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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167089
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】リング継手
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20231116BHJP
   F16B 13/02 20060101ALI20231116BHJP
   F16B 2/14 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
E21D11/04 A
F16B13/02
F16B2/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077984
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】520185546
【氏名又は名称】ユニタイトシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 公宏
(72)【発明者】
【氏名】高浜 達矢
(72)【発明者】
【氏名】横井 康人
(72)【発明者】
【氏名】徳田 裕至
(72)【発明者】
【氏名】井上 富美久
(72)【発明者】
【氏名】宮田 勝治
【テーマコード(参考)】
2D155
3J022
3J025
【Fターム(参考)】
2D155GC04
3J022DA12
3J022EA04
3J022EC02
3J022FB06
3J022GB02
3J025AA02
3J025CA03
3J025DA01
3J025EA01
(57)【要約】
【課題】オスピンとアンカー筋により構成されるリング継手のオス金具において、せん断補強タイプもしくは標準タイプのいずれにも、同一形状のアンカー筋を採用することを可能とする。
【解決手段】セグメントのトンネル軸方向に向かい合う一方の端面に埋設されるメス金具と、他方の端面に設置されるオス金具と、を備えるリング継手であって、前記オス金具は、前記セグメントに埋設されるアンカー筋と、該アンカー筋に接続されるオスピンと、を備え、前記アンカー筋に、前記オスピンが接続される被接続部が形成されるとともに、前記オスピンに、前記被接続部が挿入される接続孔を形成した軸部が設けられ、前記アンカー筋の前記被接続部が、前記セグメントの端面に形成された凹部内に露出されるとともに、該凹部に、前記オスピンの前記軸部が挿入される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントのトンネル軸方向に向かい合う一方の端面に埋設されるメス金具と、他方の端面に設置されるオス金具と、を備えるリング継手であって、
前記オス金具は、
前記セグメントに埋設されるアンカー筋と、
該アンカー筋に接続されるオスピンと、を備え、
前記アンカー筋に、前記オスピンが接続される被接続部が形成されるとともに、
前記オスピンに、前記被接続部が挿入される接続孔を形成した軸部が設けられ、
前記アンカー筋の前記被接続部が、前記セグメントの端面に形成された凹部内に露出されるとともに、
該凹部に、前記オスピンの前記軸部が挿入されることを特徴とするリング継手。
【請求項2】
請求項1に記載のリング継手において、
前記軸部が、前記セグメントに形成された前記凹部の深さより長大に形成されていることを特徴とするリング継手。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリング継手において、
前記アンカー筋の前記被接続部に雄ネジが形成され、前記軸部の前記接続孔に雌ネジが形成されていることを特徴とするリング継手。
【請求項4】
請求項3に記載のリング継手において、
前記オスピンは、前記凹部に挿入された前記軸部において前記セグメントから露出する部位に、前記オスピンを回転させるための工具が係合される係合孔を備えているとを特徴とするリング継手。
【請求項5】
請求項3に記載のリング継手において、
前記アンカー筋は、前記雄ネジの有効断面積が、当該雄ネジと繋がるアンカー筋本体部の断面積に等しいことを特徴とするリング継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの覆工体を構成するセグメントを接続するためのリング継手に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法を採用してトンネルを構築する場合、切羽の掘進に応じてその後方にて複数のセグメントをトンネル円周方向に接続してセグメントリングを構成し、このセグメントリングをトンネル軸方向に接続して筒状の覆工体を形成する。そして、セグメントリングをトンネル軸方向に接続するにあたり、その接続面には、リング継手が設けられている。
【0003】
リング継手は、標準タイプとせん断補強タイプに分類される。標準タイプは、セグメントのトンネル軸方向に向かい合う一方の端面に埋設されるメス金具と、他方の端面に設置されるオス金具とを備える。せん断補強タイプは、上記の標準タイプにさらに、リング継手に作用する大きなせん断力に対する補強構造を備える。
【0004】
例えば、特許文献1には、せん断補強タイプのリング継手が開示されている。特許文献1は、雄型継手部材が、セグメントに埋設される第1アンカー部材と、基端側が第1アンカー部材の先端に設けられた支持部に挿入支持されるスリーブとを備え、スリーブの先端側が、雌型継手部材に接合される。そして、スリーブの基端側を挿入される支持部が、スリーブとともにせん断応力を負担する形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-090778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、リング継手に作用する大きなせん断力に効率よく抵抗することができる。しかし、第1アンカー部材は、支持部が本体部より拡径されているとともに、セグメントの端面から突出して設けられているなど、せん断応力を負担するべく好適な形状に形成されている。このように、せん断補強タイプのリング継手は、アンカー形状に特徴を有する場合が多い。したがって、セグメントを製造する際には、せん断補強タイプのリング継手を備えるセグメントと、標準タイプのリング継手を備えるセグメントで、それぞれアンカー形状に合わせて異なる型枠を使い分けなければならず、製造が煩雑である。
【0007】
また、施工時においては、セグメントを配置する位置において求められるせん断耐力に応じたセグメントを設置しなければならず、せん断補強タイプのリング継手を備えるセグメントと、標準タイプのリング継手を備えるセグメントを、それぞれ準備しておく必要があった。
【0008】
本発明の目的は、オスピンとアンカー筋により構成されるリング継手のオス金具において、せん断補強タイプもしくは標準タイプのいずれにも、同一形状のアンカー筋を採用することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明のリング継手は、セグメントのトンネル軸方向に向かい合う一方の端面に埋設されるメス金具と、他方の端面に設置されるオス金具と、を備えるリング継手であって、前記オス金具は、前記セグメントに埋設されるアンカー筋と、該アンカー筋に接続されるオスピンと、を備え、前記アンカー筋に、前記オスピンが接続される被接続部が形成されるとともに、前記オスピンに、前記被接続部が挿入される接続孔を形成した軸部が設けられ、前記アンカー筋の前記被接続部が、前記セグメントの端面に形成された凹部内に露出されるとともに、該凹部に、前記オスピンの前記軸部が挿入されることを特徴とする。
【0010】
本発明のリング継手は、前記軸部が、前記セグメントに形成された前記凹部の深さより長大に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のリング継手は、前記アンカー筋の前記被接続部に雄ネジが形成され、前記軸部の前記接続孔に雌ネジが形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のリング継手は、前記オスピンは、前記凹部に挿入された前記軸部において前記セグメントから露出する部位に、前記オスピンを回転させるための工具が係合される係合孔を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明のリング継手は、前記アンカー筋の、前記雄ネジにおける有効断面積が、当該雄ネジと繋がるアンカー筋本体部の断面積に等しいことを特徴とする。
【0014】
本発明のリング継手によれば、オス金具を構成するアンカー筋に、オスピンが接続される被接続部を形成するとともに、被接続部をセグメントの端面に形成された凹部内に露出させた状態で、アンカー筋をセグメントに埋設する。これにより、オスピンは、軸部にアンカー筋の被接続部が挿入される接続孔を有し、かつ、セグメントの端面に形成された凹部に挿入可能な外形を有していればいずれの形状であっても同一形状のアンカー筋に接続することができる。
【0015】
したがって、オスピンの軸部をセグメントに形成した凹部の深さより長大に形成する、もしくは同一長さに形成するなど軸部形状を適宜変更することで、アンカー筋の形状を変更することなく、セグメントのリング継手にせん断補強タイプもしくは標準タイプのオス金具を設けることが可能となる。
【0016】
このように、セグメントに埋設するアンカー筋の形状は変更する必要がないため、セグメントの製造時には、せん断補強タイプもしくは標準タイプのオス金具のいずれを設ける場合にも、同じ型枠を用いて製造することが可能となるとともに、製造後の管理などが容易となる。
【0017】
また、せん断補強タイプのオスピンを接続する場合に、従来では、アンカー筋の被接続部近傍に必要とされていた、拡径部分が不用になる。このため、アンカー筋の軽量化と相まってリング継手の軽量化を図ることも可能となる。したがって、リング継手の取り扱いや搬送などの作業が容易であり、コストを抑えることも可能となる。
【0018】
さらに、アンカー筋の被接続部に雄ネジが形成され、オスピンの軸部に設ける接続孔に雌ネジが形成される。これにより、アンカー筋を埋設したセグメントとオスピンを、別途、施工現場に搬入し、現場で両者を接続することができる。これにより、オスピンのような突出部が端面に存在する場合と比較して、セグメントの搬入作業が容易になる。
【0019】
また、オスピンには、軸部が凹部に挿入された状態で、軸部セグメントから露出する部位に、オスピンを回転させるための工具が係合される係合孔が設けられているので、工具を用いてオスピンを回転させてアンカー筋に容易に接続すること、及び、接続されているオスピンを容易に取り外すことが可能となる。
【0020】
また、アンカー筋の、雄ネジにおける有効断面積が、当該雄ネジと繋がるアンカー筋本体部の断面積に等しいため、アンカー筋は全長に亘ってほぼ同じ断面積になる。このため、引張力に対する塑性領域が長くなり、アンカー筋において塑性変形させる範囲を大きく確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、オスピンとアンカー筋により構成されるリング継手のオス金具において、アンカー筋にオスピンが接続される被接続部を設け、また、被接続部をセグメントの端面に形成した凹部内に露出させた状態で、アンカー筋をセグメントに埋設することで、せん断補強タイプもしくは標準タイプのオス金具のいずれにも、同一形状のアンカー筋を採用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のせん断補強タイプのオスピンを備えたリング継手の詳細を示す図である。
図2】本発明の標準タイプのオスピンを備えたリング継手の詳細を示す図である。
図3】オス側アンカー筋の変形例を示す図である。
図4】せん断補強タイプ及び標準タイプのオスピンを説明する図である。ある。
図5図1におけるオスピンのA矢視図である。
図6】オスピンを回転させる工具の一例を示す図である。
図7】せん断補強タイプのオスピンを備えたリング継手によりセグメントを接続した状態を示す図である。
図8】標準タイプのオスピンを備えたリング継手によりセグメントを接続した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のリング継手は、複数のセグメントをトンネル円周方向に接続してセグメントリングを形成し、このセグメントリングをトンネル軸方向に接続するための継手として用いられるものである。このリング継手は、接続する2つのセグメントにおいてトンネル軸方向と直交し、互いに対向する端面に設置される。以下に、本発明のリング継手を、図1図8を用いて説明する。
【0024】
本発明のリング継手は、セグメントのトンネル軸方向に向かい合う一方の端面に埋設されるメス金具と、他方の端面に設置されるオス金具と、を備えており、図1に示すようなせん断補強タイプと、図2に示すような標準タイプとを有している。
【0025】
図1図2に示すように、せん断補強タイプ及び標準タイプのリング継手2はいずれも、セグメント1の坑口側リング端面11に設置されるオス金具3と、切羽側リング端面12に設置されるメス金具5(5A、5B)と、を有しており、オス金具3は、セグメント1に埋設されるオス側アンカー筋30と、オス側アンカー筋30に接続されるオスピン31と、を有している。
【0026】
せん断補強タイプのリング継手2と、標準タイプのリング継手2とは、オス側アンカー筋30及び後述するメス側アンカー筋7、基端部512が共通であり、オスピン31(31A、31B)及びメス金具5(5A、5B)が互いに相違している。
まず、共通するオス側アンカー筋30について説明する。
【0027】
オス側アンカー筋30は、例えば、鋼製または鋳鉄製の棒状の部材、または鍛造により製造された鍛造品よりなり、先端部分が、オスピン31が接続される被接続部30aとなる。本実施形態の被接続部30aには雄ネジが形成されている。
【0028】
オス側アンカー筋30は、例えば、図3に示すように、被接続部30aに形成されている雄ネジの有効断面積が、被接続部30aと繋がっているアンカー筋本体部30bの断面積に等しく、全長に亘ってほぼ同じ断面積となっている。これにより、引張力に対する塑性領域が長くなり、塑性変形させる範囲を大きく確保することが可能となる。なお、オス側アンカー筋30の雄ネジの製造方法は、転造や切削などいずれの製造方法であっても構わない。雄ネジを切削により形成する場合には、切削前の被接続部30aの断面積を、アンカー筋本体部30bの断面積より大きくしておくとよい。
【0029】
オス側アンカー筋30は、トンネル軸方向に沿って配置されており、坑口側リング端面11に設けられてトンネル軸方向に窪む凹部1a内に、被接続部30aが露出するように基端部側がセグメント1に埋設されている。凹部1aは、坑口側リング端面11に円形状の開口を有する円柱状の空隙であり、オス側アンカー筋30は、凹部1aの内周面と同軸に設けられ、凹部1aの中心にオス側アンカー筋30の被接続部30aが突出している。
【0030】
せん断補強タイプのリング継手2のオスピン31Aは、図1図4に示すように、メス金具5に係止されるほぼ円柱状の被係止ピン31aと、被係止ピン31aと繋がって同軸に設けられたほぼ円柱状をなす軸部31bと、を有している。被係止ピン31aは、周面が粗面31cをなし、先端部分は、先端に向かって外径が漸次小さくなるテーパーが設けられている。
【0031】
軸部31bの外径は、被係止ピン31aの外径よりも大きく形成されており、軸部31bの外径は、セグメント1に設けられている凹部1aの内径より僅かに小さく形成されている。軸部31bの、被係止ピン31aとは反対側の端には、オスピン31Aの軸方向に窪む接続孔31fが設けられている。接続孔31fには、オス側アンカー筋30の被接続部30aに設けられた雄ネジが螺合される雌ネジが設けられている。
【0032】
被係止ピン31aよりも外径が大きな軸部31bには、図4図5に示すように、軸部31bにおいて被係止ピン31aが突出するピン突出面31dに軸方向に沿って、工具8が係合される係合孔31gが設けられている。係合孔31gは、軸部31bの周方向にほぼ等間隔で4箇所に設けられている。
【0033】
工具8は、例えば図6に示すように、環状をなしピン突出面31dと対面する工具本体8aと、工具本体8aから延出されて作業者が把持する把持部8bとを有しており、工具本体8aにおいてピン突出面31dと対面する側に係合孔31gと係合するロッド8cが設けられている。工具8は、オスピン31Aの雌ネジをオス側アンカー筋30の雄ネジと螺合して接続する際及びオスピン31Aを取り外す際に、工具本体8aの中央開口8dにオスピン31Aが配置される状態で、工具本体8aのロッド8cが係合孔31gに挿入される。
【0034】
オスピン31Aは接続孔31fの雌ネジが、セグメント1の坑口側リング端面11に設けられた凹部1a内に突出しているオス側アンカー筋30の被接続部30aの雄ネジに螺合される。このとき、オスピン31Aは、係合孔31gにロッド8cが係合された工具8により回転されて、オスピン31Aの雌ネジがオス側アンカー筋30の雄ネジに螺合される。これにより、オスピン31Aは軸部31bが凹部1aに嵌入されて、オスピン31の先端側がセグメント1の坑口側リング端面11からトンネル軸方向と平行に突出する態様で、セグメント1に設置される。このとき、オス側アンカー筋30と、被係止ピン31a及び軸部31bとは、同軸上に配置される。せん断補強タイプのリング継手2のオスピン31Aは、セグメント1に設置された状態で、軸部31bが坑口側リング端面11よりも外側に突出する。すなわち、図4示すように、オスピン31Aの軸部31bの長さL1は、凹部1aの深さL2より長大に形成されている。
【0035】
軸部31bが凹部1aに嵌入された状態で、ピン突出面31dはセグメント1の外側に露出しているので、工具8のロッド8cを係合孔31gに係合させてオスピン31Aを回転させて凹部1aに嵌入すること、凹部1aから取り外すことができる。尚、係合孔31gが設けられる位置は、ピン突出面31dに限らず、例えば、凹部1aから突出する軸部の31bの外周面など、軸部31bが凹部1aに嵌入された状態で、セグメント1の外側に露出している部位であれば構わない。
【0036】
せん断補強タイプのリング継手2のメス金具5Aは、図1に示すように、オスピン31Aの被係止ピン31aが挿入される中空部を有する筒状かつ有底の楔ケース51と、楔ケース51に内装される複数の楔金物52および弾性部材53とを備えている。
【0037】
楔ケース51は、底部を有する基端部512から開口を有する先端部513に向けて中空部が漸次縮径する形状となるよう、その内周面に傾斜面511が形成されており、先端部513の内径は、基端部512の内径より小径に形成されている。また、中空部よりも切羽側リング端面12には、セグメント1に取り付けられたオスピン31Aの軸部31bにおいて、坑口側リング端面11より外側に突出する部位31eが嵌入される空隙でなる嵌入部51aが設けられている。
【0038】
楔ケース51の中空部に配置される複数の楔金物52は、外周面が楔ケース51の傾斜面511であって先端部513に接し、内径がオスピン31Aの被係止ピン31aの外径より略小さい、外形状が円錐大台形状の筒状部材を、軸方向に複数分割した形状を有している。複数の楔金物52は、中空部に収縮した状態で設置されている弾性部材53の反発力により楔ケース51の傾斜面511に常時押付けられている。
【0039】
そして、楔ケース51は、先端部513が切羽側リング端面12に配置されるとともに、中空部がトンネル軸方向に延在する態様で、基端部512側に設置されるメス側アンカー筋7とともに、セグメント1に埋設されている。
【0040】
せん断補強タイプのリング継手2を用いて向かい合うセグメント1どうしを接続する際には、オスピン31Aが設置されたセグメントの坑口側リング端面11と、メス金具5Aが設置されたセグメント1の切羽側リング端面12とを対向させて配置し、オスピン31Aの被係止ピン31aとメス金具5Aの楔ケース51とを対向させて互いの軸心が同心となるように位置決めする。
【0041】
この状態で、セグメント1どうしを接続させる方向に押圧力を作用させると、坑口側リング端面11から突出している軸部31bの先端側の部位31eが嵌入部51aに嵌入され、被係止ピン31aが、楔金物52を伴いながら、楔ケース51の中空部に徐々に挿入される。このとき、図7に示すように、楔金物52が被係止ピン31aに押し広げられて、基端部512に向かって移動した移動量分だけ反発力が作用し、楔金物52の内周面が被係止ピン31aに押し付けられて、被係止ピン31aが楔金物52により係止される。また、接続された2つのセグメント1間には、一方のセグメント1の凹部1aから他方のセグメント1の嵌入部51aに亘ってオスピン31Aの軸部31bが嵌入されている。
【0042】
標準タイプのリング継手2のオスピン31Bは、図4に示すように、せん断補強タイプのリング継手2のオスピン31Aと、軸部31bの長さが相違している。具体的には、オスピン31Bは、オス側アンカー筋30に取り付けられたときに、軸部31bが坑口側リング端面11より外側に突出することなく、軸部31bにおいて被係止ピン31aが突出するピン突出面31dが坑口側リング端面11とほぼ同一面を形成し、被係止ピン31aのみが坑口側リング端面11より突出する。すなわち、オスピン31Bの軸部31bの長さL3は、凹部1aの深さL2とほぼ同一の長さに形成されている。標準タイプのリング継手2のオスピン31Bのピン突出面31dにも軸方向に沿って、工具8が係合される係合孔31gが設けられている。
【0043】
標準タイプのリング継手2のオスピン31Bと対応するメス金具5Bは、メス金具5Aと同様に、図2に示すように、楔ケース51に、複数の楔金物52および弾性部材53が内装されており、楔ケース51の先端部513が切羽側リング端面12に配置されてメス側アンカー筋7とともにセグメント1に埋設されている。すなわち、標準タイプのリング継手2のメス金具5Bは、楔ケース51が中空部よりも切羽側リング端面12に嵌入部51aを備えていない点で、メス金具5Aと相違している。
【0044】
標準タイプのリング継手2を用いて向かい合うセグメント1どうしを接続する際には、オスピン31Bが設置されたセグメント1の坑口側リング端面11に設置されたオスピン31Bの被係止ピン31aと、メス金具5Bが設置されたセグメント1の切羽側リング端面12に設置されたメス金具5Bの楔ケース51とを対向させて、互いの軸心が同心となるように位置決めする。
【0045】
この状態で、セグメント1どうしを接続させる方向に押圧力を作用させると、坑口側リング端面11から突出している被係止ピン31aが、楔金物52を伴いながら、楔ケース51の中空部に徐々に挿入されることにより、図8に示すように、被係止ピン31aが楔金物52により係止さる。
【0046】
本実施形態のリング継手2では、オス金具3を構成するオス側アンカー筋30に、オスピン31が接続される被接続部30aに雄ネジを形成する。そして、被接続部30aをセグメント1の坑口側リング端面11に形成された凹部1a内に露出させた状態で、オス側アンカー筋30をセグメント1に埋設している。これにより、オスピン31は、軸部31bがオス側アンカー筋30の被接続部30aが挿入される接続孔31fに雌ネジを有し、かつ、セグメント1の坑口側リング端面11に形成された凹部1aに挿入可能な外形を有していれば、オスピン31の軸部31bがいずれの形状であっても、オス側アンカー筋30に接続することができる。
【0047】
したがって、図4で示すように、オスピン31の軸部31bをセグメント1に形成した凹部1aの深さより長大に形成する、もしくは同一長さに形成するなど、軸部31bの形状を適宜変更したオスピン31を製作しておく。これにより、オス側アンカー筋30及びセグメント1の形状を変更することなく、セグメント1のリング継手2にせん断補強タイプのオス金具3Aもしくは標準タイプのオス金具3Bを設けることが可能となる。
【0048】
このように、セグメント1に埋設するオス側アンカー筋30の形状は変更する必要がないため、セグメント1の製造時には、せん断補強タイプもしくは標準タイプのオス金具3のいずれを設ける場合にも、同じ型枠を用いて製造することが可能となるとともに、製造後の管理などが容易となる。
【0049】
また、本実施形態のリング継手2では、オス側アンカー筋30の被接続部30aに雄ネジを形成し、オスピン31の軸部31bに設ける接続孔31fに雌ネジを形成することにより、オス側アンカー筋30を埋設したセグメント1とオスピン31を、別途、施工現場に搬入し、現場で両者を接続することができる。これにより、オスピン31のような突出部が端面に存在する場合と比較して、セグメント1の搬入作業が容易になる。
【0050】
また、せん断補強タイプのオスピン31Aを接続する場合に、従来では、オス側アンカー筋30の被接続部30a近傍に必要とされていた、拡径部分が不用になる。このため、オス側アンカー筋30の軽量化と相まってリング継手2の軽量化を図ることも可能となる。したがって、リング継手2の取り扱いや搬送などの作業が容易であり、コストを抑えることも可能となる。
【0051】
また、オスピン31A、31Bには、ピン突出面31dに、オスピン31A、31Bを回転させるための工具8のロッド8cが係合される係合孔31gが設けられているので、工具8を用いてオスピン31A、31Bを回転させてオス側アンカー筋30に容易に接続すること、及び、接続されているオスピン31A、31Bを容易に取り外すことが可能となる。すなわち、オスピン31A、31Bを手で把持して回転させるよりも、より確実により強固にオス側アンカー筋30に接続することができ、また、強固に接続されたオスピン31A、31Bを容易に取り外すことが可能となる。
【0052】
上記実施形態においては、オス側アンカー筋30の被接続部30aに雄ネジを形成し、オスピン31の軸部31bに設ける接続孔31fに雌ネジを形成して、オス側アンカー筋30とオスピン31とを接続する例について説明したが、これに限るものではない。例えば、接着剤を用いて接続する、或いは、オスピン31の接続孔31fにオス側アンカー筋30の被接続部30aに圧入するなど、オス側アンカー筋30とオスピン31とが接続可能であれば構わない。
【0053】
また、例えば、オス側アンカー筋30の被接続部30aの外周面に周方向に繋がった外周溝部を形成し、軸部31bの接続孔31fの内周面に周方向に繋がった内周溝部を形成しておき、内周溝部にリング状のバネ部材を収納し、接続孔31fに挿入されて進入するオス側アンカー筋30の被接続部30aによりバネ部材を拡径方向に押し広げ、外周溝部が内周溝部と対向したときにバネ部材が縮径して外周溝部及び内周溝部とに亘って係合することによりオス側アンカー筋30とオスピン31とが接続される構成であっても構わない。
【0054】
本発明のリング継手は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 セグメント
1a 凹部
2 リング継手
3 オス金具
5 メス金具
5A せん断補強タイプのメス金具
5B 標準タイプのメス金具
7 メス側アンカー筋
8工具
8a 工具本体
8b 把持部
8c ロッド
8d 中央開口
11 坑口側リング端面
12 切羽側リング端面
30 オス側アンカー筋
30a 被接続部
30b アンカー筋本体部
31 オスピン
31A せん断補強タイプのオスピン
31B 標準タイプのオスピン
31a 被係止ピン
31b 軸部
31c 粗面
31d ピン突出面
31e 切羽側端面より突出する部位
31f 接続孔
31g 係合孔
51 楔ケース
51a 嵌入部
52 楔金物
53 弾性部材
54 楔ケース
54a 嵌入部
511 傾斜面
512 基端部
513 先端部
L1 せん断補強タイプのオスピンの軸部の長さ
L2 凹部の深さ
L3 標準タイプのオスピンの軸部の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8