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  • 特開-排液補助具及び施工面の保護工法 図1
  • 特開-排液補助具及び施工面の保護工法 図2
  • 特開-排液補助具及び施工面の保護工法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167135
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】排液補助具及び施工面の保護工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E02D17/20 106
E02D17/20 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078070
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二見 肇彦
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DC06
2D044EA03
(57)【要約】
【課題】吹付層に水膨れが生じるのを防止するための排液補助具、及び吹付層に水膨れが生じるおそれのない施工面の保護工法を提供する。
【解決手段】排液補助具1は、台座部10、排管部30、接続部20を有する。接続部20は排管部30と連通する空隙部21を有し、台座部10は空隙部21と連通する通し穴11を有する。施工面Tから染み出した水分は通し穴11及び空隙部21を通して排管部30に導かれ、台座部10に塗布された接着剤Sは通し穴11を通して空隙部21に至る構成とされている。また、施工面の保護工法においては、上記排液補助具1を用意し、台座部10に接着材Sを塗布して施工面Tに取り付け、排液補助具1の上から吹付材を吹き付けて吹付層Jを形成し、その後、吹付層Jから突出する排管部30を切断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面に接着される台座部と、前記施工面から染み出した水分が導かれる排管部と、前記台座部及び前記排管部の間に介在された接続部とを有し、
前記接続部は、前記排管部と連通する空隙部を有し、
前記台座部は、前記空隙部と連通する通し穴を有し、
前記施工面から染み出した水分は前記通し穴及び前記空隙部を通して前記排管部に導かれ、前記台座部に塗布された接着剤は前記通し穴を通して前記空隙部に至る構成とされている、
ことを特徴とする排液補助具。
【請求項2】
前記台座部が円形状であり、
前記空隙部は、径が前記台座部の径の0.2~0.5倍で、かつ深さが1~5mmである、
請求項1に記載の排液補助具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排液補助具を用意し、
前記排液補助具の台座部に接着材を塗布して施工面に取り付け、
前記排液補助具の上から前記施工面に吹付材を吹き付けて前記施工面の表面に吹付層を形成し、
その後、前記吹付層から突出する前記排液補助具の排管部を切断する、
ことを特徴とする施工面の保護工法。
【請求項4】
前記排液補助具を、前記施工面において3mm以下の亀裂を有する部分に取り付ける、
請求項3に記載の施工面の保護工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排液補助具及び施工面の保護工法に関するものである。より詳細には、施工面から染み出す水分の排出を促す排液補助具、及びモルタルやコンクリート等で保護された法面等からなる施工面の保護工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、法面等はモルタルやコンクリート等が吹き付けられ、更にその上から樹脂等が吹き付けられて、その保護が図られ、又は補修が図られていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
しかしながら、例えば、モルタルやコンクリート等の表面に樹脂層等の吹付層が設けられると、法面等から染み出した水分(漏水等)によって吹付層に水膨れが生じることが問題視されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-17281号公報
【特許文献2】特開2017-160732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする主たる課題は、吹付層に水膨れが生じるのを防止するための排液補助具、及び吹付層に水膨れが生じるおそれのない施工面の保護工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
(請求項1に記載の手段)
施工面に接着される台座部と、前記施工面から染み出した水分が導かれる排管部と、前記台座部及び前記排管部の間に介在された接続部とを有し、
前記接続部は、前記排管部と連通する空隙部を有し、
前記台座部は、前記空隙部と連通する通し穴を有し、
前記施工面から染み出した水分は前記通し穴及び前記空隙部を通して前記排管部に導かれ、前記台座部に塗布された接着剤は前記通し穴を通して前記空隙部に至る構成とされている、
ことを特徴とする排液補助具。
【0007】
(請求項2に記載の手段)
前記台座部が円形状であり、
前記空隙部は、径が前記台座部の径の0.2~0.5倍で、かつ深さが1~5mmである、
請求項1に記載の排液補助具。
【0008】
(請求項3に記載の手段)
請求項1又は請求項2に記載の排液補助具を用意し、
前記排液補助具の台座部に接着材を塗布して施工面に取り付け、
前記排液補助具の上から前記施工面に吹付材を吹き付けて前記施工面の表面に吹付層を形成し、
その後、前記吹付層から突出する前記排液補助具の排管部を切断する、
ことを特徴とする施工面の保護工法。
【0009】
(請求項4に記載の手段)
前記排液補助具を、前記施工面において3mm以下の亀裂を有する部分に取り付ける、
請求項3に記載の施工面の保護工法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、吹付層に水膨れが生じるのを防止するための排液補助具、及び吹付層に水膨れが生じるおそれのない施工面の保護工法になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】排液補助具の縦断面図である。
図2】排液補助具の底面図である。
図3】施工面の保護工法の手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0013】
(排液補助具)
図1及び図2に、本形態の排液補助具1を示した。本形態の排液補助具1は、台座部10、接続部20、及び排管部30で主になる。
【0014】
台座部10は、平面視で(施工面Tに向かって見た場合に)真円形状、楕円形状等の円形状、正方形状、長方形状等の方形状、任意の形状などにすることができる。ただし、本形態の台座部10は、図2に示すように、平面視で真円形状である。真円形状であると、台座部10の一方の表面10a(後述)に塗布された接着剤Sの広がりが均一になる。
【0015】
台座部10は、平面視で中央部に通し穴11を有する。この通し穴11は、本形態では真円形状である。したがって、本形態の台座部10は、円盤状、あるいはレコード盤状と言うことができる。なお、通し穴11の中心と台座部10の中心とは、同一である。
【0016】
台座部10は、一方の表面10a及び他方の表面10bを有する平板状である。一方の表面10aは、施工面T側に位置する。また、他方の表面10bは、施工面Tの反対側に位置する。台座部10の一方の表面10aには、接着剤Sが塗布される。この接着剤Sによって、台座部10を有する排液補助具1は、施工面Tに接着され、取り付けられる。
【0017】
接着剤Sは、台座部10の一方の表面10aの一部に塗布されても、全部(全面)に塗布されてもよい。ただし、少なくとも台座部10の一方の表面10aに一周にわたって塗布されるのが好ましい。
【0018】
なお、接着剤Sとしては、例えば、有機系接着剤の天然系と合成系(熱可塑性樹脂系、熱硬化性樹脂系、エラストマー系)等を使用することができる。また、台座部10の厚さは、例えば1~5mmとすることができる。
【0019】
排管部30は、管状(パイプ状)、あるいは円筒状である。したがって、排管部30は、内空部31を有するということになる。施工面Tから染み出した水分は、次いで説明する接続部20の空隙部21を通して排管部30の内空部31に導かれる。内空部31に導かれた水分は、この内空部31(排管部30)を通して外部に排出される。
【0020】
排管部30の長さは、例えば10~50mmである。排管部30は、後述するように樹脂等の吹付け(吹付層Jの形成)の後にカットされるため、必要以上の長さにする必要はない。ただし、あまり短いと樹脂等の吹付けに際して、当該樹脂等が排管部30の内空部31を塞ぎ、この状態が排管部30のカット後も維持されることになるため、ある程度の長さは必要である。
【0021】
接続部20は、台座部10及び排管部30の間に介在されている。接続部20は、空隙部21を有する。この空隙部21は、排管部30の内空部31と連通し、かつ台座部10の通し穴11と連通する。施工面Tから染み出した水分は、前述したように、通し穴11及び空隙部21を通して排管部30の内空部31に導かれる。加えて、台座部10の一方の表面10aに塗布された接着剤Sは、通し穴11内に入り込むが、余剰分は、更に当該通し穴11を通して空隙部21に至り、当該空隙部21内に保持される。このように空隙部21が設けられていることで、台座部10に塗布された接着剤Sが排管部30の内空部31に至り、当該内空部31が塞がれるといった事態が防止される。
【0022】
この点、例えば、台座部10の一方の表面10aに粘着シート等を貼っておき、この粘着シート等によって台座部10を施工面Tに接着することも考えられる。しかしながら、この方法は、施工面Tに凹凸が存在し得ることからすると、好ましくない。また、台座部10の一方の表面10aに塗布する接着剤Sの塗布量を減らすことも考えられる。しかしながら、接着剤Sの塗布量を十分なものとすると、当該接着剤Sによって施工面Tと台座部10の一方の表面10aとの間を通して水分が散逸するのを防止することができる(封止効果)。したがって、接着剤Sの塗布量は若干多めとする方が好ましく、ここに空隙部21の存在理由がある。
【0023】
空隙部21の径L2は、通常、通し穴11の径と同一(面一)である。また、空隙部21は、径L2が台座部10の径L1の0.2~0.5倍、好ましくは0.3~0.4倍で、かつ深さが1~5mm、好ましくは2~3mmであると好適である。台座部10の一方の表面10aに接着剤Sを塗布することを想定した場合、このような大きさの空隙部21が備われば、排管部30の内空部31が接着剤Sによって塞がれてしまうおそれはない。
【0024】
なお、以上の空隙部21の大きさは内空部31の閉塞防止という観点から導き出されたものであり、単なる大きさを規定するものではない。また、接着剤Sの塗布量は、例えば、0.1~0.3cm3/cm2である。また、塗布厚は、例えば、1~3mmである。さらに、接続部20の外径は、台座部10の径L1の、例えば0.2~0.5倍である。
【0025】
(保護工法)
次に、以上で説明した排液補助具1を使用し、施工面Tを保護する工法について、図3を参照しつつ説明する。なお、本例では、コンクリートやモルタル等の保護層Cで法面Gが覆われ、もって施工面Tが構成されている場合を例に説明する。この形態の保護層Cは、例えば、法面Gの表面を保護するために、吹き付けられる等して形成されている。
【0026】
本形態においては、まず、図3の(1)に示すように、排液補助具1の台座部10(一方の表面10a)に接着材Sを塗布して、当該排液補助具1を施工面T(保護層Cの表面)に取り付ける。この排液補助具1の取付けは、図3の(1)の右側に合わせて示すように、施工面Tにおいて亀裂T1を有する部分(箇所)に行うと好適である。亀裂T1を有する部分においては、通常、水分の染み出しが想定され、吹付層Jの水膨れが生じる可能性が高いためである。
【0027】
この際、対象になる亀裂T1は、幅3mm以下(好適には幅1~2mm)であることを目安にするとよい。亀裂T1の幅が3mm以下であれば、本形態の排液補助具1によって施工面Tから染み出した水分の排出を確実に促すことができる。一方、幅3mmを超えるような大きな亀裂に対しては、別途、その保護のための対策が必要になる。
【0028】
排液補助具1は、図示例のように、1つの亀裂T1に対して2つ以上の複数を取り付けることもできる。想定される水分の量に応じて適宜設計するとよい。排液補助具1の設置間隔は、好ましくは200~400mm、より好ましくは300mmである。
【0029】
排液補助具1の取付けが終了したら、次に、図3の(2)に示すように、排液補助具1の上(上方)から施工面Tに向けて吹付材を吹き付ける。この吹付けによって、施工面Tの表面に吹付層Jが形成される。また、この吹付けは、少なくとも接続部20が覆われるまで行うと好適である。
【0030】
なお、吹付層Jを形成するための吹付材としては、例えば、ポリウレアやポリウレタン等の樹脂を例示することができる。この吹付けにおいては、例えば、吹付材の下地としてプライマー等の接着剤を使用することもできる。プライマー等の使用により施工面Tに対して樹脂等をより強固に吹き付けることができる。
【0031】
この吹付層Jの吹付厚は、例えば、1~10mmである。したがって、空隙部21の長さL3が1~5mmである本形態においては、排管部30の一部が吹付層Jによって埋まることになる。
【0032】
吹付層Jの形成が終了したら、次に、図3の(3)に示すように、吹付層Jから突出する排管部30を切断する。この切断によって、仮に吹付材によって排管部30の内空部31が塞がれていたとしても、当該塞がれた部分が切り落とされることになる。したがって、排管部30の切断は、排管部30が吹付層Jから全く突出しないように行う必要はない。排管部30の切断は、例えば、排管部30が吹付層Jから1~5mm突出する状態になるように行うことができる。もちろん、排管部30が吹付層Jから全く突出しない(面一)ように行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、排液補助具及び施工面の保護工法として利用可能である。より詳細には、施工面から染み出す水分の排出を促す排液補助具、及びモルタルやコンクリート等で保護された法面等からなる施工面の保護工法として利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 排液補助具
10 台座部
11 通し穴
20 接続部
21 空隙部
30 排管部
31 内空部
C 保護層
G 法面
J 吹付層
S 接着剤
T 施工面
図1
図2
図3