(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167059
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】調光シート、および調光シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20231116BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20231116BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1339 500
G02F1/1334
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077932
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA03
2H088JA06
2H088KA02
2H088KA26
2H088KA27
2H088MA04
2H189AA04
2H189AA05
2H189DA04
2H189DA07
2H189DA48
2H189DA49
2H189EA02X
2H189EA07X
2H189FA16
2H189HA16
2H189JA06
2H189KA01
2H189LA01
2H189LA03
2H189LA05
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】面内の視認性を均一にする調光シート、および調光シートの製造方法を提供する。
【解決手段】2つの透明基材層であって各別の電極層14F,14Bを備えた透明基材層と、2つの透明基材層の間に位置する調光層12と、を備え、調光層12が、空隙を区画する透明樹脂層と、空隙を充填する液晶組成物と、調光層の厚さを定めるスペーサーと、を備える調光シート11であって、各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、各透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層と、
2つの前記透明基材層の間に位置する調光層と、を備え、
前記調光層が、
空隙を区画する透明樹脂層と、
前記空隙を充填する液晶組成物と、
前記調光層の厚さを定めるスペーサーと、
を備える調光シートであって、
各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、
各透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である
ことを特徴とする調光シート。
【請求項2】
2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層と、
2つの前記透明基材層の間に位置する調光層と、を備え、
前記調光層が、
空隙を区画する透明樹脂層と、
前記空隙を充填する液晶組成物と、
前記調光層の厚さを定めるスペーサーと、
を備える調光シートであって、
各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、
2つの透明基材層の内部ヘイズの合計が0.2%以上4.0%以下である
ことを特徴とする調光シート。
【請求項3】
各透明基材層は、前記電極層を支持する支持層を備え、
各透明基材層の外部ヘイズが、当該透明基材層に支持される前記電極層の外部ヘイズであり、
各支持層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である
請求項1または2に記載の調光シート。
【請求項4】
各支持層は、当該支持層に内在する粒子を含有する
請求項3に記載の調光シート。
【請求項5】
前記粒子の平均粒子径は、0.8μm以上5.0μm以下である
請求項4に記載の調光シート。
【請求項6】
各支持層は、前記電極層の下地である下地層と、当該下地層を支持する基材とを備え、
各下地層は、当該下地層に内在する粒子を含有する
請求項3に記載の調光シート。
【請求項7】
前記粒子を囲う下地樹脂層と前記粒子との間の屈折率差は、0.01以上0.05以下である
請求項4に記載の調光シート。
【請求項8】
各透明基材層は、前記調光層に接する接触面を備え、
前記接触面の算術平均粗さSaは、20nm以下である
請求項1または2に記載の調光シート。
【請求項9】
透明状態の前記調光シートにおけるヘイズが6%以上10%以下である
請求項1または2に記載の調光シート。
【請求項10】
調光層は、空隙を区画する透明樹脂層、前記透明樹脂層に埋められるスペーサー、および前記空隙を充填する液晶組成物を備え、
2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層との間に前記調光層を形成するための塗工液を塗工することと、
前記塗工液の硬化によって前記調光層を形成することと、
を含む調光シートの製造方法であって、
前記調光シートにおける各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、かつ各透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である
ことを特徴とする調光シートの製造方法。
【請求項11】
調光層は、空隙を区画する透明樹脂層、前記透明樹脂層に埋められるスペーサー、および前記空隙を充填する液晶組成物を備え、
2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層との間に前記調光層を形成するための塗工液を塗工することと、
前記塗工液の硬化によって前記調光層を形成することと、
を含む調光シートの製造方法であって、
前記調光シートにおける各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、かつ2つの透明基材層の内部ヘイズの合計が0.2%以上4.0%以下である
ことを特徴とする調光シートの製造方法。
【請求項12】
各透明基材層の外部ヘイズが当該透明基材層に支持される前記電極層の外部ヘイズであるように、支持層に前記電極層を積層することを前記透明基材層の形成に含み、
前記支持層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である
請求項10または11に記載の調光シートの製造方法。
【請求項13】
前記電極層を積層するための下地層を基材に積層することによって前記支持層を形成することを含み、
前記下地層は、前記下地層に内在する粒子を含有する
請求項12に記載の調光シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透明状態と不透明状態とを有する調光シート、および調光シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、空隙を区画する透明樹脂層と、空隙を充填する液晶組成物とを備える。透明樹脂層に印加される電圧の変更は、液晶化合物の配向状態を変え、これによって透明樹脂層と液晶組成物との間の屈折率差を変える。透明樹脂層と液晶組成物との間の屈折率差が低下することによって、調光シートが不透明状態から透明状態に遷移する。透明樹脂層と液晶組成物との間の屈折率差が上昇することによって、調光シートが透明状態から不透明状態に遷移する(例えば、特許文献1を参照)。調光シートは、透明樹脂層のなかにスペーサーを備える。スペーサーは、透明樹脂層の厚さが薄くなることを抑える。
【0003】
スペーサーの第1例は、ポリメタクリル酸メチル樹脂を含有する。ポリメタクリル酸メチル樹脂は、芳香環を含有する遊離基の溶出を抑え、これによって液晶組成物の耐久性を高める(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
スペーサーの第2例は、サイズ分布に2つ以上のピークを備える。不透明状態のヘイズ値と透明状態の直線透過率とは、一方が上昇すると他方が低下するというトレードオフの関係を有する。例えば、不透明状態のヘイズ値がスペーサーの増量によって上昇すると、透明状態の直線透過率が低下する。サイズ分布に2つ以上のピークを備える調光シートは、トレードオフの関係を弱めるように、調光シートの設計自由度を拡張する(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-45135号公報
【特許文献2】特許第7047885号公報
【特許文献3】特開2021-009188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、透明樹脂層とスペーサーとの構造の相違、また透明樹脂層とスペーサーとの屈折率の相違は、光の散乱を助長する。透明樹脂層とスペーサーとの界面に生じる散乱は、透明樹脂層と液晶組成物との界面に生じる散乱と相違する。そのため、透明樹脂層とスペーサーとの界面に生じる散乱は、透明状態であれ不透明状態であれ、スペーサーの存在を際立たせてしまう。特に、スペーサーが透明樹脂層に偏在する場合、透明樹脂層とスペーサーとの界面に生じる散乱は、調光シートの観察においてスペーサーの集合を際立たせてしまう。このように、スペーサーの存在が際立つような構成は、上述した第1例であれ第2例であれ、調光シートを通した面内の視認性に不均一を生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための調光シートは、2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層と、2つの前記透明基材層の間に位置する調光層と、を備え、前記調光層が、空隙を区画する透明樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、前記調光層の厚さを定めるスペーサーと、を備える調光シートである。各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、各透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である。
【0008】
上記課題を解決するための調光シートは、2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層と、2つの前記透明基材層の間に位置する調光層と、を備え、前記調光層が、空隙を区画する透明樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、前記調光層の厚さを定めるスペーサーと、を備える調光シートである。各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、2つの透明基材層の内部ヘイズの合計が0.2%以上4.0%以下である。
【0009】
上記課題を解決するための調光シートの製造方法において、調光層は、空隙を区画する透明樹脂層、前記透明樹脂層に埋められるスペーサー、および前記空隙を充填する液晶組成物を備え、調光シートの製造方法は、2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層との間に前記調光層を形成するための塗工液を塗工することと、前記塗工液の硬化によって前記調光層を形成することと、を含む調光シートの製造方法である。前記調光シートにおける各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、かつ各透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である。
【0010】
透明基材層の外部ヘイズは、透明基材層の表面に存在する凹凸に由来する。上記各構成によれば、透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であるため、透明基材層の表面が電極層であれば、2つの透明基材層の間に作用する電場に偏りが生じることが抑えられる。透明基材層の表面が配向層であれば、2つの透明基材層の間に作用する配向規制力に偏りが生じることが抑えられる。
【0011】
透明基材層の内部ヘイズは、透明基材層の内部に散在する屈折率差に由来する。上記各構成によれば、透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上であるため、あるいは2つの透明基材層の内部ヘイズの合計が0.2%以上であるため、透明樹脂層とスペーサーとの界面に生じる散乱が透明基材層の内部散乱のなかに埋伏する。また、各透明基材層の内部ヘイズが2.0%以下であるため、あるいは2つの透明基材層の内部ヘイズの合計が4.0%以下であるため、調光シートの透明性が過度に損なわれない。
【0012】
結果として、透明状態であれ不透明状態であれ、スペーサーの存在が際立つような不均一な視認性が抑えられる。
なお、調光層におけるスペーサーの散布は、完全に均一なスペーサーの分布を得たがたく、少なからずスペーサーの偏在を生じさせる。上述した透明基材層の内部散乱は、特に、スペーサーの偏在に由来する不均一な視認性を好適に抑制する。
【0013】
また、調光シートが透明体に貼り付けられる場合、透明基材層の外部ヘイズは、透明体に調光シートを接合する接着層に低められる、もしくは接着層によってバラツキを来す。紫外線の遮蔽フィルムや飛散の防止フィルムなどが調光シートに貼り付けられる場合も、透明基材層の外部ヘイズは、調光シートに機能フィルムを接合する接着層に低められる、もしくはバラツキを来す。
【0014】
一方、透明基材層の内部ヘイズは、各種の接着層に低められず、また各種の接着層によって変動しにくい。そのため、透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下であれば、調光シートが透明体に貼り付けられる場合であれ、機能フィルムが調光シートに貼り付けられる場合であれ、調光シートが単独で使用される場合であれ、上述の不均一な視認性が抑えられる。また、透明基材層の内部ヘイズが0.2%以上4.0%以下であれば、調光シートが透明体に貼り付けられる場合であれ、機能フィルムが調光シートに貼り付けられる場合であれ、調光シートが単独で使用される場合であれ、上述の不均一な視認性が抑えられる。
【0015】
上記調光シートにおいて、各透明基材層は、前記電極層を支持する支持層を備え、各透明基材層の外部ヘイズが、当該透明基材層に支持される前記電極層の外部ヘイズであり、各支持層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下でもよい。
【0016】
上記調光シートの製造方法は、各透明基材層の外部ヘイズが当該透明基材層に支持される前記電極層の外部ヘイズであるように、支持層に前記電極層を積層することを前記透明基材層の形成に含み、前記支持層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下でもよい。
【0017】
上述したように、透明基材層の外部ヘイズは、透明基材層の表面に存在する凹凸に由来する。上記各構成によれば、支持層に支持される電極層の外部ヘイズが透明基材層の外部ヘイズであるため、2つの透明基材層の間に作用する電場に偏りが生じることが抑えられる。
【0018】
上記調光シートにおいて、各支持層は、当該支持層に内在する粒子を含有してもよい。
上記構成によれば、透明基材層の内部ヘイズが支持層に内在する粒子によって実現される。これによって、透明基材層の内部ヘイズを所望の範囲内に調整することが容易でもある。
【0019】
上記調光シートにおいて、前記粒子の平均粒子径は、0.8μm以上5.0μm以下でもよい。この構成によれば、スペーサーの存在が際立つような不均一な視認性を抑えることの実効性が高まる。
【0020】
上記調光シートにおいて、各支持層は、前記電極層の下地である下地層と、当該下地層を支持する基材とを備え、各下地層は、当該下地層に内在する粒子を含有してもよい。
上記調光シートの製造方法は、前記電極層を積層するための下地層を基材に積層することによって前記支持層を形成することを含み、前記下地層は、前記下地層に内在する粒子を含有してもよい。
【0021】
上記各構成によれば、透明基材層の内部ヘイズが支持層に内在する粒子によって実現される。これによって、透明基材層の内部ヘイズを所望の範囲内に調整することが容易でもある。
【0022】
上記調光シートにおいて、前記粒子を囲う下地樹脂層と前記粒子との間の屈折率差は、0.01以上0.05以下でもよい。この構成によれば、支持層の内部ヘイズを0.1%以上2.0%以下に具体化することが容易でもある。
【0023】
上記調光シートにおいて、前記透明基材層は、前記調光層に接する接触面を備え、前記接触面の算術平均粗さSaは、20nm以下でもよい。
上記構成によれば、調光層と接する接触面の算術平均粗さSaが20nm以下であるため、調光層の厚さのばらつきや形状のばらつきに起因する電場の不均一を抑えることもできる。
【0024】
上記調光シートにおいて、透明状態の前記調光シートにおけるヘイズが6%以上10%以下でもよい。この構成によれば、スペーサーの存在が際立つような不均一な視認性を透明基材層の内部ヘイズによって抑えながらも、調光シートの透明性を確保することが容易でもある。
【発明の効果】
【0025】
本開示の調光シート、および調光シートの製造方法によれば、調光シートを通した面内の視認性を均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、調光シートの層構成を駆動部と共に示す構成図である。
【
図2】
図2は、実施例の調光シートにおける視認性の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
調光シート、および調光シートの製造方法の一実施形態を説明する。まず、
図1を参照して調光装置の構成を説明する。次に、
図2を参照して支持層の内部ヘイズについて説明する。
【0028】
調光シートは、透明基材に貼り付けられる。透明基材は、ガラス体や樹脂体である。透明基材は、建物や移動体の内装品でもよいし、建物や移動体の外装品でもよい。透明基材の一例は、車両や航空機等の移動体が搭載する窓ガラス、建物に設置される窓ガラス、車内や屋内に配置される間仕切りである。調光シートが貼り付けられる面は、平面状でもよいし、筒面や球面などの曲面状でもよい。
【0029】
調光シートは、1つの透明基材の一側面に貼り付けられてもよい。調光シートは、1つの透明基材の表面と、当該透明基材の裏面とに別々に貼り付けられてもよい。調光シートは、他の調光シートに接着層を介して重ねられてもよい。調光シートは、1つの透明基材の表面に貼り付けられると共に、他の1つの透明基材の裏面に貼り付けられて、2つの透明基材に挟まれてもよい。
【0030】
調光シートの駆動型式は、ノーマル型、あるいはリバース型である。ノーマル型の調光シートは、非駆動時に不透明状態である。ノーマル型の調光シートは、駆動信号である電圧信号の供給によって不透明状態から透明状態に遷移する。ノーマル型の調光シートは、電圧信号の供給停止によって透明状態から不透明状態に戻る。リバース型の調光シートは、非駆動時に透明状態である。リバース型の調光シートは、電圧信号の供給によって透明状態から不透明状態に遷移する。リバース型の調光シートは、電圧信号の供給停止によって不透明状態から透明状態に戻る。
【0031】
透明状態は、不透明状態よりも低いヘイズを有する。透明状態は、不透明状態よりも高い直線透過率を有する。透明状態は、不透明状態よりも低い拡散透過率を有する。透明状態の調光シートにおけるヘイズは6%以上10%以下でもよい。不透明状態の調光シートにおけるヘイズは80%以上でもよい。調光シートの一例は、空隙を区画する透明高分子層と、空隙を充填する液晶組成物との間の屈折率差を高めることによって、透明状態から不透明状態に遷移する。調光シートの一例は、透明高分子層と液晶組成物との間の屈折率差を低めることによって、不透明状態から透明状態に遷移する。
【0032】
調光シートは、2つの透明基材層を備える。各透明基材層が調光層に接するように、2つの透明基材層が調光層を挟む。透明基材層の全ヘイズは、JIS K-7136に準拠した方法によって得られる。透明基材層の全ヘイズは、透明基材層の外部ヘイズと、透明基材層の内部ヘイズとの合計である。透明基材層の外部ヘイズは、透明基材層の表面に存在する凹凸に由来する。透明基材層の表面に存在する凹凸が当該表面の屈折率と同程度の屈折率を有した材料によって平坦化されると、透明基材層の外部ヘイズが透明基材層の全ヘイズに寄与しなくなる。透明基材層の外部ヘイズが全ヘイズに寄与しない状態の透明基材層の全ヘイズは、透明基材層の内部ヘイズである。
【0033】
ノーマル型の調光シートとリバース型の調光シートとは、それぞれ2つの透明基材層、2つの透明電極層(以下、単に電極層とも言う)、および調光層を備える。リバース型の調光シートは、ノーマル型の調光シートの構成に加えて2つの配向層を備える。以下の実施形態では、リバース型の調光シートの構成と作用とを主に説明し、ノーマル型の調光シートの構成のなかでリバース型と相違する構成を付記する。そして、ノーマル型の調光シートの構成のなかでリバース型と重複する構成の説明を割愛する。以下の実施例では、ノーマル型の調光シートの構成と評価結果とを主に説明する。
【0034】
[調光シート11の構成]
図1が示すように、調光装置は、調光シート11と、駆動部51とを備える。調光シート11は、調光層12、第1配向層13F、第2配向層13B、第1電極層14F、第2電極層14B、第1支持層15F、および第2支持層15Bを備える。第1配向層13F、第1電極層14F、および第1支持層15Fは、第1透明基材層を構成する。第2配向層13B、第2電極層14B、および第2支持層15Bは、第2透明基材層を構成する。調光層12は、第1透明基材層と第2透明基材層との間に位置する。
【0035】
調光層12は、第1配向層13Fと第2配向層13Bとの間に位置する。調光層12の第1調光面12SFは、第1配向層13Fに接する。調光層12の第2調光面12SBは、第2配向層13Bに接する。第1配向層13Fは、調光層12と第1電極層14Fとの間に位置し、かつ調光層12と第1電極層14Fとに接する。第2配向層13Bは、調光層12と第2電極層14Bとの間に位置し、かつ調光層12と第2電極層14Bとに接する。
【0036】
第1電極層14Fは、第1接続端子P1と第1配線L1とを通じて、駆動部51に接続される。第1電極層14Fは、第1配向層13Fと第1支持層15Fとの間に位置し、第1配向層13Fと第1支持層15Fとに接する。第2電極層14Bは、第2接続端子P2と第2配線L2とを通じて、駆動部51に接続される。第2電極層14Bは、第2配向層13Bと第2支持層15Bとの間に位置し、第2配向層13Bと第2支持層15Bとに接する。
【0037】
調光層12は、透明樹脂層と液晶組成物とを備える。透明樹脂層は、透明樹脂層のなかに空隙を区画する。透明樹脂層のなかの空隙は、液晶組成物に充填されている。透明樹脂層による液晶組成物の保持型式は、高分子分散型である。なお、透明樹脂層による液晶組成物の保持形式は、ポリマーネットワーク型、およびカプセル型からなる群から選択されるいずれか一種でもよい。調光層12の厚さの一例は、1μm以上100μm以下である。
【0038】
高分子分散型の調光層12は、上述したように、孤立した多数の空隙を区画する透明樹脂層を備える。高分子分散型の調光層12は、透明樹脂層に分散した空隙のなかに液晶組成物を保持する。ポリマーネットワーク型の調光層12は、3次元の網目状を有した空隙を透明樹脂層に備える。ポリマーネットワーク型の調光層12は、相互に連通した網目状の空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型の調光層12は、透明樹脂層のなかに分散したカプセル状の空隙のなかに液晶組成物を保持する。
【0039】
第1配向層13Fと第2配向層13Bとは、それぞれ液晶化合物の配向方向を規制する。第1配向層13Fと第2配向層13Bとは、それぞれ無色透明、あるいは有色透明に視認される。液晶化合物が垂直配向で透明状態を実現する場合、第1配向層13Fと第2配向層13Bとは、垂直配向膜である。垂直配向膜は、液晶化合物の長軸方向を調光層12の厚さ方向に沿わせ、調光層12に可視光線を透過させる。
【0040】
第1配向層13Fと第2配向層13Bとを構成する材料は、それぞれ独立に有機高分子化合物、あるいは無機酸化物である。有機高分子化合物は、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物からなる群から選択されるいずれか一種である。無機酸化物は、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム、シリコーンからなるいずれか一種である。配向層13F,13Bの厚さの一例は、それぞれ20nm以上500nm以下である。
【0041】
第1電極層14Fと第2電極層14Bとは、それぞれ独立に無色透明、あるいは有色透明に視認される。第1電極層14Fと第2電極層14Bとを構成する材料は、それぞれ導電性無機酸化物、金属、あるいは導電性有機高分子化合物である。導電性無機酸化物の一例は、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛からなる群から選択されるいずれか一種である。金属は、金や銀のナノワイヤーである。導電性有機高分子化合物の一例は、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択されるいずれか一種である。電極層14F,14Bの厚さの一例は、それぞれ5nm以上100nm以下である。
【0042】
第1支持層15Fと第2支持層15Bとは、それぞれ独立に無色透明、あるいは有色透明に視認される。第1支持層15Fと第2支持層15Bとを構成する材料は、それぞれ有機高分子化合物、あるいは無機高分子化合物である。有機高分子化合物の一例は、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンからなる群から選択されるいずれか一種である。無機高分子化合物の一例は、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0043】
第1透明基材層は、調光層12の第1調光面12SFに接する第1接触面を備える。第1接触面は、第1配向層13Fの一側面である。なお、ノーマル型の一例のように、第1透明基材層が第1配向層13Fを備えない場合、第1透明基材層の第1接触面は、第1電極層14Fの一側面でもよい。
【0044】
第2透明基材層は、調光層12の第2調光面12SBに接する第2接触面を備える。第2接触面は、第2配向層13Bの一側面である。なお、ノーマル型の一例のように、第2透明基材層が第2配向層13Bを備えない場合、第2透明基材層の第2接触面は、第2電極層14Bの一側面でもよい。
【0045】
調光層12における電場の面内均一性を高めることが要求される場合、第1接触面の算術平均粗さSaが20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。また、第2接触面の算術平均粗さSaが20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。第1電極層14Fの厚さが5nm以上100nm以下のように薄い場合、第1支持層15Fのなかで第1電極層14Fと接する第1支持面151Fの算術平均粗さSaが20nm以下であることが好ましい。第2電極層14Bの厚さが5nm以上100nm以下のように薄い場合、第2支持層15Bのなかで第2電極層14Bと接する第2支持面151Bの算術平均粗さSaが20nm以下であることが好ましい。
【0046】
駆動部51は、第1電極層14Fと第2電極層14Bとに別々に接続される。駆動部51は、第1電極層14Fと第2電極層14Bとに電圧信号を供給する。電圧信号は、第1電極層14Fと第2電極層14Bとの間に、液晶化合物の配向状態を変えるための電圧を印加する。
【0047】
駆動部51は、電圧信号の供給によって液晶化合物の配向状態を電場に追従させ、これによって、透明状態から不透明状態に調光シート11を遷移させる。駆動部51は、電圧信号の供給停止によって液晶化合物の配向状態を配向層13F,13Bの配向規制力に追従させ、これによって、不透明状態から透明状態に調光シート11を遷移させる。
【0048】
なお、ノーマル型の駆動部51は、電圧信号の供給によって液晶化合物の配向状態を電場に追従させ、これによって、不透明状態から透明状態に調光シート11を遷移させる。ノーマル型の駆動部51は、電圧信号の供給停止によって液晶化合物の配向状態を無秩序状態にして、透明状態から不透明状態に調光シート11を遷移させる。ノーマル型の駆動部51は、不透明状態から透明状態の遷移に際し、配向規制力に抗することを要しない分、第1電極層14Fと第2電極層14Bとの間に印加する電圧をリバース型よりも低めてもよい。また、ノーマル型の調光シート11は、不透明状態から透明状態の遷移に際し、配向規制力に抗することを要しない分、調光層12の厚さをリバース型よりも厚くしてもよい。
【0049】
[調光層12の構成]
調光層12は、透明樹脂層、液晶組成物、およびスペーサーとを備える。透明樹脂層は、透明樹脂層の内部に多数の空隙を区画する。透明樹脂層に区画された空隙は、液晶組成物に充填されている。各空隙は、他の空隙から離間した孤立する空隙である。各空隙の一部は、他の空隙と接続されてもよい。空隙の大きさは、2種類以上である。空隙の形状は、球形状、楕円体状、あるいは不定形状である。
【0050】
透明樹脂層は、光重合性化合物の硬化体である。光重合性化合物は、紫外線硬化性化合物でもよいし、電子線硬化性化合物でもよい。光重合性化合物は、液晶組成物と相溶性を有する。空隙の寸法制御性を高める場合、光重合性化合物は、紫外線硬化性化合物であることが好ましい。紫外線硬化性化合物の一例は、分子構造の末端に重合性不飽和結合を含む。あるいは、紫外線硬化性化合物は、分子構造の末端以外に重合性の不飽和結合を含む。光重合性化合物は、一種の重合性化合物、あるいは2種以上の重合性化合物の組み合わせである。
【0051】
紫外線硬化性化合物は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、チオール-エン化合物、および、各化合物のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0052】
アクリレート化合物は、モノアクリレート化合物、ジアクリレート化合物、トリアクリレート化合物、テトラアクリレート化合物を含む。アクリレート化合物の一例は、ブチルエチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートである。メタクリレート化合物の一例は、ジメタクリレート化合物、トリメタクリレート化合物、テトラメタクリレート化合物である。メタクリレート化合物の一例は、N,N‐ジメチルアミノエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートである。チオール化合物の一例は、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオールである。スチレン化合物の一例は、スチレン、メチルスチレンである。
【0053】
透明樹脂層と液晶組成物との総量に対する透明樹脂層の含有量の下限値は20質量%であり、より好ましい含有量の下限値は30質量%である。透明樹脂層と液晶組成物との総量に対する透明樹脂層の含有量の上限値は70質量%であり、より好ましい含有量の上限値は60質量%である。
【0054】
透明樹脂層の含有量の下限値、および上限値は、光重合性化合物の硬化過程において、液晶組成物からなる液晶粒子が光重合性化合物の硬化体から相分離する範囲である。透明樹脂層の機械的な強度を高めることを要する場合、透明樹脂層の含有量の下限値が高いことが好ましい。液晶化合物の駆動する電圧を低めることを要する場合、透明樹脂層の含有量の上限値が低いことが好ましい。
【0055】
液晶組成物は、液晶化合物を含有する。液晶化合物の長軸方向の誘電率は、液晶化合物の短軸方向の誘電率よりも大きい、正の誘電異方性を有する。あるいは、液晶化合物の長軸方向の誘電率は、液晶化合物の短軸方向の誘電率よりも低い、負の誘電異方性を有する。液晶化合物は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、ピリダジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ジシアノベンゼン系、ナフタレン系、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0056】
液晶化合物は、一種の液晶化合物、あるいは2種以上の液晶化合物の組み合わせである。液晶組成物は、二色性色素、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤、溶剤を含有してもよい。二色性色素は、液晶化合物をホストとしたゲストホスト型式によって駆動されて有色を呈する。二色性色素は、ポリヨウ素、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ナフトキノン化合物、アゾメチン化合物、テトラジン化合物、キノフタロン化合物、メロシアニン化合物、ペリレン化合物、ジオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である。二色性色素は、一種の化合物、あるいは2種以上の化合物の組み合わせである。耐光性を高めること、および二色比を高めることが求められる場合、二色性色素は、アゾ化合物、およびアントラキノン化合物からなる群から選択される少なくとも一種であり、よりが好ましくはアゾ化合物である。耐候剤の一例は、光安定剤である。
【0057】
液晶化合物の長軸方向と短軸方向との屈折率差Δn(Δn=異常光屈折率ne-常光屈折率no)は、液晶化合物における分子間相互作用の度合いを示す。また、液晶化合物の屈折率差Δnは、波長が650nmの可視光線における屈折率の差であり、電圧信号の供給時と非供給時との間での可視光線の散乱度合いの差を示す。液晶化合物が2種類以上の液晶化合物の組み合わせである場合、液晶化合物の屈折率差Δnの上限値は、全ての液晶化合物の屈折率差Δnから得られる上限値である。液晶化合物の屈折率差Δnの下限値は、全ての液晶化合物の屈折率差Δnから得られる下限値である。透明状態と不透明状態との間のヘイズの差を高めることを要する場合、屈折率差Δnの下限値が高いことが好ましい。ヘイズの差を高めることを要する場合、液晶化合物の屈折率差Δnの下限値が0.005であることが好ましく、0.01であることがより好ましい。
【0058】
[スペーサー]
スペーサーは、透明樹脂層の全体にわたり分布している。スペーサーは、スペーサーの周辺において調光層12の厚さを定めると共に、調光層12の厚さを均一にする。スペーサーは、ビーズスペーサーでもよい。スペーサーは、フォトレジストの露光と現像とによって得られるフォトスペーサーでもよい。
【0059】
スペーサーは、無色透明でもよいし、有色透明でもよい。液晶組成物が二色性色素を含む場合、スペーサーの呈する色は、二色性色素の呈する色と同色であることが好ましい。スペーサーの呈する色が二色性色素の呈する色と同色である場合、不透明状態の調光シート11の呈する色の濃さを高めることが可能ともなる。
【0060】
スペーサーは、球形状を有してもよいし、柱形状を有してもよい。調光層12の厚さ方向におけるスペーサーの大きさは、調光層12に要求される厚さに基づいて適宜変更される。調光層12の厚さ方向におけるスペーサーの大きさは、例えば、5μm以上50μm以下である。スペーサーが球形状を有する場合、スペーサーの平均粒子径は、例えば、5μm以上50μm以下である。スペーサーの平均粒子径は、レーザー光散乱、電気抵抗値変化、撮像後の画像解析などの原理を用いた粒度分布測定装置を用いて得られる。スペーサーの平均粒子径は、数平均粒子径である。スペーサーが柱形状を有する場合、スペーサーの平均径は、例えば、5μm以上50μm以下である。調光シート11の省電力化を要求される場合、調光層12の厚さを薄くするために、スペーサーの平均粒子径、あるいはスペーサーの平均径は、例えば、5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0061】
スペーサーの面積占有率は、例えば、0.9%以上30.0%以下である。スペーサーの面積占有率は、調光シート11の単位面積に対する、当該単位面積のなかでスペーサーの占有する面積の比率である。スペーサーの占有する面積は、透明状態の調光シート11における第1面11Fと対向する視点から観察することによって得られる。調光シート11における単位面積の一例は、1mm×1mmである。スペーサーの占有する面積は、光学顕微鏡を用い、透明状態における調光シート11の単位面積内を観察することによって算出される。スペーサーと透明樹脂層との僅かな屈折率差は、光学顕微鏡の撮影画像において、スペーサーに相当する領域を周辺よりも僅かに白色とする。スペーサーの占有する面積は、光学顕微鏡による撮影画像に二値化処理を施し、周辺よりも僅かに白色を呈する粒状領域の面積の合計から得られる。スペーサーが球形状を有する場合、粒状領域が球形状を有する。スペーサーが柱形状を有する場合、粒状領域が長方形状を有する。
【0062】
スペーサーの構成材料は、絶縁性を有する透明無機化合物でもよいし、絶縁性を有する透明樹脂でもよい。透明無機化合物は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムからなる群から選択されるいずれか一種である。透明樹脂は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アセチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種である。スペーサーが有色透明を呈する場合、スペーサーの構成材料は、有色顔料を分散された透明樹脂でもよい。調光層12を形成するための塗工液、すなわち硬化性化合物と液晶組成物とを含有する液状体のなかにスペーサーが分散される場合、スペーサーの表面は塗工液に対する親液性を付与するための表面処理を施されてもよい。透明状態の調光シート11において透過率の向上を要求される場合、スペーサーの構成材料における全光線透過率は80%以上であることが好ましい。
スペーサーの構成材料が有する屈折率は、1.4以上1.6以下でもよい。スペーサーの構成材料が有する屈折率は、調光層12を構成する透明樹脂の屈折率とは異なる。
【0063】
[支持層15F,15Bの構成]
支持層15F,15Bは、それぞれ単層構造体でもよい。支持層15F,15Bの構成材料は、透明樹脂でもよいし、透明無機化合物でもよい。支持層15F,15Bは、層内に粒子を含有してもよい。粒子の構成材料は、透明樹脂でもよいし、透明無機化合物でもよい。
【0064】
支持層15F,15Bは、それぞれ多層構造体でもよい。支持層15F,15Bが多層構造体である場合、支持層15F,15Bは、それぞれ基材と、基材に支持される下地層とを備える。支持層は、基材と電極層14F,14Bとの間に位置すると共に、基材と電極層14F,14Bとに接する。
【0065】
基材の構成材料は、透明樹脂でもよいし、透明無機化合物でもよい。基材は、基材内に粒子を含有してもよい。
下地層の構成材料は、透明樹脂でもよいし、透明無機化合物でもよい。下地層は、下地層内に粒子を含有してもよい。粒子の構成材料は、透明樹脂でもよいし、透明無機化合物でもよい。粒子が有色透明を呈する場合、粒子の構成材料は、有色顔料を分散された透明樹脂でもよい。下地層を構成する透明樹脂の屈折率が1.4以上1.6以下であり、かつ下地層を構成する粒子の屈折率が1.4以上1.6以下でもよい。粒子の構成材料が有する屈折率は、下地層を構成する透明樹脂の屈折率とは異なる。透明状態の調光シート11において透過率の向上を要求される場合、粒子の構成材料における全光線透過率は80%以上であることが好ましい。
【0066】
透明樹脂の一例は、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アセチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種である。ポリエステルの一例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも一種である。ポリアクリレートは、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種である。ポリオレフィンの一例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0067】
透明無機化合物の一例は、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種である。
支持層15F,15Bの厚さは、調光シート11に要求される可撓性や透明性が得られるように適宜選択される。支持層15F,15Bの厚さは、それぞれ独立に透明基材層に要求される内部ヘイズが得られるように適宜選択される。第1支持層15F、第1電極層14F、および第1配向層13Fを備える第1透明基材層は、下記条件1、および条件2を満たす。第2支持層15B、第2電極層14B、および第2配向層13Bを備える第2透明基材層もまた、下記条件1、および条件2を満たす。あるいは、第1透明基材層と第2透明基材層とは、条件1、および条件3を満たす。
【0068】
(条件1)各透明基材層の外部ヘイズは、0.1%未満である。
(条件2)各透明基材層の内部ヘイズは、0.1%以上2.0%以下である。
(条件3)2つの透明基材層の内部ヘイズの合計は、0.2%以上4.0%以下である。
【0069】
第1透明基材層の外部ヘイズは、第1支持層15Fの一側面である第1面11Fの凹凸に由来する。また、第1透明基材層の外部ヘイズは、調光層12の第1調光面12SFと接する第1配向層13Fの一側面の凹凸に由来する。なお、ノーマル型の一例のように、透明基材層が第1配向層13Fを備えない場合、第1支持層15Fを含む透明基材層の外部ヘイズは、調光層12の第1調光面12SFと接する第1電極層14Fの一側面の凹凸に由来する。
【0070】
第2透明基材層の外部ヘイズは、第2支持層15Bの一側面である第2面11Bの凹凸に由来する。また、第2透明基材層の外部ヘイズは、調光層12の第2調光面12SBと接する第2配向層13Bの一側面の凹凸に由来する。なお、ノーマル型の一例のように、透明基材層が第2配向層13Bを備えない場合、第2支持層15Bを含む透明基材層の外部ヘイズは、調光層12の第2調光面12SBと接する第2電極層14Bの一側面の凹凸に由来する。
【0071】
第1透明基材層の内部ヘイズは、第1透明基材層を構成する層の内部ヘイズの合計である。第2透明基材層の内部ヘイズは、第2透明基材層を構成する層の内部ヘイズの合計である。第1透明基材層を構成する層の一例は、配向層13F、電極層14F、および支持層15Fである。第2透明基材層を構成する層の一例は、配向層13B、電極層14B、および支持層15Bである。
【0072】
内部ヘイズは、層の内部要素の間における屈折率の相違、および構造の相違に由来する。内部ヘイズは、層内に添加する粒子を増量することによって高められる。内部ヘイズは、層内に添加する粒子を減量することによって低められる。内部ヘイズは、結晶密度を高めることによって高められる。内部ヘイズは、結晶密度を低めることによって低められる。
【0073】
電極層14F,14Bは、それぞれ調光層12に電圧信号を供給する。電極層14F,14Bにおける電気抵抗値の抑制は、電極層14F,14Bの面内に電圧勾配が形成されることを抑え、これによって視認性の面内均一化を図る。電極層14F,14Bにおける電気抵抗値の抑制は、調光装置の省電力化を可能にする。一方、条件2、3を満たすように、電極層14F,14Bに粒子を添加すること、また電極層14F,14Bの結晶密度を高めることは、電極層14F,14Bの電気抵抗値を増大させる。視認性の面内均一化を図る観点から、また調光装置の省電力化を図る観点から、電極層14F,14Bの内部ヘイズはゼロであることが好ましい。
【0074】
配向層13F,13Bは、それぞれ液晶化合物に配向規制力を加える。配向層13F,13Bにおける配向規制力の増大は、透明状態の直線透過率を高めると共に、不透明状態から透明状態に遷移する速度を高める。一方、条件2、3を満たすように、配向層13F,13Bに粒子を添加すること、また配向層13F,13Bの結晶密度を高めることは、配向層13F,13Bの配向規制力を低める。透明状態の直線透過率を高める観点から、また状態遷移の応答性を高める観点から、配向層13F,13Bの内部ヘイズがほぼゼロであることが好ましい。
【0075】
これらから、各透明基材層が条件2を満たすように、支持層15F,15Bの内部ヘイズがそれぞれ0.1%以上2.0%以下であることが好ましい。支持層15F,15Bがそれぞれ基材と下地層とを備える場合、各基材の内部ヘイズがほぼゼロであり、かつ各下地層の内部ヘイズがそれぞれ0.1%以上2.0%以下でもよい。
【0076】
あるいは、2つの透明基材層が条件3を満たすように、支持層15F,15Bの内部ヘイズの合計が0.2%以上4.0%以下であることが好ましい。支持層15F,15Bがそれぞれ基材と下地層とを備える場合、各基材の内部ヘイズがほぼゼロであり、かつ各下地層の内部ヘイズの合計が0.2%以上4.0%以下でもよい。
【0077】
下地層の厚さの一例は、1μm以上10μm以下でもよいし、2μm以上8μm以下でもよい。下地層に内部ヘイズを付与するための粒子が下地層に内在する場合、下地層は、粒子と、粒子を囲う下地樹脂層とを備えてもよい。
【0078】
下地層を構成する粒子の平均粒子径は、0.4μm以上10μm以下でもよいし、0.8μm以上5.0μm以下でもよい。粒子の平均粒子径は、算術平均径であり、JIS Z 8828:2019に準拠した方法によって得られる。下地層に内在する粒子の平均粒子径が10μm以下であれば、ミー散乱による前方散乱を得やすいため、後方散乱による全光線透過率の低下が不透明状態において抑えられる。下地層に内在する粒子の平均粒子径が0.4μm以上であれば、下地層が条件2、3を満たす内部ヘイズを得やすい。
【0079】
下地層を構成する下地樹脂層と粒子との間の屈折率差は、0.01以上0.05以下でもよい。下地樹脂層と粒子との間の屈折率差が0.01以上であれば、条件2、3を満たすための下地層の厚さが全光線透過率を大きく低める程度に厚くなることを抑える。下地樹脂層と粒子との間の屈折率差が0.05以下であれば、条件2、3を満たすための下地層の厚さがばらついてしまう程度に薄くなることを抑える。
【0080】
なお、調光シート11は、他の機能層を備えてもよい。他の機能層は、調光層12に向けた酸素や水分の透過を抑えるガスバリア層でもよいし、調光層12に向けた特定波長以外の紫外光線の透過を抑える紫外線バリア層でもよい。他の機能層は、調光シート11の各層を機械的に保護するハードコート層でもよいし、調光シート11における層間の密着性を高める接着層でもよい。
【0081】
[調光シート11の製造方法]
調光シート11の製造方法は、第1透明基材層と第2透明基材層との間に、上述した光重合性化合物と液晶組成物とを含む塗工膜を形成することを含む。第1透明基材層は、第1配向層13F、第1電極層14F、および第1支持層15Fを備える。第2透明基材層は、第2配向層13B、第2電極層14B、および第2支持層15Bを備える。塗工膜は、第1配向層13Fと第2配向層13Bとに接するように形成される。
【0082】
なお、第1配向層13Fと第2配向層13Bとが割愛された調光シート11の製造方法は、第1電極層14Fと第2電極層14Bとの間に、上述した光重合性化合物と液晶組成物とを含む塗工膜を形成する。塗工膜は、第1電極層14Fと第2電極層14Bとに接するように形成される。
【0083】
塗工膜は、光重合性化合物の重合を開始するための重合開始剤を含む。重合開始剤は、ジケトン化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサンソン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である。重合開始剤は、一種の化合物でもよいし、2種以上の化合物の組み合わせでもよい。重合開始剤の一例は、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、シクロヘキシルフェニルケトンからなる群から選択されるいずれか一種である。
【0084】
調光シート11の製造方法は、塗工膜のなかで光重合性化合物を重合させることによって、液晶組成物からなる液晶粒子を重合体から相分離させ、これによって空隙を区画する透明樹脂層と、空隙を充填する液晶組成物とを形成することを含む。光重合性化合物を重合させる光は、紫外光線でもよいし、電子線でもよい。塗工膜に照射される光は、第1支持層15Fに向けて照射されてもよいし、第2支持層15Bに向けて照射されてもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0085】
液晶組成物からなる液晶粒子の相分離は、光重合性化合物の重合と、液晶組成物の拡散とを通じて進む。光重合性化合物の重合する速度は、光重合性化合物に照射される光の強度によって変わる。液晶組成物の拡散する速度は、光重合性化合物の重合時の処理温度によって変わる。液晶組成物の相分離では、液晶粒子の大きさを所望の大きさとするように、すなわち空隙の大きさを所望の大きさとするように、光重合性化合物に照射される光の強度が設定される。また、液晶組成物の相分離では、液晶組成物の拡散を促すための加熱を行ってもよい。
【0086】
なお、支持層15F,15Bがそれぞれ基材と下地層とを備える場合、調光シート11の製造方法は、調光層12を形成するための塗工膜の形成に先駆けて、下地層を形成するための塗工膜を基材に形成する。下地層を形成するための塗工膜は、光重合性化合物、重合開始剤、および粒子を含む。光重合性化合物は、ハードコート剤であることが好ましい。ハードコート剤の一例は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、チオール-エン化合物、および、各化合物のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である。粒子の一例は、アクリル系粒子、メタクリル系粒子、ポリスチレン系粒子、チオール-エン系粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0087】
下地層を形成するための下地層塗工液、すなわち光硬化性化合物と重合開始剤とを含有する液状体のなかに粒子が分散される場合、粒子の表面は塗工液に対する親液性を付与するための表面処理を施されてもよい。
【0088】
[実施例]
[実施例1の透明基材層]
基材に、下地層を形成するための下地層塗工液を塗工し、これによって支持層15F,15Bを得た。次に、支持層15F,15Bに各別の電極層14F,14Bを成膜し、これによって実施例1の2つの透明基材層を得た。
【0089】
基材として、厚さが0.7mmであるディスプレイ用ガラス板であるAN100(製品名:AGC社製)を用いた。基材の形状を100mm×100mmの矩形状とした。
下地層塗工液として、100重量部のアクリル系ハードコート剤に1重量部のアクリル系粒子を混合攪拌した混合物を用いた。アクリル系ハードコート剤として、硬化物の屈折率が1.49であるデソライト(登録商標)Z7501(製品名:JSR社製)を用いた。アクリル系粒子として、屈折率が1.50であり、かつ平均粒子径が5μmであるMX500(製品名:総研化学社製)を用いた。そして、下地層塗工液の塗工膜に乾燥と紫外線照射とを施し、これによって厚さが5μmのハードコート層を実施例1の下地層として得た。
【0090】
電極層14F,14Bとして、厚さが50nmの酸化インジウム・スズ層を用いた。この際、ターゲットとして酸化インジウムと酸化スズとの焼結体を用い、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを用い、スパッタリング法によって、下地層に酸化インジウム・スズ層を成膜した。そして、140℃の雰囲気下で酸化インジウム・スズ層を加熱処理し、これによって、実施例1の電極層14F,14Bとして、結晶化された酸化インジウム・スズ層を得た。また、電極層14F,14Bのなかで下地層に接する裏面とは反対側の表面を、実施例1の接触面として得た。
【0091】
[実施例1の調光シート11]
まず、実施例1の1つの透明基材層における接触面にスペーサー分散液を塗工し、これによって接触面にビーズスペーサーを散布した。
【0092】
この際、ビーズスペーサーの構成材料としてジビニルベンゼンを用いた。また、平均粒径が25μmのビーズスペーサーをアルコール系溶媒に分散し、これによって実施例1のスペーサー分散液を得た。そして、スペーサーの面積占有率が20.0%になるように、実施例1の透明基材層の四隅と中央とにスポイトを用いてスペーサー分散液を塗工し、100℃の環境下においてスペーサー分散液を乾燥させた。
【0093】
次に、スペーサー散布後の接触面に調光層塗工液を塗工した後、2つの接触面によって調光層塗工液の塗工膜を挟み、紫外線照射によって塗工膜を硬化させることによって、実施例1の調光シートを得た。
【0094】
この際、調光層塗工液として、ポリマーネットワーク型液晶塗工液であるKN-F-001-01(製品名:九州ナノテック光学社製)を用いた。紫外線照射として、350nm以下の波長をカットした高圧水銀灯を用い、照度を20mW/cm2、かつ照射時間を30秒に設定した。これによって、空隙を区画する透明樹脂層と、空隙を充填する液晶組成物と、スペーサーとを備えた、厚さが25μmである調光層12を形成した。
【0095】
[実施例2]
実施例1のアクリル系ハードコート剤を、硬化物の屈折率が1.47であるビニル系混合ハードコート剤に変更した。実施例1のアクリル系粒子を、屈折率が1.49であり、かつ平均粒子径が0.8μmであるMX80H(製品名:総研化学社製)に変更した。そして、100重量部のビニル系混合ハードコート剤に1重量部のアクリル系粒子を混合攪拌して下地層塗工液を得た以外は、実施例1と同様にして、実施例2の透明基材層、および調光シート11を得た。
【0096】
この際、ビニル系混合ハードコート剤は、ポリメタクリル酸メチル(クラレ社製)と、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(ソルバインC(登録商標):日信化学社製)との混合物を用いた。また、ビニル系混合ハードコート剤は、メチルエチルケトンとトルエンとを溶媒として用いた。そして、ポリメタクリル酸メチル:塩化ビニル酢酸ビニル共重合体:メチルエチルケトン:トルエンを、6:4:5:5の比率で混合撹拌し、これによって、実施例2のビニル系混合ハードコート剤を得た。
【0097】
[実施例3]
実施例1のアクリル系ハードコート剤を、硬化物の屈折率が1.50であるデソライト(登録商標)Z7528(製品名:JSR社製)に変更した。実施例1のアクリル系粒子を、屈折率が1.55であり、かつ平均粒子径が2.5μmのアクリル系粒子であるテクポリマー(登録商標)MX16LA(積水化成社製)に変更した。そして、100重量部のアクリル系ハードコート剤に1重量部のアクリル系粒子を混合攪拌して下地層塗工液を得た以外は、実施例1と同様にして、実施例3の透明基材層、および調光シート11を得た。
【0098】
[比較例1]
実施例1の透明基材層から下地層を割愛し、基材であるAN100(製品名:AGC社製)の一側面に電極層を直接成膜することによって、実施例2の透明基材層、および調光シート11を得た。
【0099】
[比較例2]
実施例1のアクリル系ハードコート剤を、オプスター(登録商標)TU4005(製品名:JSR社製)と、KAYARAD DPHA(日本化薬社製)との混合物に変更した。DPHAは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物である。比較例2のアクリル系ハードコート剤では、100重量部のTU4005に対して5重量部のDPHAを混合攪拌した。比較例2のアクリル系ハードコート剤を用いた硬化物の屈折率は1.60である。
【0100】
実施例1のアクリル系粒子を、屈折率が1.49であり、かつ平均粒子径が0.8μmであるMX80H(製品名:総研化学社製)に変更した。そして、100重量部のアクリル系ハードコート剤に5重量部のアクリル系粒子を混合攪拌して下地層塗工液を得た以外は、実施例1と同様にして、比較例2の透明基材層、および調光シート11を得た。
【0101】
[比較例3]
実施例1のアクリル系ハードコート剤を、硬化物の屈折率が1.47であるビニル系混合ハードコート剤に変更した。実施例1のアクリル系粒子を、屈折率が1.50であり、かつ平均粒子径が5μmであるMX500(製品名:総研化学社製)に変更した。そして、100重量部のビニル系混合ハードコート剤に1重量部のアクリル系粒子を混合攪拌して下地層塗工液を得ると共に、ハードコート層の厚さを4μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の透明基材層、および調光シート11を得た。
【0102】
この際、ビニル系混合ハードコート剤は、ポリメタクリル酸メチル(クラレ社製)と、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(ソルバインC(登録商標):日信化学社製)との混合物を用いた。また、ビニル系混合ハードコート剤は、メチルエチルケトンとトルエンとを溶媒として用いた。そして、ポリメタクリル酸メチル:塩化ビニル酢酸ビニル共重合体:メチルエチルケトン:トルエンを、6:4:5:5の比率で混合撹拌し、これによって、比較例3のビニル系混合ハードコート剤を得た。
【0103】
[透明基材層の評価]
ヘイズメータにNDH 7000SP(製品名:日本電色工業社製)を用い、かつ測定方法にJIS K7136に準じた方法を用い、これによって透明基材層の全ヘイズを測定した。
【0104】
走査型白色干渉顕微鏡にVertScan R3300h Lite(菱化システム社製)を用い、測定範囲を1.408mm×1.885mmの矩形状として、透明基材層の接触面における算術平均粗さSaを測定した。
【0105】
アクリル系ノンキャリア粘着テープを介して、電極層14F,14Bの表面にディスプレイ用ガラス板であるAN100を貼り付けた。これにより、電極層14F,14Bの表面の凹凸に由来するヘイズである外部ヘイズを抑制した。そして、ヘイズメータとしてNDH 7000SP(製品名:日本電色工業社製)を用い、JIS K7136に準じた方法によって、ディスプレイ用ガラス板の貼り付け後における透明基材層のヘイズを透明基材層の内部ヘイズとして測定した。
【0106】
[調光シート11の評価]
ヘイズメータにNDH 7000SP(製品名:日本電色工業社製)を用い、かつ測定方法にJIS K7136に準じた方法を用い、これによって不透明状態の調光シート11におけるヘイズを測定した。さらに、周波数が60Hz、かつ電圧が40Vの電圧信号を電極層14F,14Bの間に供給し、透明状態の調光シート11におけるヘイズを測定した。
【0107】
調光シート11の法線方向に調光シート11から0.5mだけ離間した三波長蛍光灯から調光シート11に向けて白色光を照射した。調光シート11に対する三波長蛍光灯とは反対側に、調光シート11の法線方向に調光シート11から0.5mだけ離間した観測点を設定した。そして、調光シート11の外観を観察し、スペーサーの偏りが視認されるか否かを判定した。
【0108】
[評価結果]
図2が示すように、実施例1の全ヘイズは0.1%であった。そして、実施例1の内部ヘイズが0.1%であり、実施例1の透明基材層の表面に由来する外部ヘイズがほぼ0%であることが認められた。実施例1の接触面における算術平均粗さSaは15nmであった。実施例1の不透明状態における調光シート11のヘイズは98%であり、透明状態における調光シート11のヘイズは6%であった。
【0109】
実施例2の全ヘイズは0.4%であった。そして、実施例2の内部ヘイズが0.4%であり、実施例2の透明基材層の表面に由来する外部ヘイズがほぼ0%であることが認められた。実施例2の接触面における算術平均粗さSaは11nmであった。実施例2の不透明状態における調光シート11のヘイズは98%であり、透明状態における調光シート11のヘイズは6%であった。
【0110】
実施例3の全ヘイズは2.0%であった。そして、実施例3の内部ヘイズが2.0%であり、実施例3の透明基材層の表面に由来する外部ヘイズがほぼ0%であることが認められた。実施例3の接触面における算術平均粗さSaは13nmであった。実施例3の不透明状態における調光シート11のヘイズは98%であり、透明状態における調光シート11のヘイズは8%であった。
【0111】
比較例1の全ヘイズは0.0%であった。そして、比較例1の内部ヘイズが0.0%であり、比較例1の透明基材層の表面に由来する外部ヘイズが0%であることが認められた。比較例1の接触面における算術平均粗さSaは1nmであった。比較例1の不透明状態における調光シート11のヘイズは98%であり、透明状態における調光シート11のヘイズは6%であった。比較例1の透過観察において、スペーサーの分布が認められた。
【0112】
比較例2の全ヘイズは4.0%であった。そして、比較例2の内部ヘイズが4.0%であり、比較例2の透明基材層の表面に由来する外部ヘイズが0%であることが認められた。比較例2の接触面における算術平均粗さSaは15nmであった。比較例2の不透明状態における調光シート11のヘイズは98%であり、透明状態における調光シート11のヘイズは11%であった。比較例2の透過観察において、スペーサーの分布が認められなかった。
【0113】
比較例3の全ヘイズは2.0%であった。そして、比較例3の内部ヘイズが0.4%であり、比較例3の透明基材層の表面に由来する外部ヘイズが1.6%であることが認められた。比較例3の接触面における算術平均粗さSaは25nmであった。比較例3の不透明状態における調光シート11のヘイズは97%であった。一方、実施例1から実施例3と同じ電圧信号を供給することによって調光シート11を透明状態に変えられなかった。
【0114】
実施例1から実施例3、比較例1、比較例2が上記条件1を満たす外部ヘイズを有し、かつ、これらの水準では、電圧信号の供給が不透明状態から透明状態の遷移を可逆的に可能にすることが認められた。一方、比較例3が上記条件1を満たさない高い外部ヘイズを有し、かつ、比較例3では、電圧信号の供給が不透明状態から透明状態の遷移が困難であることが認められた。
【0115】
実施例1から実施例3が上記条件2、3を満たす内部ヘイズを有し、かつ、これらの水準では、透明状態にスペーサーの偏りを視認できないことが認められた。一方、比較例2が上記条件2、3を満たさない低い内部ヘイズを有し、かつ、比較例2では、透明状態にスペーサーの偏りを視認できることが認められた。
【0116】
実施例1から実施例3が上記条件2、3を満たす内部ヘイズを有し、かつ、これらの水準では、透明状態に10%以下のヘイズを示すことが認められた。一方、比較例3が上記条件2、3を満たさない高い内部ヘイズを有し、かつ、比較例3では、透明状態に10%を超えるヘイズを示すことが認められた。
【0117】
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であるため、透明基材層の表面が電極層14F,14Bであれば、2つの透明基材層の間に作用する電場に偏りが生じることが抑えられる。透明基材層の表面が配向層13F,13Bであれば、2つの透明基材層の間に作用する配向規制力に偏りが生じることが抑えられる。
【0118】
(2)透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上であるため、あるいは2つの透明基材層の内部ヘイズの合計が0.2%以上であるため、透明樹脂層とスペーサーとの界面に生じる散乱が透明基材層の内部散乱のなかに埋伏する。
【0119】
(3)各透明基材層の内部ヘイズが2.0%以下であるため、あるいは2つの透明基材層の内部ヘイズの合計が4.0%以下であるため、調光シート11の透明性が過度に損なわれない。
【0120】
(4)調光層12におけるスペーサーの散布は、完全に均一なスペーサーの分布を得たがたく、少なからずスペーサーの偏在を生じさせる。上記(2)(3)のような、透明基材層の内部散乱は、特に、スペーサーの偏在に由来する不均一な視認性を好適に抑制する。
【0121】
(5)調光シート11が透明体に貼り付けられる場合、透明基材層の外部ヘイズは、透明体に調光シートを接合する接着層に低められる、もしくは接着層によってバラツキを来す。紫外線の遮蔽フィルムや飛散の防止フィルムなどが調光シート11に貼り付けられる場合も、透明基材層の外部ヘイズは、調光シート11に機能フィルムを接合する接着層に低められる、もしくはバラツキを来す。この点、透明基材層の内部ヘイズは、各種の接着層に低められず、また各種の接着層によって変動しにくい。結果として、上記(2)(3)のような、透明基材層の内部散乱は、特に、透明体に貼り付けられたり、機能フィルムを貼り付けられたりする構成において、スペーサーの偏在に由来する不均一な視認性を好適に抑制する。
【0122】
(6)支持層15F,15Bに支持される電極層14F,14Bの外部ヘイズが透明基材層の外部ヘイズである場合、2つの透明基材層の間に作用する電場に偏りが生じることが抑えられる。
【0123】
(7)透明基材層の内部ヘイズが支持層15F,15Bに内在する粒子によって実現されるため、透明基材層の内部ヘイズを所望の範囲内に調整することが容易でもある。
(8)支持層15F,15Bに内在する粒子の平均粒子径が0.8μm以上5.0μm以下であれば、上記(2)(3)に記載のように、スペーサーの存在が際立つような不均一な視認性を抑えることの実効性が高まる。
【0124】
(9)粒子を囲う下地樹脂層と粒子との間の屈折率差が0.01以上0.05以下であれば、支持層15F,15Bの内部ヘイズを0.1%以上2.0%以下に具体化することが容易でもある。
【0125】
(10)透明基材層の接触面における算術平均粗さSaが20nm以下であれば、調光層12と接する接触面の算術平均粗さSaが20nm以下であるため、調光層12の厚さのばらつきや形状のばらつきに起因する電場の不均一を抑えることもできる。
【0126】
(11)透明状態の調光シート11におけるヘイズが6%以上10%以下であれば、スペーサーの存在が際立つような不均一な視認性を透明基材層の内部ヘイズによって抑えながらも、調光シート11の透明性を確保することが容易でもある。
【0127】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・2つの透明基材層の内部ヘイズは、相互に異なってもよい。この際、2つの透明基材層が条件1、3を満たす場合、1つの透明基材層の内部ヘイズがほぼゼロでもよい。
・1つの透明基材層の内部ヘイズは、2層以上の内部ヘイズの合計として、0.1%以上2.0%以下を有してもよい。
【0128】
・第1透明基材層は、第1電極層14Fに対する第1面11Fの側に、第1透明基材層のなかで最も大きい内部ヘイズを有した層を備えてもよい。この際、最も大きい内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下であり、かつ当該内部ヘイズを有した層以外の他の層の内部ヘイズがほぼゼロでもよい。
【0129】
・第2透明基材層は、第2電極層14Bに対する第2面11Bの側に、第2透明基材層のなかで最も大きい内部ヘイズを有した層を備えてもよい。この際、最も大きい内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下であり、かつ当該内部ヘイズを有した層以外の他の層の内部ヘイズがほぼゼロでもよい。
【0130】
・第1支持層15Fは、第1表面層を備えてもよい。第1表面層は、第1面11Fを一側面として備える。この際、第1表面層の内部ヘイズは、0.1%以上2.0%以下であり、かつ第1透明基材層を構成する第1表面層以外の各層の内部ヘイズがほぼゼロでもよい。
【0131】
・第2支持層15Bは、第2表面層を備えてもよい。第2表面層は、第2面11Bを一側面として備える。この際、第2表面層の内部ヘイズは、0.1%以上2.0%以下であり、かつ第2透明基材層を構成する第2表面層以外の各層の内部ヘイズがほぼゼロでもよい。
【0132】
[付記]
上記実施形態、および上記実施例から導出できる技術的思想を以下に付記する。
[付記1]
2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層と、
2つの前記透明基材層の間に位置する調光層と、を備え、
前記調光層が、空隙を区画する透明樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、
前記調光層の厚さを定めるスペーサーと、を備える調光シートであって、
各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、
各透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である、
ことを特徴とする調光シート。
【0133】
[付記2]
2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層と、
2つの前記透明基材層の間に位置する調光層と、を備え、
前記調光層が、
空隙を区画する透明樹脂層と、
前記空隙を充填する液晶組成物と、
前記調光層の厚さを定めるスペーサーと、
を備える調光シートであって、
各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、
2つの透明基材層の内部ヘイズの合計が0.2%以上4.0%以下である、
ことを特徴とする調光シート。
【0134】
[付記3]
各透明基材層は、前記電極層を支持する支持層を備え、
各透明基材層の外部ヘイズが、当該透明基材層に支持される前記電極層の外部ヘイズであり、
各支持層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である、
付記1または付記2に記載の調光シート。
【0135】
[付記4]
各支持層は、当該支持層に内在する粒子を含有する、
付記3に記載の調光シート。
【0136】
[付記5]
前記粒子の平均粒子径は、0.8μm以上5.0μm以下である、
付記4に記載の調光シート。
【0137】
[付記6]
各支持層は、前記電極層の下地である下地層と、当該下地層を支持する基材とを備え、
各下地層は、当該下地層に内在する粒子を含有する、
付記3に記載の調光シート。
【0138】
[付記7]
前記粒子を囲う下地樹脂層と前記粒子との間の屈折率差は、0.01以上0.05以下である、
付記4から付記6のいずれか一つに記載の調光シート。
【0139】
[付記8]
前記透明基材層は、前記調光層に接する接触面を備え、
前記接触面の算術平均粗さSaは、20nm以下である、
付記1から付記7のいずれか一つに記載の調光シート。
【0140】
[付記9]
前記透明状態の前記調光シートにおけるヘイズが6%以上10%以下である、
付記1から付記8のいずれか一項に記載の調光シート。
【0141】
[付記10]
調光層は、空隙を区画する透明樹脂層、前記透明樹脂層に埋められるスペーサー、および前記空隙を充填する液晶組成物を備え、
2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層との間に前記調光層を形成するための塗工液を塗工することと、
前記塗工液の硬化によって前記調光層を形成することと、
を含む調光シートの製造方法であって、
前記調光シートにおける各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、かつ各透明基材層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である、
ことを特徴とする調光シートの製造方法。
【0142】
[付記11]
調光層は、空隙を区画する透明樹脂層、前記透明樹脂層に埋められるスペーサー、および前記空隙を充填する液晶組成物を備え、
2つの透明基材層であって各別の電極層を備えた前記透明基材層との間に前記調光層を形成するための塗工液を塗工することと、
前記塗工液の硬化によって前記調光層を形成することと、
を含む調光シートの製造方法であって、
前記調光シートにおける各透明基材層の外部ヘイズが0.1%未満であり、かつ2つの透明基材層の内部ヘイズの合計が0.2%以上4.0%以下である、
ことを特徴とする調光シートの製造方法。
【0143】
[付記12]
各透明基材層の外部ヘイズが当該透明基材層に支持される前記電極層の外部ヘイズであるように、支持層に前記電極層を積層することを前記透明基材層の形成に含み、
前記支持層の内部ヘイズが0.1%以上2.0%以下である、
付記10または付記11に記載の調光シートの製造方法。
【0144】
[付記13]
前記電極層を積層するための下地層を基材に積層することによって前記支持層を形成することを含み、
前記下地層は、前記下地層に内在する粒子を含有する、
付記12に記載の調光シートの製造方法。
【符号の説明】
【0145】
P1…第1接続端子
P2…第2接続端子
11…調光シート
12…調光層
13F…第1配向層
13B…第2配向層
14F…第1電極層
14B…第2電極層
15F…第1支持層
15B…第2支持層
51…駆動部