(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167149
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】制御回路、スイッチドキャパシタコンバータ、及び車両
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H02M3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078100
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田古部 勲
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA10
5H730AS05
5H730AS13
5H730BB03
5H730DD04
5H730FD11
5H730FF01
5H730FG01
5H730XC03
5H730XX04
5H730XX15
5H730XX25
5H730XX35
(57)【要約】
【課題】スイッチドキャパシタコンバータの起動時間を短縮することができる制御回路を提供する。
【解決手段】制御回路(2)は、複数のコンデンサ(C1~C3)と、複数のスイッチング素子(M1~M8)と、を有するスイッチドキャパシタコンバータ(SCC2)の制御回路である。前記制御回路は、前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成される制御部(CNT1)と、前記複数のコンデンサのうちの少なくとも一部それぞれに対して、両端電位差が電圧下限設定値以上になるように充電するように構成される充電部(1)と、を有する。前記制御部は、前記充電部による充電が完了した後に前記スイッチングを開始するように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサと、
複数のスイッチング素子と、を有するスイッチドキャパシタコンバータの制御回路であって、
前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成される制御部と、
前記複数のコンデンサのうちの少なくとも一部それぞれに対して、両端電位差が電圧下限設定値以上になるように充電するように構成される充電部と、
を有し、
前記制御部は、前記充電部による充電が完了した後に前記スイッチングを開始するように構成される、制御回路。
【請求項2】
前記充電部は、前記複数のコンデンサのうちの前記少なくとも一部の各一端とグラウンド電位とが電気的に接続してから、充電を開始するように構成される、請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記充電部は、第1定電流で充電するように構成される、請求項1に記載の制御回路。
【請求項4】
前記複数のコンデンサのうちの前記少なくとも一部それぞれに対して、前記両端電位差が電圧上限設定値以下になるように放電するように構成される放電部を有する、請求項1に記載の制御回路。
【請求項5】
前記放電部は、第2定電流で放電するように構成される、請求項4に記載の制御回路。
【請求項6】
第1抵抗を含み、前記第1抵抗に定電圧を印加して前記第1抵抗を流れる第3定電流を出力するように構成される定電流源と、
前記第3定電流に応じた電流が供給されるように構成される第2抵抗と、
を有し、
前記第2抵抗の端部から出力される電圧によって前記電圧下限設定値が定まる、請求項1~5のいずれか一項に記載の制御回路。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の制御回路と、
前記複数のコンデンサと、
前記複数のスイッチング素子と、を有する、スイッチドキャパシタコンバータ。
【請求項8】
請求項7に記載のスイッチドキャパシタコンバータを有する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、制御回路、スイッチドキャパシタコンバータ、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチドキャパシタコンバータが電源として利用される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
スイッチドキャパシタコンバータは、スイッチング素子間接続ノードを複数有し、当該接続ノード間に適切にコンデンサを接続する構成であり、入力電圧をDC/DC変換して出力電圧を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-54955号公報(段落0047)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電源の一種であるスイッチドキャパシタコンバータでは、起動時間が短いことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示されている制御回路は、複数のコンデンサと、複数のスイッチング素子と、を有するスイッチドキャパシタコンバータの制御回路である。前記制御回路は、前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成される制御部と、前記複数のコンデンサのうちの少なくとも一部それぞれに対して、両端電位差が電圧下限設定値以上になるように充電するように構成される充電部と、を有する。前記制御部は、前記充電部による充電が完了した後に前記スイッチングを開始するように構成される。
【0007】
本明細書中に開示されているスイッチドキャパシタコンバータは、上記構成の制御回路と、前記複数のコンデンサと、前記複数のスイッチング素子と、を有する。
【0008】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成のスイッチドキャパシタコンバータを有する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書中に開示されている発明によれば、スイッチドキャパシタコンバータの起動時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、スイッチドキャパシタコンバータの比較例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスイッチドキャパシタコンバータの各部電圧等を示すタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、スイッチドキャパシタコンバータの実施形態を示す図である。
【
図4】
図4は、充放電部の一構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、スイッチング開始時に突入電流が発生しない条件を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、基準電圧生成回路の一構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、定電流源の一構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、ウィンドウコンパレータの一構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第1例を示す図である。
【
図12】
図12は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第2例を示す図である。
【
図13】
図13は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第3例を示す図である。
【
図14】
図14は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第4例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなる電界効果トランジスタをいう。つまり、MOS電界効果トランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0012】
本明細書において、定電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0013】
本明細書において、定電流とは、理想的な状態において一定である電流を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電流である。
【0014】
<スイッチドキャパシタコンバータ(比較例)>
図1は、スイッチドキャパシタコンバータの比較例(=後出の実施形態と対比される一般的な構成)を示す図である。本比較例のスイッチドキャパシタコンバータSCC1のトポロジーは、ディクソン型トポロジーである。
図2は、スイッチドキャパシタコンバータSCC1の各部電圧等を示すタイミングチャートである。
【0015】
スイッチドキャパシタコンバータSCC1は、スイッチング素子M1~M8と、コンデンサC1~C3と、出力コンデンサCoutと、制御部CNT1と、を有する。
【0016】
スイッチング素子M1の第1端は、直流電圧源VS1の正極に接続される。直流電圧源VS1の負極は、グラウンド電位に接続される。直流電圧源VS1は、スイッチング素子M1の第1端に入力電圧Vinを供給する。
【0017】
スイッチング素子M1の第2端は、スイッチング素子M2の第1端と、コンデンサC3の第1端と、に接続される。スイッチング素子M2の第2端は、スイッチング素子M3の第1端と、コンデンサC2の第1端と、に接続される。スイッチング素子M3の第2端は、スイッチング素子M4の第1端と、コンデンサC1の第1端と、に接続される。
【0018】
スイッチング素子M4の第2端は、スイッチング素子M7の第1端と、負荷LD1の第1端と、スイッチング素子M6の第1端と、出力コンデンサCoutの第1端と、に接続される。スイッチング素子M7の第2端は、スイッチング素子M8の第1端と、コンデンサC1の第2端と、コンデンサC3の第2端と、に接続される。スイッチング素子M6の第2端は、スイッチング素子M5の第1端と、コンデンサC2の第2端と、に接続される。スイッチング素子M8の第2端、負荷LD1の第2端、スイッチング素子M5の第2端、及び出力コンデンサCoutの第2端は、グラウンド電位に接続される。
【0019】
制御部CNT1は、第1制御信号Φ1によってスイッチング素子M1、M3、M5、及びM7を制御し、第2制御信号Φ2によってスイッチング素子M2、M4、M6、及びM8を制御する。
【0020】
制御部CNT1は、スイッチング素子M1、M3、M5、及びM7と、スイッチング素子M2、M4、M6、及びM8と、を相補的にオン/オフ制御する。
【0021】
スイッチング電圧VSW1は、Vinの値とVin×3/4の値とで切り替わる。スイッチング電圧VSW1は、スイッチング素子M1とスイッチング素子M2との接続ノードN1に発生する。
【0022】
スイッチング電圧VSW2は、Vin×3/4の値とVin/2の値とで切り替わる。スイッチング電圧VSW2は、スイッチング素子M2とスイッチング素子M3との接続ノードN2に発生する。
【0023】
スイッチング電圧VSW3は、Vin/2の値とVin/4の値とで切り替わる。スイッチング電圧VSW3は、スイッチング素子M3とスイッチング素子M4との接続ノードN3に発生する。
【0024】
スイッチング電圧VSW6は、Vin/4の値と0(グラウンド電位)とで切り替わる。スイッチング電圧VSW6は、スイッチング素子M5とスイッチング素子M6との接続ノードに発生する。
【0025】
スイッチング電圧VSW7は、Vin/4の値と0(グラウンド電位)とで切り替わる。スイッチング電圧VSW7は、スイッチング素子M7とスイッチング素子M8との接続ノードに発生する。
【0026】
出力電圧Voutは、Vin/4の値になる。出力電圧Voutは、スイッチング素子M4とスイッチング素子M6とスイッチング素子M7との接続ノードNoutに発生する。出力電圧Voutは、負荷LD1に供給される。
【0027】
ここで、コンデンサC1~C3及び出力コンデンサCoutが電荷を蓄えていない状態でスイッチドキャパシタコンバータSCC1が起動する場合について考察する。スイッチドキャパシタコンバータSCC1の起動時に、直流電圧源VS1が入力電圧Vinを急峻に立ち上げると、スイッチドキャパシタコンバータSCC1に大きな突入電流が流れることになる。
【0028】
例えば直流電圧源VS1が入力電圧Vinを0Vから48Vまで急峻に立ち上げ、コンデンサC1~C3及び出力コンデンサCoutが電荷を蓄えておらず、入力電圧Vinが48Vに達した状態で、制御部CNT1がスイッチング素子M1~M8のスイッチング制御を開始する。この場合、スイッチング素子M1、M3、M5、及びM7がターンオンすると、コンデンサC3及び出力コンデンサCoutにスイッチング素子M1及びM7を通して突入電流IRUSH(=48/(R_M1+R_M7))が流れる。オン状態でのスイッチング素子M1の抵抗値R_M1及びオン状態でのスイッチング素子M7の抵抗値R_M7がそれぞれ0.1Ωである場合、突入電流IRUSHは480Aにもなる。
【0029】
上記のような過大な突入電流は許容できないため、制御部CNT1がスイッチング素子M1~M8のスイッチング制御を行いながら入力電圧Vinが0Vから48Vまでゆっくりと立ち上がるようにして、突入電流IRUSHが抑制される。その結果、スイッチドキャパシタコンバータSCC1は、起動時間を短くすることができない。
【0030】
上記の考察に鑑み、以下では、起動時間を比較例よりも短縮することのできる新規な実施形態を提案する。
【0031】
<スイッチドキャパシタコンバータ(実施形態)>
図3は、スイッチドキャパシタコンバータの実施形態を示す図である。本実施形態のスイッチドキャパシタコンバータSCC2は、充放電部1を有する点で上述したスイッチドキャパシタコンバータSCC1と異なり、それ以外の点で上述したスイッチドキャパシタコンバータSCC1と基本的に同様である。
【0032】
スイッチドキャパシタコンバータSCC2は、制御回路2を有する。制御回路2は、制御部CNT1と、充放電部1と、を有する。
【0033】
充放電部1には、入力電圧Vin、スイッチング電圧VSW1~VSW3、出力電圧Vout、及びグラウンド電位が印加される。充放電部1は、スイッチドキャパシタコンバータSCC2の起動時に、コンデンサC1~C3及び出力コンデンサCoutの充放電を行う。
【0034】
図4は、充放電部1の一構成例を示す図である。
図4に示す構成例の充放電部1は、定電流源IS1A~IS4A及びIS1B~IS4Bと、スイッチSW1~SW4と、スイッチ制御部11と、を有する。定電流源IS1A~IS4Aは、第1定電流を出力する電流源である。定電流源IS1B~IS4Bは、第2定電流を出力する電流源である。第1定電流と第2定電流とは、同一の電流値であってもよく、互いに異なる電流値であってもよい。
【0035】
定電流源IS1A~IS4Aの各第1端には入力電圧Vinが印加される。スイッチ制御部11の制御によって、スイッチSW1~SW4はそれぞれ第1~第3状態のいずれかになる。
【0036】
スイッチSW1が第1状態であるとき、スイッチSW1は、定電流源IS1Aの第2端と接続ノードN1とを電気的に接続する。スイッチSW1が第2状態であるとき、スイッチSW1は、定電流源IS1Bの第1端と接続ノードN1とを電気的に接続する。スイッチSW1が第3状態であるとき、スイッチSW1は、定電流源IS1Aの第2端及び定電流源IS1Bの第1端と接続ノードN1とを電気的に遮断する。
【0037】
スイッチSW2が第1状態であるとき、スイッチSW2は、定電流源IS2Aの第2端と接続ノードN2とを電気的に接続する。スイッチSW2が第2状態であるとき、スイッチSW2は、定電流源IS2Bの第1端と接続ノードN2とを電気的に接続する。スイッチSW2が第3状態であるとき、スイッチSW2は、定電流源IS2Aの第2端及び定電流源IS2Bの第1端と接続ノードN2とを電気的に遮断する。
【0038】
スイッチSW3が第1状態であるとき、スイッチSW3は、定電流源IS3Aの第2端と接続ノードN3とを電気的に接続する。スイッチSW3が第2状態であるとき、スイッチSW3は、定電流源IS3Bの第1端と接続ノードN3とを電気的に接続する。スイッチSW3が第3状態であるとき、スイッチSW3は、定電流源IS3Aの第2端及び定電流源IS3Bの第1端と接続ノードN3とを電気的に遮断する。
【0039】
スイッチSW4が第1状態であるとき、スイッチSW4は、定電流源IS4Aの第2端と接続ノードN4とを電気的に接続する。スイッチSW4が第2状態であるとき、スイッチSW4は、定電流源IS4Bの第1端と接続ノードN4とを電気的に接続する。スイッチSW4が第3状態であるとき、スイッチSW4は、定電流源IS4Aの第2端及び定電流源IS4Bの第1端と接続ノードN4とを電気的に遮断する。
【0040】
定電流源IS1B~IS4Bの各第2端にはグラウンド電位が印加される。
【0041】
図5は、スイッチドキャパシタコンバータSCC2のスイッチング開始時に突入電流が発生しない条件を示すタイミングチャートである。
図5の横軸は時間を示し、
図5縦軸は電圧を示す。
【0042】
スイッチドキャパシタコンバータSCC2の起動が開始すると、入力電圧Vinは、0Vから急峻に所定値(例えば48V)まで立ち上がる。入力電圧Vinが所定値に達した後、制御部CNT1はスイッチング素子M5及びM8をオンし、充放電部1は第1定電流でコンデンサC1~C3及び出力コンデンサCoutを充電する。出力電圧Vout(出力コンデンサCoutの両端電位差)がVin/4の値に達すると、充放電部1は出力コンデンサCoutの充電を停止する。スイッチング電圧VSW3(コンデンサC1の両端電位差)がVin/4の値に達すると、充放電部1はコンデンサC1の充電を停止する。スイッチング電圧VSW2(コンデンサC2の両端電位差)がVin×2/4の値に達すると、充放電部1はコンデンサC2の充電を停止する。スイッチング電圧VSW1(コンデンサC3の両端電位差)がVin×3/4の値に達すると、充放電部1はコンデンサC3の充電を停止する。
【0043】
コンデンサC1~C3及び出力コンデンサCout全ての充電が停止したタイミングTM1で、制御部CNT1は、スイッチング素子M1~M8のスイッチング制御を開始する。これにより、スイッチドキャパシタコンバータSCC2のスイッチング開始時に突入電流が発生しなくなる。
【0044】
コンデンサC1~C3及び出力コンデンサCoutの各容量には製造ばらつきがあること、突入電流を零にまで抑え込む必要はないこと、スイッチング素子M1~M8のリーク電流等の影響によってコンデンサC1~C3及び出力コンデンサCoutが過剰に充電されるおそれがあること等を考慮すると、制御部CNT1がスイッチング素子M1~M8のスイッチング制御を開始するタイミングは、例えば下記の第1条件であることが望ましい。
【0045】
第1条件は、出力電圧Vout(出力コンデンサCoutの両端電位差)及びスイッチング電圧VSW3(コンデンサC1の両端電位差)がVin/4-ΔV以上Vin/4+ΔV以下になり、スイッチング電圧VSW2(コンデンサC2の両端電位差)がVin×2/4-ΔV以上Vin×2/4+ΔV以下になり、スイッチング電圧VSW1(コンデンサC3の両端電位差)がVin×3/4-ΔV以上Vin×3/4+ΔV以下になるという条件である。
【0046】
制御部CNT1がスイッチング素子M1~M8のスイッチング制御を開始するタイミングを上記の第1条件にするために、充放電部1は、例えば、
図4に示す構成の具体例である
図6に示す構成であり、スイッチ制御部11は、
図7に示す基準電圧生成回路及び
図9に示す4つのウィンドウコンパレータを有する構成であることが望ましい。
【0047】
図6に示す構成の充放電部1に設けられるスイッチSWkA(kは1以上4以下の自然数)は、制御信号SkAがHIGHレベルであるときにオンになり、制御信号SkAがLOWレベルであるときにオフになる。同様に、
図6に示す構成の充放電部1に設けられるスイッチSWkBは、制御信号SkBがHIGHレベルであるときにオンになり、制御信号SkBがLOWレベルであるときにオフになる。
【0048】
図7に示す基準電圧生成回路は、抵抗R1~R8と、オペアンプOP1と、Pチャネル型のMOS電界効果トランジスタQ1~Q3と、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタQ4及びQ5と、定電流源IS5と、を有する。
図7に示す基準電圧生成回路の電源電圧VCCとしては、例えば入力電圧Vinを用いることができる。
【0049】
抵抗R1及びR2によって構成される抵抗分圧回路は、入力電圧Vinを分圧して、Vin/(4N)の値の電圧を生成する。Nの値は、抵抗R1及びR2の各抵抗値によって調整される。当該抵抗分圧回路から出力されるVin/(4N)の値の電圧は、オペアンプOP1の非反転入力端子に供給される。オペアンプOP1の出力端子は、オペアンプOP1の反転入力端子に接続される。これにより、オペアンプOP1は、バッファアンプとして動作する。
【0050】
オペアンプOP1から出力されるVin/(4N)の値の電圧は、抵抗R3~R8の直列回路に供給される。具体的には、オペアンプOP1から出力されるVin/(4N)の値の電圧は、抵抗R5と抵抗R6との接続ノードに供給される。
【0051】
第1及び第2カレントミラー回路は、定電流源IS5から出力される定電流Ibに応じた電流を抵抗R3~R8の直列回路に供給する。第1カレントミラー回路は、MOS電界効果トランジスタQ1~Q3によって構成される。第2カレントミラー回路は、MOS電界効果トランジスタQ4及びQ5によって構成される。
【0052】
Vin/(4N)+ΔV/Nの値の第1基準電圧は、MOS電界効果トランジスタQ3と抵抗R3との接続ノードから出力される。Vin/(4N)+ΔV/(2N)の値の第2基準電圧は、抵抗R3と抵抗R4との接続ノードから出力される。Vin/(4N)+ΔV/(3N)の値の第3基準電圧は、抵抗R4と抵抗R5との接続ノードから出力される。Vin/(4N)-ΔV/(3N)の値の第4基準電圧は、抵抗R6と抵抗R7との接続ノードから出力される。Vin/(4N)-ΔV/(2N)の値の第5基準電圧は、抵抗R7と抵抗R8との接続ノードから出力される。Vin/(4N)-ΔV/Nの値の第6基準電圧は、抵抗R8とMOS電界効果トランジスタQ5との接続ノードから出力される。第1~第3基準電圧の値はそれぞれ電圧上限設定値であり、第4~第6基準電圧の値はそれぞれ電圧下限設定値である。
【0053】
ここで、定電流源IS5を
図8に示す構成にすることで、第1~第6基準電圧の各値の精度を高めることができる。
図8に示す構成の定電流源IS5は、オペアンプOP2と、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタQ6と、抵抗R9と、を有する。
【0054】
定電圧VbがオペアンプOP2の非反転入力端子に供給される。定電圧Vbは、例えばバンドギャップ基準電圧等の高精度の定電圧である。オペアンプOP2の出力端子は、MOS電界効果トランジスタQ6のゲートに接続される。オペアンプOP2の反転入力端子は、MOS電界効果トランジスタQ6のソース及び抵抗R9の第1端に接続される。抵抗R9の第2端は、グラウンド電位に接続される。
【0055】
図8に示す構成の定電流源IS5から出力される定電流Ibの値は、下記の(1)式で表せる。なお、下記の(1)式において、Ibは定電流Ibの値であり、Vbは定電圧Vbの値であり、R9は抵抗R9の抵抗値である。
Ib=Vb/R9 …(1)
【0056】
抵抗R3~R8の各抵抗値をRとすると、上記のΔVは下記の(2)式で表せる。したがって、抵抗R9と抵抗R3~R8とを特性を揃えることで上記のΔVの精度が高まるので、第1~第6基準電圧の各値の精度が高まる。なお、例えば抵抗R9と抵抗R3~R8とを同一の製造プロセスで形成することによって、抵抗R9と抵抗R3~R8とを特性を揃えることができる。
ΔV=Vb×R/R9 …(2)
【0057】
図9に示す4つのウィンドウコンパレータWk(kは1以上4以下の自然数)は、制御信号SkA及びSkBを出力する。
【0058】
ウィンドウコンパレータW1は、抵抗R10及びR11と、コンパレータCOMP1及びCOMP2と、NORゲートNOR1と、ANDゲートAND1と、を有する。
【0059】
ウィンドウコンパレータW2は、抵抗R12及びR13と、コンパレータCOMP3及びCOMP4と、NORゲートNOR2と、ANDゲートAND2と、を有する。
【0060】
ウィンドウコンパレータW3は、抵抗R14及びR15と、コンパレータCOMP5及びCOMP6と、NORゲートNOR3と、ANDゲートAND3と、を有する。
【0061】
ウィンドウコンパレータW4は、抵抗R16及びR17と、コンパレータCOMP7及びCOMP8と、NORゲートNOR4と、ANDゲートAND4と、を有する。
【0062】
4つのウィンドウコンパレータW1~W4は基本的に同様の回路構成であるため、ここでは代表してウィンドウコンパレータW1の回路構成について説明する。
【0063】
抵抗R1及びR2によって構成される抵抗分圧回路は、入力電圧Vinを分圧して、Vin/(4N)の値の電圧を生成する。Nの値は、抵抗R1及びR2の各抵抗値によって調整される。当該抵抗分圧回路から出力されるVin/(4N)の値の電圧は、コンパレータCOMP1及びCOMP2の各非反転入力端子に供給される。コンパレータCOMP1の反転入力端子には、Vin/(4N)+ΔV/(3N)の値の第3基準電圧が供給される。コンパレータCOMP2の反転入力端子には、Vin/(4N)-ΔV/(3N)の値の第4基準電圧が供給される。
【0064】
NORゲートNOR1は、コンパレータCOMP1の出力とコンパレータCOMP2の出力との否定論理和である制御信号S1Aを出力する。
【0065】
ANDゲートAND1は、コンパレータCOMP1の出力とコンパレータCOMP2の出力との論理積である制御信号S1Bを出力する。
【0066】
<適用例>
図10は、車両Xの外観図である。本構成例の車両Xは、不図示のバッテリから出力される電圧の供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18を搭載している。なお、本図における電子機器X11~X18の搭載位置は、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0067】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0068】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0069】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0070】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行う制動ユニットである。
【0071】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0072】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0073】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0074】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0075】
なお、先に説明したスイッチドキャパシタコンバータSCC2は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。また、先に説明したスイッチドキャパシタコンバータSCC2の用途としては、車両Xに搭載される電源に限定されず、例えば産業機器に搭載される電源であってもよい。
【0076】
<その他>
発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0077】
例えば、スイッチドキャパシタコンバータSCC2において、直流電圧源VS1と負荷LD1との配置を入れ替えてもよい。直流電圧源VS1と負荷LD1との配置を入れ替えた場合、スイッチドキャパシタコンバータSCC2から負荷LD1に供給される電圧(スイッチドキャパシタコンバータSCC2の出力電圧)は、直流電圧源VS1からスイッチドキャパシタコンバータSCC2に供給される電圧(スイッチドキャパシタコンバータSCC2の入力電圧)より大きくなる。
【0078】
上述した制御回路2は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータにも適用することができる。ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータとしては、例えば
図11~
図14に示すスイッチドキャパシタコンバータを挙げることができる。
【0079】
上述した制御回路2は充放電部1を有する構成であったが、充放電部1の代わりに充電部を有する構成であってもよい。つまり、制御回路2は放電部を有さない構成であってもよい。
【0080】
上述した制御回路2は、スイッチドキャパシタコンバータSCC2のコンデンサC1~C3の全てに対してスイッチング素子M1~M8のスイッチング前に充放電可能であるが、スイッチドキャパシタコンバータSCC2のコンデンサC1~C3の一部に対してスイッチング素子M1~M8のスイッチング前に充放電可能であるようにしてもよい。コンデンサC1~C3の一部に対して充放電可能である場合でも、コンデンサC1~C3の全てに対して充放電可能である場合に比べて効果は低減するけれどもスイッチドキャパシタコンバータSCC2の起動時間を短縮することができる。
【0081】
以上説明した制御回路(2)は、複数のコンデンサ(C1~C3)と、複数のスイッチング素子(M1~M8)と、を有するスイッチドキャパシタコンバータ(SCC2)の制御回路であって、前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成される制御部(CNT1)と、前記複数のコンデンサのうちの少なくとも一部に対して、電圧下限設定値以上になるように充電するように構成される充電部(1)と、を有し、前記制御部は、前記充電部による充電が完了した後に前記スイッチングを開始するように構成される構成(第1の構成)である。
【0082】
上記第1の構成の制御回路は、スイッチドキャパシタコンバータの起動時間を短縮することができる。
【0083】
上記第1の構成の制御回路において、前記充電部は、前記複数のコンデンサのうちの前記少なくとも一部の各一端とグラウンド電位とが電気的に接続してから、充電を開始するように構成される構成(第2の構成)であってもよい。
【0084】
上記第2の構成の制御回路は、複数のコンデンサのうちの少なくとも一部を確実に充電することができる。
【0085】
上記第1又は第2の構成の制御回路において、前記充電部は、第1定電流で充電するように構成される構成(第3の構成)であってもよい。
【0086】
上記第3の構成の制御回路は、充電時の突入電流を制限することが容易になる。
【0087】
上記第1~第3いずれかの構成の制御回路において、前記複数のコンデンサのうちの前記少なくとも一部それぞれに対して、両端電位差が電圧上限設定値以下になるように放電するように構成される放電部(1)を有する構成(第4の構成)であってもよい。
【0088】
上記第4の構成の制御回路は、複数のコンデンサのうちの少なくとも一部がスイッチング素子のリーク電流等の影響によって過剰に充電されている状態を解消することができる。
【0089】
上記第4の構成の制御回路において、前記放電部は、第2定電流で放電するように構成される構成(第5の構成)であってもよい。
【0090】
上記第5の構成の制御回路は、放電時の突入電流を制限することが容易になる。
【0091】
上記第1~第5の構成の制御回路において、第1抵抗(R9)を含み、前記第1抵抗に定電圧を印加して前記第1抵抗を流れる第3定電流を出力するように構成される定電流源(IS5)と、前記第3定電流に応じた電流が供給されるように構成される第2抵抗(R6~R8)と、を有し、前記第2抵抗の端部から出力される電圧によって前記電圧下限設定値が定まる構成(第6の構成)であってもよい。
【0092】
上記第7の構成の制御回路は、第1抵抗と第2抵抗との特性を揃えることで、電圧下限設定値の精度を高めることができる。
【0093】
以上説明したスイッチドキャパシタコンバータ(SCC2)は、上記第1~第6いずれかの構成の制御回路と、前記複数のコンデンサと、前記複数のスイッチング素子と、を有する構成(第7の構成)である。
【0094】
上記第7の構成のスイッチドキャパシタコンバータは、起動時間を短縮することができる。
【0095】
以上説明した車両(X)は、上記第7の構成のスイッチドキャパシタコンバータを有する構成(第8の構成)である。
【0096】
上記第8の構成の車両は、スイッチドキャパシタコンバータの起動時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 充放電部
2 制御回路
11 スイッチ制御部
AND1~AND4 ANDゲート
C1~C3 コンデンサ
Cout 出力コンデンサ
CNT1 制御部
COMP1~COMP8 コンパレータ
IS1A~IS4A、IS1B~IS4B、IS5 定電流源
LD1 負荷
M1~M8 スイッチング素子
N1~N4 接続ノード
NOR1~NOR4 NORゲート
OP1~OP2 オペアンプ
Q1~Q6 MOS電界効果トランジスタ
R1~R17 抵抗
SCC1、SCC2 スイッチドキャパシタコンバータ
SW1~SW4 スイッチ
VS1 直流電圧源
W1~W4 ウィンドウコンパレータ
X 車両
X11~X18 電子機器