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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167087
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/30 20060101AFI20231116BHJP
   B23B 31/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B23B31/30 Z
B23B31/02 601Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077973
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】591033755
【氏名又は名称】エヌティーツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 達也
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032BB11
3C032KK00
(57)【要約】
【課題】本体部内周面の外側に形成されている加圧室に連通する圧力調整室内に充填されている流体の圧力による本体部の歪みを防止する。
【解決手段】本体部材20に固着されるスリーブ40は、中心線Pと一致する中心線Qを中心線とするスリーブ内側空間43を有している。本体部材内周面部分21aとスリーブ外周面部分42b、42dとの間に、加圧室25a、25bが形成される。スリーブ外周面部分42b、42dとスリーブ内周面部分41aとの間に、弾性変形可能な把持部45a、45bが形成される。加圧室25aに連通し、中心線Pと交差する中心線Rを中心線とする圧力調整室33aが形成されている。圧力調整ボルト50を移動させることによって、圧力調整室33aの容積が変化するとともに、加圧室25a、25b内の流体の圧力が変化する。スリーブ内側空間43を挟んで圧力調整室33aと反対側に、加圧室25aに連通し、中心線Rを中心線とする補助室33bが形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の中心線の延在方向に沿って延在する筒状の本体部を備え、
前記本体部は、前記第1の中心線を中心線とする本体部内周面と、前記本体部内周面により形成され、先端側から工具が挿入可能な本体部内側空間と、前記本体部内周面より径方向外側に、周方向全体および前記第1の中心線の延在方向に沿って延在するとともに、流体が充填される、少なくとも1つの加圧室と、前記少なくとも1つの加圧室と前記本体部内周面との間に形成され、周方向全体および前記第1の中心線の延在方向に沿って延在するとともに、径方向に弾性変形可能な少なくとも1つの把持部と、を有し、
前記少なくとも1つの加圧室内に充填されている流体の圧力を高めることによって、前記少なくとも1つの把持部が径方向内側に弾性変形し、前記本体部内側空間内に挿入されている工具が把持されるように構成されている工具ホルダであって、
前記本体部は、さらに、圧力調整室と、圧力調整部材と、補助室と、を有し、
前記圧力調整室は、前記少なくとも1つの加圧室に連通し、前記第1の中心線と交差する第2の中心線を中心線とするとともに、当該第2の中心線の延在方向に沿って延在するように形成され、
前記圧力調整部材は、前記圧力調整室の容積が変化するように前記第2の中心線の延在方向に沿って移動可能に配置され、
前記補助室は、前記本体部内側空間を挟んで前記圧力調整室と反対側に配置され、前記少なくとも1つの加圧室に連通し、前記第2の中心線を中心線とするとともに、前記第2の中心線の延在方向に沿って延在するように形成されていることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の工具ホルダであって、
前記第2の中心線は、前記第1の中心線と直角に交差するように設定されていることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項3】
請求項1に記載の工具ホルダであって、
前記圧力調整室は、前記加圧室に開口している開口部を有し、
前記補助室は、前記加圧室の、前記本体部内側空間を挟んで前記圧力調整室と反対側に開口している開口部を有していることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項4】
請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の工具ホルダであって、
前記補助室の内壁面の面積は、前記圧力調整部材が、前記圧力調整室の容積が最小となる位置に移動した状態における、前記圧力調整室の内壁面の面積と等しくなるように設定されていることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項5】
請求項4に記載の工具ホルダであって、
前記補助室の内径は、前記圧力調整室の内径と等しくなるように設定されていることを特徴とする工具ホルダ。
【請求項6】
請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の工具ホルダであって、
前記本体部は、本体部材と、第3の中心線の延在方向に沿って延在するスリーブと、を有し、
前記本体部材は、前記第1の中心線を中心線とする本体部材内周面と、前記本体部材内周面により形成され、先端側が開口している本体部材内側空間と、を有し、
前記スリーブは、前記第3の中心線を中心線とするスリーブ内周面と、前記第3の中心線を中心線とするスリーブ外周面と、を有し、
前記スリーブ外周面は、径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分を有し、
前記スリーブは、前記本体部材内側空間内に、前記第3の中心線が前記第1の中心線と一致するように挿入された状態で、前記本体部材に固着され、
前記スリーブ内周面により、前記本体部内側空間が形成され、
前記径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分と前記本体部材内周面との間に前記少なくとも1つの加圧室が形成され、
前記径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分と前記スリーブ内周面との間に前記少なくとも1つの把持部が形成され、
前記本体部材に、前記圧力調整室と前記補助室が形成されていることを特徴とする工具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を保持する工具ホルダに関し、特に、流体の圧力を利用して工具を保持する工具ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
工具を保持する工具ホルダとして、流体の圧力を利用した工具ホルダが用いられている。流体の圧力を利用した工具ホルダは、例えば、特許文献1(特開平10-29106号公報)に開示されている。
特許文献1に開示されている工具ホルダは、本体部材とスリーブにより構成される本体部を有している。本体部材は、本体部材内周面と、本体部材内周面により形成される本体部材内側空間を有している。スリーブは、スリーブ内周面と、スリーブ外周面と、スリーブ内周面により形成されるスリーブ内側空間を有している。スリーブ内側空間により、工具が挿入される本体部内側空間が形成される。スリーブ外周面は、径方向内側に窪んでいる、複数のスリーブ外周面部分を有している。スリーブは、本体部材内側空間内に挿入された状態で、本体部材に固着される。これにより、スリーブ外周面部分と本体部材内周面との間に、環状の加圧空間が形成される。また、スリーブ外周面部分とスリーブ内周面との間に、径方向に弾性変形可能な、薄肉の、環状の把持部が形成される。本体部材には、加圧室に連通しているとともに、圧力調整部材の移動によって容積が変化する圧力調整室が形成されている。加圧室および圧力調整室内には、流体が充填されている。
特許文献1に開示されている工具ホルダでは、通常時には、圧力調整部材を、圧力調整室の容積が大きくなる位置に移動させ、加圧室内に充填されている流体の圧力を低くする。この場合、把持部は、通常形状に維持される。一方、スリーブ内側空間(本体部内側空間)内に挿入された工具を把持する場合には、圧力調整部材を、圧力調整室の容積が小さくなる位置に移動させ、加圧室内に充填されている流体の圧力を高める。加圧室内の流体の圧力が高くなると、把持部が径方向内側に押圧され、スリーブ内周面(本体部内周面)の、把持部に対応する部分が径方向内側に弾性変形する。これにより、スリーブ内周面(本体部内周面)の、把持に対応する部分によって、スリーブ内側空間(本体部内側空間)内に挿入されている工具が把持(挟持)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-29106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている工具ホルダは、本体部内側空間(スリーブ内側空間)を挟んで一方側の領域に圧力調整室が形成されている。このため、特許文献1に開示されている工具ホルダでは、圧力調整室内に充填されている流体の圧力によって、圧力調整室を形成する内壁面が拡開し、本体部が歪むおそれがある。本体部が歪むと、本体部内側空間の中心線が曲がり、本体部内側空間内に挿入されている工具の把持精度が低下する。そして、工具の把持精度が低下すると、加工精度が低下する。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、圧力調整室内に充填されている流体の圧力による本体部の歪みを防止することができる工具ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の工具ホルダは、第1の中心線の延在方向に沿って延在する筒状の本体部を備えている。
本体部は、本体部内周面と、本体部内側空間と、少なくとも1つの加圧室と、少なくとも1つの把持部と、を有している。
本体部内周面は、第1の中心線を中心線としている。本体部内側空間は、本体部内周面により形成されている。本体部内側空間は、先端側から工具が挿入可能に形成されている。
加圧室は、本体部内周面より径方向外側に、周方向全体および第1の中心線の延在方向に沿って延在している。加圧室内には、流体が充填されている。
把持部は、加圧室と本体部内周面との間に形成され、周方向全体および第1の中心線の延在方向に沿って延在している。把持部は、加圧室内に充填されている流体の圧力が高められると、径方向内側に弾性変形可能に形成されている。把持部が径方向内側に弾性変形することによって、本体部内側空間内に挿入されている工具が把持(挟持)される。
本発明では、本体部は、さらに、圧力調整室と、圧力調整部材と、補助室と、を有している。
圧力調整室は、少なくとも1つの加圧室に連通している。また、圧力調整室は、第1の中心線と交差する(「略交差する」を含む)第2の中心線を中心線とするとともに。第2の中心線の延在方向に沿って延在している。
圧力調整部材は、第2の中心線の延在方向に沿って移動可能に配置されている。また、圧力調整部材は、圧力調整部材の移動によって圧力調整室の容積が変化するように配置されている。
補助室は、本体部内側空間を挟んで圧力調整室と反対側に配置され、少なくとも1つの加圧室に連通している。また、補助室は、第2の中心線を中心線とするとともに、第2の中心線の延在方向に沿って延在している。
本発明では、補助室が、本体部内側空間を挟んで圧力調整室と反対側に、補助室の中心線が圧力調整室の中心線と一致(「略一致」を含む)するように形成されている。これにより、圧力調整室内に充填されている流体の圧力によって、圧力調整室を形成する内壁面に作用する力が、補助室内に充填されている流体の圧力によって、補助室を形成する内壁面に作用する力により打ち消され(相殺され)、圧力調整室内に充填されている流体の圧力による本体部の歪を防止することができる。
本発明では、圧力調整室内に充填されている流体の圧力による本体部の歪みを防止することができる。これにより、本体部の歪に起因する工具の把持精度の低下による加工精度の低下を防止することができる。
本発明の異なる形態では、第2の中心線は、第1の中心線と直角(「略直角」を含む)に交差するように設定されている。
本形態では、補助室を簡単に形成することができる。
本発明の異なる形態では、圧力調整室は、加圧室に開口している開口部を有している。また、補助室は、加圧室の、本体部内側空間を挟んで圧力調整室と反対側に開口している開口部を有している。
本形態では、簡単な構成で、圧力調整室を形成する内壁面に作用する力による本体部の歪を防止することができる。
本発明の異なる形態では、補助室の内壁面の面積は、圧力調整部材が、圧力調整室の容積が最小となる位置に移動した状態における、圧力調整室の内壁面の面積と等しくなる(「略等しくなる」を含む)ように設定されている。
本形態では、圧力調整室内に充填されている流体の圧力により圧力調整室を形成する内壁面に作用する力を、補助室内に充填されている流体の圧力により補助室を形成する内壁面に作用する力によって効果的に打ち消す(相殺する)ことができる。
本発明の異なる形態では、補助室の内径は、圧力調整室の内径と等しくなる(「略等しくなる」を含む)ように設定されている。
本形態では、補助室をより簡単に構成することができる。
本発明の異なる形態では、本体部は、本体部材と、第3の中心線の延在方向に沿って延在するスリーブと、を有している。
本体部材は、第1の中心線を中心線とする本体部材内周面と、本体部材内周面により形成され、先端側が開口している本体部材内側空間と、を有している。
スリーブは、第3の中心線を中心線とするスリーブ内周面およびスリーブ外周面を有している。スリーブ外周面は、径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分を有している。
スリーブは、本体部材内側空間内に、第3の中心線が第1の中心線と一致(「略一致」を含む)するように挿入された状態で、本体部材に固定される。
本形態では、スリーブ内周面により本体部内側空間が形成されている。径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分と本体部材内周面との間に、少なくとも1つの加圧空間が形成されている。径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分とスリーブ内周面との間に、少なくとも1つの把持部が形成されている。本体部材に、圧力調整室と補助室が形成されている。
本形態では、本体部を簡単に構成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の工具ホルダを用いることにより、圧力調整室内に充填されている流体の圧力による本体部の歪みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態の工具ホルダの断面図である。
図2】一実施形態の工具ホルダを構成する本体部材の断面図である。
図3】一実施形態の工具ホルダを構成するスリーブの断面図である。
図4図1を矢印IV-IV方向から見た断面図である。
図5】補助室の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態の工具ホルダ10を、図1~4を参照して説明する。
図1は、一実施形態の工具ホルダ10の断面図である。図2図3は、それぞれ、一実施形態の工具ホルダ10を構成する本体部材20、スリーブ40の断面図である。図4は、図1を矢印IV-IV方向から見た断面図である。
以下では、本体部内周面(本体部材内周面)の中心線Pの延在方向(図1において、X方向)に沿って、本体部内側空間(スリーブ内側空間)に工具が挿入される側(図1において、矢印X1で示される右側)を、「先端側」といい、工具が挿入される側と反対側(図1において、矢印X2で示される左側)を、「後端側」という。
また、本体部内周面(本体部材内周面)の中心線Pの延在方向に沿った一方側あるいは他方側から見て(図4図5参照)、中心線Pを中心とする円に沿った方向を「周方向」といい、中心線Pを通る線に沿った方向(図1において、Y方向)を「径方向」という。
また、径方向に沿って中心線P側(図1において、矢印Y1側)を、「径方向内側」あるいは「内側」といい、中心線Pと反対側(図1において、矢印Y2側)を、「径方向外側」あるいは「外側」という。
【0009】
本実施形態の工具ホルダ10は、本体部と圧力調整ボルト50により構成されている。
本体部は、本体部材20と、スリーブ40を有している。
【0010】
本体部材20は、図2に示されているように、中心線Pの延在方向に沿って延在し、筒状に形成されている。本実施形態では、後述する本体部材内周面21(本体部材内側空間23)の中心線を、本体部材20の中心線Pとして規定している。
本体部材20は、本体部材先端面20A、本体部材後端面20B、本体部材内周面21、本体部材外周面22、本体部材内側空間23を有している。
【0011】
本体部材内周面21は、中心線Pを中心線としている。
本体部材内周面21は、本体部材内周面部分21a~21fを有している。
本体部材内周面部分21a、21c、21e、21fは、中心線Pを中心とする円形の断面を有し、中心線Pの延在方向と平行(「略平行」を含む)に延在している。本体部材内周面部分21cの内径は、本体部材内周面部分21aの内径より小さく設定されている。本体部材内周面部分21bは、本体部材内周面部分21aと21cの間に配置されている。また、本体部材内周面部分21eの内径は、本体部材内周面部分21cの内径より小さく設定されている。本体部材内周面部分21dは、本体部材内周面部分21cと21eの間に配置されている。本体部材内周面部分21dは、中心線Pの延在方向と直交する(「略直交する」を含む)方向に延在するように形成されている。
【0012】
本体部材内側空間23は、本体部材内周面21により形成されている。すなわち、本体部材内側空間23は、本体部材内周面21と同様に、中心線Pを中心線としている。
本体部材内側空間23は、本体部材内側空間部分23a~23dを有している。本体部材内側空間部分23a~23dは、それぞれ、本体部材内周面部分21a、21c、21e、21fにより形成されている。
本実施形態では、本体部材内周面21(本体部材内側空間23)の中心線Pが、本発明の「第1の中心線」に対応する。
【0013】
本体部材外周面22は、本体部材外周面部分22a~22cを有している。
本体部材先端面20A、本体部材外周面部分22a、22bによって、径方向外側に突出する鍔部24が形成されている。
【0014】
本体部材20の、鍔部24に対応する箇所には、中心線Pと交差する中心線Rを中心線とするとともに、中心線Rの延在方向に沿って延在する孔30が形成されている。本実施形態では、中心線Rは、中心線Pと直角(「略直角」を含む)に交差するように設定されている。なお、中心線Rは、中心線Pの近傍を通るように設定することもできる。すなわち、「中心線Pと交差する」という記載は、「中心線Pと略交差する」態様を含む。
孔30は、本体部材内側空間部分23aを跨いで(本体部材内側空間部分23aを通って)延在するように形成されている。すなわち、孔30は、本体部材外周面部分22aに開口する開口部30A、本体部材内周面21に開口する開口部30Bと30Cを有している。開口部30Bと30Cは、本体部材内周面21の、中心線Rの延在方向に沿って一方側と他方側(対向する箇所)に形成されている。
【0015】
孔30は、内壁面31と底壁面32により形成されている。
内壁面31は、内壁面部分31a~31fを有している。内壁面部分31a、31c、31e、31fは、中心線Rを中心とする円形の断面を有し、中心線Rの延在方向に平行に延在している。内壁面部分31cの内径は、内壁面部分31aの内径より大きく設定されている。内壁面部分31bは、内壁面部分31aと31cの間に配置されている。内壁面部分31eの内径は、内壁面部分31aの内径より小さく設定されている。内壁面部分31dは、内壁面部分31cと31eの間に配置されている。本実施形態では、内壁面部分31dは、中心線Rの延在方向に直角(「略直角」を含む)な方向に延在するように形成されている。内壁面部分31fの内径は、内壁面部分31eの内径と等しく設定されている。
本実施形態では、孔30は、本体部材内側空間23(詳しくは、本体部材内側空間部分23a)を挟んで、中心線Rの延在方向に沿って一方側と他方側に配置されている第1の孔30aと第2の孔30bを有している。第1の孔30aは、開口部30A、内壁面部分31a~31e、開口部30Bにより形成されている。第2の孔30bは、開口部30C、内壁面部分31f、底壁面32により形成されている。
なお、第1の孔30aの内壁面部分31aには、雌ネジが形成されている。
本実施形態では、孔30(第1の孔30a、第2の孔30b)の中心線Rが、本発明の「第2の中心線」に対応する。
【0016】
スリーブ40は、図3に示されているように、中心線Qの延在方向に沿って延在する筒状に形成されている。
スリーブ40は、スリーブ先端面40A、スリーブ後端面40B、スリーブ内周面41、スリーブ外周面42を有している。
【0017】
スリーブ内周面41は、スリーブ内周面部分41a~41cを有している。スリーブ内周面部分41a、41cは、中心線Rを中心とする円形の断面を有し、中心線Qの延在方向と平行に延在している。スリーブ内周面部分41cの内径は、スリーブ内周面部分41aの内径より大きく設定されている。スリーブ内周面部分41bは、スリーブ内周面部分41aと41cの間に配置されている。
【0018】
スリーブ内側空間43は、スリーブ内周面41により形成されている。すなわち、スリーブ内側空間43は、スリーブ内周面41と同様に、中心線Qを中心線としている。スリーブ内側空間43は、工具(詳しくは、工具の工具シャンク部)が挿入可能に形成されている。
スリーブ内側空間43は、スリーブ内側空間部分43a、43bを有している。スリーブ内側空間部分43a、43bは、それぞれスリーブ内周面部分41a、41cにより形成されている。
スリーブ内周面部分41aには、螺旋状の溝44が、冷却媒体(クーラント)を供給する通路として形成されている。勿論、冷却媒体は、螺旋状の溝44以外の通路を介して供給することができる。
【0019】
スリーブ外周面42は、スリーブ外周面部分42a~42hを有している。
スリーブ外周面部分42a~42e、42gは、中心線Qを中心とする円形の断面を有し、中心線Qの延在方向に平行に延在している。スリーブ外周面部分42aと42gの外径は、等しく設定されている。スリーブ外周面部分42eの外径は、スリーブ外周面部分42a、42gの外径より小さく設定されている。スリーブ外周面部分42fは、スリーブ外周面部分42eと42gの間に配置されている。スリーブ外周面部分42cの外径は、スリーブ外周面部分42eの外径より小さく設定されている。スリーブ外周面部分42bと42dの外径は、等しく設定されているとともに、スリーブ外周面部分42cの外径より小さく設定されている。スリーブ外周面部分42bは、スリーブ外周面部分42aと42cの間に配置されている。また、スリーブ外周面部分42dは、スリーブ外周面部分42cと2eの間に配置されている。スリーブ外周面部分42hは、スリーブ外周面部分42gより窪んでいる。
スリーブ内周面部分41aとスリーブ外周面部分42bの間およびスリーブ内周面部分41aとスリーブ外周面部分42dの間には、それぞれ、薄肉の、径方向に弾性変形可能な把持部45aおよび45bが形成されている。
本実施形態では、スリーブ内周面41(スリーブ内側空間43)の中心線Qが、本発明の「第3の中心線」に対応する。また、スリーブ外周面部分42b、42dが、本発明の「径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分」に対応する。
【0020】
工具ホルダ10は、本体部材20とスリーブ40を以下のように組付けることによって形成される。
スリーブ40は、本体部材内側空間23内に挿入された状態で本体部材20に固着(固定)される。
本実施形態では、スリーブ40は、本体部材内側空間部分23a、23b内に、スリーブ後端面40Bが本体部材内周面部分21dに当接する位置まで挿入される。この時、スリーブ40は、スリーブ40の中心線Qが本体部材20の中心線Pと一致(「略一致」を含む)するように、本体部材内側空間部分23a、23b内に挿入される。
そして、スリーブ後端面40Bを本体部材内周面部分21dにロー付けするとともに、スリーブ外周面部分42aを本体部材内周面部分21aにロー付けすることによって、スリーブ40を本体部材20に固着(固定)している。
スリーブ40が本体部材20に固着されることによって、本体部材内周面21とスリーブ外周面42との間に空間が形成される。本実施形態では、本体部材内周面部分21aとスリーブ外周面部分42bとの間および本体部材内周面部分21aとスリーブ外周面部分42dとの間に、それぞれ加圧室25aおよび25bが形成される。本体部材内周面部分21aとスリーブ外周面部分42cとの間に、連通路25cが形成される。本体部材内周面部分21aとスリーブ外周面部分42eとの間に、空隙25dが形成される。
加圧室25aと25bは、連通路25cを介して連通される。
また、加圧室25aは、開口部30Bを介して第1の孔30aと連通されるとともに、開口部30Cを介して第2の孔30bと連通される。
なお、本体部材内周面部分21cとスリーブ外周面部分42hの間には、Oリング等のシール部材が配置される。
スリーブ40が本体部材20に固着された状態において、第2の孔30bは、開口部30Cを介して加圧室25aに直接に連通している補助室33bとして形成される。
本実施形態では、開口部30Cが、本発明の「少なくとも1つの加圧室のうちのいずれかの加圧室に開口している開口部(あるいは第2の開口部)」に対応する。
【0021】
スリーブ40が本体部材20に固着された状態で、第1の孔30a内に圧力調整ボルト50が挿入される。
圧力調整ボルト50は、ボルト先端面50Aとボルト外周面52により形成されている。
ボルト外周面52は、ボルト外周面部分52a~52cを有している。ボルト外周面部分52a、52cは、圧力調整ボルト50の中心線を中心とする円形の断面を有している。ボルト外周面部分52cの外径は、ボルト外周面部分52aの外径より小さく設定されている。ボルト外周面部分52bは、ボルト外周面部分52aと52cの間に配置されている。ボルト外周面部分52bは、圧力調整ボルト50の中心線の延在方向と直交(「略直交」を含む)する方向に延在している。ボルト外周面部分52aには、本体部材20の第1の孔30aの内壁面部分31aに形成されている雌ネジにネジ結合可能な雄ネジが形成されている。ボルト外周面部分52a、52bにより、圧力調整ボルト50の頭部が形成され、ボルト外周面部分52c、ボルト先端面50Aにより、圧力調整ボルト50の脚部が形成される。
圧力調整ボルト50は、ボルト外周面部分52aに形成されている雄ネジを、内壁面部分31aに形成されている雌ネジにネジ結合させることによって、第1の孔30a内に挿入される。
これにより、第1の孔30aの開口部30B、内壁面部分31eおよび圧力調整ボルト50のボルト先端面50Aによって、開口部30Bを介して加圧室25aに直接に連通している圧力調整室33aが形成される。
なお、図示は省略しているが、圧力調整ボルト50のボルト外周面部分52cと第1の孔30aの内壁面部分31eとの間には、Oリング等のシール部材が配置される。
本実施形態では、開口部30Bが、本発明の「少なくとも1つの加圧室のうちのいずれかの加圧室に開口している開口部(あるいは第1の開口部)」に対応する。
【0022】
加圧室25a、25b、連通路25c、空隙25d、圧力調整室33aおよび補助室33b内には、流体が充填される。本実施形態では、流体として油が用いられている。
圧力調整ボルト50を、中心線Rに沿って移動させることによって、圧力調整室33aの容積が変化する。圧力調整室33aの容積が変化することによって、圧力調整室33a内に充填されている流体の圧力が変化する。すなわち、圧力調整室33aの容積が大きくなると、圧力調整室33a内に充填されている流体の圧力が低くなる。一方、圧力調整室33aの容積が小さくなると、圧力調整室33a内に充填されている流体の圧力が高くなる。
圧力調整室33a内に充填されている流体の圧力が低い場合には、圧力調整室33aに連通している加圧室25a、25b内に充填されている流体の圧力も低い。この場合、把持部45aおよび45bは、弾性変形することなく、通常形状を維持している。
一方、圧力調整室33a内に充填されている流体の圧力が高い場合には、圧力調整室33aに連通している加圧室25a、25b内に充填されている流体の圧力も高い。この場合、把持部45aおよび45bは、加圧室25a、25b内に充填されている流体の圧力によって径方向内側に押圧されることによって、径方向内側に弾性変形する。スリーブ内周面41(スリーブ内周面部分41a)の、把持部45aおよび45bに対応する部分が径方向内側に弾性変形することによって、スリーブ内側空間43(スリーブ内側空間部分43a)内に挿入されている工具(工具シャンク部)が把持(挟持)される。
【0023】
なお、本実施形態では、圧力調整ボルト50のボルト外周面部分52bが、本体部材20の第1の孔30aの内壁面部分31dに当接することによって、圧力調整ボルト50の、中心線Rの延在方向に沿った径方向内側への移動(圧力調整室33aの容積を減少させる方向への移動)が規制される。すなわち、圧力調整室33aの容積の最小(最小値)が規定されている。圧力調整室33aの容積が最小(最小値)に設定されると、加圧室25a、25b内に充填されている流体の圧力が最大(最大値)に設定される。
スリーブ内側空間43内に挿入された工具を把持する場合には、圧力調整ボルト50は、ボルト外周面部分52bが内壁面部分31dに当接する位置まで第1の孔30a内に挿入される。
本実施形態では、圧力調整ボルト50のボルト外周面部分52bと、本体部材20の第1の孔30aの内壁面部分31dによって、「圧力調整ボルト50の、中心線Rの延在方向に沿った、圧力調整室33aの容積を減少させる方向への移動を規制する(圧力調整室の容積の最小値を規定する)移動規制機構」が構成される。
勿論、圧力調整ボルト50の、中心線Rの延在方向に沿った、圧力調整室33aの容積を減少させる方向への移動を規制する移動規制機構は、これに限定されない。
このような、移動規制機構を備えることにより、工具を把持する際における圧力調整ボルト50の操作が容易となる。
【0024】
図4を参照して、圧力調整室33aと補助室33bについて説明する。
圧力調整室33aの内径をL1とし、補助室33bの内径をL2とする。
圧力調整室33a内に充填されている流体の圧力は、圧力調整室33aの容積が最小に設定された状態(ボルト外周面部分52bが内壁面部分31dに当接した状態)において最大となる。すなわち、圧力調整室33aを形成する内壁面部分31eに作用する力は、圧力調整室33aの容積が最小の時に最大となる。圧力調整室33aの容積が最小に設定された状態における、圧力調整室33aの、中心線Rの延在方向に沿った最小長さをD1aとし、最大長さをD1bとする。最小長さD1aは、中心線Rに沿った、圧力調整ボルト50のボルト先端面50Aと本体部材内周面21(本体部材内周面部分21a)との間の長さである。最大長さD1bは、圧力調整室33aを形成する内壁面部分31eに沿った、圧力調整ボルト50のボルト先端面50Aと本体部材内周面21(本体部材内周面部分21a)との間の長さである。
圧力調整室33aの容積が最小に設定された状態における、圧力調整室33aを形成する内壁面(内壁面部分31e)の面積をS1とする。
また、補助室33bの、中心線Rの延在方向に沿った最小長さをD2aとし、最大長さをD2bとする。最小長さD2aは、中心線Rに沿った、補助室33bを形成する底壁面32と本体部材内周面21(本体部材内周面部分21a)との間の長さである。最大長さD2bは、補助室33bを形成する内壁面部分31fに沿った、補助室33bを形成する底壁面32と本体部材内周面21(本体部材内周面部分21a)との間の長さである。
補助室33bを形成する内壁面(内壁面部分31f)の面積をS2とする。
【0025】
本実施形態では、補助室33bを形成する内壁面(内壁面部分31f)の面積S2は、圧力調整室33aの容積が最小に設定されている状態における、圧力調整室33aを形成する内壁面(内壁面部分31e)の面積S1に等しく(「略等しい」を含む)設定されている。
また、補助室33bの内径L2は、圧力調整室33aの内径L1と等しく(「略等しい」を含む)設定されている。
なお、補助室33bの内壁面の面積S2は、(π×L2×D2a)より大きく、(π×L2×D2b)より小さい。また、圧力調整室33aの容積が最小に設定されている状態における、圧力調整室33aの内壁面の面積S1は、(π×L1×D1a)より大きく、(π×L1×D1b)より小さい。
本実施形態では、補助室33bの内径L2が、圧力調整室33aの内径L1と等しくなるように構成されている。このため、補助室33bの内壁面の面積S2を、圧力調整室33aの容積が最小に設定されている状態における、圧力調整室33aの内壁面の面積S1に等しく設定する方法として、例えば、(π×L2×D2a)を(π×L1×D1a)と等しく設定する方法、すなわち、補助室33bの最小長さD2aを圧力調整室33a最小長さD1bと等しく設定する方法を用いることができる。あるいは、(π×L2×D2b)を(π×L1×D1b)と等しく設定する方法、すなわち、補助室33bの最大長さD2bを圧力調整室33aの最大長さD1bと等しく設定する方法を用いることができる。
【0026】
なお、補助室33bの内壁面の面積S2を圧力調整室33aの内壁面の面積S1に等しく設定する方法としては、種々の方法を用いることができる。
また、圧力調整室33aと補助室33bが、中心線Pと交差する中心線Rを中心線とし、スリーブ内側空間(本体部内側空間)43を挟んで対向する位置に形成されていればよく、補助室33bの内壁面の面積S2が、圧力調整室33aの内壁面の面積S1に等しく設定されていなくてもよい。
【0027】
本実施形態では、本体部材20の本体部材内側空間23(本体部材内側空間部分23a)内に挿入されているスリーブ40のスリーブ内周面41によって、本発明の「第1の中心線を有する本体部内周面」が構成される。本体部材先端面20Aとスリーブ先端面40Aによって、本発明の「本体部先端面」が構成される。本体部材後端面20Bによって、本発明の「本体部後端面」が構成される。
また、スリーブ40のスリーブ内周面41が、本発明の「第3の中心線を中心線とするスリーブ内周面」に対応する。本体部材20の本体部材内側空間23(本体部材内側空間部分23a)内に挿入されているスリーブ40のスリーブ内側空間43によって、本発明の「第1の中心線を有する本体部内側空間」が構成される。圧力調整室33aによって、本発明の「第1の中心線と交差する第2の中心線を有する圧力調整室」が構成される。補助室33bによって、本発明の「圧力調整室の中心線を中心線とする補助室」が構成される。
また、圧力調整ボルト50が、本発明の「圧力調整室の容積を変化させる圧力調整部材」に対応する。
【0028】
本実施形態の作用を、図5を参照して説明する。
加圧室35a内に充填されている流体の圧力は、加圧室35aを形成するスリーブ外周面部分42bおよび本体部材内周面部分21aに作用する。スリーブ外周面部分42bには、図5に矢印J1~Jnで示されているように、スリーブ外周面部分42bを中心線P側に移動させる力が作用する。また、本体部材内周面部分21aには、図5に矢印K1~Knで示されているように、本体部材内周面部分21aを中心線Pと反対側に移動させる力が作用する。なお、図5では、簡略化のために、スリーブ外周面部分42bに作用する力の一部J1~Jnのみを図示し、本体部材内周面部分21aに作用する力の一部K1~Knのみを図示している。
加圧室35a内に充填されている流体の圧力は、スリーブ外周面部分42bおよび本体部材内周面部分21aに等しく作用する。
加圧室35b内に充填されている流体の圧力も、同様に、スリーブ外周面部分42dおよび本体部材内周面部分21aに等しく作用する。
このため、加圧室35aおよび35b内に充填されている流体の圧力によって、本体部材20が歪むことはない。
【0029】
また、圧力調整室33a内に充填されている流体の圧力は、圧力調整室33aを形成する内壁面部分31eに作用する。内壁面部分31eには、図5に矢印F1、F2で示されているように、内壁面部分31eを中心線Rと反対側に移動させる力(拡開させる力)が作用する。なお、図5には、内壁面部分31eに作用する力F1、F2のみが示されているが、内壁面部分31eには、周方向全体に同様の力が作用する。
【0030】
従来の工具ホルダでは、本体部内側空間を挟んで一方側に圧力調整室が配置されている。
このため、圧力調整室を形成する内壁面に作用する、圧力調整室内に充填されている流体の圧力によって、本体部が歪み、本体部内側空間の中心線が曲がるおそれがある。
【0031】
一方、本実施形態の工具ホルダ10では、圧力調整室33aは、本体部材内側空間23の中心線P(本体部材内側空間23に挿入されているスリーブ40のスリーブ内側空間43の中心線Q)と直角に交差する中心線Rを中心線とし、開口部30Bを介して加圧室25aに直接に連通している。すなわち、圧力調整室33aは、スリーブ内側空間部分43aに接近して配置されている。
また、補助室33bは、圧力調整室33aの中心線Rを中心線とし、開口部30Cを介して加圧室25aに直接に連通している。すなわち、補助室33bは、スリーブ内側空間部分43aに接近して配置されている。
補助室33b内に充填されている流体の圧力は、補助室33bを形成する内壁面部分31fに作用する。内壁面部分31fには、図5に矢印G1、G2で示されているように、内壁面部分31fを中心線Rと反対側に移動させる力(拡開させる力)が作用する。なお、図5には、内壁面部分31fに作用する力G1、G2のみが示されているが、内壁面部分31fには、周方向全体に同様の力が作用する。
【0032】
このように、本実施形態の工具ホルダ10では、圧力調整室33aと補助室33bは、スリーブ内側空間43(本体部内側空間)の中心線Pと直角に交差する中心線Rを中心線とし、スリーブ内側空間43(本体部内側空間)を挟んで両側に、スリーブ内側空間43(本体部内側空間)に接近して配置されている。
このため、補助室33bを形成する内壁面部分31fに作用する力G1、G2によって、圧力調整室33aを形成する内壁面部分31eに作用する力F1、F2が打ち消される(相殺される)。すなわち、圧力調整室33a内に充填されている流体の圧力による本体部材20の歪を防止することができる。そして、本体部材20の歪を防止することによって、本体部材内側空間23の中心線の曲げを防止することができる。本体部材内側空間23の中心線の曲げを防止することによって、本体部材内側空間23内に挿入されているスリーブ40のスリーブ内側空間43の中心線の曲げを防止することができる。さらに、スリーブ内側空間43の中心線の曲げを防止することによって、スリーブ内側空間43内に挿入されている工具(工具シャンク部)の把持精度の低下を防止することができ、加工精度の低下を防止することができる。
【0033】
本発明は、以下のように構成することもできる。
(態様1)第1の中心線の延在方向に沿って延在する筒状の本体部を備え、
前記本体部は、前記第1の中心線を中心線とする本体部内周面と、前記本体部内周面により形成され、先端側から工具が挿入可能な本体部内側空間と、前記本体部内周面より径方向外側に、周方向全体および前記第1の中心線の延在方向に沿って延在するとともに、流体が充填される、少なくとも1つの加圧室と、前記少なくとも1つの加圧室と前記本体部内周面との間に形成され、周方向全体および前記第1の中心線の延在方向に沿って延在するとともに、径方向に弾性変形可能な少なくとも1つの把持部と、を有し、
前記少なくとも1つの加圧室内に充填されている流体の圧力を高めることによって、前記少なくとも1つの把持部が径方向内側に弾性変形し、前記本体部内側空間内に挿入されている工具が把持されるように構成されている工具ホルダであって、
前記本体部は、さらに、圧力調整室と、圧力調整部材と、補助室と、を有し、
前記圧力調整室は、前記少なくとも1つの加圧室に連通し、前記第1の中心線と交差する第2の中心線を中心線とするとともに、当該第2の中心線の延在方向に沿って延在するように形成され、
前記圧力調整部材は、前記圧力調整室の容積が変化するように前記第2の中心線の延在方向に沿って移動可能に配置され、
前記補助室は、前記本体部内側空間を挟んで前記圧力調整室と反対側に配置され、前記少なくとも1つの加圧室に連通し、前記第2の中心線を中心線とするとともに、前記第2の中心線の延在方向に沿って延在するように形成されていることを特徴とする工具ホルダ。
(態様2)態様1の工具ホルダであって、前記第2の中心線は、前記第1の中心線と直角に交差するように設定されていることを特徴とする工具ホルダ。
(態様3)態様1または2の工具ホルダであって、前記圧力調整室は、前記加圧室に開口している開口部を有し、前記補助室は、前記加圧室の、前記本体部内側空間を挟んで前記圧力調整室と反対側に開口している開口部を有していることを特徴とする工具ホルダ。
(態様4)態様1~3のうちのいずれかの工具ホルダであって、前記圧力調整部材の、前記第2の中心線の延在方向に沿った、前記圧力調整室の容積を小さくする方向への移動を、前記圧力調整室の容積が最小となる位置で規制する位置規制機構を有していることを特徴とする工具ホルダ。
(態様5)態様1~4のうちのいずれかの工具ホルダであって、前記補助室の内壁面の面積は、前記圧力調整部材が、前記圧力調整室の容積が最小となる位置に移動した状態における、前記圧力調整室の内壁面の面積と等しくなるように設定されていることを特徴とする工具ホルダ。
(態様6)態様1~5のうちのいずれかの工具ホルダであって、前記補助室の内径は、前記圧力調整室の内径と等しくなるように設定されていることを特徴とする工具ホルダ。
(態様7)態様1~6のうちのいずれかの工具ホルダであって、
前記本体部は、本体部材と、第3の中心線の延在方向に沿って延在するスリーブと、を有し、
前記本体部材は、前記第1の中心線を中心線とする本体部材内周面と、前記本体部材内周面により形成され、先端側が開口している本体部材内側空間と、を有し、
前記スリーブは、前記第3の中心線を中心線とするスリーブ内周面と、前記第3の中心線を中心線とするスリーブ外周面と、を有し、
前記スリーブ外周面は、径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分を有し、
前記スリーブは、前記本体部材内側空間内に、前記第3の中心線が前記第1の中心線と一致するように挿入された状態で、前記本体部材に固着され、
前記スリーブ内周面により、前記本体部内側空間が形成され、
前記径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分と前記本体部材内周面との間に前記少なくとも1つの加圧室が形成され、
前記径方向内側に窪んでいる少なくとも1つのスリーブ外周面部分と前記スリーブ内周面との間に前記少なくとも1つの把持部が形成され、
前記本体部材に、前記圧力調整室と前記補助室が形成されていることを特徴とする工具ホルダ。
【0034】
本発明は、実施形態の構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
本体部材(本体部材内周面、本体部材内側空間、本体部材外周面等)およびスリーブ(スリーブ内周面、スリーブ内側空間、スリーブ外周面等)の形状は、実施形態の形状に限定されない。
加圧室および把持部を2つ設けたが、加圧室および把持部の数は、1を含めて適宜選択可能である。また、加圧室および把持部の位置も、適宜設定可能である。
圧力調整室および補助室を本体部材の鍔部に対応する箇所に形成したが、圧力調整室および補助室の配置位置は、これに限定されない。
圧力調整室および補助室の形状は、実施形態の形状に限定されない。
本体部を本体部材とスリーブにより構成したが、1つの部材により構成することもできる。本体部を1つの部材で構成する場合には、実施形態で説明した、「本体部材内周面部分(21a)とスリーブ外周面部分(42b、42d)により形成される加圧室」は、「本体部に形成され加圧室」に変更される。
圧力調整室および補助室を、本体部材内側空間の中心線と直交する中心線を有するように形成したが、本体部材内側空間の中心線と交差する中心線を有するように形成されていればよい。
補助室を形成する内壁面の面積が、圧力調整室を形成する内壁面の面積に等しくなるように構成したが、これに限定されない。
補助室の内径が、圧力調整室の内径に等しくなるように構成したが、これに限定されない。
圧力調整部材を、1つの圧力調整ボルトにより構成したが、複数の部材により構成することもできる。例えば、圧力調整ボルトと、圧力調整ボルトの移動に連動して移動し、圧力調整室の容積を変更するピストンとにより構成することもできる。
【符号の説明】
【0035】
10 工具ホルダ
20 本体部材
20A 本体部材先端面
20B 本体部材後端面
21 本体部材内周面
21a~21f 本体部材内周面部分
22 本体部材外周面
22a~22c 本体部材外周面部分
23 本体部材内側空間
23a、23b 本体部材内側空間部分
25a、25b 加圧室
25c 連通路
25d 空隙
30 孔
30A、30B、30C 開口部
30a 第1の孔
30b 第2の孔
31 内壁面
31a、31b、31c、31d、31e 内壁面部分
32 底壁面
33a 圧力調整室
33b 補助室
40 スリーブ
40A スリーブ先端面
40B スリーブ後端面
41 スリーブ内周面
41a~41c スリーブ内周面部分
42 スリーブ外周面
42a~42h スリーブ外周面部分
43 スリーブ内側空間
43a、43b スリーブ内側空間部分
44 溝
45a、45b 把持部
50 圧力調整ボルト(圧力調整部材)
50A ボルト先端面
52 ボルト外周面
52a~52c ボルト外周面部分
図1
図2
図3
図4
図5