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特開2023-16706アクティブペンのためのタッチ干渉補正
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016706
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】アクティブペンのためのタッチ干渉補正
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230126BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
G06F3/041 520
G06F3/044 120
G06F3/044 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022100067
(22)【出願日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】63/224,368
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/750,292
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502161508
【氏名又は名称】シナプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデルメイジェン、トム
(72)【発明者】
【氏名】シェン、グオジョーン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チン‐スン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タッチの存在下においてアクティブペンと共に用いられたときの、容量性イメージングセンサの性能を向上させる容量性検知の方法及びシステムを提供する。
【解決手段】容量性検知の方法は、入力装置の検知領域に設けられた複数のレシーバ電極から容量タッチプロファイルを取得することと、複数のレシーバ電極から、容量タッチプロファイルと異なるアクティブペンプロファイルを取得することと、容量タッチプロファイルを用いてアクティブペンプロファイルを調節することで補正アクティブペンプロファイルを取得することと、補正アクティブペンプロファイルを用いて検知領域におけるアクティブペンの位置を特定することと、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性検知の方法であって、
入力装置の検知領域に設けられた複数のレシーバ電極から容量タッチプロファイルを取得することと、
前記複数のレシーバ電極から、前記容量タッチプロファイルと異なるアクティブペンプロファイルを取得することと、
前記容量タッチプロファイルを用いて前記アクティブペンプロファイルを調節することで補正アクティブペンプロファイルを取得することと、
前記補正アクティブペンプロファイルを用いて前記検知領域におけるアクティブペンの位置を特定することと、
を含む
方法。
【請求項2】
前記アクティブペンプロファイルを取得することが、前記複数のレシーバ電極によってアクティブペンの放射を受信することを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アクティブペンプロファイルを取得することが、直交復調を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記補正アクティブペンプロファイルが、
前記容量タッチプロファイルをゲインによってスケーリングした後、前記容量タッチプロファイルを前記アクティブペンプロファイルに加算することで得られる、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記補正アクティブペンプロファイルが、更に、接地質量に基づいてゲインを決定することによって得られる
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
以前に得られたゲインが前記ゲインとして使用される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
更に、
前記補正アクティブペンプロファイルが取得される前に、
前記アクティブペンに加えてタッチが前記検知領域に存在するかを判断することと、
前記タッチが存在するという判断に基づき、前記補正アクティブペンプロファイルを取得することと、
を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記容量タッチプロファイルが第1容量タッチプロファイルであり、かつ、前記検知領域の第1座標軸に沿ったものであり、
当該方法が、更に、
前記検知領域の第2座標軸に沿った第2容量タッチプロファイルを取得することと、
前記第1容量タッチプロファイルにおいて、入力物体の影響を受けた各容量測定値が、アクティブペンの影響も受けたと判断することと、
前記判断に応じて、前記アクティブペンプロファイルを調節するために前記第2容量タッチプロファイルを選択することと、
を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アクティブペンプロファイルが第1アクティブペンプロファイルであり、かつ、前記検知領域の前記第1座標軸に沿ったものであり、
当該方法が、更に、
前記第2容量タッチプロファイルから、前記第1アクティブペンプロファイルの調節に用いるゲインを決定することと、
前記第2座標軸について前記ゲインをスケーリングすることでスケーリング後ゲインを取得することと、
前記検知領域の前記第2座標軸に沿った第2アクティブペンプロファイルを取得することと、
前記スケーリング後ゲインを用いて前記第1アクティブペンプロファイルを調節することと、
を含む
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
検知領域に設けられた複数のレシーバ電極と、
前記複数のレシーバ電極から容量タッチプロファイルを取得し、
前記複数のレシーバ電極から、前記容量タッチプロファイルと異なるアクティブペンプロファイルを取得し、
前記容量タッチプロファイルを用いて前記アクティブペンプロファイルを調節することで補正アクティブペンプロファイルを取得し、
前記補正アクティブペンプロファイルを用いて前記検知領域におけるアクティブペンの位置を特定するように構成された処理システムと、
を備える
入力装置。
【請求項11】
前記アクティブペンプロファイルを取得することが、直交復調を含む
請求項10に記載の入力装置。
【請求項12】
前記補正アクティブペンプロファイルが、前記容量タッチプロファイルをゲインによってスケーリングした後、前記容量タッチプロファイルを前記アクティブペンプロファイルに加算することで得られる、
請求項10に記載の入力装置。
【請求項13】
前記補正アクティブペンプロファイルが、更に、接地質量に基づいてゲインを決定することによって得られる
請求項11に記載の入力装置。
【請求項14】
前記処理装置が、更に、
前記補正アクティブペンプロファイルが取得される前に、前記アクティブペンに加えてタッチが前記検知領域に存在するかを判断し、
前記タッチが存在するという判断に基づき、前記補正アクティブペンプロファイルを取得するように構成された、
請求項10に記載の入力装置。
【請求項15】
入力装置の検知領域に設けられた複数のレシーバ電極から容量タッチプロファイルを取得し、
前記複数のレシーバ電極から、前記容量タッチプロファイルと異なるアクティブペンプロファイルを取得し、
前記容量タッチプロファイルを用いて前記アクティブペンプロファイルを調節することで補正アクティブペンプロファイルを取得し、
前記補正アクティブペンプロファイルを用いて前記検知領域におけるアクティブペンの位置を特定するように構成された
処理システム。
【請求項16】
前記アクティブペンプロファイルを取得することが、前記複数のレシーバ電極によってアクティブペンの放射を受信することを含む
請求項15に記載の処理システム。
【請求項17】
前記アクティブペンプロファイルを取得することが、直交復調を含む
請求項15に記載の処理システム。
【請求項18】
前記補正アクティブペンプロファイルが、前記容量タッチプロファイルをゲインによってスケーリングした後、前記容量タッチプロファイルを前記アクティブペンプロファイルに加算することで得られる、
請求項15に記載の処理システム。
【請求項19】
前記補正アクティブペンプロファイルが、更に、接地質量に基づいてゲインを決定することによって得られる
請求項18に記載の処理システム。
【請求項20】
当該処理システムが、更に、前記補正アクティブペンプロファイルが取得される前に、前記アクティブペンに加えてタッチが前記検知領域に存在するかを判断し、前記タッチが存在するという判断に基づき、前記補正アクティブペンプロファイルを取得するように構成された
請求項15に記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年7月21日に出願された米国特許出願第63/224,368号の本出願であり、米国特許出願第63/224,368号への優先権を主張する。米国特許出願第63/224,368号は、参照することにより、そのまま本願に組み込まれる。
【0002】
記載された実施形態は、一般に、電子デバイスに関しており、より具体的には、タッチの存在下においてアクティブペンと共に用いられたときの容量性イメージングセンサの性能を向上することに関している。
【背景技術】
【0003】
近接センサ装置(例えばタッチパッド又はタッチセンサ装置)を含む入力装置は、様々な電子システムにおいて広く用いられている。近接センサ装置は、典型的には、該近接センサ装置が一以上の入力物体の存在、位置及び/又は動きを特定し、しばしば表面によって区画される検知領域を有する。近接センサ装置は、電子システムにインタフェースを提供するために用いられることがある。例えば、近接センサ装置は、しばしば、より大きいコンピューティングシステムの入力装置(例えば、ネットブックやデスクトップコンピュータに組み込まれ、又は、周辺機器として設けられた不透明タッチパッド)として使用される。近接センサ装置は、より小さいコンピューティングシステムにおいても、しばしば使用される(例えば、携帯電話に組み込まれたタッチスクリーン)。
【0004】
近接センサ装置は、入力物体の存在、位置及び/又は動きを特定するために、例えば容量性検知技術のような一以上の電気的技術を使用する。近接センサ装置は、しばしば、入力物体の存在、位置及び/又は動きを検出するために、センサパターンに配置されたセンサ電極のアレイを用いる。
【0005】
入力物体は、指、アクティブペンなどであり得る。複数の入力物体が、近接センサ装置と共に同時に使用されることがある。例えば、アクティブペンを用いて入力が供給される間に、指や手のひらが近接センサ装置の表面に置かれることがある。指又は手のひらの存在は、タッチ干渉を生じさせることがあり、アクティブペンによって提供された入力の劣化を引き起こすことがある。
【0006】
したがって、タッチ干渉に対応するための方法及びシステムの提供が望まれる。
【発明の概要】
【0007】
全体として、一の態様では、一以上の実施形態が、容量性検知の方法に関している。該方法は、入力装置の検知領域に設けられた複数のレシーバ電極から容量タッチプロファイルを取得することと、該複数のレシーバ電極から、容量タッチプロファイルとは異なるアクティブペンプロファイルを取得することとを含む。該方法は、容量タッチプロファイルを用いてアクティブペンプロファイルを調節して補正アクティブペンプロファイルを取得することと、該補正アクティブペンプロファイルを用いて検知領域におけるアクティブペンの位置を特定することも含んでいる。
【0008】
他の態様では、一以上の実施形態が、検知領域に設けられた複数のレシーバ電極と処理システムとを含む入力装置に関している。処理システムは、複数のレシーバ電極から容量タッチプロファイルを取得し、容量タッチプロファイルとは異なるアクティブペンプロファイルを複数のレシーバ電極から取得するように構成されている。処理システムは、更に、容量タッチプロファイルを用いてアクティブペンプロファイルを調節して補正アクティブペンプロファイルを取得し、該補正アクティブペンプロファイルを用いて検知領域におけるアクティブペンの位置を特定するように構成されている。
【0009】
他の態様では、一以上の実施形態が、入力装置の検知領域に設けられた複数のレシーバ電極から容量タッチプロファイルを取得し、複数のレシーバ電極から容量タッチプロファイルとは異なるアクティブペンプロファイルを取得するように構成された処理システムに関している。該処理システムは、更に、容量タッチプロファイルを用いてアクティブペンプロファイルを調節して補正アクティブペンプロファイルを取得し、補正アクティブペンプロファイルを用いて検知領域におけるアクティブペンの位置を特定するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一以上の実施形態による入力装置のブロック図を図示している。
【0011】
図2A図2Aは、一以上の実施形態による、容量性検知シナリオを図示している。
図2B図2Bは、一以上の実施形態による、容量性検知シナリオを図示している。
【0012】
図3A図3Aは、一以上の実施形態による、タッチ結合モデルを図示している。
図3B図3Bは、一以上の実施形態による、タッチ結合モデルを図示している。
【0013】
図4A図4Aは、一以上の実施形態による例示的な直交復調を図示している。
図4B図4Bは、一以上の実施形態による例示的な直交復調を図示している。
【0014】
図5図5は、一以上の実施形態による、アクティブペンプロファイルの補正を図示している。
【0015】
図6A図6Aは、一以上の実施形態による、アクティブペンプロファイルの補正の例を図示している。
図6B図6Bは、一以上の実施形態による、アクティブペンプロファイルの補正の例を図示している。
【0016】
図6C図6Cは、一以上の実施形態による、アクティブペンプロファイルにおける隣接値の例を図示している。
図6D図6Dは、一以上の実施形態による、アクティブペンプロファイルにおける隣接値の例を図示している。
図6E図6Eは、一以上の実施形態による、アクティブペンプロファイルにおける隣接値の例を図示している。
【0017】
図7図7は、一以上の実施形態によるフローチャートを図示している。
【0018】
図8図8は、一以上の実施形態によるフローチャートを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
下記の発明の詳細な説明は、本質的に例示的なものに過ぎず、開示された技術や、開示された技術の応用や使用を限定する意図はない。更に、上記の技術分野、背景技術又は下記の発明の詳細な説明に提示された明示又は暗示の理論に拘束される意図もない。
【0020】
以下の実施形態の詳細な説明の記載では、開示された技術のより深い理解を提供するために、多くの具体的な詳細が提示されている。しかしながら、これらの具体的な詳細が無くとも開示された技術が実施され得ることは当業者には明らかであろう。他の例では、説明を不必要に複雑化することを避けるために周知の構成は詳細には記載されていない。
【0021】
出願全体に渡り、序数(例えば、第1、第2、第3、等)は要素(即ち、出願における任意の名詞)のための形容詞として使用されることがある。序数の使用は、例えば「前」、「後」、「単一の」という語や他の同様の用語の使用によって明示的に開示されていない限り、要素の特定の順序付けを示唆するものでも生成するものでもなく、任意の要素を単一の要素に限定するものでもない。むしろ、序数の使用は、要素を互いに区別するためのものである。一例として、第1要素は第2要素とは別のものであり、第1要素は一つより多い要素を包含し、要素の順序付けにおいて第2要素の後に続く(又は先行する)ことがある。
【0022】
本開示の様々な実施形態は、(例えば指の)タッチの検知とアクティブペンの検出のための入力装置及び方法を提供する。タッチとアクティブペンは、検知領域に同時に存在することがあり、指又は手のひらの存在が、タッチ干渉を起こし、図2及び図3を参照して議論するように、アクティブペンによって提供される入力の劣化を引き起こすことがある。本開示の一以上の実施形態は、タッチ干渉を補正する動作を実行し、これにより、タッチの存在下にあっても、検知領域におけるアクティブペンの正確な検出を可能にする。
【0023】
図1は、一以上の実施形態による、入力装置(100)の例のブロック図である。入力装置(100)は、電子システム(図示されない)に入力を提供するように構成され得る。本明細書において、「電子システム」(又は「電子デバイス」)という用語は、広く、電子的に情報を処理することができる任意のシステムをいう。電子システムの非限定的な例をいくつか挙げれば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットブックコンピュータのようなパーソナルコンピュータ、タブレット、ウェブブラウザ、電子ブックリーダ、スマートフォン、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ゲーム機、車載インフォテインメントシステムなどである。
【0024】
図1において、入力装置(100)が、検知領域(120)において一以上の入力物体(140)によって提供された入力を検知するように構成された近接センサ装置(例えば、「タッチパッド」又は「タッチセンサ装置」)として図示されている。例示的な入力物体としては、スタイラス、アクティブペン及び指(142)が挙げられる。更に、一以上のジェスチャーに渡って、具体的にどの入力物体が検知領域に存在するかは変化し得る。
【0025】
検知領域(120)は、入力装置(100)の上方、周囲及び/又は近くの、入力装置(100)がユーザ入力(例えば、一以上の入力物体によって提供されるユーザ入力)を検出可能な、如何なる空間をも包含している。具体的な検知領域の大きさ、形状及び位置は、実施形態によって広く変化し得る。
【0026】
入力装置(100)は、検知領域(120)におけるユーザ入力を検出するために、センサコンポーネント及び検知技術の任意の組み合わせを使用し得る。入力装置(100)は、ユーザ入力を検出するために一以上の検知素子を備えている。非限定的な例として、入力装置(100)は、容量性技術を使用し得る。
【0027】
入力装置(100)のいくつかの容量性の実装では、電圧又は電流が電界を生成するために印加される。近接する入力物体は、電界に変化を引き起こし、電圧、電流等における変化として検出され得る容量カップリングに検出可能な変化を生じさせる。
【0028】
いくつかの容量性の実装は、電界を生成するために、容量検知素子のアレイ又は、他の規則的な又は不規則的なパターンを使用することがある。いくつかの容量性の実装では、別々の検知素子がオーミック的に短絡され、より大きなセンサ電極を形成することがある。いくつかの容量性の実装では、均一な抵抗であり得る抵抗シートを用いる。
【0029】
いくつかの容量性の実装は、センサ電極と入力物体の間の容量カップリングにおける変化に基づく「自己容量」(又は「絶対容量」)検知法を用いる。様々な実施形態において、センサ電極の近くの入力物体は、センサ電極の近くの電界を変化させ、これにより、測定される容量カップリングを変化させる。一の実装では、絶対容量検知法は、参照電圧(例えば、システム接地)に対してセンサ電極を変調し、センサ電極と入力物体の間の容量カップリングを検出することによって作動する。参照電圧は、実質的に一定の電圧であってもよく、変化する電圧でもよい。様々な実施形態において、参照電圧はシステム接地であってもよい。絶対容量検知法によって得られた測定値は、絶対容量測定値ということがある。
【0030】
いくつかの容量性の実装は、センサ電極間の容量カップリングの変化に基づく「相互容量」(又は「トランス容量」)検知法を用いる。様々な実施形態において、センサ電極の近くの入力物体は、センサ電極間の電界を変化させ、よって、測定される容量カップリングを変化させる。一の実装では、相互容量検知法は、一以上のトランスミッタセンサ電極(「トランスミッタ電極」又は「トランスミッタ(Tx)」ともいう)と、一以上のレシーバセンサ電極(「レシーバ電極」又は「レシーバ(Rx)」ともいう)との間の容量カップリングを検出することで作動する。トランスミッタセンサ電極は、トランスミッタ信号を送信するために参照電圧(例えば、システム接地)に対して変調されてもよい。レシーバ電極は、結果信号の受信を容易化するために、参照電圧に対して実質的に一定に保持されてもよい。参照電圧は、実質的に一定の電圧であってもよく、様々な実施形態において、参照電圧はシステム接地であってもよい。いくつかの実施形態では、トランスミッタセンサ電極とレシーバセンサ電極は、両方が変調されてもよい。トランスミッタ電極は、トランスミッタ信号を送信し、結果信号の受信を容易にするために、レシーバ電極に対して変調される。結果信号は、一以上のトランスミッタ信号及び/又は一以上の環境における干渉源(例えば、他の電磁信号)に対応する効果を含み得る。この効果は、トランスミッタ信号、一以上の入力物体及び/又は環境からの干渉によって生じたトランスミッタ信号の変化、又は、他のそのような効果であり得る。センサ電極は、専用のトランスミッタ又はレシーバであってもよく、送信と受信の両方を行うように構成されてもよい。相互容量検知法で得られた測定値は、相互容量測定値ということがある。
【0031】
図1において、処理システム(110)は、入力装置(100)の一部として図示されている。処理システム(110)は、検知領域(120)における入力を検出するために入力装置(100)のハードウェアを作動させるように構成されている。図7及び図8のフローチャートに記載された一以上のステップは、処理システム(110)によって実行され得る。処理システム(110)は、一以上の集積回路及び/又は他の回路コンポーネントの一部又は全部を備えることがある。例えば、相互容量センサ装置用の処理システムは、トランスミッタセンサー電極で信号を送信するように構成されたトランスミッタ回路部及び/又はレシーバセンサ電極で信号を受信するように構成されたレシーバ回路部を備えることがある。更に、絶対容量センサー装置用の処理システムは、センサ電極に絶対容量信号を印加するように構成されたドライバ回路部及び/又はそれらのセンサ電極で信号を受信するように構成されたレシーバ電極とを備えることがある。一以上の実施形態では、組み合わせ型の相互及び絶対容量センサ装置用の処理システムは、上記された相互及び絶対容量回路部の任意の組み合わせを備え得る。いくつかの実施形態では、処理システム(110)は、ファームウェアコード、ソフトウェアコード及び/又はそれらに類するもののような、電子的に読み取り可能な命令も備えることがある。
【0032】
処理システム(110)は、処理システム(110)の異なる機能を取り扱う一組のモジュールとして実装されてもよい。例えば、処理システム(110)は、何時、少なくとも一の入力物体が検知領域にあったかを判定し、信号対ノイズ比(SNR)を特定し、入力物体の位置情報を特定し、ジェスチャーを識別し、ジェスチャー、ジェスチャーの組み合わせ又は他の情報に基づいて実行すべき動作を決定し、及び/又は、他の動作を実行するための判断回路部(150)を備えていてもよい。モジュールは、ハードウェア及び/又はプロセッサ上で実行され得るソフトウェアを備えることがある。
【0033】
センサ回路部(160)は、トランスミッタ信号を送信し、結果信号を受信するために検知素子を駆動する機能を備えていることがある。例えば、センサ回路部(160)は、検知素子に結合された知覚回路部を備えていてもよい。センサ回路部(160)は、例えば、トランスミッタモジュールとレシーバモジュールとを備えていてもよい。トランスミッタモジュールは、検知素子のうちの送信を行う一部の素子に結合されたトランスミッタ回路部を備えていることがある。レシーバモジュールは、検知素子のうち受信を行う一部の素子に結合されたレシーバ回路部を備えていてもよく、結果信号を受信する機能を有していてもよい。
【0034】
図1は、判断回路部(150)とセンサ回路部(160)を図示しているが、一以上の実施形態では、代替又は追加のモジュールが存在していてもよい。例示的な代替又は追加のモジュールとしては、センサ電極や表示スクリーン(155)のようなハードウェアを作動させるためのハードウェア作動モジュール、センサ信号や位置情報のようなデータを処理するデータ処理モジュール、情報を報告するための報告モジュール、モード変更ジェスチャーのようなジェスチャーを識別するように構成された識別モジュール、及び、動作モードを変更するためのモード変更モジュールが挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、処理システム(110)は、一以上のアクションを起こすことによって、検知領域(120)におけるユーザ入力(又はユーザ入力の欠如)に、直接的に応答する。例示的なアクションとしては、カーソル移動、選択、メニューナビゲーションのような、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)のアクション及び他の機能と共に、動作モードの変更が挙げられる。いくつかの実施形態では、処理システム(110)は、入力(又は入力の欠如)に関する情報を、電子システムのある部分に(例えば、もし、そのような別個の中央処理システムが存在するのであれば、処理システム(110)から分離されている、該電子システムの中央処理システムに)に提供する。いくつかの実施形態では、電子システムのある部分が、処理システム(110)から受け取った情報を処理して、例えばモード変更アクションやGUIアクションを含む、あらゆる種類のアクションを容易化するようにユーザ入力に基づいて動作する。
【0036】
いくつかの実施形態では、入力装置(100)は、タッチスクリーンインタフェースを備えており、検知領域(120)は、表示スクリーン(155)のアクティブ領域の少なくとも一部に重なっている。例えば、入力装置(100)は、表示スクリーンに重なる実質的に透明なセンサ電極を備えていることがあり、関連する電子システムのためにタッチスクリーンインタフェースを提供することがある。表示スクリーンは、ユーザに視覚的なインターフェースを表示可能な任意の種類の動的ディスプレイであってもよく、任意の種類の発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、マイクロLED、液晶ディスプレイ(LCD)、又はその他のディスプレイ技術を含んでいてもよい。入力装置(100)と表示スクリーンは、物理的な要素を共有していてもよい。例えば、いくつかの実施形態は、同一の電気コンポーネントの一部を表示と検知に用いることがある。様々な実施形態において、表示装置の一以上の表示電極は、表示更新と入力検知の両方のために構成され得る。他の例としては、表示スクリーンは、処理システム(110)によって部分的に又は全面的に動作されてもよい。
【0037】
図1は、構成要素の配置を図示しているが、本発明の範囲から逸脱しなければ他の配置が用いられ得る。例えば、様々な構成要素が単一の構成要素を形成するように組み合わされてもよい。他の例では、単一の構成要素で実行される機能が2以上の構成要素で実行されてもよい。
【0038】
図2Aを参照すると、一以上の実施形態による容量性検知シナリオが図示されている。容量性検知シナリオ(200)では、手のひら又は指(290)とアクティブペン(280)とが検知領域(120)に同時に存在している。手のひら又は指(290)の位置とアクティブペン(280)の位置とを特定するために、第1(垂直)座標軸に整列された第1電極(202)と第2(水平)座標軸に整列された第2電極(204)とを用いて検知動作が実行されることがある。図2Aの例では、第1及び第2電極(202、204)は、それぞれ、垂直及び水平の棒状になっている。本開示から逸脱しなければ、他の電極の形状及びパターンが使用され得る。
【0039】
容量性検知動作(例えば、絶対容量検知及び相互容量検知等)が、手のひら又は指(290)の位置を特定するために実行されることがある。
【0040】
一以上の実施形態では、第1電極(202)及び/又は第2電極(204)が、手のひら又は指(290)のような入力物体の位置を特定するために絶対容量検知法に用いられる。第1及び/又は第2センサー電極(202、204)の近くに手のひら又は指(290)が存在するかしないで、センサ電極の近くの電界が変化し、よって、測定される容量カップリングを変化させる。容量カップリングの変化は、第1電極(202)によって形成された列にわたって、及び/又は、第2電極(204)によって形成された行にわたって測定され、これにより、絶対容量タッチプロファイルを形成することがある。検知領域(120)の全体に広がり得る容量イメージが、当該行及び列にわたって測定された容量カップリングの変化によって形成され得る。本開示から逸脱しなければ、容量性検知の他の形態が使用され得る。例えば、トランス容量検知が使用され得る。
【0041】
一以上の実施形態では、第1及び第2電極(202、204)は、アクティブペン(280)によって発せられるペン信号を受信するために受信電極として使用され得る。アクティブペン(280)の位置は、第1及び第2電極(202、204)によって受信されたペン信号の振幅に基づいて特定されてもよい。従って、アクティブペンプロファイルが容量タッチプロファイルと同様に生成されることがあり、アクティブペンプロファイルの組み合わせは、アクティブペン画像を構成し得る。アクティブペンプロファイルと容量タッチプロファイルの間には、直接的な空間的対応関係が存在し得る。言い換えれば、個別の位置における容量タッチプロファイルの値について、同一位置におけるアクティブペンプロファイルの対応する値が存在し得る。アクティブペン(280)の位置の取得に関する更なる詳細は、後に説明する。
【0042】
図2Bを参照すると、一以上の実施形態における容量性検知シナリオが図示されている。容量性検知シナリオ(250)では、ユーザは、検知領域(120)に手のひら又は指(290)を置く。手のひら又は指(290)が検知領域に置かれている間に、ユーザは、アクティブペン(280)を用いて線を含む幾何学的図形を描く。一以上の実施形態では、補償を有効にして入力装置(100)を作動させるときには、線(296)は直線であり、アーチファクトはない。しかしながら、補償を無効にして入力装置(100)を作動させると、線(292)は、線がギザギザになるアーチファクト(294)を含んだものになる。この例では、線がギザギザになるアーチファクト(294)は、図2Bにおいて、2本の水平の線で区切られた領域に現れる。この2本の水平の線は、手のひら又は指(290)が接触している垂直方向の範囲を表していることがある。このように、手のひら又は指(290)による検知領域(120)のタッチは、ペン信号の処理に干渉し得る。
【0043】
次に、線がギザギザになるアーチファクト(294)の原因を、図3A及び3Bを参照して議論する。更に、タッチによる干渉の補償について、図3A、3B、4A、4B、5、6A、6B、6C、6D、6E及び7を参照して説明する。
【0044】
図3Aを参照すると、一以上の実施形態によるタッチ結合モデルが図示されている。タッチ結合モデル(300)は、レシーバ電極(320)によって受信されるペン信号(396)を送信するアクティブペン(310)を含んでいる。(例えば、矩形波の)ペン信号が、ペン先端(314)で発せられることがある。ペン先端(314)でのペン信号(396)の放出を起こさせる電位の揺れを補償するために、ペン本体(314)の電位は、ペン先端(314)での電位と反対に変動し得る。従って、ペン本体(312)は、反転ペン信号(398)を発することがある。
【0045】
図3Aは、ペン信号(396)と反転ペン信号(398)とがレシーバ電極(320)によってどのように受信され得るかを図示するために、3つの容量を含んでいる。レシーバ電極(320)が図2Aの第2電極(204)のうちの一つであると仮定しよう。より具体的には、レシーバ電極(320)が、ペン先端(314)と手のひら又は指(図2Aの290)にきわめて近接している第2電極のうちの一つであると仮定しよう。この場合、キャパシタンスCpen2sは、ペン先端(314)とレシーバ電極(320)との間の容量カップリングを提供する。従って、ペン信号(396)は、Cpen2sを介してレシーバ電極(320)に結合し得る。更に、キャパシタンスCpen2handは、ペン本体(312)とユーザの手との間の容量カップリングを提供する。キャパシタンスChand2sは、ユーザの手とレシーバ電極(320)との間の容量カップリングを提供し、キャパシタンスChand2sysgndは、ユーザの手とシステム接地(GND)との間の容量カップリングを提供する。従って、反転ペン信号(398)は、Cpen2hand及びChand2sを介してレシーバ電極に結合し得る。その結果、反転ペン信号(398)は、レシーバ電極(320)上で、ペン信号(396)と干渉し得る。干渉の程度は、次に議論するように、様々な要因に依存し得る。
【0046】
手とシステム接地との間で良好なカップリングがある場合、Chand2sysgndは、Chand2sよりも支配的であり得る。この場合、反転ペン信号(398)はそれほどレシーバ電極(320)と結合していないことがあるので、よって、反転ペン信号(398)によって生じる干渉は、無視可能かもしれない。しかしながら、手とシステム接地との間のカップリングが弱い場合には、反転ペン信号(398)のレシーバ電極(320)への結合は、無視できない場合がある。反転ペン信号(398)のレシーバ電極(320)への結合への更なる考察を得るために、図3Aに図示されているタッチ結合モデル(300)が図3Bの等価タッチ結合モデルによって表現され得る。
【0047】
図3Bを参照すると、一以上の実施形態によるタッチ結合モデル(350)が図示されている。タッチ結合モデル(350)は、図3Aに図示されているモデル(300)と等価と理解され得る。C1は、反転ペン信号(398)のレシーバ電極(320)への結合の要因となる等価キャパシタである。C2は、反転ペン信号(398)のレシーバ電極(320)への追加の結合を提供しない。その結果、C3も反転ペン信号(398)のレシーバ電極(320)への追加の結合に寄与しない。C1が除去されると、反転ペン信号(398)のレシーバ電極(320)への結合は発生しないであろう。図3Aの回路と図3Bの回路とが等価であるから、C1は、下記のように計算され得る:
【0048】
【数1】
【0049】
Chand2sは、例えば絶対容量測定を用いて測定され得る。Cpen2handは、ペンがどのように又はどこでユーザに保持されるかに依存し、いくらかの変化が存在し得るが、第1近似では一定としてもよい。Chand2sysgndは、測定される場合があり、よって、既知であるとしてもよい。したがって、上記の式においてC1が計算され得る。Cは、上記式の他の項により構成されるゲインを乗じた分子におけるChand2sの測定値、即ち、C1=gain * Chand2s、と表現され得る。
【0050】
ここで、
【数2】
である。
【0051】
このような形式で書き直すと、これは、タッチによる干渉で影響を受けたアクティブペンプロファイルの補正は、アクティブペンプロファイルを、該ゲインでスケーリングした容量タッチプロファイルを用いて調節することにより達成され得ることを示唆している。タッチカップリングモデル(300)が示唆するように、ゲインはChand2sysgndに依存する。Chnd2sysgndが大きいと、ゲインはゼロに近づく。言い換えれば、良好な接地質量の条件では、ゲインはゼロであるか、 ゼロに近く、従って、正確に補正したアクティブペンプロファイルを得るためには、補正なしであるか、又は、少しの補正でよい。しかしながら、接地質量が小さい(low ground mass (LGM))条件では、ゲインは重要である場合があり、したがって、タッチが存在するアクティブペンプロファイルを調節するための補正を提供し得る。接地質量とは、自由空間(例えば、空気や真空)への電気的結合をいう。大きな物体、例えば人体や車両は、結合に寄与する表面積が大きいため、自由空間への結合が良好である。電源に接続されているか、大きな導電体表面に置かれているのでなければ、電話は、大きさが小さいので、自由空間への結合が非常に小さい。これは、しばしば、小接地質量(low ground mass (LGM))と呼ばれる。したがって、枕やボール紙の箱に置かれた電話は、非常に接地質量が小さい。しかしながら、人が片手で電話を保持している場合には、電話は良好な接地を有している。
【0052】
当業者は、タッチカップリングモデル(300、350)が、実際の容量性検知シナリオの単純化した表現であると理解するであろう。他のモデルは、追加の詳細をモデル化し得るので、したがって、本開示から逸脱することなく追加の抵抗、容量等を含み得る。
【0053】
以下の議論では、一以上の実施形態による、タッチの存在により影響を受けたアクティブペンプロファイルの補正について説明する。複数のステップが実行され得る。大まかにいえば、(i)容量タッチプロファイルが取得され、(ii)アクティブペンプロファイルが取得され、(iii)容量タッチプロファイルを用いてアクティブペンプロファイルを調節することにより、補正後アクティブペンプロファイルが得られる。補正後アクティブペンプロファイルが、検知領域におけるアクティブペンの位置を特定するために使用され得る。アクティブペンプロファイルの最高値が、アクティブペンの位置を示している場合がある。空間的内挿が、隣接値を内挿するために使用され得る。
【0054】
容量タッチプロファイルは、例えば、上述のように絶対容量検知を行うことによって取得され得る。
【0055】
更に、アクティブペンプロファイルが上述のように取得され得る。一以上の実施形態では、アクティブペン信号は、入力装置の復調回路と同期していないペン信号を発することがある。したがって、入力装置のレシーバ電極によって受信されたペン信号の振幅の適切な測定ができるように直交復調が行われることがある。
【0056】
図4A及び4Bは、一以上の実施形態による直交復調を図示している。
【0057】
図4Aを参照すると、複数のレシーバ電極に渡るアクティブペンプロファイルのための例示的な直交復調(400)が図示されている。各レシーバ電極において、直交復調の異なる遅延(0°、90°、180°、270°)での復調演算を用いて4つの値が得られる。この例では、アクティブペンがレシーバ電極5の近くに位置しているとし、更に、指がレシーバ電極13の近くに位置しているとしよう。一以上の実施形態において、直交復調では、レシーバ電極のそれぞれについて単一の値(振幅)を算出する。該単一の値は、まず、全てのレシーバ電極に亘って最大のデルタを特定することによって得られる。この例では、電極5において90°の遅延及び180°の遅延で得られる値について最大のデルタが見出される。次に、最大のデルタが特定された遅延について、デルタが算出される。したがって、図4Aでは、90°の遅延の記録が、180°の遅延の記録から差し引かれる。
【0058】
図4Bを参照すると、例示的な直交復調(450)は、レシーバ電極のそれぞれについて単一の値を得るための上述の演算の結果である。得られたアクティブペンプロファイルには、アクティブペンの位置(電極5)にピークがあり、指によって電極に結合された反転ペン信号を表している場合がある、指の位置(電極13)におけるくぼみもある。
【0059】
特定の種類の直交復調について説明したが、本開示から逸脱しなければ、他の種類の直交復調が行われてもよい。
【0060】
図5を参照すると、一以上の実施形態におけるアクティブペンプロファイル(500)の補正が図示されている。図5の左半分は、アクティブペンプロファイル検知のための構成における、垂直座標軸上で垂直に向けられた電極を備える検知領域の概略的な描写を図示している。図5の右半分は、容量タッチプロファイル検知のための構成における、垂直座標軸上で垂直に向けられた電極を備える検知領域の概略的な描写を図示している。図5において、検知領域の入力物体540が、レシーバ電極505、511、512及び513に接触している。一例では、入力物体540は、ペンプロファイル(図5の左半分)において、少なくともレシーバ電極511から少なくともレシーバ電極505に延伸する「手のひらによる負の擾乱」を生じさせるユーザの手のひらである場合がある。入力物体540は、また、タッチプロファイルにおいて、少なくともレシーバ電極511から少なくともレシーバ電極505に延伸する「手のひらによる正の擾乱」を生じさせることがある。
【0061】
図3A、3Bを参照して上述したように、補正は、ゲインによってスケーリングした容量タッチプロファイルの対応する値を加算することによってアクティブペンプロファイルの値を調節することによって行われてもよい。
【0062】
該ゲインは、上記で導き出されたように、
【数3】
である。
【0063】
ゲインは、下記のように特定されてもよい。演算が電極nについて行われるとしよう。電極nについてのアクティブペンプロファイルの値はDである(図5の左半分)。従って、レシーバ電極511についてのアクティブペンプロファイルの値はDであり、レシーバ電極512についてのアクティブペンプロファイルの値はDであり、レシーバ電極513についてのアクティブペンプロファイルの値はDである。D、D及びDは、図5の左半分におけるペンプロファイル領域の上端の近くの「ペン先端」位置に対応するプロファイル領域を表している。
【0064】
電極nについての容量タッチプロファイルの値は、Eである(図5の右半分)。したがって、レシーバ電極511についての容量タッチプロファイルの値はEであり、レシーバ電極512についての容量タッチプロファイルの値はEであり、レシーバ電極513についての容量タッチプロファイルの値はEである。
【0065】
電極nについての補正後のアクティブペンプロファイルの値D’は、演算:
’=D+E*Gain
によって得られてもよい。ゲインは、図5の左半分において、(D、D及びDによって表されている)ハッチングされたプロファイル領域Dの外部のプロファイルの値に基づいて決定されている。例えば、レシーバ電極505は、プロファイル領域Dの外部であり、アクティブペンプロファイルの値がAtmaxである(図5の左半分参照)。レシーバ電極505は、また、容量タッチプロファイルの値がBtmaxである(図5の右半分参照)。この条件では、Gain=-Atmax/Btmaxである。
【0066】
ゲインは、動的に算出されてもよい。もし、必要な入力物体(例えば、手のひら又は指)の領域がゲインを更新するために利用できなければ、最後に知られているゲインが使用されてもよい。これは、例えば、アクティブペンプロファイル又は容量タッチプロファイルにおけるペンの位置が、手のひら又は指の位置と一致しているときに生じ得る。図5を参照すれば、これは、Atmax/Btmaxが得られる位置にペンがある場合に生じるであろう。
【0067】
図6A及び6Bは、一以上の実施形態による、アクティブペンプロファイルの補正の例を提供している。
【0068】
図6Aを参照すると、アクティブペンプロファイル(600)の補正の例が、アクティブペンの位置が指の位置と重なっていないシナリオについて提供されている。左のテーブルは、アクティブペンプロファイルの時間変化を示している。中央のテーブルは、容量タッチプロファイルの時間変化を示している。右のテーブルは、補正アクティブペンプロファイルの時間変化を示している。時間は垂直方向に取られている。即ち、該テーブルにおいて、データ値の上端の行は、最も早い時点についてのものである。列のそれぞれは、一の電極に対するものである。左、中央及び右のテーブルに図示されているデータは、同一の電極についてのものである。三つのテーブルは、いずれも、色分け表記を行っている。斜めハッチングパターンは、ベースラインよりも高い値(例えば、21から243)を示しており、交差ハッチングパターンは、ベースライン近傍の値(例えば、-17から20)を示しており、縦ハッチングパターンは、ベースラインよりも低い値(例えば、-93から-18)を示している。
【0069】
アクティブペンプロファイル(左のテーブル)においては、ペンは静止している。アクティブペンプロファイルの最高値は、電極3においてであり、増加した値は、電極2においても見出され、ペンが電極3の近くに、電極2に向かって少しずれて静止していることを示している。時間経過とともに(テーブルにおいて下方向に移行していく)、指が検知領域に置かれる。検知領域では、ペンの擾乱が、指の位置でみられる。指の位置では、指の近傍における反転ペン信号の電極への結合により、アクティブペンプロファイルの値が(ベースラインより下方に)低下している。しかしながら、空間的な重なりがないため、このペンの擾乱は、アクティブペンの位置の値に有害な効果はない。
【0070】
容量タッチプロファイルにおいては、指が電極の近傍にあると、指の位置が見える。
【0071】
補正アクティブペンプロファイルでは、ペンの擾乱は上手く消去され、ペンの位置が、明確に視認可能なままである。補正アクティブペンプロファイルを得るためのアクティブペンプロファイルの補正は、上述のようにして行われている。図6Aの例では、補正を行うために固定の0.7のゲインが使用された。
【0072】
図6Bを参照すると、アクティブペンの位置が指の位置と重なるシナリオについて、アクティブペンプロファイル(620)の補正の例が提供されている。図6Bのテーブルは、より後の時点における図6Aのテーブルの続きである。
【0073】
アクティブペンプロファイル(左のテーブル)において、ペンが、徐々に左から右に移動している。最初は、アクティブペンプロファイルの最高値が電極9においてであるが、後には(テーブルの下部)最高値は電極10においてである。しかしながら、徐々に動くにもかかわらず、アクティブペンプロファイルは、滑らかな変化を示さない。そうではなく、破線で示されているように、電極9から電極10への突然の切り替えが発生したかのように見える。この突然の遷移の原因は、図6Bにおいてペンの実際の位置において干渉を生じさせるペンの擾乱である。図2A、2Bは、このような、線がギザギザになるアーチファクトを引き起こす状況を図示している。ペンの擾乱は、ペンの位置においてアクティブペンプロファイルの値の大きさを低下させる。
【0074】
一例が、アクティブペンプロファイル(630)における3つの隣接する値を示す図6Cに図示されている。アクティブペンプロファイルにおいて値の大きさが低下しているので、該値のうちの一つのみがベースライン(破線)の上方である。したがって、隣接値の間の滑らかな空間的内挿は不可能である。したがって、ある電極から隣接する電極にペン位置が徐々にずれた場合、該電極間のアクティブペン位置は、突然の段差的な変化を示すであろう。3つの値のうちの2つが辛うじてベースラインの上方にあるものの、状況は、図6Dのアクティブペンプロファイル(640)における例示的な隣接値においては少しだけよい。図6Eは、アクティブペンプロファイル(650)における例示的な隣接値の望ましいシナリオを図示している。3つの値のすべてが著しくベースラインの上方にある結果、アクティブペンの位置がずれるときでも、隣接値の間で滑らかな空間的内挿が可能になる。
【0075】
図6Bの議論を続けると、容量タッチプロファイル(中央のテーブル)において、指の位置が、図6Aの容量タッチプロファイルにおいて初期的に図示されている位置に継続して存在している。図6Bの補正アクティブペンプロファイルを参照すると、補償によってアクティブペンプロファイルの値の低下が補正されるので、補償の結果、電極9と電極10の間の滑らかな空間的内挿が得られる。
【0076】
図7は、一以上の実施形態によるフローチャートを図示している。フローチャートにおける様々なステップが順に提示され、説明されるが、当業者はステップの一部又は全部が異なる順序で実行され得ること、組み合わせられ又は省略され得ること、及び、ステップの一部又は全部が並行して実行され得ることを理解するであろう。追加のステップがさらに実行されてもよい。したがって、開示の範囲は、図7に図示されている、ステップの特定の配置に限定されると考えるべきではない。
【0077】
図7のフローチャートは、アクティブペンのためのタッチ干渉を補正する方法(700)を図示している。図7のステップの一以上は、入力装置(100)の構成要素によって実行されてもよい。以下に記載するステップは、単一の容量タッチプロファイル及び単一のアクティブペンプロファイルについて記載しているが、該ステップは、画像フレームを得るために複数のタッチプロファイルについて実行され得る。更に、動作は、時間経過とともに繰り返され得る。記述された動作は、複数のアクティブペンの存在において用いられてもよい。
【0078】
ステップ702において、容量タッチプロファイルが取得される。容量タッチプロファイルは、上述のようにして取得され得る。
【0079】
ステップ704において、アクティブペンプロファイルが取得される。アクティブペンプロファイルは、上述のようにして取得され得る。
【0080】
ステップ706において、容量タッチプロファイルを用いてアクティブペンプロファイルを調節することによって補正アクティブペンプロファイルが取得される。補正アクティブペンプロファイルは、上述のようにして取得され得る。
【0081】
ステップ708において、検知領域におけるアクティブペンの位置が、補正アクティブペンプロファイルを用いて特定される。アクティブペンの位置は、上述のようにして取得され得る。
【0082】
図8は、一以上の実施形態によるフローチャートを図示している。フローチャートにおける様々なステップが順に提示され、説明されるが、当業者はステップの一部又は全部が異なる順序で実行され得ること、組み合わせられ、又は省略され得ること、及び、ステップの一部又は全部が並行して実行され得ることを理解するであろう。追加のステップがさらに実行されてもよい。したがって、開示の範囲は、図8に図示されている、ステップの特定の配置に限定されると考えるべきではない。
【0083】
図8のフローチャートは、複数の座標軸を用いてアクティブペンのためのタッチ干渉を補正する方法(800)を図示している。ゲインは、最適なチューニング領域(例えば、図5におけるレシーバ電極505)が特定され、確認されたときにフィルタイングされ、調節されてもよい。例えば、チューニングは、ペンが端の電極上に位置している場合には行われなくてもよい。加えて、チューニングは、垂直座標軸の電極及び水平座標軸の電極に対して適用されてもよく、各座標軸について別々に使用されてもよい。もし一方の座標軸について数秒間の間、チューニングが行われない場合、他方の座標軸が支援を提供し両方の座標軸についてゲインを更新してもよい。
【0084】
図8のステップの一以上は、入力装置の構成要素によって実行されてもよい。以下に記載するステップは、単一の容量タッチプロファイル及び単一のアクティブペンプロファイルについて記載しているが、該ステップは、画像フレームを得るために複数のタッチプロファイルについて実行され得る。更に、動作は、時間経過とともに繰り返され得る。記述された動作は、複数のアクティブペンの存在において用いられてもよい。
【0085】
ステップ802において、入力装置は、検知領域の複数のレシーバ電極から第1座標軸に沿った第1容量タッチプロファイルを取得する。
【0086】
ステップ804において、入力装置は、第1容量タッチプロファイルにおいて、入力物体の影響を受けた各容量測定値が、アクティブペンの影響も受けたと判断する。入力物体の影響を受けた各容量測定値がアクティブペンの影響も受けているので、入力物体の位置における容量測定値は、第1座標軸におけるアクティブペンプロファイルの調節に用いられない場合がある。
【0087】
ステップ806において、入力装置は、検知領域の複数のレシーバ電極から第2座標軸に沿った第2容量タッチプロファイルを取得する。第2容量タッチプロファイルは、ステップ804の判断に応じて取得されてもよく、ステップ804の判断とは独立して取得されてもよい。
【0088】
ステップ808において、入力装置は、該判断に応じて、第2容量タッチプロファイルを選択してアクティブペンプロファイルを調節する。一以上の実施形態において、入力装置は、第2容量タッチプロファイルにおける入力物体の位置の少なくとも一の容量測定値が、アクティブペンの影響を受けていないと判断する。
【0089】
ステップ810において、入力装置は、アクティブペンプロファイルを取得する。アクティブペンプロファイルは、上述のようにして取得され得る。
【0090】
ステップ812において、入力装置は、第2容量タッチプロファイルを用いてアクティブペンプロファイルを調節することにより補正アクティブペンプロファイルを取得する。
【0091】
ステップ814において、入力装置は、補正アクティブペンプロファイルを用いて検知領域におけるアクティブペンの位置を特定する。
【0092】
いくつかの実施形態では、図5の右側のE0、E1、E2領域について、絶対検知プロファイルの代わりに推定トランス容量プロファイルが使用されてもよい。同様に、図5の右側のBtmax電極について、絶対検知プロファイルの代わりに推定トランス容量プロファイルが使用されてもよい。
【0093】
一方の座標軸(垂直又は水平)がブロックされ、ある期間の間、アクティブペンプロファイルを更新できない場合、他方の座標軸が、該一方の座標軸についてチューニング値を提供できるように、スケーリングが使用されてもよいことに留意されたい。スケーリングは、既知又は事前に測定された比率、例えば70%であってもよく、電話モデルに基づいていてもよい。例えば、X軸が700のチューニング値を有しており、Y軸がブロックされてチューニング値が必要であるとしよう。Xチューニング値を70%で乗じることで490を得、そして、これがY軸によって使用されてもよい。
【0094】
本開示の実施形態は、このように、アクティブペンのタッチ干渉を補正するための方法及びシステムを提供している。図示されていないが、追加の構成要素が含まれていてもよい。例えば、一実施形態では、ステートマシーンが、タッチ干渉を補正するための当該方法を実行すべきか否かを判断するように構成される。ステートマシーンは、アクティブペン及びタッチが同時に検知領域に存在するかを確認してもよい。ステートマシーンは、同時存在が検出された場合にのみ当該方法を実行してもよい。ステートマシンは、そうでない場合には当該方法の実行を行わず、不必要な補正動作によってアーチファクトが導入され得る事態を避けてもよい。記述したような方法及び装置の実装は、更に、様々なフィルタ演算を含んでいてもよい。例えば、検知領域にある指又は手のひらが高速で動くことに起因し得る問題に対処するために、一時的なフィルタがアクティブペンの位置に適用されてもよい。このシナリオでは、フィルタは、ペン軌跡における動きのアーチファクトを回避するために、タッチ検出レート(例えば、60Hz)とアクティブペン検出レート(例えば、240Hz)の間の不整合に対処してもよい。
【0095】
限定した数の実施形態について本発明を説明しているが、この開示の利益を有する当業者は、本明細書に開示された本発明の範囲から逸脱していない他の実施形態を引き出すことが可能であると理解するであろう。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8
【外国語明細書】