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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167054
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】把持式穴掘建柱車の安全装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/68 20060101AFI20231116BHJP
   E21B 7/00 20060101ALI20231116BHJP
   E04H 12/34 20060101ALI20231116BHJP
   B66C 23/90 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B66C1/68 B
E21B7/00 B
E04H12/34
B66C23/90 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077924
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】岡安 良王
【テーマコード(参考)】
2D129
3F004
3F205
【Fターム(参考)】
2D129AB17
2D129DA12
2D129DC03
2D129DC13
2D129DC17
2D129DC33
2D129DC37
3F004AA01
3F004AB14
3F004AD03
3F004AD07
3F004AE01
3F004AG09
3F004AJ01
3F004EA04
3F004NA03
3F205AA20
3F205AC01
3F205BA01
3F205CB02
3F205DA04
3F205HA10
3F205HC02
3F205HC04
(57)【要約】
【課題】対象物の把持位置に依らず安全に作業することのできる把持式穴掘建柱車の安全装置を提供する。
【解決手段】把持式穴掘建柱車の安全装置は、ブームを起伏動させる起伏シリンダ16と、ブームの先端部に対してアームを上下方向に揺動させるアームシリンダ55と、アームの先端部に対して把持部を上下方向に揺動させる縦首振りシリンダ62と、把持部により対象物を把持した状態においてアームの揺動支点回りに作用するモーメントを算出するモーメント算出部103と、モーメント算出部103において算出されるモーメントが予め設定された規制モーメントを超過したときに縦首振りシリンダ62の作動を規制する規制部105とを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に起伏動可能に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に当該ブームの起伏面に沿って揺動可能に設けられたアームと、
前記アームの先端部に前記起伏面に沿って揺動可能に設けられて、対象物を把持可能な把持部と、
前記ブームを起伏動させるブーム起伏アクチュエータと、
前記ブームの先端部に対して前記アームを前記起伏面に沿って揺動させるアームアクチュエータと、
前記アームの先端部に対して前記把持部を前記起伏面に沿って揺動させる把持部アクチュエータと、
前記把持部により対象物を把持した状態において前記アームの揺動支点回りに作用するモーメントを検出するモーメント検出部と、
前記モーメント検出部において検出されるモーメントが予め設定された規制モーメントを超過したときに前記把持部アクチュエータの作動を規制する規制部とを備えることを特徴とする把持式穴掘建柱車の安全装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記モーメント検出部において検出されるモーメントが前記規制モーメントを超過したときに前記ブーム起伏アクチュエータの作動も規制することを特徴とする請求項1に記載の把持式穴掘建柱車の安全装置。
【請求項3】
前記把持部の水平面に対する傾斜角度を検出する傾斜角度検出部を備え、
前記規制部は、前記モーメント検出部において検出されるモーメントが前記規制モーメントを超過した場合、前記傾斜角度検出部の検出情報に基づき、前記傾斜角度が小さくなる方向に前記把持部を揺動させる前記把持部アクチュエータの作動を許容し、前記傾斜角度が大きくなる方向に前記把持部を揺動させる前記把持部アクチュエータの作動を規制することを特徴とする請求項1又は2に記載の把持式穴掘建柱車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電柱等の柱状物を把持する把持部を備えた把持式穴掘建柱車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一つである穴掘建柱車として、車体上に旋回動自在に設けられた旋回台と、旋回台に起伏動および伸縮動自在に設けられたブームと、ブームに装着されて電柱を建て入れるための建柱穴を掘削するオーガ装置と、ブームの先端部に設けられて電柱などの柱状物を把持する把持装置とを備えた把持式の穴掘建柱車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この把持式の穴掘建柱車を用いて地面に建柱穴を掘削する際には、オーガ装置をブームの先端部から吊り下げた状態でブームを適宜作動させ、そのオーガ装置を所定の掘削位置で回転作動させることで、所定の深さの建柱穴を形成することができる。この建柱穴の掘削が終了した後は、オーガ装置を引き上げてブームの側面に格納するとともに、把持装置に開閉自在に設けられた把持部により電柱を把持し、この電柱を把持した状態でブームを適宜作動させることで上記掘削された建柱穴に当該電柱を直接建て入れることができるようになっている。このような把持式の穴堀建柱車では、電柱をウィンチやクレーンなどを用いて吊り下げて作業を行う場合と比べて、一連の建柱作業を効率的に行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2‐81892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、把持装置の把持部により電柱(長尺物)を把持する際には、当該電柱の重心位置を把持することが望ましい。しかしながら、作業者が目視で電柱の重心位置を特定することは容易ではないため、把持部による電柱の把持位置が重心位置からずれてしまう場合がある。このとき、把持部を作動させて電柱の向きを回転させる場合などには、その電柱の重量によってブームの先端部回りに過大なモーメントが発生し、その過負荷により把持装置等の構造物が破損するおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、対象物の把持位置に依らず安全に作業することのできる把持式穴掘建柱車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る把持式穴掘建柱車の安全装置は、車体上に起伏動可能に設けられたブームと、前記ブームの先端部に当該ブームの起伏面に沿って揺動可能に設けられたアームと、前記アームの先端部に前記起伏面に沿って揺動可能に設けられて、対象物を把持可能な把持部と、前記ブームを起伏動させるブーム起伏アクチュエータと、前記ブームの先端部に対して前記アームを前記起伏面に沿って揺動させるアームアクチュエータと、前記アームの先端部に対して前記把持部を前記起伏面に沿って揺動させる把持部アクチュエータと、前記把持部により対象物を把持した状態において前記アームの揺動支点回りに作用するモーメントを検出するモーメント検出部と、前記モーメント検出部において検出されるモーメントが予め設定された規制モーメントを超過したときに前記把持部アクチュエータの作動を規制する規制部とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成の把持式穴掘建柱車の安全装置において、前記規制部は、前記モーメント検出部において検出されるモーメントが前記規制モーメントを超過したときに前記ブーム起伏アクチュエータの作動も規制することが好ましい。
【0008】
また、上記構成の把持式穴掘建柱車の安全装置において、前記把持部の水平面に対する傾斜角度を検出する傾斜角度検出部を備え、前記規制部は、前記モーメント検出部において検出されるモーメントが前記規制モーメントを超過した場合、前記傾斜角度検出部の検出情報に基づき、前記傾斜角度が小さくなる方向に前記把持部を揺動させる前記把持部アクチュエータの作動を許容し、前記傾斜角度が大きくなる方向に前記把持部を揺動させる前記把持部アクチュエータの作動を規制することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る把持式穴掘建柱車の安全装置によれば、アームの揺動支点回りのモーメントが予め設定された規制モーメントを超過したときに、把持部シリンダの作動を規制することで、把持部による対象物(電柱)の把持位置に依らず、把持部の揺動作動を適正且つ安全に行うことができるため、過大なモーメントの発生によってアームや把持部などの構造物が破損する事態を未然に防止して、作業の安全性の向上を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る把持式穴掘建柱車の安全装置では、アームの揺動支点回りのモーメントが予め設定された規制モーメントを超過したときに、把持部シリンダの作動と共にブーム起伏シリンダの作動も規制することで、過大なモーメントの発生によってアームや把持部などの構造物が破損する事態を確実に防止して、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る把持式穴掘建柱車の安全装置では、アームの揺動支点回りのモーメントが規制モーメントを超過した場合に、誤って非安全な方向(モーメントが増加する方向)へ操作しても把持部シリンダが作動せず、安全な方向(モーメントが減少する方向)へ操作したときのみ把持部シリンダが作動することで、モーメントが規制モーメントに達して作動規制が働いてしまった場合でも、作業者は立ち往生することなく把持部を安全に揺動作動させることができるため(作動規制が働いたときの咄嗟の操作が容易となるため)、安全性と作業性との両立を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る把持式穴掘建柱車の側面図である。
図2】上記把持式穴掘建柱車の平面図である。
図3】上記把持式穴掘建柱車の使用状態を示す側面図である。
図4】上記把持式穴掘建柱車に設けられた把持装置の斜視図である。
図5】上記把持装置の要部を右方から見た斜視図である。
図6】上記把持装置の要部を左方から見た斜視図である。
図7】上記把持装置の横断面図である。
図8】上記把持装置の縦断面図である。
図9】上記把持式穴掘建柱車の機能ブロック図である。
図10】上記把持装置が電柱を把持した状態を示す斜視図である。
図11】上記把持装置の縦首振り作動の規制方向と許容方向を説明するための模式図である。
図12】上記把持装置が電柱の重心位置から離れた位置を把持した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、本実施形態
に係る把持式穴掘建柱車1の全体構成について図1図3を参照して説明する。
【0014】
把持式穴掘建柱車1は、図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2の前後左右の四箇所には、車体2を持ち上げ支持するためのジャッキ9が配設されている。各ジャッキ9は、その内部に設けられたジャッキシリンダ(図示せず)を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、それにより車体2全体を安定させた状態とする。ジャッキ9の作動操作は、車体2の後部に設けられたジャッキ操作装置(図示せず)の操作により行われる。
【0015】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ14(図9を参照)により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台12が設けられている。この旋回台12には、ブーム13の基端部が上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。
【0016】
ブーム13は、旋回台12側から順に、基端ブーム13a、中間ブーム13bおよび先端ブーム13cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ15(図9を参照)の伸縮駆動により、ブーム13を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム13aと旋回台12との間には起伏シリンダ16が跨設されており、この起伏シリンダ16を伸縮駆動させることにより、ブーム13全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0017】
ブーム13には、基端ブーム13aと先端ブーム13cとに選択的に連結可能なオーガサポート17を介して、建柱穴の掘削を行うためのオーガ装置20が取り付けられている。オーガ装置20は、減速機付きのオーガモータ21と、オーガモータ21を回転駆動させることにより軸周りに回転されるアースオーガ22とを有して構成される。また、基端ブーム13aの側面には、オーガ装置20を格納状態で保持するオーガ格納装置18が配設されている。オーガ装置20は、オーガサポート17に垂直面内で上下に揺動可能に取り付けられており、オーガ装置20をオーガ格納装置18により基端ブーム13aの側方に沿って格納した格納位置と、オーガ装置20をオーガ格納装置18から外してアースオーガ22を地面に対して略垂直姿勢にした作業位置との間で揺動させることが可能である。
【0018】
オーガ装置20を使用するときは、図3のIに示すように、オーガサポート17を先端ブーム13cに連結させて、オーガ格納装置18から外したオーガ装置20を作業位置に揺動させた状態(アースオーガ22を地面に対して略垂直姿勢にした状態)で、アースオーガ22を回転させながらブーム13の倒伏動と縮小動とを連動させて直線的に下方へ移動させることで、建柱穴の掘削作業が可能である。一方、オーガ装置20を使用しないときは、図3のIIに示すように、オーガサポート17を基端ブーム13aに連結させて、オーガ装置20をオーガ格納装置18により基端ブーム13aの側方に沿った格納位置に格納保持する。オーガ装置20が格納位置にある状態においては、後述の把持装置50を用いて、電柱(図3に符号Pで示す:以下同様)の建柱作業や障害物の移設作業などの各種の作業を行うことができるようになっている。
【0019】
先端ブーム13cの先端部には、ブームヘッド19が固定されている。このブームヘッド19には、例えば電柱Pや樹木などの対象物(柱状物)を把持する把持装置50が取り付けられている。この把持装置50の構成について図4図8を追加参照して説明する。なお、図7図8では、図を見易くするために、断面を示すハッチングを省略している。また、以下では、説明の便宜上、図4に示す把持装置50の姿勢を基準として、図示する前後、左右、上下の矢印方向を、前後方向、左右方向、上下方向と呼称して説明する。
【0020】
把持装置50は、ブームヘッド19に上下方向に揺動(屈伸動)可能に取り付けられたアーム51と、アーム51の先端部に上下方向に揺動(縦首振り)可能に取り付けられた第1ジョイント部材60と、第1ジョイント部材60に左右方向に揺動(横首振り)可能に取り付けられた第2ジョイント部材70と、第2ジョイント部材70に回転可能に取り付けられたグリッパ80とを備えて構成される。なお、本実施形態では、アーム51、第1ジョイント部材60、第2ジョイント部材70、後述の縦首振りシリンダ62、横首振りシリンダ71、グリッパモータ79などにより、グリッパ80の把持部81の姿勢を変化させる支持機構が構成されている。
【0021】
アーム51は、軸方向(長手方向)の一端部が連結ピン52を介してブームヘッド19に枢結され、軸方向(長手方向)の他端部が連結ピン53を介して第1ジョイント部材60に枢結されている。ブームヘッド19と第1ジョイント部材60との間には、アームシリンダ55が取り付けられている。アームシリンダ55のロッド側端部は、ブームヘッド19に連結ピン56を介して枢結されている。アームシリンダ55のボトム側端部は、第1ジョイント部材60に連結ピン57を介して枢結されている。このアームシリンダ55を伸縮作動させることで、アーム51をブームヘッド19に対して連結ピン52を中心に上下方向に揺動自在(屈伸動自在)に構成されている。
【0022】
第1ジョイント部材60は、先端側が開放された上下二股状に形成されており、この二股状の両端部に第2ジョイント部材70が上下一対の連結ピン61を介して枢結されている。第1ジョイント部材60とアーム51との間には、縦首振りシリンダ62が設けられている。縦首振りシリンダ62のボトム側端部は、アーム51の基端側に連結ピン63を介して枢結されている。縦首振りシリンダ62のロッド側端部は、第1ジョイント部材60の上端側に連結ピン64を介して枢結されている。この縦首振りシリンダ62を伸縮作動させることで、第1ジョイント部材60をアーム51に対して連結ピン53を中心に上下方向に揺動自在(縦首振り自在)に構成されている。
【0023】
第2ジョイント部材70は、第1ジョイント部材60によって上下から挟まれるように支持されている。また、第1ジョイント部材60の上端部には、横首振りシリンダ71が設けられている。横首振りシリンダ71は、ボトム側端部が第1ジョイント部材60の先端部に枢結され、ロッド側端部が第2ジョイント部材70の後端部に枢結されている。この横首振りシリンダ71を伸縮作動させることで、第2ジョイント部材70を第1ジョイント部材60に対して連結ピン61を中心に左右方向に揺動自在(横首振り自在)に構成されている。
【0024】
グリッパ80は、対象物を把持する把持部81と、把持部81を支持して第2ジョイント部材70に回転自在に設けられたグリッパハウジング86と、把持部81を開閉作動する開閉機構93とを備えて構成される。
【0025】
把持部81は、一対の把持爪82と、この一対の把持爪82を互いに接近又は離反する方向(開閉方向)に開閉自在に支持する上下一対の支持板部83とを備えている。把持爪82は、例えば電柱Pや樹木などの種々の対象物(柱状物)を把持可能に構成されている。この把持爪82の基端部は、上下の支持板部83に連結ピン84を介して枢結されている。把持爪82の先端部には、互い違いに切欠き82a,82bが形成されており、この先端部同士が互いに交差(オーバーラップ)可能に構成されている。支持板部83には、不図示のアタッチメント(例えば樹木を伐採するための伐採装置)を着脱自在に装着するための平板状の上側ブラケット85が設けられている。
【0026】
グリッパハウジング86は、上下の支持板部83に連結されて第2ジョイント部材70
に回転自在に支持された支持筒部87と、この支持筒部87の基端側に固定されて第1ジョイント部材60と第2ジョイント部材70との間に配設されたシリンダブラケット部92とを備えている。
【0027】
支持筒部87は、中空の角筒状に形成された内側筒部88と、この内側筒部88の外周側に設けられて中空の円筒状に形成された外側筒部89とを有した二重構造となっている。内側筒部88の内周側には、後述の開閉機構93の摺動部材95が前後方向にスライド自在に取り付けられている。外側筒部89の外周側には、この外側筒部89と同心状にウォームホイール90が取り付けられている。このウォームホイール90は、第2ジョイント部材70の内側に回転自在に支持されたウォームピニオン91と噛合している。第2ジョイント部材70の上端部には、グリッパモータ79が取り付けられており、このグリッパモータ79の出力軸にウォームピニオン91が減速機を介して連結されている。このグリッパモータ79を正転方向に回転作動すると、ウォームピニオン91およびウォームホイール90を介して、グリッパ80全体が回転軸線X(図7を参照)を中心に所定方向に回転する。一方、グリッパモータ79を逆転方向に回転作動すると、ウォームピニオン91およびウォームホイール90を介して、グリッパ80全体が回転軸線X(図7を参照)を中心に所定方向とは逆方向に回転する。なお、図4に示した把持装置50の姿勢においては、グリッパ80(把持部81)の回転軸線X方向は前後方向に対応し、把持部81の開閉方向(把持方向)は左右方向に対応する。
【0028】
開閉機構93は、一対のリンク部材94と、この一対のリンク部材94にリンク結合される摺動部材95と、この摺動部材95を前後にスライドさせるグリッパシリンダ99とを備えている。各リンク部材94の一端部は、把持爪81の中間部に連結ピン96を介して枢結されている。また、一対のリンク部材94は、各リンク部材94の他端部同士が上下に重なった状態で摺動部材95の先端部に連結ピン97を介して枢結されている。この摺動部材95は、内側筒部88の中空部に挿入されて、当該内側筒部88の内周面に沿って摺動自在(往復動自在)に取り付けられている。この摺動部材95の外周面と内側筒部88の内周面との間には、摺動部材95のスライド(往復移動)を案内するための合成樹脂製のスライダ98が取り付けられている。この摺動部材95の基端部には、グリッパシリンダ99のロッド側端部が連結されている。なお、このグリッパシリンダ99のボトム側端部は、グリッパハウジング86のシリンダブラケット部92に連結されている。このグリッパシリンダ99を伸長作動すると、当該伸長方向に摺動部材95が摺動してリンク部材94が互いに離反する方向に揺動する。それにより、把持爪82が連結ピン84を支点として開方向に揺動することで(把持爪82が開方向に作動(開作動)することで)対象物の把持を解放することができる。一方、グリッパシリンダ99を縮小作動すると、当該縮小方向に摺動部材95が摺動してリンク部材94が互いに接近する方向に揺動する。それにより、把持爪82が連結ピン84を支点として閉方向に揺動することで(把持爪82が閉方向に作動(閉作動)することで)対象物を把持することができる。なお、開閉機構93は、左右対称に構成されているため、一対の把持爪82は左右対称に開閉作動するようになっている。
【0029】
車体2における旋回台12の側部には、各作業装置(旋回台12、ブーム13、オーガ装置20、把持装置50)の作動を操作するための操作席30が設けられている。この操作席30の前方には、作業者が座ったままの姿勢で操作が可能な操作装置31が配設されている。操作装置31には、図9に示すように、ブーム13の旋回操作および起伏操作を行うためのブーム旋回起伏操作レバー32a、ブーム13の伸縮操作およびアーム51の屈伸操作を行うためのブーム伸縮屈伸操作レバー32b、オーガスクリュー25の回転操作を行うためのオーガ操作レバー32c、把持部81の縦首振り操作を行うための把持部縦首振り操作レバー32d、把持部81の横首振り操作を行うための把持部横首振り操作レバー32e、把持部81の回転操作を行うための把持部回転操作レバー32f、把持部
81の開閉操作を行うための把持部開閉操作レバー32gなどが設けられている。
【0030】
また、操作装置31には、図9に示すように、モード選択スイッチ33が設けられている。モード選択スイッチ33は、中立位置および傾倒位置のいずれかに切り換え可能なトグルスイッチにより構成されている(作業者が手を離しても当該切り換えられた操作位置を保持する構成となっている)。モード選択スイッチ33が中立位置に選択されているときは通常モードが設定され、モード選択スイッチ33が傾倒位置に選択されているときは把持部垂直作動モードが設定される。通常モードは、各操作レバー32a~32gの操作に応じて各油圧アクチュエータを独立して作動させて、ブーム13の起伏作動・伸縮作動・旋回作動、オーガ装置20(オーガスクリュー25)の回転作動、アーム51の屈伸作動、把持部81の縦首振り作動・横首振り作動・回転作動・開閉作動などを個別に行うことができるモードである。把持部垂直作動モードは、ブーム旋回起伏操作レバー32aの操作に応じて起伏シリンダ16と伸縮シリンダ15と縦首振りシリンダ62とを組み合わせて作動(連動作動)させて、把持部81を垂直方向(上下方向)に移動させることができるモードである。
【0031】
ここで、旋回台12,ブーム13、オーガ装置20、把持装置50などの作動機構は、図9に示すように、操作装置31からの操作信号を受けて、旋回モータ14、伸縮シリンダ15、起伏シリンダ16、オーガモータ22、アームシリンダ55、縦首振りシリンダ62、横首振りシリンダ71、グリッパモータ79、グリッパシリンダ99(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも呼称する)を制御するコントローラ100と、この油圧アクチュエータを駆動するための作動油を供給する油圧ユニット110とを備えて構成される。
【0032】
操作装置31の操作により出力された操作信号は、コントローラ100に入力される。コントローラ100は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット110(制御バルブ112)に出力する。
【0033】
油圧ユニット110は、作動油を吐出する油圧ポンプ111と、油圧ポンプ111から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ112を有して構成される。油圧ポンプ111は、車両のエンジンからPTO機構(図示せず)を介して取り出した動力により駆動される。制御バルブ112は、旋回モータ14に対応する電磁比例制御バルブV1、伸縮シリンダ15に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ16に対応する電磁比例制御バルブV3、オーガモータ22に対応する電磁比例制御バルブV4、アームシリンダ55に対応する電磁比例制御バルブV5、縦首振りシリンダ62に対応する電磁比例制御バルブV6、横首振りシリンダ71に対応する電磁比例制御バルブV7、グリッパモータ79に対応する電磁比例制御バルブV8、グリッパシリンダ99に対応する電磁比例制御バルブV9を有している。この制御バルブ112は、コントローラ100からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V9のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ111から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(旋回台12、ブーム13、オーガ装置20、把持装置50の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0034】
次に、本実施形態の把持式穴掘建柱車1に設けられた安全装置について説明する。本実施形態の安全装置は、図9に示すように、ブーム起伏角度検出器120と、ブーム伸長量検出器121と、ブーム旋回角度検出器122と、アーム屈伸角度検出器123と、把持部傾斜角度検出器124と、アームシリンダ軸力検出器125と、コントローラ100とを主体に構成されている。
【0035】
ブーム起伏角度検出器120は、基端ブーム13a内に設けられて、ブーム13の起伏角度θを検出する。ブーム伸長量検出器121は、基端ブーム13aの基端部に設けられて、ブーム13の長さ(伸長量)Lを検出する。ブーム旋回角度検出器122は、車体2に設けられて、ブーム13(旋回体12)の旋回角度θを検出する。アーム屈伸角度検出器123は、ブームヘッド19とアーム51との連結部(連結ピン52)の近傍位置に設けられて、ブームヘッド19に対するアーム51の屈伸角度(揺動角度)φを検出する。これら4つの検出器120~123は、その検出した情報(ブーム13の起伏角度θ、伸長量L、旋回角度θ、アーム51の屈伸角度φ)に応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ100に出力する。
【0036】
把持部傾斜角度検出器124は、把持部81(支持板部83)の上面に取り付けられている。この把持部傾斜角度検出器124は、把持部81の水平面に対する前後方向の傾斜角度Ψを検出する一軸傾斜角度検出器である。この把持部傾斜角度検出器124は、把持部81の前後方向の傾斜角度Ψを検出して、その検出した傾斜角度Ψに応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ100に出力する。
【0037】
アームシリンダ軸力検出器125は、ブームヘッド19とアームシリンダ55のロッド側端部とを枢結する上記の連結ピン56(図10を参照)に設けられたピン型ロードセルである。このアームシリンダ軸力検出器125は、アームシリンダ55の軸力(アームシリンダ55から連結ピン56に作用する軸方向の荷重)Fを検出して、その検出した軸力Fに応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ100に出力する。
【0038】
コントローラ100は、位置算出部101と、作動制御部102と、モーメント算出部103と、モーメント比較部104と、規制部105とを備えている。
【0039】
位置算出部101は、ブーム起伏角度検出器120、ブーム伸長量検出器121、ブーム旋回角度検出器122からの検出情報(ブーム13の起伏角度θ1、伸長量L、旋回角度θ2)に基づき、車体2に対するブーム13の先端部の位置を算出する。
【0040】
作動制御部102は、モード選択スイッチ33にて選択された作動モードに基づき、操作装置31から出力された操作信号(操作指令)に従って各アクチュエータの作動を制御する。以下、各作動モードについて説明する。
【0041】
作動制御部102は、モード選択スイッチ33が通常モードに選択されているときに各操作レバー32a~32gが操作されると、各操作レバー32a~32gの操作に応じて各油圧アクチュエータをそれぞれ独立して作動させる。具体的には、ブーム旋回起伏操作レバー32aが前方(操作しているオペレータを基準とした前後左右方向:以下同様)に傾倒操作されたときは、起伏シリンダ16を縮小作動させてブーム13を倒伏作動させ、ブーム旋回起伏操作レバー32aが後方に傾倒操作されたときは、起伏シリンダ16を伸長作動させてブーム13を起仰作動させる。また、ブーム伸縮屈伸操作レバー32bが前方に傾倒操作されたときは、伸縮シリンダ15を伸長作動させてブーム13を伸長作動させ、ブーム伸縮屈伸操作レバー32bが後方に傾倒操作されたときは、伸縮シリンダ15を縮小作動させてブーム13を縮小作動させる。また、ブーム旋回起伏操作レバー32aが左方に傾倒操作されたときは、旋回モータ14を正回転作動させてブーム13を左回り方向に旋回作動させ、ブーム旋回起伏操作レバー32aが右方に傾倒操作されたときは、旋回モータ14を逆回転作動させてブーム13を右回り方向に旋回作動させる。また、オーガ操作レバー32cが前方に傾倒操作されたときは、オーガモータ22を逆回転作動させてオーガスクリュー25を逆転方向に回転作動させ、オーガ操作レバー32cが後方に傾倒操作されたときは、オーガモータ22を正回転作動させてオーガスクリュー25を正転方向に回転作動させる。また、ブーム伸縮屈伸操作レバー32bが左方に傾倒操作され
たときは、アーム51をブーム13の先端部に対して下方に屈伸作動させ、ブーム伸縮屈伸操作レバー32bが右方に傾倒操作されたときは、アーム51をブーム13の先端部に対して上方に屈伸作動させる。また、把持部縦首振操作レバー32dが前方に傾倒操作されたときは、縦首振りシリンダ62を伸長作動させて把持部81を下方に揺動(縦首振り作動)させ、把持部縦首振り操作レバー32dが後方に傾倒操作されたときは、縦首振りシリンダ62を縮小作動させて把持部81を上方に揺動(縦首振り作動)させる。また、把持部横首振り操作レバー32eが左方に傾倒操作されたときは、横首振りシリンダ71を伸長作動させて把持部81を左方に揺動(横首振り作動)させ、把持部縦首振り操作レバー32eが右方に傾倒操作されたときは、横首振りシリンダ71を縮小作動させて把持部81を右方に揺動(横首振り作動)させる。また、把持部回転操作レバー32fが前方に傾倒操作されたときは、グリッパモータ79を正回転作動させて把持部81を右回りに回転作動させ、把持部回転操作レバー32fが後方に傾倒操作されたときは、グリッパモータ79を逆転作動させて把持部81を左回りに回転作動させる。また、把持部開閉操作レバー32gが前方に傾倒操作されたときは、グリッパシリンダ99を縮小作動させて把持部81を閉方向(対象物を把持する方向)に作動させ、把持部開閉操作レバー32gが後方に傾倒操作されたときは、グリッパシリンダ99を伸長作動させて把持部81を開方向(対象物の把持を解放する方向)に作動させる。
【0042】
また、作動制御部102は、モード選択スイッチ33が把持部垂直作動モードに選択されているときにブーム旋回起伏操作レバー32aが操作されると、起伏シリンダ16の伸縮作動と伸縮シリンダ15の伸縮作動と縦首振りシリンダ62の伸縮作動とを組み合わせて連動作動させ、ブーム旋回起伏操作レバー32aの操作に応じて把持部81(把持部81に把持された対象物)を垂直方向に移動させる。具体的には、ブーム旋回起伏操作レバー32aが前方に傾倒操作されたときは、起伏シリンダ16の縮小作動と伸縮シリンダ15の縮小作動と縦首振りシリンダ62の縮小作動とを組み合わせて把持部81を垂直下方に移動させ、ブーム旋回起伏操作レバー32aが後方に傾倒操作されたときは、起伏シリンダ16の伸長作動と伸縮シリンダ15の伸長作動と縦首振りシリンダ62の伸長作動とを組み合わせて把持部81を垂直上方に移動させる。
【0043】
モーメント算出部103は、アームシリンダ軸力検出器125において検出されたアームシリンダ55の軸力Fと、ブーム起伏角度検出器120において検出されたブーム13の起伏角度θと、アーム屈伸角度検出器123において検出されたアーム51の屈伸角度φとに基づき、連結ピン(ブームヘッドピン)52回りに作用するモーメントMa(図10を参照)を算出する。ここで、アームシリンダ軸力検出器125において検出される軸力Fは、連結ピン(ブームヘッドピン)52を揺動支点として把持装置50側から作用する荷重であり、この軸力Fと作用する腕の長さ(後述の法線距離D)との積が、把持装置50側から加わる連結ピン(ブームヘッドピン)52回りのモーメントMaである。すなわち、モーメントMaは、把持装置50の重量や、把持部83にかかる負荷荷重(把持した電柱Pの重量)などによって連結ピン52回りに作用する実モーメントをアームシリンダ55にかかる軸力Fにより換算したものである。
【0044】
具体的には、モーメント算出部103は、ブーム起伏角度検出器120において検出されたブームの起伏角度θと、アーム屈伸角度検出器123において検出されたアーム51の屈伸角度φとに基づき、ブーム13の軸線とアーム51の軸線とのなす角度(相対角度)を算出し、この相対角度に応じたアームシリンダ55の軸線とアーム51の揺動支点(連結ピン52)との法線距離D(図10を参照)を算出する。なお、この法線距離Dは、ブーム13およびアーム51の両軸線間の相対角度を変数とする関数に基づき算出される。そして、モーメント算出部103は、アームシリンダ軸力検出器125において検出されたアームシリンダ55の軸力Fと、上記算出された法線距離Dとに基づき、モーメントMaを演算式「Ma=F×D」により導出する。
【0045】
モーメント比較部104は、モーメント算出部103において算出されたモーメントMaと、予め設定された規制モーメントMbとを比較して、モーメントMaが規制モーメントMbを超過したときに、規制信号を出力する。
【0046】
規制部105は、モーメント比較部104から規制信号を入力した場合、操作装置31からの操作信号の如何に拘わらず、モーメントMaが増加する方向へのブーム13の起伏作動および把持部81の縦首振り作動を規制する。つまり、規制部105は、モーメント比較部104から規制信号を入力した場合、モーメントMaが規制モーメントMbを下回るまでの間、モーメントMaが増加する方向へのブーム13の起伏作動および把持部81の縦首振り作動を規制する。本実施形態では、把持部81の縦首振り作動は、モーメントMaの増減(電柱Pの前後方向の重心移動)に影響を与える主たる作動となるため、この把持部81の縦首振り作動を作動規制の対象とするとともに、ブーム13の起伏作動を作動規制の対象としている。一方、規制部105は、モーメント比較部104から規制信号を入力した場合であっても、モーメントMaが減少する方向への把持部81の縦首振り作動は許容する(但し、モーメントMaが減少する方向であってもブーム13の起伏作動は許容しない)。なお、この作動規制は、作動制御部101から制御バルブ112へ出力される指令信号(モーメントMaが増加する方向へ把持部81を縦首振り作動させるための指令信号、ブーム13を起伏作動させるための指令信号)を遮断することにより行われる。
【0047】
ここで、把持部81の縦首振り作動を規制する場合の具体例について説明する。具体的には、規制部105は、モーメント比較部104から規制信号を入力した場合、把持部81の縦首振り作動に対する操作信号に対して、把持部傾斜角度検出器124において検出される把持部81の傾斜角度Ψに基づき、把持部81の傾斜角度Ψが小さくなる方向(モーメントMaが減少する方向)への縦首振り作動を許容し、把持部81の傾斜角度Ψが大きくなる方向(モーメントMaが増加する方向)への縦首振り作動を規制する。把持部81の傾斜角度Ψが小さくなる方向(モーメントMaが減少する方向)とは、把持部81に把持された電柱Pが垂直姿勢に近付く方向であり、把持部81の傾斜角度Ψが大きくなる方向(モーメントMaが増加する方向)とは、把持部81に把持された電柱Pが垂直姿勢から遠ざかる方向である。例えば、図11(A)に示すように、把持部81に把持された電柱Pの上部が前方側に傾き、且つ、当該電柱Pの重心位置が把持部81よりも前方側にある状態において、モーメントMaが規制モーメントMbを超過した場合には、把持部81の上方向(Y1方向:電柱Pを垂直姿勢に近付ける方向)への縦首振り作動は許容されるが、把持部81の下方向(Y2方向:電柱Pを垂直姿勢から遠ざける方向)への縦首振り作動は規制される。一方、図11(B)に示すように、把持部81に把持された電柱Pの上部が後方側に傾き、且つ、当該電柱Pの重心位置が把持部81より前方側にある状態において、モーメントMaが規制モーメントMbを超過した場合には、把持部81の下方向(Y2方向:電柱Pを垂直姿勢に近付ける方向)への縦首振り作動は許容されるが、把持部81の上方向(Y1方向:電柱Pを垂直姿勢から遠ざける方向)への縦首振り作動は規制される。
【0048】
次に、本実施形態の把持式穴掘建柱車1において建柱作業時における安全装置の作用について説明する。なお、以下の説明において特に言及しない場合には、モード選択スイッチ33は通常モードが選択されているものとする。
【0049】
把持式穴掘建柱車1により建柱作業を行う場合、まず、操作装置31を操作して、ブーム13を適宜作動させるとともに、アーム51の屈伸作動や、把持部81の縦首振り作動、横首振り作動、回転作動などを行わせることで、把持部81を電柱P(例えば作業現場に横置きされた電柱P)の近くまで移動させ、把持部81と電柱Pとの位置合わせをする
。続いて、一対の把持爪82を閉方向に作動(閉作動)させて、把持部81に電柱Pを把持させる。次いで、ブーム13や把持装置50を適宜作動させ、把持部81に把持した電柱Pを持ち上げて建柱穴(オーガ装置20により掘削した建柱穴)の上方まで移動させる。このとき、図12に示すように、把持部81は電柱Pの重心位置から離れた位置を把持しており、当該電柱Pの上部は前方に傾き、且つ、当該電柱Pの重心位置は把持位置よりも前方にずれているものとする。この状態から、ブーム13や把持装置50を適宜作動させ、電柱Pを垂直姿勢に近付ける。ここで、作業者の誤操作によって、把持部81を図12のY2方向(電柱Pを垂直姿勢から遠ざける方向)に縦首振り作動させることで、連結ピン52回りに作用するモーメントMaが増大して規制モーメントMbを超えた場合には、当該実行中の首振り作動と、ブーム13の起伏作動とが規制される(自動的に停止される)。それにより、把持装置50が過負荷状態となって破損する事態を未然に防止することができる。なお、モーメントMaが規制モーメントMbを超えた場合には、把持部81を図12のY2方向(モーメントMaが増加する方向)に首振り作動させることは規制されるが、把持部81を図12のY1方向(モーメントMaが減少する方向)に首振り作動させることは許容されている。そのため、作業者は操作装置31を再度操作して、把持部81を図12のY1方向に縦首振り作動させることで、連結ピン52回りのモーメントMaを徐々に減少させながら、電柱Pを垂直姿勢に近付けていくことができる。そして、把持部81を縦首振り作動させて把持部81の前後方向の傾きを調整するとともに、把持部81を回転作動させて把持部81の左右方向の傾きを調整することで、この把持部81に把持された電柱Pを垂直姿勢とすることができる。なお、垂直姿勢にした電柱Pと建柱穴との位置(前後左右の位置)がずれている場合には、ブーム13を伸縮作動および旋回作動させることで、電柱Pを垂直姿勢に維持したままで水平方向(前後左右方向)に移動させて、電柱Pを建柱穴の真上の位置に配置することができる。
【0050】
続いて、垂直姿勢にした電柱Pを建柱穴に向けて垂直下方に移動させるため、モード選択スイッチ33を操作して、通常モードから把持部垂直作動モードに切り替える。モード選択スイッチ33を把持部垂直作動モードに切り替えた後、ブーム旋回起伏操作レバー32aの操作に応じて、ブーム13の起伏作動および伸縮作動と把持部81の縦首振り作動とを連動させ、把持部81を垂直下方に移動させることで、把持部81に把持された電柱Pを建柱穴に差し込んでいく。そして、電柱Pを建柱穴の穴底まで挿入した後、電柱Pと建柱穴との隙間に土砂等を入れて固めることで(掘削した土や破石などを埋め戻すことで)、電柱Pの下端部を建柱穴に埋設して締固めることができる。それにより、電柱Pを建柱穴に設置する建柱作業が完了する。
【0051】
以上、本実施形態に係る安全装置によれば、アーム51の揺動支点回りのモーメントMaが予め設定された規制モーメントMbを超過したときに、把持部81の縦首振り作動を規制することで、把持部81による電柱Pの把持位置に依らず、把持部81の縦首振り作動を適正且つ安全に行うことができるため、過大なモーメントMaの発生によって把持装置50やブームブラケット19などの構造物が破損する事態を未然に防止して、作業の安全性の向上を図ることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係る安全装置では、アーム51の揺動支点回りのモーメントMaが予め設定された規制モーメントMbを超過したときに、把持部81の縦首振り作動と共にブーム13の起伏作動も規制することで、過大なモーメントMaの発生によって把持装置50やブームブラケット19などの構造物が破損する事態を確実に防止して、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る安全装置では、アーム51の揺動支点回りのモーメントMaが規制モーメントMbを超過した場合に、誤って非安全な方向(モーメントMaが増加する方向)へ操作しても起伏シリンダ16および縦首振りシリンダ62が作動せず、安全な方
向(モーメントMaが減少する方向)へ操作したときのみ縦首振りシリンダ62が作動することで、モーメントMaが規制モーメントMbに達して作動規制が働いてしまった場合でも、作業者は立ち往生することなく把持部81を安全に縦首振り作動させることができるため(作動規制が働いたときの咄嗟の操作が容易となるため)、安全性と作業性との両立を図ることが可能である。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0055】
上記実施形態では、アームシリンダ55の軸力Fを連結ピン56に設けられたピン型ロードセル(アームシリンダ軸力検出器125)により検出したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、アームシリンダ55のボトム側油室およびロッド側油室に供給される作動油の圧力をそれぞれ検出し、これらの圧力差と両油室の受圧面積との関係からアームシリンダ55の軸力Fを検出するように構成してもよい。
【0056】
上記実施形態では、モーメントMaが規制モーメントMbを超過した場合に、把持部81の縦首振り作動を規制したが、この構成に限定されるものではなく、この把持部81の縦首振り作動の他に、アーム51の屈伸作動や把持部81の回転作動などの把持装置50の他の作動についても作動規制の対象としてもよい。また、モーメントMaが規制モーメントMbを超過した場合には、この作動規制に加えて、例えば、警報音、警報ランプ、警報表示などによる警報作動を発して、作業者に対して注意喚起を図るようにしてもよい。
【0057】
上記実施形態では、車体2上の操作席30に操作装置31が設けられているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、操作装置31を有線式または無線式のリモコン操作装置(可搬型の操作装置)により構成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の穴堀建柱車を例示したが、この構成に限定されるものではなく、電気駆動型(バッテリ駆動型)の穴掘建柱車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の穴掘建柱車であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 把持式穴掘建柱車
2 車体
13 ブーム
16 起伏シリンダ(ブーム起伏シリンダ)
19 ブームブラケット
31 操作装置
50 把持装置
51 アーム
52 連結ピン(揺動支点)
55 アームシリンダ(アームアクチュエータ)
62 縦首振りシリンダ(把持部アクチュエータ)
80 グリッパ
81 把持部
100 コントローラ
101 位置算出部
102 作動制御部
103 モーメント算出部(モーメント検出部)
104 モーメント比較部
105 規制部
124 把持部傾斜角度検出器(傾斜角度検出部)
125 アームシリンダ軸力検出器(モーメント検出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12