4~
図6を参照して、誘導システム10の動作について説明する。
図4の例では、誘導灯11は、廊下45の壁面46に設けられている。誘導灯11が設けられた壁面46に対して垂直な壁面47には、避難口40が設けられている。
図4の例では、誘導灯11から避難口40に向かう方向が避難経路の方向である。
【0024】
誘導システム10の管理者は、第1発光部15からの光が避難口40に射出されるように、壁面46に設置された誘導灯11の光源28の向きを予め調整する。
検知部21が煙を検知しない場合、制御装置20は誘導灯11の第2発光部16及び第1発光部15を消灯状態に維持する。また、表示部31は点灯した状態が維持される。
【0025】
図4に示すように、検知部21が煙を検知した場合、制御装置20は検出信号に基づいて第1発光部15及び第2発光部16を発光させる。つまり、煙が発生した場合には誘導灯11に新たに発光面が追加される。第2発光部16から射出される光101は散乱しにくいため、煙環境においても周囲の避難者が視認しやすい。このため、避難口40に至る避難経路に居る避難者は、第2発光部16により誘導灯11の位置を認識しやすくなる。
【0026】
また第1発光部15が射出する光線100は、第1発光部15から避難口40に向かって射出されている。
図4の例では、光線100は避難扉42に照射されている。光線100は煙粒子によって散乱している。避難者は、第2発光部16の光を視認した後、又は第2発光部16の光を視認するときと同時に、光線100を視認することが可能である。このため、避難者は、避難方向を把握しやすい。つまり、誘導灯11からの避難経路の方向を光線100及び光101によって連続的に示すことができるため、避難者は、煙環境下でも避難経路の方向を認識しやすい。
【0027】
図5は、第3発光部17が発光した状態を示す。検知部21が煙を検知した場合、制御装置20は検出信号に基づいて第3発光部17を発光させる。このため、避難者は煙環境においても避難口40の位置を認識することができる。特に、誘導灯11から避難口40に至る避難経路を光線100及び光101,103によって連続的に示すことができるため、避難者は心理的に動揺しうる状況でも避難経路の方向を認識しやすい。また、制御装置20は、避難口誘導灯43の第2発光部16を発光させる。避難口誘導灯43の側面43A,43B,底面43C及び上面43Dに設けられた第2発光部16が光るため、避難者は避難口誘導灯43が射出する光によって避難口40の位置を認識しやすい。
【0028】
図6は、制御装置20が複数の誘導灯11の発光を制御する例を示す。
図6の例では、建物50には複数の居室52が設けられている。各誘導灯11は、居室52間の廊下51に設置される。検知部21が煙を検知すると、制御装置20は誘導灯11の第2発光部16及び第1発光部15及び避難口誘導灯43の第2発光部16を発光させる。
【0029】
各誘導灯11が備える第1発光部15は、避難経路の方向に沿って光線100を射出する。避難口40に近い誘導灯11は、避難口40に向かって光線100を射出する。避難口40からの距離が遠いために避難口40に光線100を直接射出できない誘導灯11は、隣接する誘導灯11等へ向かって光線100を射出する。つまり、各誘導灯11と避難口40とを光線100で繋ぐことで避難経路を示すことができる。また、第2発光部16により誘導灯11及び避難口誘導灯43の位置を示すことができる。このため、避難者は、煙環境においても避難経路の方向及び避難口40の位置を認識やすくなる。また、避難口40から遠い位置に居る避難者も避難経路の方向及び避難口40の位置を把握しやすくなる。なお、複数の階層を有する建物50に設置された誘導システム10において、制御装置20がいずれかの階層で煙が発生したと判定したとき、複数の階層の各々に設置された第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17を発光させてもよい。或いは煙は上方に向かうため、制御装置20は、煙が発生した階層以上の各階層に設置された第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17を全て発光させてもよい。
【0030】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)誘導システム10は、制御装置20が、検知部21で検知した発煙状態に基づいて第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17からの光の射出形態を制御する。この構成によれば、煙の有無に基づき、避難者が視認しやすい出力形態で光を出力することが可能となる。
【0031】
(2)第1発光部15は、避難方向に応じた方向に光線100を射出する。この構成によれば、煙によって避難者が避難経路を視認しづらくなった状況において、避難者が第1発光部15から射出された光線100を視認することにより、避難方向を認識しやすくなる。
【0032】
(3)第1発光部15は、煙粒子に対して散乱を生じる波長の光線100を避難口40が位置する方向に沿って射出する。このため、光線100は、煙環境において避難口40が位置する方向に沿って線状に見える。このため、避難者は、光線100に沿って進むことで避難口40に向かうことができる。
【0033】
(4)第2発光部16は、避難口40を表示する表示面13Aを有する誘導灯11のうち、表示面13Aとは異なる面、すなわち表示面13Aを囲むように設けられる。また、第2発光部16は、避難口誘導灯43のうち表示面43Eとは異なる面であって、表示面43Eを囲むように設けられる。上記構成によれば、避難者は、煙によって避難者が避難経路を視認しづらくなった状況においても、第2発光部16の光101を頼りに誘導灯11又は避難口誘導灯43に到達することができる。誘導灯11に到達したときは正面に位置する表示面13Aに基づいて、避難経路を進むことが可能となる。
【0034】
(5)制御装置20は、検知部21で検知した発煙状態に基づいて、避難口40に設けられた第3発光部17から光を射出する。この構成によれば、避難者は、煙によって避難者が避難経路を視認しづらくなった状況においても、第1発光部15又は第2発光部16を併用しつつ、第3発光部17が射出する光を視認することによって、避難口40の位置を認識することが可能となる。
【0035】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
(煙の濃度に応じた出力形態)
・検知部21が検知する発煙状態は煙の濃度に関する情報を含み、制御装置20は、煙の濃度に基づき第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17の少なくとも一つについて、射出する光の出力形態を変えるようにしてもよい。
【0036】
この態様において、検知部21は、煙の濃度を検出する。検知部21は煙の発生及び煙の濃度を検知すると、検出結果に応じた検出信号を出力する。制御装置20は、検出結果を示す検出信号を受信すると、検出信号に基づいて煙の濃度が所定値以上であるか否かを判定する。
【0037】
例えば、制御装置20は、煙の濃度が所定値未満である場合には、第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17を発光させない。また、制御装置20は、煙の濃度が所定値以上である場合には、第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17を発光させる。
【0038】
或いは、制御装置20は、煙の濃度が第1の閾値未満である場合には、第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17を発光させない。また制御装置20は、煙の濃度が第1の閾値以上且つ第2の閾値以下である場合には、第2発光部16のみ、又は第2発光部16及び第3発光部17を発光させてもよい。第2発光部16が射出する光101及び第3発光部17が射出する光103が煙粒子により散乱しにくいため、煙の濃度に関係なく発光させる。さらに制御装置20は、煙の濃度が第2の閾値を超える場合には、さらに第1発光部15を発光させてもよい。
【0039】
例えば制御装置20は、煙の濃度に応じて、第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17を一つずつ段階的に発光させるようにしてもよい。この構成によれば、煙の濃度によって光の出力形態を変えるため、避難者が視認しやすい光を射出することが可能となる。
【0040】
(煙粒子の平均粒子径に応じた出力形態)
・火災等により発生する煙粒子(粒子状物質)としては、煤、酸化物、多環芳香族単価炭素等がある。光は、煙粒子の大きさに応じて散乱度合いが変わる。誘導システム10は、煙粒子の大きさに応じて光の出力態様を変更してもよい。例えば、検知部21が検知する発煙状態は煙の粒子径に関する情報を含み、制御装置20は、煙の粒子径に関する情報基づき第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17の少なくとも一つについて、射出する光の出力形態を変えるようにしてもよい。粒子径に関する情報(粒子径パラメータ)は、出現頻度が最も高い粒子径、平均粒子径(メディアン径(D50)、モード径等)、又は粒径分布を示す情報を含む。
【0041】
この態様において、第1発光部15は、光線100の波長を変更することが可能である。また、第2発光部16及び第3発光部17も、光101,103の波長を変更することが可能である。また、検知部21は、煙粒子の粒子径に関する情報を取得する。制御装置20は、煙粒子の粒子径に関する情報と、光の散乱強度散乱光強度と、光の波長とを関連付けた波長管理情報等を記憶装置に格納している。また、波長管理情報は、光の散乱強度に加え若しくは加えて、粒子径に関する情報と、光の散乱しやすさ及び光の散乱割合の少なくとも一つとが関連付けられていてもよい。
【0042】
制御装置20は、波長管理情報に基づき、取得した煙粒子の粒子径に関する情報に対して最も散乱強度が大きくなる波長を特定する。そして、第1発光部15に特定した波長の光線を射出させる。また、制御装置20は、この波長管理情報に基づき、取得した煙粒子の粒子径に関する情報に対して散乱光強度が小さくなる波長を特定する。そして、第2発光部16に特定した波長の光を射出させる。又は、制御装置20は、第3発光部17に特定した波長の光を射出させる。この構成によれば、煙の粒子径に関する情報に応じて光の出力形態を変えるため、避難者がさらに視認しやすい光を射出することが可能となる。
【0043】
又は、誘導システム10は、煙粒子の粒子径に代えて若しくは加えて煙粒子の粒径分布に応じて光の出力態様を変更してもよい。
また、誘導システム10は、粒子径に加え若しくは変えて、煙粒子を含む空気の複素屈折率を測定するようにしてもよい。そして、複素屈折率に応じて光の出力態様を変更してもよい。
【0044】
(第1発光部)
・上記実施形態では、誘導灯11は避難口40に向かって一定方向に光線100を射出した。これに代えて、
図7に示すように、第1発光部15は、光源28を動作させて光線100の射出方向を変更してもよい。この態様において第1発光部15は、光源28の方向を変更する駆動部を備える。駆動部は、駆動源であるモータ、駆動源の動力を光源に伝達する伝達機構を備える。誘導灯11は、光源28の射出方向を上から下及び下から上へ振って変更させる。
【0045】
・上記実施形態では、第1発光部15は一定の波長の光線100を射出するようにした。これに代えて、第1発光部15は、発光している間、その波長を連続的又は断続的に変化させるようにしてもよい。この態様によれば、避難者が光線100に注意を向けやすくなる。
【0046】
・上記実施形態では、誘導灯11に一つの第1発光部15を設けるようにした。これに代えて、誘導灯11に複数の第1発光部15を設けるようにしてもよい。各第1発光部15は同じ方向に光線100を射出してもよいし、異なる方向に光を射出するようにしてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、第1発光部15は、通常時には発光せず、煙環境において発光するものとした。これに代えて、通常時にも発光するようにしてもよい。また、第1発光部15は、煙の濃度や煙の種類に応じて、消灯状態から発光状態に切り替えるようにしてもよい。
【0048】
・上記実施形態では、第1発光部15は線状の光を射出した。これに代えて、第1発光部15は、画像を投影する投影部を備えていてもよい。煙環境では、光が散乱されることから煙に画像が投影される。画像は、例えば避難経路の方向を示す矢印である。
【0049】
(第2発光部)
・上記実施形態では、誘導灯11及び避難口誘導灯43に第2発光部16を設けた。これに代えて若しくは加えて、誘導灯11のみに第2発光部16を設けてもよい。また、避難口誘導灯43のみに第2発光部16を設けてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、第2発光部16を、誘導灯11の筐体12の側面12A,12B、底面12C、上面12Dに設けた。これに代えて、筐体12の各面のうち、一つの面、2つ又は3つの面に第2発光部16を設けるようにしてもよい。また、第2発光部を、避難口誘導灯43の側面43A,43B、底面43C及び上面43Dに設けた。これに代えて、これらの各面のうち、一つの面、2つ又は3つの面に第2発光部16を設けるようにしてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、第2発光部16は一定の波長の光101を射出するようにした。これに代えて、第2発光部16は、発光している間、その波長を連続的又は断続的に変化させるようにしてもよい。この態様によれば、避難者が光101に注意を向けやすくなる。
【0052】
・第2発光部16は、煙環境において発光状態を継続するようにした。これに代えて若しくは加えて、第2発光部16は一定の間隔で点滅するようにしてもよい。この態様によれば、避難者が光101に注意を向けやすくなる。
【0053】
・上記実施形態では、第2発光部16は、通常時には発光せず、煙環境において発光するものとした。これに代えて、通常時にも発光するようにしてもよい。また、第2発光部16は、煙の濃度や煙の種類に応じて、非発光状態(消灯状態)から発光状態に切り替えるようにしてもよい。
【0054】
(第3発光部)
・上記実施形態では、第3発光部17は一定の波長の光103を射出するようにした。これに代えて、第3発光部17は、発光している間、その波長を連続的又は断続的に変化させるようにしてもよい。この態様によれば、避難者が光103に注意を向けやすくなる。
【0055】
・第3発光部17は、煙環境において発光状態を継続するようにした。これに代えて若しくは加えて、第3発光部17は一定の間隔で点滅するようにしてもよい。この態様によれば、避難者が光103に注意を向けやすくなる。
【0056】
・上記実施形態では、第3発光部17は、通常時には発光せず、煙環境において発光するものとした。これに代えて、通常時にも発光するようにしてもよい。また、第3発光部17は、煙の濃度や煙の種類に応じて、非発光状態(消灯状態)から発光状態に切り替えるようにしてもよい。
【0057】
(誘導システムの動作)
・上記実施形態では、建物50内で煙が発生した場合に、複数の第1発光部15及び複数の第2発光部16を発光させた。これに代えて、建物50のうち、煙の濃度が高い箇所に位置する第1発光部15及び第2発光部16を発光させるようにしてもよい。
【0058】
(誘導システムの構成)
・上記実施形態では、誘導灯11と、制御装置20及び検知部21とは別の装置とした。これに代えて、誘導灯11は、制御装置20及び検知部21を備えるようにしてもよい。又は、誘導灯11は、制御装置20を備えるとともに、検知部21とは別の装置であってもよい。又は、誘導灯11は、検知部21を備えるとともに、制御装置20とは別の装置であってもよい。
【0059】
・上記実施形態では、誘導灯11が第1発光部15を備えるようにした。これに代えて、
図8に示すように、第1発光部15Aと誘導灯11とは別の装置であってもよい。第1発光部15Aと、誘導灯11とはそれぞれ別の制御部(図示略)を備えるとともに、各制御部は、制御装置20から取得した信号に基づき第1発光部15Aと誘導灯11とを制御する。同様に、第2発光部16Aと誘導灯11とは別の装置であってもよい。
図8では、1つの第2発光部16Aのみを示しているが、誘導灯11が設置される位置や環境に応じて、複数の第2発光部16Aを設けるようにしてもよい。第2発光部16Aと、誘導灯11とはそれぞれ別の制御部(図示略)を備えるとともに、各制御部は、制御装置20から取得した信号に基づき第2発光部16Aと誘導灯11とを制御する。第2発光部16Aは誘導灯11の位置を示す機能を有するため、誘導灯11の近傍に設けられることが好ましい。なお、上記実施形態において避難口誘導灯43に設けられている第2発光部16も別の装置としてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、制御装置20は、検知部21に接続されるようにした。これに代えて若しくは加えて、火災発生を監視する防災監視装置に接続されていてもよい。防災監視装置は、建物内に配置された感知器に接続される。この感知器は、煙、熱、炎等の感知情報を取得することにより、火災発生を判定する。制御装置20は、防災監視装置から異常検知信号を受信すると、第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17のうち少なくとも一つを動作させる。
【0061】
・上記実施形態では、誘導システム10は、第1発光部15、第2発光部16及び第3発光部17のうち1つを備えるようにしてもよい。又は、誘導システム10は、第1発光部15及び第2発光部16、第2発光部16及び第3発光部17、又は第1発光部15及び第3発光部17を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…誘導システム、11…誘導灯、13A…表示面、15,15A…第1発光部、16,16A…第2発光部、17…第3発光部、20…制御装置、21…検知部、25…発光制御部、31…表示部、40…避難口、100…光線、101,103…光。