(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167079
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ドライバー
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20231116BHJP
B25B 23/142 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B25B23/14 610J
B25B23/14 620J
B25B23/142
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077963
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 太志
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038BC01
3C038CA05
3C038CA07
3C038CA10
3C038CC08
(57)【要約】
【課題】締付トルクが規定トルクに到達したか否かの判定を行う際に、精度の高い撮像装置などを用いることなく、より簡便な装置構成により判定を行うことができるようにする。
【解決手段】固定部と、ビットを着脱可能に構成されるとともに予め設定されたトルクよりも大きいトルクが加わると固定部に対して相対的に空転する空転部と、空転部に形成された識別パターンとを有するトルクリミッタと、トルクリミッタの固定部を固定する固定部材を有する筐体と、トルクリミッタの空転部に形成された識別パターンを検知して出力するセンサと、センサの出力に基づいて、ビットによる締付トルクが予め設定されたトルクに到達したと判定する判定部を有する制御装置とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、ビットを着脱可能に構成されるとともに予め設定されたトルクよりも大きいトルクが加わると前記固定部に対して相対的に空転する空転部と、前記空転部に形成された識別パターンとを有するトルクリミッタと、
前記トルクリミッタの前記固定部を固定する固定部材を有する筐体と、
前記トルクリミッタの前記空転部に形成された前記識別パターンを検知して出力するセンサと、
前記センサの出力に基づいて、前記ビットによる締付トルクが前記予め設定されたトルクに到達したと判定する判定部を有する制御装置と
を有することを特徴とするドライバー。
【請求項2】
請求項1に記載のドライバーにおいて、
前記センサは、前記筐体の内部に配置されている
ことを特徴とするドライバー。
【請求項3】
請求項1に記載のドライバーにおいて、
前記センサは、
光を投光する投光部と、
前記投光部から投光された前記光の反射光を受光する受光部と
を有する光学式センサである
ことを特徴とするドライバー。
【請求項4】
請求項3に記載のドライバーにおいて、
前記識別パターンは、少なくとも第1の色の領域と第2の色の領域とが、前記空転部の周面周りに予め設定された色順に配置されて縦縞模様を形成した
ことを特徴とするドライバー。
【請求項5】
請求項4に記載のドライバーにおいて、
前記判定部は、前記光学式センサの出力が第1閾値以下となる第1状態と前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上となる第2状態との間で切り替わる変化の回数から、前記ビットによる締付トルクが前記予め設定されたトルクに到達したと判定する
ことを特徴とするドライバー。
【請求項6】
請求項5に記載のドライバーにおいて、
前記識別パターンは、前記第1の色の領域と前記第2の色の領域との間に第3の色の領域を配置して縦縞模様を形成し、
前記第3の色は、前記第1の色と前記第2の色との中間色である
ことを特徴とするドライバー。
【請求項7】
請求項5に記載のドライバーにおいて、
前記判定部は、前記光学式センサの出力が前記第1閾値を上回ってから前記第2閾値に達するまでの変化時間、あるいは、前記第2閾値を下回ってから前記第1閾値に達するまでの変化時間が、予め設定された時間より短い場合に、前記ビットによる締付トルクが前記予め設定されたトルクに到達したとは判定しない
ことを特徴とするドライバー。
【請求項8】
請求項5に記載のドライバーにおいて、
前記判定部は、前記光学式センサの出力が前記第2閾値よりも大きい第3閾値に到達した場合は、前記ビットによる締付トルクが前記予め設定されたトルクに到達したとは判定しない
ことを特徴とするドライバー。
【請求項9】
請求項1に記載のドライバーにおいて、
前記制御装置は、前記判定部による判定結果を送信する送信部を有する
ことを特徴とするドライバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバーに関する。さらに詳細には、本発明は、製品の組み立て時などにおいて、ネジ、ボルトあるいはナットなどの各種の締結部材を、予め設定された締付トルクで締め付けて締結する際に用いて好適なドライバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、予め設定された締付トルク(本明細書ならびに特許請求の範囲においては、「予め設定された締付トルク」を単に「規定トルク」と適宜に称する。)によりネジ、ボルトあるいはナットなどの各種の締結部材を締め付けて締結するドライバーとして、例えば、特開2020-131412号公報に開示されたインパクト工具(電動ドライバー)が知られている。
【0003】
この特開2020-131412号公報に開示された電動ドライバーは、周面にストライプ模様(縦縞模様)の識別標識(識別パターン)を設けた識別部材をビットに装着し、ビットの回転に伴う識別パターンのねじれ変形を撮像装置により撮像して、その撮像結果が示すねじれ変形のねじれ量を計測して判定することにより、締付トルクが規定トルクに到達したか否かの判定を行っている。
【0004】
即ち、上記した特開2020-131412号公報に開示された電動ドライバーによれば、撮像装置による識別パターンの撮影結果に基づき、締付トルクが規定トルクに到達したか否かを判定するようにしたため、締付トルクが規定トルクに到達したか否かを判定する際の精度を向上することができるものであった。
【0005】
しかしながら、上記した特開2020-131412号公報に開示された電動ドライバーにおいては、ビットに装着された識別部材に設けられた識別パターンのねじれ変形を撮像装置によって撮像して、当該ねじれ変形におけるねじれ量を計測する必要があるため、微細なねじれ変形も撮像して解析することが可能な精度の高い撮像装置などを用いることが必要であるという問題点があった。
【0006】
このため、精度の高い撮像装置などを用いることなく、より簡便な装置構成によって、締付トルクが規定トルクに到達したか否かを判定することのできるドライバーの提案が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の技術の有する上記したような要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、締付トルクが規定トルクに到達したか否かの判定を行う際に、精度の高い撮像装置などを用いることなく、より簡便な装置構成により判定を行うことができるようにしたドライバーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明によるドライバーは、筐体に取り付けられるトルクリミッタの空転部に識別パターンを設け、この識別パターンを検知することにより空転部の空転による回転を検知するようにして、空転部の回転を検知した場合に当該ドライバーに取り付けられたビットによる締付トルクが規定トルクに到達したと判定するようにしたものである。
【0010】
従って、本発明によるドライバーによれば、識別パターンを検知することにより空転部の回転を検知し、空転部の回転を検知した場合に締付トルクが規定トルクに到達したと判定するので、従来の技術のようにビットに装着された識別部材に設けられた識別パターンのねじれ変形を撮像するための精度の高い撮像装置などを設ける必要がなく、より簡便な装置構成によって、締付トルクが規定トルクに到達したか否かを判定することのできるようになる。
【0011】
即ち、本発明によるドライバーは、固定部と、ビットを着脱可能に構成されるとともに予め設定されたトルクよりも大きいトルクが加わると上記固定部に対して相対的に空転する空転部と、上記空転部に形成された識別パターンとを有するトルクリミッタと、上記トルクリミッタの上記固定部を固定する固定部材を有する筐体と、上記トルクリミッタの上記空転部に形成された上記識別パターンを検知して出力するセンサと、上記センサの出力に基づいて、上記ビットによる締付トルクが上記予め設定されたトルクに到達したと判定する判定部を有する制御装置とを有するようにしたものである。
【0012】
従って、本発明によるドライバーによれば、空転部の形成された識別パターンを検知することにより、締付トルクに到達したか否かを判定することができるので、ビットのねじれ量を検知するような精度の高い撮像装置などは必要なくなる。
【0013】
また、本発明によるドライバーは、上記した本発明によるドライバーにおいて、上記センサは、上記筐体の内部に配置されているようにしたものである。
【0014】
従って、本発明によるドライバーによれば、センサが外乱の影響を受け難くなるため、精度のよい判定を行うことができる。
【0015】
また、本発明によるドライバーは、上記した本発明によるドライバーにおいて、上記センサとして、光を投光する投光部と、上記投光部から投光された上記光の反射光を受光する受光部とを有する光学式センサを用いるようにしたものである。
【0016】
また、本発明によるドライバーは、上記した本発明によるドライバーにおいて、上記識別パターンは、少なくとも第1の色の領域と第2の色の領域とが、上記空転部の周面周りに予め設定された色順に配置されて縦縞模様を形成したものである。
【0017】
また、本発明によるドライバーは、上記した本発明によるドライバーにおいて、上記判定部は、上記光学式センサの出力が第1閾値以下となる第1状態と上記第1閾値よりも大きい第2閾値以上となる第2状態との間で切り替わる変化の回数から、上記ビットによる締付トルクが上記予め設定されたトルクに到達したと判定するようにしたものである。
【0018】
また、本発明によるドライバーは、上記した本発明によるドライバーにおいて、上記識別パターンは、上記第1の色の領域と上記第2の色の領域との間に第3の色の領域を配置して縦縞模様を形成し、上記第3の色は、上記第1の色と上記第2の色との中間色であるようにしたものである。
【0019】
従って、本発明によるドライバーによれば、チャタリング現象の影響による制御装置の誤判定を抑制することができる。
【0020】
また、本発明によるドライバーは、上記した本発明によるドライバーにおいて、上記判定部は、上記光学式センサの出力が上記第1閾値を上回ってから上記第2閾値に達するまでの変化時間、あるいは、上記第2閾値を下回ってから上記第1閾値に達するまでの変化時間が、予め設定された時間より短い場合に、上記ビットによる締付トルクが上記予め設定されたトルクに到達したとは判定しないようにしたものである。
【0021】
従って、本発明によるドライバーによれば、筐体からトルクリミッタを外したことによる制御装置の誤判定や、外乱の影響による制御装置の誤判定を抑制することができる。
【0022】
また、本発明によるドライバーは、上記した本発明によるドライバーにおいて、上記判定部は、上記光学式センサの出力が上記第2閾値よりも大きい第3閾値に到達した場合は、上記ビットによる締付トルクが上記予め設定されたトルクに到達したとは判定しないようにしたものである。
【0023】
従って、本発明によるドライバーによれば、筐体からトルクリミッタを外したことによる制御装置の誤判定や、外乱の影響による制御装置の誤判定を抑制することができる。
【0024】
また、本発明によるドライバーは、上記した本発明によるドライバーにおいて、上記制御装置は、上記判定部による判定結果を送信する送信部を有するようにしたものである。
【0025】
従って、本発明によるドライバーによれば、予め設定されたトルクで締付できたことをドライバーから外部機器に送信することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以上説明したように構成されているので、締付トルクが規定トルクに到達したか否かの判定を行う際に、精度の高い撮像装置などを用いることなく、より簡便な装置構成により判定を行うことができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の一例によるドライバーを模式的に示す斜視構成説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すドライバーを模式的に示す分解斜視構成説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すドライバーのA矢視を模式的に示す説明図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すドライバーのIV-IV線による断面構成を模式的に示す説明図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すドライバーについて、第1筐体に各構成部品を組み付けた状態を模式的に示す斜視構成説明図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すドライバーにおけるトルクリミッタを模式的に示す斜視構成説明図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すドライバーにおけるマイクロコンピュータの本発明の実施に関連する機能的構成および本発明によるドライバーを用いたシステムを示すブロック構成説明図である。
【
図8】
図8は、第1閾値と第2閾値とを設定する手法を模式的に示す説明図である。
【
図9】
図9は、
図6に示すトルクリミッタの空転部の回転を検知する手法を模式的に示す説明図である。
【
図10】
図10は、
図7に示すシステムにおいて、トルク値と色とを登録する処理を模式的に示す説明図である。
【
図11】
図11は、
図1に示すドライバーにおけるトルクリミッタの他の例を模式的に示す斜視構成説明図である。
【
図12】
図12は、
図11に示すトルクリミッタの空転部の回転を検知する手法を模式的に示す説明図である。
【
図13】
図13(a)(b)は、トルクリミッタにおける空転部のチャタリングに起因する誤検知を防止する手法を模式的に示す説明図である。
図13(a)は、
図6に示すトルクリミッタにおけるチャタリングの状態を示す。
図13(b)は、
図11に示すトルクリミッタにおけるチャタリングの状態を示す。
【
図14】
図14(a)(b)(c)は、
図11に示すドライバーにおけるトルクリミッタの空転部の回転の誤検知を防止する手法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるドライバーの実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0029】
(I) 本発明によるドライバーの構成の説明
【0030】
図1には、本発明の実施の形態の一例によるドライバーを模式的に示す斜視構成説明図があらわされている。
【0031】
図2には、
図1に示すドライバーを模式的に示す分解斜視構成説明図があらわされている。
【0032】
図3には、
図1に示すドライバーのA矢視を模式的に示す説明図があらわされている。
【0033】
図4には、
図1に示すドライバーのIV-IV線による断面構成を模式的に示す説明図があらわされている。
【0034】
図5には、
図1に示すドライバーについて、第1筐体に各構成部品を組み付けた状態を模式的に示す斜視構成説明図があらわされている。
【0035】
図6には、
図1に示すドライバーにおけるトルクリミッタを模式的に示す斜視構成説明図があらわされている。
【0036】
本発明によるドライバー10は、使用者が従来のドライバーを使用する際に手指により把持する部位たる把持部と同様な形状を備えた略中空八角柱状体よりなる筐体12内に、後述する各種の構成部材を組み付けて形成されている。
【0037】
ここで、筐体12は、上記した略中空八角柱状体を中心軸心Cに沿って2分割するようにして、それぞれ同一の形状を備えるように形成された略舟形の第1筐体14と第2筐体16とを締結して構成されている。
【0038】
なお、第1筐体14と第2筐体16とは点対称に形成されていて同一の形状を備えるものであるが、説明の便宜上、
図1乃至
図5において、紙面の下方に位置する方を第1筐体14とし、紙面の上方に位置する方を第2筐体16として説明する。また、第1筐体14と第2筐体16とは同一の形状を備えるものであるので、第1筐体14と第2筐体16との構成については、特段の説明を要する場合の他は、第1筐体14についてのみ説明を行うこととする。
【0039】
第1筐体14と第2筐体16とは、第1筐体14と第2筐体16とを締結して筐体12を構成した際に、使用者が手指により把持する把持部12aの一方の端部に位置するトルクリミッタ取付部12bが、把持部12aよりも細径となるように、第1筐体14の一方の端部14aと第2筐体16の一方の端部16aとが先細に形成されている。
【0040】
なお、把持部12aにおけるトルクリミッタ取付部12b側とは反対方向に位置する端部開口部12aaにはカバー部材18が配設され、カバー部材18により端部開口部12aaが遮蔽されている。一方、トルクリミッタ取付部12bにおける把持部12a側とは反対方向に位置する端部開口部12bbには、ビット100を装着するトルクリミッタ20が挿入されて配置される。
【0041】
第1筐体14の舟形形状の底部上面14bには、基板支持板14c、14dが突出形成されており、この基板支持板14c、14d上にメイン基板22が配設される。
【0042】
メイン基板22は、トルクリミッタ取付部12b内に配置可能に寸法設定された幅狭部22aと、把持部12a内に配置可能に寸法設定された幅広部22bとを備えている。
【0043】
ここで、メイン基板22の幅狭部22aの上面22aaには、端部開口部12bbから端部開口部12aaに向けて、光学式センサであるフォトリフレクタ(Photo reflector)24と、白色光を発光するカラーセンサ用LED26と、色を取得するカラーセンサ(Color sensor)28とが順次配設されている。
【0044】
フォトリフレクタ24は、光を投光する投光部(Luminous)24a(
図8などを参照する。)と、投光部24aから投光された光の反射光を受光する受光部(Receive)24b(
図8などを参照する。)とを有して構成されており、トルクリミッタ20に形成された識別パターン200(後述する。)を検知して、その検知結果を電圧値として出力する。
【0045】
カラーセンサ用LED26は、カラーセンサ28による色の検知のための光量を一定量以上に確保して、カラーセンサ28における色の検知条件を統一するための照明装置である。
【0046】
カラーセンサ28は、トルクリミッタ20に形成されたカラーパターン202(後述する。)に施された色を検知して取得し、取得した色をRGB値で出力する。
【0047】
また、メイン基板22の幅広部22bの上面22bbには、Bluetooth(登録商標)アンテナを搭載した制御装置としてマイクロコンピュータ30が配設されている。
【0048】
さらに、メイン基板22の幅広部22bの上方位置には、ドライバー10の電源となるバッテリー32が配置されている。
【0049】
次に、筐体12の把持部12a内におけるトルクリミッタ取付部12bとの隣接部位には、筐体12に対してトルクリミッタ20を固定するための固定部材として、外径が略8角形状の3枚のトルク伝達用板金部品34が固定されている。このトルク伝達用板金部品34の中心部には6角形状の貫通穴34aが穿設されており、この貫通穴34aにトルクリミッタ20の固定部20aに形成された6角柱形状部20aaが挿入される。貫通穴34aの内径形状と6角柱形状部20aaの外径形状とは、貫通穴34a内に6角柱形状部20aaを挿抜自在、かつ、6角柱形状部20aaが貫通穴34a内において中心軸心C周り(締結トルクの伝達方向)に保持されるように、それぞれ寸法設定されている。
【0050】
また、筐体12の把持部12a内におけるトルク伝達用板金部品34とバッテリー32との間には、ネオジム磁石により形成されたトルクリミッタ保持用マグネット36が配設されている。このトルクリミッタ保持用マグネット36は、トルクリミッタ20の6角柱形状部20aaが貫通穴34a内に挿入された際に、6角柱形状部20aaの端面20aaaがトルクリミッタ保持用マグネット36に吸着されて保持される位置関係において、筐体12の把持部12a内に固定されている。トルクリミッタ20の6角柱形状部20aaが貫通穴34a内に挿入されたときに、6角柱形状部20aaの端面20aaaがトルクリミッタ保持用マグネット36に吸着されて保持されることにより、使用者がドライバー10を用いて作業する際において、貫通穴34aからトルクリミッタ20が抜け出てしまうことが防止されるとともに、筐体12に対してトルクリミッタ20を容易に交換可能に構成されている。
【0051】
次に、カバー部材18には、バッテリー32への充電用ならびに他の機器と接続する際の通信用の充電/通信ポート(図示せず。)を配置する第1貫通孔18aと、使用者がドライバー10における電源投入(オン)/電源遮断(オフ)の操作を行うための電源スイッチ38を配置する第2貫通孔18bが穿設されている。
【0052】
なお、メイン基板22に対して、フォトリフレクタ24、カラーセンサ用LED26、カラーセンサ28、マイクロコンピュータ30、バッテリー32、充電/通信ポートならびに電源スイッチ38は電気的に接続されているものであるが、こうした各種の電気的な接続関係については従来より公知の技術を適宜に適用すればよいため、その詳細な説明は省略する。
【0053】
次に、トルクリミッタ20は、6角柱形状部20aaを備えた固定部20aと、固定部20aにおける6角柱形状部20aaを形成した端部とは反対側の端部に連接されるとともに、予め設定された締付トルクがかかると空転する空転部20bとを有して構成されている。
【0054】
空転部20bの端部には、ビット100を装着するためのビット装着穴20bbが形成されている。
【0055】
また、空転部20bの周面には、空転部20bの空転による回転を検知するための識別パターン200と、トルクリミッタ20において予め設定された締付トルクに対応する色を施されたカラーパターン202とが配設されている。
【0056】
ここで、トルクリミッタ20は、空転部20bの周面に識別パターン200とカラーパターン202とを配設している点を除き、従来のトルクリミッタと異なるものではない。
【0057】
従って、以下においては、トルクリミッタ20に関する事項については、空転部20bの周面に配設された識別パターン200とカラーパターン202とについてのみ詳細に説明することとし、その他の説明は省略する。
【0058】
識別パターン200は、中心軸心Cに沿って延長する白色(第1の色)領域200aと黒色(第2の色)領域200bとが交互に配置された白黒2色の縦縞模様が形成されるように、空転部20bの周面に形成されている。換言すれば、識別パターン200は、空転部20bの周面周りに、白色(第1の色)領域200aと黒色(第2の色)領域200bとが交互に配置された縦縞模様を形成している。
【0059】
なお、白色領域200aは白色に塗り潰されており、一方、黒色領域200bは黒色に塗り潰されている。
【0060】
なお、白色領域200aと黒色領域200bとは、中心軸心Cに沿う延長方向における白色領域200aの長さLa-1と黒色領域200bの長さLb-1とが同一、かつ、周面に沿う幅方向における白色領域200aの長さLa-2と黒色領域200bの長さLb-2とが同一に寸法設定されている。
【0061】
また、カラーパターン202は、トルクリミッタ20において予め設定された締付トルク毎に予め決められた色彩により形成されている。
【0062】
ここで、識別パターン200は、空転部20bの周面において、トルクリミッタ20の6角柱形状部20aaが貫通穴34a内に挿入され、6角柱形状部20aaの端面20aaaがトルクリミッタ保持用マグネット36に吸着されることにより、トルクリミッタ20が筐体12内に保持されたときに、フォトリフレクタ24により識別パターン200を検知することができる位置に形成されている。
【0063】
同様に、カラーパターン202は、空転部20bの周面において、トルクリミッタ20の6角柱形状部20aaが貫通穴34a内に挿入され、6角柱形状部20aaの端面20aaaがトルクリミッタ保持用マグネット36に吸着されることにより、トルクリミッタ20が筐体12内に保持されたときに、カラーセンサ用LED26から出射された光を反射して、その反射光をカラーセンサ28が受光できる位置に形成されている。
【0064】
なお、符号12cは、第1筐体14と第2筐体16とをネジ結合により締結する際に、ネジのネジ頭が配置されるザグリ部であり、また、符号12dは、ネジのネジ軸がネジ込まれるネジ穴である。
【0065】
(II) 本発明によるドライバーにおけるマイクロコンピュータの機能的構成および本発明によるドライバーを用いたシステムの説明
【0066】
図7には、
図1に示すドライバーにおけるマイクロコンピュータの本発明の実施に関連する機能的構成および本発明によるドライバーを用いたシステムを示すブロック構成説明図があらわされている。
【0067】
ドライバー10においては、トルクリミッタ20の空転部20bが空転により回転したか否かの判定は、マイクロコンピュータ30の制御に基づいて、フォトリフレクタ24により識別パターン200を検知することにより行う。
【0068】
マイクロコンピュータ30は、本発明の実施に関連する機能的構成として、閾値記憶部30aと、変化監視部30bと、判定部30cと、送信部30dとを有して構成されている。
【0069】
より詳細には、閾値記憶部30aは、後述するようにして取得された第1閾値と第2閾値とをそれぞれ記憶する。
【0070】
変化監視部30bは、フォトリフレクタ24から出力された電圧値が第1閾値以下の値となる第1状態から第2閾値以上の値となる第2状態へと変動(LOWからHIGHへの変動)する切り替わりの変化と、フォトリフレクタ24から出力された電圧値が第2閾値以上の値となる第2状態から第1閾値以下の値となる第1状態へと変動(HIGHからLOWへの変動)する切り替わりの変化とを監視する。
【0071】
判定部30cは、変化監視部30bが監視した第1状態から第2状態へと変動する切り替わりの変化の回数や、変化監視部30bが監視した第2状態から第1状態へと変動する切り替わりの変化の回数が、予め設定された変化の回数(1回以上の整数回であり、使用者が任意に設定してよい。)以上となった場合に、トルクリミッタ20の締結トルクが規定トルクに到達したと判定する。
【0072】
なお、切り替わりの変化の回数の計数については、第1状態から第2状態へと変動する変化を1回とし、また、第2状態から第1状態へと変動する変化を1回とするものである。
【0073】
従って、判定部30cは、予め設定された変化の回数を1回とした場合には、第1状態から第2状態へと変動する切り替わりの変化か、あるいは、第2状態から第1状態へと変動する切り替わりの変化かのいずれかがあった場合には、トルクリミッタ20の締結トルクが規定トルクに到達したと判定する。
【0074】
送信部30dは、Bluetooth(登録商標)アンテナを利用して、判定部30cによる判定結果などを各種の機器(例えば、後述するパーソナルコンピュータ302である。)へ送信する。
【0075】
符号300は、ドライバー10を工場などの各種製品の組み立て作業において用いる場合のシステムの一例を示している。
【0076】
このシステム300は、ドライバー10と、情報端末としてのパーソナルコンピュータ(PC)302と接続して構成されている。なお、システム300においては、パーソナルコンピュータ302が親機(central)となり、ドライバー10が子機(peripheral)となる。
【0077】
パーソナルコンピュータ302とドライバー10との間の接続については、従来より公知のBluetooth(登録商標)を使用する。そのため、通信環境の構築は、従来より公知の一般的なBluetooth(登録商標)の接続手順や通信手順によって行うことになる。
【0078】
(III) 本発明によるドライバーおよび本発明によるドライバーを用いたシステムの動作ならびに作用の説明
【0079】
(III-1) 本発明によるドライバーにおけるトルクリミッタの空転部の回転を検知するための閾値の設定についての説明
【0080】
図8には、第1閾値と第2閾値とを設定する手法を模式的に示す説明図があらわされている。
【0081】
フォトリフレクタ24により識別パターン200を検知するに際しては、まず、フォトリフレクタ24が識別パターン200の白色領域200aと黒色領域200bとを検知したか否かを判定する際に用いる閾値の設定を行う。
【0082】
具体的には、
図8に示すように、識別パターン200を形成したトルクリミッタ20に代えて、識別パターン200が形成された領域を白色領域200aと同一の色、即ち、白色に塗り潰した白色塗り潰し領域210aを備えた白色トルクリミッタ210と、識別パターン200が形成された領域を黒色領域200bと同一の色、即ち、黒色に塗り潰した黒色塗り潰し領域212aを備えた黒色トルクリミッタ212とを用意する。
【0083】
なお、トルクリミッタ20と白色トルクリミッタ210と黒色トルクリミッタ212とは、識別パターン200と白色塗り潰し領域210aと黒色塗り潰し領域212aとがそれぞれ異なる点を除き、その他の構成は互いに同一である。
【0084】
ここで、ドライバー10の電源スイッチ38をオンにして電源を投入し、筐体12に白色トルクリミッタ210を装着すると、フォトリフレクタ24の投光部24aから投光された光が白色塗り潰し領域210aに反射され、その反射光が受光部24bに受光されることになるが、その際の電圧値(Voltage)を取得する。その取得した電圧値に、筐体12へトルクリミッタ20を装着する際の位置ずれなどによる影響を排除するために予め設定された係数(Coefficient)を乗算して、その乗算結果を下(LOW)側の閾値である第1閾値として取得して設定する。
【0085】
なお、第1閾値を求める際の係数は、上記したように筐体12へトルクリミッタ20を装着する際の位置ずれなどによる影響を排除するため、1以上の値とすることが好ましい。
【0086】
次に、筐体12から白色トルクリミッタ210を取り外して、筐体12に黒色トルクリミッタ212を装着すると、フォトリフレクタ24の投光部24aから投光された光が黒色塗り潰し領域212aに反射され、その反射光が受光部24bに受光されることになるが、その際の電圧値を取得する。その取得した電圧値に、筐体12へトルクリミッタ20を装着する際の位置ずれなどによる影響を排除するために予め設定された係数を乗算して、その乗算結果を上(HIGH)側の閾値である第2閾値として取得して設定する。
【0087】
なお、第2閾値を求める際の係数は、上記したように筐体12へトルクリミッタ20を装着する際の位置ずれなどによる影響を排除するため、1以下の値とすることが好ましい。
【0088】
なお、上記した第1閾値と第2閾値とを取得するための演算処理はマイクロコンピュータ30により実行され、取得した第1閾値と第2閾値とはマイクロコンピュータ30の閾値記憶部30aに記憶されて、ドライバー10における第1閾値と第2閾値として設定される。
【0089】
システム300において第1閾値と第2閾値とを登録するには、白色トルクリミッタ210と黒色トルクリミッタ212とを準備し、白色トルクリミッタ210と黒色トルクリミッタ212とについて順番に登録作業を行うものであり、その手法について説明する。
【0090】
まず、使用者は、白色トルクリミッタ210を筐体12に装着後に、接続/データ処理用ソフトウェアの処理によりパーソナルコンピュータ302に表示されたトリガーボタンを押下することにより、接続/データ処理用ソフトウェアの処理に対して、筐体12への白色トルクリミッタ210の装着を通知する。
【0091】
システム300においては、白色トルクリミッタ210の装着により取得された電圧値を、第1閾値としてパーソナルコンピュータ302およびドライバー10に登録する。
【0092】
次に、使用者は、黒色トルクリミッタ212を筐体12に装着後に、接続/データ処理用ソフトウェアの処理によりパーソナルコンピュータ302に表示されたトリガーボタンを押下することにより、接続/データ処理用ソフトウェアの処理に対して、筐体12への黒色トルクリミッタ212の装着を通知する。
【0093】
システム300においては、黒色トルクリミッタ212の装着により取得された電圧値を、第2閾値としてパーソナルコンピュータ302およびドライバー10に登録する。
【0094】
(III-2) 空転部の回転を検知する処理ついての説明
【0095】
図9には、
図6に示すトルクリミッタの空転部の回転を検知する手法を模式的に示す説明図があらわされている。
【0096】
ドライバー10においては、トルクリミッタ20と、トルクリミッタ20に形成された識別パターン200と、フォトリフレクタ24とを用いて、以下のようにしてトルクリミッタ20の空転部20bの空転による回転を検知する。
【0097】
即ち、トルクリミッタ20にビット100を装着して、当該ビット100によりネジを回転するなどした場合に、トルクリミッタ20に予め設定された締付トルク、即ち、規定トルクを超過すると、トルクリミッタ20の空転部20bが中心軸心C周りに空転して、ビット100へのトルクの伝達が遮断される。
【0098】
トルクリミッタ20の空転部20bが中心軸心C周りに空転することにより回転すると、空転部20bに形成された識別パターン200も中心軸心C周りに回転する。これにより、フォトリフレクタ24により検知される識別パターン200の領域が、白色領域200aと黒色領域200bとに交互に切り替わり、フォトリフレクタ24から出力される電圧値が変動する。
【0099】
ここで、フォトリフレクタ24が識別パターン200における白色領域200aを検知した場合には、フォトリフレクタ24が白色トルクリミッタ210の白色塗り潰し領域210aを検知した場合と同様に、フォトリフレクタ24から出力される電圧値は第1閾値以下の値を示す。
【0100】
一方、フォトリフレクタ24が識別パターン200における黒色領域200bを検知した場合には、フォトリフレクタ24が黒色トルクリミッタ212の黒色塗り潰し領域212aを検知した場合と同様に、フォトリフレクタ24から出力される電圧値は第2閾値以上の値を示す。
【0101】
マイクロコンピュータ30の変化監視部30bは、フォトリフレクタ24の電圧値が閾値記憶部30aに記憶された第1閾値以下の値から第2閾値以上の値へと変動(LOWからHIGHへの変動)する変化と、フォトリフレクタ24の電圧値が閾値記憶部30aに記憶された第2閾値以上の値から第1閾値以下の値へと変動(HIGHからLOWへの変動)する変化とを監視する。
【0102】
そして、マイクロコンピュータ30の判定部30cは、変化監視部30bが監視した変化の回数が予め設定された変化の回数(1回以上の整数回であり、使用者が任意に設定してよい。)以上となった場合に、トルクリミッタ20の回転を検知して、ビット100による締付トルクがトルクリミッタ20に予め設定されたトルクたる規定トルクに到達したと判定する。
【0103】
この判定部30cによる判定結果は、パーソナルコンピュータ302へ送信される。
【0104】
(III-3) トルク値および色の登録の処理についての説明
【0105】
図10には、
図7に示すシステムにおいて、トルク値と色とを登録する処理を模式的に示す説明図があらわされている。
【0106】
上記したように、トルクリミッタ20には、予め設定された締付トルクに対応する色を施されたカラーパターン202が形成されている。このカラーパターン202に対して、カラーセンサ用LED26から白色光が照射され、その反射光をカラーセンサ28で受光することにより、カラーパターン202に付された色が解析されてRGB値として出力される。
【0107】
システム300においては、判定部30cにおけるトルク判定の事前準備として、ドライバー10に対して、各トルクリミッタ20毎にトルク値と色(RGB値)とを登録することができるものであり、その手法について
図10を参照しながら説明する。
【0108】
まず、従来より公知のトルクチェッカー304をパーソナルコンピュータ302に接続するとともに、ドライバー10の筐体12に登録対象のトルクリミッタ20を装着し、当該トルクリミッタ20に対して予め設定された締付トルク、即ち、規定トルクで締結可能であるか否かについて、トルクチェッカー304を使用してチェックし、そのチェック結果を用いて接続/データ処理用ソフトウェアにてトルクの判定を行う。
【0109】
この判定の結果、トルク値が規定トルクであった場合には、パーソナルコンピュータ302からトルク値の情報と登録コマンドをドライバー10に送信することで、パーソナルコンピュータ302は、各トルクリミッタ20毎にトルク値と色(RGB値)とをドライバー10に登録させる。これにより、トルクリミッタ20のトルクが規定トルクであることを確認した上で、ドライバー10に対して、各トルクリミッタ20毎にトルク値と色(RGB値)とを登録することができるようになる。
【0110】
なお、
図10は、規定トルク値が0.6Nmであり、かつ、カラーパターン202のRGB値が「R=255」、「G=125」、「B=5」であるトルクリミッタ20を登録する場合を例示している。
【0111】
(III-4) トルク切り替えの処理についての説明
【0112】
システム300においては、パーソナルコンピュータ302の接続/データ処理用ソフトウェアの制御によりトルク切り替えの処理が管理されるものであり、その手法について説明する。
【0113】
即ち、システム300においては、パーソナルコンピュータ302の接続/データ処理用ソフトウェアにより、パーソナルコンピュータ302側からドライバー10に対して、筐体12に現在装着されているトルクリミッタ20のトルクについて問い合わせをすることができる。
【0114】
パーソナルコンピュータ302側からドライバー10に対して問い合わせがあった場合には、ドライバー10にトルクの登録を行った情報に基づいて、現在装着されているトルクリミッタ20のトルクを判別する。
【0115】
その際に、登録されたRGB値に予め設定された任意の最大係数(maxCoef)と最小係数(minCoef)とを掛け合わせ、RGB値が最小から最大の範囲内にあるか否かを登録したトルク全てに対して比較した後に、該当したトルク値をパーソナルコンピュータ302へ返信する。
【0116】
これにより、パーソナルコンピュータ302は、目的のトルクのトルクリミッタ20が装着されるまで、トルクの切り替え指示を行うことが可能となる。このため、使用者は、予め指示されたトルクにより締結作業を行うことができる。
【0117】
(III-5) ドライバーを用いて締結する際の処理の説明
【0118】
システム300においては、パーソナルコンピュータ302の接続/データ処理用ソフトウェアの制御により、ドライバー10による締結作業の処理が管理されるものであり、その手法について説明する。
【0119】
システム300においては、ドライバー10がパーソナルコンピュータ302の接続/データ処理用ソフトウェアから締結スタート(締結Start)の指示を受けることで、ドライバー10は締結待機状態に移行し、マイクロコンピュータ30の判定部30cが、トルクリミッタ20の締結トルクは規定トルクに到達したと判定した場合には、マイクロコンピュータ30の送信部30dからパーソナルコンピュータ302の接続/データ処理用ソフトウェアに対して締結OKの信号を出力する。
【0120】
締結OKの信号を受信したパーソナルコンピュータ302の接続/データ処理用ソフトウェアは、使用者に締結OKを通知するとともに締結回数を管理し、予め設定された締結作業が完了していなければ、引き続き締結作業を指示する。
【0121】
一方、予め設定された締結作業が完了した場合には、締結完了を使用者に通知するとともに、ドライバー10側にも通知することにより、ドライバー10を省電力状態へ移行させる。
【0122】
(IV) トルクリミッタの他の例についての説明
【0123】
(IV-1) トルクリミッタの他の例の構成の説明
【0124】
図11には、
図1に示すドライバーにおけるトルクリミッタの他の例を模式的に示す斜視構成説明図があらわされている。
【0125】
トルクリミッタ400は、空転部20bに形成された識別パターン402の構成が識別パターン200とは異なる点においてのみトルクリミッタ20と異なっており、その他の構成はトルクリミッタ20と同一である。
【0126】
従って、以下においては、
図1乃至
図10を参照しながら説明した構成ならびに作用と同一あるいは相当する構成ならびに作用については、
図1乃至
図10において用いた符号と同一の符号をそれぞれ付して示すことにより、その詳細な構成ならびに作用の説明は適宜に省略する。
【0127】
識別パターン402は、中心軸心Cに沿って延長する白色領域200aと、黒色領域200bと、白色領域200aと黒色領域200bとの間に配置されるとともに白色と黒色との中間色の灰色に形成された灰色領域402aとにより形成されている。換言すれば、識別パターン402においては、白色領域200aと黒色領域200bとは、それぞれ灰色領域402aにより挟まれている。
【0128】
具体的には、識別パターン400は、「・・・→白色領域200a→灰色領域402a→黒色領域200b→灰色領域402a→白色領域200a→灰色領域402a→黒色領域200b→灰色領域402a→白色領域200a・・・」の順番で配置されて、中心軸心Cに沿って白灰黒3色の縦縞模様が形成されるように、空転部20bの周面に形成されている。
【0129】
なお、灰色領域402aは、中心軸心Cに沿う延長方向におけるLc-1が、中心軸心Cに沿う延長方向における白色領域200aの長さLa-1および黒色領域200bの長さLb-1と同一、かつ、周面に沿う幅方向における長さLc-2が、周面に沿う幅方向における白色領域200aの長さLa-2および黒色領域200bの長さLb-2と同一に寸法設定されている。
【0130】
(IV-2) 空転部の回転を検知する処理ついての説明
【0131】
図12には、
図11に示すトルクリミッタの空転部の回転を検知する手法を模式的に示す説明図があらわされている。
【0132】
ドライバー10においては、トルクリミッタ400と、トルクリミッタ400に形成された識別パターン402と、フォトリフレクタ24とを用いて、以下のようにしてトルクリミッタ400の空転部20bの回転を検知する。
【0133】
即ち、トルクリミッタ400にビット100を装着して、当該ビット100によりネジを回転するなどした場合に、トルクリミッタ400に予め設定された締付トルク、即ち、規定トルクを超過すると、トルクリミッタ400の空転部20bが中心軸心C周りに空転して、ビット100へのトルクの伝達が遮断される。
【0134】
トルクリミッタ400の空転部20bが中心軸心C周りに空転することにより回転すると、空転部20bに形成された識別パターン402も中心軸心C周りに回転する。これにより、フォトリフレクタ24により検知される識別パターン200の領域が、白色領域200aから灰色領域402aへ、灰色領域402aから黒色領域200bへ、黒色領域200bから灰色領域202aへ、灰色領域202aから白色領域200aへ、即ち、「・・・→白色領域200a→灰色領域402a→黒色領域200b→灰色領域402a→白色領域200a→灰色領域402a→黒色領域200b→灰色領域402a→白色領域200a・・・」の順番で切り替わり、フォトリフレクタ24から出力される電圧値が変動する。
【0135】
ここで、フォトリフレクタ24が識別パターン402における白色領域200aを検知した場合には、フォトリフレクタ24が白色トルクリミッタ210の白色塗り潰し領域210aを検知した場合と同様に、フォトリフレクタ24から出力される電圧値は第1閾値以下の値を示す。
【0136】
また、フォトリフレクタ24が識別パターン402における黒色領域200bを検知した場合には、フォトリフレクタ24が黒色トルクリミッタ212の黒色塗り潰し領域212aを検知した場合と同様に、フォトリフレクタ24から出力される電圧値は第2閾値以上の値を示す。
【0137】
一方、フォトリフレクタ24が識別パターン402における灰色(第3の色)領域402aを検知した場合には、灰色領域402aが白色と黒色との中間色の灰色に彩色されているため、フォトリフレクタ24から出力される電圧値は第1閾値と第2閾値との間の値を示す。
【0138】
マイクロコンピュータ30の変化監視部30bは、フォトリフレクタ24の電圧値が閾値記憶部30aに記憶された第1閾値以下の値から第2閾値以上の値へと変動(LOWからHIGHへの変動)する変化と、フォトリフレクタ24の電圧値が閾値記憶部30aに記憶された第2閾値以上の値から第1閾値以下の値へと変動(HIGHからLOWへの変動)する変化とを監視する。
【0139】
そして、マイクロコンピュータ30の判定部30cは、変化監視部30bが監視した変化の回数が予め設定された変化の回数(1回以上の整数回であり、使用者が任意に設定してよい。)以上となった場合に、トルクリミッタ400の回転を検知して、ビット100による締付トルクがトルクリミッタ400に予め設定されたトルクたる規定トルクに到達したと判定する。
【0140】
この判定部30cによる判定結果は、各種の機器(例えば、後述するパーソナルコンピュータ302である。)へ送信される。
【0141】
(IV-3) トルクリミッタにおける空転部のチャタリングに起因する誤検知を防止についての説明
【0142】
図13(a)(b)には、トルクリミッタにおける空転部のチャタリングに起因する誤検知を防止する手法を模式的に示す説明図があらわされている。
図13(a)は、
図6に示すトルクリミッタにおけるチャタリングの状態を示す。
図13(b)は、
図11に示すトルクリミッタにおけるチャタリングの状態を示す。
【0143】
トルクリミッタ20、400においては、中心軸心C周りにおいて空転部20bが時計回りの回転と反時計回りの回転とを繰り返すチャタリング(Chattering)現象を生ずることがある。
【0144】
上記したトルクリミッタ20では、識別パターン200における白色領域200aと黒色領域200bとの境界にフォトリフレクタ24が位置する状況でチャタリング現象が生じると、トルクリミッタ20の空転部20bが空転していないにも関わらず、フォトリフレクタ24から出力される電圧値が第1閾値以下の値と第2閾値以上の値とを繰り返し示すことがある。
【0145】
具体的には、識別パターン200を形成したトルクリミッタ20においては、
図13(a)に示すように、識別パターン200における白色領域200aと黒色領域200bとの境界にフォトリフレクタ24が位置する状況でチャタリングが生じると、回転部20bが空転していないにも関わらず、フォトリフレクタ24から出力される電圧値が第1閾値以下の値と第2閾値以上の値との間で変動する変化を示し、判定部30cにおける誤検知ならびに誤判定を引き起こす恐れがある。
【0146】
しかしながら、識別パターン402を形成したトルクリミッタ400においては、識別パターン402に形成された色の領域が白黒の2色ではなく、白色領域200aと灰色領域402aと黒色領域200bとによる白灰黒の3色で構成されており、白色領域200aと黒色領域200bとの間に必ず灰色領域402aが存在することになる。
【0147】
このため、
図13(b)に示すように、識別パターン402における白色領域200aと灰色領域402aとの境界や黒色領域200bと灰色領域402aとの境界にフォトリフレクタ24が位置する状況でチャタリング現象が生じても、フォトリフレクタ24から出力される電圧値が第1閾値以下の値と第2閾値以上の値との間で変動することが防止され、判定部30cにおける誤検知ならびに誤判定を防止することができる。
【0148】
(IV-4) 外乱を排除する処理ついての説明
【0149】
図14(a)(b)(c)には、
図11に示すドライバーにおけるトルクリミッタの空転部の回転の誤検知を防止する手法を模式的に示す説明図があらわされている。
【0150】
ドライバー10において、筐体12からトルクリミッタ400を取り外した場合(
図14(a)を参照する。この場合には、フォトリフレクタ24においては、投光部24aから投光された光の反射光を、受光部24bにより受光することができない。)、あるいは、周囲にノイズがあるなどのような各種の外乱があった場合には、フォトリフレクタ24が出力する電圧値が急激に変化することがある。
【0151】
このため、トルクリミッタ400を装着したドライバー10においては、
図14(b)に示すように、フォトリフレクタ24が出力する電圧値が第1閾値と第2閾値との間で変化する際の変化時間(Time)、即ち、フォトリフレクタ24の出力が第1閾値を上回ってから第2閾値に達するまでの変化時間、あるいは、フォトリフレクタ24の出力が第2閾値を下回ってから第1閾値に達するまでの変化時間が、予め設定された時間(Th)(例えば、100msecである。)より短い場合には、誤検知(False)として、マイクロコンピュータ30は変化監視部30bが監視する変化の回数から除外し、判定部30cが空転部20bの空転の判定しないようにすることにより、判定部30cにおける外乱などによる誤検知を防止している。
【0152】
また、トルクリミッタ400を装着したドライバー10においては、
図14(c)に示すように、フォトリフレクタ24が出力する電圧値が、第2閾値よりも高い第3閾値(Ex HIGH)以上になった場合についても、マイクロコンピュータ30は変化監視部30が監視する変化の回数から除外し、判定部30cが空転部20bの空転の判定をしないようにすることにより、判定部30cにおける外乱などによる誤検知を防止している。
【0153】
なお、上記では、トルクリミッタ400を装着したドライバー10において、トルクリミッタの空転部の回転の誤検知を防止する手法を説明したが、トルクリミッタ20を装着したドライバー10においても同様の処理を実行できる。
【0154】
(V) 本発明によるドライバーの作用効果の説明
【0155】
以上において説明したように、本発明によるドライバー10によれば、筐体12に取り付けられるトルクリミッタ20、400の空転部20bに識別パターン200、402を設け、この識別パターン200、402から空転部20bの空転による回転の有無を検知することによって、締付トルクが所定のトルクに到達したか否かを判定するようにしたので、従来の技術のようにビットのねじれ変形におけるねじれ量を撮像するための精度の高い撮像装置などを設ける必要がなく、より簡便な装置構成によって予め設定された締付トルクに到達したか否かを判定することのできるようになる。
(VI) その他の実施の形態および変形例の説明
【0156】
上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。
【0157】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(VI-1)乃至(VI-7)に示すように変形するようにしてもよい。
【0158】
(VI-1) 上記した実施の形態においては、識別パターン200、402を検知するためのセンサとして光学式センサであるフォトリフレクタ24を用いたが、識別パターン200、402を検知するためのセンサは光学式センサに限られるものではないことは勿論である。例えば、識別パターン200、402を形成する白色領域200a、黒色領域200b、灰色領域402aに相当する領域毎に特定の凹凸などを形成しておき、タッチセンサーによりその凹凸を読み取るなどして、各領域毎の検知を行うようにしてもよい。
【0159】
(VI-2) 上記した実施の形態においては、ドライバー10にマイクロコンピュータ30を内蔵するようにした、これに限られるものではないことは勿論であり、マイクロコンピュータ30はドライバー10とは別体に構成されていてもよい。
【0160】
(VI-3) 上記した実施の形態においては、詳細な説明は省略したが、ドライバー10に液晶ディスプレイなどの表示領域を設けるようにして、判定部30cによる判定結果を表示するようにしてもよい。
【0161】
(VI-4) 上記した実施の形態においては、識別パターン200、402について、第1の色を白色とし、第2の色を黒色とし、第3の色を灰色とした場合について説明したが、第1の色、第2の色ならびに黒色と第3の色は、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、センサにより検知可能な適宜の色を第1の色、第2色あるいは第3の色として設定してよい。なお、第3の色は、第1の色と第2の色との中間色とすることが好ましい。
【0162】
(VI-5) 上記した実施の形態においては、3枚のトルク伝達用板金部品34を用いた場合について説明したが、トルク伝達用板金部品34の枚数は3枚に限られるものではないことは勿論であり、設計条件や使用条件などに応じて適宜の枚数を選択してよい。
【0163】
(VI-6) 上記した実施の形態においては、フォトリフレクタ24を筐体12の内部に配設した場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論であり、フォトリフレクタ24を筐体12の外部に配置してもよい。その際には、トルクリミッタ20、400の空転部20bにおける識別パターン200、402の配置についても、フォトリフレクタ24の配置に合わせて適宜に変更すればよい。
【0164】
(VI-7) 上記した実施の形態ならびに上記した(VI-1)乃至(VI-6)に示す各種の他の実施の形態や変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、各種の製品の組み立て作業を行う工場などにおいて、製品の組み立ての際に使用するネジ、ボルトあるいはナットなどの各種の締結部材を、予め設定された締付トルクで締め付けて締結する工程に利用することができる。
【符号の説明】
【0166】
10 ドライバー
12 筐体
12a 把持部
12aa 端部開口部
12b トルクリミッタ取付部
12bb 端部開口部
12c ザグリ部
12d ネジ穴
14 第1筐体
14a 端部
14b 底部上面
14c、14d 基板支持板
16 第2筐体
16a 端部
18 カバー部材
18a 第1貫通孔
18b 第2貫通孔
20 トルクリミッタ
20a 固定部
20aa 6角柱形状部
20aaa 端面
20b 空転部
20bb ビット装着穴
22 メイン基板
22a 幅狭部
22aa 上面
22b 幅広部
22bb 上面
24 フォトリフレクタフォトリフレクタ(センサ、光学式センサ)
24a 投光部
24b 受光部
26 カラーセンサ用LED
28 カラーセンサ
30 マイクロコンピュータ(制御装置、判定部、送信部)
30a 閾値記憶部
30b 変化監視部
30c 判定部
30d 送信部
32 バッテリー
34 トルク伝達用板金部品(固定部材)
34a 貫通穴
36 トルクリミッタ保持用マグネット
38 電源スイッチ
100 ビット
200 識別パターン
200a 白色(第1の色)領域
200b 黒色(第2の色)領域
202 カラーパターン
300 システム
302 パーソナルコンピュータ
400 トルクリミッタ
402 識別パターン
402a 灰色(第3の色)領域
C 中心軸心