IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アサヒビール株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167065
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】柑橘風味飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20231116BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20231116BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20231116BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20231116BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/56
C12G3/06
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077941
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄大
【テーマコード(参考)】
4B115
4B117
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH11
4B115LP02
4B115MA03
4B117LC02
4B117LC03
4B117LC14
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】 柑橘風味飲料にすりおろした柑橘未熟果果皮の香りおよび味を付与できる新規な技術を提供する。
【解決手段】 シス-3-ヘキセノールと、γ-テルピネンを含有する柑橘風味飲料。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シス-3-ヘキセノールと、γ-テルピネンを含有する柑橘風味飲料。
【請求項2】
シス-3-ヘキセノールの含有量が1~1000ppbである、請求項1に記載の柑橘風味飲料。
【請求項3】
γ-テルピネンの含有量が10~5000ppbである、請求項1に記載の柑橘風味飲料。
【請求項4】
シス-3-ヘキセノールの含有量に対するγ-テルピネンの含有量の比率が0.01~10である、請求項1から3のいずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
【請求項5】
リナロールをさらに含有する、請求項1に記載の柑橘風味飲料。
【請求項6】
リナロールの含有量が10000ppb未満である、請求項5に記載の柑橘風味飲料。
【請求項7】
シス-3-ヘキセノールの含有量とリナロールの含有量の和が10000ppb未満である、請求項5に記載の柑橘風味飲料。
【請求項8】
リナロールとシス-3-ヘキセノールの含有量の和に対するγ-テルピネンの含有量の比率が0.01~10である、請求項5から7のいずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
【請求項9】
前記柑橘風味飲料がアルコール飲料である、請求項1に記載の柑橘風味飲料。
【請求項10】
前記柑橘風味飲料が炭酸飲料である、請求項1に記載の柑橘風味飲料。
【請求項11】
前記柑橘風味飲料のクエン酸に換算した酸度が0.30g/100ml以上である、請求項1に記載の柑橘風味飲料。
【請求項12】
すりおろした未熟果果皮を想起させる香りおよび味を有する、請求項1に記載の柑橘風味飲料。
【請求項13】
柑橘風味飲料の製造方法であって、当該柑橘風味飲料にシス-3-ヘキセノールおよびγ―テルピネンを含有させることを含む、柑橘風味飲料の製造方法。
【請求項14】
柑橘風味飲料にシス-3-ヘキセノールおよびγ―テルピネンを含有させることを含む、柑橘風味飲料へのすりおろした柑橘未熟果果皮を想起させる香りおよび味の付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柑橘風味飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
レモン、オレンジ、グレープフルーツ等の柑橘風味を有する飲料は、柑橘の適度な酸味や柑橘特有の香り、味わいを有することで多くの人に好まれている。
そしてこのような柑橘風味飲料に種々の香味成分を添加したり増強することによって、嗜好性をさらに向上させることが行われている。
例えば特許文献1には、ペリルアルデヒドを含有させることで青みのある柑橘果実の風香味(柑橘果実のグリーン感)を有する柑橘果実様飲料が開示されている。
また特許文献2には、ロタンドンを添加することにより、新鮮さ、生々しさを持つ果汁感が増強された柑橘香味を有する飲食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178592号公報
【特許文献2】特開2016-198025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、柑橘風味飲料にすりおろした柑橘未熟果果皮を想起できる香りおよび味を付与できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は柑橘風味飲料において、柑橘系果実を想起できる味および香りに加えてすりおろした柑橘未熟果果皮を想起できる香りおよび味をさらに有するようにすることで、柑橘風味飲料に特有のビター感やフレッシュ感が付与され、新奇で嗜好性の高い柑橘風味飲料が実現できることを発見した。
そして、鋭意研究の結果、本発明者は、シス-3-ヘキセノールとγ―テルピネンとを柑橘風味飲料に含有させることで、柑橘風味飲料に上記の香味を付与できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
シス-3-ヘキセノールと、γ-テルピネンを含有する柑橘風味飲料。
[2]
シス-3-ヘキセノールの含有量が1~1000ppbである、[1]に記載の柑橘風味飲料。
[3]
γ-テルピネンの含有量が10~5000ppbである、[1]または[2]に記載の柑橘風味飲料。
[4]
シス-3-ヘキセノールの含有量に対するγ-テルピネンの含有量の比率が0.01~10である、[1]から[3]のいずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[5]
リナロールをさらに含有する、[1]から[4]のいずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[6]
リナロールの含有量が10000ppb未満である、[5]に記載の柑橘風味飲料。
[7]
シス-3-ヘキセノールの含有量とリナロールの含有量の和が10000ppb未満である、[5]または[6]に記載の柑橘風味飲料。
[8]
リナロールとシス-3-ヘキセノールの含有量の和に対するγ-テルピネンの含有量の比率が0.01~10である、[5]から[7]のいずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[9]
前記柑橘風味飲料がアルコール飲料である、[1]から[8]のいずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[10]
前記柑橘風味飲料が炭酸飲料である、[1]から[9]のいずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[11]
前記柑橘風味飲料のクエン酸に換算した酸度が0.30g/100ml以上である、[1]から[10]のいずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[12]
すりおろした未熟果果皮を想起させる香りおよび味を有する、[1]から[11]のいずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[13]
柑橘風味飲料の製造方法であって、当該柑橘風味飲料にシス-3-ヘキセノールおよびγ―テルピネンを含有させることを含む、柑橘風味飲料の製造方法。
[14]
柑橘風味飲料にシス-3-ヘキセノールおよびγ―テルピネンを含有させることを含む、柑橘風味飲料へのすりおろした柑橘未熟果果皮の香りおよび味の付与方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、柑橘風味飲料にすりおろした柑橘未熟果果皮を想起できる香りおよび味を付与できる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態は飲んだときに柑橘系果実を想起できる香りおよび味(以下、単に柑橘の香味ともいう)に加えてすりおろした未熟果果皮を想起させる香りおよび味(以下、単に未熟果果皮の香味ともいう)を感じることができる柑橘風味飲料に関する。本実施形態の柑橘風味飲料は、シス-3-ヘキセノールとγ-テルピネンを含有する。
【0009】
本明細書において、柑橘風味飲料とは、飲用した際に柑橘系果実を想起できる味および香りを有する飲料をいう。柑橘系果実としては、例えば、レモン、ライム、シークァーサー、ダイダイ、ユズ、カボス、スダチ、シトロン、ブッシュカンなどの香酸柑橘類、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、スウィーティー、デコポンなどの雑柑類、オレンジ、グレープフルーツ、イヨカン、タンカンなどのタンゴール類、セミノールなどのタンゼロ類、ブンタン、ミカン、キンカンなどが挙げられる。
【0010】
柑橘の香味を付与する成分としては、例えば柑橘系果実の果汁(柑橘果汁)を挙げることができ、一つの態様として、本実施形態の柑橘風味飲料を柑橘果汁を含有する柑橘風味飲料とすることができる。
ここで、果汁とは、果実を破砕して搾汁又は裏ごし等をし、必要に応じて皮、種子等を除去した液体成分をいい、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれる概念である。アルコール飲料に含有され得る果汁としては、例えば上述した柑橘系果実から選択される少なくとも一つ以上の果汁を挙げることができる。
【0011】
本実施形態において、果汁を含有する場合の柑橘の果汁含有率については特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
なお、果汁含有率とは、果実等の食用部分を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない搾汁(ストレート果汁)のBrix値またはクエン酸に換算した酸度(以下、単に酸度ともいう)を100%としたときの相対濃度である。また、Brix値は、JAS規格に基づき、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。Brix値の測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。また、酸度は、100g中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100g)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
果汁含有率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果物の種類ごとに定められている。例えば、グレープフルーツはBrix値に基づいて算出され、レモンは酸度に基づいて算出される。果汁含有率をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。
本実施形態の柑橘風味飲料は、本発明の構成を適用することで柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスをより改善することができるため、柑橘果汁の果汁含有率が10%以下であることが好ましい(無果汁である場合も含む概念である。すなわち、柑橘果汁を果汁含有率10%以下で含有するか、果汁を含有しないことが好ましい)。
【0012】
また、本実施形態の柑橘風味飲料としては、柑橘の香味が感じられるものであれば、柑橘系果実の果汁を含有しない、いわゆる無果汁の飲料であってもよい。例えば、柑橘系果実に特徴的な香りを再現した香料を含有する飲料や、柑橘系果実に特徴的な香気成分を含有する柑橘系果実の抽出物を含む飲料などでもよい。柑橘系果実の抽出物を含む飲料としては、具体的には例えば、柑橘系果実をアルコールに浸漬して得た浸漬酒などが挙げられる。
【0013】
さらに、柑橘風味飲料は、上述したものの他、上述した柑橘系果実の果汁、柑橘系果実の抽出物、香料のうち2つ以上の成分が含有される飲料であってもよい。
【0014】
本実施形態の柑橘風味飲料は、上述のとおり、シス-3-ヘキセノールとγ-テルピネンを含有する。シス-3-ヘキセノールとγ-テルピネンを含有することで、本実施形態の柑橘風味飲料は、すりおろした柑橘未熟果果皮を想起させる香りおよび味を有する。
【0015】
本明細書において、すりおろした柑橘未熟果果皮を想起させる香りおよび味とは、飲用した際に、成熟の状態となる前の状態にあり青みのある柑橘系果実の果皮をすりおろしたものを想起させる香りおよび味を意味する。
【0016】
シス-3-ヘキセノール(cis-3-ヘキセン-1-オール)はC612Oで表される化合物である。本実施形態の柑橘風味飲料において、シス-3-ヘキセノールの含有量は特に限定されないが、1ppb以上、1000ppb以下の含有量であることが柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスの観点から好ましく、より好ましくは1ppb以上、500ppb以下である。
【0017】
γ-テルピネン(p-メンタ-1,4-ジエン)はC1016で表される化合物である。本実施形態の柑橘風味飲料において、γ-テルピネンの含有量は特に限定されないが、10ppb以上、5000ppb以下の含有量で含有されることが柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスの観点から好ましく、より好ましくは100ppb以上、1000ppb以下である。
【0018】
また、本実施形態の柑橘風味飲料においては、柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスの観点から、シス-3-ヘキセノールの含有量に対するγ-テルピネンの含有量の比率が0.01以上10以下であることが好ましく、より好ましくは0.01以上5以下であり、さらにより好ましくは0.05以上2.5以下である。
【0019】
なお、本実施形態の柑橘風味飲料について、シス-3-ヘキセノールおよびγ-テルピネンの含有量の調整方法については特に限定されず、当業者が適宜実施できる。
また、シス-3-ヘキセノールおよびγ-テルピネンの含有量は、その原材料組成から算出することが可能であるほか、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)を用いて公知の方法に従い得ることもできる。例えば、シス-3-ヘキセノールについては特許第6301562号に記載の方法に基づき飲料中の含有量を得ることができ、また、γ-テルピネンについても特許第7001865号に記載の方法に基づき飲料中の含有量を得ることができる。
【0020】
本実施形態の柑橘風味飲料には、シス-3-ヘキセノールおよびγ-テルピネンに加えて、本発明の課題を解決できる範囲で必要に応じて他の成分を含有することができる。他の成分としては、水の他、例えば、アルコール、酸味料、香料、ビタミン、着色料、酸化防止剤、乳化剤、保存料、甘味料、食塩、調味料、エキス類、pH調整剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム)、品質安定化剤、増粘剤などが挙げられる。
【0021】
例えば、本実施形態の柑橘風味飲料では、シス-3-ヘキセノール、γ-テルピネンに加えてリナロールを含有することが、柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスの観点から好ましい。
リナロール(3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール)は、C10H18Oで表される化合物である。本実施形態の柑橘風味飲料に含有されるリナロールはR体、S体のいずれであってもよく、また、これらの混合物であってもよい。
リナロールを含有する場合にその含有量は特に限定されないが、10000ppb未満であることが柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスの観点から好ましい。
また、同様に柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスの観点から、リナロールを含有する場合のシス-3-ヘキセノールの含有量とリナロールの含有量の和が10000ppb未満であることが好ましい。
また、同様に柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスの観点から、リナロールを含有する場合のリナロールとシス-3-ヘキセノールの含有量の和に対するγ-テルピネンの含有量の比率が0.01~10であることが好ましく、より好ましくは0.05~5であり、さらにより好ましくは0.05~2.5であり、さらにより一層好ましくは0.1~1.7である。
【0022】
なお、本実施形態の柑橘風味飲料がリナロールを含有する場合のリナロールの含有量の調整方法についても特に限定されず、当業者が適宜実施できる。
また、リナロールの含有量は、その原材料組成から算出することが可能であるほか、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)を用いて公知の方法に従い得ることもできる。例えば、特許第6301562号に記載の方法に基づき飲料中のリナロール含有量を得ることができる。
【0023】
また、本実施形態の柑橘風味飲料は、エタノールなどのアルコールを含有するアルコール飲料であってもよい。
アルコールを含有する場合、アルコールの含有量は特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、本発明の構成を適用することで柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスをより改善できるため、1v/v%以上、9v/v%以下が好ましい。
【0024】
アルコール飲料である場合、例えば、水にアルコール源となる酒(ベース酒)が配合されて製造される。ベース酒は特に限定されないが、例えば蒸留酒を挙げることができる。蒸留酒としては、ジン、ウィスキー、ウォッカ、焼酎、および原料用アルコール等が例示でき、例えばこれらのうち1種または2種以上を本実施形態の柑橘風味飲料に含有するように構成することができる。
【0025】
また、本実施形態の柑橘風味飲料は、本発明の構成を適用することで柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスをより改善できるため、クエン酸に換算した酸度が0.30g/100ml以上であることが好ましい。
【0026】
上述のとおり飲料の酸度は、飲料100g中に含まれる有機酸をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100g)であり、公知の方法、装置を用いて測定できる。具体的な測定方法としては、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、より具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)を用いることができる。よって、酸度の値も、例えば飲料に添加される有機酸の種類や含有量を変更すること等により、当業者が適宜調整できる。
【0027】
また、本実施形態の柑橘風味飲料は、炭酸ガスを含む炭酸飲料であってもよい。炭酸ガスを含む場合のガス圧については特に限定されず当業者が適宜設定できるが、本発明の構成を適用することで柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスをより改善できるため、ガス圧が1.5~3.5ガスボリュームであることが好ましい。なお、ガスボリュームとは、1気圧、20℃における飲料中に溶解している炭酸ガスの容積と飲料の容積比をいう。ガスボリュームの値は、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値として得ることができる。
【0028】
本実施形態の柑橘風味飲料は、例えば、原料水、果汁や香料などの飲料に柑橘の香味を付与する成分、シス-3-ヘキセノール、γ-テルピネン、および必要に応じて含有されるその他の成分を混合して得ることができる。
柑橘風味飲料の製造において、成分を添加する順序などは特に限定されず、当業者が適宜設定できる。上記の原料水は、水自体のほか、含有される成分の溶液等であってもよい。また、柑橘風味飲料に添加される各成分は、それらを単独で添加してもよく、予め混合した混合物として添加してもよい。
【0029】
また、炭酸ガス入りの飲料とする場合、上記希釈工程において原料水として炭酸ガスを含有する水(炭酸水)を用いる方法のほか、容器に充填する前に所定のガスボリュームになるようにカーボネーションを行うようにしてもよい。
【0030】
製造された本実施形態の柑橘風味飲料は、例えば、容器に封入された容器詰飲料とすることができる。容器への封入方法などは特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。容器も公知のものを適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、紙容器、透明又は半透明のビン、PETボトル等の透明又は半透明のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶などが挙げられる。
【0031】
以上、本実施形態によれば、柑橘風味飲料においてシス-3-ヘキセノール、γ-テルピネンを含有させることにより、柑橘果実の香味に加えて未熟果果皮の香味を飲料が有するようにすることができる。また、本実施形態の柑橘風味飲料は柑橘果実の香味と未熟果果皮の香味とのバランスにも優れる。そのため、嗜好性のより高い飲料の提供に寄与することが可能である。
【実施例0032】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
[柑橘風味飲料ベース液の調製]
表1に示す処方の柑橘風味飲料ベース液(酸度0.35、炭酸ガス圧3.0ガスボリューム、アルコール濃度5.0v/v%)を調製した。
【0034】
【表1】
【0035】
[試験1]
柑橘風味飲料ベース液にシス-3-ヘキセノールとγ-テルピネンを添加した実施例1~4の柑橘風味飲料を調製した。
得られた飲料について、シス-3-ヘキセノールおよびγ-テルピネンを未添加とした比較例1の飲料を対照(評点0)とした官能評価試験を実施した。
官能評価試験においては、以下の評価基準に基づき、5名の訓練されたパネリストにより、未熟果果皮の香味、フレッシュ感、ビター感、柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスについて評価した。
【0036】
未熟果果皮の香味:+3点…対象よりかなり強い、+2点…対象より強い、+1点…対象よりやや強い、0点…対象と同程度、-1点…対象よりやや弱い、-2点…対象より弱い、-3点…対象よりかなり弱い
フレッシュ感:3点…対象よりかなり強い、+2点…対象より強い、+1点…対象よりやや強い、0点…対象と同程度、-1点…対象よりやや弱い、-2点…対象より弱い、-3点…対象よりかなり弱い
ビター感:3点…対象よりかなり強い、+2点…対象より強い、+1点…対象よりやや強い、0点…対象と同程度、-1点…対象よりやや弱い、-2点…対象より弱い、-3点…対象よりかなり弱い
柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランス:+3点…対象よりかなり良い、+2点…対象より良い、+1点…対象よりやや良い、0点…対象と同程度、-1点…対象よりやや悪い、-2点…対象より悪い、-3点…対象よりかなり悪い
【0037】
上記評価項目のうち、フレッシュ感およびビター感は未熟果果皮を想起させる香味を構成する要素の一つである。フレッシュ感とは、まだ熟していない青みのある果皮を想起させる香りおよび味を意味する。また、ビター感とは苦味を意味し、特に果皮をすりおろしたものを口に含んだときに感じられる特有の苦みを意味する。
結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2から理解できるとおり、対照と比べて、実施例の柑橘風味飲料は、未熟果果皮の香味を感じられるとともに柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスにも優れた飲料であることが理解できる。
【0040】
[試験2]
実施例2または4の柑橘風味飲料にリナロールを添加して実施例5~10の柑橘風味飲料を調製した。
得られた実施例の飲料について、試験1と同様に官能評価試験を実施した。
実施例2、4、5~10の柑橘風味飲料についての結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表3から理解できるとおり、シス-3-ヘキセノール、γ-テルピネンに加えてリナロールを含有させることで柑橘の香味と未熟果果皮の香味とのバランスがさらに高まることが理解できる。