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特開2023-167128什器の制御監視システム及びこのシステムに用いられるマスター装置及び検知部子機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167128
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】什器の制御監視システム及びこのシステムに用いられるマスター装置及び検知部子機
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20231116BHJP
   A01K 63/00 20170101ALI20231116BHJP
   A01K 63/06 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A01K63/04 Z
A01K63/00 Z
A01K63/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078050
(22)【出願日】2022-05-11
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】393022746
【氏名又は名称】ジェックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕行
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CA03
2B104CB12
2B104EC24
2B104EF09
(57)【要約】
【課題】複数の什器が設置される場合であっても、効率よく什器及び水槽の制御や監視を行うことが可能な什器の制御監視システムを提供する。
【解決手段】水槽1が複数設置可能な少なくとも1つの什器100と、什器100に設けられ、水槽1に対する制御及び監視を行うマスターユニット200と、マスターユニット200に対して制御指令を与える操作装置Aと、を備えた什器の制御監視システムであって、マスターユニット200は、操作装置Aからの指令を受けて、水槽1に対する給排水制御を行う給排水制御部220と、それぞれの水槽1に設けられたセンサー270,271に基づき、水温及び/又は水質の検知及び表示を行う状態検知部221と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽が複数設置可能な少なくとも1つの什器と、
什器に設けられ、水槽に対する制御及び監視を行うマスター装置と、
マスター装置に対して制御指令を与える操作装置と、を備えた什器の制御監視システムであって、
前記マスター装置は、前記操作装置からの指令を受けて、水槽に対する給排水制御を行う給排水制御部と、
それぞれの水槽に設けられたセンサーに基づき、水温及び/又は水質の検知及び表示を行う状態検知部と、を備えていることを特徴とする什器の制御監視システム。
【請求項2】
それぞれの水槽に設けられた検知部子機を備え、この検知部子機は、水温センサー及び/又は水質センサーと接続されており、計測された水温及び/又は水質を表示する表示部と、水温及び/又は水質のしきい値を設置するしきい値設定部と、前記計測されたデータをマスター装置に送信するデータ送信部と、備えていることを特徴とする請求項1に記載の什器の制御監視システム。
【請求項3】
什器には、設置された水槽の上方に配置された跳ね上げ板が設けられており、
前記検知部子機は、前記跳ね上げ板に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の什器の制御監視システム。
【請求項4】
前記操作装置は、給排水の開始を指令する給排水指令部と、
給排水の指令対象となる什器を選択する什器選択部と、
選択された什器の中の水槽を選択する水槽選択部と、を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の什器の制御監視システム。
【請求項5】
前記操作装置は、水槽の排水レベルを選択する排水レベル選択部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の什器の制御監視システム。
【請求項6】
請求項1に記載の什器の制御監視システムに用いられるマスター装置であって、
操作装置からの指令を受けて、水槽に対する給排水制御を行う給排水制御部と、
それぞれの水槽に設けられたセンサーに基づき、水温及び/又は水質の検知及び表示を行う状態検知部と、を備えたことを特徴とするマスター装置。
【請求項7】
前記給排水制御部は、水槽に対する給水及び排水を自動的に行うためのプログラムが格納されていることを特徴とする請求項6に記載のマスター装置。
【請求項8】
電源系統の電力測定を行う電力測定部と、
電力測定において異常が発生したときに異常表示を行う表示部と、を備えたことを特徴とする請求項6に記載のマスター装置。
【請求項9】
請求項1に記載の什器の制御監視システムに用いられる検知部子機であって、
水温センサー及び/又は水質センサーと接続されており、計測された水温及び/又は水質を表示する表示部と、水温及び/又は水質のしきい値を設置するしきい値設定部と、前記計測されたデータをマスター装置に送信するデータ送信部と、備えていることを特徴とする検知部子機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽が複数設置可能な少なくとも1つの什器と、什器ごとに設けられ、水槽に対する制御及び監視を行うマスター装置とを備えた什器の制御監視システム及びこのシステムに用いられるマスター装置及び検知部子機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットショップなどの店舗では観賞魚等を販売するために水槽が多数配置された什器を設置している。この水槽内には多くの観賞魚生体や水草が貯蔵されており、一般飼育者の水槽環境よりも飼育水の劣化が早くなる。また、生体から排出されるアンモニアを始めとする栄養塩を物理的に取り除くための水替えは健康的に生体を管理するために必要な作業である。
【0003】
このように水槽内の水は時間が経過すると共に汚れてくるために水を排水して新たに給水行う必要がある。
【0004】
また、水槽内の環境を適切に維持するためには水槽内の温度や水質を常時監視し、観賞魚が健康的に飼育できるようにすると共に、水替えの時期を適切に判断できるようにする必要がある。
【0005】
かかる課題に対処するため、下記特許文献1に開示される水槽管理システムが知られている。この水槽管理システムは、水槽の水の温度およびpHを測定する水質検査部と、当該検査部からのデータに基づいて,水槽の水質変化を管理するとともに,測定値,警告等を外部に表示する水質管理部と、当該管理部の出力信号に応じて前記水槽の水に消毒剤,餌,pH調整剤等を添加する水質調整部と、水槽の水量を調整する水量調整部とを備えている。
【0006】
この特許文献1は、1つの水槽だけではなく、複数の水槽に対するシステム構成も開示している。水槽が複数個設置され、各水槽にそれぞれ水質検査部,水量調整部および水質調整部が設置され、各水質検査部から送信された測定データが、1個の水質管理部に送信され、送信された測定データに基づいて水質管理部から各水槽に応じた水質および水量の調整を行うように、各水量調整部および各水質調整部に指令を送信し、各水槽を集中管理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-166421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この水槽管理システムは、複数の水槽に対しては集中管理できるものの、複数の水槽が設置される什器が複数設置される場合の管理に関しては開示がない。店舗において什器が複数設置されることは一般的であり、そのような場合に、什器に設置されたすべての水槽に対して直接的に1つの水質管理部により管理、監視し、さらに、水槽に対する指令を与えることは店舗の作業者にとっては非常に煩雑な作業が要求される。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、複数の什器が設置される場合であっても、効率よく什器及び水槽の制御や監視を行うことが可能な什器の制御監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係る什器の制御監視システムは、
水槽が複数設置可能な少なくとも1つの什器と、
什器に設けられ、水槽に対する制御及び監視を行うマスター装置と、
マスター装置に対して制御指令を与える操作装置と、を備えた什器の制御監視システムであって、
前記マスター装置は、前記操作装置からの指令を受けて、水槽に対する給排水制御を行う給排水制御部と、
それぞれの水槽に設けられたセンサーに基づき、水温及び/又は水質の検知及び表示を行う状態検知部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
かかる構成の什器の制御監視システムの作用・効果を説明する。什器は複数の水槽が設置可能であり、什器に対して水槽に対する制御及び監視を行うマスター装置が設けられる。複数の什器が設置される場合には、それぞれの什器に対してマスター装置が設けられる。マスター装置を介して水槽に対する制御や監視が行われる。また、マスター装置に対する制御指令は、操作装置により行われる。ここで給排水制御とは、給水及び/又は排水の制御である。什器が複数設置される場合には、操作装置により複数の什器に対する指令を集中的に行うことができる。その結果、効率よく什器及び水槽の制御や監視を行うことが可能になる。
【0012】
本発明において、それぞれの水槽に設けられた検知部子機を備え、この検知部子機は、水温センサー及び/又は水質センサーと接続されており、計測された水温及び/又は水質を表示する表示部と、水温及び/又は水質のしきい値を設置するしきい値設定部と、前記計測されたデータをマスター装置に送信するデータ送信部と、を備えていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る什器には、設置された水槽の上方に配置された跳ね上げ板が設けられており、
前記検知部子機は、前記跳ね上げ板に取り付けられていることが好ましい。
【0014】
跳ね上げ板は、水槽内の生体を取り出したり、生体を新たに追加したりするときに、水槽の上方の空間を開放するために設けられる。この既存の構成を利用して検知部子機を取り付けることで、スペースの有効活用を図ることができる。
【0015】
この構成によると、それぞれの水槽に検知部子機が備えられ、各水槽の水温及び/又は水質を計測して表示することができる。これにより、作業者は個々の水槽の環境状況を直接的に確認することができる。また、水温及び/又は水質のしきい値を設置するしきい値設定部が設けられている。水槽で飼育される生体の種類により適切な環境は異なる。そこで、しきい値設定部を設けることで、生体に適した環境の管理を行うことができる。
【0016】
本発明に係る前記操作装置は、給排水の開始を指令する給排水指令部と、
給排水の指令対象となる什器を選択する什器選択部と、
選択された什器の中の水槽を選択する水槽選択部と、を備えたことが好ましい。
【0017】
この操作装置により、給排水の指令をマスター装置に対して行う。ここで什器の選択と水槽の選択を行ったうえで指令を出すことができる。これにより、必要な範囲での水槽の給排水を集中的に効率よく行うことができる。
【0018】
本発明に係る前記操作装置は、水槽の排水レベルを選択する排水レベル選択部を備えたことが好ましい。
【0019】
この構成によると、水槽の水質等の状況を見ながら適切な量の水替えを行うことができる。
【0020】
本発明に係る什器の制御監視システムに用いられるマスター装置であって、
操作装置からの指令を受けて、水槽に対する給排水制御を行う給排水制御部と、
それぞれの水槽に設けられたセンサーに基づき、水温及び/又は水質の検知及び表示を行う状態検知部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
これにより、前述のように、効率よく什器及び水槽の制御や監視を行うことが可能になる。
【0022】
本発明に係る前記給排水制御部は、水槽に対する給水及び排水を自動的に行うためのプログラムが格納されていることが好ましい。
【0023】
かかる構成により、水質等の状況を確認しながら、あるいは、水質等の計測結果に基づいて、排水や給水を自動的に行うことが可能になり、作業者の負担を軽減することができる。
【0024】
本発明において、電源系統の電力測定を行う電力測定部と、
電力測定において異常が発生したときに異常表示を行う表示部と、を備えたことが好ましい。
【0025】
この構成によると、電源系統の電力を常時監視することが可能になり、異常が発生したときの対処を素早く行うことができたり、将来の異常の発生を予測したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】什器の制御監視システムの全体構成を示す模式図
図2】什器及びマスターユニットの概略構成を示す模式図
図3A】検知部子機の表面側の構成を示す図
図3B】検知部子機の裏面側の構成を示す図
図4】什器の制御監視システムの制御ブロック図
図5】操作パネルの操作画面を示す図
図6A】WEB画面の操作画面の構成例を示す図
図6B】選択された什器の各水槽の水温データを表示する画面構成例を示す図
図6C】選択された水槽の電力(W)を示す画面
図6D】選択された什器の給排水指令を行う画面構成例を示す図
図6E】選択された水槽の水温履歴を示す画面
図6F】選択された水槽の電力履歴を示す画面
図7】本実施形態に係る水槽に使用される排水装置
図8】本実施形態に係る排水システム(什器)の構成を示す模式図
図9図8の什器に用いられる給水系の第1実施形態を示す模式図
図10図8の什器に用いられる給水系の第2実施形態を示す模式図
図11】サイフォン機構のみを示す模式的な斜視図
図12図11に示すサイフォン機構の平面図
図13A】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
図13B】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
図13C】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
図13D】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
図14A】第2排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
図14B】第2排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
図15】給排水を行う場合の手順を示すフローチャート
図16A】単独ろ過方式における排水動作を示すフローチャート(第1排水レベル)
図16B】単独ろ過方式における排水動作を示すフローチャート(第2排水レベル)
図16C】集中ろ過方式における排水動作を示すフローチャート(第1排水レベル)
図16D】集中ろ過方式における排水動作を示すフローチャート(第2排水レベル)
【発明を実施するための形態】
【0027】
<システムの全体構成>
本発明に係る什器の制御監視システムの好適な実施形態をまず説明する。図1は、什器の制御監視システムの全体構成を示す模式図である。什器100は複数の水槽を載置して店頭等に設置される。什器100の詳細は後述する。什器100には、マスターユニット200(マスター装置に相当)が搭載される。マスターユニット200は、什器100に搭載されている水槽に対して給排水制御等を行う機能を有する。照明ユニット300は、什器100の照明を点灯するための駆動回路や電源部等を備えている。照明は各水槽に設けられており、例えば、LED照明が用いられるが、その他の種類の照明を使用してもよい。照明ユニット300は、マスターユニット200と接続されており(L2で示す)、点灯及び消灯はマスターユニット200を介して制御される。什器100は、複数設置されており、それぞれの什器100は、マスターユニット200と照明ユニット300を備えている。各什器100の構成であるが、載置される水槽の形状や大きさ個数は必ずしも同じではなく、店舗の都合により、種々の水槽が載置されている。
【0028】
操作装置Aは、什器100(水槽)に対する制御をするためにマスターユニット200に対する指令を行う。操作装置Aは、操作パネル400とWi-Fi等の無線に接続される無線接続装置500を備える。操作パネル400は、マスターユニット200と有線で接続される(L1で示す)。ただし、無線で接続するか有線で接続するかは適宜決めることができる。無線接続装置500は、WEB画面で構成されるシステムと接続され、操作パネル400と部分的に共通の機能を有している。操作パネル400と無線接続装置500の両方を設けて構成してもよいし、いずれか一方を設けて構成してもよい。
【0029】
一例として、操作パネル400は、専用の装置として構成され、無線接続装置500は、WEB画面で構成されるシステムと送受信を行い、パソコン等の汎用コンピュータやスマートフォン等の携帯端末機を用いて、操作パネル400と同様の機能を備えることができる。また、マスターユニット200から収集されたデータをWEB画面で表示する。
【0030】
図1において、マスターユニット200と照明ユニット300は、什器100の上面に設置されているように示されているが、什器100に対してどのような場所に設置するかは適宜決めることができ、特定の場所に限定されるものではない。また、什器100に対して直接設置するか離して設置するかも任意である。操作装置Aに関しても店舗内のどの場所に設置するか、或いは、遠隔で操作できるように設置するかは適宜決めることができる。
【0031】
什器100の設置個数も適宜決めることができるが、1つの操作装置Aにより集中的に制御・管理することができる。什器100の1つに対して1つのマスターユニット200と1つの照明ユニット300が割り当てられるが、各什器100に対する制御指令は1か所に設けられた操作装置Aにより行われる。これにより、複数の什器100を集中して管理(監視)及び制御することができる。
【0032】
<什器の構成>
図2は、什器100及びマスターユニット200の概略構成を示す模式図である。什器100には、多数の水槽1が載置されている。水槽1には、販売のための観賞魚等の生態や水草が飼育されている。
【0033】
図2の右側に示すように、什器100は上段、中段、下段の3段構成であり、上から順に3個、6個、2個の水槽1が載置されている。なお、上記の構成は一例を示すものであり、段数や水槽1の個数は適宜決めることができる。
【0034】
各段には、跳ね上げ板101が設けられており、ヒンジ機構102により、上方に跳ね上げ回転させることができ、水槽1内の生体を取り出したり、生体を新たに追加したりすることができる。なお、跳ね上げ板101自体は周知の構成である。
【0035】
跳ね上げ板101の裏面側には、検知部子機250が設けられている。検知部子機250は、1つの水槽1に対して1つ設けられている。それぞれの水槽1内に水温センサー270と水質センサー271が設けられており(図4参照)、検知部子機250に接続されている。また、検知部子機250は、マスターユニット200と電気的に接続されており、検知部子機250で計測された温度データや水質データは、マスターユニット200に送信される。すなわち、マスターユニット200は検知部親機としての機能を有する。
【0036】
図2の左側は、マスターユニット200の表面(表示部)を示す図である。弁体部インジケーター201は、給排水の状況を示す3つのLEDを有する。給排水を行うときは、後述のように弁体の開閉制御が行われる。右のLED(緑)は常時点灯し、給排水の指令が可能なことを示す。真ん中のLED(黄)が点灯中は給排水を行っていることを示す。このLEDが点灯しているときは、給排水に関する操作は行うことができない。左のLED(赤)は、何らかの異常により給排水ができない状態を示す。
【0037】
電力部インジケーター202は、電力の異常を知らせるものである。異常がない場合には、インジケーターは消灯する。2系統の電力を計測しており、単独ろ過方式の場合、1系統目は水槽用ヒーターの電力、2系統目は、照明、ブロア、貯水槽用ヒーターの電力を監視する。ブロアは、水槽内に空気を送り込む機能を有する。1系統の電力が所定のワット数を超えたときに赤色が点滅して異常をしらせる。
【0038】
集中ろ過方式の場合は、1系統目は水槽用ヒーター、貯水槽用ヒーターの電力、2系統目は、照明、ブロア、ポンプの電力を監視する。なお、単独ろ過方式と集中ろ過方式に関しては、後述する。
【0039】
検知部インジケーター203は、いずれかの水槽1において、水温あるいは水質に異常が発生した場合に知らせるものである。正常な場合は、LEDは消灯したままである。点滅すると、水温または水質の値がしきい値を外れたことを示す。この場合は、給排水等の所定の処置を行うようにする。LEDが点灯した場合は、通信エラー等が発生したことを知らせる。
【0040】
セグメント表示部204は、什器100のユニット番号を示す。図示の例では、2桁の数値で什器100を示す。各什器100に対しては固有の数値が割り当てられている。
【0041】
<検知部子機>
図3Aは、検知部子機250の表面側の構成を示し、図3Bは、検知部子機250の裏面側の構成を示す。水温インジケーター251は、水温がしきい値内の正常値であれば消灯しており、しきい値の範囲を超えた場合は、点滅する。水質インジケーター252は、水質がしきい値内の正常値であれば消灯しており、しきい値の範囲を超えた場合は、点滅する。セグメント表示部253は、水温と水質を交互に表示する。例えば、水温は25℃のように表示し、水質はpH7.0のように表示する。跳ね上げ板101には、穴が形成されており、セグメント表示部204が見えるようにしている。
【0042】
検知部子機250の上部には、通信線接続部254と電源線接続部255が設けられている。水温センサー接続部256は、サーミスタ等の水温センサー270が接続される。水質センサー接続部257は、水質センサー271が接続される。水温センサー270や水質センサー271は、水槽1内の適宜の場所に取り付けられ、また、各センサーは汎用のセンサーを用いることができる。
【0043】
しきい値設定部258が設けられている。水温及び水質に関して上限値と下限値を設定することができる。検知部子機250は、水槽1ごとに設けられるので、水槽1ごとにしきい値の設定が可能である。子機番号設定部259があり、DIPスイッチにより、子機番号を設定することができる。これにより、個々の検知部子機250が取り付けられている水槽1に特定の番号を割り当てることができ、マスターユニット200や操作装置Aにおいて、特定の水槽1の認識ができるようになる。具体的には、図6Bで示すような水槽番号(1-1,1-2等)が割り当てられる。
【0044】
<制御ブロック>
図4は、什器の制御監視システムの制御ブロック図である。マスターユニット200は、給排水制御部220を備え、弁体部Bを構成する種々の弁体の開閉を制御することで、給水及び排水制御を行う。具体的な給排水制御については、後述する。本実施形態においては、給排水のためのプログラム(ソフトウェア)が格納されており、そのプログラムに従って給排水が行われる。また、給排水制御部220は、給排水を自動的に行うためのタイマー機能が設けられており、これに基づいて、プログラムが実行される。
【0045】
状態検知部221は、水槽1の水温や水質の状態(しきい値の範囲であるか否か等)を検知する。検知されたデータ等は、操作装置Aの方に送信される。状態検知部221は、検知部子機250からの計測データに基づいて、水温や水質を検知及び監視するものである。検知した結果は、検知部インジケーター203において表示される。
【0046】
電力測定部222は、前述のように2系統の電力を計測する。異常が発生した場合は、前述のように電力部インジケーター202において表示される。表示部223は、前述のように各種のインジケーター201,202,203を含む。
【0047】
検知部子機250は、表示部260を有し、前述の水質インジケーター252やセグメント表示部253が含まれる。しきい値設定258は、前述のように水温や水質のしきい値を設定する機能を有する。しきい値設定部258は、設定用のボタン等により構成することができる。データ送信部262は、計測された水温や水質データをマスターユニット200に送信する機能を有する。しきい値は上限と下限を設定することができ、設定されたしきい値から外れた場合(異常通知)は、マスターユニット200に送信され、さらに操作装置Aの方にも送信され、WEB画面(図6B図6Eに例示)により、集中管理できるようにする。
【0048】
照明ユニット300は、前述のように、照明部301を構成する照明の駆動を行う。照明はLED等により構成され、什器100や水槽1内の適宜の箇所に照明を与える。
【0049】
操作パネル400は、給排水指令部401、什器選択部402、水槽選択部403、排水レベル選択部404の機能を備えている。後述するWEB画面(図6A図6D)も同じ機能を備えている。
【0050】
<操作パネル>
図5は、操作パネル400の操作画面を示す図である。什器ユニット表示部410は、2桁のセグメント表示を行うものであり、現在選択されている什器100の番号を表示する。什器選択部402は、上下の矢印操作部を操作することで、給排水の対象となる什器100を選択することができる。什器選択部402を操作することで、什器ユニット表示部410の数値が上下する。
【0051】
水槽選択部403には、上段、中段、下段を指定するボタンが設けられている。図2で説明したように、什器100が3段構成になっていることに対応したボタン配置である。上段、中段、下段のすべてのボタンを押すと、その什器100の載置されているすべての水槽1が給排水制御の対象になる。ボタンを押すとそれに隣接したランプが点灯するので、各段の選択状態を視認することができる。また、上段、中段、下段のうち、任意の1つまたは2つを選択することもできる。水質の状態を見ながら適切な選択を行うことができる。
【0052】
排水レベル選択部404は、第1排水レベルか第2排水レベルかのいずれかを選択するボタンである。第1排水レベルと第2排水レベルの詳細については後述する。水槽1の水質汚染度等を考慮して、排水量の適切な設定を行うことができる。ボタンを押すとそれに隣接したランプが点灯するので、いずれの排水レベルが選択されているのかを視認することができる。
【0053】
給排水指令部401には、実行ボタンと停止ボタンが設けられている。実行ボタンを押すと、選択された什器100の給排水が実行される。停止ボタンを押すと、給排水動作が停止される。実行ボタン401を押すと、それに隣接したランプが点灯して給排水が実行中であることを知らせる。
【0054】
貯水槽給水ボタン411とろ過水槽給水ボタン412が設けられており、後述の集中ろ過方式の場合に使用される。ボタンを押すと、それに隣接したランプが点灯して給水処理が実行中であることを知らせる。
【0055】
主電源ボタン413は、操作パネル400を使用するためのボタンである。主電源ボタン413を押すと、隣接したランプが点灯し、もう一度押すとランプが消灯し電源オフ状態になる。照明ボタン414は、什器100及び水槽1の各箇所の照明を一括してオンオフするためのボタンである。照明ボタン414を押すと、すべての照明が一括して点灯し、もう一度押すと一括して消灯する。照明が点灯している間は、ボタンに隣接したランプが点灯する。なお、各種のボタンはタッチ式の操作ボタンである。
【0056】
<WEB画面>
図6A図6Fは、無線接続装置500からWi-Fi等で接続されたWEBシステムの操作画面の構成例を示す図である。図6Aは、什器選択画面を示す。什器選択部501には、什器100を選択するためのボタンが配置されている。什器番号がボタンに表示されており、いずれかを選択することができる。これは、操作パネル400の什器選択部402と同じ機能を有する。照明ボタン502は、操作パネル400の照明ボタン414と同じ機能である。給排水ボタン503を押すと図6Dに示す画面に移行する。切替ボタン504は、水温、水質、電力の切り替え表示をするボタンである。なお、各種のボタンはWEB画面上の操作ボタンである。
【0057】
図6Dは、給排水を実行するための画面構成を示す。ここに示す各種のボタンは、図5で説明した水槽選択部403、排水レベル選択部404、給排水指令部401と同じ機能を有する。
【0058】
図6Aにおいて、什器番号01を選択し、切替ボタン504で水温を選択すると、図6Bの画面に移行する。ここには、什器100に載置されている水槽1が模式的に表示されている。水槽1を示す枠の中には数値が示されており、上の数字は水槽番号(1-1,1-2等)を示し、下の数字は水温(24.5,25.0等)を示す。この画面により、各水槽の水温の状態を一目で確認することができる。この画面において、水槽を選択すると、更に詳細な状況を確認することができる。ここでは、模式的に水槽1が表示されており、図2における水槽1の配置に対応している。表示される水温は、マスターユニット200から送信されたデータになる。
【0059】
図6Eは、図6Bの画面において選択された水槽の水温履歴が表示されている。横軸が時間であり、縦軸が水温を示す。このグラフから水温の状態を監視することができる。また、しきい値の範囲から外れているか否かも確認することができる。このしきい値は、検知部子機250において設定された数値になる。
【0060】
図6Cは、選択された水槽の電力(W)を示す画面である。前述のように、2系統の電力を計測しており、その計測値(単位W)が表示されている。図6Eは、電力履歴を表示する画面である。これにより、電力の状態を監視することができる。また、電力値に異常が発生していないかどうかを確認することができる。この電力値は、マスターユニット200の電力測定部222において測定されたデータである。
【0061】
<サイフォン機構の構成>
図7は、本実施形態に係る排水装置の構成を示す模式図である。排水装置は、仕切板29(図7において破線で示す。)により囲まれている。仕切板29は、平面視でL字形をしており、水槽1の角部を取り囲んで観賞魚(生体)が溢水管3の周囲に近づかないようにしている。これにより、排水時に観賞魚が巻き込まれないようにしている。また、仕切板29の上部と下部には複数のスリット29aが形成されており、水槽内の水が通過できるようにしている。
【0062】
排水装置は、サイフォン機構2を備えている。サイフォン機構2は、サイフォン管20と円筒部30により構成されている。サイフォン管20は、溢水管3に接続されている。図11は、サイフォン機構2のみを示す模式的な斜視図である。図12は、図11に示すサイフォン機構2の平面図である。
【0063】
サイフォン管20は、全体としてU字管の形状を呈している。サイフォン管20は、第1垂直管部21、U字管部22、第2垂直管部23、接続管部24により構成される。なお、サイフォン管20をどのような形状に構成するか、いくつの管部で構成するかは、適宜選択することができる。第1垂直管部21、U字管部22、第2垂直管部23、接続管部24は、ガラスや樹脂等の適宜の素材で形成され、また、管同士の接続は、詰まり等の清掃ができるよう、図6の第一垂直管部21、U字管部22、第2垂直管部23は取り外し可能な構造が好ましい。
【0064】
第1垂直管部21は上端が開放された第1開口部21aを有する。U字管部22は、開放された2カ所の上端部が、第1垂直管部21の下端部と、第2垂直管部23の下端部に連結される。第2垂直管部23は、下端部がU字管部22の上端部の1つに連結され、上端部が接続管部24の下端部に連結される。接続管部24は、逆L字形を呈しており、下端部は第2垂直管部23の上端部に連結され、水平方向向きの端部(第1接続部24a)は溢水管3の中央部近傍に接続される。溢水管3は、垂直に設置されており、上端には開放された開口部3aが形成され、下端にも開放された開口部3bが形成される。溢水管3の上端を超えて水を入れようとしてもオーバーフローして溢水管3の内部に流れ込むようになっている。すなわち、溢水管3は円筒形を呈している。また、生体入荷時に水温や水質合わせを行うため、所定時間水槽1に生体袋を浮かせることがある。その際、溢水管3を設けることで、水槽1より水が溢れることを防止している。生体入荷時は溢水管3から水が排水され、且つ特許文献1の構造のようにサイフォン作用が開始することはない。すなわち、生体入荷時に意図しないサイフォン管による排水が開始されることがない。
【0065】
円筒部30は、サイフォン管20の第1垂直管部21の第1開口部21aが挿入されるように、下端に第2開口部30aが形成される。円筒部30の内径は第1垂直管部21の外径よりも大きくなるように設定されている。これにより、円筒部30とサイフォン管20との間に隙間Sが形成される。また、第2開口部30aは、第1開口部21aよりも低い位置になるように設定される。
【0066】
円筒部30の上部は半球状に形成されて閉塞されているが、中央部に第2接続部30bが設けられている。詳細は後述するが、この第2接続部30bを介して空気の流入や排出が行われる。
【0067】
<排水システムの構成>
次に本発明に係る排水システムの構成を説明する。図8は、什器100に設けられる排水システムの概要を示す模式図である。説明の便宜上、排水システムに関係のない要素は省略している。図9は、什器100に用いられる給水系の第1実施形態の構成を示す模式図である。説明の便宜上、他の要素は省略している。図10は、什器に用いられる給水系の第2実施形態の構成を示す模式図である。説明の便宜上、他の要素は省略している。本発明として、いずれの実施形態を採用してもよい。
【0068】
図8に示すように、店舗等に設置される什器100は、不図示の陳列棚に多数の水槽1が配置されている。水槽1の配置形態は図2に示したのと同じである。各水槽1には、図7で説明した排水装置が設けられている。
【0069】
各段の水槽1の上部には、空気流入排出管40が水平状態に設けられており、垂直に配置された空気供給管45を介してエアポンプ5からの空気が送り込まれる。空気流入排出管40と空気供給管45は、継手46により連結されている。空気流入排出管40には、第1弁体41と第2弁体42(これらは図4の弁体部Bに含まれる要素である。)が設けられている。これら弁体は給排水制御部220により制御される。排水装置に空気を送り込むときは、第1弁体41を開放することで、エアポンプ5からの空気が排水装置に流入する。第2弁体42の外側(図の左側)は大気に開放されており、第2弁体42を開放することで、排水装置内の空気を大気に開放することができる。
【0070】
空気流入排出管40と第2接続部30bとは、一方コック43と垂直管44を介して接続されている。エアポンプ5、第1弁体41、第2弁体42を制御することで、サイフォン機構2の第2接続部30bは、エアポンプ5または大気と選択的に接続することができる。例えば、第1弁体41を開放して、第2弁体42を閉塞することで、エアポンプ5から空気をサイフォン機構2の円筒部30内へ送り込むことができる。また、第1弁体41を閉塞して第2弁体42を開放することで、円筒部30内部の空気を大気へ逃がすことができる。垂直管44として、例えば、柔軟性を有するエアチューブを用いることができる。
【0071】
エアポンプ5から第1弁体41を通り第2接続部30bまでの流路が第1流路に相当し、大気に通じる第2弁体42から第2接続部30bまでの流路が第2流路に相当する。
【0072】
なお、各水槽1には空気(酸素)を常時供給する必要があるが、これも上記エアポンプ5により行われる。エアポンプ5からの配管を分岐させて、サイフォン機構への空気供給と水槽内への空気供給を行うことができる。あるいは、エアポンプ5は1つであるが、別々の独立した配管構成にしてもよいし、別々のエアポンプを用いてもよい。
【0073】
図8に示すように、溢水管3の中に流れ込んだ水は、溢水管3の下端にある開口部3bから落下する。矢印8で示すように、落下した水は、ちょうど真下にある溢水管3の開口部3aに入り込む。そのために、上段の溢水管3の開口部3bと中段の溢水管3の開口部3aをつなぐための流路として不図示のアタッチメントが設けられる。このアタッチメントは着脱可能である。なお、アタッチメントにより開口部3aからの水の流入が妨げられないように径の大きさが設定されている。
【0074】
中段の溢水管3から下段の溢水管3へと水が落下する場合も同様なアタッチメントが設けられる。下段の溢水管3から落下する水については、図9及び図10により説明する。なお、溢水管3から排出される水の流路構成については、上記に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することができる。例えば、水平に配置された排水管に集水することができるように構成してもよい。
【0075】
<単独ろ過方式>
図9は、単独濾過方式の給水系の構成を示す。図8で説明した排水システムが用いられているが説明の便宜上、図示は省略する。水槽1の水は汚染してくるので水をろ過する機構は必要であるが、単独濾過方式では個々の水槽1に濾過装置が用いられている。なお、ろ過装置は周知のものを使用でき、図示及び説明は省略する。
【0076】
什器100の上部には貯水槽6が配置される。貯水槽6から各水槽1へ水(飼育水)が供給される。貯水槽6内にはフロート弁6aが設けられており、満水になると弁体66(貯水槽弁体に相当)を閉鎖するように動作する。貯水槽6には、弁体66と手動バルブ67が設けられており、通常は弁体66を介して上流側から水道水が供給される。故障等で弁体66が使用できないときは、手動バルブ67を操作して水を供給できるようにする。
【0077】
什器100の各段の上部には第1水平配管61(3カ所)と第2水平配管60(1カ所)が配置される。第1水平配管61及び第2水平配管60は、左右で垂直配管62(2カ所)と接続される。第1水平配管61の左右両側には弁体63(給水弁体に相当)と手動バルブ64が設けられている。各水槽1には弁体65が設けられている。通常は、弁体63を開放することで、貯水槽6から各水槽1へ水が供給される。故障等で弁体63が使用できないときは、手動バルブ64を操作して水を供給できるようにする。弁体63、弁体65,66は給排水制御部220により開放及び閉塞が制御される。
【0078】
下段にある水槽1の溢水管3から落下した水は、水平に配置された排水管80により集水されて回収管68により、不図示の排水経路に送られる。回収管68にはセンサーが設けられており、通過する水量の検出を行う。回収管68は斜めカット68aが形成されており、水量を検出しやすいようにしている。このセンサーにより排水状態(開始及び終了)の検出が可能である。
【0079】
排水や給水のための指令は、前述の操作パネル400あるいは無線接続装置500を介して行われる。
【0080】
<集中ろ過方式>
図10は、集中ろ過方式の給水系の構成を示す。図8説明した排水システムが用いられているが説明の便宜上、図示は省略する。什器100の上部に配置される貯水槽6に関連した構成は図8と同じである。什器100の下部にろ過水槽7が配置されており、このろ過水槽7でろ過された水が各水槽1に供給される。従って、各水槽1にはろ過装置は設けられていない。
【0081】
ろ過水槽7にはフロート弁7aが設けられ、満水になると弁体76(貯水槽弁体に相当)を閉塞する。貯水槽6とろ過水槽7は垂直配管70により接続される。弁体76が設けられ、弁体76を開放することで水がろ過水槽7に供給される。故障等で弁体76が使用できないときは、手動バルブ77を操作して水を供給できるようにする。図10に示す各弁体は給排水制御部220により制御される。
【0082】
ろ過水槽7から各水槽1への給水は、水平配管73と垂直配管72により行われる。弁体75(給水弁体に相当)を開放することで、給水ポンプ71により各水槽1に水が供給される。各水槽1には給水バルブ74が設けられており、水が水槽内へ供給される。各水槽1において排水装置により排水された水は、各水槽1に設けられた溢水管3を介して、再びろ過水槽7へ送り込まれ、ろ過された状態で再び各水槽1へ供給される。このように水はろ過されながら循環して使用される。なお水が循環する場合は、排水装置の溢水管3からオーバーフローした水がろ過水槽7へ戻るようになっている。上段から中段、中段から下段への水の移動は、前述のように不図示のアタッチメントにより矢印8に沿って行われる。
【0083】
また、下段の水槽1の溢水管3から落下した水は、水平方向の配管80により集水され、垂直方向の配管81によりろ過水槽7へ戻される。ろ過水槽7に戻された水は、ろ過された後、再び、給水ポンプ71により各水槽1へ送られる。
【0084】
サイフォン機構2による水の排出を行うときは、垂直配管72の弁体75は閉塞される。この場合、弁体72を開放させて給水ポンプ71により送り出される水は、弁体72を介してろ過水槽7に戻されるようにしている。弁体72は、通常の使用状態では閉塞させている。
【0085】
ろ過水槽7には、排出口78が設けられている。各水槽1のサイフォン機構2により水の排出を行う場合、多くの排水がろ過水槽7に流れ込むことになるので、オーバーフローした水は排出口78から排出されるようにしている。
【0086】
<排水作用>
次に、図7図8図11で説明した排水装置及び排水システムの作用について説明する。本実施形態では、水替えのため水槽1の水を排出する場合、その排水量を2段階(第1排水レベル及び第2排水レベル)に設定することができる。
【0087】
図13A図13Dは、第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図である。サイフォン機構を動作させない(水替えによる排水をさせない)状態では、図8における第1弁体41を開放し、第2弁体42を閉塞する。そして、エアポンプ5により各水槽1のサイフォン機構2に空気が送り込まれる。図13Aに示すように、円筒部30の開口部30aの位置まで空気が入り込んでいる。空気が入り込んでいる領域を斜めの破線で示している。隙間Sには空気が入り込んでおり、サイフォン機構2によるサイフォン作用は行われない。この状態では水面W1は溢水管3の上端の開口部3aに位置している。第1弁体41、第2弁体42に対する制御は、給排水制御部220により行われる(図4参照)。
【0088】
円筒部30の内部は空気の圧力が一定にかかる状態にするため、サイフォン管はU字形に形成して、溢水管3の中央部で溢水管3と接続するようにしている。これにより、U字管部22を含めたU字形の部分に水を常時蓄えている状態になり、安定した状態で空気圧を掛けておくことができる。
【0089】
<給排水の手順>
次に、給排水を行う場合の手順を図15のフローチャートにより説明する。まず、操作パネル400の主電源ボタン413をオンにする(S100)。次に、給排水の対象となる什器100の選択を行う(S101)。什器選択部402の上下の矢印ボタンを操作し、什器ユニット表示部410で什器番号の確認をする。このとき、マスターユニット200におけるセグメント表示部204の数値(什器番号)が点滅し、対象になっている什器100の確認を行うことができる。
【0090】
次に、給排水の対象となる水槽の選択を水槽選択部403により行う(S102)。具体的には、上段、中段、下段の選択を行うことができる。すべての水槽の水替えを行うときは、すべての段のボタンを押す。
【0091】
次に、給排水のレベルを設定する(S103)。排水レベル選択部404により第1排水レベルか第2排水レベルかのいずれかを選択する。次に、給排水指令部401の実行ボタンを押すことで、給排水が開始する(S104)。実行ボタンを押すと、マスターユニット200の弁体部インジケーター201が点灯する。給排水の動作は、排水レベルの選択と、ろ過方式により異なるので、以下、順を追って説明する。
【0092】
<第1排水レベルの排水動作(単独ろ過方式)>
まず、図9に示す単独ろ過方式における排水動作について図16Aのフローチャートにより説明する。排水動作を開始するために、前述のように実行ボタンを操作する。これにより、サイフォン機構3が作動することになり、第1弁体41を閉塞し(S11)、次いで第2弁体42を開放する(S12)。ステップS11とステップS12の時間間隔は適宜設定することができる。これにより、円筒部30の第2接続部30bは大気に接続され、円筒部30内の空気が押し出されていく。これにより、水槽1の水は図13B及び図13Dの矢印で示すように、隙間Sから円筒部30内に入り込み、サイフォン作用が開始する。隙間Sに入り込んだ水は、さらにサイフォン管20内に入り込み、溢水管3内へと移動する。これにより、水面W1は徐々に低下していき、排水作用が進行する。なお、ステップS11とステップS12は同時に行われてもよい。
【0093】
図13Cに示すように、水面W2がサイフォン管20の第1開口部21aの高さまで低下したときにサイフォン作用は終了し排水動作が完了する。なお、第2接続部30bは大気に開放されたままであるので空気は第1開口部21aの位置まで存在する。
【0094】
排水動作の完了は、給排水制御部220のタイマー機能に基づき、第1所定時間が経過したか否かにより判断される(S20)。第1所定時間については、水面W2が第1開口部21aの高さまで低下する時間を考慮して予め設定記憶させることができる。第1所定時間は、操作パネル101による指令時あるいはステップS11を基準とした経過時間として設定される。
【0095】
第1所定時間経過後は、引き続く給水動作の開始のため、第2弁体41を閉塞し(S22)、次いで第1弁体41を開放する(S23)。ステップS22とステップS23の時間間隔は適宜設定することができる。なお、ステップS22とステップS23は同時に行われてもよい。
【0096】
<第2排水レベルの排水動作(単独ろ過方式)>
まず、図9に示す単独ろ過方式における排水動作について図16Bのフローチャートにより説明する。
【0097】
図14A図14Bは、第2排水レベルにおけるサイフォン機構2の作用を説明する図である。サイフォン機構2を動作させない状態は、前述の通りである。
【0098】
サイフォン機構2を作用させるときは、まず、第1弁体41を閉塞し(S11)、第2弁体42を開放する(S12)。ここまでは図11Aで説明したのと同じである。円筒部30内の空気が大気に開放され、円筒部30内に隙間Sを介して水が入り込んでくる(図14A)。これにより、水面W2は徐々に低下する。そして、円筒部30内に水が満たされた状態になると、第2弁体42を開放から閉塞へと切り替える(S14)。
【0099】
第2弁体42を開放から閉塞へと切り替えるタイミングは、給排水制御部220のタイマー機能に基づき、第2所定時間が経過したか否かにより行われる(S13)。第2所定時間については、円筒部30内に水が満たされた状態になるまでの時間を考慮して予め設定記憶させることができる。第2所定時間が経過すると第2弁体42を閉鎖する。
【0100】
図14Bに示すように、水面W3が円筒部30の下端の第2開口部30aの位置にまで低下すると、第2開口部30aから円筒部30内に空気が入り込むため、サイフォン作用による排水作用は終了する。排水作用が完了すると、第1弁体41を開放する(S22)。第1弁体41を開放するタイミングは、ステップS14の後、第3所定時間を経過したか否かにより判断される(S20)第3所定時間は、水面W3が第2開口部30aの位置にまで低下する時間を考慮して予め設定記憶させることができる。
【0101】
以上の通り、2段階のレベルで排水を行うことができる。いずれのレベルの水位で排水させるかについては、操作パネル400の排水レベル選択部404により作業者が選択することができる。排水作業の開始については、水槽内の水の汚染度などを確認して、排水を開始することができる。
【0102】
また、水替えのための排水作業は、タイマー機能を用いて、定期的に自動的に行われるようにしてもよい。また、排水を開始する時間帯も予め設定しておき、その時間が来たら自動的に開始するようにしてもよい。各段ごとに設定を変えることもできる。どのような排水を行わせるかは、予め、コンピュータプログラムを作成して行うようにしてもよい。
【0103】
<第1排水レベルの排水動作(集中ろ過方式)>
次に、集中ろ過方式における第1排水レベルの排水動作について図16Cのフローチャートにより説明する。
【0104】
集中ろ過方式の場合、第1弁体41と第2弁体42に対する制御に先立ち、弁体72を開放し(S1)、次いで弁体75を閉鎖する(S2)。排水動作中は各水槽1に給水が行われないようにするためである。なお、ステップS1とステップS2は同時に行ってもよい。
【0105】
その後、実際に排水動作が行われるが、ステップS11~ステップS22は、図16Aの場合と同じなので説明を省略する。
【0106】
<第2排水レベルの排水動作(単独ろ過方式)>
次に、集中ろ過方式における第2排水レベルの排水動作について図16Dのフローチャートにより説明する。
【0107】
ステップS1,ステップS2は、図16Cと同じである。ステップS11~ステップS22までは、図16Bと同じである。従って、説明を省略する。
【0108】
<給水作用>
次に、排水動作が終わった後の給水動作を説明する。給水動作の開始は、排水動作が完了したのちに自動的に開始される。
【0109】
<第1排水レベルの給水動作(単独ろ過方式)>
第1排水レベルにおける給水動作は、すでに排水動作で説明した図16Aのフローチャートに示される。ステップS22の第1弁体41が開放された後、給水弁体(弁体63)を開放する(S23)。これにより、選択された水槽1への給水が開始する。第4所定時間経過後(S30)給水弁体を閉鎖し(S31)水槽1への給水が終了する。なお、第4所定時間は、給水が完了する時間を考慮して予め設定記憶させることができる。
【0110】
水槽1への給水が完了したのち、貯水槽6への給水を行う。これは、貯水槽給水ボタン411を押すことで開始することができる。まず、貯水槽弁体(弁体66)を開放する(S32)。これにより、貯水槽6への給水が開始する。第5所定時間経過後(S33)貯水槽弁体を閉鎖し(S34)貯水槽6への給水が完了する。以上のように、排水動作が完了したのちの水槽1への給水や貯水槽6への給水も自動的に行われる。これは、以下説明する内容についても同様である。
【0111】
<第2排水レベルの給水動作(単独ろ過方式)>
第2排水レベルにおける給水動作は、すでに排水動作で説明した図16Bのフローチャートに示される。ステップS23~ステップS34は、図16Aの場合と同じであるので説明を省略する。
【0112】
<第1排水レベルの給水動作(集中ろ過方式)>
第1排水レベルにおける給水動作は、すでに排水動作で説明した図16Cのフローチャートに示される。ステップS22の第1弁体41を開放したのち、弁体75(給水弁体)を開放し(S3)、次いで弁体72を閉鎖する(S4)。これにより、ろ過水槽7から各水槽1への給水が可能な状態になる。なお、ステップS3とステップS4は同時に行われてもよい。ステップS4以後のステップS23~ステップS34は、図16A図16Bと同じであるので説明を省略する。
【0113】
<第2排水レベルの給水動作(集中ろ過方式)>
第2排水レベルにおける給水動作は、すでに排水動作で説明した図16Dのフローチャートに示される。ステップS1,ステップS2は、図16Cの場合と同じである。ステップS11~ステップS22は、図16Bの場合と同じである。ステップS3,ステップS4は、ステップS23~ステップ34は、図16Cの場合と同じである。従って、説明は省略する。なお、ろ過水槽7への給水は、ろ過水槽給水ボタン412を押すことで開始することができる。
【0114】
<給水動作終了の別実施形態>
給水動作の終了は、例えば、図9に示す回収管68に設けられたセンサーに基づいて終了を検出するようにしてもよい。すなわち、水槽1への給水が継続すると、オーバーフローした水が溢水管3の開口部3aから入り込むため、その水量を検出することで給水終了を検出することができる。その他、給水開始からの時間により終了を検知する方法や、各水槽1にフロート弁を設けることでも給水を停止することができる。
【0115】
各水槽1への給水が終了すると、上述のように貯水槽6への水道水の給水が行われるが、満水状態になると、フロート弁6aにより、弁体66を閉塞させる構成を採用してもよい。
【0116】
本実施形態における各場所に設置される弁体は、例えば、電磁弁で構成されるものであり、これにより、指令信号に基づいて自動的に閉鎖・開放制御することができる。
【0117】
本実施形態では、段ごとに水槽1の排出動作が制御される。単独ろ過方式の場合にすべての段を選択した場合は、上段→中段→下段の順に、上の段から排水と給水が交互に行われる。すなわち、上段の排水と給水が完了したのちに、中段の給排水が行われる。最後に貯水槽6の給水が行われる。上段と中段のように2つの段を選択した場合も、同じように上段から給排水が実行される。
【0118】
本実施形態では、個々の水槽1の選択はできないような構成であるが、個々の水槽1が選択できるようなシステム構成を採用してもよい。
【0119】
集中ろ過方式の場合にすべての段を選択した場合は、上段→中段→下段の順に排水が行われる。次いで、ろ過水槽7への給水と貯水槽6への給水が行われる。2つの段を選択した場合も、上の段から排水が行われる。
【0120】
特定の水槽1の水替えができないようにすることも可能である。そのため水槽ごとに一方コック43を閉鎖できるようにすることで、円筒部30内の空気圧を保持したまま排水を停止させることができる。また、排水を行わない水槽1については給水バルブ65も閉鎖して給水がされないようにする。一方コック43を閉鎖は、手動で行うようにしてもよいし、一方コック43に代えて電磁弁を採用し、制御部100により自動制御できるようにしてもよい。
【0121】
<別実施形態>
本実施形態においては、什器が複数設置される例を挙げて説明したが、本発明に係る什器の制御監視システムは、什器が1つであっても構成可能である。また、什器の設置個数を店舗の都合により増減することも可能である。
【0122】
マスター装置(マスターユニット)は、什器100に設けられているが、什器100に対してどの場所に設置するかは作業者の使い勝手を考慮して決めることができる。什器に直接設置するか否かも任意に決めることができる。
【0123】
水槽に対する給排水制御とは、水槽1への給水及び排水に対する制御だけでなく、給水か排水のいずれかに対する制御も含む概念とする。また、水槽1への給水とは、水槽1内への直接の給水のみならず、水槽へ給水するための貯水槽6への給水も含むものとする。
【0124】
排水レベル選択部404は、2段階の排水レベルを選択できるようにしているが、3段階以上の排水レベルを選択できるように構成してもよい。
【0125】
本実施形態では、照明の点灯及び消灯は一括して行われるが、什器や水槽を選択して点灯/消灯ができるようにしてもよい。また、個々の照明部にスイッチを設けて、個別にオンオフできるような機能を設けていてもよい。
【0126】
本実施形態では、各水槽において、水温センサーと水質センサーの両方を備えているが、いずれか一方のみでもよい。
【0127】
本実施形態において、操作装置Aは、操作パネル400と無線接続装置500(WEB画面による操作)により構成されているが、操作装置Aとして、操作パネル400のみでシステムを構成してもよく、無線接続装置500(WEB画面)のみでシステムを構成してもよい。また、マスターユニット200との接続は、無線であってもよく、有線であってもよい。
【符号の説明】
【0128】
A 操作装置
B 弁体部
1 水槽
2 サイフォン機構
6 貯水槽
7 ろ過水槽
100 什器
200 マスターユニット
220 給排水制御部
221 状態検知部
222 電力測定部
250 検知部子機
258 しきい値設定部
260 表示部
262 データ送信部
270 水温センサー
271 水質センサー
300 照明ユニット
400 操作パネル
401 給排水指令部
402 什器選択部
403 水槽選択部
404 排水レベル選択部
500 無線接続装置
501 什器選択部
502 照明ボタン
503 給排水ボタン
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図16C
図16D