(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167052
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】水切り部材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/684 20060101AFI20231116BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20231116BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
E04B1/684 G
E04B1/64 C
E04B1/64 A
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077917
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】390004145
【氏名又は名称】城東テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 拓也
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA21
2E001GA01
2E001HF01
2E001ND01
2E139AA07
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】水切り部材を取り付けるだけで床下浸水時に通気経路を介した水の浸入を抑制する。
【解決手段】水切り部材1は、建物躯体100へ取り付けられる取付部11と、取付部11から前方下方へ傾斜して延出する延出部12と、延出部12の前方端部から下方へ延出する前垂れ部13と、延出部12の下方であって前垂れ部13の後方に設けられた収容部14とを含む。収容部14は、底壁、通気孔15が形成された前壁、通気孔16aが形成された後壁、上壁及びこれら壁によって囲まれた収容空間Sを有し、底壁上には、吸水することによって体積が膨張し、収容空間Sにおいて通気孔15aと通気孔16aの連通を遮断することが可能な水膨張材30が配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体へ取り付けられる取付部と、
前記取付部から前方下方へ傾斜して延出する延出部と、
前記延出部の前方端部から下方へ延出する前垂れ部と、
前記延出部の下方であって前記前垂れ部の後方に設けられた収容部とを備え、
前記収容部は、底壁、前壁、後壁、上壁及びこれら壁によって囲まれた収容空間を有し、
前記底壁及び/又は前記前壁には、第1通気孔が形成され、
前記後壁には、第2通気孔が形成され、
前記収容空間内には、吸水することによって体積が膨張し、当該収容空間において前記第1通気孔と前記第2通気孔の連通を遮断することが可能な水膨張材が配置されていることを特徴とする水切り部材。
【請求項2】
前記収容部の前記前壁及び前記底壁の少なくともいずれかが着脱又は開放可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の水切り部材。
【請求項3】
前記収容部は、前記後壁よりも後方へ突出する突出部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の水切り部材。
【請求項4】
前記突出部が、前記後壁の下端部に形成されており、
前記突出部の下面には、止水材が取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の水切り部材。
【請求項5】
建物躯体へ取り付けられる取付部と、
前記取付部から前方下方へ傾斜して延出する延出部と、
前記延出部の前方端部から下方へ延出する前垂れ部と、
前記延出部の下方であって前記前垂れ部の後方に設けられ、吸水することによって体積が膨張する水膨張材を収容可能な収容部とを備え、
前記収容部は、その前方もしくは下方、及び後方のそれぞれに通気孔を有するとともに、当該収容部内に前記水膨張材を収容及び当該収容部内から前記水膨張材を取り出し可能なように、少なくとも一部が開放可能に構成されていることを特徴とする水切り部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の水切り部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の外周を囲むように土台に水切り部材が設けられている。近年、床下浸水時に基礎上に設置された通気孔付きの基礎パッキンから床下空間への水の浸入を防ぐことを目的として、水切り部材と基礎パッキンとの間に吸水性体積膨張材(水膨張材)を取り付け、基礎上まで浸水してきたときは膨張して基礎パッキンへの通気経路を閉塞し、膨張していないときは通気経路を開放するようにした通気経路の開閉構造が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術においては、通気経路を閉塞するために、水切り部材とは別の、立ち上がり面、貯留槽又は遮断部を基礎上に固定する必要があり、取付作業などの施工作業が煩わしいといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、水切り部材を介して建物躯体と屋外との間に通気経路を形成することで、取り付けるだけで床下浸水時に通気経路を介した水の浸入を抑制することが可能な水切り部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水切り部材は、建物躯体へ取り付けられる取付部と、前記取付部から前方下方へ傾斜して延出する延出部と、前記延出部の前方端部から下方へ延出する前垂れ部と、前記延出部の下方であって前記前垂れ部の後方に設けられた収容部とを備えている。そして、前記収容部は、底壁、前壁、後壁、上壁及びこれら壁によって囲まれた収容空間を有し、前記底壁及び/又は前記前壁には、第1通気孔が形成され、前記後壁には、第2通気孔が形成され、前記収容空間内には、吸水することによって体積が膨張し、当該収容空間において前記第1通気孔と前記第2通気孔の連通を遮断することが可能な水膨張材が配置されている。
【0007】
これによると、水膨張材が吸水する前においては、第1通気孔及び第2通気孔の形成された収容部の収容空間を、屋外と建物躯体と繋ぐ通気経路の一部又は全部とできる。そして、水膨張材が吸水することで収容空間において第1通気孔及び第2通気孔の連通を遮断することが可能となる。このため、水切り部材を取り付けるだけで床下浸水時に床下への水の浸入を抑制することが可能となる。なお、水膨張材は、収容空間内において、第1及び第2通気孔による通気を妨げない位置であればどのような位置であっても収容配置することができ、例えば、収容部の前壁、上壁または底壁に取り付けもしくは配置することができる。
【0008】
本発明において、前記収容部の前記前壁及び前記底壁の少なくともいずれかが着脱又は開放可能に構成されていることが好ましい。これにより、前壁及び底壁の少なくともいずれかを着脱又は開放することで、水膨張材を収容空間内から取り出して交換することが可能となる。また、底壁を取り外すことが可能である場合は、底壁上に水膨張材を取り付けておけば、水膨張材を底壁ごと交換することも可能となる。
【0009】
また、本発明において、前記収容部は、前記後壁よりも後方へ突出する突出部を有していることが好ましい。これにより、水切り部材を建物躯体へ取り付けたときに、後壁と建物躯体(例えば、基礎パッキン)との間に空間を形成することが可能となる。このため、建物躯体に設けられた通気孔(例えば、基礎パッキンの通気孔)の通気性(例えば、基礎パッキンによる通気性能)が阻害されるのを防止することが可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記突出部が、前記後壁の下端部に形成されており、前記突出部の下面には、止水材が取り付けられていることが好ましい。これにより、突出部を基礎上に配置しつつ水切り部材を建物躯体へ取り付けたときに、基礎上に不陸があったとしても突出部と基礎との間から水が浸入するのを防止することが可能となる。特に、水膨張材と同様の材質からなる止水材を用いた場合には、より効果的に水の浸入を防止することができる。
【0011】
また、本発明の水切り部材は、別の観点では、建物躯体へ取り付けられる取付部と、前記取付部から前方下方へ傾斜して延出する延出部と、前記延出部の前方端部から下方へ延出する前垂れ部と、前記延出部の下方であって前記前垂れ部の後方に設けられ、吸水することによって体積が膨張する水膨張材を収容可能な収容部とを備えている。そして、前記収容部は、その前方もしくは下方、及び後方のそれぞれに通気孔を有するとともに、当該収容部内に前記水膨張材を収容及び当該収容部内から前記水膨張材を取り出し可能なように、少なくとも一部が開放可能に構成されている。
【0012】
これによると、収容部の少なくとも一部が開放可能(着脱可能、開閉可能)とされているので、収容部内に水膨張材を収容したり、収容部から水膨張材を取り出したりすることができる。また、収容部内に乾いた水膨張材を収容した状態では、収容部を、屋外と建物躯体と繋ぐ通気経路の一部又は全部とできる。そして、水膨張材が吸水することで通気経路を遮断することが可能となる。このため、水切り部材を取り付けるだけで床下浸水時に床下への水の浸入を抑制することが可能となる。また、収容部の少なくとも一部を開放すことで、水切り部材を取り付ける前後において、水膨張材を収容部内に収容したり、収容部から取り出したり、交換したりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水切り部材によると、水膨張材が吸水する前においては、第1通気孔及び第2通気孔の形成された収容部の収容空間を、屋外と建物躯体と繋ぐ通気経路の一部又は全部とできる。そして、水膨張材が吸水することで収容空間において第1通気孔及び第2通気孔の連通を遮断することが可能となる。このため、水切り部材を取り付けるだけで床下浸水時に床下への水の浸入を抑制することが可能となる。
また、本発明の水切り部材の別の観点によると、施工前であっても、施工後であっても、水膨張材を収容部内に収容したり、収容部から取り出したり、或いは交換することができる水切り部材を提供することができる。また、水切り部材を取り付けるだけで床下浸水時に床下への水の浸入を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水切り部材を建物躯体に取り付けた状態を示す概略断面図である。
【
図3】(a)は
図2に示す本体部の側面図であり、(b)は
図2に示す着脱部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る水切り部材1を
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水切り部材を建物躯体の一部である土台に取り付けた状態を示している。本実施形態における建物躯体100は、図示しない建築物を支持する基礎101、基礎パッキン102及び土台103などを有する。
【0016】
基礎101は、地面から上方に立ち上がって形成されており、
図1中紙面垂直方向Aに長尺に延在している。基礎101の屋外側の側面には、化粧モルタル(不図示)が形成されている。基礎パッキン102は、方向Aに沿って長尺に形成されており、基礎101上に設置されている。また、基礎パッキン102には、屋外側と屋内側とを連通させるための複数の通気孔102aが形成されている。複数の通気孔102aは、方向Aに沿って互いに離隔して形成されている。土台103も、方向Aに沿って長尺に形成されており、基礎パッキン102上に設置されている。土台103の屋外側の側面103aには、雨水などの浸入を防ぐための複数の水切り部材1が、方向Aに沿って並べて取り付けられている。各水切り部材1は、止水材41を介して突出部19(共に後述する)を基礎101上に当接させた状態で土台103に取り付けられている。
【0017】
本実施形態における水切り部材1は、
図2に示すように、取付部11と、延出部12と、前垂れ部13と、収容部14と、水膨張材30とを有しており、いずれも方向Aに長尺に形成されている。また、水切り部材1については、その屋外側を前方とし、屋内側を後方として以下に説明する。また、方向Aは、水平方向であって前後方向Bと直交する直交方向である。
【0018】
取付部11は、上下方向Cに沿って垂直平面状に形成された板状部である。取付部11は、その上端を土台103の側面103aに描かれた罫書きに沿わせた状態で土台103に釘などで取り付けられる。延出部12は、取付部11の下部から前方側斜め下方へ傾斜して延出された板状部である。これにより、土台103の側面103a側に形成される外壁材(不図示)から延出部12上に落下してきた雨水を前垂れ部13側へと案内することができる。
【0019】
前垂れ部13は、
図2に示すように、延出部12の前端から鉛直方向下方へ延出された板状部である。本実施形態における水切り部材1は、本体部2と、本体部2に着脱可能な着脱部3とを有する。本体部2は、
図3(a)に示すように、取付部11、延出部12、前板部13a、下板部21、接続板部22、後壁部16、突出部19、及び、止水材41などを有する。着脱部3は、
図3(b)に示すように、前板部13b、接続板部31、前壁15、底壁17、及び、水膨張材30などを有する。
【0020】
本体部2の前板部13aは、
図2に示すように、上下方向Cに沿って垂直平面状に形成された板状部である。また、前板部13aは、本体部2の延出部12の前端及び下板部21の前端と繋いでいる。着脱部3の前板部13bは、上下方向Cに沿って垂直平面状に形成された板状部である。前垂れ部13は、本体部2に着脱部3が取り付けられ、これら前板部13a,13bが上下に連なることで構成されている。
【0021】
収容部14は、
図2に示すように、延出部12の下方であって前垂れ部13の後方に設けられている。収容部14は、前壁15、後壁16、底壁17、上壁18及びこれら壁14~18によって囲まれた収容空間Sを有している。これら壁14~18は、方向Aに沿って水切り部材1の全長に亘って延在して形成されている。
【0022】
本体部2の下板部21は、
図2に示すように、着脱部3の接続板部31と対向する対向部21aと、対向部21aよりも後方に配置された後方部21bとを有する。対向部21aには、貫通孔21a1が形成されている。貫通孔21a1の内周面には、雌ネジが形成されている。収容部14の上壁18は、後方部21bによって構成されている。上壁18の下面(後方部21bの下面)には、下方に突出した5つの突起18aが形成されている。これら突起18aは、方向Aに沿って水切り部材1の全長に亘って延在している。本体部2の接続板部22は、下板部21の後端と取付部11の下端とを繋いでいる。
【0023】
収容部14の前壁15は、
図2及び
図3(b)に示すように、着脱部3の一部であり、上下方向Cに沿って垂直平面状に形成されている。また、前壁15には、厚み方向(前後方向)に貫通する複数の通気孔(第1通気孔)15aが形成されている。複数の通気孔15aは、方向Aに沿って並んで配置されている。本実施形態においては、通気孔15aが複数形成されているが、1つであってもよく、所望の開口面積を確保することが可能であればよい。
【0024】
収容部14の後壁16は、
図2及び
図3(a)に示すように、前壁15よりも後方に配置されており、上下方向Cに沿って垂直平面状に形成されている。また、後壁16は、本体部2の一部であり、下板部21と接続部22との接続箇所から下方に延出して形成されている。また、後壁16にも、厚み方向(前後方向)に貫通する複数の通気孔(第2通気孔)16aが形成されている。複数の通気孔16aは、方向Aに沿って並んで配置されている。本実施形態においては、通気孔16aが複数形成されているが、1つであってもよく、所望の開口面積を確保することが可能であればよい。
【0025】
また、後壁16の前面の下部には、前方に向かって突出する一対の突起部16bが形成されている。一対の突起部16bは、方向Aに沿って水切り部材1の全長に亘って延在している。また、一対の突起部16bは、上下方向に互いに離隔して配置されている。一対の突起16b間には、底壁17の後端を嵌合可能な嵌合部16cが形成されている。これにより、着脱部3を前後方向にスライドさせることで、着脱部3の挿入部17b(後述する)を嵌合部16cに嵌合させることが可能となる。これにより、着脱部3の本体部2への着脱作業が容易になり、作業性が向上する。
【0026】
突出部19は、
図2及び
図3(a)に示すように、本体部2の一部であり、後壁16の下端から後方に水平に突出して形成されている。また、突出部19は、方向Aに沿って水切り部材1の全長に亘って延在している。突出部19が後壁16よりも後方に突出していることで、
図1に示すように、水切り部材1を土台103に取り付けたときに、突出部19の先端と基礎パッキン102とが当接し、後壁16と基礎パッキン102との間に空間Vが形成される。このように空間Vが形成されることで、後壁16の通気孔16aが基礎パッキン102の通気孔102a以外の部分で、通気孔102aが後壁16の通気孔16a以外の部分で塞がれにくくなる。このため、建物躯体100への通気性の低下を防止することが可能となる。
【0027】
止水材41は、シート状に形成されており、突出部19及び一対の突起部16bのうちの最も下方に配置された突起部16bの下面全体に貼り付けられている。また、止水材41は、後述の水膨張材30と同様な材質から構成されている。なお、止水材41は、突出部19と基礎101との間からの水の浸入を止めることが可能であれば、水膨張材30以外の材質(例えば、ゴムや軟質性を有する樹脂などの材質)から構成されていてもよい。
【0028】
収容部14の底壁17は、
図2及び
図3(b)に示すように、着脱部3の一部であり、底板部17aと、挿入部17bとを有する。底板部17aは、前壁15の下端から後方に水平に延出する板状部である。挿入部17bは、底板部17aの上面の後端部に接続されており、当該後端部から後方に水平に延出する板状部である。このように底壁17は、底板部17aと挿入部17bとが階段状に接続された板状部に構成されている。
【0029】
着脱部3の接続板部31は、
図2及び
図3(b)に示すように、前板部13bの上端から後方に水平に延出する板状部である。また、接続板部31は、前板部13bの上端と前壁15の上端とを繋いでいる。接続板部31には、貫通孔31aが形成されている。貫通孔31aの内周面には、雌ネジが形成されている。着脱部3は、挿入部17bを本体部2の嵌合部16cに嵌合させた状態で、貫通孔31aを貫通孔21a1に対向させ、これら貫通孔31a,21a1にネジ50が下方からねじ込まれることで、本体部2に固定される。
【0030】
水膨張材30は、
図2に示すように、収容部14の収容空間S内に収容されている。より詳細には、水膨張材30は、
図2及び
図3(b)に示すように、底壁17上に貼り付けられて固定されている。なお、水膨張材30は、収容空間Sのどの位置に配置されていてもよいが、前壁15及び後壁16と離隔されていることが好ましい。これにより、水膨張材30が、吸水していない状態において、通気孔15a,16aを塞ぐのを抑制することが可能となる。また、水膨張材30は、収容空間Sに配置されておれば、特に底壁17などに固定されていなくてもよい。
【0031】
水膨張材30は、水を吸収することで体積が膨張する公知の材料から構成された部材である。本実施形態における水膨張材30は、ポリアクリル酸ナトリウム塩を主成分としたポリマーを繊維化した高吸水高吸湿繊維から構成されたものであるが、他の材質から構成されていてもよい。
【0032】
また、水膨張材30は、方向Aに沿って水切り部材1の全長に亘って延在した帯形状を有している。水膨張材30が吸水していない状態においては、
図2中実線で示すように、収容空間Sにおいて、水膨張材30と上壁18との間に前壁15の通気孔15aと後壁16の通気孔16aとを連通する通気経路が確保されている。一方、床下浸水などにより、前壁15の通気孔15aから水が収容空間S内に浸入した場合、水膨張材30が吸水する。水膨張材30が吸水した状態においては、
図2中二点鎖線で示すように、収容空間S全体に広がるように水膨張材30が膨張する。これにより、収容空間Sにおいて、通気経路が膨張した水膨張材30により遮断される。これにより、前壁15の通気孔15aと後壁16の通気孔16aとの連通が遮断される。また、上壁18の下面に複数の突起18aが形成されていることにより、
図2に示すように、膨張した水膨張材30の上部に複数の突起18が食い込む。このため、上壁18の下面と水膨張材30との間から水が浸入するのを効果的に防ぐことができる。
【0033】
続いて、水切り部材1の水膨張材30の交換方法について、以下に説明する。水膨張材30を交換するには、
図1に示すネジ50を下方より取り外す。この後、着脱部3を前方に引き出すことで、挿入部17bが嵌合部16cから抜ける。こうして、水膨張材30が取り付けられた着脱部3を取り外すことができる。この後、新しい水膨張材30が取り付けられた別の着脱部3、または、取り外した着脱部3から水膨張材30を取り外し新しい水膨張材30が貼り付けられた着脱部3の挿入部17bを、前方から嵌合部16cに挿入する。そして、着脱部3を後方に押し込み、貫通孔31aを貫通孔21a1に対向させ、これら貫通孔31a,21a1にネジ50を下方からねじ込む。こうして、着脱部3が本体部2に固定され、水膨張材30の交換が終了する。
【0034】
続いて、水切り部材1の建物躯体100への取り付け方法について、以下に説明する。
図2に示す吸水前の水膨張材30が収容された水切り部材1を準備する。そして、
図1に示すように、水切り部材1の取付部11を建物躯体100の土台103の側面103aに釘などで取り付ける。このとき、取付部11の上端を、土台103の側面103aに描かれた罫書きに沿わせた状態で、水切り部材1が土台103に取り付けられる。また、このとき、水切り部材1は、止水材41を介して突出部19を基礎101上に当接させた状態で土台103に取り付ける。こうして、水切り部材1が建物躯体100に取り付けられる。
【0035】
以上に述べたように、本実施形態における水切り部材1は、水膨張材30が吸水する前においては、通気孔15a(第1通気孔)及び通気孔16a(第2通気孔)の形成された収容部14の収容空間Sを、屋外と建物躯体100と繋ぐ通気経路の少なくとも一部することができる。そして、水膨張材30が吸水することで収容空間Sにおいて通気孔15a及び通気孔16aの連通を遮断することが可能となる。このため、水切り部材1を取り付けるだけで床下浸水時に床下への水の浸入を抑制することが可能となる。
【0036】
また、収容部14の前壁15及び底壁17が着脱可能に構成されている。これにより、前壁15及び底壁17を取り外すことで、水膨張材30を取り出して交換することが可能となる。また、底壁17を取り外すことが可能である場合は、水切り部材1を底壁17ごと交換することも可能となる。
【0037】
上述の実施形態においては、着脱部3が前壁15及び底壁17を有しているが、前壁15又は底壁17の少なくとも一部が本体部2から着脱可能に構成されていてもよい。また、水膨張材30が底壁17に固定されている場合は、その水膨張材30が固定された部分を少なくとも含む一部が水切り部材の本体部から着脱可能に構成されていることが好ましい。こうすることで、水膨張材30を容易に交換することが可能となる。また、収容部14の少なくとも一部が収容空間Sに配置された水膨張材30を交換可能に、水切り部材の本体部から着脱可能に構成されていてもよい。また、着脱部3と本体部2が一体的に構成されていてもよい。この場合、前壁15及び底壁17の少なくともいずれかが、収容部14内に水膨張材30を収容及び当該収容部14内から水膨張材30を取り出し可能なように(すなわち、収容空間Sが外部に開放可能に)、少なくとも一部が開放可能に構成されていてもよい。これにおいても上述の着脱可能な構成と同様な効果を得ることができる。
【0038】
また、突出部19の下面には、止水材41が取り付けられている。これにより、突出部19を基礎101上に配置しつつ水切り部材1を建物躯体100(土台103)へ取り付けたときに、基礎101上に不陸があったとしても突出部19と基礎101との間から水が浸入するのを防止することが可能となる。特に、水膨張材と同様の材質からなる止水材41を用いた場合には、より効果的に水の浸入を防止することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態における水切り部材1の収容部14は、前壁15、後壁16、底壁17及び上壁18を有しているが、収容部14は内部に水膨張材を収容するための収容空間を有しておれば、その形状をどのような形状であってもよい。また、第1通気孔としての通気孔15aが、底壁17にも形成されていてもよいし、底壁17だけに形成されていてもよい。このとき、通気孔15aは、底壁17の水膨張材(吸水前)30と前壁15との間に形成されていることが望ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 水切り部材
11 取付部
12 延出部
13 前垂れ部
14 収容部
15 前壁
15a 通気孔(第1通気孔)
16 後壁
16a 通気孔(第2通気孔)
17 底壁
18 上壁
19 突出部
30 水膨張材
41 止水材
100 建物躯体
101 基礎
102 基礎パッキン
103 土台
S 収容空間