(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167151
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】過電流検出回路、スイッチドキャパシタコンバータ、及び車両
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H02M3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078103
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田古部 勲
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB03
5H730FD01
5H730FD11
5H730XX03
5H730XX15
5H730XX22
5H730XX23
5H730XX33
(57)【要約】
【課題】スイッチドキャパシタコンバータの効率低下を招くことなく過電流を検出することができる過電流検出回路を提供する。
【解決手段】過電流検出回路(2)は、複数のコンデンサ(C1~C3)と、複数のスイッチング素子(M1~M8)と、を有するスイッチドキャパシタコンバータ(SCC2)から出力される電流の過電流を検出するように構成される。前記過電流検出回路は、前記スイッチドキャパシタコンバータの入力電圧が印加されるように構成される第1印加端(T1)と、前記スイッチドキャパシタコンバータの出力電圧が印加されるように構成される第2印加端(T2)と、前記出力電圧と前記入力電圧の整数倍または整数の逆数倍との差に基づいて、前記過電流を検出するように構成される検出部(R1~R2、R4~R7、OP1、IS1、Q1~Q5、COMP1)と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサと、
複数のスイッチング素子と、を有するスイッチドキャパシタコンバータから出力される電流の過電流を検出するように構成される過電流検出回路であって、
前記スイッチドキャパシタコンバータの入力電圧が印加されるように構成される第1印加端と、
前記スイッチドキャパシタコンバータの出力電圧が印加されるように構成される第2印加端と、
前記出力電圧と前記入力電圧の整数倍または整数の逆数倍との差に基づいて、前記過電流を検出するように構成される検出部と、を有する、過電流検出回路。
【請求項2】
前記検出部は、
前記出力電圧の分圧を生成するように構成される第1分圧回路と、
前記入力電圧の分圧を生成するように構成される第2分圧回路と、を有し、
前記第1分圧回路の出力と前記第2分圧回路の出力との差に基づいて、前記過電流を検出するように構成される、請求項1に記載の過電流検出回路。
【請求項3】
前記検出部は、
前記出力電圧と前記入力電圧の整数倍または整数の逆数倍との差が閾値以上であるときに前記過電流を検出し、
第1抵抗を含み、前記第1抵抗に定電圧を印加して前記第1抵抗を流れる定電流を出力するように構成される定電流源と、
前記定電流に応じた電流が供給されるように構成される第2抵抗と、
を有し、
前記第2抵抗の電圧降下によって前記閾値が定まる、請求項1に記載の過電流検出回路。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の過電流検出回路と、
前記複数のコンデンサと、
前記複数のスイッチング素子と、を有する、スイッチドキャパシタコンバータ。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチドキャパシタコンバータを有する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、過電流検出回路、スイッチドキャパシタコンバータ、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチドキャパシタコンバータが電源として利用される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
スイッチドキャパシタコンバータは、スイッチング素子間接続ノードを複数有し、当該接続ノード間に適切にコンデンサを接続する構成であり、入力電圧をDC/DC変換して出力電圧を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-54955号公報(段落0047)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電源における保護機能の一つに過電流保護機能がある。電源の一種であるスイッチドキャパシタコンバータに過電流保護機能を設ける場合、スイッチドキャパシタコンバータの効率低下を招かないことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示されている過電流検出回路は、複数のコンデンサと、複数のスイッチング素子と、を有するスイッチドキャパシタコンバータから出力される電流の過電流を検出するように構成される。前記過電流検出回路は、前記スイッチドキャパシタコンバータの入力電圧が印加されるように構成される第1印加端と、前記スイッチドキャパシタコンバータの出力電圧が印加されるように構成される第2印加端と、前記出力電圧と前記入力電圧の整数倍または整数の逆数倍との差に基づいて、前記過電流を検出するように構成される検出部と、を有する。
【0007】
本明細書中に開示されているスイッチドキャパシタコンバータは、上記構成の過電流検出回路と、前記複数のコンデンサと、前記複数のスイッチング素子と、を有する。
【0008】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成のスイッチドキャパシタコンバータを有する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書中に開示されている発明によれば、スイッチドキャパシタコンバータの効率低下を招くことなく過電流を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、スイッチドキャパシタコンバータの比較例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスイッチドキャパシタコンバータの各部電圧等を示すタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、スイッチドキャパシタコンバータの実施形態を示す図である。
【
図4】
図4は、過電流検出回路の一構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、定電流源の一構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第1例を示す図である。
【
図8】
図8は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第2例を示す図である。
【
図9】
図9は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第3例を示す図である。
【
図10】
図10は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータの第4例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなる電界効果トランジスタをいう。つまり、MOS電界効果トランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0012】
本明細書において、基準電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0013】
本明細書において、定電流とは、理想的な状態において一定である電流を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電流である。
【0014】
<スイッチドキャパシタコンバータ(比較例)>
図1は、スイッチドキャパシタコンバータの比較例(=後出の実施形態と対比される一般的な構成)を示す図である。本比較例のスイッチドキャパシタコンバータSCC1のトポロジーは、ディクソン型トポロジーである。
図2は、スイッチドキャパシタコンバータSCC1の各部電圧等を示すタイミングチャートである。
【0015】
スイッチドキャパシタコンバータSCC1は、スイッチング素子M1~M8と、コンデンサC1~C3と、出力コンデンサCoutと、制御部CNT1と、センス抵抗RSNSと、過電流検出回路1と、を有する。
【0016】
スイッチング素子M1の第1端は、センス抵抗RSNSを介して、直流電圧源VS1の正極に接続される。直流電圧源VS1の負極は、グラウンド電位に接続される。直流電圧源VS1は、スイッチング素子M1の第1端に入力電圧Vinを供給する。
【0017】
スイッチング素子M1の第2端は、スイッチング素子M2の第1端と、コンデンサC3の第1端と、に接続される。スイッチング素子M2の第2端は、スイッチング素子M3の第1端と、コンデンサC2の第1端と、に接続される。スイッチング素子M3の第2端は、スイッチング素子M4の第1端と、コンデンサC1の第1端と、に接続される。
【0018】
スイッチング素子M4の第2端は、スイッチング素子M7の第1端と、負荷LD1の第1端と、スイッチング素子M6の第1端と、出力コンデンサCoutの第1端と、に接続される。スイッチング素子M7の第2端は、スイッチング素子M8の第1端と、コンデンサC1の第2端と、コンデンサC3の第2端と、に接続される。スイッチング素子M6の第2端は、スイッチング素子M5の第1端と、コンデンサC2の第2端と、に接続される。スイッチング素子M8の第2端、負荷LD1の第2端、スイッチング素子M5の第2端、及び出力コンデンサCoutの第2端は、グラウンド電位に接続される。
【0019】
制御部CNT1は、第1制御信号Φ1によってスイッチング素子M1、M3、M5、及びM7を制御し、第2制御信号Φ2によってスイッチング素子M2、M4、M6、及びM8を制御する。
【0020】
制御部CNT1は、スイッチング素子M1、M3、M5、及びM7と、スイッチング素子M2、M4、M6、及びM8と、を相補的にオン/オフ制御する。
【0021】
スイッチング電圧VSW1は、Vinの値とVin×3/4の値とで切り替わる。スイッチング電圧VSW1は、スイッチング素子M1とスイッチング素子M2との接続ノードに発生する。
【0022】
スイッチング電圧VSW2は、Vin×3/4の値とVin/2の値とで切り替わる。スイッチング電圧VSW2は、スイッチング素子M2とスイッチング素子M3との接続ノードに発生する。
【0023】
スイッチング電圧VSW3は、Vin/2の値とVin/4の値とで切り替わる。スイッチング電圧VSW3は、スイッチング素子M3とスイッチング素子M4との接続ノードに発生する。
【0024】
スイッチング電圧VSW6は、Vin/4の値と0(グラウンド電位)とで切り替わる。スイッチング電圧VSW6は、スイッチング素子M5とスイッチング素子M6との接続ノードに発生する。
【0025】
スイッチング電圧VSW7は、Vin/4の値と0(グラウンド電位)とで切り替わる。スイッチング電圧VSW7は、スイッチング素子M7とスイッチング素子M8との接続ノードに発生する。
【0026】
出力電圧Voutは、Vin/4の値になる。出力電圧Voutは、スイッチング素子M4とスイッチング素子M6とスイッチング素子M7との接続ノードに発生する。出力電圧Voutは、負荷LD1に供給される。
【0027】
センス抵抗RSNSは、スイッチドキャパシタコンバータSCC1の入力電流Iinを電圧VSNSに変換する。電圧VSNSは、過電流検出回路1に供給される。過電流検出回路1は、抵抗11と、コンデンサ12と、基準電圧VREFを出力する直流電圧源13と、コンパレータ14と、を有する。
【0028】
入力電流Iinは
図2に示すようにパルス電流であるため、負荷LD1が重負荷である場合に、当該パルス電流の立ち上がりにおける突入電流によって電圧VSNSが基準電圧VREFより大きくなって過電流が誤検出されるおそれがある。
【0029】
抵抗11及びコンデンサ12によって構成されるRCフィルタは、電圧VSNSを平滑化し、過電流の誤検出を防止する。コンパレータ14は、当該RCフィルタによって平滑化された電圧と基準電圧VREFとを比較する。コンパレータ14は、当該RCフィルタによって平滑化された電圧が基準電圧VREF以上であれば、過電流を検出して過電流保護信号OCPをHIGHレベルにする。一方、コンパレータ14は、当該RCフィルタによって平滑化された電圧が基準電圧VREF未満であれば、過電流を検出せず過電流保護信号OCPをLOWレベルにする。
【0030】
制御部CNT1は、過電流保護信号OCPがHIGHレベルであれば、スイッチング素子M1~M8のスイッチング制御を停止し、スイッチング素子M1~M8全てをオフにする過電流保護動作を実行する。
【0031】
スイッチドキャパシタコンバータSCC1は、センス抵抗RSNSでの損失があるため、効率が低下する。また、抵抗11及びコンデンサ12によって構成されるRCフィルタは、制御部CNT1を有する半導体集積回路装置の外付け部品である場合には、部品点数の増加を招くことになる。
【0032】
上記の考察に鑑み、以下では、スイッチドキャパシタコンバータの効率低下を招くことなく過電流を検出することができる新規な実施形態を提案する。
【0033】
<スイッチドキャパシタコンバータ(実施形態)>
図3は、スイッチドキャパシタコンバータの実施形態を示す図である。本実施形態のスイッチドキャパシタコンバータSCC2は、センス抵抗RSNS及び過電流検出回路1の代わりに過電流検出回路2を有する点で上述したスイッチドキャパシタコンバータSCC1と異なり、それ以外の点で上述したスイッチドキャパシタコンバータSCC1と基本的に同様である。
【0034】
スイッチドキャパシタコンバータでは、無負荷の場合、出力電圧は、入力電圧の整数倍または整数の逆数倍で表される。スイッチドキャパシタコンバータSCC2では、無負荷の場合、出力電圧Voutは入力電圧Vinの1/4倍である。
【0035】
スイッチドキャパシタコンバータは、フィードバック制御を行わず、オープンループでスイッチング素子が制御される。そのため、スイッチドキャパシタコンバータでは、出力電圧Voutは、出力電流Ioutに応じて降下する。スイッチドキャパシタコンバータSCC2では、無負荷でない場合、出力電圧Voutと、入力電圧Vinと、出力電流Ioutとの間に下記の(1)式が成立する。
Vout=Vin/4-Rout×Iout …(1)
【0036】
制御部CNT1がスイッチング素子M1~M8を低いスイッチング周波数Fswで動作させる場合、下記の(2)式が成立する。スイッチドキャパシタコンバータSCC2の実効容量値Cepは、例えばMichael D. Seeman and Seth R. Sanders,” Analysis and Optimization of Switched-Capacitor DC-DC Converters”(IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS, VOL. 23, NO. 2, MARCH 2008)に開示されている手法によって算出することができる。
Rout≒1/(Cep×Fsw) …(2)
【0037】
上記の(1)式の関係が成立するので、過電流検出回路2は、出力電圧Voutと入力電圧Vinの整数の逆数倍との差に基づいて、出力電流Ioutの過電流を検出する。過電流検出回路2は、センス抵抗RSNSを設けることなく過電流を検出することができる。したがって、過電流検出回路2は、スイッチドキャパシタコンバータSCC2の効率低下を招くことなく過電流を検出することができる。
【0038】
図4は、過電流検出回路2の一構成例を示す図である。
図4に示す過電流検出回路2は、抵抗R1~R6と、オペアンプOP1と、Pチャネル型のMOS電界効果トランジスタQ1~Q3と、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタQ4及びQ5と、定電流源IS51、コンパレータCOMP1と、第1印加端T1と、第2印加端T2と、を有する。
図4に示す過電流検出回路2の電源電圧VCCとしては、例えば入力電圧Vinを用いることができる。
【0039】
抵抗R1及びR2によって構成される分圧回路は、第1印加端T1に印加される入力電圧Vinを分圧して、Vin/(4N)の値の電圧を生成する。Nの値は、抵抗R1及びR2の各抵抗値によって調整される。当該分圧回路から出力されるVin/(4N)の値の電圧は、オペアンプOP1の非反転入力端子に供給される。オペアンプOP1の出力端子は、オペアンプOP1の反転入力端子に接続される。これにより、オペアンプOP1は、バッファアンプとして動作する。
【0040】
オペアンプOP1から出力されるVin/(4N)の値の電圧は、抵抗R3及びR4の直列回路に供給される。具体的には、オペアンプOP1から出力されるVin/(4N)の値の電圧は、抵抗R3と抵抗R4との接続ノードに供給される。
【0041】
第1及び第2カレントミラー回路は、定電流源IS1から出力される定電流Ibに応じた電流を抵抗R3及びR4の直列回路に供給する。第1カレントミラー回路は、MOS電界効果トランジスタQ1~Q3によって構成される。第2カレントミラー回路は、MOS電界効果トランジスタQ4及びQ5によって構成される。
【0042】
Vin/(4N)-VREF/Nの値の電圧が抵抗R4とMOS電界効果トランジスタQ5との接続ノードからコンパレータCOMP1の反転入力端子に供給される。VREF/Nの値は、定電流Ibと抵抗R4の抵抗値とによって調整できる。
【0043】
抵抗R5及びR6によって構成される分圧回路は、第2印加端T2に印加される出力電圧Voutを分圧して、Vout/Nの値の電圧を生成する。Nの値は、抵抗R5及びR6の各抵抗値によって調整される。当該分圧回路から出力されるVout/Nの値の電圧は、コンパレータCOMP1の非反転入力端子に供給される。
【0044】
入力電圧Vinと出力電圧Voutとの差がVREF(閾値)まで開くと、コンパレータCOMP1から出力される過電流保護信号OCPはHIGHレベルになる。制御部CNT1は、過電流保護信号OCPがHIGHレベルであれば、スイッチング素子M1~M8のスイッチング制御を停止し、スイッチング素子M1~M8全てをオフにする過電流保護動作を実行する。
【0045】
ここで、定電流源IS1を
図5に示す構成にすることで、VREFの値の精度を高めることができる。
図5に示す構成の定電流源IS1は、オペアンプOP2と、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタQ6と、抵抗R7と、を有する。
【0046】
定電圧VbがオペアンプOP2の非反転入力端子に供給される。定電圧Vbは、例えばバンドギャップ基準電圧等の高精度の定電圧である。オペアンプOP2の出力端子は、MOS電界効果トランジスタQ6のゲートに接続される。オペアンプOP2の反転入力端子は、MOS電界効果トランジスタQ6のソース及び抵抗R7の第1端に接続される。抵抗R7の第2端は、グラウンド電位に接続される。
【0047】
図5に示す構成の定電流源IS1から出力される定電流Ibの値は、下記の(3)式で表せる。なお、下記の(3)式において、Ibは定電流Ibの値であり、Vbは定電圧Vbの値であり、R9は抵抗R9の抵抗値である。
Ib=Vb/R9 …(3)
【0048】
抵抗R4の抵抗値をRとすると、上記のVREFは下記の(4)式で表せる。したがって、抵抗R7と抵抗R3とを特性を揃えることで上記のVREFの精度が高まるので、過電流の検出精度が高まる。なお、例えば抵抗R7と抵抗R3とを同一の製造プロセスで形成することによって、抵抗R7と抵抗R3とを特性を揃えることができる。
VREF=Vb×R/R7 …(4)
【0049】
<適用例>
図6は、車両Xの外観図である。本構成例の車両Xは、不図示のバッテリから出力される電圧の供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18を搭載している。なお、本図における電子機器X11~X18の搭載位置は、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0050】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0051】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0052】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0053】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行う制動ユニットである。
【0054】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0055】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0056】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0057】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0058】
なお、先に説明したスイッチドキャパシタコンバータSCC2は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。また、先に説明したスイッチドキャパシタコンバータSCC2の用途としては、車両Xに搭載される電源に限定されず、例えば産業機器に搭載される電源であってもよい。
【0059】
<その他>
発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0060】
例えば、スイッチドキャパシタコンバータSCC2において、直流電圧源VS1と負荷LD1との配置を入れ替えてもよい。直流電圧源VS1と負荷LD1との配置を入れ替えた場合、スイッチドキャパシタコンバータSCC2から負荷LD1に供給される電圧(スイッチドキャパシタコンバータSCC2の出力電圧)は、直流電圧源VS1からスイッチドキャパシタコンバータSCC2に供給される電圧(スイッチドキャパシタコンバータSCC2の入力電圧)より大きくなる。この場合、過電流検出回路は、スイッチドキャパシタコンバータSCC2の出力電圧とスイッチドキャパシタコンバータSCC2の入力電圧の整数倍との差に基づいて、過電流を検出するように構成されればよい。
【0061】
上述した過電流検出回路は、ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータにも適用することができる。ディクソン型と異なるトポロジーであるスイッチドキャパシタコンバータとしては、例えば
図7~
図10に示すスイッチドキャパシタコンバータを挙げることができる。
【0062】
以上説明した過電流検出回路(2)は、複数のコンデンサ(C1~C3)と、複数のスイッチング素子(M1~M8)と、を有するスイッチドキャパシタコンバータ(SCC2)から出力される電流の過電流を検出するように構成される過電流検出回路であって、前記スイッチドキャパシタコンバータの入力電圧が印加されるように構成される第1印加端(T1)と、前記スイッチドキャパシタコンバータの出力電圧が印加されるように構成される第2印加端(T2)と、前記出力電圧と前記入力電圧の整数倍または整数の逆数倍との差に基づいて、前記過電流を検出するように構成される検出部(R1~R2、R4~R7、OP1、IS1、Q1~Q5、COMP1)と、を有する構成(第1の構成)である。
【0063】
上記第1の構成の過電流検出回路は、スイッチドキャパシタコンバータの効率低下を招くことなく過電流を検出することができる。
【0064】
上記第1の構成の過電流検出回路において、前記検出部は、前記出力電圧の分圧を生成するように構成される第1分圧回路と、前記入力電圧の分圧を生成するように構成される第2分圧回路と、を有し、前記第1分圧回路の出力と前記第2分圧回路の出力との差に基づいて、前記過電流を検出するように構成される構成(第2の構成)であってもよい。
【0065】
上記第2の構成の過電流検出回路は、処理する電圧が小さくすることができるので、過電流検出回路の小型化および低コスト化を図ることができる。
【0066】
上記第1又は第2の構成の過電流検出回路において、前記検出部は、前記出力電圧と前記入力電圧の整数倍または整数の逆数倍との差が閾値以上であるときに前記過電流を検出し、第1抵抗(R7)を含み、前記第1抵抗に定電圧を印加して前記第1抵抗を流れる定電流を出力するように構成される定電流源と、前記定電流に応じた電流が供給されるように構成される第2抵抗(R3)と、を有し、前記第2抵抗の電圧降下によって前記閾値が定まる構成(第3の構成)であってもよい。
【0067】
上記第3の構成の過電流検出回路は、第1抵抗と第2抵抗との特性を揃えることで、過電流の検出精度を高めることができる。
【0068】
以上説明したスイッチドキャパシタコンバータ(SCC2)は、上記第1~第3いずれかの構成の過電流検出回路と、前記複数のコンデンサと、前記複数のスイッチング素子と、を有する構成(第4の構成)である。
【0069】
上記第4の構成のスイッチドキャパシタコンバータは、効率低下を招くことなく過電流を検出することができる。
【0070】
以上説明した車両(X)は、上記第7の構成のスイッチドキャパシタコンバータを有する構成(第5の構成)である。
【0071】
上記第5の構成の車両は、スイッチドキャパシタコンバータの効率低下を招くことなく過電流を検出することができる。
【符号の説明】
【0072】
1、2 過電流検出回路
11 抵抗
12 コンデンサ
13 直流電圧源
14 コンパレータ
RSNS センス抵抗
C1~C3 コンデンサ
Cout 出力コンデンサ
CNT1 制御部
COMP1 コンパレータ
IS1 定電流源
LD1 負荷
M1~M8 スイッチング素子
OP1~OP2 オペアンプ
Q1~Q6 MOS電界効果トランジスタ
R1~R17 抵抗
SCC1、SCC2 スイッチドキャパシタコンバータ
T1~T2 第1~第2印加端
VS1 直流電圧源
X 車両
X11~X18 電子機器